説明

被覆電線の端末接続部およびその防水処理方法と装置

【課題】 従来の熱収縮チューブに代えて樹脂モールドする金型成形を採用することで、その代表的な利点として作業労力を軽減して生産効率を格段に向上させることができる被覆電線の端末接続部を提供し、併せてその防水処理方法および装置を提供する。
【解決手段】 被覆電線10の先端部導体11に端子金具20を圧着して形成された端末接続部に、この底面を除く両側面と上面の三方に高粘度シール樹脂である湿気硬化性ポリウレタンホットメルトをモールド樹脂30に用いて被覆保護している。被覆成形後の端末接続部は、その底面が樹脂被覆されないので、端子金具をたとえば自動車ボディ4等にアース線として接続する場合でも接続面が密接状態になり、電気的な導通不良を発生しない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂モールドして防水処理を施した被覆電線端末接続部およびその防水処理方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、被覆電線の場合はその先端部を皮剥して導体を露出させ、その裸線導体にかしめなどして圧着した端子金具を介して電気部品や機器に接続される。圧着後の裸線導体をそのままにすると水分が伝って浸透し、毛細管現象によって被覆電線中に浸入する不都合がある。それを防止するために裸線導体を含む端末接続部を様々な被覆手段でもって保護して防水処理する。
【0003】たとえば、特開平10−289745号公報に記載されたアース用端子金具は、端末接続部の裸線導体に熱収縮チューブを被せて加熱溶着することで防水処理を施している。
【0004】図10(a)〜(c)は、熱収縮チューブを用いて被覆電線の端末接続部を防水処理する技術を概念的に示している。この場合、被覆電線1の先端部を皮剥した裸線導体1aに端子金具2のかしめ部2bをかしめて圧着し、そのように形成した端末接続部を端子金具2先端の接続部2aにたとえばねじやボルト3をねじ込み、自動車ボディ4等にアース線として接続した態様を示している。
【0005】被覆電線1に端子金具2を圧着して端末接続部を形成するに際して、図10(a)に示すように、前もって被覆電線1に熱収縮チューブ5を挿通させている。熱収縮チューブ5の内面には接着剤(ホットメルト)が塗布してある。端子金具2の圧着後その熱収縮チューブ5を前方へスライドさせ、端子金具2先端の接続部2aを除く端末接続部のほぼ全体を覆って被着する。続いて、図10(b)に示すように、熱収縮チューブ5を加熱溶融して特に剥き出しの裸線導体1aに溶着させて被覆成形部5Aを形成する。そうした被覆成形部5Aで端末接続部を被覆保護することにより、水分が被覆電線1中に伝って浸透しないように防水処理する。
【0006】その後、ボルト3で端子金具2先端の接続部2aを自動車ボディ4に接続する。その際、熱収縮チューブ5による被覆成形部5Aの肉厚分の寸法に相当する隙間cが図10(c)に示すように自動車ボディ4との間に生じると、接続部2aと自動車ボディ4との導通不良が発生する原因となる。その不具合を回避するため、図10(a)のように、加工段階で予め端子金具2の先端接続部2aとかしめ部2bとの境界に段差部2cを設けている。この段差部2cの段差寸法でもって被覆成形部5Aの肉厚寸法分だけ生じる隙間cを吸収するようにしている。
【0007】一方、他の防水処理手段として、たとえば特開平11−120986号公報に記載されたバッテリホルダ用接続プレートのように、電気自動車の電源電池への配線において、裸線導体に端子金具を圧着した端末接続部をモールド樹脂で被覆保護して防水処理を施す技術も周知である。この場合、モールド樹脂は一般にはポリアミド系ホットメルトが用いられ、これを溶融状態にして成形金型の射出ノズルから成型キャビティであるモールド部に射出注入する。また、溶融樹脂の温度は高温であることから、被覆電線1の絶縁被覆材にはそうした溶融モールド樹脂の高温に耐えるだけの耐熱性をもつポリアミド系樹脂が使用される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記前者の図10(a)〜(c)で示した熱収縮チューブを用いた防水処理手段の場合は次の問題点がある。
【0009】■ 加熱溶融して形成した被覆成形部5Aの肉厚だけ接続相手の自動車ボディ4などとの間に生じる隙間cを吸収するために、端子金具2に段差部2cを設けて屈曲形状にしている。自動車の車体振動が被覆電線1を通して屈曲形状の端子金具2に伝わると、その段差部2cの境目の屈曲部2dが振動支点となってそこに振動ストレスが働き、経時使用中に疲労で折損などしてしまう不都合がある。
【0010】■ かかる熱収縮チューブ5の使用は、予め被覆電線1に挿通する作業や加熱溶着作業を要するために、生産性が上がらない。
【0011】一方、上記後者の樹脂モールド防水処理手段にあっても次の問題点がある。
【0012】■ 被覆電線の絶縁体に溶融樹脂の高温に耐える耐熱性のポリアミド樹脂を用いることから、その被覆電線には高価な耐熱電線を用いざるを得ず、必要以上のものとなって不経済である。
【0013】■ モールド樹脂として使用するポリアミド系ホットメルトの場合、ガソリンなどの油成分によって脆弱化しやすいといった不具合があり、自動車などへの採用には甚だ不利である。
【0014】■ ポリアミド系ホットメルトを使用すると、溶融時の接着性を高めるために端子金具を予熱しておく必要があり、それだけ工数が増す。
【0015】■ ポリアミド系ホットメルトの射出時の溶融温度は220℃といったように高温であり、高温作業による作業者の労力負担が大きい。
【0016】したがって、本発明の目的は、被覆電線先端に端子金具をかしめなどして圧着した端末接続部の防水処理にあたって、従来の熱収縮チューブに代えて樹脂モールドする金型成形を採用することで、その代表的な利点として作業労力を軽減して生産効率を格段に向上させることができる被覆電線の端末接続部を提供し、併せてその防水処理方法および装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明にかかる請求項1に記載の被覆電線の端末接続部は、被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着して形成された圧着部に、この圧着部の底面を除く両側面と上面の三方に高粘度シール樹脂を被覆してなっていることを特徴とする。
【0018】以上の構成から、被覆成形後の端末接続部は、その底面が樹脂被覆されないので、端子金具をたとえば自動車ボディにアース線などとして接続する場合でも接続面が密接状態になり、電気的な導通不良を発生しない。導通不良を回避するために屈曲した段差部を設けた従来の端子金具の場合、その段差部に振動ストレスなどが働いて折損などの危惧があったが、端子金具にそうした段差部を設ける必要がなくなるので、折損などの危惧は解消される。
【0019】また、請求項2に記載の端末接続部は、前記高粘度シール樹脂が成形金型によって被覆成形されてなっていることを特徴とする。
【0020】以上の構成から、従来の熱収縮チューブの加熱溶着による防水処理手段と比較すると、その熱収縮チューブに代わって金型成形による樹脂被覆成形であるから、成形作業の能率化が図れる。
【0021】また、請求項3記載の端末接続部の防水処理方法は、成形金型40の成型空洞であるモールド部43の底面に、被覆電線10の先端部導体11に端子金具20を圧着した端子接続部の底面を密接させてセットし、前記モールド部43に溶融状態の高粘度シール樹脂を射出して注入することにより、この高粘度シール樹脂を前記端子接続部の底面を除く両側面と上面の三方に溶着させて冷却硬化後に離型することを特徴とする。
【0022】以上から、端子接続部における端子金具20の底面を型側のモールド部43の底面に密接させて、端子接続部の底面を除く両側面と上面の三方だけに高粘度シール樹脂を溶着させるので、それだけ成形が容易である。
【0023】また、請求項4に記載の被覆電線端末接続部の防水処理方法は、前記高粘度シール樹脂に湿気硬化性ポリウレタンホットメルトを用いることを特徴とする。
【0024】この場合、モールド用の高粘度シール樹脂に湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂を採用することにより、成形金型40での射出時溶融温度をたとえば約100℃といった低温に設定でき、この100℃という射出温度は従来の樹脂モールドに用いられるポリアミド系ホットメルトの220℃と比べても非常に低温である。これが実現することで、成形作業者は高温作業から解放され、労力負担も格段に軽減される。また、かかる本例の湿気硬化性ポリウレタンホットメルトの射出温度が100℃であっても、反応後は160℃前後の耐熱性を有する。このことは自動車エンジンルームなどの高温環境下で使用しても十分適応できて有利である。さらには、ポリアミド系ホットメルトを使用すると、溶融時の接着性を高めるために端子金具を予熱しておく必要があってそれだけ工数が増すが、湿気硬化性ポリウレタンホットメルトを用いることでそうした端子金具の予熱も不要となり、工数低減に有効である。
【0025】また、請求項5に記載の被覆電線端末接続部の防水処理装置は、成形金型40の成型空洞であるモールド部41の一側を弾性塞ぎ板47で閉塞するとともに、被覆電線10の先端部導体11に端子金具20を圧着した端末接続部を前記モールド部41にセットして、モールド部41の一側から後方へ延出する部分の被覆電線10を前記弾性塞ぎ板47で弾性保持した状態で、溶融状態の高粘度シール樹脂をモールド部41内に射出して端末接続部を被覆成形して防水処理するにあたり、前記モールド部41の底面が前記端末接続部の底面に密接できるよう平坦に形成され、その平坦な底面に対向する天井面に射出ゲートの湯道42を設けて、この湯道42から注入された前記溶融状態の高粘度シール樹脂を前記端末接続部の両側面と上面に溶着させるようにしてなることを特徴とする。
【0026】以上の構成により、モールド部41の底面の上位である天井面に射出ゲートの湯道を設けて、ここから溶融状態の高粘度シール樹脂を端末接続部の上面および両側面に向かって注入して溶着しやすくなる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる被覆電線の端末接続部および防水処理方法と装置のそれぞれ実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】図1は、被覆電線10の先端部を皮剥して露出させた裸線導体11に端子金具20をかしめて圧着した防水処理前の端末接続部を示す斜視図、図2はそれを回路基板4などに電気的に接続する態様を示す側面図である。
【0029】端子金具20は、先端部に平坦状に成形された接続部21を有し、この接続部21の中央部は開口部22に形成され、従来例の図10(a)〜(c)で示したボルト3を挿通させて自動車ボディ4などにアース線として接続する部分となっている。また、接続部21の後方部はかしめ加工して裸線導体11に圧着するかしめ部23,24となっている。
【0030】図3は、端子金具20を圧着して形成した端末接続部において、端子金具20の底面および先端の接続部21を除くほぼ全体にわたって高粘度シール樹脂によるモールド樹脂30を被覆成形して防水処理を終えた状態を一部断面で示す平面図である。図4は、その防水処理後の端末接続部をボルト3で自動車ボディ4にアース線として接続した状態を一部断面で示す側面図である。また図5(a),(b)は、図4のA−A線およびB−B線からの断面を示すそれぞれ正面断面図である。
【0031】図4および図5(a),(b)から明らかなように、防水処理後の本例の端末接続部は端子金具20の底面ならびに先端の接続部21を除くほぼ全体において、被覆電線10先端の裸線導体11と端子金具20のかしめ部23,24が図7〜図9に示す成形金型40によってモールド樹脂30で被覆され、所要の防水処理が施されている。
【0032】重要な点は、かしめ部23,24でかしめたいずれの個所においても、かしめ部23,24の底面23a,24a全面にわたって溶着したモールド樹脂30が盛り上がっておらず、面一に溶着されていることである。つまり、モールド樹脂30は端末接続部の上面部と両側面部の三方の面に十分に溶着して被覆し、一部のモールド樹脂30aがかしめ部底面23a,24aにそれぞれ両側から回り込んで若干溶着している。しかし、その底面に回り込んで溶着した一部のモールド樹脂30aの肉厚はかしめ部底面23a,24aの中心最高部を越えない程度であり、平坦な面一となっている。
【0033】したがって、図4に示すように、かしめ部23,24を自動車ボディ4の上面に載置セットした状態では、底面23a,24a全域が自動車ボディ4の上面に接触し、図10(a)〜(c)の従来の熱収縮チューブのように溶着樹脂の肉厚分の寸法に相当の隙間cが自動車ボディ4との間に生じない。それにより、端子金具20先端の接続部21と自動車ボディ4との間で電気的な導通不良を回避することができる。
【0034】したがって、従来例の図10(a)〜(c)の端子金具2のように、導通不良回避を目的とした段差部2cを設ける必要がなく、自動車などに配索使用されても車体振動によるストレスで折損する懸念が本例の端子金具20にあっては払拭される。
【0035】また、図6に示すように、本例の端末接続部は、この後部が紡錘形状になるようにモールド樹脂30で被覆成形しているので、その部分の被覆電線10が屈曲などした場合に樹脂が剥がれ難いといった利点もある。
【0036】ここで、本実施の形態の高粘度シール樹脂のモールド樹脂30は、ガソリンなど油成分に脆弱な従来のポリアミド系ホットメルトに代えて、湿気硬化性の樹脂、具体的にはポリウレタンホットメルトが成形コンパウンドとして使用されている。
【0037】湿気硬化性ポリウレタンホットメルトは、特表平10−511716号公報に開示されたものを適用することができる。すなわち、その開示された特性を一部以下に転載するに、「溶融粘度は好ましくは50Pa・s以下で、より好ましくは20Pa・s以下のものであり、ウレタン基を含有する実質的に無溶媒の接着剤である。また、それは室温で固体状態となっており、溶融物の形態で適用した後に、冷却によって物理的に硬化するだけなく、なお存在するイソシアネート基と湿気との化学反応によっても硬化する接着剤であると解される。」としている。さらに、「湿気硬化性は、ポリウレタンホットメルトが水、より具体的には大気中湿気の形態にある水との連鎖延長反応を起こすシランおよび/またはイソシアネート基を含有することを意味する。」とある。
【0038】すなわち、本実施の形態では、高粘度シール樹脂によるモールド樹脂30の一例として粘度20Pa・sの湿気硬化性ポリウレタンホットメルトを用い、成形金型40での射出時溶融温度を約100℃に設定している。前述したように、この100℃という射出温度は従来の樹脂モールドに用いられるポリアミド系ホットメルトの220℃と比べても非常に低温である。これが実現することで、成形作業者は高温作業から解放され、労力負担も格段に軽減される。
【0039】また、かかる本例の湿気硬化性ポリウレタンホットメルトの射出温度が100℃であっても、反応(PuR−HMi)後は160℃前後の耐熱性を有する。このことは自動車エンジンルームなどの高温環境下で使用しても十分適応できることを意味している。
【0040】次に、上記湿気硬化性ポリウレタンホットメルトをモールド樹脂30として用いた防水処理方法とその装置について、装置主要部をなす図7〜図9の成形金型40において説明する。
【0041】平面図の図7において、この場合上下型44,45などからなる単一の成形金型40に二個所設けた成形部A,Bにおいて、2つの成形ワークつまり端子接続部に対して同時成形を行うことができる。図8は、その一方の成形部Aを示す側面からみた上型44と下型45などから構成される断面図であり、図9は他方の成形部Bを示す側面断面図である。
【0042】成形部Aの所定位置には、被覆電線10の裸線導体11に端子金具20を圧着した端末接続部一式がこの先端の接続部21を平らにして載置セットされる。この成形部Aでは、モールド部41の底面が端末接続部の底面に密接できるよう平坦に形成され、その平坦な底面に対向する天井面または斜め側面に射出ゲートの湯道42を設けている。また、端子金具20の先端接続部21を平らにセットするので、その開口部22に挿通して位置決めするための位置決めピン43が図に垂直な方向に立ち上げて設けられている。さらに、モールド部43の一側は金型外部に臨んで開口されており、その一側開口部をゴム材による弾性塞ぎ板47で閉塞している。一側開口部をそうした弾性塞ぎ板47で塞ぐ意味は、端子金具20の後方に延びる被覆電線10は防水処理を要しないから、モールド部43の一側開口部から型外に出される。その被覆電線10の出際部分をかかる弾性塞ぎ板47で弾性保持する。弾性塞ぎ板47はクランプ48によって保持されている。このようなモールド部43では、上位の湯道42から溶融状態のモールド樹脂30を端末接続部の上面および両側面に向かって注入して溶着しやすくなる。
【0043】また、成形部Bの所定位置においては、別の一式の端末接続部が端子金具20の先端の接続部21を垂直にして、型面に壁付けするようにして載置セットされ、成形部Aと同様な手順でモールド樹脂30が端末接続部の上面および両側面だけ溶着される。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように、本発明にかかる請求項1に記載の被覆電線の端末接続部は、被覆成形後の端末接続部は、その底面が樹脂被覆されないので、端子金具をたとえば電気機器の回路基板等に接続する場合でも接続面が密接状態になり、電気的な導通不良を発生しない。導通不良を回避するために屈曲した段差部を設けた従来の端子金具の場合、その段差部に振動ストレスなどが働いて折損などの危惧があったが、端子金具にそうした段差部を設ける必要がなくなるので、折損などの危惧は解消される。
【0045】また、請求項2に記載の端末接続部は、従来の熱収縮チューブの加熱溶着による防水処理手段と比較すると、その熱収縮チューブに代わって金型成形による樹脂被覆成形であるから、成形作業の能率化が図れる。
【0046】また、請求項3記載の端末接続部の防水処理方法は、端子接続部における端子金具の底面を型側のモールド部の底面に密接させて、端子接続部の底面を除く両側面と上面の三方だけに高粘度シール樹脂を溶着させるので、それだけ成形が容易である。
【0047】また、請求項4に記載の被覆電線端末接続部の防水処理方法は、モールド用の高粘度シール樹脂に湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂を採用することにより、成形金型40での射出時溶融温度をたとえば約100℃といった低温に設定でき、この100℃という射出温度は従来の樹脂モールドに用いられるポリアミド系ホットメルトの220℃と比べても非常に低温である。これが実現することで、成形作業者は高温作業から解放され、労力負担も格段に軽減される。また、かかる本例の湿気硬化性ポリウレタンホットメルトの射出温度が100℃であっても、反応後は160℃前後の耐熱性を有する。このことは自動車エンジンルームなどの高温環境下で使用しても十分適応できて有利である。さらには、ポリアミド系ホットメルトを使用すると、溶融時の接着性を高めるために端子金具を予熱しておく必要があってそれだけ工数が増すが、湿気硬化性ポリウレタンホットメルトを用いることでそうした端子金具の予熱も不要となり、工数低減に有効である。
【0048】また、請求項5に記載の被覆電線端末接続部の防水処理装置は、モールド部の底面の上位である天井面に射出ゲートの湯道を設けて、ここから溶融状態の高粘度シール樹脂を端末接続部の上面および両側面に向かって注入して溶着しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる被覆電線の端末接続部の実施の形態として、樹脂モールドによる防水処理前の状態を示す外観斜視図である。
【図2】同じく防水処理前の端末接続部を示す側面図である。
【図3】樹脂モールドして防水処理を終えた端末接続部を示す一部断面による平面図である。
【図4】防水処理後の端末接続部を自動車ボディにアース線として接続した状態を示す一部断面による側面図である。
【図5】同図(a)は図4のA−A線からの断面を示す正面断面図、同図(b)はB−B線からの断面を示す正面断面図である。
【図6】本実施の形態において紡錘形などに防水処理された端末接続部の電線屈曲時の効果を示す側面図である。
【図7】端末接続部を樹脂モールドする本実施の形態の成形金型を示す平面図である。
【図8】同成形金型の成形部Aを示す側面断面図である。
【図9】同成形金型の成形部Bを示す側面断面図である。
【図10】熱収縮チューブを溶着して防水処理を行った端子金具を自動車ボディにアース線として接続する一態様を示す従来例において、同図(a)はチューブ溶着前の状態を示す側面図、同図(b)はチューブ溶着後の状態を示す側面図、そして同図(c)は溶着チューブの肉厚寸法分だけ隙間が生じて導通不良を起こす態様を示す側面図である。
【符号の説明】
3 端子接続用のボルト
4 自動車ボディ
10 被覆電線
11 裸線導体
20 端子金具
21 接続部
22 開口部
23,24 かしめ部
30 モールド樹脂
40 成形金型
41 モールド部
42 射出ゲートの湯道
43 位置決めピン
44 上型
45 下型
46 位置決めブロック
47 弾性塞ぎ板
48 クランプ
49A,49B 位置決めブロック
A 成形部
B 成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着して形成された圧着部に、この圧着部の底面を除く両側面と上面の三方に高粘度シール樹脂を被覆してなっていることを特徴とする端末接続部。
【請求項2】 前記高粘度シール樹脂が成形金型によって被覆成形されてなっていることを特徴とする請求項1に記載の端末接続部。
【請求項3】 成形金型の成型空洞であるモールド部の底面に、被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着した端子接続部の底面を密接させてセットし、前記モールド部に溶融状態の高粘度シール樹脂を射出して注入することにより、この高粘度シール樹脂を前記端子接続部の底面を除く両側面と上面の三方に溶着させて冷却硬化後に離型することを特徴とする被覆電線端末接続部の防水処理方法。
【請求項4】 前記高粘度シール樹脂に湿気硬化性ポリウレタンホットメルトを用いることを特徴とする請求項3に記載の被覆電線端末接続部の防水処理方法。
【請求項5】 成形金型の成型空洞であるモールド部の一側を弾性塞ぎ板で閉塞するとともに、被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着した端末接続部を前記モールド部にセットして、モールド部の一側から後方へ延出する部分の被覆電線を前記弾性塞ぎ板で弾性保持した状態で、溶融状態の高粘度シール樹脂をモールド部内に射出して端末接続部を被覆成形して防水処理する防水処理装置であって、前記モールド部の底面が前記端末接続部の底面に密接できるよう平坦に形成され、その平坦な底面に対向する天井面に射出ゲートの湯道を設けて、この湯道から注入された前記溶融状態の高粘度シール樹脂を前記端末接続部の両側面と上面に溶着させるようにしてなることを特徴とする被覆電線端末接続部の防水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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