被膜形成方法
【課題】凹凸のある被膜形成面に被膜を精度良く不具合なく形成することができる被膜形成方法を提供する。
【解決手段】基板1上の第1被膜2と基板1とで形成されている凹凸の凹部が埋められるように犠牲被膜3を積層して、基板1と第1被膜2との段差を小さくし、平滑化する。次に、犠牲被膜3上に第2被膜4を積層した後、犠牲被膜3を除去すれば、凹部に第2被膜4が形成される。ダミーとなる犠牲被膜3を凹部に形成して、第1被膜2によって生じた凹凸を平滑化しておき、次に犠牲被膜3上に形成したい所望の第2被膜4を犠牲被膜3上に作製した後、犠牲被膜3を取り除くことで、不具合なく所望の被膜を形成することができる。
【解決手段】基板1上の第1被膜2と基板1とで形成されている凹凸の凹部が埋められるように犠牲被膜3を積層して、基板1と第1被膜2との段差を小さくし、平滑化する。次に、犠牲被膜3上に第2被膜4を積層した後、犠牲被膜3を除去すれば、凹部に第2被膜4が形成される。ダミーとなる犠牲被膜3を凹部に形成して、第1被膜2によって生じた凹凸を平滑化しておき、次に犠牲被膜3上に形成したい所望の第2被膜4を犠牲被膜3上に作製した後、犠牲被膜3を取り除くことで、不具合なく所望の被膜を形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造等で被膜によって微細なパターンを形成する場合等に用いられる被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より膜状抵抗体を有する電子部品として、図14に示すチップ型抵抗器がよく知られている。このチップ型抵抗器は、絶縁性の基板11の上に上面電極12が、上面電極12に接続されるように膜状抵抗体13が形成され、膜状抵抗体13の保護層としてアンダーコート14、ミドルコート15、オーバーコート16等が順次積層されている。また、オーバーコート16の上には標印17が形成されている。
【0003】
上記チップ型抵抗器は、所望する抵抗値を得るために、チップブレイクの前工程において基板11上に形成した膜状抵抗体13をレーザートリミングし、トリミング部18を設けている。
【0004】
図14のチップ型抵抗器の製造工程を簡単に説明すると、先ず、セラミックス等からなるウエハ状の絶縁基板11に縦・横ブレイク溝を格子状に設けて多数のチップ毎の単位領域を形成し、次いで、縦ブレイク溝を跨ぐように、各チップ単位領域毎の上面電極12を印刷・焼成する。
【0005】
次に、各チップ単位領域内において、対向した前記上面電極12間を橋絡するように厚膜の膜状抵抗体13を印刷・焼成するとともに、後工程のレーザートリミング時に膜状抵抗体13が飛散したり、酸化することを防止するために、トリミング個所を覆うように一次ガラスのアンダーコート14を印刷・焼成する。
【0006】
そして、所望する抵抗値とするために、レーザーの始点を定め、膜状抵抗体13の横断方向(図では縦方向)にトリミングを開始し、さらに抵抗値の微調整段階では横方向にトリミングを行い、トリミング部18を作製する。
【0007】
その後、トリミング後の膜状抵抗体13を保護するために、樹脂等による二次、三次の保護用コートとしてミドルコート15、オーバーコート16を印刷・焼成し、さらにオーバーコート16の上に標印17を印刷・焼成し、縦・横ブレイク溝に沿ってブレイクしてチップ化し、図14のようなチップ抵抗器を得ている。
【0008】
上面電極12、膜状抵抗体13、アンダーコート14、ミドルコート15、オーバーコート16、標印17等の微細な被膜は、印刷・焼成により形成され、これらは、すべてスクリーンマスク等のマスクを用いて所定のパターン形状に形成される。
【特許文献1】特開平6−215915号公報
【特許文献2】特開平10−284310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の被膜形成方法では、マスクを用いつつ、被膜を重ねて形成していくために、以下のような問題が発生する。すなわち、被膜が形成された印刷面にファインパターンを印刷しようとした場合、既に形成された被膜による凹凸のために、マスクが印刷面に密着せず、形成された被膜の形状がファインパターンにならないという問題があった。
【0010】
例えば、図11は、基板21上に第1被膜22が形成されており、この第1被膜22の間を接続するように第2被膜24aを作製する場合を示す。図11(a)に示すように第1被膜22上に、開口部が設けられたマスク23を配置して、スキージ等によってペースト24をマスク23の開口部から内部に流し込み、マスク23を取り除いた後、ペースト24を硬化させると、図11(b)のような第2被膜24aが作製される。
【0011】
しかし、図11(a)に示すように、第2被膜24aを形成したい面は第1被膜22によって凹凸形状になって段差が生じ、マスク23の開口部から基板21表面までは離れており、マスク23の開口部から流れ込んだペースト24は縦横方向に拡がるので、第2被膜24aの幅は太くなり、厚みも大きくなる。したがって、図10(a)に示すファインパターン第2被膜24Aのように、薄く細いパターンを形成することができない。
【0012】
また、図12は、図10(b)のファインパターンのように、第1被膜22の上に分離した第2被膜26Aを形成しようとする場合に発生する不具合を示す。図12(a)に示すように、第2被膜を形成したい面は第1被膜22によって凹凸形状になって段差が生じ、マスク25の2箇所の開口部から基板21表面までは離れており、マスク25の2箇所の開口部から流れ込んだペースト26は縦横方向に拡がるので、本来マスク25で分離されるはずの隣の第2被膜26aと繋がってしまい、図12(b)のようになる。
【0013】
さらに、図13は、図10(c)のファインパターンのように、第1被膜22の中間に細いパターンの第2被膜28Aを基板21上に形成しようとする場合に発生する不具合を示す。図13(a)のように、第2被膜を形成したい面は第1被膜22によって凹凸形状になって段差が生じ、マスク27の開口部から基板21表面までは離れているので、細いパターンを作製するために流し込んだ微量のペースト28がマスク27の開口部に付着したままで、基板21表面まで到達しない。したがって、マスク27を取り除いたときに、図13(b)に示すように、基板21上にはペースト28は何も残っておらず、図10(c)のように第2被膜28Aを形成できない。
【0014】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、凹凸のある被膜形成面に被膜を精度良く不具合なく形成することができる被膜形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、被膜を重ねて形成する被膜の形成方法であって、凹凸が存在する第1被膜に対し、犠牲被膜を形成して前記凹凸を平滑化した後、第2被膜を前記犠牲被膜上に形成し、その後前記犠牲被膜を除去することを特徴とする被膜形成方法である。
【0016】
また、請求項2記載の発明は、前記犠牲被膜の形成は、複数工程行われることを特徴とする請求項1記載の被膜形成方法である。
【0017】
また、請求項3記載の発明は、前記犠牲被膜の除去は、気化させることにより行われることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の被膜形成方法である。
【0018】
また、請求項4記載の発明は、前記犠牲被膜の気化温度は、前記第2被膜の硬化温度以下であることを特徴とする請求項3記載の被膜形成方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被膜が形成されて凹凸を有する面に、ダミーとなる犠牲被膜を作製して凹凸を平滑化し、犠牲被膜の上に形成したい所望のパターンを有する被膜を形成した後、犠牲被膜を除去するようにしているので、凹凸が原因で発生する被膜形成の不具合を防止することができ、被膜を精度良く形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明の被膜形成方法の主たる工程ついて示したものである。図1(a)のように、基板1上に第1被膜2が分離して形成されており、その分離した領域の基板1上に細いパターン形状を有する第2被膜を形成して、図10(c)のような第2被膜を作製する場合を示す。
【0021】
この場合、基板1上の第1被膜2によって生じた凹凸の凹部(第1被膜2が分離している領域)が埋められるように犠牲被膜3を積層して、基板1と第1被膜2との段差を小さくし、平滑化する。
【0022】
次に、犠牲被膜3上に第2被膜4を積層するのであるが、上記のように犠牲被膜3によって凹凸が平滑化されているので、マスク(図示せず)が犠牲被膜3に密着し、第2被膜4は、きれいな形状で形成される。犠牲被膜3を除去すれば、図1(b)に示すように、第1被膜2が分離した凹部の基板1上に第2被膜4が形成される。
【0023】
このように、ダミーとなる犠牲被膜3を凹部に形成して、第1被膜2によって生じた凹凸を平滑化しておき、次に犠牲被膜3上に形成したい所望の第2被膜4を犠牲被膜3上に作製した後、犠牲被膜3を取り除けば、不具合なく所望の被膜を形成することができる。
【0024】
ここで、基板1には、例えば、アルミナ(Al2O3)やセラミック等が用いられる。第1被膜2や、第2被膜4は、金属、ガラス、樹脂等で構成され、犠牲被膜3は、樹脂等で構成されている。また、図14のようなチップ型抵抗器であれば、第1被膜2は10〜35μm程度、犠牲被膜3は20〜30μm程度の厚さに形成される。
【0025】
特に、本発明で特徴的な犠牲被膜3は、目的の第2被膜4を焼結して硬化が完了するまでに、気化させて跡が残らないようにして除去するために、犠牲被膜3の気化温度が第2被膜4の硬化温度以下になるような材料を用いている。一例として犠牲被膜3は、セルロース系樹脂等で構成することができる。なお、セルロース系樹脂は500℃付近で気化する性質を持っている。犠牲被膜3の気化(気体化)は、昇華、蒸発、又は、酸素や窒素等の気体分子と結びついて気体になる焼きとばし等により行われる。
【0026】
ところで、第1被膜2、犠牲被膜3、第2被膜4に用いる各材料の性質をまとめると、犠牲被膜3の気化温度がT℃とすると、第2被膜4がT℃以上で硬化又は焼付できること、第1被膜2は少なくともT℃以上の耐熱性を有し、さらに第2被膜4の硬化温度又は焼付温度以上の耐熱性を有することが必要となる。
【0027】
次に、図2〜図9までを用いて、図10(b)のようなファインパターンの被膜を形成する方法について、具体的に説明する。最初に基板1上に第1被膜2が積層されており、図2のような凹凸が形成されているところに、図3のように開口部を有するマスク5を第1被膜2上に重ねて配置する。マスクにはスクリーンマスクやメタルマスク等が用いられる。
【0028】
次に、犠牲被膜3を形成するためのペースト状犠牲被膜3aを図4に示すようにスキージ等を使用してマスク5の開口部から流し込みペースト状犠牲被膜3aの上面を直線状に整える。ペーストには樹脂ペースト等を用いる。その後、マスク5を取り除き、ペースト状犠牲被膜3aを焼結して硬化(乾燥)させると、図5のように犠牲被膜3が形成される。
【0029】
犠牲被膜3は、第1被膜2によって生じた凹凸の凹部を埋めるように形成され、平滑化される。なお、第1被膜2による凹凸が1回の犠牲被膜3の形成によって平滑化されない場合には、犠牲被膜3の作製工程を1回ではなく、複数回行うようにしても良い。
【0030】
図6に示すように、2箇所の開口部が設けられたマスク6を犠牲被膜3及び第1被膜2の上に配置し、図7に示すように、第2被膜4を形成するためのペースト状第2被膜4aをスキージ等を使用してマスク6の開口部から流し込み、2箇所の開口部を埋めるようにする。このとき、マスク6は、犠牲被膜3に密着して配置される。
【0031】
その後、マスク6を除去すると、図8のようにペースト状第2被膜4aの塊が平坦な犠牲被膜3上に残された状態となる。次に、ペースト状第2被膜4aを焼結して硬化(乾燥)させるのであるが、この硬化温度以下で気化するような材料を犠牲被膜3に用いているので、ペースト状第2被膜4aを焼結している間に犠牲被膜3が気体となって消滅するとともに、まだ硬化していないペースト状第2被膜4aが下の方へ下がってきて第1被膜2、基板1の上に形成される。
【0032】
したがって、図9のように、犠牲被膜3が消滅した跡にペースト状第2被膜4aが形成され、それが硬化して第2被膜4となる。このように、第2被膜4が第1被膜2に重なるように形成されるとともに、分離したパターンが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明における被膜形成方法の主要な製造工程を示す図である。
【図2】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図3】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図4】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図5】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図6】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図7】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図8】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図9】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図10】形成された被膜のファインパターン例を示す図である。
【図11】悪い被膜パターン例を示す図である。
【図12】悪い被膜パターン例を示す図である。
【図13】悪い被膜パターン例を示す図である。
【図14】電子部品構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 基板
2 第1被膜
3 犠牲被膜
3a ペースト状犠牲被膜
4 第2被膜
4a ペースト状第2被膜
5 マスク
6 マスク
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造等で被膜によって微細なパターンを形成する場合等に用いられる被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より膜状抵抗体を有する電子部品として、図14に示すチップ型抵抗器がよく知られている。このチップ型抵抗器は、絶縁性の基板11の上に上面電極12が、上面電極12に接続されるように膜状抵抗体13が形成され、膜状抵抗体13の保護層としてアンダーコート14、ミドルコート15、オーバーコート16等が順次積層されている。また、オーバーコート16の上には標印17が形成されている。
【0003】
上記チップ型抵抗器は、所望する抵抗値を得るために、チップブレイクの前工程において基板11上に形成した膜状抵抗体13をレーザートリミングし、トリミング部18を設けている。
【0004】
図14のチップ型抵抗器の製造工程を簡単に説明すると、先ず、セラミックス等からなるウエハ状の絶縁基板11に縦・横ブレイク溝を格子状に設けて多数のチップ毎の単位領域を形成し、次いで、縦ブレイク溝を跨ぐように、各チップ単位領域毎の上面電極12を印刷・焼成する。
【0005】
次に、各チップ単位領域内において、対向した前記上面電極12間を橋絡するように厚膜の膜状抵抗体13を印刷・焼成するとともに、後工程のレーザートリミング時に膜状抵抗体13が飛散したり、酸化することを防止するために、トリミング個所を覆うように一次ガラスのアンダーコート14を印刷・焼成する。
【0006】
そして、所望する抵抗値とするために、レーザーの始点を定め、膜状抵抗体13の横断方向(図では縦方向)にトリミングを開始し、さらに抵抗値の微調整段階では横方向にトリミングを行い、トリミング部18を作製する。
【0007】
その後、トリミング後の膜状抵抗体13を保護するために、樹脂等による二次、三次の保護用コートとしてミドルコート15、オーバーコート16を印刷・焼成し、さらにオーバーコート16の上に標印17を印刷・焼成し、縦・横ブレイク溝に沿ってブレイクしてチップ化し、図14のようなチップ抵抗器を得ている。
【0008】
上面電極12、膜状抵抗体13、アンダーコート14、ミドルコート15、オーバーコート16、標印17等の微細な被膜は、印刷・焼成により形成され、これらは、すべてスクリーンマスク等のマスクを用いて所定のパターン形状に形成される。
【特許文献1】特開平6−215915号公報
【特許文献2】特開平10−284310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の被膜形成方法では、マスクを用いつつ、被膜を重ねて形成していくために、以下のような問題が発生する。すなわち、被膜が形成された印刷面にファインパターンを印刷しようとした場合、既に形成された被膜による凹凸のために、マスクが印刷面に密着せず、形成された被膜の形状がファインパターンにならないという問題があった。
【0010】
例えば、図11は、基板21上に第1被膜22が形成されており、この第1被膜22の間を接続するように第2被膜24aを作製する場合を示す。図11(a)に示すように第1被膜22上に、開口部が設けられたマスク23を配置して、スキージ等によってペースト24をマスク23の開口部から内部に流し込み、マスク23を取り除いた後、ペースト24を硬化させると、図11(b)のような第2被膜24aが作製される。
【0011】
しかし、図11(a)に示すように、第2被膜24aを形成したい面は第1被膜22によって凹凸形状になって段差が生じ、マスク23の開口部から基板21表面までは離れており、マスク23の開口部から流れ込んだペースト24は縦横方向に拡がるので、第2被膜24aの幅は太くなり、厚みも大きくなる。したがって、図10(a)に示すファインパターン第2被膜24Aのように、薄く細いパターンを形成することができない。
【0012】
また、図12は、図10(b)のファインパターンのように、第1被膜22の上に分離した第2被膜26Aを形成しようとする場合に発生する不具合を示す。図12(a)に示すように、第2被膜を形成したい面は第1被膜22によって凹凸形状になって段差が生じ、マスク25の2箇所の開口部から基板21表面までは離れており、マスク25の2箇所の開口部から流れ込んだペースト26は縦横方向に拡がるので、本来マスク25で分離されるはずの隣の第2被膜26aと繋がってしまい、図12(b)のようになる。
【0013】
さらに、図13は、図10(c)のファインパターンのように、第1被膜22の中間に細いパターンの第2被膜28Aを基板21上に形成しようとする場合に発生する不具合を示す。図13(a)のように、第2被膜を形成したい面は第1被膜22によって凹凸形状になって段差が生じ、マスク27の開口部から基板21表面までは離れているので、細いパターンを作製するために流し込んだ微量のペースト28がマスク27の開口部に付着したままで、基板21表面まで到達しない。したがって、マスク27を取り除いたときに、図13(b)に示すように、基板21上にはペースト28は何も残っておらず、図10(c)のように第2被膜28Aを形成できない。
【0014】
本発明は、上述した課題を解決するために創案されたものであり、凹凸のある被膜形成面に被膜を精度良く不具合なく形成することができる被膜形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、被膜を重ねて形成する被膜の形成方法であって、凹凸が存在する第1被膜に対し、犠牲被膜を形成して前記凹凸を平滑化した後、第2被膜を前記犠牲被膜上に形成し、その後前記犠牲被膜を除去することを特徴とする被膜形成方法である。
【0016】
また、請求項2記載の発明は、前記犠牲被膜の形成は、複数工程行われることを特徴とする請求項1記載の被膜形成方法である。
【0017】
また、請求項3記載の発明は、前記犠牲被膜の除去は、気化させることにより行われることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の被膜形成方法である。
【0018】
また、請求項4記載の発明は、前記犠牲被膜の気化温度は、前記第2被膜の硬化温度以下であることを特徴とする請求項3記載の被膜形成方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被膜が形成されて凹凸を有する面に、ダミーとなる犠牲被膜を作製して凹凸を平滑化し、犠牲被膜の上に形成したい所望のパターンを有する被膜を形成した後、犠牲被膜を除去するようにしているので、凹凸が原因で発生する被膜形成の不具合を防止することができ、被膜を精度良く形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図1は本発明の被膜形成方法の主たる工程ついて示したものである。図1(a)のように、基板1上に第1被膜2が分離して形成されており、その分離した領域の基板1上に細いパターン形状を有する第2被膜を形成して、図10(c)のような第2被膜を作製する場合を示す。
【0021】
この場合、基板1上の第1被膜2によって生じた凹凸の凹部(第1被膜2が分離している領域)が埋められるように犠牲被膜3を積層して、基板1と第1被膜2との段差を小さくし、平滑化する。
【0022】
次に、犠牲被膜3上に第2被膜4を積層するのであるが、上記のように犠牲被膜3によって凹凸が平滑化されているので、マスク(図示せず)が犠牲被膜3に密着し、第2被膜4は、きれいな形状で形成される。犠牲被膜3を除去すれば、図1(b)に示すように、第1被膜2が分離した凹部の基板1上に第2被膜4が形成される。
【0023】
このように、ダミーとなる犠牲被膜3を凹部に形成して、第1被膜2によって生じた凹凸を平滑化しておき、次に犠牲被膜3上に形成したい所望の第2被膜4を犠牲被膜3上に作製した後、犠牲被膜3を取り除けば、不具合なく所望の被膜を形成することができる。
【0024】
ここで、基板1には、例えば、アルミナ(Al2O3)やセラミック等が用いられる。第1被膜2や、第2被膜4は、金属、ガラス、樹脂等で構成され、犠牲被膜3は、樹脂等で構成されている。また、図14のようなチップ型抵抗器であれば、第1被膜2は10〜35μm程度、犠牲被膜3は20〜30μm程度の厚さに形成される。
【0025】
特に、本発明で特徴的な犠牲被膜3は、目的の第2被膜4を焼結して硬化が完了するまでに、気化させて跡が残らないようにして除去するために、犠牲被膜3の気化温度が第2被膜4の硬化温度以下になるような材料を用いている。一例として犠牲被膜3は、セルロース系樹脂等で構成することができる。なお、セルロース系樹脂は500℃付近で気化する性質を持っている。犠牲被膜3の気化(気体化)は、昇華、蒸発、又は、酸素や窒素等の気体分子と結びついて気体になる焼きとばし等により行われる。
【0026】
ところで、第1被膜2、犠牲被膜3、第2被膜4に用いる各材料の性質をまとめると、犠牲被膜3の気化温度がT℃とすると、第2被膜4がT℃以上で硬化又は焼付できること、第1被膜2は少なくともT℃以上の耐熱性を有し、さらに第2被膜4の硬化温度又は焼付温度以上の耐熱性を有することが必要となる。
【0027】
次に、図2〜図9までを用いて、図10(b)のようなファインパターンの被膜を形成する方法について、具体的に説明する。最初に基板1上に第1被膜2が積層されており、図2のような凹凸が形成されているところに、図3のように開口部を有するマスク5を第1被膜2上に重ねて配置する。マスクにはスクリーンマスクやメタルマスク等が用いられる。
【0028】
次に、犠牲被膜3を形成するためのペースト状犠牲被膜3aを図4に示すようにスキージ等を使用してマスク5の開口部から流し込みペースト状犠牲被膜3aの上面を直線状に整える。ペーストには樹脂ペースト等を用いる。その後、マスク5を取り除き、ペースト状犠牲被膜3aを焼結して硬化(乾燥)させると、図5のように犠牲被膜3が形成される。
【0029】
犠牲被膜3は、第1被膜2によって生じた凹凸の凹部を埋めるように形成され、平滑化される。なお、第1被膜2による凹凸が1回の犠牲被膜3の形成によって平滑化されない場合には、犠牲被膜3の作製工程を1回ではなく、複数回行うようにしても良い。
【0030】
図6に示すように、2箇所の開口部が設けられたマスク6を犠牲被膜3及び第1被膜2の上に配置し、図7に示すように、第2被膜4を形成するためのペースト状第2被膜4aをスキージ等を使用してマスク6の開口部から流し込み、2箇所の開口部を埋めるようにする。このとき、マスク6は、犠牲被膜3に密着して配置される。
【0031】
その後、マスク6を除去すると、図8のようにペースト状第2被膜4aの塊が平坦な犠牲被膜3上に残された状態となる。次に、ペースト状第2被膜4aを焼結して硬化(乾燥)させるのであるが、この硬化温度以下で気化するような材料を犠牲被膜3に用いているので、ペースト状第2被膜4aを焼結している間に犠牲被膜3が気体となって消滅するとともに、まだ硬化していないペースト状第2被膜4aが下の方へ下がってきて第1被膜2、基板1の上に形成される。
【0032】
したがって、図9のように、犠牲被膜3が消滅した跡にペースト状第2被膜4aが形成され、それが硬化して第2被膜4となる。このように、第2被膜4が第1被膜2に重なるように形成されるとともに、分離したパターンが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明における被膜形成方法の主要な製造工程を示す図である。
【図2】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図3】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図4】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図5】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図6】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図7】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図8】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図9】本発明における被膜形成方法の一製造工程を示す図である。
【図10】形成された被膜のファインパターン例を示す図である。
【図11】悪い被膜パターン例を示す図である。
【図12】悪い被膜パターン例を示す図である。
【図13】悪い被膜パターン例を示す図である。
【図14】電子部品構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 基板
2 第1被膜
3 犠牲被膜
3a ペースト状犠牲被膜
4 第2被膜
4a ペースト状第2被膜
5 マスク
6 マスク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被膜を重ねて形成する被膜形成方法であって、
凹凸が存在する第1被膜に対し、犠牲被膜を形成して前記凹凸を平滑化した後、
第2被膜を前記犠牲被膜上に形成し、その後前記犠牲被膜を除去することを特徴とする被膜形成方法。
【請求項2】
前記犠牲被膜の形成は、複数工程行われることを特徴とする請求項1記載の被膜形成方法。
【請求項3】
前記犠牲被膜の除去は、気化させることにより行われることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
【請求項4】
前記犠牲被膜の気化温度は、前記第2被膜の硬化温度以下であることを特徴とする請求項3記載の被膜形成方法。
【請求項1】
被膜を重ねて形成する被膜形成方法であって、
凹凸が存在する第1被膜に対し、犠牲被膜を形成して前記凹凸を平滑化した後、
第2被膜を前記犠牲被膜上に形成し、その後前記犠牲被膜を除去することを特徴とする被膜形成方法。
【請求項2】
前記犠牲被膜の形成は、複数工程行われることを特徴とする請求項1記載の被膜形成方法。
【請求項3】
前記犠牲被膜の除去は、気化させることにより行われることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
【請求項4】
前記犠牲被膜の気化温度は、前記第2被膜の硬化温度以下であることを特徴とする請求項3記載の被膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−93636(P2008−93636A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281674(P2006−281674)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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