説明

被覆材を除去するための養生方法

【課題】被覆材を除去する施工部位の養生作業を迅速に完了させられる養生方法を提供する。
【解決手段】孔部の周囲に一端が気密接続され且つ他端側が開閉自在である筒状部材2dを含んで構成された作業口2eを有する透明材料のカバー2を利用して施工部位Aを養生する養生方法として、帯状養生部材1の一方の側縁部1aを施工部位A周囲の壁面Bに固定して、帯状養生部材1によって施工部位Aを囲繞し、施工部位Aを囲繞した帯状養生部材1の他方の側縁部1bに、カバー2の周縁部2aを連結することを含む養生方法を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蛭石等の被覆材の除去に関する技術が以下に開示される。
【背景技術】
【0002】
耐火、耐熱の被覆材としてビルのスラブ等に付着させた既存のアスベストを除去する方法として、特許文献1のように、透明材料の柔軟なカバーで施工部位を覆って養生し、そのカバーの外側から、該カバーに設けられた作業口を通して被覆材を除去する方法が提案されている。カバーの内側は吸引機により負圧に維持されるので、除去した被覆材が外側へ漏れ出すことはなく、特許文献1の場合は最終的に、下方に備えられた廃棄物袋へ収容することができる。また最近では、HEPAフィルタを備えた集塵機能をもつ吸引機によって前記カバーの内側を吸引する方法が使用され、この場合、被覆材は吸引機により集塵されて廃棄物袋へ収容される。
【0003】
特許文献1では、カバーが不透明材料の外側膜部材及び透明材料の内側部材からなり、建物の解体時に外側膜部材を切断した上で、内側膜部材を利用して上記方法を実施することが記載されている。しかし最近では、透明材料の内側膜部材のみをカバーとして使用し、既存建物において、当該カバーにより被覆材付着壁面を覆って養生することで(つまり特許文献1の内側膜部材のみを使用する方法)、現在使用中の建物においても除去作業できるようにした除去方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−217923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
古い集合住宅において、耐火、耐熱の被覆材として廊下や居室の天井に蛭石を付着させたものがある。蛭石は、産出する場所がアスベストの鉱脈に近い場合があってアスベストを含む可能性があることから、近年では産地によってアスベストと同等に扱われる。したがって、蛭石を被覆材として使用してある既存建物に関して、随時、付着している蛭石を除去することが望まれる。
【0006】
集合住宅の天井等に付着した蛭石を除去する場合、アスベスト飛散の可能性があるので、アスベストを除去するときと同様に飛散防止の養生をしなければならない。そこで、特許文献1に開示されたカバー(透明材料の内側膜部材)を、集合住宅の天井等に付着した蛭石の除去に応用することが考えられる。ただし、集合住宅の各戸の作業においては居住者に配慮する必要があり、一日で除去作業を終わらせることが要望される。このためには、除去作業の中でも特に時間を要する、カバーによって施工部位を養生する作業を、できるだけ迅速に完了させる何らかの工夫が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対し、貫通形成された孔部の周囲に一端が気密接続され且つ他端側が開閉自在である筒状部材を含んで構成された作業口を1以上有する透明材料のカバーを利用して、被覆材を除去する施工部位を養生する養生方法として、
帯状養生部材の一方の側縁部を前記施工部位周囲の壁面に固定して、該帯状養生部材によって前記施工部位を囲繞し、当該施工部位を囲繞した帯状養生部材の他方の側縁部に、前記カバーの周縁部を連結することを含む養生方法を提案する。
【発明の効果】
【0008】
上記提案に係る養生方法によれば、カバーに先立って帯状養生部材を施工部位周囲に張り巡らすようにし、カバーは、この帯状養生部材に連結するだけにしている。帯状の養生部材を施工部位の周囲壁面に固定することは、上記態様のカバーを施工部位に直接固定することに比べると格段に迅速に行え、これにより、施工部位の養生にかかる時間を短縮することができる。したがって、上記提案に係る養生方法は、被覆材除去作業の時間短縮に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】養生方法の実施形態を説明する、施工部位を養生した状態の図。
【図2】実施形態に係る帯状養生部材の固定部分詳細を示した図。
【図3】実施形態に係る帯状養生部材とカバーを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に示す実施形態で使用する透明材料のカバーは、上述の特許文献1に記載されている内側膜部材と同様のもので、例えば、塩化ビニル系樹脂フィルム、フッ素系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、塩化ビニル系樹脂をコーティングしたポリエステル繊維布、ポリオレフィン系樹脂をコーティングしたポリオレフィン繊維布を材料とする、柔軟なカバーである。このカバーは、貫通形成された孔部の周囲に一端が気密接続され且つ他端側が開閉自在である筒状部材を含んで構成された作業口を、カバーの養生範囲に応じた個数有する。この作業口を通してカバーの外側から内側へ作業具を差し入れることができ、作業具を通した状態で筒状部材の他端側を閉じることにより、作業口を通じた被覆材の漏洩が防止される。
【0011】
図1は、コンクリート集合住宅の室内天井(スラブ)に、被覆材として蛭石が使用されている場合における養生状態を示す。この場合、室内の家具等はそのままにして(生活状態で)、一室ごとに蛭石の除去作業を実施可能である。
【0012】
図1の実施形態において養生は、帯状養生部材1と上記形態のカバー2とを利用して実施されている。帯状養生部材1は、カバー2と同材料により形成され、その一方(上側)の側縁部1aが施工部位A周囲の壁面Bに固定されることにより、施工部位Aを囲繞している。この帯状養生部材1の他方(下側)の側縁部1bに、カバー2の周縁部2aが連結される。本実施形態の場合、施工部位Aは天井であり、壁面Bは側壁の壁面である。
【0013】
本実施形態において、帯状養生部材1は、壁面Bにおいて天井との境目に周設された廻り縁(又は回り縁)Cに固定される。すなわち、図2に詳細を示すように、板状の押え部材1cを廻り縁Cに対して押し当てるようにし、押え部材1cと廻り縁Cとの間に上から側縁部1aを折り返して挟み込むことによって、側縁部1aがほぼ密着状態で固定される。押え部材1cは、釘やビス等の固定具1dにより適宜廻り縁Cに固定される。図示の押え部材1cは、上半分程がくさび形に先細りとなっており、天井と側壁との境目の蛭石を削ぎ落とすときに邪魔にならないように工夫されている。帯状養生部材1は、図3Aに示すように、押え部材1cに挟み込まれる側縁部1aが外側へ折り返されつつ、廻り縁Cに沿って固定され、最終的に長手方向の端1eどうしが突き合わされる。突き合わせた端1eの部分は、外側(又は内側)から目張り部材1fにより目張りされる。なお、作業性を考慮した最適例として廻り縁Cを側縁部1aの固定に利用する例を示すが、廻り縁Cの無いときには、コンクリート壁面Bに側縁部1aを両面テープで貼り付けるなど、応用が可能である。
【0014】
帯状養生部材1の他方の側縁部1bには、カバー2の周縁部2aを連結するための連結手段として、レールファスナーの一方のレールエレメント1gが全長にわたり設けられる。そして、このレールファスナーを設けた連結部分に被さるフラップ(flap)部材1hが、側縁部1bの内側に全長にわたり貼り付けられる。フラップ部材1hにより連結部分が覆い隠されることにより、施工部位Aから滴下し得る固化剤等の液体が連結部分から漏れ出すことがない。なお、帯状養生部材1の側縁部1bとカバー2の周縁部2aとの連結手段としては、レールファスナーの他、両面テープや面ファスナーなどを使用することもできる。
【0015】
このようにして、施工部位A周囲の廻り縁Cに一方の側縁部1aを固定した後、下方へ垂れ下がる帯状養生部材1の他方の側縁部1bに、カバー2の周縁部2aを連結する。カバー2の周縁部2aには、側縁部1bのレールエレメント1gに噛み合うレールファスナーのレールエレメント2bが周設されており、図示せぬスライダーをスライドさせることにより、両方のレールエレメント1g,2bが噛み合って、帯状養生部材1にカバー2が連結される。
【0016】
カバー2は、図3Bに示すように、貫通形成された孔部2cの周囲に一端が気密接続され且つ他端側が開閉自在である筒状部材2d(カバーと同材料)を含んで構成された作業口2eが、複数形成されている。この作業口2eを通して、蛭石を削ぎ落とすための道具を差し入れることができる。すなわち道具は、カバー2の外側から作業口2eを通してカバー2内側へ差し入れると共に該作業口2eの筒状部材2dを閉じ気密封止して使用する。作業に使用しない他の作業口2eの筒状部材2dは閉じる。
【0017】
カバー2を帯状養生部材1に連結すれば、養生作業終了である。このように、カバー2に先立って帯状養生部材1を施工部位Aの周囲に張り巡らすようにし、カバー2は、帯状養生部材1に連結するだけにしている。カバー2を施工部位Aに直接固定する作業に比べると、帯状養生部材1を施工部位Aの周囲壁面Bに固定する作業は、格段に迅速に行える。したがって、施工部位Aの養生にかかる時間を短縮することができる。その結果、被覆材除去作業の時間短縮を実現することができる。
【0018】
帯状養生部材1に連結したカバー2を下から支持する支持材3を1以上設置することも可能である。図1に示すように、支持材3は、壁面Bの間に架け渡した突っ張り棒とすることができる。場合によっては、支持材3を支える支柱材3aを設けてもよい。支持材3によりカバー2を支持することにより、本実施形態の連結手段であるレールファスナー1g,2bにかかるカバー2の負荷が軽減される。
【0019】
カバー2は、作業口2eの他に、図1に示すダスト袋部2fを1以上有する形態とすることもできる。ダスト袋部2fは、袋の開口周縁がカバー2の穿孔周囲に気密接続され、施工部位Aからカバー2上に削ぎ落とした蛭石をこのダスト袋部2fに収集することができる。そして、収集物は、ダスト袋部2fの口部分を結束具2g等で縛って密閉してしまうことで、取り外したカバー2と共に廃棄することができる。したがって、ダスト袋部2fを複数設けてあれば、別途に蛭石の廃棄袋をカバー2に接続しなくて済む場合がある。
【0020】
以上のようにして、帯状養生部材1及びカバー2により施工部位Aを養生した後には、施工部位Aの蛭石除去作業が実施される。除去作業にあたってまず、カバー2の作用口2eを利用して、負圧除塵機Dが設置される。すなわち、負圧除塵機Dの吸引ダクトD1を作業口2eを介してカバー2の外側から内側へ差し込み、当該作業口2eを封止する。吸引ダクトD1の先端にはフィルタD2が設けられており、また、負圧除塵機Dの本体内にもHEPAフィルタが収容されている。帯状養生部材1(又はカバー2)にはいずれか1箇所以上にフィルタ付の通気孔1i(図3参照)が形成されており、負圧除塵機Dによりカバー2内を吸引することにより、作業中のカバー2内が負圧に保たれる。
【0021】
カバー2の内側を負圧除塵機Dで吸引しつつ、作業口2eを利用してカバー2内で、施工部位Aにおける蛭石を除去する。すなわち、上記のようにして作業口2eから差し入れたヘラ等の道具で、施工部位Aの蛭石を削ぎ落としていく。削ぎ落とした蛭石は、ダスト袋部2fが設けてあればこれに収集する。あるいは、廃棄袋Eが廃棄シュート部材2hを介して接続されている場合は、廃棄シュート部材2hの方へ掻き集めて廃棄袋Eへ送り込む。廃棄シュート部材2hは、カバー2と同材質の円筒チューブで、一端がカバー2の穿孔周囲に気密接続されている。この廃棄シュート部材2hに、削ぎ落とした蛭石を送り込めば、廃棄袋Eに蛭石が収集される。
【0022】
以上のようにして施工部位Aの蛭石を削ぎ落とし終わると、連結手段であるレールファスナー1g,2bの連結を解き、カバー2を帯状養生部材1から取り外す。カバー2を取り外すことで、施工部位Aを囲繞する帯状養生部材1が残るので、この残った帯状養生部材1をマスキング材として利用し、蛭石を除去した施工部位Aに塗料を吹き付けて塗装を施すことができる。すなわち、蛭石除去作業の後に施工部位Aを塗装する場合であっても、別途にマスキング作業を行う必要がなく、作業時間を短縮することが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 帯状養生部材
1a 一方の側縁部
1b 他方の側縁部
1c 押え部材
1d 固定具
1e 長手方向の端
1f 目張り部材
1g レールエレメント(レールファスナー)
1h フラップ部材
1i 通気孔
2 カバー
2a 周縁部
2b レールエレメント(レールファスナー)
2c 孔部
2d 筒状部材
2e 作業口
3 支持材
3a 支柱材
A 施工部位
B 壁面
C 廻り縁
D 負圧除塵機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通形成された孔部の周囲に一端が気密接続され且つ他端側が開閉自在である筒状部材を含んで構成された作業口を1以上有する透明材料のカバーを利用して、被覆材を除去する施工部位を養生する養生方法であって、
帯状養生部材の一方の側縁部を前記施工部位周囲の壁面に固定して、該帯状養生部材によって前記施工部位を囲繞し、当該施工部位を囲繞した帯状養生部材の他方の側縁部に、前記カバーの周縁部を連結することを含む養生方法。
【請求項2】
前記帯状養生部材において、前記他方の側縁部の内側に、前記カバーとの連結部分に被さるフラップ部材が設けられる、請求項1記載の養生方法。
【請求項3】
前記帯状養生部材の他方の側縁部に前記周縁部を連結した前記カバーを下から支持する支持材を設置する、請求項1又は請求項2記載の養生方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の養生方法によって養生した前記施工部位の被覆材を、前記カバーの作業口を利用して除去する、被覆材除去方法。
【請求項5】
前記施工部位の被覆材を除去した後に、前記カバーを前記帯状養生部材から取り外し、該取り外し後に残る前記帯状養生部材をマスキング材として使用することにより、前記被覆材除去後の施工部位に塗装を施す、請求項4記載の被覆材除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−256570(P2011−256570A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130940(P2010−130940)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000189800)常盤工業株式会社 (9)
【出願人】(503364320)井上定株式会社 (4)
【出願人】(500303940)株式会社 小川テック (14)
【出願人】(510169424)株式会社トッププランニングJAPAN (4)
【出願人】(510169435)株式会社ヨシケン (4)
【Fターム(参考)】