説明

被覆養生材とこれを用いた緑化工法および被覆養生材の製造方法。

【課題】種子の発芽生育に適する環境をつくるための生育基盤と、これを用いた緑化工法を提供すること。
【解決手段】落葉を細片加工した被覆養生材5,粘着剤6,種子7、肥料8、土壌改良材9、植物繊維10、土11より構成される生育基盤および該生育基盤を水とともに撹拌しホースで圧送し地山12に吹き付ける緑化工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落葉を細片加工し作成した被覆養生材とこの材料を用いた緑化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緑化工法において使用される被覆養生材は、ファイバーと呼ばれ、雑誌や新聞等の古紙を細片にしたものが使用されている。
【0003】
ファイバーは、土、種子、肥料、土壌改良材、粘着剤、水等と一緒に撹拌混合後吹付され、種子等を粘着剤でファイバーや吹付地山に接着させ、または、ファイバーを地山に接着させ、種子等の緑化資材の飛散や流失を防ぐ機能を持っている。
【0004】
特許文献1には、スギ、アスナロ、ヒノキ等の樹皮を主体とした植生用被覆材を用いた緑化技術が開示されている。
【特許文献1】特許公開平06−146293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、1に開示された技術は、特定の樹種の樹皮を加工して使用するものであり、材料の入手が限定されることや、この植生用被覆材が自生種植物の生育を悪くする働きを持つことから、自生種による緑化には適さないという欠点を持つ。
【0006】
また、現在の緑化工法の被覆養生材としてよく使用されているファイバーは、白色及びねずみ色であり緑化工法で用いた場合光を良く通すことから、直射日光による種子の発芽不良、直射日光による地温の急激な上昇や水分の蒸発で起こる乾燥害、紫外線による土壌菌や微生物の死滅等を引き起こす。また、人には無害であっても印刷塗料等の化学物質も含まれており土壌に散布するには決して好ましい材料とはいえない。
【0007】
本発明は、従来技術の上記の問題を解決し、緑化技術を向上させる被覆養生材およびこの材料を用いた緑化工法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、どこにおいても発生する落葉に化学物質を添加することなく細片加工して得られる被覆養生材である。
【0009】
また本発明は、植物に害を与えない天然素材の落葉を細片加工して得られる被覆養生材を緑化工法に使用することである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、緑化工法の養生材として、天然の有機物である落葉をリサイクルして用いている。どこにおいても発生する落葉を原料とすることから入手が非常に容易で、落葉に化学物質を加えることなく細片加工して得られる被覆養生材であることから、環境に対しても非常に優れている。
【0011】
また、緑化工法において、種子や肥料、土壌改良材、粘着剤、土、植物繊維、水等と一緒に撹拌混合した後、地山に吹付して、種子等の緑化資材を被覆養生材と粘着剤により固定し地山に接着させ、風雨から種子等の飛散や流失を防いでいる。さらには、褐色に変色した落葉や落葉を腐朽させたものを細片加工して得られた被覆養生材で地山を被覆することにより、光の透過を抑え、直射日光による種子の発芽不良や土壌菌や微生物の死滅、あるいは急激な地温上昇および水分の蒸発を防止し、種子の発芽生育に適する環境をつくっている。さらには、被覆養生材は養分に富む天然素材であることから、種子の発芽生育が進み被覆養生材としての役目を終えると、菌や微生物によって分解が促進され、最終的には植物に養分を供給することとなる。リサイクルの面では、毎年排出され続ける廃棄物としての落葉をリサイクルし、新たな被覆養生材を発明することにより、廃棄物である落葉の利用価値を高め、結果として廃棄物処分費の削減、CO発生抑制等の効果をもたらす。
【発明実施の形態】
【0012】
以下に、本発明を、図面を用い詳細に説明する。
図1は、落葉を細片加工した概念図であり、図2は落葉を腐朽させて細片加工した概念図である。図3は、本発明による散布型の緑化工法の断面図であり、図4は厚みのある生育基盤を設けた緑化工法の断面図である。
【0013】
図1は、本発明の落葉を細片加工した被覆養生材1であり、最大4cm四方の大きさである。図2は、本発明の落葉を腐朽させ細片加工した被覆養生材2であり、最大4cm四方の大きさである。最大4cm四方としているのは、種子吹付機により施工する場合、吹付機械から吹付する箇所まで吹付基材を搬送するホース内での被覆養生材の詰まりを防ぎ、施工性を向上させるためである。但し、人力や他の機械で散布する場合はこの限りではない。
【0014】
図3は、散布型の緑化工法3であり厚さは数ミリ程度である。まず、吹付機械のタンクに水を注入し次に、本発明の被覆養生材5、粘着剤6、種子7、肥料8、を投入撹拌し、撹拌した材料を吹付け場所までホースで圧送しこれを地山12に吹付ける。このとき、被覆養生材は最大4cm四方までのおおきさであれば腐葉土も使用できる。地山の土質によっては土壌改良材9を加えたり、植物にとって有効となる資材を追加したりすることもできる。また、場所によっては種子を入れないで吹付けしたりできるが、本発明の被覆養生材を省くことはできない。さらには、種子や肥料、土壌改良材、粘着剤等を先に吹付け、後から被覆養生材、粘着剤を吹付けることもできる。なお、機械施工等が困難な箇所においては、人力で散布することもできる。
【0015】
図4は、生育基盤を設けた緑化工法4であり、厚さは1cm〜10cm程度である。まず、吹付機械のタンクに水を注入し次に、本発明の被覆養生材5、粘着剤6、種子7、肥料8、土壌改良材9、植物繊維10、土11を投入撹拌し、撹拌した材料を吹付け場所までホースで圧送し、これを地山12に吹付ける。このとき、被覆養生材は最大4cm四方までのおおきさであれば腐葉土も使用できる。植物繊維10はピートモス、やし繊維、バーク堆肥等であり、地山の土質によっては、植物にとって有効となる資材を追加することもできる。また、場所によっては種子を入れないで吹付けしたりできるが、本発明の被覆養生材を省くことはできない。さらには、肥料、土壌改良材、植物繊維、土、粘着剤等を先に吹付け後から被覆養生材や種子、粘着剤を吹付けることもできる。但し、急な斜面に施工する場合は、まずラス金網やネットを張設してから行うのが好ましい。
【0016】
次に、落葉を加工して作成した被覆養生材の製造方法について説明する。被覆養生材1の製造方法は、まず、数センチ〜数十センチの落葉を、シュレッダーや破砕機、粉砕機を用い細片させる。次に、細片にした落葉を4センチ目のふるいに通し、通過した4センチ四方以下のものが被覆養生材1として得られる。また、別の方法によると、落葉を天日自然乾燥もしくはヒーター等により強制的に乾燥させ、ロラー等で圧し細片する。次に、細片にした落葉を4センチ目のふるいに通し、通過した4センチ四方以下のものが被覆養生材1として得られる。被覆養生材2の製造方法は、落葉を集積し腐生菌、水を加え褐色腐朽を促進させる。褐色腐朽が進み落葉がもろくなったら4センチ目のふるいに通し、通過した4センチ四方以下のものが被覆養生材2として得られる。
【0017】
本発明の緑化工法の施工方法については、先に述べた通りである。
【実施例】
【0018】
本発明の実施例を以下に説明する。以下の実施例は、本発明を例示するものであって、これに限定されるものではない。
【0019】
被覆養生材の製造は、主に落葉広葉樹の落葉を集め破砕機で細片し、細片した落葉を網目4cmのトロンメルに投入し4cm四方以下の被覆養生材を得た。次に、種子吹付機のタンクに水、雪印種苗(株)の高度化成肥料372、雪印種苗(株)のケンタッキーブルーグラス、クリーピングレッドフェスク、トールフェスク種子3種、栗田工業(株)の粘着剤クリコートC−402、作成した被覆養生材を投入撹拌混合させ斜面に吹付を行った。ホース内での詰りはなく施工は容易であった。吹付後の状況は被覆養生材と種子等が地山に接着され風による飛散、雨による流失は見られなかった。また、被覆養生材の表面は乾燥しているが裏面においては適度な湿りを保ち、天然物による被覆養生材として機能するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】落葉を加工して作成した被覆養生材の概念図である。
【図2】落葉を腐朽細片加工して作成した被覆養生材の概念図である。
【図3】被覆養生材を使用した散布型の緑化工法の概念の断面図である。
【図4】被覆養生材を使用し生育基盤を設けた緑化工法の概念の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 落葉を加工して作成した被覆養生材
2 落葉を腐朽細片加工して作成した被覆養生材
3 被覆養生材を用いた散布型の緑化工法
4 被覆養生材を用い育基盤を設けた緑化工法
5 被覆養生材
6 粘着剤
7 種子
8 肥料
9 土壌改良材
10 植物繊維
11 土
12 地山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落葉を加工して作成した被覆養生材。
【請求項2】
落葉を腐朽加工して作成した被覆養生材。
【請求項3】
請求項1、請求項2に記載の被覆養生材を用いた緑化工法。
【請求項4】
請求項1、請求項2に記載の被覆養生材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−195526(P2007−195526A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41615(P2006−41615)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(505114352)
【Fターム(参考)】