説明

裏面電気接続を有するインクジェット印刷ヘッドアセンブリ

【課題】印刷ヘッド集積回路が外部の電力/データ供給に接続され、これらの接続が印刷の保守及び/又は印刷の品質に影響を与えることのない印刷ヘッドアセンブリを提供する。
【解決手段】インク供給マニホルドと、印刷ヘッド集積回路と、印刷ヘッド集積回路内の駆動回路に電力を供給するコネクタ膜とを備えるインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。各印刷ヘッド集積回路は、駆動回路及びインクジェットノズルアセンブリを備える前面と、インク供給マニホルドに取り付けられた裏面と、裏面とインクジェットノズルアセンブリの間に流体連結を提供するインク供給チャネルとを有する。コネクタ膜の接続端部が、インク供給マニホルドの一部と印刷ヘッド集積回路の間に挟まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機に関し、特にインクジェット印刷機に関する。本発明は主に、印刷ヘッドの保守を容易にするように印刷ヘッド集積回路の改善された取付けを提供するために開発された。
【背景技術】
【0002】
出願人は以前、ページの幅に沿って端部と端部で当接する複数の印刷ヘッド集積回路(「チップ」)を使用してページ幅インクジェット印刷ヘッドを構築できることを実証した。この印刷ヘッド集積回路の構成には、多くの利点(例えば、給紙方向に印刷区間の幅を最小にする)があるが、各印刷ヘッド集積回路はやはり、各印刷ヘッド集積回路へ電力及びデータを供給する他の印刷機電子回路に接続しなければならない。
【0003】
これまで出願人は、各印刷ヘッド集積回路上のボンドパッドを可撓性PCBにワイヤボンディングすることによって、印刷ヘッド集積回路をどのように外部の電力/データ供給に接続できるかについて記載してきた(例えば、米国特許第7,441,865号参照)。しかし、ワイヤボンドは印刷ヘッドのインク射出面から突出し、したがって、印刷の保守と印刷の品質の両方に悪影響を与える可能性がある。
【0004】
印刷ヘッド集積回路が外部の電力/データ供給に接続され、これらの接続が印刷の保守及び/又は印刷の品質に影響を与えることのない印刷ヘッドアセンブリを提供することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,441,865号
【発明の概要】
【0006】
したがって、第1の態様では、
インク供給マニホルドと、
1つ又は複数の印刷ヘッド集積回路であって、各印刷ヘッド集積回路が、駆動回路及び複数のインクジェットノズルアセンブリを備える前面と、インク供給マニホルドに取り付けられた裏面と、裏面とインクジェットノズルアセンブリの間に流体連結を提供する少なくとも1つのインク供給チャネルとを有する、1つ又は複数の印刷ヘッド集積回路と、
駆動回路に電力を供給する少なくとも1つのコネクタ膜と、を備え、
コネクタ膜の接続端部が、インク供給マニホルドの少なくとも一部と1つ又は複数の印刷ヘッド集積回路の間に挟まれる、インクジェット印刷ヘッドアセンブリが提供される。
【0007】
本発明によるインクジェット印刷ヘッドアセンブリは、印刷ヘッドへの電気接続を収容しながら印刷ヘッド集積回路をインク供給マニホルドに取り付ける好都合な手段を有利に提供する。さらに、印刷ヘッドの前面は、その範囲全体に沿って完全な平面である。
【0008】
任意選択で、コネクタ膜は、複数の導電トラックを有する可撓性のポリマー膜を構成する。
【0009】
任意選択で、コネクタ膜は、テープ自動化ボンディング(TAB)膜である。
【0010】
任意選択で、裏面は、コネクタ膜を収容する凹状部分を有する。
【0011】
任意選択で、凹状部分は、各印刷ヘッド集積回路の長手方向の縁部領域に沿って画定される。
【0012】
任意選択で、複数のシリコン貫通コネクタが、駆動回路とコネクタ膜の接続端部の間に電気接続を提供する。
【0013】
任意選択で、各シリコン貫通コネクタは、前面から裏面の方へ直線的に延びる。
【0014】
任意選択で、各シリコン貫通コネクタは、裏面の方へ先細りする。
【0015】
任意選択で、各シリコン貫通コネクタは、銅から構成される。
【0016】
任意選択で、各印刷ヘッド集積回路は、
シリコン基板と、
駆動回路を備える少なくとも1つのCMOS層と、
インクジェットノズルアセンブリを備えるMEMS層と、を備え、
CMOS層は、シリコン基板とMEMS層の間に位置決めされる。
【0017】
任意選択で、各シリコン貫通コネクタは、MEMS層内の接触パッドからCMOS層を通って裏面の方へ直線的に延び、接触パッドは、CMOS層に電気的に接続される。
【0018】
任意選択で、印刷ヘッドアセンブリは、接触パッドとCMOS層の間に直線的に延びる1つ又は複数の導体柱を備える。
【0019】
任意選択で、各シリコン貫通コネクタは、CMOS層から電気的に絶縁される。
【0020】
任意選択で、各シリコン貫通コネクタは、絶縁膜を備える外側の側壁を有する。
【0021】
任意選択で、外側の側壁は、絶縁膜とシリコン貫通コネクタの導電コアの間に拡散障壁層を備える。
【0022】
任意選択で、各シリコン貫通コネクタは、膜の接続端部にはんだで接続される。
【0023】
任意選択で、膜は、複数の印刷ヘッド集積回路とともにインク供給マニホルドに接合される。
【0024】
任意選択で、複数の印刷ヘッド集積回路は、ページ幅印刷ヘッドアセンブリを提供するように、端部と端部が当接する構成で位置決めされる。
【0025】
任意選択で、印刷ヘッドの前面は平面であり、いかなるワイヤボンド接続もない。
【0026】
任意選択で、前面は、疎水性のポリマー層(例えば、PDMS)で被覆される。
【0027】
第2の態様では、
駆動回路及び複数のインクジェットノズルアセンブリを備える前面と、
インク供給マニホルドに取り付けるための裏面と、
裏面とインクジェットノズルアセンブリの間に流体連結を提供する少なくとも1つのインク供給チャネルとを有し、
裏面が、駆動回路に電力を供給するコネクタ膜の少なくとも一部を収容する凹状部分を有する、印刷ヘッド集積回路が提供される。
【0028】
任意選択で、裏面がインク供給マニホルドに取り付けられているとき、コネクタ膜の接続端部が、インク供給マニホルドの少なくとも一部と印刷ヘッド集積回路の間に挟まれる。
【0029】
任意選択で、凹状部分は、印刷ヘッド集積回路の長手方向の縁部領域に沿って画定される。
【0030】
任意選択で、凹状部分は、複数の集積回路コンタクトを備え、各集積回路は、駆動回路に接続される。
【0031】
任意選択で、コネクタ膜は、テープ自動化ボンディング(TAB)膜であり、集積回路コンタクトは、TAB膜の対応するコンタクトに接続するように位置決めされる。
【0032】
任意選択で、複数のシリコン貫通コネクタが前面から裏面の方へ直線的に延び、各シリコン貫通コネクタは、駆動回路と対応する集積回路コンタクトの間に電気接続を提供する。
【0033】
任意選択で、各集積回路コンタクトは、それぞれのシリコン貫通コネクタの端部によって画定される。
【0034】
任意選択で、裏面は、印刷ヘッド集積回路に沿って長手方向に延びる複数のインク供給チャネルを有し、各インク供給チャネルは、インク供給マニホルドからインクを受け取る1つ又は複数のインク入口を画定する。任意選択で、各インク供給チャネルは、複数の前面入口にインクを供給する。任意選択で、各前面入口は、インクジェットノズルアセンブリの1つ又は複数にインクを供給する。
【0035】
任意選択で、各インク供給チャネルの深さは、凹状部分の深さに対応する。
【0036】
第3の態様では、
前面及び裏面を画定するシリコン基板と、
前面に位置決めされた複数のインクジェットノズルアセンブリと、
インクジェットノズルアセンブリに電力を供給する駆動回路と、
前面から裏面の方へ延びる1つ又は複数のシリコン貫通コネクタであって、駆動回路と1つ又は複数の対応する集積回路コンタクトの間に電気接続を提供するシリコン貫通コネクタとを備え、
集積回路コンタクトが、駆動回路に電力を供給する裏面に取り付けられたコネクタ膜に接続するように位置決めされる、印刷ヘッド集積回路が提供される。
【0037】
任意選択で、各集積回路コンタクトは、それぞれのシリコン貫通コネクタの端部によって画定される。
【0038】
第4の態様では、裏面電気接続を有するインクジェット印刷ヘッドアセンブリを製作する方法であって、
1つ又は複数の印刷ヘッド集積回路を提供するステップであり、各印刷ヘッド集積回路が、駆動回路及び複数のインクジェットノズルアセンブリを備える前面と、1つ又は複数のインク入口及び凹状の縁部部分を有する裏面と、集積回路を通って延びる1つ又は複数のコネクタとを有し、各コネクタが、駆動回路に接続されたヘッド及び凹状の縁部部分内の基部を有する、ステップと、
印刷ヘッド集積回路の少なくとも1つの凹状の縁部部分内にコネクタ膜の接続端部を位置決めするステップであり、コネクタ膜が、複数の導電トラックを備え、各導電トラックが、接続端部にそれぞれの膜コンタクトを有する、ステップと、
各膜コンタクトを対応するコネクタの基部に接続させるステップと、
各印刷ヘッド集積回路の裏面をコネクタ膜とともにインク供給マニホルドに取り付けて、裏面電気接続を有するインクジェット印刷ヘッドアセンブリを提供するステップとを含む方法が提供される。
【0039】
任意選択で、取り付けるステップは、インク供給マニホルドの一部と1つ又は複数の印刷ヘッド集積回路の間にコネクタ膜の接続端部を挟む。
【0040】
任意選択で、膜は、テープ自動化ボンディング(TAB)膜である。
【0041】
任意選択で、接続させるステップは、各膜コンタクトを対応するコネクタの基部にはんだ付けするステップを含む。
【0042】
任意選択で、取り付けるステップは、接着剤膜を使用して実行される。
【0043】
任意選択で、接着剤膜内には、複数のインク供給開口が画定される。
【0044】
任意選択で、取り付けるステップは、各インク供給開口がインク入口と位置合わせされるように各印刷ヘッド集積回路を接着剤膜と位置合わせするステップと、印刷ヘッド集積回路を接着剤膜の片側に接合するステップと、膜の反対側をインク供給マニホルドに接合するステップとを含む。
【0045】
任意選択で、接続させるステップでは、各印刷ヘッド集積回路は、それぞれのコネクタ膜に接続される。
【0046】
任意選択で、接続させるステップでは、複数の印刷ヘッド集積回路が、同じコネクタ膜に接続される。
【0047】
任意選択で、端部と端部が当接する構成で、複数の印刷ヘッド集積回路をインク供給マニホルドに取り付けて、ページ幅印刷ヘッドアセンブリを提供する。
【0048】
第5の態様では、裏面電気接続向けに構成された印刷ヘッド集積回路を製作する方法であって、
ウェーハを提供するステップであり、ウェーハが、ウェーハの前面に複数の部分的に製作されたノズルアセンブリと、前面からウェーハの裏面の方へ延びる1つ又は複数のシリコン貫通コネクタとを備える、ステップと、
ウェーハの前面に導電層を堆積させ、導電層をエッチングし、それに付随して、各ノズルアセンブリに対するアクチュエータ及び各シリコン貫通コネクタのヘッドを覆う前面接触パッドを形成するステップであり、前面接触パッドが、シリコン貫通コネクタをウェーハ内の駆動回路に接続させる、ステップと、
さらなるMEMS処理ステップを実行して、ノズルアセンブリ、ノズルアセンブリ向けのインク供給チャネル、及びシリコン貫通コネクタの形成を完成させるステップと、
ウェーハを複数の個々の印刷ヘッド集積回路に分割するステップであり、各印刷ヘッド集積回路が、シリコン貫通コネクタ及び接触パッドを介して駆動回路に裏面接続するように構成される、ステップと、を含む方法が提供される。
【0049】
任意選択で、導電材料は、窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、チタン、アルミニウム、及びバナジウム−アルミニウム合金からなる群から選択される。
【0050】
任意選択で、アクチュエータは、熱気泡形成アクチュエータ及び熱曲げアクチュエータからなる群から選択される。
【0051】
任意選択で、さらなるMEMS処理ステップは、接触パッド上へ材料を堆積させて接触パッドを封止又はカプセル化するステップを含む。
【0052】
任意選択で、さらなるMEMS処理ステップは、ウェーハの裏面をエッチングして各印刷ヘッド集積回路のためのインク供給チャネル及び裏面凹状部分を画定するステップを含む。
【0053】
任意選択で、インク供給チャネル及び裏面凹状部分は、同じ深さを有する。
【0054】
任意選択で、裏面のエッチングは、裏面凹状部分内の各シリコン貫通コネクタの脚部を露出させる。各脚部は、集積回路コンタクトを備える。
【0055】
任意選択で、シリコン貫通コネクタは、各印刷ヘッド集積回路の長手方向の縁部領域に沿って位置決めされ、裏面凹状部分は、長手方向の縁部領域に沿って延びる。
【0056】
任意選択で、集積回路コンタクトは、TAB膜の対応するコンタクトに接続するように位置決めされる。
【0057】
任意選択で、CMOS層は駆動回路を備え、ノズルアセンブリは、CMOS層上に形成されたMEMS層内に配置される。
【0058】
任意選択で、接触パッドとCMOS層の間及び/又はアクチュエータとCMOS層の間に、1つ又は複数の導体柱が直線的に延びる。
【0059】
任意選択で、導体柱を形成してから、導電層を堆積させる。
【0060】
任意選択で、導体柱は、シリコン貫通コネクタに付随して形成される。
【0061】
任意選択で、導体柱及びシリコン貫通コネクタは、事前に画定されたバイア内に導電材料を堆積させることによって形成される。
【0062】
任意選択で、導電材料は、無電解めっきプロセスによって堆積される。
【0063】
任意選択で、事前に画定されたバイアはそれぞれ、バイアがすべて堆積によって均一に充填されるように、深さに比例する直径を有する。
【0064】
任意選択で、導電材料は銅である。
【0065】
任意選択で、さらなるMEMS処理ステップは、疎水性のポリマー層で前面を被覆するステップを含む。
【0066】
任意選択で、疎水性のポリマー層は、PDMSから構成される。
【0067】
任意選択で、さらなるMEMS処理ステップは、犠牲材料を酸化除去するステップを含む。
【0068】
本発明の実施形態について、以下の図面を参照して次に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】印刷ヘッド集積回路の前面斜視図である。
【図2】1対の当接する印刷ヘッド集積回路の前面斜視図である。
【図3】図1に示す印刷ヘッド集積回路の背面斜視図である。
【図4】床面ノズル入口を有するインクジェットノズルアセンブリの切欠斜視図である。
【図5】側壁ノズル入口を有するインクジェットノズルアセンブリの切欠斜視図である。
【図6】印刷ヘッドアセンブリの側面斜視図である。
【図7】図6に示す印刷ヘッドアセンブリの下部斜視図である。
【図8】図6に示す印刷ヘッドアセンブリの分解上部斜視図である。
【図9】図6に示す印刷ヘッドアセンブリの分解下部斜視図である。
【図10】インク供給マニホルドに取り付けられた印刷ヘッド集積回路の重ね合わせた平面図である。
【図11】図10の拡大図である。
【図12】インクジェット印刷機の斜視図である。
【図13】図6に示す印刷ヘッドアセンブリの概略横断面図である。
【図14】本発明による印刷ヘッドアセンブリの概略横断面図である。
【図15】本発明による代替印刷ヘッドアセンブリの概略横断面図である。
【図16】本発明による印刷ヘッド集積回路を製作する様々な段階後のウェーハの概略横断面図である。
【図17】本発明による印刷ヘッド集積回路を製作する様々な段階後のウェーハの概略横断面図である。
【図18】本発明による印刷ヘッド集積回路を製作する様々な段階後のウェーハの概略横断面図である。
【図19】本発明による印刷ヘッド集積回路を製作する様々な段階後のウェーハの概略横断面図である。
【図20】本発明による印刷ヘッド集積回路を製作する様々な段階後のウェーハの概略横断面図である。
【図21】本発明による印刷ヘッド集積回路を製作する様々な段階後のウェーハの概略横断面図である。
【図22】本発明による印刷ヘッド集積回路を製作する様々な段階後のウェーハの概略横断面図である。
【図23】本発明による印刷ヘッド集積回路を製作する様々な段階後のウェーハの概略横断面図である。
【図24】本発明による印刷ヘッド集積回路を製作する様々な段階後のウェーハの概略横断面図である。
【図25】本発明による印刷ヘッド集積回路の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
印刷ヘッド集積回路(IC)へのインク供給
これまで出願人は、端部と端部が当接する構成でともにリンクさせてページ幅印刷ヘッドを画定できる印刷ヘッド集積回路(又は「チップ」)100について記載してきた。図1は、印刷ヘッドIC100の一部の前面を斜視図で示し、図2は、ともに当接する1対の印刷ヘッドICを示す。
【0071】
各印刷ヘッドIC100は、何行にも構成された数千個のノズル102を備える。図1及び図2に示すように、印刷ヘッドIC100は、5つの異なる色のインク(例えば、CMYK及びIR(赤外線)、CCMMY、又はCMYKK)を受け取って印刷するように構成される。印刷ヘッドIC100の各色チャネル104は、1対のノズル行を備え、対の一方の行が偶数のドットを印刷し、対の他方の行が奇数のドットを印刷する。各色チャネル104からのノズルは、高い分解能(例えば、1600dpi)でドット−オン−ドット(dot−on−dot)印刷を実行するように、給紙方向に対して垂直に位置合わせされる。単一の行の2つの隣接するノズル102間の水平距離(「ピッチ」)は、約32ミクロンであり、ノズル行間の垂直距離は、ノズルの噴射順に基づいているが、行は通常、ドットラインの正確な数(例えば、10本のドットライン)によって分離される。ノズル行構成及びノズル噴射に関するより詳細な説明は、米国特許第7,438,371号に見ることができる。同特許の内容を、参照により本明細書に組み込む。
【0072】
個々の印刷ヘッドIC100の長さは通常、約20〜22mmである。したがって、A4/米国レターサイズのページに印刷するには、11又は12個の個々の印刷ヘッドIC100が隣接してともにリンクされる。個々の印刷ヘッドIC100の数を変動させて、他の幅のシートに対応することもできる。例えば、4”の写真印刷機は通常、ともにリンクされた5つの印刷ヘッドICを用いる。
【0073】
印刷ヘッドIC100は、様々な方法でともにリンクさせることができる。IC100をリンクさせる1つの特定の方法を図2に示す。この構成では、IC100は端部で、ともにリンクしてICの水平のラインを形成し、隣接するIC間で垂直にずれないように成形される。印刷ヘッドICの間には、実質上45°の角度を有する傾斜した接合部106が提供される。接合する縁部は、当接する印刷ヘッドICの位置決めを容易にするように、のこぎり歯状のプロファイルを有する。
【0074】
図1及び図2から明らかになるように、各行の最も左側のインク送達ノズル102は、10ラインずつのピッチで減少し、三角形の構成107で構成される。この構成では、印刷区間に沿って一貫してインク滴が送達されるように、接合部106の端から端までノズルのピッチを維持する。またこの構成では、当接するIC間の十分なリンクが確保されるように、各印刷ヘッドIC100の縁部により多くのシリコンが提供される。それぞれの減少する行内に含まれるノズルは、対応する行内のノズルがページ上の同じライン上に噴射するように、異なる時点で噴射しなければならない。ノズルの動作の制御は、印刷ヘッド制御装置(「SoPEC」)デバイスによって実行されるが、減少するノズル行の補償は、印刷ヘッド内のCMOS回路によって実行することができ、又は印刷ヘッドとSoPECデバイスの間で共有することができる。減少するノズル構成及びその制御に関する詳細な説明は、米国特許第7,275,805号に含まれている。同特許の内容を、参照により本明細書に組み込む。
【0075】
図3を次に参照すると、印刷ヘッド集積回路100の反対側の裏面が示されている。印刷ヘッドIC100の裏面にはインク供給チャネル110が画定され、印刷ヘッドICの長さに沿って長手方向に延びる。これらの長手方向のインク供給チャネル110は、ノズル入口112と交わる。ノズル入口112は、前面のノズル102と流動的に連通する。図4は、ノズル入口112がノズルチャンバ内へ直接インクを供給する印刷ヘッドICの一部を示す。図5は、ノズル入口112が、各ノズルチャンバ行に沿って長手方向に延びるインク導管114内へインクを供給する、代替印刷ヘッドICの一部を示す。この代替構成では、ノズルチャンバは、本発明の範囲内で、隣接するインク導管から側壁入口を介してインクを受け取る。
【0076】
図3に戻ると、長手方向に延びるインク供給チャネル110は、シリコンのブリッジ又は壁116によって複数の区分に分割される。これらの壁116により、印刷ヘッドIC100には、長手方向のチャネル110に対して横方向に追加の機械的強度が与えられる。
【0077】
各印刷ヘッドIC100の裏面には、2部のLCP成型の形のインク供給マニホルドを介してインクが供給される。図6〜図9を参照すると、接着剤膜120を介してインク供給マニホルドに取り付けられた印刷ヘッドIC100を備える印刷ヘッドアセンブリ130が示されている。
【0078】
インク供給マニホルドは、主LCP成型122と、主LCP成型122の下面に封止されたLCPチャネル成型124とを備える。印刷ヘッドIC100は、接着性のIC取付け膜120でチャネル成型124の下面に接合される。LCPチャネル成型124の上面は、LCP主チャネル126を備え、LCP主チャネル126は、主LCP成型122内でインク入口127及びインク出口128と接続する。インク入口127及びインク出口128は、インク貯蔵器及びインク供給システム(図示せず)と流動的に連通する。インク供給システムは、所定の静水圧で印刷ヘッドにインクを供給する。
【0079】
主LCP成型122は、LCPチャネル成型124内に画定されたLCP主チャネル126と連通する複数の空気空胴129を有する。空気空胴129は、インク供給システム内のインク圧力パルスを減衰させる働きをする。
【0080】
各LCP主チャネル126の基部には、印刷ヘッドIC100につながる一連のインク供給通路132が位置する。接着剤膜120は、各印刷ヘッドIC100の裏面がインク供給通路132と流動的に連通するように、一連のレーザで開けた供給孔134を有する。
【0081】
図10を次に参照すると、インク供給通路132は、一連の5つの行の形で構成される。インク供給通路132の中央の行は、レーザで開けた孔134を通って印刷ヘッドIC100の裏面に直接インクを供給し、インク供給通路132の外側の行は、微小成型されたチャネル135を介して印刷ヘッドICにインクを供給する。それぞれの微小成型されたチャネルは、レーザで開けた孔134の1つで終端をなす。
【0082】
図11は、印刷ヘッドIC100の裏面インク供給チャネル110にインクがどのように供給されるかについて、より詳細に示す。接着剤膜120内に画定されるそれぞれのレーザで開けた孔134は、対応するインク供給チャネル110と位置合わせされる。通常、レーザで開けた孔134は、チャネル110内の横の壁116の1つと位置合わせされ、したがってインクは、壁116の両側でチャネル区分に供給される。この構成により、インク供給マニホルドと印刷ヘッドIC100の間に必要な流動的接続の数を低減させる。
【0083】
IC100を正確に位置決めするのを助けるために、IC100の表面上に基点103Aが提供される(図1及び図11参照)。基点103Aは、隣接するICに対するIC100の本当の位置を指示するのに適当な位置決め機器によって容易に特定可能なマーカの形である。接着剤膜120は、相補的な基点103Bを有し、基点103Bは、印刷ヘッドICをインク供給マニホルドに接合する間に各印刷ヘッドIC100を接着剤膜に対して位置合わせするのを助ける。基点103A及び103Bは、IC100の縁部で接着性のIC取付け膜120の長さに沿って戦略的に位置決めされる。
【0084】
印刷ヘッド集積回路へのデータ及び電力の供給
次に図1に戻ると、印刷ヘッドIC100は、長手方向の縁部の1つに沿って延びる複数のボンドパッド105を有する。ボンドパッド105は、インクジェットノズル102の動作を制御するための印刷ヘッド制御装置(「SoPEC」)デバイスからデータ及び/又は電力を受け取る手段を提供する。
【0085】
ボンドパッド105は、印刷ヘッドIC100の上部CMOS層に接続される。図4及び図5に示すように、各MEMSノズルアセンブリが、CMOS層113上に形成される。CMOS層113は、各ノズルを噴射するのに必要な論理及び駆動回路を含む。
【0086】
図6〜図9を参照すると、印刷ヘッドIC100のボンドパッド105に、可撓性PCB140がワイヤボンドされる。ワイヤボンドは、通常ポリマー樹脂であるワイヤボンド封止材142で封止及び保護される(図7参照)。LCP成型122は、湾曲した支持ウィング123を備え、支持ウィング123の周りには、可撓性PCB140が曲げて固定される。支持ウィング123は、可撓性PCBの様々な電気構成要素144を収容する複数の開口125を有する。このようにして、可撓性PCB140は、印刷ヘッドアセンブリ130の外側表面の周りに曲げることができる。可撓性PCB140に対してLCP成型122の反対側には、用紙ガイド148が取り付けられ、印刷ヘッドアセンブリ130を完成させる。
【0087】
印刷ヘッドアセンブリ130は、インクジェット印刷機160(図12参照)から取り外して交換できる、ユーザ交換可能な印刷ヘッドカートリッジの一部として設計される。したがって、可撓性PCB140は、印刷機本体内のSoPECデバイスを含む電子回路への電力及びデータ接続を可能にする複数のコンタクト146を有する。
【0088】
可撓性PCB140が各印刷ヘッドIC100上のボンドパッド105にワイヤボンドされるため、印刷ヘッドは必然的に、ボンドパッド近傍に平面でない長手方向の縁部領域を有する。これは、図13に最もはっきりと示されている。図13は、複数のインクジェットノズルアセンブリ101を備える印刷ヘッドIC100のボンドパッド105から延びるワイヤボンド150を示す。図13に示す構成では、ボンドパッド105は、MEMS層内に形成され、コネクタ柱152を介して下にあるCMOS113に接続する。別法として、ボンドパッド105は、MEMS層へのいかなる他の接続ももたない、CMOS113の露出された上部層とすることができる。どちらの構成でも、印刷ヘッドのインク射出面154からワイヤボンドが延び、可撓性PCB140と接続する。
【0089】
印刷ヘッドIC100内のボンドパッド105へのワイヤボンディングには、主に印刷ヘッドICの相当な長手方向の領域がインク射出面154から突出するワイヤボンド150(さらに、ワイヤボンド封止材142)を有するために、いくつかの欠点がある。インク射出面154の非平面性の結果、印刷ヘッドの保守の効果が低くなることがある。例えば、ワイパブレードでは、ワイヤボンド封止材142が掃引方向に対してノズル102の上流又は下流でワイパブレードの経路を阻止するため、インク射出面154の幅全体にわたって掃引することができない。
【0090】
ワイヤボンドが突出する別の欠点は、PDMSなどの疎水性の被覆で印刷ヘッド全体を被覆できないことである。出願人は、PDMS被覆が印刷の品質と印刷ヘッドの保守をどちらも著しく改善すること(例えば、米国特許出願公開第2008/0225076号参照、同出願の内容を、参照により本明細書に組み込む)、そして完全な平面であるインク射出面がそのような被覆の効率をより一層改善するはずであることを見出した。
【0091】
裏面電気接続向けに構成された印刷ヘッド集積回路
印刷ヘッドIC100へのワイヤボンド接続の固有の欠点のいくつかを考え、出願人は、裏面電気接続を使用し、したがって完全な平面であるインク射出面を有する印刷ヘッドIC2を開発した。
【0092】
図14を参照すると、印刷ヘッドIC2は、接着剤膜120を使用してインク供給マニホルドのLCPチャネル成型124に取り付けられる。印刷ヘッドIC2は、少なくとも1つの長手方向のインク供給チャネル110を有し、インク供給チャネル110は、ノズル入口112及びインク導管114を介して、インク供給マニホルドとノズルアセンブリ101の間に流体連結(流体が流通する構造)を提供する。したがって、印刷ヘッドアセンブリ60(印刷ヘッドIC2を含む)は、図1〜図11に関連して上述した印刷ヘッドアセンブリ130(印刷ヘッドIC100を含む)と同じ流動的構成を有する。
【0093】
しかし、印刷ヘッドIC2は、CMOS回路層113への電気接続が形成されるという点で、印刷ヘッドIC100とは異なる。印刷ヘッドIC2には、長手方向の縁部領域4に沿って前面ワイヤボンディングがないことが重要である。逆に、印刷ヘッドIC2は、長手方向の縁部に、TAB(テープ自動化ボンディング)膜8を収容する裏面凹部6を有する。TAB膜8は通常、TAB膜のコネクタ端部にある対応する膜コンタクト10で終端をなす複数の導電トラックを備える可撓性のポリマー膜(例えば、Mylar(登録商標)膜)である。TAB膜8は、印刷ヘッドIC2の裏面12と同じ高さに位置決めされ、したがってTAB膜及び印刷ヘッドIC2をLCPチャネル成型124にともに接合することができる。TAB膜8は、可撓性PCB140に接続することができ、実際にはTAB膜は、可撓性PCB140に組み込むことができる。別法として、TAB膜8は、当業者には知られている代替接続構成を使用して、印刷機電子回路に接続することができる。
【0094】
印刷ヘッドIC2は、前面からTAB膜8を収容する長手方向の凹状の縁部部分6内へ延びる複数のシリコン貫通バイアを有する。各シリコン貫通バイアは、導体(例えば、銅)で充填され、TAB膜8への電気接続を提供するシリコン貫通コネクタ14を画定する。シリコン貫通コネクタ14の脚部又は基部15には、適切な接続、例えばはんだボール16を使用して、各膜コンタクト10が接続される。
【0095】
シリコン貫通コネクタ14は、印刷ヘッドIC2のシリコン基板20及びCMOS回路層113を通って延びる。シリコン貫通コネクタ14は、絶縁性の側壁21によってシリコン基板20から絶縁される。絶縁性の側壁21は、非晶質シリコン、ポリシリコン、又は二酸化シリコンなど、MEMS製作に適合している任意の適切な絶縁材料から形成することができる。絶縁性の側壁21は、単層であっても多層であってもよい。例えば、絶縁性の側壁21は、外側のSi又はSiO層及び内側のタンタル層を備えることができる。内側のTa層は、銅がバルクシリコン基板内に拡散するのを最小にする拡散障壁として作用する。Ta層はまた、シリコン貫通コネクタ14の製作中に銅を電着させるためのシード層として作用することができる。
【0096】
図14に示すように、シリコン貫通コネクタ14のヘッド22が、印刷ヘッドIC2のMEMS層26内に画定された接触パッド24と交わる。MEMS層26は、印刷ヘッドIC2のCMOS回路層113上に配置され、MEMS処理ステップによって形成されるすべてのインクジェットノズルアセンブリ101を備える。
【0097】
米国特許出願公開第2008/0129793号(同出願の内容を、参照により本明細書に組み込む)に記載のような出願人の熱曲げ作動式の印刷ヘッドの場合、導電性の熱弾性アクチュエータ25が、各ノズルチャンバ101の屋根を画定することができる。したがって、接触パッド24は、MEMSの製作中に熱弾性アクチュエータ25と同時に形成することができ、さらに、同じ材料で形成することができる。例えば、接触パッド24は、バナジウム−アルミニウム合金、窒化チタン、窒化チタンアルミニウムなどの熱弾性の材料から形成することができる。
【0098】
しかし、接触パッド24の形成は、MEMS製作の任意のステップ内に組み込むことができ、さらに、任意の適切な導電性の材料、例えば、銅、チタン、アルミニウム、窒化チタン、窒化チタンアルミニウムなどから構成できることが理解されるであろう。
【0099】
接触パッド24は、接触パッドからCMOS回路の方へ延びる銅の導体柱30を介して、CMOS回路113の上部層に接続される。したがって、導体柱30は、TAB膜8とCMOS回路113の間に電気接続を提供する。
【0100】
図14の接触パッド24及びコネクタ柱30の構成は、熱曲げ作動式のインクジェットノズルを形成する出願人のMEMS製作プロセス(米国特許出願第12/323,471号に記載、同出願の内容を、参照により本明細書に組み込む)と好都合に適合しているが、もちろん本発明は、裏面TAB膜8からCMOS回路113への類似の裏面電気接続を提供する代替構成を包含する。
【0101】
例えば、図15を次に参照すると、シリコン貫通コネクタ14は、CMOS回路113の上の不活性化層27で終端をなすことができる。シリコン貫通コネクタのヘッド22及び不活性化層27を通って露出された上部CMOS層上へ適切な導電性の材料を堆積させることによって、埋め込まれた接触パッド23が、シリコン貫通コネクタ14を上部CMOS層と接続させる。次いで、MEMSノズル製作中にフォトレジスト31及び屋根層37(例えば、窒化シリコン、酸化シリコンなど)を続いて堆積することで、完全な平面であるノズル板及びインク射出面を印刷ヘッドに提供する。さらに、埋め込まれた接触パッド23は、屋根層37の下のフォトレジスト31で完全に封止及びカプセル化される。この代替接触パッド構成は、例えば米国特許第6,755,509号及び第7,303,930号に記載の熱気泡形成インクジェットノズルアセンブリを形成する出願人のMEMS製作プロセスと適合しているはずである。同特許の内容を、参照により本明細書に組み込む。図15に示すノズルアセンブリは、米国特許第6,755,509号に記載のように、懸架式の加熱器要素28及びノズル開口102を備える熱気泡形成インクジェットノズルアセンブリである。埋め込まれた接触パッド23及び懸架式の加熱器要素28は、加熱器要素材料を堆積させ、続いてエッチングすることによって、MEMS製作中にともに形成できることが、当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、埋め込まれた接触パッド23は、加熱器要素36と同じ材料、例えば窒化チタン、窒化チタンアルミニウムなどから構成することができる。
【0102】
次に図14に戻ると、印刷ヘッドIC2のインク射出面は完全な平面であり、疎水性のPDMS層48で被覆されることに留意されたい。PDMS被覆及びその利点は、米国特許出願公開第2008/0225082号に詳細に記載されている。同出願の内容を、参照により本明細書に組み込む。前述のように、インク射出面の平面性は、この面のうち印刷ヘッド集積回路2の長手方向の縁部領域4にある部分を含めて、印刷ヘッドの保守及び面のあふれの制御の点で、著しい利点を提供する。
【0103】
図14及び図15では、接触パッドがノズル102に隣接しているところを概略的に示すが、印刷ヘッドIC2内の接触パッド24は通常、印刷ヘッドIC100(図1)のボンドパッド105に類似の位置を占め、対応する数のシリコン貫通コネクタ14がシリコン基板20内へ延びることが理解されるであろう。それにもかかわらず、ボンドパッド105に必要とされるのと同じように接触パッド24をインクジェットノズル102から空間的に離す必要がないことは、本発明の利点である。ボンドパッド105では、ワイヤボンディング及びワイヤボンドのカプセル化を可能にするには十分な周囲空間を必要とする。したがって、裏面TAB膜接続により、シリコンをより効率的に使用することができ、場合によっては、各ICの全体的な幅を低減させ、又は別法として、同じ幅のIC全体にわたってより多くのノズル102を形成することができる。例えば、IC幅の約60〜70%が印刷ヘッドIC100内のインクジェットノズル102に専用であるのに対して、本発明では、IC幅の80%を超える部分をインクジェットノズル専用にすることができる。シリコンがページ幅インクジェット印刷機内の最も高価な成分の1つであることを考えると、これは著しい利点である。
【0104】
裏面電気接続向けに構成された印刷ヘッドICに対するMEMS製作プロセス
図14に示す印刷ヘッドIC2に対するMEMS製作プロセスについて、次に詳細に説明する。このMEMS製作プロセスは、TAB膜8への裏面接続に必要な特徴を組み込むために、米国特許出願第12/323,471号に記載のプロセスのいくつかの修正形態を含む。MEMSプロセスについて、本明細書では例示的な目的で詳細に説明するが、任意のインクジェットノズル製作プロセスの類似の修正形態も、裏面電気接続向けに構成された印刷ヘッド集積回路を提供するはずであることが、当業者には理解されるであろう。実際には、出願人は、図15に示す熱作動式の印刷ヘッドICを製作するのに適したMEMS製作プロセスについて、すでに言及してきた。したがって、本発明は、本明細書に後述する特定のノズルアセンブリ101に限定されるものではない。
【0105】
図16〜図25は、図14に関連して説明した印刷ヘッドIC2を形成するMEMS製作ステップのシーケンスを示す。完成された印刷ヘッドIC2は、複数のノズルアセンブリ101、並びにCMOS回路113への裏面接続を可能にする特徴を備える。
【0106】
MEMS製作の開始点は標準的なCMOSウェーハであり、このCMOSウェーハは、ウェーハの前面に形成されたシリコン基板20及びCMOS回路113を備える。MEMS製作プロセスの終わりでは、ウェーハは、エッチングされたダイシングストリートを介して個々の印刷ヘッド集積回路(IC)にダイシングされる。ダイシングストリートは、ウェーハから製作される各印刷ヘッドICの寸法を画定する。
【0107】
本説明では、CMOS層113上で実行されるMEMS製作プロセスに言及するが、CMOS層113は複数のCMOS層(例えば、3つ又は4つのCMOS層)を備えることができ、通常不活性化されることが、もちろん理解されるであろう。CMOS層113は、例えば、酸化シリコン層、又はより一般的には、2つの酸化シリコン層間に挟まれた窒化シリコン層を備える標準的な「ONO」スタックで、不活性化することができる。したがって、本明細書におけるCMOS層113への言及は暗示的に、通常複数のCMOS層を備える不活性化されたCMOS層を含む。
【0108】
以下の説明では、1つのノズルアセンブリ101及び1つのシリコン貫通コネクタ14に対する製作ステップに注目する。しかし、対応するステップは、すべてのノズルアセンブリ及びすべてのシリコン貫通コネクタに対して同時に実行されていることが、もちろん理解されるであろう。
【0109】
図16に示す第1のステップシーケンスでは、CMOS層113を通ってCMOSウェーハのシリコン基板20内へ、前面入口孔32がエッチングされる。同時に、CMOS層113を通ってシリコン基板内へ、前面ダイシングストリート孔33がエッチングされる。次いで、フォトレジスト31をウェーハの前面上へスピンオンして、前面入口孔32及び前面ダイシングストリート孔33をふさぐ。次いで、化学的機械平坦化(CMP)によってウェーハを研磨し、続くMEMSステップ用に平面の前面が準備された図16に示すウェーハを提供する。
【0110】
図17を参照すると、次のステップシーケンスでは、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)によって8ミクロンの低応力酸化シリコン層がCMOS層113上へ堆積される。この酸化シリコン層35の深さが、インクジェットノズルアセンブリのそれぞれのノズルチャンバの深さを画定する。SiO層35の堆積後、続いてSiO層を通ってエッチングすることで、ノズルチャンバに対する壁36及び前面ダイシングストリート孔32の一部を画定する。次いで、シリコンエッチングの化学的性質を用いて、前面ダイシングストリート孔33を延ばし、インク入口孔32をシリコン基板20内へエッチングする。続いて、フォトレジストをスピンオンし、CMP研磨を使用してウェーハを平坦化することによって、その結果得られる孔32及び33をフォトレジスト31でふさぐ。フォトレジスト31は、続いて屋根材料を堆積させるための足場材として作用する犠牲材料である。他の適切な犠牲材料(例えば、ポリイミド)もこの目的のために使用できることが、容易に明らかになるであろう。
【0111】
平坦化されたSiO層35上に屋根材料(例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、又はこれらの組合せ)を堆積させて、前面屋根層37を画定する。屋根層37は、完成された印刷ヘッドIC2内に剛性の平面のノズル板を画定する。図17は、このMEMS処理ステップシーケンスの終わりのウェーハを示す。
【0112】
次の段階では、図18を次に参照すると、屋根層37及びSiO層35を通ってCMOS層113まで、複数の導体柱バイア38がエッチングされる。壁36を通ってエッチングされた導体柱バイア38Aは、ノズルアクチュエータと下にあるCMOS113の接続を可能にする。一方、導体柱バイア38Bは、接触パッド24と下にあるCMOS113の間の電気接続を可能にする。
【0113】
バイア38を導電材料で充填する前に、米国特許出願第12/323,471号に記載のプロセスの修正形態では、次のステップで屋根層37、SiO層35、CMOS層113を通ってシリコン基板20内へエッチングすることによって、シリコン貫通バイア39が画定される(図19参照)。シリコン貫通バイア39は、それぞれの完成された印刷ヘッドIC2の長手方向の縁部領域に沿って隔置されるように位置決めされる(前面ダイシングストリート孔33は、各印刷ヘッドIC2の長手方向の縁部を効果的に画定する)。各バイア39は通常、シリコン基板20の裏面の方へ先細りする。バイア39の正確な位置決めは、TAB膜8内に膜コンタクト10を位置決めすることによって決定される。膜コンタクト10は、印刷ヘッドICが組み立てられてTAB膜に接続されると、各バイアの基部と交わる。
【0114】
シリコン貫通バイアのエッチングは、フォトレジストのマスク層40にパターン形成し、様々な層を通ってエッチングすることによって実行される。もちろん、様々な層のそれぞれを通ってエッチングするには、異なるエッチングの化学的性質が必要とされることがあるが、各エッチングに同じフォトレジストマスクを用いることもできる。
【0115】
シリコン基板20を通る各シリコン貫通バイア39の深さは通常、ふさがれた前面インク入口32(通常、約20ミクロン)の深さに対応する。しかし、各バイア39は、TAB膜8の厚さに応じて、前面インク入口32より深くすることもできる。
【0116】
次のステップシーケンスでは、図20及び図21を参照すると、シリコン貫通バイア39に絶縁壁21が提供され、絶縁壁21は、バイアをシリコン基板20から分離する。絶縁壁21は、絶縁膜42及び拡散障壁43を備える。拡散障壁43は、各バイア39が銅で充填されるとき、バルクシリコン基板20内へ銅が拡散するのを最小にする。絶縁膜42及び拡散障壁43は、任意選択で各層をバイア39内へ選択的に堆積させるマスク層40を使用して、連続する堆積ステップによって形成される。
【0117】
絶縁膜42は、非晶質シリコン、ポリシリコン、酸化シリコンなどの任意の適切な絶縁材料から構成することができる。拡散障壁43は通常、タンタル膜である。
【0118】
図22を次に参照すると、導体柱バイア38及びシリコン貫通バイア39が、無電解めっきを使用して、銅などの導電性の高い金属で同時に充填される。この銅堆積ステップでは、ノズルの導体柱44、接触パッドの導体柱30、及びシリコン貫通コネクタ14を同時に形成する。このステップ中に同時に銅めっきするには、バイア38及び39の直径の適当な寸法設定が必要とされることがある。銅めっきステップ後、堆積させた銅をCMPにかけ、屋根層37上に停止させて平面の構造を提供する。無電解銅めっき中に形成される導体柱30及び44は、CMOS層113と交わって、CMOS層から屋根層37まで直線的な導電経路を提供することがわかる。
【0119】
次のステップシーケンスでは、図23を参照すると、屋根層37を覆って熱弾性材料を堆積させ、次いでエッチングして、各ノズルアセンブリ101に対する熱弾性の梁部材25、並びにシリコン貫通コネクタ14のヘッドに重なる接触パッド24を画定する。
【0120】
熱弾性の梁部材25に溶融させることによって、SiO屋根層37の一部は、機械的熱曲げアクチュエータの下部の不活性梁部材46として機能する。したがって、各ノズルアセンブリ101は、CMOS113に接続された上部の熱弾性梁25と下部の不活性梁46とを備える熱曲げアクチュエータを備える。これらのタイプの熱曲げアクチュエータは、例えば米国特許出願公開第2008/309729号により詳細に記載されている。同出願の内容を、参照により本明細書に組み込む。
【0121】
熱弾性の活性梁部材25は、窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、及びアルミニウム合金などの任意の適切な熱弾性材料から構成することができる。出願人の以前の米国特許出願公開第2008/129793号で説明したように、バナジウム−アルミニウム合金は、高い熱膨張、低い密度、及び高いヤング係数という有利な特質を組み合わせるため、好ましい材料である。同出願の内容を、参照により本明細書に組み込む。
【0122】
上記のように、熱弾性材料はまた、接触パッド24を画定するために使用される。接触パッド24は、導体柱30のヘッドとシリコン貫通コネクタ14のヘッド22の間に延びる。したがって、接触パッド24は、シリコン貫通コネクタ14を各導体柱30及び下にあるCMOS層113と電気的に接続させる。
【0123】
図23をさらに参照すると、熱弾性材料を堆積させ、エッチングして熱曲げアクチュエータ及び接触パッド24を画定した後、最後の前面MEMS製作ステップは、ノズル開口102をエッチングすると同時に前面ストリート開口47をエッチングし、屋根層37全体を覆ってPDMS被覆48を堆積させて前面を疎水化し、各熱曲げアクチュエータに弾性の機械的封止を提供するステップを含む。PDMS被覆の使用については、発明者らの以前の米国特許出願第11/685,084号及び第11/740,925号に広範に記載した。同出願を、参照により本明細書に組み込む。
【0124】
図24を次に参照すると、ウェーハの前面全体が比較的厚いフォトレジスト層49で被覆される。フォトレジスト層49は、前面MEMS構造を保護し、裏面MEMS処理のためにウェーハをハンドルウェーハ50に取り付けることを可能にする。裏面エッチングにより、インク供給チャネル110及び凹状部分6を画定する。凹状部分6内には、シリコン貫通コネクタ14の脚部15が延びる。絶縁膜42の一部は、シリコン貫通コネクタ14の脚部15が裏面エッチングによって露出されるときに除去される。また、裏面エッチングにより、ふさがれた前面ダイシングストリート孔33までエッチングすることによって、個々の印刷ヘッドICの個片化が可能になる。
【0125】
保護フォトレジスト49を最後に酸化除去(「灰化」)する結果、個々の印刷ヘッドIC2が個片化され、裏面とノズルアセンブリ101の間に流体連結が形成される。このとき、その結果得られる図25に示す印刷ヘッドIC2は、シリコン貫通コネクタ14へのはんだ接合部16を介してTAB膜8に接続する準備ができている。続いて、その結果得られる印刷ヘッドIC/TAB膜アセンブリをインク供給マニホルドに接合することで、図14に示す印刷ヘッドアセンブリ60を提供する。
【0126】
本発明について、好ましい実施形態及び複数の特有の代替実施形態を参照して説明した。しかし、特に記載したものとは異なる複数の他の実施形態も、本発明の精神及び範囲内に入ることが当業者には理解されるであろう。したがって、本発明は、相互参照によって適宜組み込んだ文献を含めて、本明細書に記載の特有の実施形態に限定されるものではないことが理解されるであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク供給マニホルドと、
1つ又は複数の印刷ヘッド集積回路であって、各印刷ヘッド集積回路が、駆動回路及び複数のインクジェットノズルアセンブリを備える前面と、前記インク供給マニホルドに取り付けられた裏面と、前記裏面と前記インクジェットノズルアセンブリの間に流体連結を提供する少なくとも1つのインク供給チャネルとを有する、当該1つ又は複数の印刷ヘッド集積回路と、
前記駆動回路に電力を供給する少なくとも1つのコネクタ膜と、
を備え、
前記コネクタ膜の接続端部が、前記インク供給マニホルドの少なくとも一部と前記1つ又は複数の印刷ヘッド集積回路との間に挟まれる、
インクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項2】
前記コネクタ膜が、複数の導電トラックを有する可撓性のポリマー膜を構成する、請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項3】
前記コネクタ膜が、テープ自動化ボンディング(TAB)膜である、請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項4】
前記裏面が、前記コネクタ膜を収容する凹状部分を有する、請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項5】
前記凹状部分が、各印刷ヘッド集積回路の長手方向の縁部領域に沿って画定される、請求項4に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項6】
複数のシリコン貫通コネクタが、前記駆動回路と前記コネクタ膜の前記接続端部の間に電気接続を提供する、請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項7】
各シリコン貫通コネクタが、前記前面から前記裏面の方へ直線的に延びる、請求項6に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項8】
各シリコン貫通コネクタが、前記裏面の方へ先細りする、請求項7に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項9】
各シリコン貫通コネクタが、銅から構成される、請求項7に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項10】
各印刷ヘッド集積回路が、
シリコン基板と、
前記駆動回路を備える少なくとも1つのCMOS層と、
前記インクジェットノズルアセンブリを備えるMEMS層と、
を備え、
前記CMOS層が、前記シリコン基板と前記MEMS層の間に位置決めされる、請求項6に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項11】
各シリコン貫通コネクタが、前記MEMS層内の接触パッドから前記CMOS層を通って前記裏面の方へ直線的に延び、前記接触パッドが、前記CMOS層に電気的に接続される、請求項10に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項12】
前記接触パッドと前記CMOS層の間に直線的に延びる1つ又は複数の導体柱を備える、請求項11に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項13】
各シリコン貫通コネクタが、前記CMOS層から電気的に絶縁される、請求項11に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項14】
各シリコン貫通コネクタが、絶縁膜を備える外側の側壁を有する、請求項11に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項15】
前記外側の側壁が、前記絶縁膜と前記シリコン貫通コネクタの導電コアの間に拡散障壁層を備える、請求項14に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項16】
各シリコン貫通コネクタが、前記膜の前記接続端部にはんだで接続される、請求項6に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項17】
前記膜が、複数の前記印刷ヘッド集積回路とともに前記インク供給マニホルドに接合される、請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項18】
前記複数の印刷ヘッド集積回路が、ページ幅印刷ヘッドアセンブリを提供するように、端部と端部が当接する構成で位置決めされる、請求項17に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項19】
前記印刷ヘッドの前面が平面であり、いかなるワイヤボンド接続もない、請求項1に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。
【請求項20】
前記前面が、疎水性のポリマー層で被覆される、請求項19に記載のインクジェット印刷ヘッドアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20−21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2012−529384(P2012−529384A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514289(P2012−514289)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000953
【国際公開番号】WO2011/011807
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】