装飾体の製造方法、装飾体
【課題】従来の装飾体では、複数の図柄を鮮明に視認することが困難である。
【解決手段】シート材11の第1面15aに設けられた複数の第1図柄21と、複数の第1図柄21のシート材11側とは反対側に設けられた透光層13と、透光層13のシート材側とは反対側に、複数の第1図柄21のそれぞれに対応して設けられた第2図柄23と、を有するシート材11の第2面15bに複数のレンズ3を、レンズ3のそれぞれを、互いに対をなす第1図柄21及び第2図柄23の組29のそれぞれに対応させて、形成するレンズ形成工程を含み、前記レンズ形成工程では、シート材11の第2面15bに配置される第1レンズ25と、第1レンズ25のシート材11側とは反対側で第1レンズ25に重なる第2レンズ27と、を含むレンズ3を形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【解決手段】シート材11の第1面15aに設けられた複数の第1図柄21と、複数の第1図柄21のシート材11側とは反対側に設けられた透光層13と、透光層13のシート材側とは反対側に、複数の第1図柄21のそれぞれに対応して設けられた第2図柄23と、を有するシート材11の第2面15bに複数のレンズ3を、レンズ3のそれぞれを、互いに対をなす第1図柄21及び第2図柄23の組29のそれぞれに対応させて、形成するレンズ形成工程を含み、前記レンズ形成工程では、シート材11の第2面15bに配置される第1レンズ25と、第1レンズ25のシート材11側とは反対側で第1レンズ25に重なる第2レンズ27と、を含むレンズ3を形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾体の製造方法、装飾体等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図柄を立体的な虚像として視認することができる装飾体が知られている。
このような装飾体では、従来、複数の凸レンズが設けられた透明シートの凸レンズ側とは反対側の面に、凸レンズに対応して印刷された第1の模様(図柄)と、この第1の模様に積層された透明性の積層シートと、積層シートの凸レンズ側とは反対側の面に凸レンズに対応して印刷された第2の模様(図柄)と、を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2761861号公報(第3頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された装飾体によれば、第1の模様と第2の模様との相対位置の変化を視認することができる。これにより、装飾体の装飾性を向上させることができる。
しかしながら、この装飾体では、凸レンズの焦点を第1の模様及び第2の模様のうちの一方の模様に合わせると、凸レンズの焦点は、他方の模様からずれやすい。このため、凸レンズを介して一方の模様が鮮明に視認され得るのに対して、他方の模様はぼやけやすい。
つまり、従来の装飾体では、複数の図柄を鮮明に視認することが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0006】
[適用例1]光透過性を有するシートの第1面に設けられた複数の第1図柄と、光透過性を有する材料で構成され、前記複数の第1図柄の前記シート側とは反対側に設けられた透光層と、前記透光層の前記シート側とは反対側に、前記複数の第1図柄のそれぞれに対応して設けられた第2図柄と、を有する前記シートの前記第1面とは反対側の第2面に複数のレンズを、前記レンズのそれぞれを、互いに対をなす前記第1図柄及び前記第2図柄の組のそれぞれに対応させて、形成するレンズ形成工程を含み、前記レンズ形成工程では、前記シートの前記第2面に配置される第1レンズと、前記第1レンズの前記シート側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む前記レンズを形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0007】
この適用例の装飾体の製造方法は、光透過性を有するシートに複数のレンズを形成するレンズ形成工程を含む。
このシートは、第1面と、第1面とは反対側の面である第2面と、を有する。第1面には、複数の第1図柄が設けられている。
複数の第1図柄のシート側とは反対側には、光透過性を有する材料で構成された透光層が設けられている。透光層のシート側とは反対側には、複数の第2図柄が設けられている。
複数の第2図柄は、それぞれ、複数の第1図柄のそれぞれに対応している。互いに対応する第1図柄及び第2図柄は、一組の対をなしている。
レンズ形成工程では、シートの第2面に複数のレンズを形成する。このとき、レンズのそれぞれを、互いに対をなす第1図柄及び第2図柄の組のそれぞれに対応させる。これにより、この装飾体では、複数のレンズを介して第1図柄及び第2図柄が虚像として視認され得る。
この製造方法では、レンズ形成工程において、シートの第2面に配置される第1レンズと、第1レンズのシート側とは反対側で第1レンズに重なる第2レンズと、を含むレンズを形成する。これにより、少なくとも第1レンズ及び第2レンズを含む複数段のレンズを形成することができる。このため、複数の焦点を有するレンズを形成することができる。この結果、例えば、第1レンズの焦点を第2図柄に合わせ、第2レンズの焦点を第1図柄に合わせることができる。これにより、第1図柄及び第2図柄のそれぞれを鮮明に視認しやすくすることができる。
【0008】
[適用例2]上記の装飾体の製造方法であって、前記レンズ形成工程では、光の照射を受けることによって硬化する液状体を前記シートの前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から前記複数のレンズを形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0009】
この適用例では、レンズ形成工程において、光の照射を受けることによって硬化する液状体をシートの第2面に塗布してから、第2面に塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数のレンズを形成することができる。
【0010】
[適用例3]上記の装飾体の製造方法であって、前記レンズ形成工程は、前記液状体を前記シートの前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、前記第1レンズ形成工程の後に、液状体を前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、前記第1レンズに塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0011】
この適用例では、レンズ形成工程は、複数の第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、第1レンズ形成工程の後に、複数の第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む。
第1レンズ形成工程では、液状体をシートの第2面に塗布してから、第2面に塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数の第1レンズを形成する。
第2レンズ形成工程では、液状体を複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、第1レンズに塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数の第2レンズを形成する。
この製造方法によれば、第1レンズを構成する液状体の少なくとも一部を硬化させてから、この第1レンズに重ねて第2レンズを構成する液状体を塗布するので、第1レンズを構成する液状体と第2レンズを構成する液状体とが互いに混合することを避けやすい。この結果、第1レンズと第2レンズとを明確に区分しやすくすることができる。
【0012】
[適用例4]上記の装飾体の製造方法であって、前記第1レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記シートの前記第2面に塗布し、前記第2レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0013】
この適用例では、第1レンズ形成工程において、液状体をインクジェット法でシートの第2面に塗布する。また、第2レンズ形成工程において、液状体をインクジェット法で複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する。これにより、第1レンズを構成する液状体、及び第2レンズを構成する液状体のそれぞれを塗布することができる。
【0014】
[適用例5]上記の装飾体の製造方法であって、前記複数の第1図柄及び複数の前記第2図柄のそれぞれを、インクジェット法で形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0015】
この適用例では、複数の第1図柄及び複数の第2図柄のそれぞれを、インクジェット法で形成するので、レンズ形成工程における液状体の塗布の方法と、複数の第1図柄及び複数の第2図柄のそれぞれの形成方法とを互いに同じインクジェット法にそろえることができる。この結果、装飾体の製造方法の効率化を図りやすくすることができる。
【0016】
[適用例6]上記の装飾体の製造方法であって、前記透光層をインクジェット法で形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0017】
この適用例では、透光層をインクジェット法で形成するので、レンズ形成工程における液状体の塗布の方法と、複数の第1図柄及び複数の第2図柄のそれぞれの形成方法と、透光層の形成方法とを相互に同じインクジェット法にそろえることができる。この結果、装飾体の製造方法の効率化を一層図りやすくすることができる。
【0018】
[適用例7]光透過性を有するシートと、前記シートの第1面に設けられた複数の第1図柄と、光透過性を有する材料で構成され、前記複数の第1図柄の前記シート側とは反対側に設けられた透光層と、前記透光層の前記シート側とは反対側に、前記複数の第1図柄のそれぞれに対応して設けられた第2図柄と、互いに対をなす前記第1図柄及び前記第2図柄の組のそれぞれに対応して設けられ、且つ、前記シートの前記第1面とは反対側の第2面に設けられた複数のレンズと、を有し、前記複数のレンズは、それぞれ、前記シートの前記第2面に設けられた第1レンズと、前記第1レンズの前記シート側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む、ことを特徴とする装飾体。
【0019】
この適用例の装飾体は、シートと、複数の第1図柄と、透光層と、複数の第2図柄と、複数のレンズと、を有する。
シートは、光透過性を有する。
複数の第1図柄は、シートの第1面に設けられている。
透光層は、光透過性を有する材料で構成されている。透光層は、複数の第1図柄のシート側とは反対側に設けられている。
複数の第2図柄は、透光層のシート側とは反対側に設けられている。複数の第2図柄は、それぞれ、複数の第1図柄のそれぞれに対応して設けられている。
複数のレンズは、シートの第1面とは反対側の第2面に設けられている。複数のレンズは、それぞれ、互いに対をなす第1図柄及び第2図柄の組のそれぞれに対応して設けられている。
上記により、この装飾体では、複数のレンズを介して第1図柄及び第2図柄が虚像として視認され得る。
そして、この装飾体では、複数のレンズは、それぞれ、シートの第2面に設けられた第1レンズと、第1レンズのシート側とは反対側で第1レンズに重なる第2レンズと、を含む。つまり、この装飾体は、少なくとも第1レンズ及び第2レンズを含む複数段のレンズを有している。このため、この装飾体では、複数の焦点を有するレンズを介して第1図柄及び第2図柄を視認することができる。このとき、例えば、第1レンズの焦点を第2図柄に合わせ、第2レンズの焦点を第1図柄に合わせることができる。これにより、第1図柄及び第2図柄のそれぞれを鮮明に視認しやすくすることができる。
【0020】
[適用例8]上記の装飾体であって、前記第1レンズの焦点が、前記第2図柄に合っており、前記第2レンズの焦点が、前記第1図柄に合っている、ことを特徴とする装飾体。
【0021】
この適用例では、第1レンズの焦点が第2図柄に合っており、第2レンズの焦点が第1図柄に合っているので、第1図柄及び第2図柄のそれぞれを鮮明に視認しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態における装飾シートの平面図。
【図2】図1中のA−A線における断面図。
【図3】本実施形態におけるレンズと第1図柄との配置を説明する平面図。
【図4】本実施形態におけるレンズと第2図柄との配置を説明する平面図。
【図5】本実施形態における虚像ユニットの配置を説明する平面図。
【図6】本実施形態における装飾シートの平面図。
【図7】図2中のB部の拡大図。
【図8】本実施形態における装飾シートの製造方法の流れを示す図。
【図9】本実施形態におけるレンズ形成工程の流れを示す図。
【図10】本実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【図11】本実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照しながら、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
本実施形態における装飾シート1は、図1に示すように、複数のレンズ3を有している。図1では、構成をわかりやすく示すため、レンズ3が誇張され、且つレンズ3の個数が減じられている。
【0024】
複数のレンズ3は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って配列している。本実施形態では、Y方向に沿って1列に並ぶ複数のレンズ3が1つのレンズ列5を構成している。また、本実施形態では、X方向に沿って1列に並ぶ複数のレンズ3が1つのレンズ行7を構成している。
本実施形態において、Y方向は、レンズ列5が延在する方向である。そして、X方向は、平面視で、Y方向とは交差する方向である。つまり、本実施形態では、複数のレンズ列5が、X方向に並んでいる。なお、本実施形態では、X方向とY方向とが互いに直交している。このため、複数のレンズ3は、X方向を行方向とし、Y方向を列方向として、マトリクス状に配列している。
本実施形態では、X方向に隣り合う2つのレンズ3は、間隔Pで隣り合っている。また、Y方向に隣り合う2つのレンズ3は、間隔Pで隣り合っている。
【0025】
また、装飾シート1は、図1中のA−A線における断面図である図2に示すように、シート材11と、透光層13と、を有している。
シート材11は、光透過性を有する材料で構成されており、第1面15aと、第2面15bと、を有している。上述した複数のレンズ3は、シート材11の第2面15bに設けられている。第1面15aには、複数の第1図柄21が描かれている。シート材11の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールなどが採用され得る。
透光層13は、光透過性を有する材料で構成されており、シート材11の第1面15aに設けられている。透光層13は、シート材11の第1面15a側から複数の第1図柄21を覆っている。このため、透光層13は、複数の第1図柄21のシート材11側とは反対側に設けられているともみなされ得る。
透光層13のシート材11側とは反対側には、複数の第2図柄23が描かれている。
【0026】
本実施形態では、複数のレンズ3は、それぞれ、第1レンズ25と、第2レンズ27と、を含む。
第1レンズ25は、シート材11の第2面15bに設けられている。第2レンズ27は、第1レンズ25のシート材11側とは反対側で、第1レンズ25に重なっている。つまり、本実施形態では、第2レンズ27は、第1レンズ25に積層されている。このため、複数のレンズ3は、それぞれ、シート材11の第2面15bに設けられた第1レンズ25に第2レンズ27を積層した構成を有している。
【0027】
複数の第1図柄21は、それぞれ、複数のレンズ3のそれぞれに対応している。つまり、本実施形態では、レンズ3ごとに第1図柄21が設けられている。ただし、複数のレンズ3の中には、2つの第1図柄21に対応するものが含まれている。複数の第1図柄21のそれぞれが、複数のレンズ3のそれぞれに対応するという表現には、複数の第1図柄21が1つのレンズ3に対応する場合も含まれる。さらに、複数の第1図柄21のそれぞれが、複数のレンズ3のそれぞれに対応するという表現には、1つの第1図柄21が複数のレンズ3に対応する場合も含まれる。
複数の第2図柄23は、それぞれ、複数の第1図柄21のそれぞれに対応している。つまり、本実施形態では、第1図柄21ごとに第2図柄23が設けられている。
【0028】
前述したように、本実施形態では、レンズ3ごとに第1図柄21が設けられている。このため、複数の第2図柄23は、それぞれ、複数のレンズ3のそれぞれに対応している。つまり、本実施形態では、レンズ3ごとに第2図柄23が設けられている。ただし、複数の第2図柄23の中には、2つのレンズ3に対応するものが含まれている。複数の第2図柄23のそれぞれが、複数のレンズ3のそれぞれに対応するという表現には、複数の第2図柄23が1つのレンズ3に対応する場合も、1つの第2図柄23が複数のレンズ3に対応する場合も含まれる。
本実施形態では、レンズ3ごとに第1図柄21及び第2図柄23が設けられているので、レンズ3に対応する第1図柄21と第2図柄23とが1組の組29を構成する。換言すれば、第1図柄21及び第2図柄23の組29ごとにレンズ3が設けられているともみなされ得る。
【0029】
複数の第1図柄21は、レンズ3と第1図柄21との配置を説明する平面図である図3に示すように、X方向に間隔Qで並んでいる。また、複数の第1図柄21は、Y方向においても、間隔Qで並んでいる。なお、間隔Qは、間隔Pよりも短い。図3では、構成をわかりやすく示すため、レンズ3が破線で示されている。
複数のレンズ3のうちの1つのレンズ3aと、このレンズ3aに対応する第1図柄21との位置ずれが0である場合、レンズ3aからX方向において、間隔Pと間隔Qとの最小公倍数の距離D1にある位置に、位置ずれが0になるレンズ3と第1図柄21との組31が出現する。なお、本実施形態では、間隔Qが間隔Pよりも短いので、1つのレンズ3に2つの第1図柄21が対応する組31が存在する。
【0030】
また、このレンズ3aからY方向において、間隔Pと間隔Qとの最小公倍数の距離D1にある位置にも、位置ずれが0になるレンズ3と第1図柄21との組31が出現する。
レンズ3aから、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、次に位置ずれが0になるレンズ3と第1図柄21との組31よりも1つ前の組31aまでのマトリクスが、1つの虚像ユニット33を構成する。
1つの虚像ユニット33では、第1図柄21を拡大した1つの模様が虚像として視認され得る。以下において、虚像ユニット33に出現する模様は、第1模様と呼ばれる。
【0031】
複数の第2図柄23は、レンズ3と第2図柄23との配置を説明する平面図である図4に示すように、X方向に間隔Rで並んでいる。また、複数の第2図柄23は、Y方向においても、間隔Rで並んでいる。なお、間隔Rは、間隔Pよりも長い。
複数のレンズ3のうちの1つのレンズ3bと、このレンズ3bに対応する第2図柄23との位置ずれが0である場合、レンズ3bからX方向において、間隔Pと間隔Rとの最小公倍数の距離D2にある位置に、位置ずれが0になるレンズ3と第2図柄23との組37が出現する。なお、本実施形態では、間隔Rが間隔Pよりも長いので、1つの第2図柄23が2つのレンズ3に対応する組37が存在する。
【0032】
また、このレンズ3bからY方向において、間隔Pと間隔Rとの最小公倍数の距離D2にある位置にも、位置ずれが0になるレンズ3と第2図柄23との組37が出現する。
レンズ3bから、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、次に位置ずれが0になるレンズ3と第2図柄23との組37よりも1つ前の組37aまでのマトリクスが、1つの虚像ユニット39を構成する。
1つの虚像ユニット39では、第2図柄23を拡大した1つの模様が虚像として視認され得る。以下において、虚像ユニット39に出現する模様は、第2模様と呼ばれる。
なお、レンズ3aとレンズ3bとが互いに同一のレンズ3である場合と、レンズ3aとレンズ3bとが互いに異なるレンズ3である場合とが考えられる。本実施形態では、レンズ3aとレンズ3bとが、互いに同一のレンズ3であっても、互いに異なるレンズ3であってもよい。
【0033】
本実施形態では、虚像ユニット33の配置を説明する平面図である図5(a)に示すように、複数の虚像ユニット33が、X方向及びY方向の双方に並んでいる。このため、装飾シート1では、複数のレンズ3側から装飾シート1を目視すると、虚像ユニット33ごとに、前述した第1模様41が出現する。
また、本実施形態では、虚像ユニット39の配置を説明する平面図である図5(b)に示すように、複数の虚像ユニット39が、X方向及びY方向の双方に並んでいる。このため、装飾シート1では、複数のレンズ3側から装飾シート1を目視すると、虚像ユニット39ごとに、前述した第2模様43が出現する。
【0034】
なお、図5では、構成をわかりやすく示すため、虚像ユニット33と虚像ユニット39とを、それぞれ異なる図面で示したが、装飾シート1において、虚像ユニット33と虚像ユニット39とは互いに重なっている。つまり、装飾シート1では、図6に示すように、第1模様41及び第2模様43の双方が視認され得る。
また、本実施形態では、第1模様41と第2模様43とをわかりやすく区別するために、第1模様41が水玉模様を呈し、第2模様43が四角模様を呈している。第1模様41及び第2模様43の態様は、これらに限定されず、種々の模様が採用され得る。また、第1模様41及び第2模様43のそれぞれに採用される模様には、記号や文字、図形、画像、紋様などの種々の模様が含まれる。
【0035】
前述したように、虚像ユニット33と虚像ユニット39とは、互いに重なる領域を含んでいる。このため、虚像として出現する第1模様41及び第2模様43は、互いに重なる部分を含んでいる。
互いに重なる部分を含む第1模様41及び第2模様43では、第2模様43が、第1模様41よりも浮き出た状態で視認される。換言すれば、第1模様41は、第2模様43よりも沈み込んだ状態で視認される。この浮き沈み状態は、複数のレンズ3の間隔Pと、複数の第1図柄21の間隔Qと、複数の第2図柄23の間隔Rとの関係によって決まる。
【0036】
つまり、第1図柄21の間隔Qがレンズ3の間隔Pよりも短いので、第1模様41は、背景として視認されるシート材11の第1面15a(図2)よりも複数のレンズ3側とは反対側に沈み込んだ状態で視認される。
また、第2図柄23の間隔Rがレンズ3の間隔Pよりも長いので、第2模様43は、背景として視認されるシート材11の第1面15a(図2)よりも複数のレンズ3側に浮き出た状態で視認される。
このため、装飾シート1では、第2模様43が、第1模様41よりも浮き出た状態で視認される。
【0037】
また、装飾シート1では、装飾シート1に対する視線の角度を変化させると、第1模様41及び第2模様43のそれぞれが変位する。
さらに、装飾シート1では、第1図柄21と第2図柄23との間に透光層13が設けられているので、視点から第1図柄21までの距離と、視点から第2図柄23までの距離との間に差異がある。このため、装飾シート1に対する視線の角度を変化させると、第1模様41と第2模様43とが互いに相対変位する。
【0038】
ここで、本実施形態では、複数のレンズ3のそれぞれにおいて、図2中のB部の拡大図である図7に示すように、第1レンズ25の透光層13側の焦点F1の位置は、透光層13のシート材11側とは反対側の面に設定されている。
また、第2レンズ27の透光層13側の焦点F2の位置は、シート材11の第1面15aに設定されている。
上記により、第1レンズ25の焦点F1を第2図柄23に合わせやすくすることができる。また、第2レンズ27の焦点F2を第1図柄21に合わせやすくすることができる。
【0039】
本実施形態では、第1レンズ25の焦点F1が第2図柄23に合っており、第2レンズ27の焦点F2が第1図柄21に合っている。
このため、第1レンズ25を介して視認する第2図柄23を鮮明な虚像として視認することができる。また、第2レンズ27を介して視認する第1図柄21を鮮明な虚像として視認することができる。
この結果、虚像ユニット33における複数の第1図柄21の集合体として視認される第1模様41を、鮮明な虚像として視認することができる。また、虚像ユニット39における複数の第2図柄23の集合体として視認される第2模様43を、鮮明な虚像として視認することができる。
つまり、本実施形態によれば、第1図柄21と第2図柄23とで視点からの距離が互いに異なっていても、レンズ3を介して視認される第1模様41と第2模様43とをそれぞれ鮮明に視認することができる。
【0040】
装飾シート1の製造方法について説明する。
本実施形態における装飾シート1の製造方法は、図8に示すように、第1描画工程S1と、透光層形成工程S2と、第2描画工程S3と、レンズ形成工程S4と、を有している。
レンズ形成工程S4は、図9に示すように、第1レンズ形成工程S401と、第2レンズ形成工程S402と、を有している。
【0041】
第1描画工程S1では、まず、図10(a)に示すように、シート材11の第1面15aに、液状体51を塗布することによって、シート材11の第1面15aに複数の第1図柄パターン21aを描画する。液状体51は、紫外光の照射を受けることによって硬化する性質である光硬化性を有している。
複数の第1図柄パターン21aの描画には、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が活用され得る。
吐出ヘッド53から液状体51を液滴51aとして吐出する技術は、インクジェット技術と呼ばれる。そして、インクジェット技術を活用して液状体51などを所定の位置に配置する方法は、インクジェット法と呼ばれる。このインクジェット法は、塗布法の1つである。
次いで、図10(b)に示すように、複数の第1図柄パターン21aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第1図柄パターン21aを構成する液状体51が硬化し、複数の第1図柄21が形成される。
【0042】
次いで、透光層形成工程S2では、まず、図10(c)に示すように、シート材11の第1面15aに液状体57を塗布することによって、液状体57で複数の第1図柄21を覆う透光層13aを形成する。
このとき、液状体57の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
なお、液状体57は、光透過性を有している。このような液状体57としては、例えば、アクリル系やエポキシ系などの液状体57が採用され得る。なお、上述した液状体51としては、液状体57に顔料などの色素を混合したものが採用され得る。これにより、透光層13aと第1図柄21とが識別され、第1図柄21を図柄として認識することができる。
また、液状体57は、光硬化性を有している。
透光層13aの形成に次いで、図10(d)に示すように、透光層13aに紫外光55を照射する。これにより、透光層13aを構成する液状体57が硬化し、透光層13が形成される。
【0043】
次いで、第2描画工程S3では、まず、図10(e)に示すように、透光層13のシート材11側とは反対側に、液状体51を塗布することによって、透光層13に複数の第2図柄パターン23aを描画する。
このとき、液状体51の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
次いで、図10(f)に示すように、複数の第2図柄パターン23aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第2図柄パターン23aを構成する液状体51が硬化し、複数の第2図柄23が形成される。
なお、第2図柄パターン23aを描画するときの液状体51と、第1図柄パターン21aを描画するときの液状体51とは、互いに同じものであっても、互いに異なるものであってもよい。例えば、第1図柄パターン21aを描画するときと、第2図柄パターン23aを描画するときとで、互いに色が異なる色の液状体51を用いれば、第1図柄21の色と第2図柄23の色とを異ならせることができる。
【0044】
次いで、レンズ形成工程S4の第1レンズ形成工程S401では、まず、図11(a)に示すように、シート材11の第2面15bに、液状体59を塗布することによって、シート材11の第2面15bに複数の第1レンズパターン25aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
液状体59は、光透過性を有している。液状体59としては、例えば、アクリル系やエポキシ系などの液状体59が採用され得る。また、液状体59は、光硬化性を有している。
なお、透光層13aを形成するときの液状体57と、第1レンズパターン25aを描画するときの液状体59とは、互いに同じものであっても、互いに異なるものであってもよい。
複数の第1レンズパターン25aの描画に次いで、図11(b)に示すように、複数の第1レンズパターン25aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第1レンズパターン25aを構成する液状体59が硬化し、複数の第1レンズ25が形成される。
【0045】
次いで、レンズ形成工程S4の第2レンズ形成工程S402では、まず、図11(c)に示すように、複数の第1レンズ25のシート材11側とは反対側に、液状体59を各第1レンズ25に重ねて塗布することによって、複数の第2レンズパターン27aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
複数の第2レンズパターン27aの描画に次いで、図11(d)に示すように、複数の第2レンズパターン27aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第2レンズパターン27aを構成する液状体59が硬化し、複数の第2レンズ27が形成される。
上記により、図2に示す装飾シート1が製造され得る。
【0046】
本実施形態において、装飾シート1が装飾体に対応し、シート材11がシートに対応している。
本実施形態では、レンズ形成工程S4において、複数の第1レンズパターン25aに紫外光55を照射してから、複数の第2レンズパターン27aを描画する方法が採用されている。これにより、複数の第1レンズパターン25aを構成する液状体59の少なくとも一部を硬化させてから、複数の第2レンズパターン27aを描画することができる。このため、第1レンズパターン25aを構成する液状体59と第2レンズパターン27aを構成する液状体59とが互いに混合することを避けやすい。この結果、第1レンズ25と第2レンズ27とを明確に区分しやすくすることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、第1レンズ形成工程S401及び第2レンズ形成工程S402において、それぞれ、液状体59の塗布方法としてインクジェット法が採用されている。しかしながら、液状体59の塗布方法は、これに限定されない。液状体59の塗布方法としては、例えば、シリンジ法やディスペンス法などの種々の塗布方法も採用され得る。
【0048】
また、本実施形態では、第1図柄21の形成及び第2図柄23の形成において、それぞれ、液状体51の塗布方法としてインクジェット法が採用されている。しかしながら、第1図柄21の形成方法及び第2図柄23の形成方法は、これに限定されない。第1図柄21の形成方法及び第2図柄23の形成方法としては、それぞれ、例えば、スクリーン印刷などの印刷法も採用され得る。
しかしながら、液状体51の塗布方法としてインクジェット法を採用すれば、レンズ形成工程S4における液状体59の塗布方法と、第1描画工程S1及び第2描画工程S3における液状体51の塗布方法とを、互いに同じインクジェット法に統一することができる。これにより、装飾シート1の製造方法の効率化を図りやすくすることができる。このため、液状体51の塗布方法としてインクジェット法を採用することは好ましい。
【0049】
また、本実施形態では、透光層13aの形成において、液状体57の塗布方法としてインクジェット法が採用されている。しかしながら、液状体57の塗布方法は、これに限定されない。液状体57の塗布方法としては、例えば、スピンコート法やスリットコート法などの種々の塗布方法も採用され得る。
しかしながら、液状体57の塗布方法としてインクジェット法を採用すれば、レンズ形成工程S4における液状体59の塗布方法と、透光層形成工程S2における液状体57の塗布方法とを、互いに同じインクジェット法に統一することができる。これにより、装飾シート1の製造方法の効率化を図りやすくすることができる。このため、液状体57の塗布方法としてインクジェット法を採用することは好ましい。
【0050】
なお、本実施形態では、装飾シート1の製造方法として、第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第2描画工程S3、第1レンズ形成工程S401、及び第2レンズ形成工程S402を、この順序で実施する流れが採用されている。しかしながら、装飾シート1の製造方法の流れは、これに限定されず、種々の変更を実施することができる。
以下に、装飾シート1の製造方法の流れの例を記す。以下の例では、記載されている順序で工程が流れていく。
[例1]第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第1レンズ形成工程S401、第2レンズ形成工程S402、第2描画工程S3の順。
[例2]第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第1レンズ形成工程S401、第2描画工程S3、第2レンズ形成工程S402の順。
[例3]第1描画工程S1、第1レンズ形成工程S401、第2レンズ形成工程S402、透光層形成工程S2、第2描画工程S3の順。
[例4]第1描画工程S1、第1レンズ形成工程S401、透光層形成工程S2、第2レンズ形成工程S402、第2描画工程S3の順。
[例5]第1描画工程S1、第1レンズ形成工程S401、透光層形成工程S2、第2描画工程S3、第2レンズ形成工程S402の順。
【0051】
[例6]第1レンズ形成工程S401、第2レンズ形成工程S402、第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第2描画工程S3の順。
[例7]第1レンズ形成工程S401、第1描画工程S1、第2レンズ形成工程S402、透光層形成工程S2、第2描画工程S3の順。
[例8]第1レンズ形成工程S401、第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第2レンズ形成工程S402、第2描画工程S3の順。
[例9]第1レンズ形成工程S401、第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第2描画工程S3、第2レンズ形成工程S402の順。
例えば、シート材11に複数の第1レンズ25が設けられたレンズシートが市販品として入手可能な場合がある。このようなレンズシートを活用する場合には、装飾シート1の製造方法の流れとして、レンズシートの製造も含めて、上記例6〜例9の流れが適用され得る。
【符号の説明】
【0052】
1…装飾シート、3…レンズ、11…シート材、13…透光層、15a…第1面、15b…第2面、21…第1図柄、21a…第1図柄パターン、23…第2図柄、23a…第2図柄パターン、25…第1レンズ、25a…第1レンズパターン、27…第2レンズ、27a…第2レンズパターン、29…組、31…組、31a…組、33…虚像ユニット、37…組、37a…組、39…虚像ユニット、41…第1模様、43…第2模様、51…液状体、53…吐出ヘッド、55…紫外光、57…液状体、59…液状体、D1…距離、D2…距離、F1…焦点、F2…焦点、P…間隔、Q…間隔、R…間隔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾体の製造方法、装飾体等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図柄を立体的な虚像として視認することができる装飾体が知られている。
このような装飾体では、従来、複数の凸レンズが設けられた透明シートの凸レンズ側とは反対側の面に、凸レンズに対応して印刷された第1の模様(図柄)と、この第1の模様に積層された透明性の積層シートと、積層シートの凸レンズ側とは反対側の面に凸レンズに対応して印刷された第2の模様(図柄)と、を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2761861号公報(第3頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された装飾体によれば、第1の模様と第2の模様との相対位置の変化を視認することができる。これにより、装飾体の装飾性を向上させることができる。
しかしながら、この装飾体では、凸レンズの焦点を第1の模様及び第2の模様のうちの一方の模様に合わせると、凸レンズの焦点は、他方の模様からずれやすい。このため、凸レンズを介して一方の模様が鮮明に視認され得るのに対して、他方の模様はぼやけやすい。
つまり、従来の装飾体では、複数の図柄を鮮明に視認することが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0006】
[適用例1]光透過性を有するシートの第1面に設けられた複数の第1図柄と、光透過性を有する材料で構成され、前記複数の第1図柄の前記シート側とは反対側に設けられた透光層と、前記透光層の前記シート側とは反対側に、前記複数の第1図柄のそれぞれに対応して設けられた第2図柄と、を有する前記シートの前記第1面とは反対側の第2面に複数のレンズを、前記レンズのそれぞれを、互いに対をなす前記第1図柄及び前記第2図柄の組のそれぞれに対応させて、形成するレンズ形成工程を含み、前記レンズ形成工程では、前記シートの前記第2面に配置される第1レンズと、前記第1レンズの前記シート側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む前記レンズを形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0007】
この適用例の装飾体の製造方法は、光透過性を有するシートに複数のレンズを形成するレンズ形成工程を含む。
このシートは、第1面と、第1面とは反対側の面である第2面と、を有する。第1面には、複数の第1図柄が設けられている。
複数の第1図柄のシート側とは反対側には、光透過性を有する材料で構成された透光層が設けられている。透光層のシート側とは反対側には、複数の第2図柄が設けられている。
複数の第2図柄は、それぞれ、複数の第1図柄のそれぞれに対応している。互いに対応する第1図柄及び第2図柄は、一組の対をなしている。
レンズ形成工程では、シートの第2面に複数のレンズを形成する。このとき、レンズのそれぞれを、互いに対をなす第1図柄及び第2図柄の組のそれぞれに対応させる。これにより、この装飾体では、複数のレンズを介して第1図柄及び第2図柄が虚像として視認され得る。
この製造方法では、レンズ形成工程において、シートの第2面に配置される第1レンズと、第1レンズのシート側とは反対側で第1レンズに重なる第2レンズと、を含むレンズを形成する。これにより、少なくとも第1レンズ及び第2レンズを含む複数段のレンズを形成することができる。このため、複数の焦点を有するレンズを形成することができる。この結果、例えば、第1レンズの焦点を第2図柄に合わせ、第2レンズの焦点を第1図柄に合わせることができる。これにより、第1図柄及び第2図柄のそれぞれを鮮明に視認しやすくすることができる。
【0008】
[適用例2]上記の装飾体の製造方法であって、前記レンズ形成工程では、光の照射を受けることによって硬化する液状体を前記シートの前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から前記複数のレンズを形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0009】
この適用例では、レンズ形成工程において、光の照射を受けることによって硬化する液状体をシートの第2面に塗布してから、第2面に塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数のレンズを形成することができる。
【0010】
[適用例3]上記の装飾体の製造方法であって、前記レンズ形成工程は、前記液状体を前記シートの前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、前記第1レンズ形成工程の後に、液状体を前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、前記第1レンズに塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0011】
この適用例では、レンズ形成工程は、複数の第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、第1レンズ形成工程の後に、複数の第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む。
第1レンズ形成工程では、液状体をシートの第2面に塗布してから、第2面に塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数の第1レンズを形成する。
第2レンズ形成工程では、液状体を複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、第1レンズに塗布した液状体に向けて光を照射することによって、液状体から複数の第2レンズを形成する。
この製造方法によれば、第1レンズを構成する液状体の少なくとも一部を硬化させてから、この第1レンズに重ねて第2レンズを構成する液状体を塗布するので、第1レンズを構成する液状体と第2レンズを構成する液状体とが互いに混合することを避けやすい。この結果、第1レンズと第2レンズとを明確に区分しやすくすることができる。
【0012】
[適用例4]上記の装飾体の製造方法であって、前記第1レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記シートの前記第2面に塗布し、前記第2レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0013】
この適用例では、第1レンズ形成工程において、液状体をインクジェット法でシートの第2面に塗布する。また、第2レンズ形成工程において、液状体をインクジェット法で複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する。これにより、第1レンズを構成する液状体、及び第2レンズを構成する液状体のそれぞれを塗布することができる。
【0014】
[適用例5]上記の装飾体の製造方法であって、前記複数の第1図柄及び複数の前記第2図柄のそれぞれを、インクジェット法で形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0015】
この適用例では、複数の第1図柄及び複数の第2図柄のそれぞれを、インクジェット法で形成するので、レンズ形成工程における液状体の塗布の方法と、複数の第1図柄及び複数の第2図柄のそれぞれの形成方法とを互いに同じインクジェット法にそろえることができる。この結果、装飾体の製造方法の効率化を図りやすくすることができる。
【0016】
[適用例6]上記の装飾体の製造方法であって、前記透光層をインクジェット法で形成する、ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【0017】
この適用例では、透光層をインクジェット法で形成するので、レンズ形成工程における液状体の塗布の方法と、複数の第1図柄及び複数の第2図柄のそれぞれの形成方法と、透光層の形成方法とを相互に同じインクジェット法にそろえることができる。この結果、装飾体の製造方法の効率化を一層図りやすくすることができる。
【0018】
[適用例7]光透過性を有するシートと、前記シートの第1面に設けられた複数の第1図柄と、光透過性を有する材料で構成され、前記複数の第1図柄の前記シート側とは反対側に設けられた透光層と、前記透光層の前記シート側とは反対側に、前記複数の第1図柄のそれぞれに対応して設けられた第2図柄と、互いに対をなす前記第1図柄及び前記第2図柄の組のそれぞれに対応して設けられ、且つ、前記シートの前記第1面とは反対側の第2面に設けられた複数のレンズと、を有し、前記複数のレンズは、それぞれ、前記シートの前記第2面に設けられた第1レンズと、前記第1レンズの前記シート側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む、ことを特徴とする装飾体。
【0019】
この適用例の装飾体は、シートと、複数の第1図柄と、透光層と、複数の第2図柄と、複数のレンズと、を有する。
シートは、光透過性を有する。
複数の第1図柄は、シートの第1面に設けられている。
透光層は、光透過性を有する材料で構成されている。透光層は、複数の第1図柄のシート側とは反対側に設けられている。
複数の第2図柄は、透光層のシート側とは反対側に設けられている。複数の第2図柄は、それぞれ、複数の第1図柄のそれぞれに対応して設けられている。
複数のレンズは、シートの第1面とは反対側の第2面に設けられている。複数のレンズは、それぞれ、互いに対をなす第1図柄及び第2図柄の組のそれぞれに対応して設けられている。
上記により、この装飾体では、複数のレンズを介して第1図柄及び第2図柄が虚像として視認され得る。
そして、この装飾体では、複数のレンズは、それぞれ、シートの第2面に設けられた第1レンズと、第1レンズのシート側とは反対側で第1レンズに重なる第2レンズと、を含む。つまり、この装飾体は、少なくとも第1レンズ及び第2レンズを含む複数段のレンズを有している。このため、この装飾体では、複数の焦点を有するレンズを介して第1図柄及び第2図柄を視認することができる。このとき、例えば、第1レンズの焦点を第2図柄に合わせ、第2レンズの焦点を第1図柄に合わせることができる。これにより、第1図柄及び第2図柄のそれぞれを鮮明に視認しやすくすることができる。
【0020】
[適用例8]上記の装飾体であって、前記第1レンズの焦点が、前記第2図柄に合っており、前記第2レンズの焦点が、前記第1図柄に合っている、ことを特徴とする装飾体。
【0021】
この適用例では、第1レンズの焦点が第2図柄に合っており、第2レンズの焦点が第1図柄に合っているので、第1図柄及び第2図柄のそれぞれを鮮明に視認しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態における装飾シートの平面図。
【図2】図1中のA−A線における断面図。
【図3】本実施形態におけるレンズと第1図柄との配置を説明する平面図。
【図4】本実施形態におけるレンズと第2図柄との配置を説明する平面図。
【図5】本実施形態における虚像ユニットの配置を説明する平面図。
【図6】本実施形態における装飾シートの平面図。
【図7】図2中のB部の拡大図。
【図8】本実施形態における装飾シートの製造方法の流れを示す図。
【図9】本実施形態におけるレンズ形成工程の流れを示す図。
【図10】本実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【図11】本実施形態における装飾シートの製造工程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照しながら、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
本実施形態における装飾シート1は、図1に示すように、複数のレンズ3を有している。図1では、構成をわかりやすく示すため、レンズ3が誇張され、且つレンズ3の個数が減じられている。
【0024】
複数のレンズ3は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って配列している。本実施形態では、Y方向に沿って1列に並ぶ複数のレンズ3が1つのレンズ列5を構成している。また、本実施形態では、X方向に沿って1列に並ぶ複数のレンズ3が1つのレンズ行7を構成している。
本実施形態において、Y方向は、レンズ列5が延在する方向である。そして、X方向は、平面視で、Y方向とは交差する方向である。つまり、本実施形態では、複数のレンズ列5が、X方向に並んでいる。なお、本実施形態では、X方向とY方向とが互いに直交している。このため、複数のレンズ3は、X方向を行方向とし、Y方向を列方向として、マトリクス状に配列している。
本実施形態では、X方向に隣り合う2つのレンズ3は、間隔Pで隣り合っている。また、Y方向に隣り合う2つのレンズ3は、間隔Pで隣り合っている。
【0025】
また、装飾シート1は、図1中のA−A線における断面図である図2に示すように、シート材11と、透光層13と、を有している。
シート材11は、光透過性を有する材料で構成されており、第1面15aと、第2面15bと、を有している。上述した複数のレンズ3は、シート材11の第2面15bに設けられている。第1面15aには、複数の第1図柄21が描かれている。シート材11の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールなどが採用され得る。
透光層13は、光透過性を有する材料で構成されており、シート材11の第1面15aに設けられている。透光層13は、シート材11の第1面15a側から複数の第1図柄21を覆っている。このため、透光層13は、複数の第1図柄21のシート材11側とは反対側に設けられているともみなされ得る。
透光層13のシート材11側とは反対側には、複数の第2図柄23が描かれている。
【0026】
本実施形態では、複数のレンズ3は、それぞれ、第1レンズ25と、第2レンズ27と、を含む。
第1レンズ25は、シート材11の第2面15bに設けられている。第2レンズ27は、第1レンズ25のシート材11側とは反対側で、第1レンズ25に重なっている。つまり、本実施形態では、第2レンズ27は、第1レンズ25に積層されている。このため、複数のレンズ3は、それぞれ、シート材11の第2面15bに設けられた第1レンズ25に第2レンズ27を積層した構成を有している。
【0027】
複数の第1図柄21は、それぞれ、複数のレンズ3のそれぞれに対応している。つまり、本実施形態では、レンズ3ごとに第1図柄21が設けられている。ただし、複数のレンズ3の中には、2つの第1図柄21に対応するものが含まれている。複数の第1図柄21のそれぞれが、複数のレンズ3のそれぞれに対応するという表現には、複数の第1図柄21が1つのレンズ3に対応する場合も含まれる。さらに、複数の第1図柄21のそれぞれが、複数のレンズ3のそれぞれに対応するという表現には、1つの第1図柄21が複数のレンズ3に対応する場合も含まれる。
複数の第2図柄23は、それぞれ、複数の第1図柄21のそれぞれに対応している。つまり、本実施形態では、第1図柄21ごとに第2図柄23が設けられている。
【0028】
前述したように、本実施形態では、レンズ3ごとに第1図柄21が設けられている。このため、複数の第2図柄23は、それぞれ、複数のレンズ3のそれぞれに対応している。つまり、本実施形態では、レンズ3ごとに第2図柄23が設けられている。ただし、複数の第2図柄23の中には、2つのレンズ3に対応するものが含まれている。複数の第2図柄23のそれぞれが、複数のレンズ3のそれぞれに対応するという表現には、複数の第2図柄23が1つのレンズ3に対応する場合も、1つの第2図柄23が複数のレンズ3に対応する場合も含まれる。
本実施形態では、レンズ3ごとに第1図柄21及び第2図柄23が設けられているので、レンズ3に対応する第1図柄21と第2図柄23とが1組の組29を構成する。換言すれば、第1図柄21及び第2図柄23の組29ごとにレンズ3が設けられているともみなされ得る。
【0029】
複数の第1図柄21は、レンズ3と第1図柄21との配置を説明する平面図である図3に示すように、X方向に間隔Qで並んでいる。また、複数の第1図柄21は、Y方向においても、間隔Qで並んでいる。なお、間隔Qは、間隔Pよりも短い。図3では、構成をわかりやすく示すため、レンズ3が破線で示されている。
複数のレンズ3のうちの1つのレンズ3aと、このレンズ3aに対応する第1図柄21との位置ずれが0である場合、レンズ3aからX方向において、間隔Pと間隔Qとの最小公倍数の距離D1にある位置に、位置ずれが0になるレンズ3と第1図柄21との組31が出現する。なお、本実施形態では、間隔Qが間隔Pよりも短いので、1つのレンズ3に2つの第1図柄21が対応する組31が存在する。
【0030】
また、このレンズ3aからY方向において、間隔Pと間隔Qとの最小公倍数の距離D1にある位置にも、位置ずれが0になるレンズ3と第1図柄21との組31が出現する。
レンズ3aから、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、次に位置ずれが0になるレンズ3と第1図柄21との組31よりも1つ前の組31aまでのマトリクスが、1つの虚像ユニット33を構成する。
1つの虚像ユニット33では、第1図柄21を拡大した1つの模様が虚像として視認され得る。以下において、虚像ユニット33に出現する模様は、第1模様と呼ばれる。
【0031】
複数の第2図柄23は、レンズ3と第2図柄23との配置を説明する平面図である図4に示すように、X方向に間隔Rで並んでいる。また、複数の第2図柄23は、Y方向においても、間隔Rで並んでいる。なお、間隔Rは、間隔Pよりも長い。
複数のレンズ3のうちの1つのレンズ3bと、このレンズ3bに対応する第2図柄23との位置ずれが0である場合、レンズ3bからX方向において、間隔Pと間隔Rとの最小公倍数の距離D2にある位置に、位置ずれが0になるレンズ3と第2図柄23との組37が出現する。なお、本実施形態では、間隔Rが間隔Pよりも長いので、1つの第2図柄23が2つのレンズ3に対応する組37が存在する。
【0032】
また、このレンズ3bからY方向において、間隔Pと間隔Rとの最小公倍数の距離D2にある位置にも、位置ずれが0になるレンズ3と第2図柄23との組37が出現する。
レンズ3bから、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、次に位置ずれが0になるレンズ3と第2図柄23との組37よりも1つ前の組37aまでのマトリクスが、1つの虚像ユニット39を構成する。
1つの虚像ユニット39では、第2図柄23を拡大した1つの模様が虚像として視認され得る。以下において、虚像ユニット39に出現する模様は、第2模様と呼ばれる。
なお、レンズ3aとレンズ3bとが互いに同一のレンズ3である場合と、レンズ3aとレンズ3bとが互いに異なるレンズ3である場合とが考えられる。本実施形態では、レンズ3aとレンズ3bとが、互いに同一のレンズ3であっても、互いに異なるレンズ3であってもよい。
【0033】
本実施形態では、虚像ユニット33の配置を説明する平面図である図5(a)に示すように、複数の虚像ユニット33が、X方向及びY方向の双方に並んでいる。このため、装飾シート1では、複数のレンズ3側から装飾シート1を目視すると、虚像ユニット33ごとに、前述した第1模様41が出現する。
また、本実施形態では、虚像ユニット39の配置を説明する平面図である図5(b)に示すように、複数の虚像ユニット39が、X方向及びY方向の双方に並んでいる。このため、装飾シート1では、複数のレンズ3側から装飾シート1を目視すると、虚像ユニット39ごとに、前述した第2模様43が出現する。
【0034】
なお、図5では、構成をわかりやすく示すため、虚像ユニット33と虚像ユニット39とを、それぞれ異なる図面で示したが、装飾シート1において、虚像ユニット33と虚像ユニット39とは互いに重なっている。つまり、装飾シート1では、図6に示すように、第1模様41及び第2模様43の双方が視認され得る。
また、本実施形態では、第1模様41と第2模様43とをわかりやすく区別するために、第1模様41が水玉模様を呈し、第2模様43が四角模様を呈している。第1模様41及び第2模様43の態様は、これらに限定されず、種々の模様が採用され得る。また、第1模様41及び第2模様43のそれぞれに採用される模様には、記号や文字、図形、画像、紋様などの種々の模様が含まれる。
【0035】
前述したように、虚像ユニット33と虚像ユニット39とは、互いに重なる領域を含んでいる。このため、虚像として出現する第1模様41及び第2模様43は、互いに重なる部分を含んでいる。
互いに重なる部分を含む第1模様41及び第2模様43では、第2模様43が、第1模様41よりも浮き出た状態で視認される。換言すれば、第1模様41は、第2模様43よりも沈み込んだ状態で視認される。この浮き沈み状態は、複数のレンズ3の間隔Pと、複数の第1図柄21の間隔Qと、複数の第2図柄23の間隔Rとの関係によって決まる。
【0036】
つまり、第1図柄21の間隔Qがレンズ3の間隔Pよりも短いので、第1模様41は、背景として視認されるシート材11の第1面15a(図2)よりも複数のレンズ3側とは反対側に沈み込んだ状態で視認される。
また、第2図柄23の間隔Rがレンズ3の間隔Pよりも長いので、第2模様43は、背景として視認されるシート材11の第1面15a(図2)よりも複数のレンズ3側に浮き出た状態で視認される。
このため、装飾シート1では、第2模様43が、第1模様41よりも浮き出た状態で視認される。
【0037】
また、装飾シート1では、装飾シート1に対する視線の角度を変化させると、第1模様41及び第2模様43のそれぞれが変位する。
さらに、装飾シート1では、第1図柄21と第2図柄23との間に透光層13が設けられているので、視点から第1図柄21までの距離と、視点から第2図柄23までの距離との間に差異がある。このため、装飾シート1に対する視線の角度を変化させると、第1模様41と第2模様43とが互いに相対変位する。
【0038】
ここで、本実施形態では、複数のレンズ3のそれぞれにおいて、図2中のB部の拡大図である図7に示すように、第1レンズ25の透光層13側の焦点F1の位置は、透光層13のシート材11側とは反対側の面に設定されている。
また、第2レンズ27の透光層13側の焦点F2の位置は、シート材11の第1面15aに設定されている。
上記により、第1レンズ25の焦点F1を第2図柄23に合わせやすくすることができる。また、第2レンズ27の焦点F2を第1図柄21に合わせやすくすることができる。
【0039】
本実施形態では、第1レンズ25の焦点F1が第2図柄23に合っており、第2レンズ27の焦点F2が第1図柄21に合っている。
このため、第1レンズ25を介して視認する第2図柄23を鮮明な虚像として視認することができる。また、第2レンズ27を介して視認する第1図柄21を鮮明な虚像として視認することができる。
この結果、虚像ユニット33における複数の第1図柄21の集合体として視認される第1模様41を、鮮明な虚像として視認することができる。また、虚像ユニット39における複数の第2図柄23の集合体として視認される第2模様43を、鮮明な虚像として視認することができる。
つまり、本実施形態によれば、第1図柄21と第2図柄23とで視点からの距離が互いに異なっていても、レンズ3を介して視認される第1模様41と第2模様43とをそれぞれ鮮明に視認することができる。
【0040】
装飾シート1の製造方法について説明する。
本実施形態における装飾シート1の製造方法は、図8に示すように、第1描画工程S1と、透光層形成工程S2と、第2描画工程S3と、レンズ形成工程S4と、を有している。
レンズ形成工程S4は、図9に示すように、第1レンズ形成工程S401と、第2レンズ形成工程S402と、を有している。
【0041】
第1描画工程S1では、まず、図10(a)に示すように、シート材11の第1面15aに、液状体51を塗布することによって、シート材11の第1面15aに複数の第1図柄パターン21aを描画する。液状体51は、紫外光の照射を受けることによって硬化する性質である光硬化性を有している。
複数の第1図柄パターン21aの描画には、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が活用され得る。
吐出ヘッド53から液状体51を液滴51aとして吐出する技術は、インクジェット技術と呼ばれる。そして、インクジェット技術を活用して液状体51などを所定の位置に配置する方法は、インクジェット法と呼ばれる。このインクジェット法は、塗布法の1つである。
次いで、図10(b)に示すように、複数の第1図柄パターン21aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第1図柄パターン21aを構成する液状体51が硬化し、複数の第1図柄21が形成される。
【0042】
次いで、透光層形成工程S2では、まず、図10(c)に示すように、シート材11の第1面15aに液状体57を塗布することによって、液状体57で複数の第1図柄21を覆う透光層13aを形成する。
このとき、液状体57の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
なお、液状体57は、光透過性を有している。このような液状体57としては、例えば、アクリル系やエポキシ系などの液状体57が採用され得る。なお、上述した液状体51としては、液状体57に顔料などの色素を混合したものが採用され得る。これにより、透光層13aと第1図柄21とが識別され、第1図柄21を図柄として認識することができる。
また、液状体57は、光硬化性を有している。
透光層13aの形成に次いで、図10(d)に示すように、透光層13aに紫外光55を照射する。これにより、透光層13aを構成する液状体57が硬化し、透光層13が形成される。
【0043】
次いで、第2描画工程S3では、まず、図10(e)に示すように、透光層13のシート材11側とは反対側に、液状体51を塗布することによって、透光層13に複数の第2図柄パターン23aを描画する。
このとき、液状体51の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
次いで、図10(f)に示すように、複数の第2図柄パターン23aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第2図柄パターン23aを構成する液状体51が硬化し、複数の第2図柄23が形成される。
なお、第2図柄パターン23aを描画するときの液状体51と、第1図柄パターン21aを描画するときの液状体51とは、互いに同じものであっても、互いに異なるものであってもよい。例えば、第1図柄パターン21aを描画するときと、第2図柄パターン23aを描画するときとで、互いに色が異なる色の液状体51を用いれば、第1図柄21の色と第2図柄23の色とを異ならせることができる。
【0044】
次いで、レンズ形成工程S4の第1レンズ形成工程S401では、まず、図11(a)に示すように、シート材11の第2面15bに、液状体59を塗布することによって、シート材11の第2面15bに複数の第1レンズパターン25aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
液状体59は、光透過性を有している。液状体59としては、例えば、アクリル系やエポキシ系などの液状体59が採用され得る。また、液状体59は、光硬化性を有している。
なお、透光層13aを形成するときの液状体57と、第1レンズパターン25aを描画するときの液状体59とは、互いに同じものであっても、互いに異なるものであってもよい。
複数の第1レンズパターン25aの描画に次いで、図11(b)に示すように、複数の第1レンズパターン25aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第1レンズパターン25aを構成する液状体59が硬化し、複数の第1レンズ25が形成される。
【0045】
次いで、レンズ形成工程S4の第2レンズ形成工程S402では、まず、図11(c)に示すように、複数の第1レンズ25のシート材11側とは反対側に、液状体59を各第1レンズ25に重ねて塗布することによって、複数の第2レンズパターン27aを描画する。
このとき、液状体59の塗布に、吐出ヘッド53を利用したインクジェット法が採用されている。
複数の第2レンズパターン27aの描画に次いで、図11(d)に示すように、複数の第2レンズパターン27aに紫外光55を照射する。これにより、複数の第2レンズパターン27aを構成する液状体59が硬化し、複数の第2レンズ27が形成される。
上記により、図2に示す装飾シート1が製造され得る。
【0046】
本実施形態において、装飾シート1が装飾体に対応し、シート材11がシートに対応している。
本実施形態では、レンズ形成工程S4において、複数の第1レンズパターン25aに紫外光55を照射してから、複数の第2レンズパターン27aを描画する方法が採用されている。これにより、複数の第1レンズパターン25aを構成する液状体59の少なくとも一部を硬化させてから、複数の第2レンズパターン27aを描画することができる。このため、第1レンズパターン25aを構成する液状体59と第2レンズパターン27aを構成する液状体59とが互いに混合することを避けやすい。この結果、第1レンズ25と第2レンズ27とを明確に区分しやすくすることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、第1レンズ形成工程S401及び第2レンズ形成工程S402において、それぞれ、液状体59の塗布方法としてインクジェット法が採用されている。しかしながら、液状体59の塗布方法は、これに限定されない。液状体59の塗布方法としては、例えば、シリンジ法やディスペンス法などの種々の塗布方法も採用され得る。
【0048】
また、本実施形態では、第1図柄21の形成及び第2図柄23の形成において、それぞれ、液状体51の塗布方法としてインクジェット法が採用されている。しかしながら、第1図柄21の形成方法及び第2図柄23の形成方法は、これに限定されない。第1図柄21の形成方法及び第2図柄23の形成方法としては、それぞれ、例えば、スクリーン印刷などの印刷法も採用され得る。
しかしながら、液状体51の塗布方法としてインクジェット法を採用すれば、レンズ形成工程S4における液状体59の塗布方法と、第1描画工程S1及び第2描画工程S3における液状体51の塗布方法とを、互いに同じインクジェット法に統一することができる。これにより、装飾シート1の製造方法の効率化を図りやすくすることができる。このため、液状体51の塗布方法としてインクジェット法を採用することは好ましい。
【0049】
また、本実施形態では、透光層13aの形成において、液状体57の塗布方法としてインクジェット法が採用されている。しかしながら、液状体57の塗布方法は、これに限定されない。液状体57の塗布方法としては、例えば、スピンコート法やスリットコート法などの種々の塗布方法も採用され得る。
しかしながら、液状体57の塗布方法としてインクジェット法を採用すれば、レンズ形成工程S4における液状体59の塗布方法と、透光層形成工程S2における液状体57の塗布方法とを、互いに同じインクジェット法に統一することができる。これにより、装飾シート1の製造方法の効率化を図りやすくすることができる。このため、液状体57の塗布方法としてインクジェット法を採用することは好ましい。
【0050】
なお、本実施形態では、装飾シート1の製造方法として、第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第2描画工程S3、第1レンズ形成工程S401、及び第2レンズ形成工程S402を、この順序で実施する流れが採用されている。しかしながら、装飾シート1の製造方法の流れは、これに限定されず、種々の変更を実施することができる。
以下に、装飾シート1の製造方法の流れの例を記す。以下の例では、記載されている順序で工程が流れていく。
[例1]第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第1レンズ形成工程S401、第2レンズ形成工程S402、第2描画工程S3の順。
[例2]第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第1レンズ形成工程S401、第2描画工程S3、第2レンズ形成工程S402の順。
[例3]第1描画工程S1、第1レンズ形成工程S401、第2レンズ形成工程S402、透光層形成工程S2、第2描画工程S3の順。
[例4]第1描画工程S1、第1レンズ形成工程S401、透光層形成工程S2、第2レンズ形成工程S402、第2描画工程S3の順。
[例5]第1描画工程S1、第1レンズ形成工程S401、透光層形成工程S2、第2描画工程S3、第2レンズ形成工程S402の順。
【0051】
[例6]第1レンズ形成工程S401、第2レンズ形成工程S402、第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第2描画工程S3の順。
[例7]第1レンズ形成工程S401、第1描画工程S1、第2レンズ形成工程S402、透光層形成工程S2、第2描画工程S3の順。
[例8]第1レンズ形成工程S401、第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第2レンズ形成工程S402、第2描画工程S3の順。
[例9]第1レンズ形成工程S401、第1描画工程S1、透光層形成工程S2、第2描画工程S3、第2レンズ形成工程S402の順。
例えば、シート材11に複数の第1レンズ25が設けられたレンズシートが市販品として入手可能な場合がある。このようなレンズシートを活用する場合には、装飾シート1の製造方法の流れとして、レンズシートの製造も含めて、上記例6〜例9の流れが適用され得る。
【符号の説明】
【0052】
1…装飾シート、3…レンズ、11…シート材、13…透光層、15a…第1面、15b…第2面、21…第1図柄、21a…第1図柄パターン、23…第2図柄、23a…第2図柄パターン、25…第1レンズ、25a…第1レンズパターン、27…第2レンズ、27a…第2レンズパターン、29…組、31…組、31a…組、33…虚像ユニット、37…組、37a…組、39…虚像ユニット、41…第1模様、43…第2模様、51…液状体、53…吐出ヘッド、55…紫外光、57…液状体、59…液状体、D1…距離、D2…距離、F1…焦点、F2…焦点、P…間隔、Q…間隔、R…間隔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有するシートの第1面に設けられた複数の第1図柄と、
光透過性を有する材料で構成され、前記複数の第1図柄の前記シート側とは反対側に設けられた透光層と、
前記透光層の前記シート側とは反対側に、前記複数の第1図柄のそれぞれに対応して設けられた第2図柄と、
を有する前記シートの前記第1面とは反対側の第2面に複数のレンズを、前記レンズのそれぞれを、互いに対をなす前記第1図柄及び前記第2図柄の組のそれぞれに対応させて、形成するレンズ形成工程を含み、
前記レンズ形成工程では、前記シートの前記第2面に配置される第1レンズと、前記第1レンズの前記シート側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む前記レンズを形成する、
ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【請求項2】
前記レンズ形成工程では、光の照射を受けることによって硬化する液状体を前記シートの前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から前記複数のレンズを形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の装飾体の製造方法。
【請求項3】
前記レンズ形成工程は、
前記液状体を前記シートの前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、
前記第1レンズ形成工程の後に、液状体を前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、前記第1レンズに塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の装飾体の製造方法。
【請求項4】
前記第1レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記シートの前記第2面に塗布し、
前記第2レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する、
ことを特徴とする請求項3に記載の装飾体の製造方法。
【請求項5】
前記複数の第1図柄及び複数の前記第2図柄のそれぞれを、インクジェット法で形成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の装飾体の製造方法。
【請求項6】
前記透光層をインクジェット法で形成する、
ことを特徴とする請求項5に記載の装飾体の製造方法。
【請求項7】
光透過性を有するシートと、
前記シートの第1面に設けられた複数の第1図柄と、
光透過性を有する材料で構成され、前記複数の第1図柄の前記シート側とは反対側に設けられた透光層と、
前記透光層の前記シート側とは反対側に、前記複数の第1図柄のそれぞれに対応して設けられた第2図柄と、
互いに対をなす前記第1図柄及び前記第2図柄の組のそれぞれに対応して設けられ、且つ、前記シートの前記第1面とは反対側の第2面に設けられた複数のレンズと、を有し、
前記複数のレンズは、それぞれ、
前記シートの前記第2面に設けられた第1レンズと、
前記第1レンズの前記シート側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む、
ことを特徴とする装飾体。
【請求項8】
前記第1レンズの焦点が、前記第2図柄に合っており、
前記第2レンズの焦点が、前記第1図柄に合っている、
ことを特徴とする請求項7に記載の装飾体。
【請求項1】
光透過性を有するシートの第1面に設けられた複数の第1図柄と、
光透過性を有する材料で構成され、前記複数の第1図柄の前記シート側とは反対側に設けられた透光層と、
前記透光層の前記シート側とは反対側に、前記複数の第1図柄のそれぞれに対応して設けられた第2図柄と、
を有する前記シートの前記第1面とは反対側の第2面に複数のレンズを、前記レンズのそれぞれを、互いに対をなす前記第1図柄及び前記第2図柄の組のそれぞれに対応させて、形成するレンズ形成工程を含み、
前記レンズ形成工程では、前記シートの前記第2面に配置される第1レンズと、前記第1レンズの前記シート側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む前記レンズを形成する、
ことを特徴とする装飾体の製造方法。
【請求項2】
前記レンズ形成工程では、光の照射を受けることによって硬化する液状体を前記シートの前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から前記複数のレンズを形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の装飾体の製造方法。
【請求項3】
前記レンズ形成工程は、
前記液状体を前記シートの前記第2面に塗布してから、前記第2面に塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第1レンズを形成する第1レンズ形成工程と、
前記第1レンズ形成工程の後に、液状体を前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布してから、前記第1レンズに塗布した前記液状体に向けて前記光を照射することによって、前記液状体から複数の前記第2レンズを形成する第2レンズ形成工程と、を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の装飾体の製造方法。
【請求項4】
前記第1レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記シートの前記第2面に塗布し、
前記第2レンズ形成工程では、前記液状体をインクジェット法で前記複数の第1レンズのそれぞれに重ねて塗布する、
ことを特徴とする請求項3に記載の装飾体の製造方法。
【請求項5】
前記複数の第1図柄及び複数の前記第2図柄のそれぞれを、インクジェット法で形成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の装飾体の製造方法。
【請求項6】
前記透光層をインクジェット法で形成する、
ことを特徴とする請求項5に記載の装飾体の製造方法。
【請求項7】
光透過性を有するシートと、
前記シートの第1面に設けられた複数の第1図柄と、
光透過性を有する材料で構成され、前記複数の第1図柄の前記シート側とは反対側に設けられた透光層と、
前記透光層の前記シート側とは反対側に、前記複数の第1図柄のそれぞれに対応して設けられた第2図柄と、
互いに対をなす前記第1図柄及び前記第2図柄の組のそれぞれに対応して設けられ、且つ、前記シートの前記第1面とは反対側の第2面に設けられた複数のレンズと、を有し、
前記複数のレンズは、それぞれ、
前記シートの前記第2面に設けられた第1レンズと、
前記第1レンズの前記シート側とは反対側で前記第1レンズに重なる第2レンズと、を含む、
ことを特徴とする装飾体。
【請求項8】
前記第1レンズの焦点が、前記第2図柄に合っており、
前記第2レンズの焦点が、前記第1図柄に合っている、
ことを特徴とする請求項7に記載の装飾体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−63613(P2013−63613A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204291(P2011−204291)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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