説明

被覆膜付き蛍光体粒子およびその製造方法

【課題】蛍光強度を低下させず、かつ高耐湿性および高耐水性を有する被覆膜を備えた蛍光体粒子とその効率的な製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】その表面に下地膜としてアルミニウム有機化合物膜を形成した蛍光体粒子と、これと別の容器で重量平均分子量5000〜20000のシラン有機金属化合物縮合物(被覆材)を混合し、下地膜の上に被覆材膜を厚さ50〜500nmに設けた蛍光体粒子(B)を得る。そして、これを乾燥し、加熱して得られる被覆膜を備えた蛍光体粒子(C)を得る。なお、乾燥後の蛍光体粒子(B)をTG−DTA分析装置で測定した250℃到達時の熱減量率を0.2%以下とする。
被覆膜(c)は、緻密で欠陥のないSiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物膜である。したがって、得られた蛍光体粒子の耐湿性、耐水性は極めて良好であり、被覆膜(c)が蛍光体粒子の発光強度を低下させることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆膜付き蛍光体粒子およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、LED等の発光素子に使用された際に蛍光強度の低下がなく、かつ高耐湿性と高耐水性とを有する被覆膜付き蛍光体粒子とその効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発光材料としてよく知られている蛍光体には、酸化物蛍光体、硫化物蛍光体、蓄光材用蛍光体がある。
酸化物蛍光体としては、例えば、組成式:SrSiO:Eu、又はSrSiO:Euで表される化合物相からなるものがある。これらは高輝度型白色LED用蛍光体に使用される蛍光体であり、青色LEDからの励起光の一部を吸収することにより黄色発光され、さらに青色励起光と混ざり合うことにより白色光を得ている。更に高演色型白色LED用蛍光体に用いられる(Ba,Sr)SiO:Euは緑に発色することで演色性を高めている。
硫化物蛍光体としては、例えば、組成式:CaS:Eu、SrS:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、又はSrGa:Euで表される化合物相からなるものがある。これらは高演色型に用いられ、赤や緑に発色することで演色性を高めている。
また、蓄光材用蛍光体としては、アルミン酸塩系が知られており、例えば、組成式:SrAl:Eu,Dy、またはCaAl:Eu,Ndで表される化合物相からなるアルミン酸塩蓄光材用蛍光体がある。これらは、高発光、かつ残光時間が長いことを特徴としている。
【0003】
これらの蛍光体は、空気中の水蒸気又は水によって表面に水和物、硫酸化物または炭酸塩の生成が発生し劣化することが知られており、大気中で長時間の使用、又は励起光による温度上昇によって、輝度の低下および色調の変化が起きるという問題がある。
このような蛍光体の耐湿性改善策として、次の方法が提案されているが、それぞれに問題点が指摘されている。
(1)シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、テトラエトキシシラン、シリカ、ケイ酸亜鉛、シリコーンオイル、ケイ酸アルミニウム、カルシウムポリフォスフェート、シリコーンオイル、シリングリース等を被覆材として用いて酸化物蛍光体粒子表面に被覆膜を設ける方法が開示されている(特許文献1 第1、2頁参照)。
この方法に従って得られた蛍光体では、初期発光強度の低下がなく、かつ耐湿性が改善されているとしている。
具体的には、酸化物蛍光体粒子の水分量が1wt%未満となるように乾燥し、トルエン等に酸化物蛍光体粒子体積の0.1〜50%の前記被覆材を溶解させて分散液を得、この分散液に前記乾燥した酸化物蛍光体粒子を浸漬した後、真空エバポレータ等により乾燥して、表面にシリコーン樹脂からなる被覆膜が設けられた酸化物蛍光体粒子を得る。
この方法は、簡便な方法ではあるが、微細な酸化物蛍光体粒子全面を均一に被覆すること、或いは被覆膜の厚さを制御することは容易でないという問題がある。また、シリコーンオイルやシリコーン樹脂などを用いた場合、通常の乾燥機を用いた方法では乾燥がなかなか進まない。乾燥不十分の被覆膜を有する酸化物蛍光体粒子をLED等の発光素子に使用すると、該蛍光体粒子の流動性が低下してしまい、均一な発光が可能な発光素子を得ることができない。そのため、乾燥を十分に行うべく強制乾燥すると、蛍光体粒子同士が凝集してしまい、LED樹脂中に練り混むことができないという問題がある。
【0004】
(2)シラン有機金属化合物としてアルコキシシランを用いて、厚さが20nm以上である非連続のガラス膜を硫化物蛍光体粒子表面に被覆膜を設ける方法である(特許文献2第6頁参照)。
具体的には、蛍光体をエタノール中に分散させ、加熱しつつ、アルコキシランを添加し、攪拌する。その後、水を添加して、所定時間攪拌する。
この方法では、硫化物蛍光体粒子にアルコキシシランと加水分解用の水を同時に加えるために、耐水性の低い粉末、例えば、組成式:SrS:Euで表される化合物相からなる硫化物蛍光体粒子を用いた場合、水分の影響で蛍光体粒子そのものの劣化が著しく、加熱温度を高くすると劣化がさらに激しくなり、甚だしい場合には蛍光体粒子そのものが溶解してしまうという問題がある。
【0005】
(3)硫化物蛍光体の表面に、シラン系改質剤を適用して前記硫化物蛍光体粉末のそれぞれの粒子表面にシリコンが含まれた有機高分子被膜を形成する工程と、この有機高分子被膜を熱処理してシリコン酸化膜を得る方法である(例えば、特許文献3 第2頁参照)。
具体的には、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTS:Si(CHO)(CH2)SH)やアルキルシラン、アルコキシシラン、ヒドロキシシラン等を表面改質剤とし、これらのアンモニア含有アルコール溶液中に硫化物系蛍光体粉末を浸漬させ、その表面にシリコンが含まれた有機高分子被膜を形成し、次いでこれを熱処理して硫化物系蛍光体粉末表面にシリコン酸化膜を設ける。
この方法では、アンモニアは反応触媒剤として加えられており、アルコキシシランの加水分解反応を促進させるが、蛍光体粒子表面を被覆する前に、アルコキシシラン同士が縮合反応を起こしてアルコキシシラン縮合体微粒子を生成してしまう。こうした微粒子を硫化物系蛍光体粉末表面に堆積させ、熱処理しても、形成される被膜は緻密なものとならない。加えて、反応後に得られるものは、アルコキシシラン縮合体がその表面に堆積した硫化物系蛍光体粉末と、アルコキシシラン縮合体微粉末との混合物となる。したがって、得られたものを用いてLED発光素子を得ると、発光特性全体が低下するという問題がある。これを少しでも回避するために、反応速度を緩和する処置も採られるが、そうすると、処理時間がその分長くなるために生産性が悪化するという新たな問題が生じている。
【0006】
ところで、上記のような各種の蛍光体耐湿性改善策を用いてその表面に被覆膜を有する蛍光体粒子を得、それを用いて成形して蛍光体を作成し、その耐湿性、耐水性を測定した結果、例えば、高温加湿した雰囲気中に蛍光体を投入すると、湿度の影響で蛍光体表面が侵され、水和物や硫酸化物、又は炭酸塩が生成し、発光特性は大きく低下することがわかった。特に、これらの傾向は、アルカリ土類を含む蛍光体粒子を用いて得たLED発光素子で著しいこともわかった。
このように蛍光体の耐湿性が改善されていない場合には、特に、こうした蛍光体を用いて作製したLED発光素子を照明および自動車用途等のように屋外で使用した場合、LED発光素子は直ちに劣化することになる。
これら劣化の多くの原因は被覆膜の材質ばかりでなく、被覆膜の欠陥(ピンホール等)にもある。例えば、粒子表面に被膜を形成し、加熱処理して被覆膜を得る場合、該加熱処理により有機物を分解する際に、被覆膜に欠陥が形成され、この欠陥を通って湿気や水分が内部に進入して蛍光体粒子そのものが劣化する。
これを回避するため、通常、被覆膜の膜厚を厚くすることが行われている。しかしながら、最も一般的に行われるアルコキシシランを加水分解して被覆する方法、即ち水、又は非水溶媒に酸アルカリ触媒を添加し、pHを制御してアルコキシシランを加水分解・縮合反応させる方法では、アルコキシシランをゆっくりと加水分解・縮合反応させて粒子表面に析出物を堆積させるため、厚さ50nm以上の被覆膜を得るには長時間の処理を要する。また希薄液中での処理となるため、1バッチ当たり少量の被覆しかできず、生産効率に劣る。
以上の状況下、蛍光強度を低下させず、かつ高耐湿性および高耐水性を有する被覆膜を備えた蛍光体粒子とその効率的な製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−187797号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献2】特開2007−308537号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献3】特開2006−188700号公報(第1頁、第2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、蛍光強度を低下させず、かつ高耐湿性および高耐水性を有する被覆膜を備えた蛍光体粒子とその効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために、蛍光強度を低下させず、かつ高耐湿性および高耐水性を有する被覆膜を備えた蛍光体粒子とその効率的な製造方法について鋭意研究を重ねた結果、特定の条件で蛍光体粒子表面にアルミニウム有機金属化合物を吸着させ、その上を、特定の条件で得た被覆材により覆い、特定の条件で加熱処理することにより得られる被覆膜を備えた蛍光体粒子であれば、前記本発明の目的を達成することを見いだして本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、厚さが50〜500nmの被覆膜を有し、かつ乾燥後にTG−DTA分析装置で測定した250℃到達時の熱減量率が0.2%以下である蛍光体粒子であって、
前記被覆膜は、SiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物からなることを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、前記第1の発明に加えて、前記蛍光体粒子は、その構成元素として、イオウ(S)または酸素(O)の他にカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、ユーロピウム(Eu)、ディスプロシウム(Dy)、および、ネオジム(Nd)から選ばれる少なくとも1種の元素を含み、かつ、その平均粒径が、D50で1〜50μmであることを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、前記第1または第2の発明に加えて、前記蛍光体粒子は、さらに、その組成式が、CaS:Eu、SrS:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、SrGa:Eu、SrAl:Eu,Dy、CaAl:Eu,Nd、SrSiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)SiO:Euおよび(Ba,Sr)SiO:Euから選ばれる少なくとも1種で表される化合物相を含むことを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子が提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、前記第1〜3のいずれかの発明に係る被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法であって、
下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法(以下、本願「第1の製法」と略称することもある。)が提供される。
第1工程:有機溶媒中に蛍光体粒子を添加し、28〜48kHzの超音波振動を10〜30分間与えて分散させ、これにアルミニウム有機金属化合物を添加し、密封下撹拌混合し、次いで真空濾過して固形分と有機溶媒とを分離して、その表面にアルミニウム有機金属化合物(下地膜)を吸着した蛍光体粒子(A)を得る。
第2工程:攪拌機付き密封容器中に有機溶媒と、シラン有機金属化合物と、触媒として作用するアルミニウム有機金属化合物と、加水分解用の水とを入れ、密封下に18〜40℃で18〜96時間撹拌混合して、シラン有機金属化合物の加水分解縮合物(被覆材(a))を含む有機溶液(b)を得る。
第3工程:第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、第2工程で得た有機溶液(b)と、要すれば有機溶剤とを混合し、得た混合物に超音波振動を与えて再分散させ、次いで、要すれば密封下に温度18〜60℃で0.2〜5時間撹拌混合し、その後、真空濾過してその表面に被覆材(a)膜を有する蛍光体粒子(B)を得る。
第4工程:第3工程で得た蛍光体粒子(B)を大気下に、温度100〜110℃で0.5〜1時間乾燥し、次いで加熱処理し、その表面にSiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物膜からなる被覆膜(c)を備えた蛍光体粒子(C)を得る。
【0014】
また、本発明の第5の発明によれば、前記第1〜3のいずれかの発明に係る被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法であって、
下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法(以下、本願「第2の製法」と略称することもある。)が提供される。
第1工程:有機溶媒中に蛍光体粒子を添加し、28〜48kHzの超音波振動を10〜30分間与えて分散させ、これにアルミニウム有機金属化合物を添加し、密封下撹拌混合し、次いで真空濾過して固形分と有機溶媒とを分離して、その表面にアルミニウム有機金属化合物(下地膜)を吸着した蛍光体粒子(A)を得る。
第2工程:攪拌機付き密封容器中に有機溶媒と、シラン有機金属化合物と、触媒として作用するアルミニウム有機金属化合物と、加水分解用の水とを入れ、密封下に18〜40℃で18〜96時間撹拌混合して、シラン有機金属化合物の加水分解縮合物(被覆材(a))を含む有機溶液(b)を得る。次いで、得られた有機溶液(b)を開放容器中で温度12〜30℃に維持しつつ攪拌し、液量が元の重量に対して80〜60%になるまで濃縮する。次いで真空濾過して被覆材(a)を得る。
第3工程:第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、第2工程で得た被覆材(a)と、要すれば有機溶剤とを混合し、得た混合物に超音波振動を与えて再分散させ、次いで、要すれば密封下に温度18〜60℃で0.2〜5時間撹拌混合し、その後、真空濾過してその表面に被覆材(a)膜を有する蛍光体粒子(B)を得る。
第4工程:第3工程で得た蛍光体粒子(B)を大気下に、温度100〜110℃で0.5〜1時間乾燥し、次いで加熱処理し、その表面にSiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物膜からなる被覆膜(c)を備えた蛍光体粒子(C)を得る。
【0015】
また、本発明の第6の発明によれば、前記第1工程において、前有機溶媒は、エタノール、又はイソプロピルアルコールであり、前記アルミニウム有機金属化合物は、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、オクチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロプレート、又はアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)から選ばれる少なくとも一つであり、前記シラン有機金属化合物は、メチルトリエトキシシラン、又はメチルトリメトキシシランであることを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第7の発明によれば、前記第6の発明において、有機溶媒は、質量比で、蛍光体粒子1に対して5〜50、アルミニウム有機金属化合物は、質量比で、蛍光体粒子1に対して0.1〜1であり、撹拌混合条件は、温度18〜60℃、攪拌時間0.5〜24時間とすることを特徴とする蛍光体粒子の被覆膜の形成方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第8の発明によれば、前記第7の発明の前記第2工程において、前記有機溶媒は、一般式:ROH(ここで、Rは、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基を表す。)で示されるアルコールであり、前記シラン有機金属化合物はトリアルコキシシランであり、前記アルミニウム有機金属化合物はエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートであり、さらに加水分解用の水は、導電率が4μS/cm以下であるイオン交換水であることを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第9の発明によれば、前記8の発明の前記第2工程において、前記有機溶媒は、質量比で、シラン有機金属化合物1に対して0.5〜1であり、アルミニウム有機金属化合物は、質量比で、シラン有機金属化合物1に対して0.0125〜0.05であり、水は、質量比で、シラン有機金属化合物1に対して0.2〜0.5であることを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法が提供される。
【0019】
また、本発明の第10の発明によれば、前記第9の発明の前記第3工程において、被覆材(a)は、質量比で、蛍光体粒子(A)1に対して1〜6であり、前記混合物に与える超音波振動は、28〜48kHzであり、与える時間は5〜15分間であることを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第11の発明によれば、前記第10の発明の前記第4工程において、前記加熱処理は、大気下に、温度200〜400℃で0.5〜2時間加熱するものであることを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の被覆膜を備えた蛍光体粒子は、その表面にアルミニウム有機化合物が吸着され、その上に別の容器で作製された被覆材(a)と接触させられてその表面に被覆材(a)膜が設けられた蛍光体粒子(B)を乾燥し、加熱して得られる被覆膜(c)を備えた蛍光体粒子であり、かつ乾燥後にTG−DTA分析装置で測定した250℃到達時の熱減量率が0.2%以下であることを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子である。したがって、被覆膜は極めて緻密で、均一な被膜となっており、欠陥はほとんど無い。そのため、本発明の被覆膜を備えた蛍光体粒子の耐湿性、耐水性は極めて良好である。
また、被覆膜の厚さは50〜500nmと薄く、かつSiとOとを主成分とする非晶質の無機酸化物膜であるため、表面に被覆膜を設けることによる蛍光体粒子の発光強度は損なわれず、その低下は問題視されない。また、用いる蛍光体粒子は硫化物蛍光体粒子か酸化物蛍光体粒子か蓄光材用蛍光体粒子かを問わない。
本発明の方法は、まず、その表面にアルミニウム有機金属化合物膜(下地膜)を設けた蛍光体粒子を(A)得る。次に、別の容器を用いて重量平均分子量5000〜20000のシラン有機金属化合物加水分解縮合物(被覆材(a))を得る。次に、蛍光体粒子(A)と被覆材(a)とを有機溶媒中で接触させ、その表面に被覆材(a)膜が設けられた蛍光体粒子(B)を得る。そして、この蛍光体粒子(B)を乾燥し、次いで加熱処理し、SiとOとを主成分とし、厚さ50〜500nmの非晶質の無機化合物膜からなる被覆膜(c)をその表面に備えた蛍光体粒子(C)を得る。
すなわち、本発明の方法では、従来のように同一容器内で被覆材の合成と被覆材の蛍光体粒子表面への付着とを行わず、蛍光体粒子(A)と被覆材(a)とを別々の容器を用いて得ておき、その後接触させて蛍光体粒子(B)をえる。したがって、高純度にした被覆材(a)の使用も可能である。この結果、蛍光体粒子表面に設けられる被覆材(a)膜中の不純物は少ない。不純物の少ない被覆材(a)膜を乾燥し、その後加熱して被覆膜(c)を得るため、得られる被覆膜は緻密で、均一なものとなり、欠陥はほとんど無い。そのため、得られる蛍光体粒子の耐湿性、耐水性は極めて良好なものとなる。被覆膜(c)の厚さも500nm以下なので、蛍光体粒子の蛍光強度は被覆膜を設けることにより損なわれない。
また、各工程での操作も特に複雑なわけでもないので、簡単に且つ効率的に被覆膜を備えた蛍光体粒子を製造できる。
よって、本発明は硫化物蛍光体粒子、酸化物蛍光体粒子、蓄光材用蛍光体粒子を問わず、発光素子として用いられる蛍光体粒子に適用できるので、その工業的価値は極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、蛍光体粒子、被覆膜が設けられた蛍光体粒子およびその製造方法に項分けしてさらに詳細に本発明を説明する。
1)蛍光体粒子
本発明に用いる蛍光体粒子としては、特に限定されるものではなく、各種の蛍光体粒子が用いられるが、その中で、その構成元素として、イオウ(S)または酸素(O)の他にカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、ユーロピウム(Eu)、ディスプロシウム(Dy)、および、ネオジム(Nd)から選ばれる少なくとも1種の元素を含み、かつ、その平均粒径が、D50で1〜50μmであるものが好ましい。
さらに、その組成式が、CaS:Eu、SrS:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、SrGa:Eu、SrAl:Eu,Dy、CaAl:Eu,Nd、SrSiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)SiO:Eu、および(Ba,Sr)SiO:Euから選ばれる少なくとも1種で表される化合物相を含むものが好ましい。すなわち、蛍光体粒子が硫化物蛍光体粒子か酸化物蛍光体粒子か蓄光材用蛍光体粒子かは問わない。
以下、本発明で使用される蛍光体、蓄光材の発光特性、組成の詳細について示す。
【0023】
1)−1 赤色蛍光体
赤色蛍光体にはCaS:Eu、SrS:Eu又は(Ca,Sr)S:Euが用いられる。これらの蛍光体は、波長430nm以上470nm以下の光で励起された際に、600nm以上680nm以下の波長範囲の発光スペクトルを発するので、この波長範囲用の蛍光体、好ましくは620nm以上660nm以下の波長範囲用の蛍光体として好適である。付括剤であるEuの組成範囲は1〜10モル%が好ましい。1モル%未満の場合には、発光輝度が低下し、一方、10モル%を越えた場合には、濃度消光によって充分な発光輝度を得ることはできないからである。
また、Caの一部をSrに置換することによって発光ピーク位置を変化させることができるので、Caの全量に対するSr量が5モル%以上、好ましくは10モル%以上40モル%以下の範囲でCaの一部をSrに置換すると、620〜660nmの波長範囲内に発光ピークを有する蛍光体を得ることができる。
【0024】
1)−2 橙色蛍光体
橙色蛍光体にはSrSiO:Eu又は(Sr,Ba)SiO:Euが用いられる。これらの蛍光体は、波長430nm以上470nm以下の光で励起された際に、540nm以上610nm以下の波長範囲の発光スペクトルを発するので、この波長範囲用の蛍光体、好ましくは560nm以上590nm以下の波長範囲用の蛍光体として好適である。付括剤であるEuの組成範囲は0・1〜20モル%が好ましい。0.1モル%未満の場合には、発光輝度が低下し、一方、20モル%を越えた場合には、濃度消光によって充分な発光輝度を得ることはできないからである。
またSrの一部をBaで置換すると、565〜575nmの波長範囲に発光ピークを有する蛍光体とすることができる。この場合、Srの全量に対するBa量は、通常1モル%以上、好ましくは2モル%以上10モル%以下の範囲である。なお、BaはSrの原子位置に置換されるが、Baによる置換量の割合が高過ぎると、発光が黄色味を帯び、発光効率が低下する傾向がある。
【0025】
1)−3 緑色蛍光体
緑色蛍光体にはSrGa:Eu、(Ba,Sr,Ca)SiO:Eu又は(Ba,Sr)SiO:Euが用いられる。これらの蛍光体は、波長430nm以上470nm以下の光で励起された際に、510nm以上550nm以下の波長範囲の発光スペクトルを発するので、この波長範囲用の蛍光体、好ましくは520nm以上540nm以下の波長範囲用の蛍光体として好適である。付括剤であるEuの組成範囲は0.1〜20モル%が好ましい。0.1モル%未満の場合には、発光輝度が低下し、一方、20モル%を越えた場合には、濃度消光によって充分な発光輝度を得ることはできないからである。
また、Siを含む酸化物蛍光体ではBaの一部をSrまたはCaで置換すると、520〜530nmの波長範囲に発光ピークを有する蛍光体とすることができる。この場合、Baの全量に対するSr量は、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上40モル%以下の範囲である。なお、通常、SrはBaの原子位置に置換されるが、Srによる置換量の割合が高過ぎると、発光が黄色味を帯び、発光効率が低下する傾向がある。
さらにBaとSr以外にCaを含む場合、Srの全量に対するCa量は、通常10モル%以下、更に5モル%以下の範囲であることが好ましい。CaはSrに置換することによって蛍光体中に存在するが、このCaによる置換量の割合が高過ぎると、発光が黄色味を帯び、発光効率が低下する傾向がある。
【0026】
1)−4 蓄光材
蓄光材にはSrAl:Eu,Dy又はCaAl:Eu,Ndが用いられる。これらの蛍光体は、波長330nm以上450nm以下の光で励起された際に420nm以上520nm以下の波長範囲の発光スペクトルを発するので、この波長範囲用の蛍光体、好ましくは440nm以上490nm以下の波長範囲用の蛍光体として好適である。付括剤であるEuやDyやNdの組成範囲は0.1〜10モル%が好ましい。例えばEuを用いる場合には、1〜5モル%とすることがより好ましく、Dyを用いる場合には、0.1〜0.5モル%とすることがより好ましく、Ndを用いる場合には1〜5モル%とすることがより好ましい。10モル%を越えた場合には、濃度消光によって充分な発光特性を得ることはできないからである。
【0027】
2)被覆膜が設けられた蛍光体粒子
本発明の被覆膜を備えた蛍光体粒子は、厚さが50〜500nmの被覆膜を有し、かつ乾燥後にTG−DTA分析装置で測定した250℃到達時の熱減量率が0.2%以下である蛍光体粒子であって、前記被覆膜は、SiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物からなることを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子である。
すなわち、その表面にアルミニウム有機化合物が吸着され、その上に別の容器で作成された重量平均分子量5000〜20000のシラン有機金属合物縮合物(被覆材(a))と接触させられてその表面に被覆材(a)膜が設けられた蛍光体粒子(B)を乾燥し、加熱して得られる被覆膜(c)を備えた蛍光体粒子であり、かつ蛍光体粒子(B)を乾燥後にTG−DTA分析装置で測定した250℃到達時の熱減量率が0.2%以下であることを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子である。
したがって、TG−DTA分析装置で測定した250℃到達時の熱減量率が0.2%以下で示されるように、被覆膜は極めて緻密である。また、アルミニウム有機化合物吸着膜の上に被覆材(a)膜を設け、これを乾燥し、加熱して被覆膜(c)を設けているため、被覆膜(c)は極めて均一な被膜となっており、欠陥はほとんど無い。そのため、本発明の被覆膜を備えた蛍光体粒子の耐湿性、耐水性は極めて良好である。
また、被覆膜の厚さは50〜500nmであり、かつSiとOとを主成分とする非晶質の無機酸化物膜であるため、表面に被覆膜を設けることによる蛍光体粒子の発光強度は損なわれず、その低下は問題視されない。
【0028】
3)製造方法
本発明の方法は、その表面にSiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物膜を被覆膜として備えた蛍光体粒子の製造方法であって、
下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする。
第1工程:有機溶媒中に蛍光体粒子を添加し、28〜48kHzの超音波振動を10〜30分間与えて分散させ、これにアルミニウム有機金属化合物を添加し、撹拌混合し、次いで真空濾過して固形分と有機溶媒とを分離して、その表面に下地膜としてアルミニウム有機金属化合物を吸着させた蛍光体粒子(A)を得る。
第2工程:攪拌機付き密封容器に有機溶媒と、シラン有機金属化合物と、触媒として作用するアルミニウム有機金属化合物と、加水分解用の水とを入れ、密封下に温度18〜40℃で18〜96時間撹拌混合し、シラン有機金属化合物の加水分解縮合物(被覆材(a))を含む有機溶液(b)を得る。次いで、得られた有機溶液(b)を開放容器内に移し替え、温度12〜30℃で攪拌しつつ揮発濃縮し、残量が元の重量の80〜60%になるまで濃縮する。次いで真空濾過に付し、有機溶媒を分離し、被覆材(a)を得る。
第3工程:第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、第1の製法では、第2工程で得た被覆材(a)、もしくは第2の製法では、被覆材(a)を含む有機溶液(b)と、必要に応じて有機溶剤とを混合し、得た混合物に超音波振動を与えて再分散させ、次いで密封下に温度18〜60℃で0.2〜5時間撹拌混合し、その後、真空濾過に付し、有機溶媒を分離し、その表面に被覆材(a)膜を有する蛍光体粒子(B)を得る。
第4工程:第3工程で得た蛍光体粒子(B)を大気下に、温度100〜110℃で0.5〜1時間乾燥し、次いで加熱処理に付し、前記被覆材(a)膜中の有機物を熱分解し、その表面にSiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物膜からなる被覆膜(c)を有する蛍光体粒子(C)を得る。
【0029】
ここにおいて、重要なことは以下の通りである。
a)第1工程で、蛍光体粒子の表面にアルミニウム有機金属を吸着させて下地膜としての均一な吸着膜を有する蛍光体粒子(A)を形成すること。
b)第2工程で、第1工程と別の容器でシラン有機金属化合物と、触媒と水とを配合し、密封下に撹拌混合して加水分解縮合物(被覆材(a))を作製すること。
c)第3工程で、前記蛍光体粒子(A)を有機溶媒中に再分散させ、第2工程で作成した被覆材(a)を加え、十分攪拌混合し、その後真空濾過にて有機溶媒を分離してその表面に被覆材(a)膜を有する蛍光体粒子(B)を得ること。
すなわち、こうすることにより蛍光体粒子(A)と接触するのを、シラン有機金属化合物の縮合体(被覆材(a))のみとすることができる。仮に、被覆材(a)にシラン有機金属化合物モノマーが共存している場合には、得られる表面被腹膜は緻密で欠陥のないものとならない。したがって、そのようにして得られた被覆膜では、本発明の被覆膜(c)と異なり、耐湿性、耐水性に劣る被覆膜が得られる。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0030】
3)−1 第1工程
本発明の第1工程は、有機溶媒中に蛍光体粒子を添加し、超音波振動を与えて分散させ、これにアルミニウム有機金属化合物を添加し、撹拌混合し、次いで真空濾過して固形分と有機溶媒とを分離して、その表面に下地膜としてアルミニウム有機金属化合物を吸着させた蛍光体粒子(A)を得る工程である。
ここで、蛍光体粒子の表面にアルミニウム有機金属膜を吸着させ、下地膜を形成することが重要である。これによって、表面の被覆が均一に行われるようになる。すなわち、活性なアルミニウム有機金属化合物が、直ちに粒子表面に吸着することで水酸基を多く有する下地膜が形成される。このアルミニウム有機金属膜は、水酸基を多く有しているため、その上に被覆するシラン有機金属化合物縮合物(被覆材(a))をより容易且つ均一に吸着させることができ、かつ積膜する被覆材(a)との結合が強固となる。下地膜がなくなると、被覆材(a)が安定被覆されず、耐湿性は上がらない。したがって、上記手順に代えて、有機溶媒中にアルミニウム有機金属化合物を混合し分散させ、次いで蛍光体粒子を添加して撹拌混合した後、真空濾過して有機溶媒を分離してもよい。
上記下地膜の厚さとしては、特に限定されるものではなく、薄くても構わず、乾燥時に粒子間の凝集や膜剥離が生じなければよい。
このような下地膜を設けない従来の方法では、蛍光体粒子とその表面に設けられた被覆膜との結合が弱く、均一な被覆膜が形成されにくい。また、アルコキシシランの反応性を上げるために処理温度を高めると、アルコキシシランが有機溶媒とともに揮発してしまい、かえって被覆への固着量が低下する等の問題がある。
【0031】
また、蛍光体粒子と下地膜との密着性を高めておくためには、下地膜を形成した後、一旦有機溶媒を除去しておくことも重要であり、除去は真空濾過により蛍光体粒子(A)と有機溶媒とを分離することで行われる。これにより蛍光体粒子(A)表面で結合に寄与しない有機溶媒が除去され、蛍光体粒子(A)表面とアルミニウム有機金属化合物間の結合がより強化される。有機溶媒の分離により、蛍光体粒子と下地膜との密着性および結合性が高まるので、第3工程で、有機溶媒中に蛍光体粒子(A)を投入しても下地膜が溶解したり、或いは剥がれ落ちたりする危険性は少ない。
なお、下地膜形成時に使用した量の約半分量の有機溶媒を添加して、洗浄に付すこともできる。この洗浄操作は、アルミニウム有機金属化合物の添加濃度が高い場合に有効であり、洗浄により、遊離のアルミニウム有機金属化合物が除去されるため、乾燥後に、アルミニウム有機金属化合物が凝集固化し難くなるので好ましい。
【0032】
上記第1工程に用いる有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、一般式:ROH(ここで、Rは、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基を表す。)で表されるアルコールが用いられるが、この中で、特にエタノール、又はイソプロピルアルコールが好ましい。
【0033】
上記第1工程に用いるアルミニウム有機金属化合物としては、特に限定されるものではなく、一般式:ROH(ここで、Rは、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基を表す。)で表されるアルコールに対して相溶性があり、蛍光体粒子の表面への吸着力が高いものが望ましく、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、オクチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロプレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルキル基を含有するアルミニウムキレート化合物が好ましい。この中で、エタノールおよびイソプロピルアルコールとの相溶性が高いエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートがより好ましい。
【0034】
また、下地膜と被覆材(a)との吸着をさらに強固にしたい場合には、下地膜の上にジルコニウム有機金属化合物被膜を形成しておくとより好ましい。こうすれば、蛍光粒子(A)の表面に水酸基をより多く形成でき、被覆材(a)との結合がより強くなる。
ジルコニウム有機金属化合物膜の形成方法としては、前述した手順で粒子表面にアルミニウム有機金属化合物膜を形成後、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の加水分解性アルキルジルコニウム、および加水分解用の水分を加えて室温以下の温度で12時間以上撹拌することで被膜を100nm程度形成することができる。被膜形成後、溶媒を除去することが好ましいのは前記したのと同様である。
【0035】
上記第1工程において、蛍光体粒子、有機溶媒およびアルミニウム有機金属化合物の配合割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、有機溶媒は、質量比で、蛍光体粒子1に対して有機溶媒5〜50とし、アルミニウム有機金属化合物は、蛍光体粒子1に対して0.1〜1とすることが好ましい。これ以上にアルミニウム有機金属化合物を多くすると、有機溶媒の分離時に硫化物蛍光体粒子の凝集が起こりやすいからである。
【0036】
上記第1工程において、撹拌混合方法は特に限定されるものではないが、有機溶媒の揮発をできるだけ防止するために、密封下で行い、温度18〜60℃、攪拌時間を0.5〜24時間、好ましくは温度18〜40℃、攪拌時間1〜4時間とすることが望ましい。
上記撹拌混合には、28〜48kHzの超音波振動を与えられる超音波ホモジナイザーを用いることが推奨されるが、撹拌羽、スターラ等の撹拌機を用いることも可能である。
【0037】
真空濾過に関しては、上記第1工程のみならず、本発明においては、0.05〜0.1MPaの真空度で濾過を行なうことが好ましい。
上記真空濾過に付すことの代わりに、加熱により有機溶媒を揮発させて除去する方法も採ることができる。しかしながら、利便性から真空濾過する方法が好ましい。なお、有機溶媒の分離後に、150℃以上の温度で加熱乾燥すると、吸着したアルミニウム有機金属化合物が変質して、後続の工程でシラン有機金属化合物との吸着性が低下するので好ましくない。
【0038】
3)−2 第2工程
本発明の第2工程は、有機溶媒中に、被覆膜の主膜を形成するシラン有機金属化合物と、触媒として作用するアルミニウム有機金属化合物と、加水分解用の水とを配合し、撹拌混合してシラン有機金属化合物の加水分解縮合物である被覆材(a)を得る工程である。
ここで、被覆材(a)を得るのに、第1工程と別の容器で得ることが肝要である。すなわち、後続の第3工程で、蛍光体粒子(A)と被覆材(a)とを配合する際に水が存在すると、耐水性の低い蛍光体粒子のばあい、蛍光体粒子が損傷されてしまうが、本発明のように蛍光体粒子(A)と被覆材(a)とを別々の容器で作成すれば、そうした虞は非常に少なくなる。
【0039】
第2工程において、シラン有機金属化合物は、アルミニウム有機金属化合物および水との作用により、加水分解・縮合反応が進行し、時間の経過とともに徐々に縮合が進み、分子量が漸次に増加する。この際、所望の縮合度に止めることが肝要である。すなわち、あまり大きな分子量の被覆材(a)を第3工程で用いると、粒子表面への被覆性が低下するからである。一方、あまりに小さな分子量の被覆材(a)を用いると、第4工程の熱処理時の揮発等により膜質が低下するとともに耐湿性、耐水性が向上しないからである。このため、被覆材(a)の重量平均分子量は5000〜20000とすることが好ましい。
第2工程において、加水分解・縮合反応の終点判定は平均分子量の測定以外に、粘度測定、或いは、液のNMR測定でおこなう。粘度測定、NMR測定で縮合反応の進行度を把握できるからである。
【0040】
第2工程において、用いる有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、一般式:ROH(ここで、Rは、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基を表す。)で表されるアルコール溶媒が用いられるが、この中で、特にエタノール、又はイソプロピルアルコールが好ましい。
また、第2工程において用いるシラン有機金属化合物としては、特に限定されるものではなく、加水分解縮合物からなる被覆材(a)の作製時の安定性、被覆性および膜質から、トリアルコキシシランが好ましい。具体的にはメチル−、エチル−、i−プロピル−、i−ブチル−、n−プロピル−、n−ブチル−等のトリアルコキシシランが使用できる。この中で、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、又はn−プロピルトリメトキシシランがより好ましく、メチルトリメトキシシラン、又はメチルトリエトキシシランがさらに好ましい。
すなわち、メチルトリメトキシシランおよびメチルトリエトキシシランは、適度な反応速度であるために、長時間にわたる加水分解縮合物の作製においても急激な粘度上昇や沈殿物の生成、又は白濁化といった不安定さが生じることはなく、所望の分子量に制御することが可能である。
【0041】
なお、一般的にシリカ被覆膜を形成するために使用されるシラン有機金属化合物としては、テトラ−、ジアルコキシー等のアルコキシシラン、例えば、取り扱いが比較的容易で、反応性が活発であり、低コストであるテトラエトキシシラン(TEOS)が使用されているが、これらを第2工程に用いると安定性、被覆性および膜質のいずれかが劣り、所望の耐湿性を有する被覆膜が得られにくい。すなわち、経過時間の途中から急に反応が進み、液が白濁、次第に液全体が高粘度化してゲル化してしまうことがある。また、メトキシ基の官能基が減ったジメチルジメトキシシランでは、反応は一気に低下し、加水分解縮合反応が進みにくい。
【0042】
また、第2工程で用いるアルミニウム有機金属化合物としては、特に限定されるものではなく、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。
本発明において、アルミニウム有機金属化合物を用いるのは、それが有している蛍光体粒子を分散させる分散剤的な機能とシラン有機金属化合物の縮合を促進させる機能を応用し、シラン有機金属化合物の加水分解・縮合反応を活発化させるための触媒的な機能を利用するためである。
【0043】
また、第2工程で用いる水としては、導電率が4μS/cm以下であるイオン交換水が好ましい。
【0044】
第2工程において、有機溶媒、シラン有機金属化合物、アルミニウム有機金属化合物、および水の配合割合としては、特に限定されるものではなく、例えば、シラン有機金属化合物1に対して、質量比で、有機溶媒は0.5〜1、アルミニウム有機金属化合物は0.0125〜0.05、水は0.2〜0.5であることが好ましい。有機溶媒量が上記条件より多いと、その後の濃縮工程で時間がかかることなる。また、上記条件より少ないと、混合が不均一となる。また、これ以上にアルミニウム有機金属化合物を配合すると、シラン有機金属化合物の反応が活発化しすぎ、粒子表面に吸着せずに有機金属化合物縮合物同士が凝集し溶媒中で粗大沈殿を形成してしまう。
【0045】
第2工程の撹拌混合条件としては、特に限定されるものではないが、下記の要件を満足することが好ましい。
撹拌混合は、配合物を密封下に温度18〜40℃、好ましくは18〜30℃、より好ましくは20〜25℃で18〜96時間、好ましくは36〜72時間撹拌する。
温度をこれより低くすると反応が不十分となり、温度をこれより高くすると、反応が激しくなり過ぎ、白濁したり、沈殿物を形成したりする。本発明では、加水分解・縮合反応は白濁したり、沈殿物を形成したりしないようにある程度の時間を掛けて行う。こうすることにより安定して重量平均分子量は5000〜20000の被覆材(a)を収率良く得ることができる。したがって、有機溶媒等の揮発を防止するために密封下で攪拌する。
また、撹拌時間は18時間未満では、加水分解・縮合反応が不十分で、加水分解縮合物中に多くの低分子を含む。このため、熱又は水に対する耐性が劣り、良好な被覆膜として機能しない場合がある。一方、撹拌時間が96時間を超えると、形成される被覆膜は吸着性に劣り、局部的に未被覆部が生じやすい。
上記撹拌混合には、28〜48kHzの超音波振動を与えられる超音波ホモジナイザーを用いることが推奨されるが、撹拌羽、スターラ等の撹拌機を用いることも可能である。
【0046】
ところで、硫化物蛍光体粒子の場合には、上記のようにして得られた被覆材(a)を含む有機溶液(b)と蛍光体粒子(A)とを混合して、分離し、乾燥し、加熱して耐湿性、耐水性に優れた被覆膜(c)を有する蛍光体粒子(C)を得ることができ、こうすることが簡便で安価という点より望ましい。
しかし、酸化物蛍光体粒子や蓄光材用蛍光体にあっては、この方法では必ずしも十分とはいえない。加熱処理時に加水分解時に使用した水分、有機溶媒、または加水分解や縮合反応時に生成される水分や有機物、あるいは未反応のシラン有機金属化合物、さらには縮合が進まなかった低分子成分等が、前記下地膜と被覆材(a)との密着性を妨害するからである。
そのため、酸化物蛍光体粒子や蓄光材用蛍光体を対象とする場合には、加熱処理時に加水分解時に使用した水分、有機溶媒、または加水分解や縮合反応時に生成される水分や有機物、あるいは未反応のシラン有機金属化合物、さらには縮合が進まなかった低分子成分等を揮散させ、減少させるために、前記被覆材(a)を含む有機溶液(b)を撹拌しつつ濃縮する。この際、温度は12〜30℃とし、攪拌時間を10〜180分間とし、開放容器中で攪拌する。その後、真空濾過して被覆材(a)をえる。
なお、こうして得た被覆材(a)を用いて得られる被覆膜(c)は薄くでも緻密質な膜となるため、この場合には、膜厚を50〜170nmまで薄くしても良好な耐湿性と耐水性とを確保することができる。
【0047】
濃縮時に温度を上げて揮発を促進すると、揮発が活発となりすぎて、液が不均一化するので好ましくない。濃縮割合は液量が、重量百分率で処理開始前の元の重量に対して、80〜60%となるまで濃縮することが好ましく、75〜65%とすることがより好ましい。揮発量が少なく、重量減少が充分ではない被覆材を用いると、被覆膜の緻密性が向上しない。一方、揮発させすぎると液粘度が急激に上昇し、被覆材として使用できなくなる。攪拌濃縮の処理により得られた被覆材(a)の重量平均分子量は5000〜20000、好ましくは,7000〜12000である。重量平均分子量が5000より低いと加熱処理時に飛散量が多くなり、緻密質の被覆膜が得られない。また重量平均分子量が20000より大きいと下地膜への吸着が低下して被覆性が劣ることになる。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC分析))法にて測定できる。測定試料は被覆材(a)2ccを採取し、この中にテトラヒドロフラン18ccを加えて攪拌、濾過して調製した後に測定する。
【0048】
第2工程では水分量を制御するため、撹拌時の密封方法、有機溶媒中に含まれる水分量にも注意が必要である。すなわち、シラン有機金属化合物は、水分により加水分解・縮合反応するので、その水分量制御が前記反応の安定性に大きく影響する。そのため、例えば、ここで使用する容器としては、ビーカ口にシリコンゴム製のパッキンを設けて、出し入れ時以外の外気の侵入を極力防いだテフロン(登録商標)製ビーカを用いるか、外気を遮断したグローブボックス内等で作業することが好ましい。また、有機溶媒中に含まれる水分量を制御するために、市販の脱水有機溶媒を用いたり、蒸留直後の有機溶媒を用いたりすることも可能であるが、コスト高となってしまう。なお、有機溶媒中に含まれる水分量としては、カールフィッシャ水分計で0.4g/L以下が好ましい。
【0049】
なお、濃縮後、0.05〜0.1MPaの真空度で真空濾過して被覆材(a)を得る。こうしておけば、第3工程で使用する有機溶媒の量は、最低限で済み、場合によっては新規追加をせずとも被覆材(a)を蛍光体粒子(A)に被覆できる。したがって、有機溶剤の使用量、および廃棄量の低減に有効であり、生産性改善のみならず環境的にも有利な方法といえる。
【0050】
3)−3 第3工程
本願の第1の製法における第3工程の特徴的な部分についてまず説明する。第1の製法における第3工程では、第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、第2工程で得た被覆材(a)を含む有機溶液(b)と、要すれば有機溶剤とを混合し、得た混合物に超音波振動を与えて再分散させ、次いで、要すれば密封下に温度18〜60℃で0.2〜5時間撹拌混合し、その後、真空濾過してその表面に被覆材(a)膜を有する蛍光体粒子(B)を得る。この方法は、硫化物蛍光体粒子を対象とする場合に特に有効であり、濃縮分離操作を必要としない分、簡便で、安価な方法となる。
また、第1工程で得た下地膜を有する蛍光体粒子(A)を、予め有機溶媒中に十分に再分散させることが好ましい。すなわち、下地膜を有する硫化物蛍光体粒子(A)が凝集したままの状態で、被覆材(a)による被覆処理が行なわれると、該粒子の全面を被覆することができず、耐湿性、耐水性は向上しないからである。用いる有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、一般式:ROH(ここで、Rは、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基を表す。)で表されるアルコール溶媒が用いられるが、この中で、特にエタノール、又はイソプロピルアルコールが好ましい。ただし、有機溶液(b)を用いる関係で、蛍光体粒子(A)を分散させるための有機溶媒に制限が起きる。有機溶液(b)中の有機溶媒が過多の場合には、有機溶液(b)の濃縮は避けられない。蛍光体粒子(A)と有機溶液(b)との割合は、蛍光体粒子(A)と被覆材(a)との比に関係なく、質量比で蛍光体粒子(A)1に対して1〜15である。
これより小さい場合には均一攪拌ができず、これより大きい場合には被覆性が低下する。
ここで、再分散処理としては、超音波振動を付加する方法が好ましい。理由は前記と同様である。
【0051】
次に、本願の第2の製法における第3工程の特徴的な部分について説明する。本願の第2の製法における第3工程では、第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、第2工程で得た被覆材(a)とを、必要に応じて有機溶剤を配合して撹拌混合に付し、次いで、真空濾過に付し、有機溶媒を分離し、その表面にシラン有機金属化合物膜を形成した蛍光体粒子(B)を得る工程である。
ここで、前記撹拌混合に先立って、必要に応じて、第1工程で得た下地膜を有する蛍光体粒子(A)を、予め有機溶媒中に十分に再分散させることが好ましい。
すなわち、下地膜を有する蛍光体粒子(A)が凝集したままの状態で、被覆材(a)と混合攪拌されると、蛍光体粒子(A)の全面を被覆材(a)で被覆することができず、耐湿性、耐水性の向上は望めない。
再分散処理法としては、超音波振動を付加する方法が最適である。取り扱いの容易さと、確実性からである。超音波振動を付加すれば、容易に解砕し、分散が進む。次に、蛍光体粒子(A)が十分に分散した液中に、被覆材(a)を加えて撹拌混合すれば、被覆材(a)は下地膜を介して容易に吸着し、粒子表面全面にシラン有機金属化合物膜を形成する。
分散のために用いる有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、一般式:ROH(ここで、Rは、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基を表す。)で表されるアルコール溶媒が用いられるが、この中で、特にエタノール、又はイソプロピルアルコールが好ましい。
攪拌濃縮により不要な有機溶媒等を含まない被覆材(a)の吸着性は非常に高く、短時間の処理で耐湿性の高い被膜が得られる。
【0052】
次に、第3工程の共通の部分について説明する。
上記再分散処理は、上記第1工程と同様の条件が選ばれるが、長時間では、下地膜の剥離が起こる等により効果が低下するため、上記第1工程よりも短時間で、例えば、48kHzで5分間の条件が好ましい。
蛍光体粒子(A)と被覆材(a)との配合割合は、質量比で、蛍光体粒子(A)1に対して被覆材(a)1〜6、好ましくは3〜6である。被覆材(a)の添加量が上記条件よりすくなすぎると、濾過量が多くなるだけで無駄が多くなり、被覆量が上記条件より多くなりすぎると撹拌が不十分となり良好な被覆膜が形成できにくくなるため好ましくない。
また、攪拌混合は、溶媒の揮発を防止するために密封下で行っても良く、過剰の有機溶媒を揮発させるべく開放容器で行ってもよい。得られる膜質に差はない。攪拌時の温度は18〜60℃、好ましくは18℃〜30℃、より好ましくは20〜25℃とし、攪拌時間は0.2〜5時間、好ましくは0.1〜1時間とする。攪拌時間は余り短いと被覆が十分でなく、5時間以上処理しても被覆性に更なる改善はみられない。
上記撹拌混合としては、特に限定されるものではないが、超音波ホモジナイザーを用いる方法や、撹拌羽、スターラ等の撹拌機を用いる方法で行われる。この際、前記粒子が沈殿しないように撹拌を強めておくことが、均一な被覆をするため肝要である。
その後、0.05〜0.1MPaの真空度で濾過して、その表面に被覆材(a)が設けられた蛍光体粒子(B)を得る。
【0053】
2)−4 第4工程
本発明の第4工程は、第3工程で得た蛍光体粒子(B)を大気下に温度100〜110℃で0.5〜1時間乾燥し、次いで加熱処理に付し、前記シラン有機金属化合物膜中の有機物を熱分解し、その表面にSiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物膜(以下、単に無機化合物膜と呼称する場合がある。)からなる被覆層を形成した硫化物蛍光体粒子(C)を得る工程である。無機化合物膜が形成されることにより、耐湿性、耐水性が大きく向上する。
【0054】
第4工程では、まず第3工程で得られた蛍光体粒子(A)を乾燥するが、加熱前に乾燥を加えることで、付着した溶媒等の除去し被覆層を強固にすることができる。乾燥せずに高温加熱すると被覆層に割れが生じることがある。
乾燥後の被覆層に有機溶媒や水分、または未反応のシラン有機金属化合物等の残留物はほとんどない。乾燥処理した被覆発光体粒子をTG−DTA分析装置で熱減量測定を行うと、250℃到達時の熱減量率は0.2%以下を示す。このことから被覆層からの残留物がほとんどなく、乾燥後の被覆層の緻密性が高いことが確認できる。一方、乾燥後の被覆層に前記残留物が存在すると、熱減量測定による250℃到達時の熱減量率は0.2%以上となる。これは形成した被覆層中に残留物が多く含まれるために、熱処理することで残留物は揮発して熱処理後の被覆層には連続した欠陥が形成されることを示している。こうした被覆層では、耐水性効果は低下する。特に被覆層の膜厚が100nm以下と薄い場合は、この残留物による影響が大きく現れる。
【0055】
次に、被覆層の緻密性をより高めるために加熱処理するが、用いる加熱処理の雰囲気としては、特に限定されるものではなく、大気中、不活性ガス中、真空中、またはこれらの複数の雰囲気下に行なわれる。すなわち、大気中での酸化の影響を緩和するため、酸素の少ない不活性ガス中、真空中で処理することもできる。例えば、低温域で大気中処理して有機物を大方除去した後、これらの無酸素雰囲気を使って高温処理する方法が採られる。
加熱処理条件としては、温度は、蛍光体粒子の耐熱性に依存するが、200〜400℃が好ましい。すなわち、加熱温度が高いほど膜が強固となり耐湿性が向上する傾向にあるが、蛍光体粒子には大気に接触すると高温で分解を生じやすいものもあり、例えば、Euを含む蛍光体では、前記温度が400℃を超えると、酸素が存在する雰囲気、特に大気中で、Euが酸化し、2価から3価に変化してしまう。一方、アルミニウム又はシラン有機金属化合物の熱分解温度である200℃以上が用いられる。
加熱時間としては、0.5〜2時間が好ましく、1〜2時間がより好ましい。これによって、アルミニウム有機金属化合物からなる下地層、およびシラン有機金属化合物膜中の有機物が熱分解し、無機質化して、SiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物膜が得られる。
【0056】
こうして得る無機化合物膜の膜厚は50〜500nm、より好ましくは100〜170nmとする。すなわち、膜厚が50nm未満では、耐湿性、耐水性が十分に得られない。一方、膜厚が500nmを超えると、無機化合物膜により励起光が吸収され、結果として蛍光体粒子の発光強度が低下する。なお、500nmを超える膜厚を得るには、被覆材(a)の割合を大きくし、処理時間を長くし、また処理温度を上げればよい。しかし、被覆材(a)の割合を上げると、濾過後の乾燥時に蛍光体粒子(B)が凝集固化してしまい、これを用いてLED発光素子を作成すると、LED発光素子の発光にばらつきが生じる。また、処理時間を長くすると、コスト面で問題を生じる。また、処理温度を上げると、急激な縮合反応が起こり、被覆材(a)膜の厚さが不均一となりやすい。
【0057】
さらに、上記無機化合物膜としては、蛍光体粒子の表面は疎水化する効果もある。これにより、蛍光体粒子を水中に投入すると、該粒子は沈殿することなく水面に浮遊する。なお、このような疎水性の高さが、耐水性良好の要因にもなっている。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明の実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた膜厚および耐水性(導電率変化および発光強度変化率)の評価方法は、以下の通りである。
(1)被覆膜の膜厚の評価:エポキシ樹脂中に粒子を埋め込み、硬化後に断面を加工してSEM、またはTEM観察を行う。ここで、得た画像から被覆膜(n=5)の寸法を測定し、平均膜厚を求めた。この際、被覆膜は組成差によるコントラストに濃淡ができるため、2次電子像および反射電子像で鮮明に観察できる。なお、実施例で得た粒子の被覆膜をSEM−EDXで分析を行うと、SiとO元素が検出されたため、濃淡によって観察される膜が被覆によるものであると確認された。
(2)熱減量率:110℃乾燥後の試料をTG―DTA装置にて250℃での熱減量率を求めた。
(3)被覆材の重量平均分子量:GPC分析法で求めた。
(4)耐水性の評価:耐水性の評価として、粒子を水中に投入して導電率変化を求めた。すなわち、耐水性に劣る蛍光体粒子であると、粒子表面から成分が水中に溶出され、導電率は浸漬時間と共に上昇する。例えば、SrGa:Eu、および(Ba,Sr)SiO:Eu粒子の場合は、80℃の温水100mL中に粒子0.1gを投入し、10分間撹拌後の導電率変化を測定した。また、(Sr,Ba)SiO:Eu粒子では、25℃の温水100mL中に粒子0.1gを投入し、10分間撹拌後の導電率変化を測定した。
(5)被覆処理前後の発光強度変化:[被覆処理後の発光強度/被覆処理前の発光強度]を算出して求めた。
(6)耐湿試験による発光強度変化:85℃×85%RHの雰囲気下に500時間投入前後で発光強度を測定し、[耐湿試験後の発光強度/初期の発光強度]を算出して求めた。
なお、測定時の励起光の波長(Ex)、およびピーク発光波長(Em)は、(SrGa:EuがEx:460nm、Em:530nm、CaS:EuがEx:460nm、Em:630nm、CaAl:Eu、NdがEx:330nm、Em:440nm、(Sr、Ba)SiO:EuがEx:450nm、Em:570nm、および(Ba、Sr)SiO:EuがEx:450nm、Em:525nm、)であり、それぞれのピーク発光波長(Em)の発光強度を求めた。
また、実施例および比較例で用いた有機溶媒は、予め乾燥したモレキュラーシーブ (3A)500gを有機溶媒10L中に入れて水分を除去した後に使用した。なお、本発明の実施例で使用したイソプロピルアルコール(IPA)中の水分量はカールフィッシャ水分計で0.1g/lであった。
【0059】
(実施例1)
下記の第1〜4工程を行い、得られた蛍光体粒子(C)を評価した。
第1工程:アルミニウム有機金属化合物による下地膜の形成
イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製 試薬1級)2400gに、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=9.7μm)200gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間の処理を3回行って分散させた。この分散液に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)200gを添加し、25℃で4時間撹拌混合した。その後、液を真空濾過し、下地膜としてアルミニウム有機金属化合物を吸着させた蛍光体粒子(A)を回収した。
【0060】
第2工程:被覆材の作製
メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6366)100gに、エタノール(関東化学社製 試薬特級)68gと、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)2.5gと、イオン交換水32gとを添加し、25℃の温度に保持しながら、スターラで強撹拌して撹拌混合に付した。72時間経過後、シラン有機金属化合物の加水分解縮合物である被覆材(a)を含む有機溶液(b)を得た。なお、このときの粘度は、7mPa・Sであった。
【0061】
第3工程:被覆処理
エタノール(関東化学社製 試薬特級)50gに、上記第1工程で得た蛍光体粒子(A)10gを添加し、48kHzの超音波洗浄器で5分間分散させた。続いて、分散液を25℃の温度で0.5時間撹拌混合後、上記第2工程で得た被覆材(a)25gを含む有機溶液を(b)を添加し、開放状態で、温度を40℃に上昇させて有機溶媒を揮発させながら、0.5時間撹拌混合した後、液を真空濾過し、シラン有機金属化合物膜を表面に形成した蛍光体粒子(B)を回収した。
なお、本発明の実施例、比較例における真空濾過の条件としては、0.05〜0.1MPaの真空度を採用した。
【0062】
第4工程:焼成処理
上記第3工程で得た蛍光体粒子(B)を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、200℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜(c)を有する蛍光体粒子(C)を得た。
その後、上記蛍光体粒子(C)の膜厚、耐水性の評価(導電率変化)および被覆処理前後の発光強度変化を求め、得られた評価結果を表1に示した。
【0063】
(実施例2)
実施例1の第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、実施例1の第2工程で得た被覆材(a)を含む有機溶液(b)用いて、第3工程は下記の条件とし、実施例1と同様に第4工程を行い、得られた蛍光体粒子(C)を実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示した。
第3工程:被覆処理
イソプロピルアルコール(関東化学社製 試薬1級)50gに、上記第1工程で得た蛍光体粒子(A)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間分散させた。続いて、分散液を25℃の温度で0.5時間撹拌混合後、上記第2工程で得た有機溶液(b)を、被覆材(a)が25gになるように添加し、開放状態で、温度を50℃に上昇させて有機溶媒を揮発させながら、0.5時間撹拌混合した後、液を真空濾過し、シラン有機金属化合物膜を表面に形成した蛍光体粒子(B)を回収した。
【0064】
(実施例3)
実施例1の第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、実施例1の第2工程で得た有機溶液(b)用い、第3工程は下記の条件とし、実施例1と同様に第4工程を行い、得られた蛍光体粒子(C)を実施例1と同様にして評価した。得られた評価結果を表1に示した。
第3工程:被覆処理
エタノール(関東化学社製 試薬特級)25gに、上記第1工程で得た蛍光体粒子(A)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間分散させた。続いて、分散液を25℃の温度で0.5時間撹拌混合後、上記第2工程で得た有機溶液(b)を、被覆材(a)が25gとなるように添加し、密封状態で、温度を50℃に上昇させて1時間撹拌混合した後、液を真空濾過し、シラン有機金属化合物膜を表面に形成した硫化物蛍光体粒子(B)を回収した。
【0065】
(実施例4)
実施例1の第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、実施例1の第2工程で得た有機溶液(b)を用い、第3工程は下記の条件とし、実施例1と同様に第4工程を行い、得られた蛍光体粒子(C)を実施例1と同様にして評価した。得られた表結果を表1に示した。
第3工程:被覆処理
エタノール(関東化学社製 試薬特級)10gに、上記第1工程で得た蛍光体粒子(A)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間分散させた。続いて、分散液を25℃の温度で0.5時間撹拌混合後、上記第2工程で得た有機溶液(b)を被覆材(a)が25gとなるように添加し、密封状態で、25℃の温度で2時間撹拌混合した後、液を真空濾過し、シラン有機金属化合物膜を表面に形成した硫化物蛍光体粒子(B)を回収した。
【0066】
(実施例5)
実施例1の第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、実施例1の第2工程で得た有機溶液(b)を用い、第3工程は下記の条件とし、実施例1と同様に第4工程を行い、得られた蛍光体粒子(C)を実施例1と同様にして評価した。得られた評価結果を表1に示した。
第3工程:被覆処理
エタノール(関東化学社製 試薬特級)50gに、上記第1工程で得た硫化物蛍光体粒子(A)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間分散させた。続いて、分散液を25℃の温度で0.5時間撹拌混合後、上記第2工程で得た有機溶液(b)を被覆材(a)が25gとなるように添加し、密封状態で、30℃の温度で2時間撹拌混合した後、液を真空濾過し、シラン有機金属化合物膜を表面に形成した硫化物蛍光体粒子(B)を回収した。
【0067】
(実施例6)
実施例1の第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、下記の第2工程で得た有機溶液(b)を用い、第3工程は下記の条件とし、実施例1と同様に第4工程を行い、得られた蛍光体粒子(C)実施例1と同様にしてを評価した。得られた評価結果を表1に示した。
第2工程:被覆材の作製
メチルトリエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6383)100gに、エタノール(関東化学社製 試薬特級)70gと、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)2.5gと、イオン交換水37gとを添加し、25℃の温度に保持しながら、スターラで強撹拌して撹拌混合に付した。36時間経過後、被覆材(a)を含む有機溶液を得た。なお、このときの粘度は、6mPa・Sであった。
【0068】
第3工程:被覆処理
エタノール(関東化学社製 試薬特級)25gに、上記実施例1の第1工程で得た蛍光体粒子(A)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間分散させた。続いて、分散液を25℃の温度で0.5時間撹拌混合後、上記第2工程で得た有機溶液(b)を被覆材(a)が25gとなるように添加し、密封状態で、50℃の温度で1時間撹拌混合した後、液を真空濾過し、シラン有機金属化合物膜を表面に形成した蛍光体粒子(B)を回収した。
【0069】
(実施例7)
下記の第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、実施例1の第2工程で得た有機溶液(b)とを用い、第3工程は下記の条件とし、実施例1と同様に第4工程を行い、得られた硫化物蛍光体粒子(C)を実施例1と同様にして評価した。得られた評価結果は表1に示した。
第1工程:アルミニウム有機金属化合物による下地膜の形成
エタノール(関東化学社製 試薬特級)2000gに、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)27gを添加して混合した。この混合液に、カルシウムサルファイドユーロピウム(CaS:Eu、D50=3.6μm)200gを投入し、25℃の温度で1時間撹拌混合後、28kHzの超音波洗浄器で10分間づつ2回の分散処理を行い、さらに25℃の温度で5時間撹拌混合後、液を真空濾過し、蛍光体粒子(A)を回収した。
第3工程:被覆処理
エタノール(関東化学社製 試薬特級)25gに、上記第1工程で得た蛍光体粒子(A)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間分散させた。続いて、分散液を25℃の温度で0.5時間撹拌混合後、上記実施例1の第2工程で得た有機溶液(b)を被覆材(a)が25gとなるように添加し、密封状態で、25℃の温度で2時間撹拌混合した後、液を真空濾過し、シラン有機金属化合物膜を表面に形成した蛍光体粒子(B)を回収した。
【0070】
(実施例8)
下記の第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、実施例1の第2工程で得た有機溶液(b)を用い、第3工程は下記の条件とし、実施例1と同様に第4工程を行い、得られた蛍光体粒子(C)を実施例1と同様にして評価した。得られた評価結果を表1に示した。
第1工程:アルミニウム有機金属化合物による下地膜の形成
エタノール(関東化学社製 試薬特級)2000gに、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)27gを添加して混合した。この混合液に、ストロンチウムサルファイドユーロピウム(SrS:Eu、D50=2.2μm)200gを投入し、25℃の温度で1時間撹拌混合後、28kHzの超音波洗浄器で10分間づつ2回の分散処理を行い、さらに25℃の温度で5時間撹拌混合後、液を真空濾過し、蛍光体粒子(A)を回収した。
第3工程:被覆処理
エタノール(関東化学社製 試薬特級)25gに、上記第1工程で得た蛍光体粒子(A)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間分散させた。続いて、分散液を25℃の温度で0.5時間撹拌混合後、上記実施例1の第2工程で得た有機溶液(b)を被覆材(a)が25gとなるように添加し、密封状態で、25℃の温度で2時間撹拌混合した後、液を真空濾過し、シラン有機金属化合物膜を表面に形成した蛍光体粒子(B)を回収した。
【0071】
(実施例9)
以下の第1工程で得た蛍光体粒子(A)と実施例1の第2工程で得た有機溶液(b)とを用い、第3工程を以下のようにし、実施例1の第4工程と同様にして蛍光体粒子(C)を得、得られた蛍光体粒子(C)を実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示した。
第1工程:イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製鹿1級)200gに、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=9.7μm)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で10分間分散させた。この分散液に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)10gを添加し、25℃で3時間撹拌混合した。攪拌後、真空濾過により溶媒を除去してアルミニウム有機金属化合物層が形成された蛍光体粒子を得た。
次に、得られたその表面にアルミニウム有機化合物膜が設けられた蛍光体粒子10gをイソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製鹿1級)500gに添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間分散させた。
この分散液を12℃に冷却後、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル製ZC580)を56g、イオン交換水32g、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)0.2gを添加して8時間撹拌混合した後、室温に戻してさらに6時間攪拌混合した。分散液を真空濾過してその表面にアルミニウム有機化合物膜が設けられ、さらにその上にジルコニウム有機化合物膜が設けられた硫化物蛍光体粒子(A)を得た。
【0072】
第3工程:被覆処理
イソプロピルアルコール(関東化学社製鹿1級)50gに、上記第1工程で得た硫化物蛍光体粒子(A’)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間分散させた。続いて、分散液を25℃の温度で0.5時間撹拌混合後、上記第2工程で得た加水分解縮合物25gを添加し、開放状態で、温度を50℃に上昇させて有機溶媒を揮発させながら、0.5時間撹拌混合した後、液を真空濾過し、シラン有機金属化合物膜を表面に形成した硫化物蛍光体粒子(B)を回収した。
この温度で0.5時間撹拌混合後、上記第2工程で得た加水分解縮合物25gを添加し、開放状態で、温度を50℃に上昇させて有機溶媒を揮発させながら、0.5時間撹拌混合した後、液を真空濾過し、シラン有機金属化合物膜を表面に形成した硫化物蛍光体粒子(B)を回収した。
【0073】
(実施例10)
第1工程を以下のようにした以外は、実施例9と同様にして蛍光体粒子(C)を得、得られた蛍光体粒子(C)を実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示した。
第1工程:イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製鹿1級)500gにした以外は実施例9に、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=9.7μm)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で10分間分散させた。この分散液に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)10gを添加し、25℃で3時間撹拌混合した。
この分散液を12℃に冷却後、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル製ZC580)を56g、イオン交換水32gを添加して8時間撹拌混合した後、室温に戻してさらに6時間攪拌混合した。分散液を真空濾過して硫化物蛍光体粒子(A)を得た。
【0074】
(比較例1)
まず、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=9.7μm)10gと、エタノール(関東化学社製試薬特級)50gと、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6911)0.02gとを、25℃の温度で2時間撹拌混合した。続いて、この混合液に、テトラエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6697)5gと、イオン交換水2gを添加して、25℃の温度に保持しながら、スターラで強撹拌した。この後、アルカリ触媒としてアンモニア水を添加し、液全体をpH10に調整し、密封状態で25℃の温度で1時間撹拌混合した。次いで、この液を真空濾過し、粒子を回収した。
最後に、得た粒子を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、200℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した蛍光体粒子を得た。
得られた蛍光体粒子の表面状態を観察し、耐水性の評価(導電率変化)および被覆処理前後の発光強度変化を求め、得られた評価結果を表1に示した。
【0075】
(比較例2)
まず、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=9.7μm)10gと、エタノール(関東化学社製試薬特級)50gと、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6911)0.02gとを、25℃の温度で2時間撹拌混合した。続いて、この混合液に、テトラエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6697)5gと、イオン交換水2gを添加して、50℃の温度に保持しながら、スターラで強撹拌し、密封状態で50℃の温度で1時間撹拌混合した。この際、アルカリ触媒としてアンモニア水を添加し、液全体をpH10に調整した。次いで、この液を真空濾過し、粒子を回収した。
最後に、得た粒子を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、200℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した蛍光体粒子を得た。
得られた蛍光体粒子の表面状態を観察し、耐水性の評価(導電率変化)および被覆処理前後の発光強度変化を求め、得られた評価結果を表1に示した。
【0076】
(比較例3)
まず、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=9.7μm)10gと、エタノール(関東化学社製試薬特級)50gと、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6911)0.02gとを、18℃の温度で2時間撹拌混合した。続いて、この混合液に、テトラエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6697)10gと、イオン交換水3gを添加して、25℃の温度に保持しながら、スターラで強撹拌した。この後、アルカリ触媒としてアンモニア水を添加し、液全体をpH10に調整し、密封状態で18℃の温度で18時間撹拌混合した。次いで、この液を真空濾過し、粒子を回収した。
最後に、得た粒子を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、200℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した硫化物蛍光体粒子を得た。
得られた蛍光体粒子の表面状態を観察し、耐水性の評価(導電率変化)および被覆処理前後の発光強度変化を求め、得られた評価結果を表1に示した。
【0077】
(比較例4)
まず、テトラエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6697)5gと、エタノール(関東化学社製試薬特級)50gと、イオン交換水3gとの混合液に、酸触媒として酢酸を添加し、液全体をpH4に調整し、25℃の温度に保持しながら、スターラで強撹拌した。72時間経過後に溶液を取り出し、被覆材を得た。このときの粘度は、2mPa・Sであった。
次いで、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=9.7μm)10gと、エタノール(関東化学社製試薬特級)100gを混合し、25℃の温度で0.5時間撹拌混合後した。この液中に、前記被覆材20gを添加し、25℃の温度に保持しながら、スターラで強撹拌した。ここで、密封状態で、25℃の温度で1時間撹拌混合した後、液を真空濾過して粒子を回収した。
最後に、得た粒子を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、200℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した蛍光体粒子を得た。なお、酢酸により硫化物が劣化し,発光強度が著しく低下した。
得られた蛍光体粒子の表面状態を観察し、被覆処理前後の発光強度変化を求め、得られた評価結果を表1に示した。
【0078】
(比較例5)
まず、ジメチルジメトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6329)5gと、エタノール(関東化学社製試薬特級)50gと、イオン交換水3gとの混合液に、アルカリ触媒としてアンモニア水を添加し、液全体をpH10に調整し、25℃の温度に保持しながら、スターラで強撹拌した。72時間経過後に溶液を取り出し、被覆材を得た。このときの粘度は、2mPa・Sであった。
次いで、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=9.7μm)10gと、エタノール(関東化学社製試薬特級)100gを混合し、25℃の温度で0.5時間撹拌混合後した。この液中に、前記被覆材20gを添加し、25℃の温度に保持しながら、スターラで強撹拌した。ここで、密封状態で、25℃の温度で1時間撹拌混合した後、液を真空濾過して粒子を回収した。
最後に、得た粒子を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、200℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した蛍光体粒子を得た。
その後、得られた蛍光体粒子の膜厚、耐水性の評価(導電率変化)および被覆処理前後の発光強度変化を求め、得られた評価結果を表1に示した。
【0079】
(比較例6)
まず、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=9.7μm)10gと、アセトン(関東化学社製試薬特級)100gを混合し、25℃の温度で0.5時間撹拌混合後した。この液中に、比較例5で得た被覆材20gを添加し、25℃の温度に保持しながら、スターラで強撹拌した。ここで、密封状態で、25℃の温度で1時間撹拌混合した後、液を真空濾過して粒子を回収した。
最後に、得た粒子を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、200℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した蛍光体粒子を得た。
その後、得られた蛍光体粒子の膜厚、耐水性の評価(導電率変化)および被覆処理前後の発光強度変化を求め、得られた評価結果を表1に示した。
【0080】
(比較例7)
まず、カルシウムサルファイドユーロピウム(CaS:Eu、D50=3.6μm)2gを、エタノール(関東化学社製試薬特級)38gに添加して撹拌混合後、テトラエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6697)28gと、イオン交換水9.6gとを添加し、開放状態で、70℃の温度に保持しながら、スターラで2時間強撹拌した。次いで、この液を真空濾過して粒子を回収した。
最後に、得た粒子を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、200℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した蛍光体粒子を得た。
その後、得られた蛍光体粒子の膜厚、耐水性の評価(導電率変化)および被覆処理前後の発光強度変化を求め、得られた評価結果を表1に示した。
【0081】
(比較例8)
ストロンチウムサルファイドユーロピウム(SrS:Eu、D50=2.2μm)2gを、エタノール(関東化学社製試薬特級)38gに添加して撹拌混合後、テトラエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6697)28gと、イオン交換水9.6gとを添加し、開放状態で、70℃の温度に保持しながら、スターラで2時間強撹拌した。次いで、この液を真空濾過して粒子を回収した。
最後に、得た粒子を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、200℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した蛍光体粒子を得た。なお、硫化物粒子が溶解し、一部消失していたので、膜厚、耐水性の評価(導電率変化)および被覆処理前後の発光強度変化の測定は行わなかった。
【0082】
(比較例9)
ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=9.7μm)を被覆処理せずに、200℃の温度で1時間焼成処理した。
その後、得られた蛍光体粒子の耐水性の評価(導電率変化)を求め、得られた評価結果を表1に示した。
【0083】
(比較例10)
ストロンチウムサルファイドユーロピウム(SrS:Eu、D50=2.2μm)を被覆処理せずに、200℃の温度で1時間焼成処理した。
その後、得られた蛍光体粒子の耐水性の評価(導電率変化)を求め、得られた評価結果を表1に示した。
【0084】
(比較例11)
カルシウムサルファイドユーロピウム(CaS:Eu、D50=3.6μm)を被覆処理せずに、200℃の温度で1時間焼成処理した。
その後、得られた蛍光体粒子の耐水性の評価(導電率変化)を求め、得られた評価結果を表1に示した。
【0085】
【表1】

【0086】
表1より、実施例1〜10では、本発明の方法に従い、蛍光体粒子の表面にシラン有機金属化合物を用いて被覆層を形成する方法において、第2工程で得た被覆材(a)を含む有機溶液(b)と蛍光体粒子(A)とを接触させて被覆材(a)膜を有する硫化物蛍光体粒子(B)を得、これを加熱処理に付し、その表面に無機化合物膜からなる被覆層(c)を形成した硫化物蛍光体粒子(C)を得たので、LED等の発光素子に使用される硫化物蛍光体粒子の被覆層の形成において、その膜厚が200〜500nmであり、被覆処理前後の発光強度の低下が小さく、かつ耐湿性が著しく改善された表面被覆層を有する硫化物蛍光体粒子を効率的に製造することができることが分かる。
この方法の特徴としては、被覆材(a)を含む有機溶液(b)と蛍光体粒子(A)とを接触させて加熱処理、または被覆処理を行うことで、膜厚が200〜500nmを有する被覆材(a)膜を得ることにある。こうすることにより、従来の方法と比較して有機溶媒や水分を含む有機溶液(b)への蛍光体粒子(A)表面から溶出を最小限に抑えることができ、発光強度の低下を最小限に抑えることができ、かつ耐水性等を改善できる。
これに対して、比較例1〜11では、アルミニウム有機金属化合物による下地層の形成、被覆材の作製、又は被覆処理のいずれかにおいて、これらの条件に合わないので、耐湿性によって満足すべき結果が得られないことが分かる。
【0087】
(実施例11)
下記の第1〜4工程を行い、蛍光体粒子(C)を得た。
第1工程:アルミニウム有機金属化合物による下地膜の形成
イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製 試薬1級)4,000gに、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=5.6μm)200gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で10分間分散させた。この分散液に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)200gを添加し、25℃で3時間撹拌混合した。その後、液を0.05〜0.1MPaの真空度で真空濾過し、下地膜としてアルミニウム有機金属化合物を吸着させた蛍光体粒子(A)を回収した。
【0088】
第2工程:被覆材の作製
エタノール(関東化学製試薬1級)68gに、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製 Z−6366)100g、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH S75P)2.5gを添加し、25℃で攪拌混合に付した。これに加水分解用の水分32gを滴下した。さらに25℃、密閉下で72時間攪拌混合に付した。加水分解縮合液を開封し、重量減少率が32%に達するまで15℃で撹拌濃縮し、前記同様の条件で濾過後に被覆材(a)を得た。
【0089】
第3工程:被覆処理
第1工程で得た下地処理した蛍光体粒子(A)10g取り出し、第2工程で得た被覆材(a)50gを添加し、密閉下、25℃で30分間攪拌混合し、その後真空濾過して蛍光体粒子(B)を得た。
【0090】
第4工程:乾燥、加熱処理
硫化物蛍光体粒子(B)を、110℃で1時間加熱乾燥した後、300℃で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した蛍光体粒子(C)を得た。
上記硫化物蛍光体粒子(C)の被覆膜の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性および被覆処理前後の発光強度変化をもとめ、第2工程が終了した時点での溶液の粘度と合わせて表2に示した。
【0091】
(実施例12)
第2工程の条件を下記の条件とした以外は実施例11と同様にして蛍光体粒子(C)を得た。
得られた蛍光体粒子(C)の被覆膜の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性および被覆処理前後の発光強度変化をもとめ、第2工程が終了した時点での溶液の粘度と合わせて表2に示した。
第2工程:被覆材の作製
エタノール(関東化学製試薬1級)68gに、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製 Z−6366)100g、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH S75P)2.5gを添加し、25℃で攪拌混合に付した。これに加水分解用の水分32gを滴下した。さらに25℃、密閉下で36時間攪拌混合に付した。加水分解縮合液を開封し、重量減少率が32%に達するまで15℃で撹拌濃縮し、前記同様の条件で濾過後に被覆材(a)を得た。
【0092】
(実施例13)
蛍光体粒子として、アルミン酸カルシウムユーロピウムネオジム(CaAl:Eu,Nd、根本特殊化学製N夜光V300(商品名)、 D50=21.2μm)を使用し、且つ第2工程の条件を以下のようにした以外は実施例11と同様にして蛍光体粒子(C)を得た。得られた蛍光体粒子(C)の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性、被覆処理前後の発光強度変化、および耐湿試験による発光強度変化をもとめ、第2工程が終了した時点での溶液の粘度と合わせて表2に示した。
第2工程:被覆材の作製
エタノール(関東化学製試薬1級)64gに、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製 Z−6366)100g、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH S75P)4.0gを添加し、25℃で攪拌混合に付した。これに加水分解用の水分36gを滴下した。さらに25℃、密閉下で72時間攪拌混合に付した。縮合液を開封し、重量減少率が32%に達するまで15℃で撹拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に被覆材(a)を得た。
【0093】
(実施例14)
第3工程を下記の条件とした以外は実施例13と同様にして蛍光体粒子(C)を作成し、得られた蛍光体粒子(C)の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性および被覆処理前後の発光強度変化をもとめ、第2工程が終了した時点での溶液の粘度と合わせて表2に示した。
第3工程:被覆処理
第1工程で得た下地処理した蛍光体粒子(A)10g取り出し、第2工程で得た被覆材(a)50gを添加し、密閉下、20℃で60分間攪拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に蛍光体粒子(B)を得た。
【0094】
(実施例15)
蛍光体粒子として珪酸ストロンチウムバリウムユーロピウム(Sr、Ba)SiO:Eu、東京化学研究所社製D50=25μm)を使用し、第2〜3工程を下記の条件とした以外は実施例11と同様にして蛍光体粒子(C)を作成し、得られた蛍光体粒子(C)の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性、被覆処理前後の発光強度変化、および耐湿試験による発光強度変化をもとめ、第2工程が終了した時点での溶液の粘度と合わせて表2に示した。
第2工程:被覆材の作製
エタノール(関東化学製試薬1級)68gに、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製 Z−6366)100g、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH S75P)2.5gを添加し、25℃で攪拌混合に付した。これに加水分解用の水分32gを滴下した。さらに25℃、密閉下で96時間攪拌混合に付した。縮合液を開封し、重量減少率が32%に達するまで15℃で撹拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に被覆材(a)を得た。被覆材の平均分子量を求めた。
第3工程:被覆処理
第1工程で得た下地処理した蛍光体粒子(A)10g取り出し、第2工程で得た被覆材(a)50gを添加し、密閉下、25℃で10分間攪拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に蛍光体粒子(B)を得た。
【0095】
(実施例16)
第3工程を下記の条件とした以外は実施例13と同様にして蛍光体粒子(C)を作成し、得られた蛍光体粒子(C)の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性、被覆処理前後の発光強度変化、および耐湿試験による発光強度変化をもとめ、第2工程が終了した時点での溶液の粘度と合わせて表2に示した。
第3工程:被覆処理
第1工程で得た下地処理した蛍光体粒子(A)10g取り出し、第2工程で得た被覆材(a)30gを添加し、密閉下、25℃で10分間攪拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に蛍光体粒子(B)を得た。
【0096】
(実施例17)
第1〜3工程を下記の条件とした以外は実施例11と同様にして蛍光体粒子(C)を作成し、得られた蛍光体粒子(C)の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性、被覆処理前後の発光強度変化、および耐湿試験による発光強度変化をもとめ、第2工程が終了した時点での溶液の粘度と合わせて表2に示した。
第1工程:アルミニウム有機金属化合物による下地膜の形成
イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製鹿1級)800gに、蛍光体粒子として珪酸ストロンチウムバリウムユーロピウム(Sr、Ba)SiO:Eu、東京化学研究所社製D50=27μm)を80g添加し、28kHzの超音波洗浄器で5分間の処理を3回行い分散させた。この分散液に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)80gを添加し、25℃で4時間撹拌混合した。攪拌後、真空濾過により溶媒を除去してアルミニウム有機金属化合物層が形成された蛍光体粒子を得た。
第2工程:被覆材の作製
エタノール(関東化学製試薬1級)136gに、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製 Z−6366)200g、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH S75P)5gを添加し、25℃で攪拌混合に付した。これに加水分解用の水分64gを滴下した。さらに25℃、密閉下で72時間攪拌混合に付した。縮合液を開封し、重量減少率が27%に達するまで15℃で撹拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に被覆材(a)を得た。被覆材の平均分子量を求めた。
第3工程:被覆処理
第1工程で得た下地処理した蛍光体粒子(A)80g取り出し、第2工程で得た被覆材(a)210gを添加し、密閉下、25℃で15分間攪拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に蛍光体粒子(B)を得た。
【0097】
(実施例18)
第1〜3工程を下記の条件とした以外は実施例11と同様にして蛍光体粒子(C)を作成し、得られた蛍光体粒子(C)の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性、被覆処理前後の発光強度変化、および耐湿試験による発光強度変化をもとめ、第2工程が終了した時点での溶液の粘度と合わせて表2に示した。
第1工程:アルミニウム有機金属化合物による下地膜の形成
イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製鹿1級)120gに、蛍光体粒子として珪酸バリウムストロンチウムユーロピウム(Ba、Sr)SiO:Eu、D50=25μm)を10g添加し、28kHzの超音波洗浄器で10分間分散させた。この分散液に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)10gを添加し、25℃で2時間撹拌混合した。攪拌後、真空濾過により溶媒を除去してアルミニウム有機金属化合物層が形成された蛍光体粒子を得た。
第2工程:被覆材の作製
エタノール(関東化学製試薬1級)68gに、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製 Z−6366)100g、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH S75P)2.5gを添加し、25℃で攪拌混合に付した。これに加水分解用の水分32gを滴下した。さらに25℃、密閉下で72時間攪拌混合に付した。縮合液を開封し、重量減少率が30%に達するまで15℃で撹拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に被覆材(a)を得た。被覆材の平均分子量を求めた。
第3工程:被覆処理
第1工程で得た下地処理した蛍光体粒子(A)10g取り出し、第2工程で得た被覆材(a)50gを添加し、密閉下、25℃で20分間攪拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に蛍光体粒子(B)を得た。
【0098】
(実施例19)
第1〜3工程を下記の条件とした以外は実施例11と同様にして蛍光体粒子(C)を作成し、得られた蛍光体粒子(C)の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性、被覆処理前後の発光強度変化、および耐湿試験による発光強度変化をもとめ、第2工程が終了した時点での溶液の粘度と合わせて表2に示した。
第1工程:アルミニウム有機金属化合物による下地膜の形成
イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製鹿1級)50gに、蛍光体粒子として珪酸バリウムストロンチウムユーロピウム(Ba、Sr)SiO:Eu、D50=25μm)を10g添加し、28kHzの超音波洗浄器で10分間分散させた。この分散液に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)10gを添加し、25℃で18時間撹拌混合した。攪拌後、真空濾過により溶媒を除去してアルミニウム有機金属化合物層が形成された蛍光体粒子を得た。
第2工程:被覆材の作製
エタノール(関東化学製試薬1級)68gに、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製 Z−6366)100g、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH S75P)2.5gを添加し、25℃で攪拌混合に付した。これに加水分解用の水分32gを滴下した。さらに25℃、密閉下で72時間攪拌混合に付した。縮合液を開封し、重量減少率が30%に達するまで15℃で撹拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に被覆材(a)を得た。被覆材の平均分子量を求めた。
第3工程:被覆処理
第1工程で得た下地処理した蛍光体粒子(A)10g取り出し、第2工程で得た被覆材(a)50gを添加し、密閉下、25℃で60分間攪拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に蛍光体粒子(B)を得た。
【0099】
(実施例20)
第1〜3工程を下記の条件とした以外は実施例11と同様にして蛍光体粒子(C)を作成し、得られた蛍光体粒子(C)の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性、および被覆処理前後の発光強度変化をもとめ、第2工程が終了した時点での溶液の粘度と合わせて表2に示した。
第1工程:アルミニウム有機金属化合物による下地膜の形成
イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製鹿1級)120gに、蛍光体粒子として珪酸バリウムストロンチウムユーロピウム(Ba、Sr、Ca)SiO:Eu、D50=24μm)を10g添加し、28kHzの超音波洗浄器で10分間分散させた。この分散液に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)10gを添加し、25℃で2時間撹拌混合した。攪拌後、真空濾過により溶媒を除去してアルミニウム有機金属化合物層が形成された蛍光体粒子を得た。
第2工程:被覆材の作製
エタノール(関東化学製試薬1級)68gに、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製 Z−6366)100g、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH S75P)2.5gを添加し、25℃で攪拌混合に付した。これに加水分解用の水分32gを滴下した。さらに25℃、密閉下で72時間攪拌混合に付した。縮合液を開封し、重量減少率が30%に達するまで15℃で撹拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に被覆材(a)を得た。被覆材の平均分子量を求めた。
第3工程:被覆処理
第1工程で得た下地処理した蛍光体粒子(A)10g取り出し、第2工程で得た被覆材(a)50gを添加し、密閉下、25℃で20分間攪拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に蛍光体粒子(B)を得た。
【0100】
(比較例12)
まず、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=5.6μm)10gと、エタノール(関東化学社製 試薬特級)50gと、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6911)0.2gとを、25℃の温度で2時間撹拌混合した。続いて、この混合液に、テトラエトキシシラン(東レダウコーニング社製、Z−6697)10gと、イオン交換水4gを添加して、25℃の温度に保持しながら、スターラで強撹拌した。この後、アルカリ触媒としてアンモニア水を添加し、液全体をpH9に調整し、密封状態で25℃の温度で1時間撹拌混合した。次いで、この液を真空濾過し、粒子を回収した。
最後に、得た粒子を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、300℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した硫化物蛍光体粒子を得た。
その後、得られた蛍光体粒子の表面を観察し、耐水性をもとめ表2に示した。
【0101】
(比較例13)
ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=5.6μm)を被覆処理せずに、300℃の温度で1時間焼成処理した。
その後、得られた蛍光体粒子の表面を観察し、耐水性をもとめ表2に示した。
【0102】
(比較例14)
イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製 試薬1級)800gに、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=9.7μm)10gを添加し、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)30gを添加し、25℃で3時間撹拌混合した。分散液を真空濾過して硫化物蛍光体粒子を回収した。最後に、得た粒子を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、300℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した硫化物蛍光体粒子を得た。
その後、得られた蛍光体粒子の表面を観察し、被覆膜の膜厚、耐水性および被覆処理前後の発光強度変化をもとめ表2に示した。
【0103】
(比較例15)
イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製 試薬1級)800gに、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=5.6μm)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で10分間分散させた。この分散液に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)30gを添加し、25℃で3時間撹拌混合した。
この分散液を12℃に冷却後、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル社製、ZC580)56gとイオン交換水32gを添加して8時間撹拌混合した後、室温に戻してさらに6時間攪拌混合した。分散液を真空濾過して硫化物蛍光体粒子を回収した。最後に、得た粒子を110℃の温度で1時間加熱乾燥した後、300℃の温度で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した硫化物蛍光体粒子を得た。
得られた蛍光体粒子の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性および被覆処理前後の発光強度変化をもとめ、真空濾過直前のスラリーの粘度と合わせて表2に示した。
【0104】
(比較例16)
本例は、本発明の方法において蛍光体粒子に対するアルミニウム有機化合物が過剰な場合、および被覆材(a)の製造時の攪拌時間が2時間と短い例である。
下記の第1〜4工程を行い、蛍光体粒子(C)を得た。
得られた蛍光体粒子の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性および被覆処理前後の発光強度変化をもとめ、真空濾過直前のスラリーの粘度と合わせて表2に示した。
第1工程:アルミニウム有機金属化合物による下地膜の形成
イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製 試薬1級)800gに、ストロンチウムチオガレートユーロピウム(SrGa:Eu、D50=5.6μm)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で10分間分散させた。この分散液に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)30gを添加し、25℃で3時間撹拌混合した。その後、液を0.05〜0.1MPaの真空度で真空濾過し、濾過した粉末を下地膜としてアルミニウム有機金属化合物を吸着させた硫化物蛍光体粒子(A)を回収した。
第2工程:被覆材の作製
エタノール(関東化学製試薬1級)68gに、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製 Z−6366)100g、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH S75P)2.5gを添加し、25℃で攪拌混合に付した。これに加水分解用の水分32gを滴下した。さらに25℃、密閉下で2時間攪拌混合に付して被覆材(a)を得た。被覆材(a)の平均分子量を求めた。
第3工程:被覆処理
第1工程で得た下地処理した硫化物蛍光体粒子(A)10g取り出し、第2工程で得た被覆材(a)20gを添加し、密閉下、25℃で30分間攪拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に硫化物蛍光体粒子(B)を得た。
第4工程:乾燥、加熱処理
硫化物蛍光体粒子(B)を、110℃で1時間加熱乾燥した後、300℃で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した硫化物蛍光体粒子(C)を得た。
得られた蛍光体粒子の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性および被覆処理前後の発光強度変化をもとめ、真空濾過直前のスラリーの粘度と合わせて表2に示した。
本例では、第2工程で得たMTMS被覆材の縮合反応が不十分なため、これを用いて被覆した膜から、加熱時に分解ガス成分が発生し、被覆膜の膜質が悪化した。特にTG−DTA分析による熱減量の急増から、未反応のMTMS成分が多く揮発したことが示唆される。これが原因で耐水性、耐湿性とも不十分であった。
【0105】
(比較例17)
本例は、本発明の方法において蛍光体粒子に対するアルミニウム有機化合物が過剰な例である。
下記の第1〜4工程を行い、蛍光体粒子(C)を得た。
得られた蛍光体粒子の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性および被覆処理前後の発光強度変化をもとめ、真空濾過直前のスラリーの粘度と合わせて表2に示した。
第1工程:アルミニウム有機金属化合物による下地膜の形成
イソプロピルアルコール(IPA:関東化学社製 試薬1級)800gに、アルミン酸カルシウムユーロピウムネオジム(CaAl2O4:Eu,Nd、根本特殊化学製N夜光V300(商品名)、 D50=21.2μm)10gを添加し、28kHzの超音波洗浄器で10分間分散させた。この分散液に、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、ALCH S75P:濃度75質量%)30gを添加し、25℃で3時間撹拌混合した。その後、液を0.05〜0.1MPaの真空度で真空濾過し、濾過した粉末を下地膜としてアルミニウム有機金属化合物を吸着させた蛍光体粒子(A)を回収した。
得られた蛍光体粒子の重量平均分子量、熱減量率、被覆膜の膜厚、耐水性および被覆処理前後の発光強度変化をもとめ、真空濾過直前のスラリーの粘度と合わせて表2に示した。
【0106】
第2工程:被覆材の作製
エタノール(関東化学製試薬1級)136gに、メチルトリメトキシシラン(東レダウコーニング社製 Z−6366)100g、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル株式会社製、ALCH S75P)2.5gを添加し、25℃で攪拌混合に付した。これに加水分解用の水32gを滴下した。さらに25℃、密閉下で6時間攪拌混合に付して被覆材を得た。被覆材の平均分子量を求めた。
【0107】
第3工程:被覆処理
第1工程で得た下地処理した蛍光体粒子(A)10g取り出し、第2工程で得た被覆材(a)20gを添加し、密閉下、25℃で30分間攪拌混合を加え、前記同様の条件で濾過後に蛍光体粒子(B)を得た。
【0108】
第4工程:乾燥、加熱処理
硫化物蛍光体粒子(B)を、110℃で1時間加熱乾燥した後、300℃で1時間焼成処理し、被覆膜を形成した蛍光体粒子(C)を得た。
上記110℃乾燥後の試料をTG―DTA装置にて250℃での熱減量率を求めた。さらに300℃焼成後の試料の膜厚、被覆処理前後の発光強度変化、および耐水性(導電率変化)の評価方法により、上記蛍光体粒子(C)を評価した。結果を表2に示した。
【0109】
(比較例18)
アルミン酸カルシウムユーロピウムネオジム(CaAl:Eu,Nd、根本特殊化学製N夜光V300(商品名)、 D50=21.2μm)を被覆処理せずに、300℃の温度で1時間焼成処理した。
得られた蛍光体粒子の表面を観察し、耐水性および耐湿試験による発光強度変化をもとめ表2に示した。
【0110】
(比較例19)
珪酸ストロンチウムバリウムユーロピウム(Sr,Ba)SiO:Eu、東京化学研究所社製D50=27μm)を被覆処理せずに、300℃の温度で1時間焼成処理した。
得られた蛍光体粒子の表面を観察し、耐水性および耐湿試験による発光強度変化をもとめ表2に示した。
【0111】
(比較例20)
珪酸バリウムストロンチウムユーロピウム(Ba,Sr)SiO:Eu、D50=25μm)を被覆処理せずに、300℃の温度で1時間焼成処理した。
得られた蛍光体粒子の表面を観察し、耐水性および耐湿試験による発光強度変化をもとめ表2に示した。
【0112】
【表2】

【0113】
表2より、蛍光体粒子の表面にシラン有機金属化合物を用いて被覆膜を形成する方法において、本発明の所定の条件に従い、特に、第2工程でシラン有機金属化合物とアルミニウム有機化合物と、水とを混合し、所定の条件で反応させて加水分解縮合物をふくむ有機溶液を得、この有機溶液を濃縮し、真空濾過して被覆材(a)を得、これを用いて蛍光体粒子(B)を得、これを乾燥し、次いで加熱処理に付し、その表面に無機化合物膜からなる被覆膜を形成した蛍光体粒子(C)を得ている実施例11〜20では、LED等の発光素子に使用される蛍光体粒子の被覆膜の形成において、その膜厚が50〜170nmであり、蛍光強度の低下が小さく、かつ耐湿性、耐水性が著しく改善された被覆膜を備えた蛍光体粒子を効率的に製造することができることが分かる。
この方法の特徴としては、被覆処理により得られる膜厚は50〜170nmと薄目の被覆材(a)膜であるが、有機溶液(b)を予め濃縮することで、蛍光体粒子(B)と混合する被覆材(a)中に含有する有機溶媒や水分量を低減することができるため、被覆処理前後の発光強度の低下がない。逆に被覆膜の効果により光学特性が改善され、被覆処理後の発光強度は僅かに上昇傾向にある。本発明の方法においては被覆の形成方法を改善することにより、被覆後の発光強度の低下がなく、かつ緻密な膜質を有するために耐水性、耐湿性に優れたものである。
これに対して、比較例1〜17では、アルミニウム有機金属化合物による下地膜の形成、被覆材(a)の作製、又は被覆処理のいずれかにおいて、これらの条件に合わないので、耐水性、耐湿性によって満足すべき結果が得られないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上より明らかなように、本発明の被覆膜を備えた蛍光体粒子は、蛍光強度の低下がなく、かつ耐湿性と耐水性とが著しく改善されたものである。また、本発明の方法に従えば、こうした被覆膜を有する蛍光体粒子を効率的に製造できるので、特にLED等の発光素子分野で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さが50〜500nmの被覆膜を有し、かつ乾燥後にTG−DTA分析装置で測定した250℃到達時の熱減量率が0.2%以下である蛍光体粒子であって、
前記被覆膜は、SiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物からなることを特徴とする被覆膜を備えた蛍光体粒子。
【請求項2】
前記蛍光体粒子は、その構成元素として、イオウ(S)または酸素(O)の他に、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、ユーロピウム(Eu)、ディスプロシウム(Dy)および、ネオジム(Nd)から選ばれる少なくとも1種の元素を含み、かつ、その平均粒径が、D50で1〜50μmであることを特徴とする請求項1記載の被覆膜を備えた蛍光体粒子。
【請求項3】
前記蛍光体粒子は、さらに、その組成式が、CaS:Eu、SrS:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、SrGa:Eu、SrAl:Eu,Dy、CaAl:Eu,Nd、SrSiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)SiO:Euおよび(Ba,Sr)SiO:Euから選ばれる少なくとも1種で表される化合物相を含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の被覆膜を備えた蛍光体粒子。
【請求項4】
下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法。
第1工程:有機溶媒中に蛍光体粒子を添加し、28〜48kHzの超音波振動を10〜30分間与えて分散させ、これにアルミニウム有機金属化合物を添加し、密封下撹拌混合し、次いで真空濾過して固形分と有機溶媒とを分離して、その表面にアルミニウム有機金属化合物(下地膜)を吸着した蛍光体粒子(A)を得る。
第2工程:攪拌機付き密封容器中に有機溶媒と、シラン有機金属化合物と、触媒として作用するアルミニウム有機金属化合物と、加水分解用の水とを入れ、密封下に18〜40℃で18〜96時間撹拌混合して、シラン有機金属化合物の加水分解縮合物(被覆材(a))を含む有機溶液(b)を得る。
第3工程:第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、第2工程で得た有機溶液(b)と、要すれば有機溶剤とを混合し、得た混合物に超音波振動を与えて再分散させ、次いで、要すれば密封下に温度18〜60℃で0.2〜5時間撹拌混合し、その後、真空濾過してその表面に被覆材(a)膜を有する蛍光体粒子(B)を得る。
第4工程:第3工程で得た蛍光体粒子(B)を大気下に、温度100〜110℃で0.5〜1時間乾燥し、次いで加熱処理し、その表面にSiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物膜からなる被覆膜(c)を備えた蛍光体粒子(C)を得る。
【請求項5】
下記の第1〜4工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法。
第1工程:有機溶媒中に蛍光体粒子を添加し、28〜48kHzの超音波振動を10〜30分間与えて分散させ、これにアルミニウム有機金属化合物を添加し、密封下撹拌混合し、次いで真空濾過して固形分と有機溶媒とを分離して、その表面にアルミニウム有機金属化合物(下地膜)を吸着した蛍光体粒子(A)を得る。
第2工程:攪拌機付き密封容器中に有機溶媒と、シラン有機金属化合物と、触媒として作用するアルミニウム有機金属化合物と、加水分解用の水とを入れ、密封下に18〜40℃で18〜96時間撹拌混合して、シラン有機金属化合物の加水分解縮合物(被覆材(a))を含む有機溶液(b)を得る。次いで、得られた有機溶液(b)を開放容器中で温度12〜30℃に維持しつつ攪拌し、液量が元の重量に対し80〜60%になるまで濃縮する。次いで真空濾過して被覆材(a)を得る。
第3工程:第1工程で得た蛍光体粒子(A)と、第2工程で得た被覆材(a)と、要すれば有機溶剤とを混合し、得た混合物に超音波振動を与えて再分散させ、次いで、要すれば密封下に温度18〜60℃で0.2〜5時間撹拌混合し、その後、真空濾過してその表面に被覆材(a)膜を有する蛍光体粒子(B)を得る。
第4工程:第3工程で得た蛍光体粒子(B)を大気下に、温度100〜110℃で0.5〜1時間乾燥し、次いで加熱処理し、その表面にSiとOとを主成分とする非晶質の無機化合物膜からなる被覆膜(c)を備えた蛍光体粒子(C)を得る。
【請求項6】
前記第1工程において、有機溶媒は、エタノール、又はイソプロピルアルコールであり、前記アルミニウム有機金属化合物は、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、オクチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロプレート、又はアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)から選ばれる少なくとも一つであり、シラン有機金属化合物は、メチルトリエトキシシラン、又はメチルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項4または5に記載の被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法。
【請求項7】
前記第1工程において、有機溶媒は、質量比で、蛍光体粒子1に対して5〜50、アルミニウム有機金属化合物は、質量比で、蛍光体粒子1に対して0.1〜1であり、撹拌混合条件は、温度18〜60℃、攪拌時間0.5〜24時間とすることを特徴とする請求項6に記載の被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程において、有機溶媒は、一般式:ROH(ここで、Rは、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基を表す。)で示されるアルコールであり、シラン有機金属化合物はトリアルコキシシランであり、アルミニウム有機金属化合物はエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートであり、さらに加水分解用の水は、導電率が4μS/cm以下であるイオン交換水であることを特徴とする請求項7に記載の被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法。
【請求項9】
前記第2工程において、有機溶媒は、質量比で、シラン有機金属化合物1に対して0.5〜1であり、アルミニウム有機金属化合物は、質量比で、シラン有機金属化合物1に対して0.0125〜0.05であり、水は、質量比で、シラン有機金属化合物1に対して0.2〜0.5であることを特徴とする請求項8に記載の被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法。
【請求項10】
前記第3工程において、被覆材(a)は、質量比で、蛍光体粒子(A)1に対して1〜6であり、前記混合物に与える超音波振動は、28〜48kHzであり、与える時間は5〜15分間であることを特徴とする請求9に記載の被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法。
【請求項11】
前記第4工程において、加熱処理は、大気下に、温度200〜400℃で0.5〜2時間加熱するものであることを特徴とする請求項10に記載の被覆膜を備えた蛍光体粒子の製造方法。

【公開番号】特開2011−26535(P2011−26535A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245104(P2009−245104)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】