説明

被覆電線の剥離装置とこの剥離装置によって剥離されたコイルを有する回転電機

【課題】剥離長さを任意に設定でき、戻しバネが不要であるとともに、切込み機構と回動機構の芯出しが容易で、偏心が少ない剥離が可能である、被覆電線の剥離装置を実現することである。
【解決手段】切削刃と、切削刃を切削される被覆電線の円周方向に回動させる回動機構と、切削刃を被覆電線の被覆に切込ます切込み機構と、切削刃で被覆電線の被覆を剥離する剥離機構とを備え、切込み機構に、モータの駆動を切削刃の被覆電線に対する上下方向の往復動に変換するリンク機構が設けられ、切削刃が、切削される被覆電線と同心円となる円周上に略均等の間隔で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線の剥離装置とこの剥離装置によって剥離されたコイルを有する回転電機に関するものであり、特に、短時間に精度良く被覆電線の被覆を剥離する装置と、この装置によって被覆が精度良く剥離された被覆電線をコイルに用いた信頼性の高い回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の被覆電線の剥離装置は、被覆電線の被覆材を剥離する手段として、往復動可能に配設されたV形状の2個の刃と、これら刃を被覆電線の外部から、この電線の心線に向けて、第1のモータの駆動により、設定速度で設定位置まで往動させて、刃を電線の被覆材に切込む切込み機構と、刃を電線の被覆材に切込んだ状態で、第2のモータの駆動により、刃を電線の周囲に沿って回動させる回動機構とを備えている。
【0003】
この被覆電線の剥離装置では、2個の刃はV字状であるので、切込み機構により被覆材は4箇所で切り込まれ、この状態で、回動機構により、刃が回転され、被覆電線の被覆材を輪切状にして剥離する。被覆材の剥離が終了した後は、切込み機構に設けられた戻しバネにより、刃が元の位置に戻る。
また、被覆電線の被覆剤を剥離する長さは、被覆電線の剥離装置の剥離長設定部に設けられたストッパ部材に被覆電線を当接させることにより設定される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−305822号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来の被覆電線の剥離装置では、絶縁材を剥離する長さの設定を、ストッパ部材で行っているため、任意の剥離長さを設定できなく、剥離処理の自由度が乏しいという問題があった。
また、剥離に用いられる刃の往動は、モータで行っているが、この刃の復動、すなわち戻し方向への移動には、戻しバネで行っており、余分な部品である戻しバネが必要であるとともに、バネは耐久性に劣るという問題もあった。
また、この従来の被覆電線の剥離装置では、切込み機構と回動機構の芯出しが困難であり芯ずれを生じやすく、芯がずれた分だけ被覆電線の剥離時に偏心を生じ、被覆材の剥離に支障を来たすとの問題もあった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、剥離長さを任意に設定でき、戻しバネが不要であるとともに、切込み機構と回動機構の芯出しが容易で、偏心が少ない剥離が可能である、被覆電線の剥離装置とこの剥離装置によって剥離されたコイルを有する信頼性の高い回転電機とを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる被覆電線の剥離装置は、切削刃と、切削刃を、切削される被覆電線の円周方向に回動させる回動機構と、切削刃を、被覆電線の被覆に切込ます切込み機構と、切削刃で、被覆電線の被覆を剥離する剥離機構とを備えた被覆電線の剥離装置であって、回動機構は、第1のモータと主軸と第1のモータにより主軸を回転させる第1の伝達機構とで形成され、主軸の内周部には、主軸と同時に回転し、主軸に対して軸方向に移動可能である中空円筒状の開閉軸が設けられ、開閉軸には切削刃が取り付けられた複数個のリンク機構が結合され、切削刃は、切削される被覆電線と同心円となる円周上に略均等の間隔で配置されており、切込み機構は、第2のモータと開閉軸と第2のモータにより開閉軸を軸方向に移動させる第2の伝達機構と開閉軸に結合されるとともに、切削刃が取り付けられた複数個のリンク機構とで形成され、リンク機構は、開閉軸を軸方向の移動を切削刃の被覆電線に対する上下方向の往復動に変換しており、剥離機構は、第3のモータとベースプレートと第3のモータによりベースプレートを軸方向に移動させる第3の伝達機構とで形成され、ベースプレートには、少なくとも回動機構と切込み機構とが搭載されたものである。
【0008】
本発明に係わる回転電機は、上記被覆電線の被覆剥離装置によって剥離された被覆電線でコイルを形成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係わる被覆電線の剥離装置は、切削刃と、切削刃を、切削される被覆電線の円周方向に回動させる回動機構と、切削刃を、被覆電線の被覆に切込ます切込み機構と、切削刃で、被覆電線の被覆を剥離する剥離機構とを備えた被覆電線の剥離装置であって、回動機構は、第1のモータと主軸と第1のモータにより主軸を回転させる第1の伝達機構とで形成され、主軸の内周部には、主軸と同時に回転し、主軸に対して軸方向に移動可能である中空円筒状の開閉軸が設けられ、開閉軸には切削刃が取り付けられた複数個のリンク機構が結合され、切削刃は、切削される被覆電線と同心円となる円周上に略均等の間隔で配置されており、切込み機構は、第2のモータと開閉軸と第2のモータにより開閉軸を軸方向に移動させる第2の伝達機構と開閉軸に結合されるとともに、切削刃が取り付けられた複数個のリンク機構とで形成され、リンク機構は、開閉軸を軸方向の移動を切削刃の被覆電線に対する上下方向の往復動に変換しており、剥離機構は、第3のモータとベースプレートと第3のモータによりベースプレートを軸方向に移動させる第3の伝達機構とで形成され、ベースプレートには、少なくとも回動機構と切込み機構とが搭載されたものであり、切込み機構の耐久性が優れているとともに、被覆電線を切削中心に配置する調芯が容易であり、偏心の少ない切削を容易に行うことができ、さらに、切込み機構と回動機構の芯出しも容易なものである。
【0010】
本発明に係わる回転電機は、上記被覆電線の被覆剥離装置によって剥離された被覆電線でコイルを形成したものであり、コイルを他の端子部材へ接続する時の半田付性が良好であるとともに、溶接性も向上しており、高い信頼性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置の要部であるリンク機構を示す断面模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置のリンク機構に取り付けられた切削刃の配置を示す正面模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置のリンク機構に用いられる台座を示す正面模式図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置のリンク機構に用いられるリンクバーを示す正面模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置のリンク機構に用いられるスイングプレートを示す正面模式図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置における図2に示したリンク機構におけるリンクバーと台座とスイングプレートとの結合部の構造を示す断面模式図である。
【図8】本実施の形態の被覆電線の剥離装置において、切削刃が被覆電線コイルの被覆に切込まれる状態を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による被覆電線の剥離装置の好適な形態を、図面を用いて説明するとともに、この剥離装置によって剥離されたコイルを有する回転電機の好適な形態について説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置の全体構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施の形態の被覆電線の剥離装置(被覆剥離装置と記す)100は、3相交流モータの第1のモータ1と、この第1のモータ1に取り付けられた第1のプーリ2と、主軸側プーリ4が一体固着された中空円筒状の主軸(主軸と記す)5と、第1のプーリ2と主軸側プーリ4とに架けられ、第1のモータ1の回転を主軸5に伝達するベルト3を備えている。
【0014】
主軸5はベアリング6とスリーブ8を介して、第1のハウジング9に回転可能に支承されており、第1のモータ1の駆動により、主軸5が回転する。
第1のハウジング9の主軸5を支承した壁部の反対側の壁部に接して第2のハウジング11が設けられている。
【0015】
また、主軸5の内周部には、軸受14を介して中空円筒状の開閉軸13が装着されており、開閉軸13は、軸方向に移動可能であるとともに、主軸とともに回転可能である。
そして、開閉軸13の中空部には、中空円筒状の第1のコイルガイド15が挿通されており、図1では、第1のコイルガイド15の内周部に、被覆電線のコイル(被覆電線と記す)16を保持している。
また、第2のハウジング11における第1のハウジング9と接する壁部の反対側の壁部には、第2のコイルガイド17が設けられている。
【0016】
また、図1に示すように、本実施の形態の被覆剥離装置100は、サーボモータの第2のモータ26と、第2のモータ26に第1のカップリング27を介して取り付けられ、且つ第2のモータ26で回転される第1のボールネジ28と、第1のボールネジ28の回転力を軸方向への移動力へ変換する第1のスライドブロック29とを備えている。
そして、第1のスライドブロック29にはベアリングホルダ30が設けられており、ベアリングホルダ30の内周部には、ベアリング32を介して、開閉軸13に一体固着されたホルダガイド31が装着されている。
すなわち、第1のスライドブロック29とベアリングホルダ30とホルダガイド31とベアリング32とは、第2のモータ26の回転を、開閉軸13の軸方向の移動に変換する機構である。
【0017】
また、図1に示すように、本実施の形態の被覆剥離装置100は、サーボモータの第3のモータ33と、第3のモータ33に第2のカップリング34を介して取り付けられ、且つ第3のモータ33で回転される第2のボールネジ35と、第2のボールネジ35の回転力を軸方向への移動に変換する第2のスライドブロック39が設けられたベースプレート36とを備えている。
【0018】
すなわち、第3のモータ33の駆動により、ベースプレート36は軸方向に移動する。
しかし、ベースプレート36には、第3のモータ33と第2のカップリング34と第2のボールネジ35とを除いた、被覆剥離装置100を構成する部品が載置されている。また、被覆電線16も、ベースプレート36の移動に対してフリーとなっている。
このベースプレート36の軸方向への移動にともない、切削刃19が軸方向へ移動して被覆電線16の被覆剥離の軸方向長さを調整できる。
また、図1に示すように、本実施の形態の被覆剥離装置100は、開閉軸13における第1のハウジング9側の端部には、切削刃19が取り付けられたリンク機構18が3個設けられている。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置の要部であるリンク機構を示す断面模式図である。
図3は、本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置のリンク機構に取り付けられた切削刃の配置を示す正面模式図である。
図4は、本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置のリンク機構に用いられる台座を示す正面模式図である。
図5は、本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置のリンク機構に用いられるリンクバーを示す正面模式図である。
図6は、本発明の実施の形態1に係わる被覆電線の剥離装置のリンク機構に用いられるスイングプレートを示す正面模式図である。
【0020】
図2に示すように、本実施の形態の被覆剥離装置100では、リンク機構18は、一端部に切削刃19が取り付けられる台座20と、一端部が台座20の他端部と係合され、且つ台座20と略直交するように配置され、他端部がリンクピン22を介して開閉軸13に連結されたリンクバー21と、リンクバー21と台座20との係合部に装着され、且つリンクバー21に対する台座20の装着位置を決定する一対のスイングプレート23とを備えている。
そして、スイングプレート23により、リンクバー21に対する台座20の装着位置を変化させることにより、切削刃19の切込み量の微調整が可能である。
【0021】
図3に示すように、本実施の形態の被覆剥離装置100では、切削刃19が取り付けられた3個のリンク機構18が設けられており、3個の切削刃19は、被覆電線16と同心円となる円周上に、被覆電線16を取り囲み略均等の間隔で配置されている。
また、図4に示すように、台座20は、その略中央に支点20aが形成され、他端部には、偏心ピン24を移動可能に挿通する係合孔20bが形成されている。
【0022】
また、図5に示すように、リンクバー21は、逆L字状であり、逆L字の底部側である他端部には、リンクバー21を開閉軸13に連結するためのリンクピン22を挿通する係合孔21cが形成されている。そして、逆L字の頭部側である一端部には、偏心ピン24を回動可能に支持する係合孔21aと、固定ボルト25が螺着されるネジ孔21bとが形成されている。
また、図6に示すように、スイングプレート23は、固定ボルト25を移動可能に挿通する長孔23bと、偏心ピン24を回動可能に支持する係合孔23aとが設けられている。
【0023】
図7は、図2に示したリンク機構におけるリンクバーと台座とスイングプレートとの結合部の構造を示す断面模式図である。
図7に示すように、リンクバー21に螺着された固定ボルト25は、スイングプレート23の長孔23b内を移動可能に挿通しており、偏心ピン24は、リンクバー21の係合孔21aとスイングプレート23の係合孔23aとに回動可能に支持されており、台座20の係合孔20b内を移動可能に挿通されている。
【0024】
次に、本実施の形態の被覆剥離装置100の動作について説明する。
第1のモータ1の駆動は、第1のプーリ2とベルト3と主軸側プーリ4とで形成された、主軸5を回転させる第1の伝達機構を介して、主軸5を回転させる。主軸5の回転は、同時に開閉軸13を回転させ、開閉軸13にリンクピン22で結合されたリンク機構18を回転させる。このことにより、リンク機構18を形成する台座20の一端部に取り付けられた切削刃19が回転する。
すなわち、第1のモータ1と第1の伝達機構と主軸5とで、切削刃19の回動機構を形成している。
【0025】
また、第2のモータ26の駆動は、第1のカップリング27と第1のボールネジ28と第1のスライドブロック29とベアリングホルダ30とホルダガイド31とベアリング32とで形成された、開閉軸13を軸方向に移動させる第2の伝達機構を介して、開閉軸13を軸方向へ移動させる。この開閉軸13の移動は、開閉軸13に結合したリンク機構18の作用により、リンク機構18に取り付けられた切削刃19の、被覆電線16に対する上下方向の往復動に変換される。
【0026】
具体的には、第2のモータ26の駆動により、開閉軸13が軸方向の第1のハウジング9側に移動すると、リンク機構18における、開閉軸13に連結したリンクバー21が軸方向に対して垂直になる方向にリンクピン22を軸として、回動する。すると、リンクバー21に、スイングプレート23を介して係合された台座20の他端部が上方に移動し、台座20の切削刃19が取り付けられる一端部が支点20aを軸として、下方に移動し、切削刃19が被覆電線16の被覆に切込まれる。
すなわち、第2のモータ26と第2の伝達機構と開閉軸13とリンク機構18とで、切込み機構を形成している。
【0027】
第3のモータ33の駆動により、第2のカップリング34と第2のボールネジ35と第2のスライドブロック39とで形成した、ベースプレート36を軸方向に移動させる第3の伝達機構を作動させて、ベースプレート36を軸方向へ移動させる。このベースプレート36の移動により、切削刃19が軸方向へ移動し、軸方向の長さが調整された被覆電線16の被覆を剥離する。
すなわち、第3のモータ33と第3の伝達機構とベースプレート36とで、剥離機構を形成している。
【0028】
また、本実施の形態の被覆剥離装置100では、リンクバー21に取付けられた偏心ピン24と台座20の係合孔20bとの位置を調節することにより、リンクバー21に対する台座20の取付け位置を任意に設定し、被覆電線16の被覆への切削刃19の切込み量を微調整する。
切削刃19の切込み量の微調整として、偏心ピン24と係合孔20bとの位置を決めた後、ボルト25を、スイングプレート23の長孔23bを挿通させてリンクバー21に螺着してリンクバー21と台座20との相対位置を固定する。
【0029】
次に、被覆電線16の被覆の剥離工程について説明する。
図8は、本実施の形態の被覆電線の被覆剥離装置において、切削刃が被覆電線の被覆に切込まれる状態を示す斜視模式図である。
図8では、3個あるリンク機構18の台座20に取り付けられた切削刃19の1個のみを示している。
第1の工程では、第1のモータの駆動により、3個の切削刃19が、被覆電線16の円周方向に回転する。第2の工程では、図8に示すように、第2のモータ26の駆動により、回転している被覆電線16の被覆に、切削刃19を所定の深さまで切込み、被覆に円周方向の切込みを形成する。第3の工程では、第3のモータ33の駆動により、切削刃19が軸方向へ移動して、所定の軸方向の長さの被覆電線16の被覆を剥離する。
【0030】
本実施の形態の被覆剥離装置100では、切削刃19による剥離長さを、サーボモータである第3のモータ33により任意に設定できるので、例えば、1つのワーク(コイル)内で、複数の剥離長さの設定が可能となる。
また、第2のモータ26と第3のモータ33とを同時に作動することにより、被覆電線16の剥離中に、被覆への切込み深さを変化させることができ、テーパや段付きの切削が可能となる。
【0031】
また、本実施の形態の被覆剥離装置100では、切削刃19を、被覆電線の被覆へ切込む往動と戻す復動とを、第2のモータ26で行い、復動の際の戻しバネが不要であり、切込み機構の耐久性が優れている。
さらに、図示しないが、切削刃19の切込み量を自動に測定する機構(切込み量自動測定機構と記す)を設け、この切込み量自動測定機構からの信号を第2のモータ26にフィートバックし、第2のモータ26の駆動を制御することにより、切削刃19の自動追込みが可能となる。
すなわち、切削刃19が磨耗しても、磨耗した分だけ自動で追込みを行なうことができ、リンク機構18の再調整が不要であり、自動運転中の手間を必要としない。また、コイルである被覆電線16の剥離径が変動せず、コイル品質の安定化につながる。
【0032】
また、本実施の形態の被覆剥離装置100では、3個の切削刃19が被覆電線16を囲んで設けられているので、被覆電線16を切削中心に配置する調芯が容易であり、偏心の少ない切削を容易に行うことができる。それと、切込み機構と回動機構の芯出しも容易となる。
また、リンク機構18が切削刃19と一緒に回転するので、テーパや段付きの切削が可能で、かつ、銅線単品(被覆無し)でも切削できる。
本実施の形態の被覆剥離装置100では、切削刃19が取り付けられた3個のリンク機構18が設けられており、3個の切削刃19は、被覆電線16と同心円となる円周上に、被覆電線16を取り囲み略均等の間隔で配置されているが、複数の切削刃19が同様に配置されれば、切削刃19が取付けられたリンク機構18の数は3個に限定されるものではなく複数であれば良い。
【0033】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2の回転電機は、実施の形態1の被覆剥離装置によって剥離されたコイルを有する回転電機である。
すなわち、実施の形態1の被覆剥離装置によって、被覆が剥離された被覆電線を、ステータコイルやロータコイルに用いた回転電機である。
【0034】
本実施の形態の回転電機では、ステータコイルやロータコイルに、実施の形態1の被覆剥離装置で被覆が剥離された被覆電線がコイルに用いられているので、コイルの剥離部表面に、被覆剥離装置の切削刃によって形成された螺旋状の模様が入っている。
そのため、本実施の形態の回転電機では、コイルを他の端子部材へ接続する時の半田付性が良好であるとともに、溶接性も向上しており、製造作業性が優れるとともに、高い信頼性を有する。
特に、実施の形態1の被覆剥離装置によって、口出し線の被覆を剥離したステータコイルを用いた交流発電機は、製造作業性と信頼性とが特に向上する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係わる被覆電線の被覆剥離装置は、被覆電線の剥離長さの設定や、配置される被覆電線の芯だしが容易であるので、製造作業性の向上が要求される回転電機の製造に用いられる。
【符号の説明】
【0036】
1 第1のモータ、2 第1のプーリ、3 ベルト、4 主軸側プーリ、5 主軸、
6 ベアリング、8 スリーブ、9 第1のハウジング、11 第2のハウジング、
13 開閉軸、14 軸受、15 第1のコイルガイド、16 被覆電線、
17 第2のコイルガイド、18 リンク機構、19 切削刃、20 台座、
20a 支点、20b 係合孔、21 リンクバー、21a 係合孔、21b ネジ孔、
21c 係合孔、22 リンクピン、23 スイングプレート、23a 係合孔、
23b 長孔、24 偏心ピン、25 固定ボルト、26 第2のモータ、
27 第1のカップリング、28 第1のボールネジ、29 第1のスライドブロック、
30 ベアリングホルダ、31 ホルダガイド、32 ベアリング、
33 第3のモータ、34 第2のカップリング、35 第2のボールネジ、
36 ベースプレート、39 第2のスライドブロック、100 被覆剥離装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削刃と、上記切削刃を、切削される被覆電線の円周方向に回動させる回動機構と、上記切削刃を、上記被覆電線の被覆に切込ます切込み機構と、上記切削刃で、上記被覆電線の被覆を剥離する剥離機構とを備えた被覆電線の剥離装置であって、
上記回動機構は、第1のモータと主軸と上記第1のモータにより上記主軸を回転させる第1の伝達機構とで形成され、上記主軸の内周部には、上記主軸と同時に回転し、上記主軸に対して軸方向に移動可能である中空円筒状の開閉軸が設けられ、上記開閉軸には上記切削刃が取り付けられた複数個のリンク機構が結合され、上記切削刃は、切削される上記被覆電線と同心円となる円周上に略均等の間隔で配置されており、
上記切込み機構は、第2のモータと上記開閉軸と上記第2のモータにより上記開閉軸を軸方向に移動させる第2の伝達機構と上記開閉軸に結合されるとともに、上記切削刃が取り付けられた複数個のリンク機構とで形成され、上記リンク機構は、上記開閉軸を軸方向の移動を上記切削刃の上記被覆電線に対する上下方向の往復動に変換しており、
上記剥離機構は、第3のモータとベースプレートと上記第3のモータにより上記ベースプレートを軸方向に移動させる第3の伝達機構とで形成され、上記ベースプレートには、少なくとも上記回動機構と上記切込み機構とが搭載されている被覆電線の剥離装置。
【請求項2】
上記切削刃が取り付けられたリンク機構の数が3個であることを特徴とする請求項1に記載の被覆電線の剥離装置。
【請求項3】
上記リンク機構は、略中央に支点を有し、一端部に切削刃が取り付けられる台座と、一端部が上記台座の他端部に係合され、他端部が開閉軸に連結され、且つ上記台座と略直交するように配置されたリンクバーと、上記台座と上記リンクバーとの係合部に装着された上記リンクバーに対する上記台座の装着位置を決定するスイングプレートとを備え、上記スイングプレートにて上記リンクバーに対する上記台座の装着位置を変化させて、上記切削刃の切込み量を微調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被覆電線の剥離装置。
【請求項4】
上記第3のモータにより、ベースプレートの軸方向への移動を制御し、被覆電線の剥離長さを調整することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の被覆電線の剥離装置。
【請求項5】
上記第2のモータと第3のモータとを同時に作動させることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の被覆電線の剥離装置。
【請求項6】
上記切削刃の切込み量を自動で測定する切込み量自動測定機構を設け、上記切込み量自動測定機構からの信号を第2のモータにフィートバックし、上記第2のモータの駆動を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の被覆電線の剥離装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の被覆電線の被覆剥離装置によって剥離された被覆電線でコイルを形成したことを特徴とする回転電機。
【請求項8】
上記コイルが交流発電機のステータコイルであることを特徴とする請求項7に記載の回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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