説明

被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置

【課題】 被覆長尺体の断面形状が非円形状の被覆にほぼ均等深さの環状切込みを形成して被覆を容易に剥ぎ取ることができる被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置を提供する。
【解決手段】 切削刃38及び切削刃移動部40を有する切削刃切込手段38を備えた被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置において、前記切削刃切込手段36の切削刃移動部40が、切削刃38を保持する切削刃ホルダ44と、該ホルダ44を収容するホルダスペース46aを有し、前記スペース46aに収容された切削刃ホルダ44を移動自在に支持するホルダフレーム46と、前記スペース46aの底部と切削刃ホルダ44との間に介在され、切削刃ホルダ44を被覆長尺体の被覆に向けて付勢し、被覆に切削刃38を押し付けて切り込ませる弾性部材48とを備え、切削刃38に作用する被覆からの切削抵抗の増減変動で弾性部材48を伸縮させ、切削刃ホルダ44を前記スペース46a内で進退移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線、ケーブル(光ケーブルを含む)等の被覆長尺体において、絶縁体、編組シールド、外装(シース)、防食層等の被覆の断面形状が円形状ではなく、矩形、長円形等のような非円形状のものでも、その被覆を剥ぎ取るのに好適な被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置として、図16に示す装置が提案されている。この装置は、基台(図示省略)に配設された、被覆長尺体Aの被覆Bに環状切込みCを形成するための環状切込形成ユニット1で構成される。その環状切込形成ユニット1は、被覆長尺体Aと同軸状に配設される固定軸2と、固定軸2に回転自在に装着され、固定軸2を回転中心に回転駆動される回転支持体3と、切削刃5及び切削刃5を被覆長尺体Aの軸線に垂直な方向に移動させる切削刃移動部6を有し、回転支持体3に装着されて固定軸2を回転中心に被覆長尺体Aの外周を回転駆動され、被覆Bに切削刃5を切り込ませる切削刃切込手段4と、被覆長尺体Aを把持する被覆長尺体クランプ7とを備える。
【0003】
前記切削刃切込手段4は2個有し、前記回転支持体3に180度対向するようにして配設されている。各切削刃切込手段4の切削刃移動部6は、回転支持体3の中心に向かって設置された支持レール8と、支持レール8に平行して設けられた移送ねじ9と、切削刃5を保持する切削刃ホルダ10とを備え、切削刃ホルダ10はこれに着設されたナット11が移送ねじ9に螺合され、支持レール8に移動自在に嵌挿される。移送ねじ9は回転支持体3に装着されたサーボモータ等の駆動体12の回転動力を、その回転軸13に嵌着されたプーリ14、プーリ14に装架されたベルト15を介してプーリ16に伝動し、プーリ16に結合された移送ねじ9を正逆回転させる。これにより、切削刃ホルダ10を昇降させ、各切削刃切込手段4の切削刃5を接近又は離隔させ、被覆長尺体Aの被覆Bに環状に切り込ませる深さが被覆Bの厚さ以下になるように調整する。なお、図16において、17は回転支持体3に同軸状に設けられた大歯車、18はこれにかみ合う小歯車、19は小歯車18を回転させるロータリーアクチュエータであり、ロータリーアクチュエータ19の駆動によって回転支持体3を正逆いずれかの方向に回転駆動させる(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−251746号公報(発明の詳細な説明の項の段落番号0011乃至0016及び図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の被覆剥ぎ取り装置は、その構造上、運転開始前に、切削刃切込手段4における切削刃移動部6の移送ねじ9を正逆回転させることにより、切削刃ホルダ10を昇降させ、切削刃5を接近又は離隔させて、被覆長尺体Aの被覆Bに所定深さの環状切込みが形成されるように、切削刃5の取り付け位置を調整するように構成されるものであり、運転中は切削刃の取付位置が予め調整された位置に固定される。
【0006】
そこで、被覆長尺体Aの被覆Bの断面形状が円形状の場合には、切削刃5の刃先と被覆長尺体Aの中心との距離が周方向の位置によって変位せず、被覆Bに切削刃5を全周にわたり所定深さに切り込ませてほぼ均等深さの環状切込みCを形成することが可能になる。従って、被覆Bを軸方向に引き抜いて剥ぎ取ることが容易で、切込み不足による被覆Bの引きちぎりや切込み過剰による被覆内部の損傷を防止することができる。
【0007】
しかしながら、被覆長尺体Aが、例えば、図17に示すように、2本の絶縁線心A1を並列に配置して、これらの外周に一括してシースとなる被覆Bを設けた平型ケーブルのような場合には、被覆Bの断面形状が円形状ではなく、長円形状(非円形状)になっているので、環状切込みCを形成するのが容易でない。即ち、このような被覆長尺体Aの被覆Bに切削刃5を切り込ませて環状切込みCを形成しようとすると、切削刃5の刃先と被覆長尺体Aの中心との距離が周方向の位置によって変位する。従って、被覆Bに切削刃5を全周にわたり所定深さに切り込ませてほぼ均等深さの環状切込みCを形成することが難しい。このため、被覆Bを軸方向に引き抜いて剥ぎ取ることが容易でなく、切込み不足による被覆Bの引きちぎりや切込み過剰による被覆内部の損傷を確実に防止することができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、被覆長尺体の被覆の断面形状が非円形状のものでも、被覆にほぼ均等深さの環状切込みを形成して被覆を容易に剥ぎ取ることができる被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された発明は、基台に配設された、被覆長尺体の被覆に環状切込みを形成するための環状切込形成ユニットで構成され、前記環状切込形成ユニットは、被覆長尺体と同軸状に配設される固定軸と、固定軸に回転自在に装着され、固定軸を回転中心に回転駆動される回転支持体と、切削刃及び切削刃を被覆長尺体の軸線に垂直な方向に移動させる切削刃移動部を有し、回転支持体に装着されて固定軸を回転中心に被覆長尺体の外周を回転駆動され、被覆に切削刃を切り込ませて環状切込みを形成する切削刃切込手段と、被覆長尺体を把持する被覆長尺体クランプとを備えた被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置において、前記切削刃切込手段の切削刃移動部が、切削刃を保持する切削刃ホルダと、切削刃ホルダを収容するホルダスペースを有し、ホルダスペースに収容された切削刃ホルダを被覆長尺体の軸線に垂直な方向に移動自在に支持するホルダフレームと、そのホルダスペースの底部と切削刃ホルダとの間に介在され、切削刃ホルダを被覆長尺体の被覆に向けて付勢し、被覆に切削刃を押し付けて切り込ませる弾性部材とを備え、切削刃に作用する被覆からの切削抵抗の増減変動で弾性部材を伸縮させ、切削刃ホルダをホルダスペース内で進退移動させるようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1記載の被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置において、前記切削刃切込手段における切削刃の刃先が切削刃ホルダの切削刃保持部分の外面から被覆長尺体の被覆に形成される環状切込みの深さに相当する高さ分、少なくとも被覆長尺体が在る側に突出するように構成されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項3に記載された発明は、請求項1又は2記載の被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置において、前記固定軸の切削刃切込手段側に、固定軸と同軸状に被覆長尺体を挿入して保持する長尺体挿入穴を有する保持筒体が連結固定され、保持筒体の長尺体挿入穴に、その穴に挿入された被覆長尺体の挿入長さを規制するストッパ部材が保持筒体の長手方向に移動可能に設けられることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に記載された発明は、請求項1、2又は3記載の被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置において、前記基台に複数の環状切込形成ユニットが並列して配設され、両ユニットが共通のユニット駆動手段に連結されて相互に連動して駆動されることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項5に記載された発明は、請求項1、2、3又は4記載の被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置において、前記基台に切削刃切込手段における切削刃の刃先突出高さ調整具が配設され、その刃先突出高さ調整具が、ブロック状の刃先突出高さ調整具本体の上面に、切削刃ホルダにおける切削刃保持部分の外形状に合致する形状を有する切削刃ホルダ受面と、切削刃の刃先の外形状に合致する形状を有する切削刃受面とが隣接して配置され、切削刃受面が切削刃ホルダ受面よりも被覆長尺体の被覆に形成される環状切込みの深さ分低くなるように形成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載された被覆剥ぎ取り装置によると、前記切削刃切込手段における切削刃移動部のホルダスペース内に、弾性部材を介して切削刃を保持する切削刃ホルダが被覆長尺体に対して進退移動し得るように支持されている。そこで、被覆の断面形状が非円形状である被覆長尺体の外周に切削刃を回転させながら、その被覆に切削刃を切り込ませて環状切込みを形成する際、切削刃の刃先と被覆長尺体の中心との距離が短くなる場合には、切削刃に作用する被覆からの切削抵抗が減少するので、弾性部材が伸長して切削刃ホルダが前進移動し、被覆に切込み不足が生じないように、切削刃を所定深さに切り込ませる。一方、切削刃の刃先と被覆長尺体の中心との距離が長くなる場合には、切削刃に作用する被覆からの切削抵抗が増大するので、弾性部材が縮んで切削刃ホルダが弾性部材の付勢に抗して後退移動し、被覆に切込み過剰が生じないように、同じ深さに切り込ませる。
【0015】
従って、被覆に切削刃を全周にわたり所定深さに切り込ませてほぼ均等深さの環状切込みを形成することが可能になる。これにより、被覆を環状切込み部位から引き抜いて剥ぎ取ることが容易になり、切込み不足による被覆の引きちぎりや切込み過剰による被覆内部の損傷を確実に防止することができる。
【0016】
本発明の請求項2記載の被覆剥ぎ取り装置によると、被覆長尺体の非円形状の被覆に切削刃を切り込む際、被覆の切削抵抗が増大して切削刃が後退し、弾性部材が縮むことにより切削刃の押付力が大きくなり、その刃先が被覆内に深く切り込もうとしても、切削刃保持部分が被覆の外面に当接し、刃先が設定された環状切込みの深さよりも深く切り込むのを規制される。よって、被覆長尺体の被覆に切込み過剰が生じるのをより確実に防止することができる。
【0017】
本発明の請求項3記載の被覆剥ぎ取り装置によると、前記固定軸の切削刃切込手段側に、固定軸と同軸状に長尺体挿入穴を有する保持筒体が連結固定されているので、被覆長尺体の外周に切削刃を回転させながら、被覆に切削刃を切り込ませて環状切込みを形成する際、被覆長尺体の自由端側が保持筒体でしっかりと保持される。従って、被覆長尺体の被覆に環状切込みを精度よく容易に形成することができる。また、保持筒体の長尺体挿入穴に、その穴に挿入された被覆長尺体の挿入長さを規制するストッパ部材が保持筒体の長手方向に移動可能に設けられるので、被覆に環状切込みを形成する位置のずれが減少し、所望長さの被覆を精度よく容易に剥ぎ取ることができる。
【0018】
本発明の請求項4記載の被覆剥ぎ取り装置によると、前記基台に複数の環状切込形成ユニットが並列して配設され、両ユニットが共通のユニット駆動手段に連結されて相互に連動して駆動されるので、複数本の被覆長尺体の被覆に同時に環状切込みを形成することができ、複数本の被覆長尺体の被覆を短時間に能率よく剥ぎ取ることができる。
【0019】
本発明の請求項5記載の被覆剥ぎ取り装置によると、前記基台に配設される切削刃の刃先突出高さ調整具が、切削刃ホルダにおける切削刃保持部分の外形状に合致する形状を有する切削刃ホルダ受面と、切削刃の刃先の外形状に合致する形状を有する切削刃受面とを有し、切削刃受面が切削刃ホルダ受面よりも被覆長尺体の被覆に形成される環状切込みの深さ分低くなるように構成される。従って、切削刃の刃先の突出高さが被覆長尺体の被覆に形成される環状切込みの所定深さに合致するかどうかを簡単、且つ、迅速に確認することができ、環状切込みの切込み不足や切込み過剰による切込み不良を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の実施形態を図面により詳細に説明する。図1は本発明に係る被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置の一実施形態を示す正面図、図2は図1のX−X線矢視図である。なお、従来の被覆剥ぎ取り装置と同一構成のものには同一符号が付してある。なお、本装置を用いて被覆Bが剥ぎ取られる被覆長尺体Aは、例えば、図17に示したように、2本の絶縁線心A1を並列に配置して、これらの外周に一括してシースとなる被覆Bを設けた平型ケーブルであり、被覆Bの断面形状が長円形状(非円形状)になっているものである。
【0021】
本実施形態の被覆剥ぎ取り装置は、図1、2に示すように、基台20に所定間隔をおいて並列して配設された、被覆長尺体Aの被覆Bに環状切込みCを形成するための2個の環状切込形成ユニット22、24と、これらユニット22、24を相互に連動して駆動する共通のユニット駆動手段26と、後記する切削刃切込手段36における切削刃38の刃先突出高さ調整具28とで構成される。
【0022】
環状切込形成ユニット22、24は同一構成であり、同一機能を有するので、環状切込形成ユニット22について説明し、環状切込形成ユニット24についての説明を省略する。
【0023】
環状切込形成ユニット22は、被覆長尺体Aと同軸状に配設される固定軸30と、固定軸30に、2個のボールベアリング等の軸受32により回転自在に装着され、固定軸30を回転中心に回転駆動されるベルトプーリからなる回転支持体34と、切削刃38及び切削刃38を被覆長尺体Aの軸線に垂直な方向に移動させる切削刃移動部40を有し、回転支持体34に装着されて固定軸30を回転中心に被覆長尺体Aの外周を回転駆動され、被覆Bに切削刃38を切り込ませて環状切込みCを形成する切削刃切込手段36と、被覆長尺体Aを把持する被覆長尺体クランプ42とを備える。
【0024】
固定軸30は基台20に取り付けられたスタンド31に支持される。また、固定軸30には、これに装着された回転支持体34が固定軸30の長手方向に移動するのを防止する環状体(リング)からなるセットカラー33がスペーサ35を介して設けられる。
【0025】
切削刃切込手段36の切削刃移動部40は、図2、3に示すように、切削刃38を保持する切削刃ホルダ44と、切削刃ホルダ44を移動自在に保持するホルダフレーム46と、切削刃ホルダ44を被覆長尺体Aの被覆Bに向けて付勢する弾性部材48と、切削刃ホルダ44の位置を切削刃の作業位置と非作業位置に切り替える、例えば、ねじ棒からなるホルダ位置切替ロッド50とを備える。
【0026】
更に詳細に説明すると、切削刃ホルダ44は、図4(a)(b)(c)に示すように、矩形板状のホルダ本体44aの下半部(被覆長尺体Aの在る側)の外面が下に凸の半円弧状に面取りされ、下半部から上半部にわたる切削刃保持部分44bにおいて、矩形板状本体44aの厚さ方向の中央よりやや後方寄り(図4(a)の左方寄り)に、被覆長尺体Aの在る下方及び被覆長尺体Aの軸線に垂直な両側方が開口する切削刃保持溝44cが形成されている。
【0027】
切削刃38は工具鋼材を円板状に加工して形成される。その半径は切削刃38が切削刃保持溝44cに挿着されたとき、刃先が切削刃ホルダ44の切削刃保持部分44bの外面から被覆長尺体Aの被覆Bに形成される環状切込みCの深さ(被覆Bの厚さ以下、好ましくはその厚さよりも若干薄い厚さ相当の深さ)に相当する高さ分、本実施形態では被覆長尺体Aの在る下方及び被覆長尺体Aの軸線に垂直な両側方に突出するように、切削刃ホルダ44の下半部の半円弧状径よりも大きな半径を有する。切削刃38は、図3に示すように、切削刃保持溝44cに、切削刃ホルダ44の切削刃保持部分44bの外面から刃先が環状切込みCの深さ(被覆Bの厚さ以下)に相当する高さ分だけ下方及び両側方に突出するようにして挿入され、止めねじ52で締め付け固定される。なお、54は止めねじ52を螺着するねじ穴である。
【0028】
前記切削刃38の刃先が切削刃ホルダ44の切削刃保持部分44bの外面から被覆長尺体Aの被覆Bに形成される環状切込みCの深さに相当する高さ分、少なくとも被覆長尺体Aが在る側に突出するように構成されると、被覆長尺体Aの非円形状の被覆Bに切削刃38を切り込む際、被覆Bの切削抵抗が増大して切削刃38が後退し、弾性部材48が縮むことにより切削刃38の押付力が大きくなり、その刃先が被覆B内に深く切り込もうとしても、切削刃保持部分44bが被覆Bの外面に当接し、刃先が設定された環状切込みCの深さよりも深く切り込むのを規制される。よって、被覆長尺体Aの被覆Bに切込み過剰が生じるのをより確実に防止することができる。
【0029】
ホルダフレーム46は、図5(a)(b)(c)に示すように、切削刃ホルダ44を収容するために、下部が開口した頭部有底の矩形状穴からなるホルダスペース46aを有し、そのホルダスペース46aに収容された切削刃ホルダ44を被覆長尺体Aの軸線に垂直な方向に移動自在に支持するようになっている。46bはホルダスペース46aの両短辺側内面に対向して形成された切削刃案内溝である。ホルダフレーム46の側部は回転支持体34の側部に互いに逆向きの屈曲端部を有する1個の連結片56で連結され、複数のロックボルト58で締め付け固定されて装着され、固定軸30を回転中心に被覆長尺体Aの外周を回転駆動される。
【0030】
弾性部材48は、コイルスプリング(図2、3参照)や複数個の皿状板ばねを重ね合わせたもの、ゴム状弾性体、空気ばねのような空気の圧縮性を利用したもの等からなり、図3に示すように、ホルダスペース46aの底部と切削刃ホルダ44との間に介在され、切削刃ホルダ44を被覆長尺体Aの被覆Bに向けて付勢し、被覆Bに切削刃38を押し付けて切り込ませる働きをする。また、弾性部材48は、切削刃38に作用する被覆Bからの切削抵抗の増減変動で伸縮し、切削刃ホルダ44をホルダスペース46a内で進退移動させることができるようになっている。
【0031】
ホルダ位置切替ロッド50は、一端(下端)が切削刃ホルダ44に螺着等により支持され、他端(上端)がホルダスペース46a内に在る弾性部材48内を貫通し、更に、ホルダフレーム46のホルダスペース46aの底部46cを貫通して前記ホルダフレーム46外へ導出される。そして、これを他端にナット59により締め付け固定して設けたレバー60で昇降させることにより、切削刃ホルダ44の位置を前記ホルダスペース46a内において、切削刃38が被覆Bに切り込む下方の作業位置と被覆Bから退避する上方の非作業位置に切り替える。
【0032】
また、本実施形態の被覆剥ぎ取り装置は、図2、6、7に示すように、前記固定軸30の切削刃切込手段36側に、固定軸30と同軸状に被覆長尺体Aを挿入して保持する断面矩形状の長尺体挿入穴62aを有する断面コ字型の保持筒体62の一端部がロックボルト63により連結固定されている。保持筒体62の上面にはその長手方向に沿って長尺体挿入穴62aに連通する細長いガイド穴62bが形成されている。保持筒体62の一側部の上部には上面が保持筒体62の上面と同じ高さになるようにして、保持筒体62の長手方向に沿って横鍔62cが突設されている。横鍔62cの上面には、その長手方向に沿って保持筒体62の長尺体挿入穴62aに挿入された被覆長尺体Aの挿入長さ(挿入深さ)を測るスケール(図示省略)が設けられている。
【0033】
また、保持筒体62の長尺体挿入穴62aに、その穴62aに挿入された被覆長尺体Aの挿入長さを規制するストッパ部材64が保持筒体62の長手方向に移動可能に設けられる。ストッパ部材64は図7(a)(b)に示すように、四隅の角部が45度に面取りされた直方体からなり、上部に保持筒体62のガイド穴62bに嵌入されるタブ64aが突設されている。ストッパ部材64は、タブ64aがガイド穴62bに嵌入された状態で保持筒体62の長尺体挿入穴62a内を移動する。そして、切削刃38から被覆長尺体Aの被覆Bの所定剥ぎ取り長さだけ被覆長尺体Aの進行方向に離隔した位置において、蝶ねじ66により締め付け固定される。
【0034】
前記固定軸30の切削刃切込手段36側に、固定軸30と同軸状に長尺体挿入穴62aを有する保持筒体62が連結固定されていると、被覆長尺体Aの外周に切削刃38を回転させながら、被覆Bに切削刃38を切り込ませて環状切込みCを形成する際、被覆長尺体Aの自由端側が保持筒体62でしっかりと保持される。従って、被覆長尺体Aの被覆Bに環状切込みCを精度よく容易に形成することができるので好ましい。また、保持筒体62の長尺体挿入穴62aに、その穴62aに挿入された被覆長尺体Aの挿入長さを規制するストッパ部材64が保持筒体62の長手方向に移動可能に設けられていると、被覆Bに環状切込みCを形成する位置のずれが減少し、所望長さの被覆Bを精度よく容易に剥ぎ取ることができるので好ましい。
【0035】
更に、保持筒体62の長尺体挿入穴62aの入口部(切削刃切込手段36側)には、図8(a)(b)(c)に示すように、被覆長尺体Aをガイドする下方が開口する断面コ字型の凹溝68aを有する長尺体挿入ガイド68が挿入され、ロックボルト70で固定されて取り付けられる。この挿入ガイド68により、被覆長尺体Aを長尺体挿入穴62aに円滑に挿入することができるので好ましい。
【0036】
被覆長尺体Aを把持する被覆長尺体クランプ42は、図1、2、9に示すように、被覆長尺体Aを把持するクランプ部72とこれにロックボルト76で締め付け固定することにより設けられた被覆長尺体Aを挿入ガイドするガイド部74とからなる。
【0037】
クランプ部72は、矩形ブロック状のクランプフレーム78と、そのフレーム78に形成された下方が開口するクランプスペース78aに収容され、被覆長尺体Aの軸線に垂直な方向に昇降可能なクランプ片80と、クランプスペース78aの底部78bとクランプ片80との間に介在され、クランプ片80を被覆長尺体Aに向けて付勢して被覆長尺体Aに押し付け、被覆長尺体Aを把持する弾性部材82と、クランプ片80の位置を被覆長尺体Aの把持位置と被覆長尺体Aの把持解放位置に切り替える、例えば、ねじ棒からなるクランプ片位置切替ロッド84とを備える。
【0038】
更に詳細に説明すると、クランプ片80は内側に被覆長尺体Aの外形状に合わせて半長円形状の凹溝80aが形成されている。また、この凹溝80aは被覆長尺体Aの外形状に合わせた形状にすることが好ましい。弾性部材82は、コイルスプリング(図2、9参照)や複数個の皿状板ばねを重ね合わせたもの、ゴム状弾性体、空気ばねのような空気の圧縮性を利用したもの等からなる。クランプ片位置切替ロッド84は、一端(下端)がクランプ片80に螺着等により支持され、他端(上端)がクランプスペース78a内に在る弾性部材82内を貫通し、更に、クランプフレーム78のクランプスペース78aの底部78bを貫通して前記クランプフレーム78外へ導出される。そして、これを他端にナット86により締め付け固定して設けたレバー88で昇降させることにより、クランプ片80の位置を前記クランプスペース78a内において、被覆長尺体Aを押える下方の把持位置と被覆長尺体Aをフリーにする上方の把持解放位置に切り替える。
【0039】
ガイド部74はL型ブロック状のガイド部本体74aの下方側に前後方向に被覆長尺体Aを挿通させてガイドする長円形状の挿通穴74bが設けられる。また、下方後部に、クランプ部72のクランプ片80により下方に押し付けられた被覆長尺体Aを下側から挟んで支持する舌状の支持受片74cが突設されて構成されている。ガイド部74は、そのガイド本体74aの両側部が基台20に取り付けられたスタンド90にボルト92及び平座金(平ワッシャ)94で昇降自在に支持される。
【0040】
ユニット駆動手段26は、図1、2に示すように、環状切込形成ユニット22、24に対し、所定間隔をおいて並列して配設される固定軸96と、その固定軸96にボールベアリング等の軸受98により回転自在に支持されるベルトプーリ100と、環状切込形成ユニット22、24の回転支持体34、34及びベルトプーリ100の外周にエンドレス状に掛け回されるタイミングベルト102と、環状切込形成ユニット24とベルトプーリ100との中間に配設され、タイミングベルト102の張力を増減調整する一対のテンションアイドラー104、104とを備える。
【0041】
固定軸96は、基台に取り付けられたスタンド106に支持される。一対のテンションアイドラー104、104は基台20に取り付けられたスタンド108に回転自在に、且つ、昇降自在に支持される。110はベルトプーリ100の一方の側部に取り付けられたベルトプーリ100を正逆転させるハンドルである。
【0042】
タイミングベルト102は内面に多数の歯形(図示省略)がベルト長手方向に所定ピッチで突設され、回転支持体34、34及びベルトプーリ100の外周面には、タイミングベルト102の歯形とかみ合う多数の歯形が同じピッチで突設され、タイミングベルト102と回転支持体34、34及びベルトプーリ100間に相対滑りが生じないようになっている。そして、ベルトプーリ100に付いているハンドル110を持って、ベルトプーリ100を図1において時計方向又は反時計方向に回転させることにより、環状切込形成ユニット22、24を相互に連動して駆動させ、切削刃切込手段36、36を固定軸30を回転中心に同期して回転駆動し得るようになっている。
【0043】
なお、環状切込形成ユニット22、24は共通のユニット駆動手段26で連動して駆動させる代りに、各形成ユニット22、24毎に独立したユニット駆動手段(図示省略)で駆動させるようにしてもよい。また、環状切込形成ユニット22、24は、いずれか一方の形成ユニット22若しくは24のみ、又は、3個以上配設するようにしてもよい。
【0044】
本実施形態のように、基台20に複数の環状切込形成ユニット22、24が並列して配設され、両ユニット22、24が共通のユニット駆動手段26に連結されて相互に連動して駆動されるように構成されていると、複数本の被覆長尺体Aの被覆Bに同時に環状切込みCを形成することができ、複数本の被覆長尺体Aの被覆Bを短時間に能率よく剥ぎ取ることができるので好ましい。
【0045】
切削刃38の刃先突出高さ調整具28は、図1、10に示すように、ブロック状の刃先突出高さ調整具本体112の上面に、切削刃ホルダ44における切削刃保持部分44bの外形状に合致する形状を有し、前記切削刃保持部分44bが当接する切削刃ホルダ受面112aと、切削刃38の刃先の外形状に合致する形状を有し、該刃先が当接する切削刃受面112bとが隣接して配置され、切削刃受面112bが切削刃ホルダ受面112aよりも被覆長尺体Aの被覆Bに形成される環状切込みCの深さ分低くなり、両受面112a、112b間に段差部112cが生じるように形成されるものである。
【0046】
この刃先突出高さ調整具28を使用する場合には、図11に示すように、刃先突出高さ調整具本体112の切削刃ホルダ受面112a及び切削刃受面112bの真上に切削刃切込手段36における切削刃移動部40の切削刃ホルダ44を位置させ、切削刃切込手段36を下降させて、切削刃ホルダ44を前記両受面112a、112bに当接させる。そして、図12に示すように、切削刃ホルダ44に保持された切削刃38の刃先が切削刃受面112bに当接するかどうか側方から視認し、刃先の突出高さの良否を判断する。その結果、刃先の突出高さが所定高さより低過ぎるか、高過ぎる場合には、止めねじ52を緩めて刃先の高さが所定高さになるように調整して、切削刃38を止めねじ52で締め付け、再度刃先の高さ状態の確認作業を行う。
【0047】
切削刃38の刃先突出高さ調整具28が前記したような切削刃ホルダ受面112aと切削刃受面112bとを有し、切削刃受面112bが切削刃ホルダ受面112aよりも被覆長尺体Aの被覆Bに形成される環状切込みCの深さ分低くなるように構成されていると、切削刃38の刃先の突出高さが被覆長尺体Aの被覆Bに形成される環状切込みCの所定深さに合致するかどうかを簡単、且つ、迅速に確認することができ、環状切込みCの切込み不足や切込み過剰による切込み不良を減少させることができるので好ましい。なお、図1、2において、114は基台20の長手方向の両端部近傍に取り付けられたコ字型の把手である。本実施形態の被覆剥ぎ取り装置は以上のような構成になっている。
【0048】
次に、本実施形態の装置を使用して、同一形状、構造、サイズの2本の被覆長尺体A、例えば、平型ケーブル(図17参照)の被覆Bに環状切込みCを形成する方法を説明する。先ず、図13、14に示すように、保持筒体62に設けられたストッパ部材64を保持筒体62の長尺体挿入穴62a内を移動させ、切削刃38から被覆長尺体Aの被覆Bの所定剥ぎ取り長さだけ被覆長尺体Aの進行方向に離隔した位置で蝶ねじ66により締め付け固定し、ストッパ部材64の位置を設定する。
【0049】
次に、環状切込形成ユニット22における被覆長尺体クランプ42のレバー88を手で引き上げて、クランプ片80を弾性部材82の付勢に抗して上昇させると共に、切削刃切込手段36のレバー60を引き上げて切削刃ホルダ44を弾性部材48の付勢に抗して上昇させる。
【0050】
次に、このような状態、即ち、クランプ片80及び切削刃ホルダ44を上昇させた状態で、被覆長尺体Aを図13の左側から被覆長尺体クランプ42の挿通穴74b及び保持筒体62の長尺体挿入穴62aに挿入し、被覆長尺体Aの先端部が保持筒体62に設けられたストッパ部材64に当接した時点で被覆長尺体Aの挿入を停止する。
【0051】
次に、被覆長尺体クランプ42のレバー88を引き上げる力を緩め、弾性部材82の付勢により、クランプ片80を下降させ、被覆長尺体Aに押し付けてこれを把持する。次いで、切削刃切込手段36のレバー60を引き上げる力を緩め、弾性部材48の付勢により、切削刃ホルダ44を下降させ、切削刃38の刃先を被覆長尺体Aの被覆Bの外面に押し付ける。
【0052】
次に、環状切込形成ユニット24についても前記ユニット22と同様な操作を行って、被覆長尺体クランプ42により他の被覆長尺体Aを把持すると共に、切削刃切込手段36により切削刃38の刃先を被覆長尺体Aの被覆Bの外面に押し付ける。
【0053】
次に、ユニット駆動手段26のベルトプーリ98のハンドル110(図1参照)を持って、ベルトプーリ98を、例えば、図1の時計方向に1乃至複数回回転させる。この回転に伴い、タイミングベルト102を介して環状切込形成ユニット22、24の切削刃切込手段36、36を固定軸30、30を回転中心に図13、14の矢印D方向へ同期して1乃至複数回回転させ、2本の被覆長尺体Aの被覆Bに切削刃38、38を切り込ませ、所定深さの環状切込みCを形成する。なお、環状切込みCの切込み深さは切削刃38、38が回転する度に徐々に増す。切削刃1回転当たりの切込み深さは、切削刃38、38の材質、刃先形状、押付力、被覆Bの材質、硬さ等によって変わるが、これを実験等により求めることができる。そこで、所定の環状切込みCの切込み深さ(被覆Bの厚さ以下)に対する切削刃38、38の所要回転数を容易に知ることができる。
【0054】
次に、2本の被覆長尺体Aの被覆Bに所要の環状切込みCを形成した後、ユニット駆動手段26の駆動を停止する。次いで、環状切込形成ユニット22における被覆長尺体クランプ42のレバー88を引き上げ、クランプ片80を上昇させて、被覆長尺体Aの把持を解放すると共に、切削刃切込手段36のレバー60を引き上げて切削刃ホルダ44を上方の非作業位置に退避させ、環状切込みCが形成された被覆長尺体Aを環状切込形成ユニット22から引き抜く。これと同様な操作を環状切込形成ユニット24についても行う。
【0055】
次に、一方の環状切込みCが形成された被覆長尺体Aについて、環状切込みCから剥ぎ取られる側(自由端側)の被覆Bを手動、ペンチ等の治具で軸線方向に引き抜いて剥ぎ取る。他方の環状切込みCが形成された被覆長尺体Aについても同様にして被覆Bを剥ぎ取る。被覆Bに環状切込みCを形成する際、切削刃切込手段36(切削刃38)を図13、14の矢印D方向に回転させたが、これと逆方向に回転させたり、矢印D方向とその逆方向に交互に回転させたりしてもよい。
【0056】
なお、本実施形態では、環状切込形成ユニット22、24の被覆長尺体クランプ42と切削刃切込手段36に被覆長尺体Aを挿入する際、被覆長尺体クランプ42のクランプ片80を上方の把持解放位置に、また、切削刃切込手段36の切削刃ホルダ44を上方の作業位置に上昇させるようにしたが、常時は、クランプ片80及び切削刃ホルダ44を上方の把持解放位置と非作業位置に保持させておき、被覆長尺体Aの被覆Bに環状切込みCを形成するために、環状切込形成ユニット22、24に被覆長尺体Aを挿入した後、被覆長尺体クランプ42のクランプ片80及び切削刃切込手段36の切削刃ホルダ44を下方の把持位置と作業位置まで下降させるようにしてもよい。このようにすると、被覆長尺体Aの挿入作業に手間がかからず楽になり、環状切込みCを形成する作業能率が向上するので好ましい。
【0057】
クランプ片80と切削刃ホルダ44を上方の前記位置に保持する手段としては、例えば、図15(a)(b)に示すような構成になっている。即ち、被覆長尺体クランプ42のクランプ片位置切替ロッド84と切削刃切込手段36のホルダ位置切替ロッド50にこれらロッド84、50を貫通して係止ピン116を両側から突設させ、被覆長尺体クランプ42のクランプフレーム78の底部78b(頭部)上、及び、切削刃切込手段36のホルダフレーム46の底部46c(頭部)上に、周方向に180度対向配置して形成される一対の縦長の係止溝118a(図15(a)(b)では裏側に形成される係止溝118aが省略されている)を有する環状のピン係止体118を設けて構成される。
【0058】
そして、常時は、クランプ片位置切替ロッド84(クランプ片80)及びホルダ位置切替ロッド50(切削刃ホルダ44)を上方の把持解放位置と非作業位置まで上昇させて、図15(a)に示すように、これらロッド84、50を係止ピン116がピン係止体118の係止溝118aから外れる位置、例えば、90度外れるようにいずれか一方向に回動させ、ピン係止体118の上面に係止ピン116を係止させることにより保持する。
【0059】
クランプ片位置切替ロッド84とホルダ位置切替ロッド50を下降させる場合には、これらロッド84、50を、図15(b)に示すように、係止ピン116が係止溝118aの上部開口に合致するように、一方向又は他方向に更に回動させて、係止ピン116による係止を解除すればよい。これにより、これらロッド84、50が弾性部材82、48により下方に引張られて下降する。一方、係止ピン116も係止溝118aに沿って下降しする。そして、係止ピン116が係止溝118aの底部に到達して係止されたとき、これらロッド84(クランプ片80)、50(切削刃ホルダ44)が下方の把持位置、作業位置まで下降して停止する。なお、クランプ片位置切替ロッド84とホルダ位置切替ロッド50を回動させたとき、クランプ片80、切削刃ホルダ44が一緒に回動しないように、これらロッド84、50をクランプ片80、切削刃ホルダ44に回転自在に支持することが望ましい。
【0060】
本発明の被覆剥ぎ取り装置は、上記実施形態の装置から明らかなように、前記切削刃切込手段36における切削刃移動部40のホルダスペース46a内に、弾性部材48を介して切削刃38を保持する切削刃ホルダ44が被覆長尺体Aに対して進退移動し得るように支持されている。そこで、被覆Bの断面形状が非円形状である被覆長尺体Aの外周に切削刃38を回転させながら、その被覆Bに切削刃38を切り込ませて環状切込みCを形成する際、切削刃38の刃先と被覆長尺体Aの中心との距離が短くなる場合には、切削刃38に作用する被覆Bからの切削抵抗が減少するので、弾性部材48が伸長して切削刃ホルダ44が前進移動し、被覆Bに切込み不足が生じないように、切削刃38を所定深さに切り込ませる。一方、切削刃38の刃先と被覆長尺体Aの中心との距離が長くなる場合には、切削刃38に作用する被覆Bからの切削抵抗が増大するので、弾性部材48が縮んで切削刃ホルダ44が弾性部材48の付勢に抗して後退移動し、被覆Bに切込み過剰が生じないように、同じ深さに切り込ませる。
【0061】
従って、被覆Bに切削刃38を全周にわたり所定深さに切り込ませてほぼ均等深さの環状切込みCを形成することが可能になる。これにより、被覆Bを環状切込みC部位から引き抜いて剥ぎ取ることが容易になり、切込み不足による被覆Bの引きちぎりや切込み過剰による被覆B内部の損傷を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のX−X線矢視図である
【図3】図2における切削刃切込手段の切削刃移動部を示す断面図である。
【図4】図3における切削刃移動部の切削刃ホルダを示すもので、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図である。
【図5】図3における切削刃移動部のホルダフレームを示すもので、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は右側面図である。
【図6】図2における固定軸に連結固定される保持筒体を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は左側面図である。
【図7】図2における保持筒体の長尺体挿入穴に移動可能に設けられるストッパ部材を示すもので、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
【図8】図2における保持筒体の長尺体挿入穴の入口部に挿入固定される長尺体挿入ガイドを示すもので、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は平面図である。
【図9】図1、図2における被覆長尺体クランプを示すもので、(a)は断面正面図、(b)は(a)のY−Y線矢視断面図である。
【図10】図1における切削刃の刃先突出高さ調整具を示すもので、(a)は正面図、(b)は左側面図である。
【図11】図10の刃先突出高さ調整具の使用状態を示す概要図である。
【図12】図11において、切削刃ホルダに保持された切削刃の刃先が刃先突出高さ調整具の切削刃受面に当接する状態の説明図である。
【図13】図1、2に示す被覆剥ぎ取り装置の使用方法を示す概要図である。
【図14】図13において、環状切込形成ユニットの切削刃切込手段を回転させて被覆長尺体の被覆に切削刃で切り込ませて環状切込みを形成している状態を拡大して示す説明図である。
【図15】図1、2に示す環状切込形成ユニットにおいて、被覆長尺体クランプのクランプ片と切削刃切込手段の切削刃ホルダを上方の所定位置に保持する手段の主要部を拡大して示すもので、(a)は保持した状態、(b)は保持を解除した状態の説明図である。
【図16】従来の被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置を示す概略正面図である。
【図17】被覆長尺体の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
A 被覆長尺体
A1 絶縁線心
B 被覆
C 環状切込み
20 基台
22 環状切込形成ユニット
24 環状切込形成ユニット
26 ユニット駆動手段
28 切削刃の刃先突出高さ調整具
30 固定軸
31 スタンド
32 軸受
33 セットカラー
34 回転支持体
35 スペーサ
36 切削刃切込手段
38 切削刃
40 切削刃移動部
42 被覆長尺体クランプ
44 切削刃ホルダ
44a ホルダ本体
44b 切削刃保持部分
44c 切削刃保持溝
46 ホルダフレーム
46a ホルダスペース
46b 切削刃案内溝
46c 底部
48 弾性部材
50 ホルダ位置切替ロッド
52 止めねじ
54 ねじ穴
56 連結片
58 ロックボルト
59 ナット
60 レバー
62 保持筒体
62a 長尺体挿入穴
62b ガイド穴
62c 横鍔
63 ロックボルト
64 ストッパ部材
64a タブ
66 蝶ねじ
68 長尺体挿入ガイド
68a 凹溝
70 ロックボルト
72 クランプ部
74 ガイド部
74a ガイド本体
74b 挿通穴
74c 支持受片
76 ロックボルト
78 クランプフレーム
78a クランプスペース
78b 底部
80 クランプ片
80a 凹溝
82 弾性部材
84 クランプ片位置切替ロッド
86 ナット
88 レバー
90 スタンド
92 ボルト
94 平座金
96 スタンド
98 ベルトプーリ
100 タイミングベルト
102 タイミングベルト
104 テンションアイドラー
106 スタンド
108 スタンド
110 ハンドル
112 刃先突出高さ調整具本体
112a 切削刃ホルダ受面
112b 切削刃受面
112c 段差部
114 把手
116 係止ピン
118 ピン係止体
118a 係止溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に配設され、被覆長尺体の被覆に環状切込みを形成するための環状切込形成ユニットで構成され、前記環状切込形成ユニットは、被覆長尺体と同軸状に配設される固定軸と、固定軸に回転自在に装着され、固定軸を回転中心に回転駆動される回転支持体と、切削刃及び切削刃を被覆長尺体の軸線に垂直な方向に移動させる切削刃移動部を有し、回転支持体に装着されて固定軸を回転中心に被覆長尺体の外周を回転駆動され、被覆に切削刃を切り込ませて環状切込みを形成する切削刃切込手段と、被覆長尺体を把持する被覆長尺体クランプとを備えた被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置において、前記切削刃切込手段の切削刃移動部が、切削刃を保持する切削刃ホルダと、切削刃ホルダを収容するホルダスペースを有し、ホルダスペースに収容された切削刃ホルダを被覆長尺体の軸線に垂直な方向に移動自在に支持するホルダフレームと、そのホルダスペースの底部と切削刃ホルダとの間に介在され、切削刃ホルダを被覆長尺体の被覆に向けて付勢し、被覆に切削刃を押し付けて切り込ませる弾性部材とを備え、切削刃に作用する被覆からの切削抵抗の増減変動で弾性部材を伸縮させ、切削刃ホルダをホルダスペース内で進退移動させるようにしたことを特徴とする被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置。
【請求項2】
前記切削刃切込手段における切削刃の刃先が切削刃ホルダの切削刃保持部分の外面から被覆長尺体の被覆に形成される環状切込みの深さに相当する高さ分、少なくとも被覆長尺体が在る側に突出するように構成されることを特徴とする請求項1記載の被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置。
【請求項3】
前記固定軸の切削刃切込手段側に、固定軸と同軸状に被覆長尺体を挿入して保持する長尺体挿入穴を有する保持筒体が連結固定され、保持筒体の長尺体挿入穴に、その穴に挿入された被覆長尺体の挿入長さを規制するストッパ部材が保持筒体の長手方向に移動可能に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載の被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置。
【請求項4】
前記基台に複数の環状切込形成ユニットが並列して配設され、両ユニットが共通のユニット駆動手段に連結されて相互に連動して駆動されることを特徴とする請求項1、2又は3記載の被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置。
【請求項5】
前記基台に切削刃切込手段における切削刃の刃先突出高さ調整具が配設され、その刃先突出高さ調整具が、ブロック状の刃先突出高さ調整具本体の上面に、切削刃ホルダにおける切削刃保持部分の外形状に合致する形状を有する切削刃ホルダ受面と、切削刃の刃先の外形状に合致する形状を有する切削刃受面とが隣接して配置され、切削刃受面が切削刃ホルダ受面よりも被覆長尺体の被覆に形成される環状切込みの深さ分低くなるように形成されることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の被覆長尺体の被覆剥ぎ取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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