説明

被覆された血管閉塞装置

患者の血管を閉塞するための組成物と方法が提供されており、血管閉塞装置は複数の穴を含有するポリマー材料を有する閉塞要素を含んでおり、複数の穴には、少なくとも部分的には1つ又は複数のバイオ活性剤が詰められており、血管閉塞装置は、患者の血管を閉塞するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
動脈瘤は、生命の危険を冒す恐れのある問題である。動脈瘤は、血管壁が弱い領域に生じ、この弱い領域において血管壁の特定部位が膨れる。動脈瘤を治療しないと、破裂する恐れがあり、そうなると脳卒中、更には死に至ることもある。
【背景技術】
【0002】
血管内塞栓術は、動脈瘤又は血管閉塞が望まれる他の医療状況に対して、代わりの非外科的治療を提供する。通常は、柔らかいプラチナコイル(又は半径方向強度が増しているステンレス鋼コイル)が、マイクロカテーテルを通してカテーテルの中に投入される。プラチナは軟らかいので、破裂は最小限に抑えられ、コイルを動脈瘤又は所望の閉塞部位の多くは不規則な形状に合わせることができる。一般に、平均5〜6本のコイルが、動脈瘤に詰められる。この治療の目標は、動脈瘤にコイルを詰めることによって、血液が動脈瘤嚢に流れ込むのを防ぐことである。血液の流れを妨げることによって、破裂の危険が取り除かれる。血液の流れを減らせば、うっ血と、血餅/血栓の形成が、例えば、動脈瘤又は動脈瘤頸部近くで生じる可能性がある。
【0003】
しかしながら、標準的なプラチナ塞栓コイルは、生物学的に不活性であり、血栓形成又は凝固を促進する能力は限られている。血餅ができても、溶解し易い。これによって、血液が流入し、動脈瘤が破裂する恐れがある。更に、プラチナコイルは、動脈瘤の管腔に必ずしも完全に詰め込まれるわけではない。従って、動脈瘤が再開通し、拡大し、遂には破裂することがある。頸部が広い動脈瘤では、塞栓コイルが親血管に戻り、親血管を閉塞させることが分かっている。塞栓コイルが血液を通って他の領域に移動するのは、危険を伴う。動脈瘤の血管内治療に伴う欠点を考えると、当技術は、安定性と最大の血栓形成性とを授与する改良された塞栓コイルを必要としている。
【特許文献1】米国特許第5,122,132号
【特許文献2】米国特許第5,334,210号
【特許文献3】米国特許第4,675,361号
【特許文献4】米国特許第6,939,377号
【特許文献5】米国特許第4,861,830号
【特許文献6】米国特許第4,675,361号
【特許文献7】米国特許第6,752,826号
【特許文献8】米国特許第2003/0149471A1号
【特許文献9】米国特許第5,017,664号
【特許文献10】米国特許出願第2002/0187288A1号
【特許文献11】米国特許第5,589,563号
【特許文献12】米国特許第6,547,815B2号
【特許文献13】米国特許第5,980,799号
【特許文献14】米国特許第3,953,566号
【特許文献15】米国特許第5,024,671号
【特許文献16】米国特許第4,473,665号
【特許文献17】米国特許第5,160,674号
【特許文献18】米国特許第6,702,849B1号
【特許文献19】米国特許第3,772,137号
【特許文献20】米国特許出願第11/093,759号
【特許文献21】米国特許第6,206,931号
【特許文献22】米国特許第6,358,284号
【特許文献23】米国特許第5,554,389号
【特許文献24】米国特許第6,099,567号
【特許文献25】米国特許第6,358,284号
【特許文献26】米国特許第5,993,844号
【特許文献27】米国特許第6,572,650号
【特許文献28】米国特許第5,275,826号
【特許文献29】米国特許第4,994,069号
【特許文献30】米国特許第5,108,407号
【特許文献31】米国特許第5,122,136号
【特許文献32】米国特許第5,217,484号
【特許文献33】米国特許第5,226,911号
【特許文献34】米国特許第5,234,437号
【特許文献35】米国特許第5,250,071号
【特許文献36】米国特許第5,261,916号
【特許文献37】米国特許第5,312,415号
【非特許文献1】国際標準化機構(ISO)標準第10993
【非特許文献2】米国薬局方(USP)23
【非特許文献3】米国食品医薬品局(FDA)の調査報告書の覚書第G95−1
【非特許文献4】C.Heeschen他「Nature Medicine7(2001年)第7号」833−839頁)
【非特許文献5】C.Johnson他「Circulation Research94(2004)第2号」(262−268頁)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様では、本発明は、少なくとも1つの閉塞要素が含まれている血管閉塞装置を提供しており、閉塞要素は、少なくとも部分的にバイオ活性剤(bioactive agent)が詰められた複数の穴を有するポリマー材料を含んでおり、バイオ活性剤は患者の血管の閉塞を促進し、血管閉塞装置は患者の血管を閉塞するように構成されている。代表的なポリマー材料には、バイオ活性剤の放出を支援するTHORALON又は他の多孔性のポリマー材料が含まれる。バイオ活性剤は、血栓形成を促進し、血栓溶解活動を抑制し、又はそれら両方を行う。代表的なバイオ活性剤には、血栓形成性、線維形成性、血管形成性、抗血栓溶解性、抗線維素溶解性、線維素安定性、外傷治療性、線維芽細胞促進性、血管新生促進性、細胞及び/又は組織接着促進性、細胞外基質促進性の、及び/又はそれらを組み合わせた活性剤が含まれる。バイオ活性剤は、患者の血管の部位に血管閉塞装置を安定化及び/又は固定化させるのを促進するために、細胞外基質の堆積及び/又はバイオリモデリング(bioremodeling)を促進する吸収可能剤(resorbable agent)であってもよい。
【0005】
或る特定の実施形態では、血管閉塞装置は、空間充填構造要素の形態をした閉塞要素を含んでいる。代表的な空間充填構造要素には、コイル、ワイヤ、取り外し可能コイル、取り外し可能ワイヤ、フィラメント要素、糸、多重糸、合成繊維、及び/又はそれらの組み合わせが含まれる。空間充填構造要素は、血管を閉塞させるに足る任意の三次元構成を取る。従って、血管閉塞装置は、複数の空間充填構造要素を含んでおり、その内の何れか1つは、巻かれるか、束にまとめられるなどしていてもよい。
【0006】
別の実施形態では、血管閉塞装置は、空間充填構造要素又は空間充填材料を包み込む閉塞袋を含んでおり、包み込んだ閉塞袋は、患者の血管を閉塞させるために拡げられるようになっている。代表的な空間充填材料には、再構成コラーゲン又は天然由来のコラーゲン材料、細胞外基質材料(ECM)、小腸粘膜下組織材料(SIS)などを含む吸収可能剤が含まれる。
【0007】
別の態様では、患者の血管を閉塞するための方法が提供されており、本発明の血管閉塞装置は、血管を閉塞し及び/又は血栓形成を促進するために患者の血管内に配置される。
【0008】
本発明の薬剤埋め込み型血管閉塞装置を使用すると、凝固、動脈瘤収縮、及び/又は動脈瘤瘢痕化が促進され、先行技術による標準的な血管閉塞装置に勝る改良が提供されると考えられる。
【0009】
本発明のこの他の特徴、方法、及び利点は、添付図面と以下の詳細な説明を見れば、当業者には明白になるであろう。その様な追加のシステム、方法、特徴、及び利点は、全てこの説明に含まれ、本発明の範囲内にあり、特許請求の範囲によって保護されるものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
明細書と特許請求の範囲を明確且つ矛盾無く理解頂くため、以下の様に定義する。
【0011】
ここに用いる「血管」という用語は、限定するわけではないが、動脈瘤、血管、胆管、消化器管、気管、尿管、及び尿道を含む任意の身体の管、導管、ダクト、又は通路を含んでいると定義する。
【0012】
「血管閉塞装置」という用語は、患者の血管を閉塞するように構成された複合構造を指す。血管閉塞装置は、1つ又は複数の閉塞要素を含んでいる。
【0013】
「閉塞要素」という用語は、血管閉塞装置の構成要素を指す。閉塞要素は、閉塞袋、空間充填構造要素、及び/又は空間充填材料を含んでいる。
【0014】
「空間充填構造要素」という用語は、血管を閉塞するように構成された三次元の形状を有する構造要素を指す。空間充填構造要素は、何れの特定の二次的構造又は形状を意味するものでもない。代表的な空間充填構造要素には、閉塞袋、コイル、ワイヤ、取り外し可能コイル、取り外し可能ワイヤ、多重糸、ケーブル、組ひも、ポリマーシート材料、布、紡績糸、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0015】
「空間充填材料」という用語は、閉塞袋を満たす材料の種類を指す。閉塞袋を空間充填材料で満たすのは、主に、閉塞袋の形状によって決まる。空間充填材料は、何らかの特定の三次元形状に構成されているわけではない。
【0016】
「ポリマー材料」という用語は、閉塞要素内に含まれているか又は閉塞要素の少なくとも1つの表面に被覆されている、複数の穴を有するポリマーシート又はポリマー被覆材料を指す。
【0017】
「シート」という用語は、モノリス材料層を指す。ここで用いる「シート」という用語は、何れかの特定の形状を意味するわけではなく、平坦な層、チューブ、又は他の薄い形状の物体を含んでいる。ここで用いる「シート」という用語は、具体的には、ニット又は織布、或いは不織布などの個別の繊維から形成される布地材料と、ポリエステル、フッ化ポリマー、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリアミド、及びポリスルホンから形成される多孔性ポリマーシートを含んでいる。「ポリマーシート」という用語は、布地又は多孔性のポリマー材料のモノリス層を意味している。「多孔性シート」という用語は、空間又は穴が含まれている凝集性の材料層を意味している。
【0018】
「穴」という用語は、ポリマー材料の各部分の中又は間に自然に形成された空間を意味している。穴は、間隙、孔、空洞、アパーチャ、及び空間を含んでいる。穴は、ポリマー材料を、無機塩類を含む粒子状物質又は孔形成剤で処理することによって作られる孔を含んでいる。穴は、布地繊維などの、材料の結合から形成される、自然にできる空間を更に含んでいる。従って、布地糸材料は、個々の布地繊維の間の間隙である穴、及び/又は個々の布地繊維内の穴を含んでいる。「穴」という用語は、モールド成形又は穿孔された穴または機械加工によって材料に直接付与された穴を含まない。
【0019】
「バイオ活性剤」という用語は、血栓形成性、繊維形成性、血管形成性、抗血栓形成性、抗線維素溶解性、線維素安定性、外傷治療性、繊維芽細胞促進性、血管新生促進性、細胞及び/又は組織接着促進性、細胞外基質促進性などで構成されているグループから選択される少なくとも1つの生物学的特性を有するプロテイン、ペプチド、ペプチド擬態、有機分子、合成分子、薬剤、又は合成ポリマーを指す。
【0020】
「血栓形成性線維材料」という用語は、血栓形成特性を有する合成及び/又は天然の線維材料を指す。代表的な血栓形成性線維材料には、限定するわけではないが、DACRON、綿、絹、羊毛、ポリエステル糸などが含まれる。
【0021】
「吸収可能剤」という用語は、細胞外基質材料、精製コラーゲン、粘膜下組織などの組織構造を含有する未変性コラーゲンなどを含め、再構成された又は天然由来のコラーゲン材料を指す。
【0022】
「細胞外基質材料」(ECM)という用語は、細胞外基質組織からのコラーゲン組織材料を指す。ECM材料には、粘膜下層、腎被膜、皮膚コラーゲン、硬膜、心膜、大腿筋膜、漿膜、腹膜、又は肝臓基底膜を含む基底膜層が含まれる。
【0023】
「粘膜下組織(tela submucosa)」という用語は、温血脊椎動物の消化器、気道、腸管、尿路、又は生殖器官を含む様々なソースから取り出される天然コラーゲンを含有する粘膜下組識構造を指す。本発明による粘膜下組織材料は粘膜下層を含んでいるが、粘膜筋板と緻密層など隣接する層を追加で含んでいてもよい。粘膜下組織は、細胞化されていない(decellulalized)または無細胞の組織であり、このことは、天然材料から精製したあと組織内に残存する細胞構成要素もあるが、無傷の生存細胞は無いことを意味している。代替実施形態(例えば、液状組成物など)は、精製された粘膜下組織基質構造から特別の目的で抽出した粘膜下組織材料を含んでいる。本開示による粘膜下組織材料は、元の粘膜下組織構造を保持していないか、又は天然の粘膜下組織源から最初に採取され精製された粘膜下層開始材料から調製されていない他の装置のコラーゲン材料と区別される。
【0024】
「小腸粘膜下組織」(SIS)という用語は、ブタなどの適した小腸源から採取される特定の種類の粘膜下組織構造を指す。
【0025】
「放射線不透過性」という用語は、哺乳動物被検体に注入する間に、X線撮影法又は蛍光透視法によって監視又は検出することのできる無毒性材料と定義されている。放射線不透過性材料は、水溶性でも非水溶性でもよい。水溶性の放射線不透過性材料の例には、メトリザミド、イオパミドール、ヨウタラム酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、及びメグルミンが含まれている。水溶性の放射線不透過性材料の例には、タンタル、酸化タンタル、及び硫酸バリウムが含まれ、これらは、生体内で使用するのに適切な形態で市販されている。他の非水溶性の放射線不透過性材料には、限定するわけではないが、金、タングステン、ステンレス鋼、及びプラチナが含まれる。
【0026】
1つの態様では、本発明は、1つ又は複数の閉塞要素を有する血管閉塞装置を提供しており、該閉塞要素は、1つ又は複数のバイオ活性剤が少なくとも部分的に詰められた複数の穴を有するポリマー材料を含んでおり、該バイオ活性剤は患者の血管の閉塞を促進し、血管閉塞装置は患者の血管を閉塞するように構成されている。バイオ活性剤は、血栓形成を促進するか、血栓溶解活動を抑制するか、又はその両方である。バイオ活性剤は、細胞外基質の堆積、バイオリモデリング、及び/又は、患者の血管部位内での血管閉塞装置の安定化及び/又は固定化を促進する吸収可能剤である。代表的な吸収可能剤には、コラーゲンベースの材料、又は例えば小腸の粘膜下組織(SIS)構造を含むECMベースの構造が含まれる。
【0027】
閉塞要素は、患者の血管を閉塞するように構成されている空間充填構造要素であってもよい。代表的な空間充填構造要素には、コイル、ワイヤ、取り外し可能コイル、取り外し可能ワイヤ、フィラメント要素、糸、多重糸、合成繊維、及び/又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0028】
閉塞要素は、更に、1つ又は複数の空間充填構造要素(例えば、上記)及び/又は空間充填材料を囲い込むルーメンを有する閉塞袋で、囲い込んだ閉塞袋は、拡張して患者の血管を閉塞するようになっている。代表的な空間充填材料には、タイプIからタイプXIVコラーゲンなどの吸収可能剤、小腸の粘膜下(SIS)組織を含む粘膜下組織、フィブリノゲン、ビトロネクチン、それらの組み合わせ及び/又は誘導体(derivatives)などが含まれる。
【0029】
血管閉塞装置は、更に、塞栓/血栓形成を促進する1つ又は複数の血栓形成繊維材料を含んでいてもよい。代表的な血栓形成繊維材料には、Dacron、綿、絹、羊毛、ポリエステル糸、それらの組み合わせ及び/又は誘導体などが含まれる。血栓形成繊維材料は、ポリマー材料、空間充填構造要素又は材料、閉塞袋などを含め、血管閉塞装置の何れの部分に含まれていてもよい。血栓形成繊維材料は、血管閉塞装置の外側表面に含まれるか、そこに構造的に結合させるのが望ましい。
【0030】
血管閉塞装置は、更に、血管閉塞装置の血管造影可視化を容易にするため、少なくとも1つの放射線不透過性及び/又はMRI適合性マーカー材料を含んでいてもよい。放射線不透過性及び/又はMRI適合性マーカー材料は、ポリマー材料、空間充填構造要素又は材料、閉塞袋などを含め、血管閉塞装置の何れの部分に含まれていてもよい。
【0031】
図1Aは、代表的な血管閉塞装置10を示しており、閉塞要素は、コイル又は糸を束ねた形状のコイル状に巻いた空間充填構造要素14を含んでいる。図1Bは、図1Aの空間充填構造要素14の糸部分(斜線領域)の断面を示しており、空間充填構造要素14の表面22が複数の穴26を有するポリマー材料18で被覆されている状態を示している。被覆されている空間充填構造要素14は、少なくとも1つのバイオ活性剤が部分的に詰められている。血管閉塞装置10及び/又は空間充填構造要素14は、更に、ポリマー材料18を含んでいるか、実質的に含んでいるか、又はそれから作ってあってもよい。血管閉塞装置10又はポリマー材料18は、患者の血管部位に血管閉塞装置10を安定化及び/または固定化させるために、塞栓/血栓形成を促進する血栓形成繊維材料30及び/または細胞外気質の堆積とバイオリモデリングを促進する吸収可能剤34をさらに含んでいてもよい。血栓形成繊維材料30及び/又は吸収可能剤34は、ポリマー材料18及び/又は空間充填構造要素14又は血管閉塞装置10の表面22に含まれているか、又はそれに構造的に結合させてもよい。
【0032】
図2は、ルーメン42を有する拡張可能な閉塞袋38を含む複数の閉塞要素と、血管閉塞装置100を血管内に閉塞及び/又は係留するための1つ又は複数の空間充填構造要素14と、を有する代表的な血管閉塞装置100の断面図であり、この閉塞袋38は、複数の穴26を有するポリマー材料18で被覆されている。閉塞袋38は、ポリマー材料18で作られていてもよいし、ポリマー材料18を実質的に含んでいてもよい。閉塞袋38又はポリマー材料18は、塞栓/血栓形成を促進するため、更に、血栓形成繊維材料30を含んでいるか、それに構造的に結合させてもよい。血管閉塞装置100は、細胞外基質の堆積とバイオリモデリングを促進して、血管閉塞装置100を患者の血管部位内に安定化及び/又は固定化させるために、更に、1つ又は複数の吸収可能剤34を含んでいてもよい。吸収可能剤34は、閉塞袋38及び/又はポリマー材料18に含まれていてもよいし、それに構造的に結合させてもよい。代わりに、吸収可能剤を、閉塞袋38を拡張させる空間充填材料として(即ち、空間充填構造要素の代わりに)用いてもよい。
【0033】
閉塞袋38、空間充填構造要素14、又はポリマー材料18は、更に、バイオ活性剤を含んでいるか、又はこれと構造的に結合させてもよい。例えば、バイオ活性剤は、ポリマー材料18に染み込ませてあってもよい。1つ又は複数のポリマー材料18を、閉塞袋38の中に入っている空間充填構造要素14の1つ又は複数の表面22に追加して被覆してもよい。この場合、ポリマー材料18には、吸収可能な溶剤34を含め、バイオ活性剤などの組み合わせが含まれる。代わりに、閉塞袋38内の空間充填材料が、一部又は全体に吸収可能剤34を含んでいてもよい。
【0034】
閉塞要素は、閉塞袋38を拡張する及び/又は血管を閉塞させるのに適した、あらゆる二次的形状又は空間充填材料を有する、天然材料又は合成材料で作ることができる。閉塞要素は、空間充填構造要素14を含んでいてもよい。代表的な空間充填構造要素14には、限定するわけではないが、閉塞袋、コイル、ワイヤ、取り外し可能コイル、取り外し可能ワイヤ、多重糸、ケーブル、組ひも、ポリマーシート材料、布、布地などが含まれる。閉塞袋38を拡張させるための空間充填材料は、吸収可能剤、又は血管を閉塞させるのに適した他の空間充填材料(天然又は合成)を含め、天然材料を含んでいてもよい。
【0035】
閉塞要素として使用するための閉塞袋38は、血管内の所与の目標部位の閉塞を促進するため閉塞袋38を拡張させるのに適した任意の空間充填材料によって、所定の形状に拡張されてもよい。閉塞袋38は、ナイロン、布、布地、それらの組み合わせ、及び/又はそれら多孔性の誘導体などの合成材料で作られているか、又はそれを含んでいてもよい。閉塞袋38は、ECM又は粘膜下組織材料、及び/又はその組み合わせ、及びそれらの誘導体などの吸収可能剤を含む天然材料で作られていてもよい。
【0036】
閉塞袋38の少なくとも1つの表面は、本発明の少なくとも1つのポリマー材料18で被覆されているのが望ましい。従って、ポリマー材料18は、天然又は合成材料で作られている閉塞袋38に被覆されてもよい。代わりに、閉塞袋38が、ポリマー材料18で作られているか、又は実質的にそれを含んでいてもよい。
【0037】
閉塞袋38は、1つ又は複数の空間充填構造要素又は空間充填材料を保持するのに適した、円形、球形、円筒形、楕円形などを含め、任意の形状にしてもよい。閉塞袋38には、閉塞袋38を拡張させて患者の血管を閉塞させるのに適した少なくとも1つの閉塞要素及び/又は空間充填材料が詰められている。閉塞袋38の寸法は、直径が約3から9mmの範囲にあるのが望ましい。しかしながら、閉塞袋38の寸法は、閉塞させる血管30の寸法次第で、大きくても小さくてもよい。
【0038】
閉塞袋を拡張させるのに用いられる空間充填材料は、ECM又は粘膜下組織材料及び/又はそれらの組み合わせと誘導体を含む吸収可能剤を含め、天然材料を含んでいるのが望ましい。空間充填材料として用いられる代表的な吸収可能剤には、限定するわけではないが、タイプIからタイプXIVのコラーゲン、粘膜下組織、フィブリノゲン、ビトロネクチン、それらの組み合わせ及び/又はそれらの誘導体が含まれる。
【0039】
空間充填構造要素14として用いられる塞栓コイル又はワイヤは、当該技術では既知であり、プラチナ、ステンレス鋼、金を含有する様々な金属又は合金材料や、ニチノール及びインコネルの様なニッケルベースの合金で作ってもよいし、当該技術では既知の他の形状記憶材料も含まれる。代表的なコイルは、例えば、米国特許第5,122,132号(Guglielmi他)と米国特許第5,334,210号(Gianturco)に開示されている。コイル又はワイヤは、血管の拡張と閉塞に整合する所望の形状を取るように、ヒートセットさせてもよいし、事前に成形してもよい。塞栓コイルは、取り外し可能に送出することができるように設計されているのが望ましい。
【0040】
空間充填構造要素14の直径と長さは、閉塞させる血管の性質と寸法次第でサイズが異なってもよい。例えば、コイルの長さは約2cmから20cmであり、コイルの直径は約2mmから16mmであってもよい。閉塞袋38は、1つ又は複数の空間充填構造要素14が、例えば1つ又は複数のコイルの形状で詰められている。コイルは、1つ又は複数の螺旋形ループを備えており、少なくとも3から5個のループであるのが望ましく、一本のワイヤ、又は数本のワイヤのケーブル又は組ひも構造で形成される。空間充填要素14の寸法は、約3mmから9mmであってもよい。しかしながら、空間充填構造要素14の寸法は、閉塞させる血管30の寸法次第で、大きくても小さくてもよい。
【0041】
血管閉塞装置の少なくとも1つの表面には、ポリマー材料18が含まれている。1つ又は複数のポリマー材料18は、血管閉塞装置の外側表面の一部分又は全てを覆っていても被覆していてもよい。ポリマー材料18は、バイオ活性剤及び/又は吸収可能剤の放出を支援する任意の多孔性ポリマーシート又は被覆を含んでいてもよい。ポリマー材料18は、空間充填構造要素14、空間充填材料、閉塞袋38、又はそれらの組み合わせを含め、任意の閉鎖要素に含まれていてもよいし被覆されていてもよい。血管閉塞装置の何れの部分も、ポリマー材料18で作ってもよいし、ポリマー材料18を含むように作ってもよい。
【0042】
ポリマー材料18は、複数の穴26が設けられている生体適合性ポリマーシート又は被覆を含んでいる。どの様なポリマーでも、最終的な多孔性材料が生体適合性であれば、多孔性の材料に形成して血管閉塞装置内に組み込んで(又はそれに被覆して)もよい。「生体適合性」という用語は、使用しようとする生体内環境で実質的に無毒な材料を指し、患者の生理学系によって実質的に拒絶されない(即ち、非抗原性)材料のことである。これは、国際標準化機構(ISO)の標準第10993及び/又は米国薬局方(USP)23及び/又は米国食品医薬品局(FDA)の調査報告書の覚書第G95−1「国際標準ISO−10993の使用、医療装置の生物学的評価パート1、評価と試験」に記載されている生体適合性試験に合格している材料の機能によって測定される。通常、これらの試験は、材料の毒性、感染力、発熱性、刺激の可能性、反応性、溶血作用、発ガン性、及び/又は免疫性を測定する。生体適合性構造又は材料は、大多数の患者に導入しても、深刻な悪性の長期又は段階的な生物学的反応又は作用を生じることなく、通常、手術又は生体組織に異物を移植することに伴って生じる軽い一時的な炎症とは区別される。
【0043】
ポリマー材料18は、限定するわけではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリラクチド、ポリグリコライド、及びそれらのコポリマーなどのポリエステルと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE、及びポリ(フッ化ビニリデン)などのフッ化ポリマーと、ポリジメチルシロキサンを含むポリシロキサンと、ポリエーテルウレタン、ポリウレタンウレア、ポリエーテルウレタンウレア、炭酸結合を含有するポリウレタン、及びシロキサンセグメントを含有するポリウレタンを含むポリウレタンと、を含む天然又は合成材料を含んでいる。更に、本来生体適合性でない材料を生体適合性とするために、表面修飾(surface modification)を施してもよい。表面修飾の例には、材料の表面から生体適合性ポリマーをグラフト重合すること、表面を架橋結合生体適合性ポリマーで被覆すること、生体適合性官能基で化学的に修飾すること、及びヘパリン又は他の物質などの相溶化剤を固定化することが含まれる。
【0044】
多孔性シート又は被覆に形成することのできるポリマーには、先に挙げたポリエステル、フッ化ポリマー、ポリシロキサン、及びポリウレタンに加えて、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリアラミド、及びポリスルホンが含まれる。ポリマー材料18は、生体適合性とするための処理又は修飾を必要としない1つ又は複数のポリマーで作られた多孔性シート又はポリマー被覆を含んでいるのが望ましい。更に、多孔性シート又はポリマー被覆は、生体適合性ポリウレタンを含んでいるのが望ましい。生体適合性ポリウレタンの例には、THORALON(カリフォルニア州プレザントン、THORATEC社)、BIOSPAN、BIONATE、ELASTHANE、PURSIL、及びCARBOSIL(カリフォルニア州バークレイ、POLYMER TECHNOLOGY GROUP社)が含まれる。
【0045】
或る好適な実施形態では、多孔性ポリマー材料18は、米国特許第4,675,361号及び第6,939,377号に記載されているTHORALONなどの生体適合性ポリウレタンを含んでいるか、実質的に含んでおり、両特許を参考文献としてここに援用する。THORALONは、表面修飾剤が入ったシロキサン(SMA−300)と混ぜ合わせたポリウレタンウレアベースのポリマー(BPS−215)である。表面修飾剤の濃度は、ベースのポリマーの重量の0.5%から5%の範囲にあってもよい。
【0046】
SMA−300の構成要素(THORATEC)は、ソフトセグメントとしてのポリジメチルシロキサンと、ハードセグメントとしてのジフェニールメタンジイソシアネート(MDI)と1、4ブタンジオールの反応生成物とを含有するポリウレタンである。SMA300を合成する工程については、例えば、米国特許第4,861,830号と第4,675,361号に記載されており、両特許を参考文献としてここに援用する。
【0047】
BPS−215の構成要素(THORATEC)は、ソフトセグメントとハードセグメントを含有するセグメント化されたポリエーテルウレタンウレアである。ソフトセグメントは、ポリテトラメチレン酸化物(PTMO)から作られ、ハードセグメントは、4、4’−ジフェニールメタンジイソシアネート(MDI)とエチレンジアミン(ED)の反応から作られる。
【0048】
THORALONは、特定の血管用途に用いられており、血栓抵抗性、高い引張強度、低い吸水性、低い臨界表面張力、及び良好な屈曲寿命を特徴としている。THORALONは、生体安定性があり(biostable)、生体安定性と漏れ抵抗性を必要とし、長期にわたって生体内で血液に接触する用途に役立つと考えられている。THORALONは可撓性があるので、腹大動脈などの弾性と適応性が有用とされる大血管で役に立つ。
【0049】
THORALONは、処理によって、多孔性又は無孔性THORALONのどちらでも提供することができる。多孔性THORALONは、ポリエーテルウレタンウレア(BPS−215)、表面修飾剤(SMA−300)、及び粒子物質を溶剤内で混ぜ合わせることによって形成される。粒子は、無機塩を含め任意種々の異なる粒子でも孔形成剤でもよい。粒子は、溶剤に溶解しないのが望ましい。溶剤の例には、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、又はそれらの混合物が含まれる。組成物は、約5wt%から約40wt%のポリマーを含有していてもよく、その範囲内の異なるレベルのポリマーを、所与の処理に必要な粘度を微調整するのに用いることができる。スプレー用途の実施形態では、組成物は、約5wt%未満のポリマーを含有していてもよい。粒子は、組成物に混ぜ合わせてもよい。例えば、混合は、回転ブレードミキサーを使って、約1時間、大気圧の下で、約18℃から約27℃の温度範囲で行われる。組成物全体は、シートとして鋳造するか、マンドレル又はモールド型などの物品上に被覆することができる。1つの例では、組成物を乾燥させて溶剤を取り除いた後、乾燥材料を蒸留水に浸すと、粒子が溶けて材料に孔が残る。別の例では、組成物を蒸留水の浴槽で凝結させてもよい。ポリマーは、水溶性ではないので迅速に固まり、粒子の一部又は全てを閉じ込める。粒子はポリマーから溶け出し、材料に孔が残る。抽出するには、約60℃の温水を使用するのが望ましい。でき上がった空隙対体積比は、塩の体積対ポリマー+塩の体積比と実質的に等しくてもよい。でき上がった孔の直径も、塩の粒の直径と実質的に等しくてもよい。
【0050】
多孔性のポリマーシートは、空隙対体積比が約0.40から約0.90であってもよく、約0.65から約0.80であるのが望ましい。結果としての空隙対体積比は、塩の体積対ポリマー+塩の体積比と実質的に等しくてもよい。空隙対体積比は、孔の体積を、孔の体積を含むポリマー層の全体積で除したものと定義されている。空隙対体積比は、「AAMI(医療機器開発協会)VP20−1994、心臓血管インプラント 血管プロテーゼ セクション8.2.1.2、多孔性を重力測定により判定するための方法」に記載されているプロトコルを使って測定される。ポリマーの平均的な孔の直径は、約1ミクロンから約400ミクロンであってもよい。平均的な孔の直径は、約1ミクロンから約100ミクロンであるのが望ましく、約1ミクロンから約10ミクロンであれば更に望ましい。平均的な孔の直径は、走査電子顕微鏡(SEM)の画像に基づいて測定される。多孔性のTHORALONの形成については、例えば、米国特許第6,752,826号と第2003/014971A1号に記載されており、それらの両方を、参考文献としてここに援用する。
【0051】
様々な他の生物適合性ポリウレタンを、ポリマー材料18に採用することができる。これらは、望ましくはジイソシアネートとジアミンから形成されるソフトセグメントとハードセグメントを含んでいるポリウレタンウレアを含んでいる。例えば、ポリテトラメチレン酸化物(PTMO)、ポリエチレン酸化物、ポリプロピレン酸化物、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリシロキサン(即ち、ポリジメチルシロキサン)などのソフトセグメントと、ジオールの高い方の同族列から作られる他のポリエーテルソフトセグメントを備えたポリウレタンウレアを使用してもよい。セグメントを、コポリマー又はブレンドとして組み合わせることもできる。ソフトセグメントの混合物を使用してもよい。ソフトセグメントは、更に、アルコール末端基又はアミン末端基のどちらかを有していてもよい。ソフトセグメントの分子重量は、約500から約5,000g/モルと変化してもよい。
【0052】
ジイソシアネートは、式OCN−R−NCOで表され、ここに−R−は、脂肪族、芳香族、脂環式、又は、脂肪族と芳香族部分の混合物である。ジイソシアネートの例には、MDI、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4’ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、デカメチレン1、10ジイソシアネート、シクロヘキシレン1、2ジイソシアネート、2−4トルエンジイソシアネート、2−6トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ヘキサハイドロトリレンジイソシアネート(及びイソマー)、ナフチレン−1、5−ジイソシアネート、1−メソキシフェニル2、4−ジイソシアネート、4、4’−ビフェニレンジイソシアネート、3、3’−ジメトキシ−4、4’−ビフェニールジイソシアネート、及びそれらの混合物が含まれる。
【0053】
ハードセグメントの構成要素として用いられるジアミンは、脂肪族アミン、芳香族アミン、及び脂肪族と芳香族の両方の部分が入っているアミンを含んでいる。例えば、ジアミンは、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンアミン、ヘキサンジアミン、ペンタンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、mキシレンジアミン、1、4−シクロヘキサンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、4,4’−メチレンジアミン、及びそれらの混合物を含んでいる。アミンは、構造内に、酸素及び/又はハロゲン原子を含んでいてもよい。
【0054】
ハードセグメントは、1つ又は複数のポリオールで形成されている。ポリオールは、脂肪族、芳香族、脂環式であってもよいし、脂肪族と芳香族の部分の混合物が入っていてもよい。例えば、ポリオールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、プロピレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、グリセリン、又はそれらの混合物であってもよい。
【0055】
陽イオン、陰イオン、及び脂肪族の側鎖によって修飾された生体適合性ポリウレタンを使用してもよい。例えば、米国特許第5,017,664号を参照されたい。
【0056】
他の生体適合性合成ポリウレタンは、BIOSPANなどのセグメントのポリウレタンと、BIONATEなどのポリカーボネートウレタンと、ELASTHANEなどのポリエーテルウレタンを含んでいる(全て、カリフォルニア州バークレイのPOLYMER TECHNOLOGY GROUP社から入手できる)。
【0057】
他の生体適合性ポリウレタンには、シロキサンポリウレタンとも呼ばれるシロキサンセグメントを有するポリウレタンが含まれる。シロキサンセグメントが入っているポリウレタンの例には、ポリエーテルシロキサンポリウレタン、ポリカーボネートシロキサンポリウレタン、及びシロキサンポリウレタンウレアが含まれる。具体的には、シロキサンポリウレタンの例には、ELAST−EON2とELAST−EON3などのポリマー(オーストラリア、ビクトリアのAORTECH BIOMATERIALS社)と、PURSIL−10、−20、及び−40 TSPUなどの、ポリテトラメチレンオキサイド(PTMO)及びポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリエーテルベースの芳香族シロキサンポリウレタンと、PURSIL AL−5及びAL−10 TSPUなどのPTMO及びPDMSポリエーテルベースの脂肪族シロキサンポリウレタンと、CARBOSIL−10、−20、及び−40 TSPU(全て、POLYMER TECHNOLOGY GROUP社から入手できる)などの、脂肪族ヒドロキシ末端のポリカーボネート及びPDMSポリカーボネートベースのシロキサンポリウレタンと、が含まれる。PURSIL、PURSIL−AL、及びCARBOSILポリマーは、ソフトセグメント内にシロキサンを含有する熱可塑性エラストマーウレタンコポリマーであり、コポリマー内のシロキサン率は、等級名の中に引用されている。例えば、PURSIL−10には、10%のシロキサンを含有する。これらのポリマーは、マルチステップバルク合成を通して合成され、PDMSは、PTMO(PURSIL)又は脂肪族ヒドロキシ末端ポリカーボネート(CARBOSIL)と共にポリマーのソフトセグメントに組み込まれる。ハードセグメントは、芳香族ジイソシアネート、MDIと、低分子量のグリコール連鎖延長剤との反応生成物から成っている。PURSIL−ALの場合、ハードセグメントは、脂肪族ジイソシアネートから合成される。ポリマー連鎖は、次に、シロキサン又は他の表面修飾末端基によって終結する。シロキサンポリウレタンは、通常、比較的低いガラス遷移温度を有しており、多くの従来の材料に比べて、可撓性が高いポリマー材料を提供する。更に、シロキサンポリウレタンは、環境応力亀裂に対する耐性が改良されていることを含め、高い加水分解生及び酸化安定性を呈する。シロキサンポリウレタンの例は、米国特許出願発行物第2002/0187288A1号に開示されており、同出願を、参考文献としてここに援用する。
【0058】
生体適合性ポリウレタンは、例えば、ポリジメチルシロキサン、フッ化ポリマー、ポリオレフィン、ポリエチレン酸化物、又は他の適した基などの表面活性末端基によってエンドキャップが被せられていてもよい。例えば、米国特許第5,589,563号に開示されている表面活性末端基を参照されたく、同特許を参考文献としてここに援用する。
【0059】
多孔性ポリマーシート又はポリマー被覆には、ポリテトラフルオロエチレン又は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)が含有されていてもよい。ePTFEのフィルム又はシートは、通常多孔性で、更に処理する必要は無い。ePTFEの構造は、小繊維で接合しているノードを含有していることが特徴である。多孔性のePTFEは、例えば、PTFEを有機潤滑剤と混ぜ合わせ、それを比較的低い圧力の下で、圧縮することによって形成される。圧縮されたポリマーは、ラム式の押出機を使って、ダイを通して押出成形され、乾燥又は他の抽出法によって、押し出されたポリマーから潤滑剤が除去される。乾燥させた材料は、次に、高温で迅速に伸張及び/又は延伸させられる。この処理は、小繊維によって相互接合した細長いノードを特徴とするマイクロ構造を有するePTFEを提供することが可能である。通常、ノードは、その細長い軸が延伸方向に垂直に向いている。延伸後、多孔性ポリマーは、材料を延伸状態に維持しながら、結晶融点を越える温度に加熱することによって焼結される。これは、マイクロ構造を、その延伸又は伸張形態に恒久的に設定するためのアモルファスロック処理と考えられる。ePTFEの構造及び多孔性については、例えば、米国特許第6,547,815B2号、第5,980,799号、及び第3,953,566号に開示されており、それら全てを参考文献としてここに援用する。多孔性の中空繊維構造は、PTFEから形成されてもよく、これらの多孔性の中空繊維と組み合わせて、凝集質の多孔性シート又はポリマー被覆を提供することができる。PTFEを含有する多孔性の中空繊維については、例えば、米国特許第5,024,671号に開示されており、同特許を参考文献としてここに援用する。
【0060】
ポリマーは、鋳造、噴射、及び浸漬などの溶剤ベースの処理と融解押出処理とを含む標準的な処理方法を使って、多孔性シート又は被覆に処理してもよい。抽出可能な孔又は穴形成剤を、多孔性シート又は被覆を作成する処理の間に用いてもよい。抽出可能な孔又は穴形成剤の例には、塩化カリウム(KCl)及び塩化ナトリウム(NaCl)などの無機塩と、有機塩と、ポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリビニルピロリドン(PVP)などのポリマーとが含まれる。穴形成剤は、約10μmから約500μm、約20μmから約100μm、及び約10μmから約40μmの粒子寸法を有していてもよい。ポリマーに対する穴形成剤の量は、約20重量パーセント(wt%)から約90wt%および約40wt%から約70wt%であってもよい。これらの穴形成剤の寸法と量は、穴形成剤が抽出された後、高度な多孔性を提供することができる。多孔性は、最終生成物の約20wt%から約90wt%および約40wt%から約70wt%であってもよい。
【0061】
多孔性シート又は被覆は、穴が実質的に相互接合したミクロ多孔性のオープンセル構造の形態であってもよい。ミクロ多孔性構造は、ポリマーと1つ又は複数の発泡剤の混合物を押し出すことによって形成してもよい。ミクロセル状ポリマーの泡は、高温高圧の下でポリマーを超臨界CO2に曝して飽和させ、次いでポリマーを冷却することによって作られる。ミクロセル状の泡は、例えば、米国特許第4,473,665号と第5,160,674号に記載されているように作られ、両特許を参考文献としてここに援用する。発泡処理は、押し出されたポリマーチューブに対し、先ず、圧力を掛けて窒素又はCO2などの不活性ガスをポリマー内に溶解させ、圧力又は温度を変えて熱力学的な不安定性を誘導し、ポリマー内でのガスの溶解度を急激に下げることによってミクロ空隙を形成することによって施される。ミクロ多孔性ポリマー構造の例は、例えば、米国特許第6,702,849B1号に開示されており、同特許を参考文献としてここに援用する。
【0062】
ポリマー材料18は、浸漬被覆、噴射被覆、塗布、蒸着など、当該技術で知られている任意の手段で血管閉塞装置の表面上に多孔性シート又はポリマー被覆として塗布してもよい。表面は、金属、金属合金、繊維材料、又は布でもよい。血管閉塞装置上のポリマー被覆は、第1ポリマー溶液と、好適な溶剤中の塩などの粒子とから作ってもよい。ポリマー被覆は、如何なる粒子ポリマー、塩、又は溶剤にも限定されない。第1ポリマー溶液は、1つ又は種々異なるポリマーを種々異なる溶剤に溶かしたものであってもよい。更に、種々異なる粒子又は穴形成剤を、先に述べた様に用いてもよい。当業者には自明の様に、ポリマー溶液、溶剤、及び粒子の正確な量は、使用する具体的な成分によって変わる。粒子は、基質内への所望の浸透レベルを実現するのに必要であると判断された量が加えられる。
【0063】
ポリマーシート又は被覆を血管閉塞装置の表面に塗布した後、被覆された血管閉塞装置を水又は他の適した溶剤の中に浸し、ポリマー溶液からポリマーを沈殿させ、存在している塩とポリマーの量に基づいて、穴を所望の寸法に従って形成することができる。代わりに、血管閉塞装置は、1つ又は複数の、それぞれ組成及び/又は化学的及び物理的特性が異なっている被覆を含有していてもよい。下に配置されている被覆をオーブンで乾燥させた後、被覆を追加してもよい。血管閉塞装置は、ポリマーシート又は被覆で部分的に、実質的に、又は完全に覆われていてもよい。
【0064】
ポリマー材料18は、布地材料を含んでいてもよい。布地は、繊維を含んでおり、織布(編んだものを含む)と不織布を含む多くの形態を取ることができる。布地の繊維は、合成ポリマーを備えているのが望ましい。好適な布地は、ポリエチレンテレフタレートとPTFEから形成されたものを含んでいる。これらの材料は、安価であり、扱い易く、良好な物理的特性を有しており、臨床用途に適している。
【0065】
布地を形成することのできる生体適合性材料の例には、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステルと、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び延伸PTFEの繊維などのフッ化ポリマーと、ポリウレタンが含まれる。更に、もともと生体適合性でない材料を生体適合性にするために表面修飾を施してもよい。表面修飾の例には、材料表面からの生体適合性ポリマーのグラフト重合と、架橋生体適合性ポリマーによる表面の被覆と、生体適合性官能基による化学的修飾と、ヘパリン又は他の物質などの相溶化剤の固定化とが含まれる。従って、最終的な布地が生体適合性であれば、どの様な繊維材料を用いて布地を形成してもよい。布地を作るのに適した繊維に形成することのできるポリマー材料には、上記のポリエステル、フッ化ポリマー、及びポリウレタンに加えて、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ナイロン、及びセルロースが含まれる。布地は、生体適合性にする処理又は修飾を必要としない1つ又は複数のポリマーで作られるのが望ましい。布地は、生体適合性ポリエステルで作られるのが更に望ましい。生体適合性ポリエステルの例には、DACRON(デラウェア州ウィルミントンのDUPONT社)とTWILLWEAVE MICREL(スコットランド、レンフルーシャのVASCUTEK社)が含まれる。
【0066】
布地材料は、(編みを含む)織布でもよいし、不織布でもよい。不織布は、個別の繊維又はフィラメントが接着で一体に保持されている繊維織物である。接着は、熱又は化学処理、又は繊維又はフィラメントを機械的に絡ませることによって実現される。不織布の場合は織り又は編みを施されないので、繊維はヤーン構造に変えられることなく天然の形態で用いられる。織布は、編み又は織りによって形成された繊維織物である。織布構造は、例えば、平織り、ヘリンボン織り、サテン織り、又はバスケット織りを含む任意の種類の織りでもよい。
【0067】
織布は、任意所望の形状、寸法、形状、及び構成を有していてもよい。例えば、織布の繊維は、詰まっていても、詰まっていなくてもよい。基本的に詰まっていない繊維がどの様に製造され、購入されるかは、Tolliverの米国特許第3,772,137号に示されており、その開示を参考文献としてここに援用する。そこに説明されているのと同様の繊維は、DuPont社によってポリエチレンテレフタレート(DuPont社製はしばしば「DACRON」として知られている)から、そして他の会社によって様々な物質から製造されている。特定の物理的なパラメータを使用して、ポリマー材料18に使用される布地繊維を特徴付けてもよい。繊維は、少なくとも約20,000psiの引張強度と、少なくとも約2x106psiの引張弾性率を有している。布地は、医療等級の合成ポリマー材料で作られるのが望ましい。布地の繊維はまた、高度の軸方向性を有していてもよい。繊維の直径は、約1ミクロンから約5ミリメートルであってもよい。布地のデニールは、フィラメント当たり0.5デニールから5デニールであってもよい。布地の繊維間の隙間は、最大隙間間隔が、約1ミクロンから約400ミクロンであるのが望ましい。布地の繊維間の隙間は、最大間隔が、約1ミクロンから約100ミクロンであれば、更に望ましい。布地の繊維間の隙間は、最大間隔が、約1ミクロンから約10ミクロンであるのが最も望ましい。
【0068】
本発明のポリマー材料18は、2005年3月30日出願の同時係属中の米国非仮特許出願第11/093,759号に記載されている、任意の多孔性ポリマー、被覆、布地、又はそれらの組み合わせを含んでいてもよく、同特許開示を、参考文献としてここに援用する。
【0069】
多孔性ポリマー材料18には、少なくとも1つのバイオ活性剤が染み込ませてあってもよい。バイオ活性剤は、ポリマー材料18の穴26に組み込まれ、及び/又は、例えば化学的架橋剤又は当業者に従来から利用可能な他の手段を使って、ポリマーの背骨に化学的に接合させてもよい。バイオ活性剤の性質は、生化学的、有機、無機、又は合成でもよい。バイオ活性剤は、血栓形成性、線維形成誘導性、血管形成性、抗血栓溶解性、抗線維素溶解性、線維素安定性、外傷治療性、繊維芽細胞促進性、血管新生促進性、細胞及び/又は組織接着促進性、細胞外基質促進性などであるのが望ましい。バイオ活性剤は、プロテイン、ペプチド、成長因子、ペプチド擬態、有機分子、合成分子、薬剤、又は合成ポリマーなどでもよい。バイオ活性剤は、血栓形成、線維形成、血管閉塞装置内又はその周りの結合組織(例えば、コラーゲンなど)の堆積、及び/又は結合組織への血管閉塞装置の強固な係留を加速又は支援するのが望ましい。
【0070】
バイオ活性剤が埋め込まれているポリマー材料18に関連して、バイオ活性剤は、ポリマー材料18内に、約0.005%w/wから50%w/w、約0.05%w/wから10%w/w、約0.1%w/wから2%w/w、約0.25%w/wから1%w/w、及びそれらの範囲の組み合わせで存在してもよい。
【0071】
限定するわけではないが、代表的な生物学的バイオ活性剤には、限定するわけではないがプラスミン、トロンビン、プロトロンビン、フィブリノゲン、因子V、因子Va、因子VII、因子VIIa、因子VIII、因子VIIIa、因子IX、因子IXa、因子X、因子Xa、因子XI、因子XIa、因子XII、因子XIIa、因子XIII、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)、他の凝固カスケード因子、及びそれらからの誘導体(例えば、天然、合成、組み替え体など)を含む凝固因子と、限定するわけではないがアミノカプロン酸、アプロチニン、トラネキサム酸、desopressin、エタンシラートを含む抗線維素溶解剤と、インテグリンと、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)残基を含有するペプチドと、限定するわけではないが、コラーゲン(タイプI−XIV)、エラスティン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチンを含む細胞接着因子と、ホモシステインと、限定するわけではないが結合組織成長因子(CTGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、形質転換成長因子アルファ(TGF−α)、形質転換成長因子ベータ(TGF−β)を含む成長因子と、上記化学的又は生物学的特性を有するサイトカイン、インターロイキン(例えば、IL−1、−2、−6、−8など)、ケモカインと、が含まれる。ポリマー材料18は、1つのバイオ活性剤又は複数のバイオ活性剤を、例えばカクテル形態で、保持していてもよい。
【0072】
吸収可能剤34は、細胞外基質の堆積とバイオリモデリングを促進して血管閉塞装置を患者の血管部位内に安定化及び/又は固定化するために、血管閉塞装置の何れの部分に含まれていてもよい。例えば、それらを、ポリマー材料18の穴26に組み込んでもよいし、ポリマー材料18又は何れの空間充填構造要素表面上に配置してもよい。代わりに、吸収可能剤34は、閉塞袋38を拡張させるのに用いられる空間充填材料の一部又は全部であってもよいし、及び/又は、閉塞袋38を作る原料の中に含まれていてもよい。
【0073】
バイオリモデリング可能細胞外基質(ECM)材料などの吸収可能剤34を有する血管閉塞装置は、血管をより閉塞することができるとともに、ECM堆積と、リモデルと、例えば、細胞浸潤、宿主取込み、及び細胞外基質材料の吸収などを含む周囲組織の成長などを提供することによって、患者の血管部位に血管閉塞装置を安定化及び/又は固定化させる補助をすることが可能である。このように、吸収可能剤34は、血管閉塞装置と患者本人の組織を少なくとも部分的に置き換えることによって、体内で血管閉塞装置が安定吸収されることを促進する。
【0074】
組織のリモデリングを誘発する能力は、ネイティブ細胞が無細胞マトリックスに浸潤するのを刺激するための吸収可能剤34内の1つ又は複数のバイオ活性剤(例えば、成長因子など)が、マトリックス内へと成長してゆく新血管形成(毛細血管)を刺激して、浸潤細胞に栄養を与える(血管新生)、及び/又は、内在細胞によってバイオリモデリング可能材料を分解及び/又は置換させる、などによる、といえるかもしれない。バイオリモデリングに付帯する一般的なイベントには、肉芽間充織細胞の増殖、精製され移植された腸粘膜下組織材料のバイオ分解/吸収、及び免疫拒絶がないこと、などがさらに含まれてもよい。
【0075】
本発明で用いられている粘膜下組織材料又は他のECM材料は、血管形成特性も示すので、材料が移植される宿主内に血管形成を誘発するには効果的である。この点で、血管形成は、身体が新しい血管を作り、組織への血液供給を増加させる過程である。従って、血管形成材料は、宿主組織と接触すると、新しい血管の浸潤を促進又は助長する。生物材料の移植に反応する体内の血管形成を測定するための方法は、最近開発されている。例えば、その1つの方法は、皮下移植モデルを使用して、材料の血管形成特性を判定する。C.Heeschen他による「Nature Medicine
7(2001年)第7号」(833−839頁)を参照されたい。このモデルは、蛍光ミクロ血管造影技法と組み合わせると、生体材料への血管形成の量的測定及び質的測定を提供することができる。C.Johnsonらによる「Circulation Research 94(2004)第2号」(262−268頁)。
【0076】
代表的な吸収可能剤34には、限定するわけではないが、ECM材料、粘膜下組織、タイプIからタイプXIVのコラーゲン、フィブリノゲン、ビトロネクチン、及びそれらの組み合わせ及び/又は誘導体が含まれる。好適な実施形態では、吸収可能剤34は、組織構造を有する天然コラーゲン又は精製コラーゲンを含有するECM材料を含んでいる。
【0077】
吸収可能剤34は、残余(residual)バイオ活性プロテイン又は材料の組織源固有もしくは由来の他のECM構成要素を含有していてもよい。粘膜下組織又はECM材料は、線維芽細胞成長因子2(FGF−2)、血管内皮成長因子(VEGF)、形質転換成長因子ベータ(TGF−ベータ)、上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、及び/又はそれらのイソ形態又は変種などの、1つ又は複数の成長因子を含んでいてもよい。本発明のECMベース材料には、例えば、1つ又は複数の高度保存されているコラーゲン、成長因子、グリコプロテイン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、他の成長因子を含む追加のバイオ活性構成要素と、ヘパリン、ヘパリン硫酸(heparin sulfate)、ヒアルロン酸、フィブロネクチンなど他の生物材料とが入っていることも予測される。従って、一般的には、粘膜下組織材料又は他のECM材料は、細胞形態学、増殖、成長、プロテイン及び/又は遺伝子発現の変化に反映されるようなバイオリモデリング反応を直接又は間接的に誘発することができるバイオ活性剤を含んでいてもよい。ECM材料のバイオ活性剤は、天然の構成および濃度で含有されていてもよい。
【0078】
吸収可能なバイオリモデリング可能ECM材料は、高度保存されているコラーゲン、グリコプロテイン、プロテオグリカン、及びグリコサミノグリカンを天然の構成および濃度で含有している。ECM材料は、温血脊椎動物の消化器官、呼吸器官、腸管、泌尿器官、又は生殖器官などの管を含む組織から分離してもよい。ECM材料は、粘膜下組織、腎被膜、皮膚コラーゲン、硬膜、心膜、大腿筋膜、漿膜、腹膜、又は肝臓基底膜を含む基底膜層を含んでいてもよい。
【0079】
本発明の粘膜下組織材料又は他のECM材料は、任意適当な器官又は通常は結合組織が含有される他の組織源から抽出することもできる。本発明で使用するために処理されたECM材料は、通常、豊富なコラーゲンを含んでおり、乾燥重量ベースで、少なくとも約80重量%がコラーゲンで構成されているのが最も一般的である。その様な天然由来のECM材料は、大部分が作為的に非ランダム配置(non−randomly oriented)されたコラーゲン繊維を含んでおり、例えば、一般的には単軸方向又は多軸方向に向いているが規則的に配置させた繊維である。ECM材料は、天然のバイオ活性因子を保持するように処理されれば、これらの因子を、コラーゲン繊維の間、上、及び/又は中に点在する固体として保持することができる。本発明に使用するのに特に望ましい天然由来のECM材料は、その様な点在する非コラーゲン固体を相当量含んでおり、非コラーゲン固体は、特殊な染色を使った光学顕微鏡検査によって容易に確認される。その様な非コラーゲン固体は、本発明の特定の実施形態においてECM材料の乾燥重量の相当な割合を構成していてもよく、本発明の様々な実施形態では、例えば、少なくとも約1重量%、少なくとも約3重量%、及び少なくとも約5重量%である。
【0080】
好適なECM材料は、腸の粘膜下組織、特に小腸の粘膜下組織(SIS)である。腸の粘膜下組織(SISを含む)の調製については、米国特許第6,206,931号と第6,358,284号で説明され請求されており、その開示全体を参考文献としてここに援用する。本発明による好適な腸の粘膜下層組織源は、ブタのSISである。膀胱の粘膜下組織とその調製については、米国特許第5,554,389号に記載されており、その開示全体を参考文献としてここに援用する。胃の粘膜下組織とその調製については、米国特許第6,099,567号に記載されており、その開示全体を参考文献としてここに援用する。
【0081】
ECM又は粘膜下組織材料は、米国特許第6,206,931号及び第6,358,284号に記載され請求されているような滅菌済みの粘膜下組織の表層剥離を含む処理によって殺菌され、精製される。代わりに、ECM材料又は粘膜下組織材料は、米国特許第5,993,844号と第6,572,650号に記載されているように、表層剥離の後で殺菌段階を行う処理によって調製してもよい。
【0082】
本発明で用いられる粘膜下組織又は他のECM組織は、Cookらへの米国特許第6,206,931号に記載されている様に、高度に精製されているのが望ましい。而して、好適なECM材料は、グラム当たり約12内毒素単位(EU)未満の内毒素レベルを示し、グラム当たり約5EU未満であれば更に望ましく、グラム当たり約1EU未満であるのが最も望ましい。更には、粘膜下組織材料又は他のECM材料は、グラム当たり約1コロニー形成単位(CFU)未満の生物汚染度を有するのが望ましく、グラム当たり約0.5CFU未満であれば更に望ましい。同様に、真菌レベルは、例えばグラム当たり約1CFU未満と低いのが望ましく、グラム当たり約0.5CFU未満であれば更に望ましい。核酸レベルは、約5μg/mg未満であるのが望ましく、約2μg/mg未満であれば更に望ましく、ウイルスレベルは、グラム当たり約50プラーク形成単位(PFU)未満であるのが望ましく、グラム当たり約5PFU未満であれば更に望ましい。米国特許第6,206,931号で教示されている粘膜下組織又は他のECM組織の以上及び追加の特性は、本発明に用いられる粘膜下層組織の特徴である。
【0083】
ECM材料又は粘膜下組織は精製され、シート、チャンク、又は代わりに流体又は粉末形態に処理されてもよい。流体又は粉末形態のECM/粘膜下組織材料は、米国特許第6,206,931号又は第5,275,826号に記載の技法を使って調製され、両特許の開示全体を参考文献としてここに援用する。本発明により使用する流体状の粘膜下組織組成物の粘度は、粘膜下組織構成要素の濃度と水和の度合いを制御することによって操作される。粘度は、25℃下で約2から約300、000cpsの範囲に調節される。ゲルなどの高粘度の製剤は、粘膜下組織消化溶液(submucosa digest solutions)から、そのような消化液のpHを約6.0から約7.0に調節することによって調製される。
【0084】
ECM材料又は粘膜下組織材料は、例えば、米国特許第6,206,931号及び第6,358,284号に記載されている教示に従って、例えば脱水状況で圧縮された粘膜下組織の複数の部片、層、又は条片を一体に延伸させるか、又は重ね合わせることによって最適に構成することができる。第931号及び第284号特許に開示されている様に、多重ラミネート組成物は、部片を一体に積層する方法次第で、異なる等方性特性を有するように作られる。
【0085】
ECM材料又は粘膜下組織材料は、主要なバイオリモデリング剤になりうる。追加の非天然バイオ活性構成要素剤が、ECM材料又はポリマー材料18に含まれていてもよく、追加的又は相乗作用的な様式で、ECM材料と協働し、先に述べた様に、周囲の組織のリモデル及び/又は血管閉塞装置の係留を強化する。組換え技術又は他の方法によって合成的に作られる構成要素など非天然のバイオ活性構成要素は、粘膜下組織又は他のECM組織に組み込んでもよい。これらの非天然バイオ活性構成要素は、ECM組織内に自然に発生するプロテインに相当する天然由来又は組換えで作られるプロテインであるが、異種であってもよい(例えば、ブタなど他の動物からのコラーゲンECMに適用されるヒトのプロテイン)。非天然バイオ活性構成要素は、薬剤物質であってもよい。本発明で用いられるECM材料の中及び/又は上に組み込まれることができる例示的な薬剤物質には、例えば、抗生物質、又は、トロンビン、フィブリノゲンといった血液凝固因子などの血栓促進物質が含まれる。これらの物質は、ECM材料に、処方の直前に(例えば、材料を、セファゾリンなどの適した抗生物質が入っている溶液に浸すことによって)、又は材料を患者に移植している間又は移植した後に、製造前段階として適用してもよい。
【0086】
血栓形成繊維材料30は、血管閉塞装置の少なくとも1つの表面に組み込まれて塞栓/血栓形成を促進することができる。血栓形成繊維材料30は、合成及び/又は天然の血栓形成繊維材料を含んでいてもよい。代表的な血栓形成繊維材料には、限定するわけではないが、Dacron、綿、絹、羊毛、ポリエステル糸などが含まれる。血栓形成繊維材料30は、糸、網、又はニットであってもよい。血栓形成繊維材料30は、例えば、閉塞袋38、空間充填構造要素14、ポリマー材料18などを含め、血管閉塞装置の表面に物理的又は化学的に付着させられる。
【0087】
血管閉塞装置は、更に、血管造影による可視化を容易にするための放射線不透過性及び/又はMRI適合性マーカー材料を含んでいてもよい。放射線不透過性マーカー材料は、任意の態様の血管閉塞装置及び/又は多孔性ポリマー材料18に組み込むことができる。放射線不透過性マーカー材料は、血管閉塞装置のどの部分にでも物理的又は化学的に取り付けることができる。マーカー材料は、例えば、コイルなどの閉塞要素18の一部であってもよいし、その上又は中に外生的に組み込んでもよい。それらは、液体形態、粉末形態(例えば、硫酸バリウム)、又は閉塞装置を放射線不透過性にするのに適した任意の他の形態に組込み又は導入することができる。
【0088】
本発明の別の態様では、患者の血管を閉塞するための方法が提供されており、その方法では、本発明の血管閉塞装置は、患者の血管内に配置され、血管を閉塞し、及び/又は血栓形成を促進する。この方法は、本発明の血管閉塞装置を患者の血管の中に送り込むための手段を有するカテーテルアッセンブリを具備していてもよく、カテーテルアッセンブリは、血管閉塞装置を血管の中に配置して、血管を閉塞するのに用いられる。この実施形態では、カテーテルアッセンブリは、血管閉塞装置の係合を解除および放出して血管を閉塞するための手段を提供する。
【0089】
従来のカテーテルを、本発明による血管閉塞装置を位置決めし、送出するのに用いてもよい。血管閉塞装置は、例えば、米国特許第4,994,069号、第5,108,407号、第5,122,136号、第5,217,484号、第5,226,911号、第5,234,437号、第5,250,071号、第5,261,916号、及び第5,312,415号に記載されているものを含め、例えば塞栓コイルの送出に利用されるような種々の技法の何れかによって送出され、上記特許を参考文献としてここに援用する。例えば、血管閉塞装置の送出を容易にするために、血管閉塞装置の片方又は両方の端部にアンカー部材又はラッチ部材を具備するなど、血管閉塞装置の構造を既知の送出システムと適合するように調整又は変更しなければならないかもしれない。
【0090】
本発明の上記血管閉塞装置と方法は、本発明の原理の理解を助けるための代表的な実施形態に過ぎず、装置、アッセンブリ、又は方法には他の変更例が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって考案されうるものと理解されたい。本発明は、上記の特定の方法論、プロトコル、ポリマー材料、バイオ活性剤に限定されるのではなく、多様であってよいものと理解されたい。本発明の血管閉塞装置の他の用途は、当業者には明らかであろう。また、ここで用いている専門用語は、具体的な実施形態を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって制限されるものと理解されたい。従って、以上の詳細な説明は、限定を課すものではなく理解を助けるためのものであって、本発明の精神と範囲を定義するのは、全ての等価物を含めて、特許請求の範囲の内容であるものと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1A】多孔性のポリマー材料で被覆されている糸又はコイルを集めた形をした空間充填構造要素である血管閉塞装置を示している。
【図1B】多孔性のポリマー材料で被覆されている図1Aの空間充填部材の一部分の断面を示している。
【図2】複数の空間充填構造要素を取り囲む円形の閉塞袋を有している血管閉塞装置の断面図を示しており、閉塞袋は、多孔性のポリマー材料で被覆されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管閉塞装置において、
少なくとも1つのポリマー材料を備えている少なくとも1つの閉塞要素であって、前記少なくとも1つのポリマー材料は、少なくとも1つのバイオ活性剤が少なくとも部分的には詰められている複数の穴を有している、閉塞要素を備えており、
前記少なくとも1つのバイオ活性剤は、患者の血管の閉塞を促し、前記血管閉塞装置は、前記患者の血管を閉塞するように構成されている、血管閉塞装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの閉塞要素の少なくとも表面は、前記少なくとも1つのポリマー材料で被覆されている、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの閉塞要素の少なくとも一部分は、前記少なくとも1つのポリマー材料で作られている、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの閉塞要素は、実質的に、前記少なくとも1つのポリマー材料で作られている、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのバイオ活性剤は、血栓形成性、線維形成性、抗血栓溶解性、又は抗線維素溶解性の薬剤である、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項6】
少なくとも1つのバイオ活性剤は、プラスミン、トロンビン、プロトロンビン、フィブリノゲン、因子V、因子Va、因子VII、因子VIIa、因子VIII、因子VIIIa、因子IX、因子IXa、因子X、因子Xa、因子XI、因子XIa、因子XII、因子XIIa、因子XII、vWF、アミノカプロン酸、アプロチニン、トラネキサム酸、desopressin、エタンシラート、インテグリン、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸残基含有ペプチド、コラーゲン、エラスティン、フィブロネクチン、ラミニン、vitroneetin、ホモシステイン、CTGF、VEGF、PDGF、FGF、KGF、TNF、EGF、TGF−α、TGF−β、IL−1、IL−2、IL−6、及びIL−8から成るグループから選択される、請求項5に記載の血管閉塞装置。
【請求項7】
吸収可能剤を更に備えている、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの閉塞要素は、血管を閉塞するように構成されている三次元構造を有する空間充填構造要素である、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの空間充填構造要素は、コイル、糸、又は繊維、又はそれらの組み合わせである、請求項8に記載の血管閉塞装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの閉塞要素は、拡張可能な閉塞袋であり、前記閉塞袋は、1つ又は複数の空間充填構造要素を囲い込んでいる、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの閉塞要素は、拡張可能な閉塞袋であり、前記閉塞袋は、少なくとも1つの空間充填材料を囲い込んでいる、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つのポリマー材料は、ポリエステル、フッ化ポリマー、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリアラミド、及びポリスルホンで構成されているグループから選択されたポリマーを備えている、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのポリマー材料は、ポリエーテルウレタンウレアと、シロキサンを含んでいる表面修飾剤(surface modifying agent)と、を備えている、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのポリマー材料は、THORALONを備えている、請求項17に記載の血管閉塞装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つのポリマー材料は、複数の繊維を有する布地を備えており、前記布地は、織布、不織布、及び編まれた布地から成るグループから選択される、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項16】
前記複数の繊維の内の少なくとも1つは、複数の穴を含有しており、前記複数の穴の内の少なくとも幾つかは、少なくとも部分的には少なくとも1つのバイオ活性剤が詰められている、請求項15に記載の血管閉塞装置。
【請求項17】
前記布地は、合成ポリマーを備えている、請求項15に記載の血管閉塞装置。
【請求項18】
前記合成ポリマーは、ポリエチレンテレフタレートである、請求項17に記載の血管閉塞装置。
【請求項19】
前記閉塞要素の少なくとも表面は、DACRON、綿、絹、羊毛、ポリエステル、及びそれらの組み合わせから成るグループから選択された血栓形成繊維材料を備えている、請求項1に記載の血管閉塞装置。
【請求項20】
患者の血管を閉塞するための方法において、
a.少なくとも1つのポリマー材料を備えている少なくとも1つの閉塞要素であって、前記少なくとも1つのポリマー材料は、少なくとも部分的には少なくとも1つのバイオ活性剤が詰まっている複数の穴を有している、閉塞要素を備えている血管閉塞装置を提供する段階であって、前記少なくとも1つのバイオ活性剤は、患者の血管の閉塞を促し、前記血管閉塞装置は、前記患者の血管を閉塞するように構成されている、閉塞要素を備えている血管閉塞装置を提供する段階と、
b.前記血管閉塞装置が前記血管を閉塞するように前記血管閉塞装置を前記患者の血管部位に配置する段階と、から成る方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−509661(P2009−509661A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533552(P2008−533552)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/037595
【国際公開番号】WO2007/041131
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(502274071)クック インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】