説明

被記録媒体案内装置、記録装置

【課題】リブの摩耗を防止しながらも、光学センサーによるセンシングを適切に行うことのできる被記録媒体搬送装置を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンター1は、用紙を搬送する搬送駆動ローラー24の下流側において用紙搬送方向と交差する方向に沿って適宜の間隔で複数設けられ、用紙を下流側へ案内する第1リブ30と、第1リブ30の下流側において用紙搬送方向と交差する方向に沿って適宜の間隔で複数設けられ、用紙を下流側へ案内する第2リブ31と、を備えている。第1リブ30を形成する第1部材29は樹脂材料により形成され、第2リブ31を形成する第2部材33は金属材料によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体を下流側へ案内するリブを備えた被記録媒体案内装置、およびこれを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンター等に代表される記録装置、その中で特にインクジェットプリンターには、記録ヘッドと対向する位置に、被記録媒体としての記録用紙を下流側へ案内するリブを用紙搬送方向と直交する方向に沿って適宜の間隔で複数備えた案内部材(プラテンとも呼ばれる)が設けられる。これは、インクを吸収して膨潤する用紙に、リブによって規則的な波打ち(コックリング)を形成することで、用紙と記録ヘッドとの距離(以下「用紙ギャップ」と言う)が著しく不均一になることを防止する為である(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−212205号公報
【特許文献2】特開2005−262832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
用紙を案内する(支持する)リブは、上流側と下流側に分断される場合がある。その理由としては、例えば特許文献1、2に開示される様に記録ヘッドを搭載するキャリッジにおいてリブと対向する位置に光学センサーを設け、光学センサーのセンシングによって用紙幅を検出する場合、光学センサーと対向する位置にリブが設けられていると誤検出を招く為である。従って特許文献1、2に記載された記録装置は、光学センサーと対向する位置でリブを分断している。
【0005】
また、用紙の端部に余白無く記録を行う所謂縁無し記録が実行可能なインクジェットプリンターの場合、用紙の先端及び後端から外れた領域にもインクを吐出する必要があるため、リブを分断して凹部を設け、この凹部にインクを打ち捨てる様になっている。即ち、インク打ち捨て用の凹部を設ける為、リブは上流側と下流側で分断された状態となっている。
【0006】
ところで、用紙のリブからの浮き上がりを防止する為に、搬送ローラーによって用紙をリブに押し付けながら搬送する場合がある。一方で、上記リブを備えた案内部材を低コスト化等の理由により樹脂材料で形成する場合には、用紙がリブに押し付けられることによってリブが摩耗し、摩耗による不具合(用紙ギャップや用紙姿勢の変化など)が生じる虞がある。
【0007】
他方、光学センサーによるセンシングに際しては、用紙と、用紙から外れた領域との間で光反射率差を大きく確保する必要があり、リブの摩耗を防止する為に金属材料を用いることは好ましくない。金属材料は反射率が高く、塗装などの後処理の必要があるし、塗装が摩耗すれば適切な光反射率差が得られなくなる為である。
【0008】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、リブの摩耗を防止して適切な記録品質を長期的に維持しつつ、光学センサーによるセンシングを適切に行うことのできる被記録媒体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為の、本発明の第1の態様に係る被記録媒体案内装置は、被記録媒体を搬送する搬送経路において被記録媒体を下流側へ案内するリブであって、被記録媒体搬送方向と交差する方向に沿って適宜の間隔で複数設けられる第1リブと、前記第1リブの下流側において被記録媒体を下流側へ案内するリブであって、被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと対向可能な領域において被記録媒体搬送方向と交差する方向に沿って適宜の間隔で複数設けられる第2リブと、を備え、前記第1リブを形成する第1部材が樹脂材料により形成され、前記第2リブを形成する第2部材が金属材料によって形成されていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、記録ヘッドと被記録媒体との距離を規定することとなる第2リブが金属材料で形成されることで、第2リブの摩耗を防止して適切な記録品質を長期的に維持することができる。また、第1リブは樹脂材料で形成されるので、前記第1リブの形成領域に対して光学センサーをセンシングさせる構成において、被記録媒体との間の良好な光反射率差を、コストアップを招くことなく得ることができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記第2リブの下流側において被記録媒体搬送方向と交差する方向に沿って適宜の間隔で複数設けられ、被記録媒体を下流側へ案内する第3リブを備え、前記第3リブが、前記第1リブとともに前記第1部材に一体的に形成されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記第2リブの下流側に設けられた第3リブが、前記第1リブとともに前記第1部材に一体的に形成されているので、前記第3リブを低コストに形成することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記第1リブの高さが前記第2リブの高さより高く、且つ前記第2リブの高さが前記第3リブの高さよりも高いことを特徴とする。
【0014】
被記録媒体に対してインクが吐出されると、記録面側が膨潤し、上方向に凸となる様な湾曲が形成され易くなる。この様な状態の被記録媒体先端が第1〜第3リブ上を進むとき、上流側のリブと下流側のリブとが同じ高さであると、被記録媒体先端が浮き上がり、記録ヘッドとの間のギャップが不適切となる。しかしながら本態様によれば、前記第1リブの高さが前記第2リブの高さより高く、且つ前記第2リブ高さが前記第3リブの高さよりも高くなっており、つまり下流側に向かってリブ高さが低くなっているので、被記録媒体先端が第1〜第3リブを進むときに被記録媒体先端が浮き上がることを抑止することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、第2のまたは第3の態様において、前記第1リブは、前記第1部材における第1リブ形成面に形成されており、前記第2リブは、前記第2部材における第2リブ形成面に形成されており、前記第3リブは、前記第1部材における第3リブ形成面に形成されており、前記第2リブ形成面の高さが、前記第1リブ形成面の高さより高く、且つ前記第3リブ形成面の高さより高いことを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記第1リブ形成面及び前記第3リブ形成面が、前記第2リブ形成面よりも低く形成されている。従って樹脂材料(第1部材)により形成された前記第1リブ形成面及び前記第3リブ形成面、即ち帯電し易い面を、金属材料により形成された帯電し難い第2リブ形成面との位置関係において、相対的に記録ヘッドから遠ざけることができる。その結果、記録ヘッドとの間に強い電界が形成されることを防止でき、記録ヘッドから吐出するインクの着弾精度に悪影響を与えることを防止できる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記第2リブの幅は、前記第1リブの幅より大きいことを特徴とする。
被記録媒体の両面に記録を行う為に被記録媒体をバックフィードする場合、被記録媒体後端が第2リブから第1リブに差し掛かる際に第1リブに引っ掛かる虞がある。しかしながら、本態様によれば前記第2リブの幅が、前記第1リブの幅より大きいので、被記録媒体は第2リブの部分で大きめの湾曲(コックリング)が形成され、従って被記録媒体後端が第2リブから第1リブに差し掛かる際の第1リブへの引っ掛かりを防止することができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第2から第4の態様のいずれかにおいて、前記第2リブの幅は、前記第1リブの幅より大きく、かつ、前記第3リブの幅より大きいことを特徴とする。
被記録媒体の搬送時、被記録媒体先端が第2リブから第3リブに差し掛かる際に第3リブに引っ掛かる虞がある。しかしながら、本態様によれば前記第2リブの幅が、前記第3リブの幅より大きいので、被記録媒体は第2リブの部分で大きめの湾曲が形成され、従って被記録媒体先端が第2リブから第3リブに差し掛かる際の第3リブへの引っ掛かりを防止することができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかにおいて、前記第1部材及び前記第2部材は、被記録媒体搬送方向と交差する方向の両端部においてフレーム部材により支持されるとともに、前記第2部材が、両端部の間で前記第1部材によって支持される構成を備えることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記第2部材が、両端部の間で前記第1部材によって支持されるので、被記録媒体搬送方向と交差する方向における前記第2部材の撓みを防止或いは抑止でき、これにより記録ヘッドと被記録媒体の間のギャップを適切に維持することができる。
【0021】
本発明の第8の態様に係る記録装置は、被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、第1から第7の態様のいずれかに係る被記録媒体案内装置と、を備えたことを特徴とする。本態様によれば、記録装置において、上記第1から第7の態様のいずれかと同様な作用効果を得ることができる。
【0022】
本発明の第9の態様は、第8の態様において、前記記録ヘッド及び前記第2部材が同電位に設定されていることを特徴とする。
本態様によれば、前記記録ヘッド及び前記第2部材が同電位に設定されているので、記録ヘッドと第2部材(第2リブ)の間に電界が形成されることを防止でき、記録ヘッドから吐出するインクの着弾精度に悪影響を与えることを防止できる。
【0023】
本発明の第10の態様は、第8のまたは第9の態様において、前記記録ヘッドは、被記録媒体搬送方向と交差する方向に往復動するキャリッジに設けられ、前記キャリッジにおいて前記第1リブと対向可能な位置に、光反射率差を検出する光学センサーを備え、前記第1リブが、前記光学センサーによる検出領域外に位置する検出領域外リブ部と、前記光学センサーによる検出領域内に位置する、前記検出領域外リブ部より幅の小さい検出領域内リブ部と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、前記第1リブは、前記光学センサーによる検出領域内のリブ幅が細く形成されているので(検出領域内リブ部)、被記録媒体の側端部と第1リブとの位置が近くなった際に、第1リブの部分を被記録媒体の側端部であると誤検出することを防止でき、或いは誤検出した場合でもその誤差を小さく抑えることができる。
【0025】
本発明の第11の態様は、第10の態様において、前記第1リブは、所定サイズの被記録媒体の側端部内側を支持する位置に配置されるとともに、当該位置に配置された第1リブを構成する前記検出領域内リブ部は、前記検出領域外リブ部の幅方向に対し、被記録媒体の内側寄りに形成されていることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、リブ幅の細い検出領域内リブ部は、被記録媒体の端部において内側寄りに形成されるので、検出領域内リブ部を被記録媒体の側端部であると誤検出することをより確実に防止できる。
【0027】
本発明の第12の態様は、第8のまたは第9の態様において、前記記録ヘッドは、被記録媒体搬送方向と交差する方向に往復動するキャリッジに設けられ、前記キャリッジにおいて前記第1リブの一部と対向可能な位置に、光反射率差を検出する光学センサーを備え、被記録媒体搬送方向と交差する方向に沿って設けられた複数の前記第1リブの間において前記光学センサーと対向可能な領域は、シボ加工が施されていることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、被記録媒体搬送方向と交差する方向に沿って設けられた複数の前記第1リブの間において前記光学センサーと対向可能な領域は、シボ加工が施されているので、複数の第1リブの間で鏡面反射を防止でき、これにより被記録媒体との間の良好な光反射率差を得ることができ、被記録媒体の幅を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターを装置前方側から見た斜視図。
【図2】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面概略図。
【図3】支持部材Assyの組立状態の斜視図。
【図4】支持部材Assyの分解斜視図。
【図5】支持部材Assyの部分拡大斜視図。
【図6】支持部材Assyの部分拡大平面図。
【図7】支持部材Assyの部分拡大平面図。
【図8】支持部材Assy周辺の側断面図。
【図9】(A)は各種用紙サイズと第2リブとの位置関係を示す図、(B)は各種用紙サイズと第1リブの形状の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、以下説明する実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることを前提として、以下本発明の一実施形態を説明するものとする。
【0031】
図1は、本発明に係る記録装置、そして更にその一例としてのインクジェットプリンター1を、装置前方側から見た斜視図である。また図2はインクジェットプリンター1の側断面概略図、図3は支持部材Assy27の組立状態の斜視図、図4は支持部材Assy27の分解斜視図、図5は支持部材Assy27の部分拡大斜視図、図6は支持部材Assy27の部分拡大平面図、図7は支持部材Assy27の部分拡大平面図、図8は支持部材Assy27周辺の側断面図、図9(A)は各種用紙サイズと第2リブ31との位置関係を示す図、図9(B)は各種用紙サイズと第1リブ30の形状の関係を示す図である。
【0032】
以下では先ず、インクジェットプリンター1の全体構成を概説する。図1において符号2は記録用紙にインクジェット記録を行う記録部を、符号3は記録部2の上部に設けられるスキャナ部を、符号4はスキャナ部3の上部に設けられる自動原稿搬送部を、それぞれ示しており、即ちインクジェットプリンター1はインクジェット記録機能に加えてスキャナ機能を備える複合機として構成されている。
【0033】
装置前面において符号5は記録用紙をセットする着脱可能な用紙カセットであり、符号6は記録が行われた用紙が排出される用紙排出口であり、符号7は排出された記録用紙を受ける排紙受けトレイである。
【0034】
符号8は、紙ジャム発生時に用紙搬送路を露呈させる為の前面カバーであり、符号9は電源ボタンや各種印刷設定・記録実行を行う操作ボタン、印刷設定内容や印刷画像のプレビュー表示などを行う表示部、等を備えて成る操作パネルである。更に、装置上部において符号10は原稿セット用トレイを示しており、符号11は排出された原稿を受ける原稿受けトレイを示している。
【0035】
続いて図2を参照しながら記録部2における用紙搬送経路について概説する。尚、図2は記録部2の構成を模式的に示したものであり、全ての構成を示すものではなく、説明に不要な構成要素は図示を省略している。
【0036】
記録部2は2つの用紙給送経路を備えており、1つは装置下部に設けられた用紙カセット5からの用紙給送経路であり、他の1つは装置背面側(図2において右側)に設けられた支持部材14からの用紙給送経路である。尚、破線P1は用紙カセット5から送り出される用紙の通過軌跡を示し、破線P2は支持部材14から送り出される用紙の通過軌跡を示している。
【0037】
用紙カセット5と対向する位置に設けられた符号18で示すローラーは給送ローラーであり、この給送ローラー18は実線と仮想線(符号18’)で示す様に用紙カセット5に対し進退可能に設けられ、用紙カセット5に収容された用紙の最上位のものと接して回転することで、当該最上位の用紙を下流側に送り出す。送り出された用紙は、大径の反転ローラー20によって湾曲反転させられた後、搬送手段としての搬送駆動ローラー24及び搬送従動ローラー25に到達する。尚、符号21は反転ローラー20との間で用紙をニップすることにより用紙の分離を行う分離ローラーを示している。
【0038】
一方、支持部材14は用紙を傾斜姿勢に支持するとともに、上部の図示しない揺動軸を中心に揺動することで、支持している用紙の最上位のものを給送ローラー15に圧接させる。給送ローラー15は、回転することにより、圧接している用紙を下流側へ送り出す。尚、符号16は給送ローラー15との間で用紙をニップすることにより用紙の分離を行う分離ローラーを示している。
【0039】
搬送駆動ローラー24及び搬送従動ローラー25は、下流側へと用紙を精密送りするローラー対であり、このローラー対の下流側にはインクジェット式の記録ヘッド35と、用紙を下流側へ案内する被記録媒体案内装置としての支持部材Assy27と、が対向配置されている。
【0040】
記録ヘッド35は、用紙搬送方向と直交する方向(図2、図8の紙面表裏方向、図6、図7の左右方向:以下では適宜「主走査方向」と言うこととする)に往復動可能なキャリッジ34の底部に設けられ、主走査方向に移動しながら用紙に対してインクを吐出することにより記録を行う。
【0041】
支持部材Assy27は、第1部材29と第2部材33とがアッセンブリされた組み立て体であり、その上面には後に詳述する第1リブ30、第2リブ31、第3リブ32、のこれらが形成され、これらリブによって用紙が支持され、且つ下流側へ案内される様になっている。尚、第2リブ31は、図示する様に記録ヘッド35と対向可能な領域に配置される。
【0042】
記録ヘッド35の下流側において、符号39は用紙の浮きを防止する従動ローラーであり、符号40は回転することにより用紙を排出する排出駆動ローラーであり、符号41は排出駆動ローラー40との間で用紙をニップする排出従動ローラーである。これらローラー対により、記録の行われた用紙は、排紙受けトレイ7に向けて排出される。尚、本実施形態において排出駆動ローラー40はゴムローラーで形成され、従動ローラー39及び排出従動ローラー41は外周に多数の歯を有するギザローラーで形成されている。
【0043】
尚、インクジェットプリンター1は、おもて面(第1面)に記録の行われた用紙を排紙受けトレイ7に向けて排出せずに、バックフィードして反転ローラー20により湾曲反転させることで、うら面(第2面)への記録が可能となっている。
【0044】
以上がインクジェットプリンター1の大略構成であり、以下、支持部材Assy27について図3以降を参照しながら詳説する。
図3及び図4において支持部材Assy27は、第1部材29、第2部材33、フレーム28、のこれらがアッセンブリされた組み立て体であり、フレーム28が備えるサイドフレーム部28a、28bに対し、第1部材29及び第2部材33のそれぞれの両端部がねじ等の固定手段(詳細は省略)によって組み付けられて成る。
【0045】
第1部材29及び第2部材33は、主走査方向に長い形状を成しており、第1部材29は樹脂材料(成形)により、第2部材33は金属板材の絞り加工により、それぞれ形成されている。尚、第2部材33は、両端部に加え、両端部の間で第1部材29に形成された2箇所の支持部29a(図4、図8)よって支持される様になっており、これにより第2部材33の主走査方向における撓みが防止されている。
【0046】
第1部材29には、用紙を下流側へ案内する第1リブ30及び第3リブ32が、主走査方向に渡って適宜の間隔を空ける様にして、第1部材29に一体的に形成されている。また第2部材33には、用紙を下流側へ案内する第2リブ31が、主走査方向に渡って適宜の間隔を空ける様にして、第2部材33に一体的に形成されている。各リブは、用紙搬送方向に延びる形状を有している。
【0047】
各リブの配置についてその他の特徴は、本実施形態において各リブの中で最も上流側に配置された第1リブ30は、図8に示す様にキャリッジ34の底部に設けられた光学センサー36と、キャリッジ34の移動動作に伴って対向可能な位置に設けられている。また第1リブ30の下流側に設けられた第2リブ31は、キャリッジ34の移動動作に伴って記録ヘッド35と対向可能な位置に設けられている。
【0048】
尚、光学センサー36は発光部(不図示)と受光部(不図示)とを備えており、第1部材29に向けて発光した際の反射光を受光することにより、第1部材29上の光反射率差を検出可能となっている。
【0049】
次に、第1リブ30の上流側に設けられたローラー対である搬送駆動ローラー24と搬送従動ローラー25は、用紙送り出し方向が第1リブ30に向かう様に、搬送従動ローラー25の回転中心が搬送駆動ローラー24の回転中心よりもやや下流側に位置している。これにより用紙は、各リブに押し付けられながら下流側へと搬送される。
【0050】
以上の構成により、記録ヘッド35からインクが吐出された後は、特に普通紙等のコシの弱い用紙は各リブの間に落ち込むことで、主走査方向に渡って波打つコックリングが形成される。これにより、インクを吸収することに伴う膨潤に規則性が付与され、用紙ギャップが主走査方向において著しく不均一となることを防止できる様になっている。尚、コックリングの適切な形成を促す為、補助ローラー39は、主走査方向において各リブのほぼ中間に配置されている(図6、図7)。また、排出駆動ローラー40及び排出従動ローラー41は、主走査方向において各リブの配置位置とほぼ一致する様に配置されている(図6、図7)。
【0051】
尚、図3〜図7、図9では、主走査方向に渡って複数形成された第1リブ30を、添字(30-1、30-2、・・・、30-13)を付して区別している。同様に第2リブ31についても、添字(31-1、31-2、・・・、31-13)を付して区別し、第3リブ32についても、添字(32-1、32-2、・・・、32-13)を付して区別している。但し、本明細書では、主走査方向に渡って複数形成された各リブについて、特に区別する必要の無い場合にはこれまで用いた様に「第1リブ30」、「第2リブ31」、「第3リブ32」、と総称するものとする。
続いて、以下では支持部材Assy27の特徴及びその作用効果について特徴毎に詳説する。
【0052】
<<支持部材Assy27の特徴(1)>>
上述したように、第2リブ31を形成する第2部材33が金属材料(本実施形態では、メッキ鋼板)によって形成されており、即ち記録ヘッド35と用紙との距離を規定することとなる第2リブ31が金属材料で形成されることで、第2リブ31の摩耗に伴う用紙ギャップや用紙姿勢の変化を防止して、適切な記録品質を長期的に維持することができる。
【0053】
尚、第1リブ30は樹脂材料により形成されているが、記録ヘッド35と対向する領域からは外れており、第1リブ30の摩耗が生じても記録ヘッド35と用紙との間のギャップには殆ど影響せず、記録品質が低下することはない。
【0054】
また、第1リブ30を形成する第1部材29が樹脂材料によって形成され、この第1リブ30の形成領域に対して光学センサー36をセンシングさせるので、用紙との間の良好な光反射率差を、コストアップを招くことなく得ることができる。
【0055】
<<支持部材Assy27の特徴(2)>>
尚、本実施形態では第1部材30は、黒色樹脂により形成されており、更に第1リブ30の間を形成する第1リブ形成面29bは、図6及び図7に示す様に細かい凹凸が形成されている。従って第1リブ形成面29bでは鏡面反射が防止され、反射率の高い用紙(白色)との間で良好な光反射率差を得ることができる。
また、尚、本実施形態では第1リブ形成面29bは上述の様に細かい凹凸で形成されているが、例えばシボ加工によって低反射を実現しても良い。
【0056】
<<支持部材Assy27の特徴(3)>>
第2部材33は、用紙搬送方向(図6、図7の上下方向)において対称形状を成す様に形成されている。これにより、絞り加工に伴う材料内部応力が均一化され、反りを軽減することができ、記録ヘッド35と用紙との間のギャップが不均一となって記録品質に悪影響を与えることを防止できる。
【0057】
<<支持部材Assy27の特徴(4)>>
図8(B)は、第1リブ30、第2リブ31、第3リブ32、第1リブ形成面29b、第2リブ形成面33a、第3リブ形成面29c、のこれらの高さ関係(記録ヘッド35に対する距離)を、図8(A)よりもやや誇張して描いたものである。符号H1は第1リブ30の高さを、符号H2は第2リブ31の高さを、符号H3は第3リブ32の高さを、それぞれ示している。また、符号h1は第2リブ形成面33aの高さを、符号h2は第3リブ形成面29cの高さを、符号h3は第1リブ形成面29bの高さを、それぞれ示している。
【0058】
本実施形態では図8(B)に示す通り、第1リブ30の高さが第2リブ31の高さより高く、且つ第2リブ31の高さが第3リブ32の高さよりも高くなる様に構成されている。これにより、以下の作用効果が得られる。
【0059】
即ち、用紙に対してインクが吐出されると、用紙は記録面側が膨潤し、図8の上方向に凸となる様な湾曲が形成され易くなる。この様な状態の用紙先端が各リブの上部を進むとき、上流側のリブと下流側のリブとが同じ高さであると、用紙先端が浮き上がり、記録ヘッド35との間のギャップが不適切となる。
【0060】
しかしながら上述の通り、下流側のリブの高さが、上流側のリブの高さよりも低くなる様に構成されているので、用紙先端が第1リブ30、第2リブ31、第3リブ32、の順に進むときに用紙先端が浮き上がることを抑止することができる。
【0061】
<<支持部材Assy27の特徴(5)>>
また、本実施形態では図8(B)に示す通り、第2リブ形成面33aの高さが、第1リブ形成面29bより高く、且つ第3リブ形成面29cより高くなる様に構成されている。これにより、樹脂材料により形成された第1リブ形成面29a及び第3リブ形成面29c、即ち帯電し易い面を、金属材料により形成された第2リブ形成面29b、即ち帯電し難い面に対して相対的に記録ヘッド35より遠ざけることができる。その結果、記録ヘッド35との間に強い電界が形成されることを防止でき、記録ヘッド35から吐出するインクの着弾精度に悪影響を与えることを防止できる。
【0062】
<<支持部材Assy27の特徴(6)>>
また本実施形態では、記録ヘッド35において第2リブ31と対向する面(プレート面)35aは金属材料により形成されており、このプレート面35aと第2部材33とが、アース接続されることによって同電位に設定されている。これにより、記録ヘッド35と第2部材33との間に電界が形成されることを防止でき、記録ヘッド35から吐出するインクの着弾精度に悪影響を与えることを確実に防止している。
【0063】
<<支持部材Assy27の特徴(7)>>
本実施形態では、図5、図6、図7に示す様に、第1リブ30が、光学センサー36による検出領域外に位置する検出領域外リブ部30aと、光学センサー36による検出領域内に位置する、検出領域外リブ部30aより幅の小さい検出領域内リブ部30bと、を備えて構成されている。
【0064】
これにより、用紙側端部と第1リブ30との位置が近くなった際に、光学センサー36が第1リブ30の部分を用紙側端部であると誤検出することを防止でき、或いは誤検出した場合でもその誤差を小さく抑えることができる。
【0065】
より詳しくは、図9(A)はA4、B5、A5、B6、A6、の各サイズ用紙(用紙Pa、Pb、Pc、Pd、Pe)と第2リブ31-1〜31-13の位置関係を示し、図9(B)は各サイズ用紙と第1リブ31-1〜31-13の位置関係を示している。尚、位置Cは用紙中心位置を示している。
【0066】
例えばA4サイズ用紙Paの場合、両側端のやや内側に第1リブ30-1、30-13が位置しているため、用紙位置が若干ずれると、第1リブ30-1、30-13の頂部を用紙エッジであると誤認識する虞がある。しかしながら、上記の通り光学センサー36による検出領域内に位置する検出領域内リブ部30bは、リブ幅が小さく形成されているので、上記の様な誤検出を防止することができる。
【0067】
ところで、図9(B)において塗り潰された部分は断面を示しており、図示する様に検出領域内リブ部30bが形成されたリブは、主走査方向に渡って複数形成された第1リブ30のうち、両側の第1リブ30-1〜30-4と、第1リブ30-10〜30-13である。そして中央部の第1リブ30-5〜30-9は、検出領域内リブ部30bは形成されておらず(図5も参照)、用紙搬送方向に沿ってリブ幅が一定である。これは、用紙端部から充分な距離がある場合には、上述した誤検出の問題が生じないからである。
【0068】
<<支持部材Assy27の特徴(8)>>
そして図6、図7、図9(B)に示すように検出領域内リブ部30bは、検出領域外リブ部30aの幅方向に対し、用紙の内側寄りに形成されている。例えば、図6において第1リブ30-2〜30-4は、検出領域外リブ部30aに対し、左側(用紙内側寄り)に形成されている(図6に表れていない第1リブ30-1も同様)。また、図7において第1リブ30-11〜30-13は、検出領域外リブ部30aに対し、右側(用紙内側寄り)に形成されている(図7に表れていない第1リブ30-10も同様)。この様に検出領域内リブ部30bが形成されたことで、上述した誤検出を、より確実に防止することができる。
【0069】
<<支持部材Assy27の特徴(9)>>
本実施形態において第2リブ31の幅は、第1リブ30の幅より大きく形成されている(図6、図7)。これにより以下の作用効果が得られる。即ち、用紙の両面に記録を行う為に用紙をバックフィードする場合、用紙後端が第2リブ31から第1リブ30に差し掛かる際に第1リブ30に引っ掛かる虞がある。
【0070】
しかしながら、第2リブ31の幅が、第1リブ30の幅より大きいので、用紙は第2リブ31の部分で大きめの湾曲(コックリング)が形成され、従って用紙後端が第2リブ31から第1リブ30に差し掛かる際の第1リブ30への引っ掛かりを防止することができる。また、本実施形態において第2リブ31の幅は、第3リブ32の幅より大きく形成されている。用紙の片面に記録を行う場合、第2リブ31の幅が、第3リブ32の幅よりも大きいので、用紙は第2リブ31の部分で大きめの湾曲が形成され、用紙先端が第2リブ31から第3リブ32に差し掛かる際の第3リブ32への引っ掛かりを防止することができる。
【0071】
また、検出領域外リブ部30aと検出領域内リブ部30bとが形成されている部分では、図5及び図8に示す様に傾斜面30cが形成されている。従って用紙後端が第1リブ30を上流側(図8において右側)に進む場合に、当該用紙後端が検出領域外リブ部30aに引っ掛からず、円滑に進むことができる様になっている。
【0072】
以上説明した実施形態は一例であり、これに限られないことは言うまでもない。特に、本実施形態における各特徴は、それぞれ単独で発明を成しうる。
【符号の説明】
【0073】
1 インクジェットプリンター、2 記録部、2a 装置本体、2b 筐体、2c 開口、3 スキャナ部、4 自動原稿搬送部、5 用紙カセット、6 用紙排出口、7 排紙受けトレイ、8 前面カバー、9 操作パネル、10 原稿セット用トレイ、11 原稿受けトレイ、14 用紙支持部材、15 給送ローラー、16 分離ローラー、18 給送ローラー、20 反転ローラー、21 分離ローラー、24 搬送駆動ローラー、25 搬送従動ローラー、26 ローラー支持部材、27 支持部材Assy、28 フレーム、29 第1部材、29a 支持部、29b 第1リブ形成面、29c 第3リブ形成面、30 第1リブ、30a 太幅部、30b 細幅部、30c 斜面、31 第2リブ、32 第3リブ、33 第2部材、33a 第2リブ形成面、34 キャリッジ、35 インクジェット記録ヘッド、36 光学センサー、39 従動ローラー、40 排出駆動ローラー、41 排出従動ローラー、42 ローラー支持部材、P1、P2、Pa〜Pe 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を搬送する搬送経路において被記録媒体を下流側へ案内するリブであって、被記録媒体搬送方向と交差する方向に沿って適宜の間隔で複数設けられる第1リブと、
前記第1リブの下流側において被記録媒体を下流側へ案内するリブであって、被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと対向可能な領域において被記録媒体搬送方向と交差する方向に沿って適宜の間隔で複数設けられる第2リブと、を備え、
前記第1リブを形成する第1部材が樹脂材料により形成され、
前記第2リブを形成する第2部材が金属材料によって形成されている、
ことを特徴とする被記録媒体案内装置。
【請求項2】
請求項1に記載の被記録媒体案内装置において、前記第2リブの下流側において被記録媒体搬送方向と交差する方向に沿って適宜の間隔で複数設けられ、被記録媒体を下流側へ案内する第3リブを備え、
前記第3リブが、前記第1リブとともに前記第1部材に一体的に形成されている、
ことを特徴とする被記録媒体案内装置。
【請求項3】
請求項2に記載の被記録媒体案内装置において、前記第1リブの高さが前記第2リブの高さより高く、且つ前記第2リブの高さが前記第3リブの高さよりも高い、
ことを特徴とする被記録媒体案内装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の被記録媒体案内装置において、前記第1リブは、前記第1部材における第1リブ形成面に形成されており、
前記第2リブは、前記第2部材における第2リブ形成面に形成されており、
前記第3リブは、前記第1部材における第3リブ形成面に形成されており、
前記第2リブ形成面の高さが、前記第1リブ形成面の高さより高く、且つ前記第3リブ形成面の高さより高い、
ことを特徴とする被記録媒体案内装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の被記録媒体案内装置において、前記第2リブの幅は、前記第1リブの幅より大きい、
ことを特徴とする被記録媒体案内装置。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか1項に記載の被記録媒体案内装置において、前記第2リブの幅は、前記第1リブの幅より大きく、かつ、前記第3リブの幅より大きい、
ことを特徴とする被記録媒体案内装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の被記録媒体案内装置において、前記第1部材及び前記第2部材は、被記録媒体搬送方向と交差する方向の両端部においてフレーム部材により支持されるとともに、前記第2部材が、両端部の間で前記第1部材によって支持される構成を備える、
ことを特徴とする被記録媒体案内装置。
【請求項8】
被記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
請求項1から7のいずれか1項に記載された被記録媒体案内装置と、
を備えた記録装置。
【請求項9】
請求項8に記載の記録装置において、前記記録ヘッド及び前記第2部材が同電位に設定されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の記録装置において、前記記録ヘッドは、被記録媒体搬送方向と交差する方向に往復動するキャリッジに設けられ、
前記キャリッジにおいて前記第1リブと対向可能な位置に、光反射率差を検出する光学センサーを備え、
前記第1リブが、前記光学センサーによる検出領域外に位置する検出領域外リブ部と、
前記光学センサーによる検出領域内に位置する、前記検出領域外リブ部より幅の小さい検出領域内リブ部と、を備えて構成されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項10に記載の記録装置において、前記第1リブは、所定サイズの被記録媒体の側端部内側を支持する位置に配置されるとともに、当該位置に配置された第1リブを構成する前記検出領域内リブ部は、前記検出領域外リブ部の幅方向に対し、被記録媒体の内側寄りに形成されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項8または9に記載の記録装置において、前記記録ヘッドは、被記録媒体搬送方向と交差する方向に往復動するキャリッジに設けられ、
前記キャリッジにおいて前記第1リブの一部と対向可能な位置に、光反射率差を検出する光学センサーを備え、
被記録媒体搬送方向と交差する方向に沿って設けられた複数の前記第1リブの間において前記光学センサーと対向可能な領域は、シボ加工が施されている、
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−180143(P2012−180143A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42262(P2011−42262)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】