説明

補修用塗料

【課題】例えば保護膜が劣化したFRP製標識板、鉄製の看板等にスプレー法で簡単に塗布可能とし、また、補修後のカビの発生を抑制して当該FRP製標識板、鉄製の看板等の有効使用期間の延長を図る補修用塗料を得る。
【解決手段】補修用塗料は、アクリル系の樹脂塗料からなる主剤と、少なくとも、消泡剤、レベリング剤およびカビ防止剤を含む添加剤と、ウレタン樹脂系の溶剤と、イソシアネート硬化剤とを含有する。アクリル系の樹脂塗料からなる主剤をウレタン樹脂系の溶剤で常温(5〜40℃)で使用可能な濃度にでき、スプレー法で簡単に塗布できる。カビ防止剤を添加剤として含むので、補修後のカビの発生を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば繊維強化プラスチック(FRP:fiber-reinforced plastics)製標識板、表面に保護膜がコーティングされている鉄製の看板等を補修する際に使用して好適な補修用塗料に関する。
【0002】
詳しくは、この発明は、アクリル系の樹脂塗料からなる主剤と、少なくとも、消泡剤、レベリング剤およびカビ防止剤を含む添加剤と、ウレタン系の溶剤と、イソシアネート樹脂系の硬化剤とを含有するものであって、例えば保護膜が劣化したFRP製標識板、鉄製の看板等にスプレー法で塗布して簡単に補修でき、また補修後のカビの発生を抑制し、当該FRP製標識板、鉄製の看板等の有効使用期間を延長できるようにした補修用塗料に係るものである。
【背景技術】
【0003】
鉄塔に取り付けられている、図1Aに示すような立入り禁止標識板や、図1Bに示すような昇塔禁止標識板などは、安全施設設置基準で設置が義務づけられている。この種の標識板として、FRP製標識板が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図2A,Bは、FRP製標識板1の構成を示している。図2AはFRP製標識板1の一部を切断して分解した斜視図であり、図2BはFRP製標識板1の要部の断面図である。
【0005】
このFRP製標識板1は、紙体6、FRPシート7,7、保護膜8および可撓性保護膜9で構成されている。紙体6は、例えば四角形の白色紙からなり、その表面には標識を構成する文字、図形5が印刷されている。FRPシート7は、例えばガラス繊維で強化したプラスチックからなっている。保護膜8は、例えば不飽和二塩基酸として無水マレイン酸を、二価アルコールとしてエチレングリコールを、ビニルモノマーとしてスチレンを用いて構成された不飽和ポリエステル樹脂からなっている。可撓性保護膜9は、例えばフッ素樹脂からなっている。
【0006】
この図2A,Bに示すFRP製標識板1は以下の手順で製造される。まず、標識を構成する文字、図形5が印刷された紙体6の表裏両面にFRPシート7,7を密着させて積層物を形成する。次に、この積層物を成形型内に流し込んだ不飽和ポリエステル樹脂中に浸漬する。次に、この不飽和ポリエステル樹脂を、この紙体6およびFRPシート7,7からなる積層物を包み込んだ状態で長方形板状に固め、当該積層物の全体を覆う保護膜8を形成する。最後に、紙体6の文字、図形5の印刷面側に対応する保護膜8上に、フッ素樹脂からなる速乾性の透明塗料を塗布して可撓性保護膜9を形成する。
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3086257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したようなFRP製標識板1は、約5〜8年で保護膜8および可撓性保護膜9が劣化し、FRPシート7,7のガラス繊維が浮き出てきて、文字、図形5が見えにくくなり、標識の機能を果たさなくなる。
【0009】
ここで、保護膜8および可撓性保護膜9の劣化を補修して、FRP製標識板1の寿命を長くできれば、FRP製標識板1の製造費、およびその交換のための人件費等を節約でき、ユーザにとって都合のよいものとなる。
【0010】
また例えば、表面に保護膜がコーティングされている鉄製の看板等でも、上述したFRP製標識板と同様に、保護膜が劣化すると、カビなどの発生により文字、図形が見えにくくなり、看板の機能を果たさなくなる。その場合も、保護膜の劣化を補修して、看板の寿命を長くできれば、看板の製造費、およびその交換のための人件費等を節約でき、ユーザにとって都合のよいものとなる。
【0011】
この発明の目的は、例えば保護膜が劣化したFRP製標識板、鉄製の看板等にスプレー法で塗布して当該FRP製標識板または鉄製の看板等を簡単に補修でき、また補修後のカビの発生を抑制し、当該FRP製標識板、鉄製の看板等の有効使用期間を延長できるようにした補修用塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る補修用塗料は、アクリル系の樹脂塗料からなる主剤と、少なくとも、消泡剤、レベリング剤およびカビ防止剤を含む添加剤と、ウレタン樹脂系の溶剤と、イソシアネート樹脂系の硬化剤とを含有するものである。
【0013】
この補修用塗料では、アクリル系の樹脂塗料からなる主剤をウレタン樹脂系の溶剤で常温(5〜40℃)で使用可能な濃度にできる。そのため、例えば保護膜が劣化したFRP製標識板に、この補修用塗料を、スプレー缶または霧吹きを用いてスプレー法で塗布することで、このFRP製標識板、鉄製の看板等を簡単に補修できる。
【0014】
また、この補修用塗料は、添加剤としてカビ防止剤を含んでいる。そのため、例えばFRP製標識板、鉄製の看板等に塗布して補修した後に、カビの発生を抑制でき、当該FRP製標識板、鉄製の看板等の有効使用期間を延長できる。
【0015】
なお、添加剤に紫外線吸収剤をさらに含めるようにしてもよい。このように添加剤に紫外線吸収剤を含めることで、例えばFRP製標識板を構成する繊維強化プラスチックスの紫外線による光酸化劣化を防止できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、アクリル系の樹脂塗料からなる主剤と、少なくとも、消泡剤、レベリング剤およびカビ防止剤を含む添加剤と、ウレタン系の溶剤と、イソシアネート樹脂系の硬化剤とを含有するものであり、例えば保護膜が劣化したFRP製標識板、鉄製の看板等にスプレー法で塗布して簡単に補修でき、また補修後のカビの発生を抑制し、当該FRP製標識板、鉄製の看板等の有効使用期間を延長できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
無黄変型ポリウレタン樹脂系エナメル塗料に、カビ防止剤および紫外線吸収剤を添加して、補修用塗料を得る。
【0018】
無黄変型ポリウレタン樹脂系エナメル塗料として、例えば中電工業製のパイネ#8040(商品名)を使用できる。このパイネ#8040の組成は、主剤としてのアクリルポリオール樹脂ワニスが75.6重量%、シリコン系消泡剤およびレベリング剤を含む添加剤が0.2重量%、溶剤としてのポリウレタン樹脂系溶剤が4.2重量%、そして硬化剤としてのイソシアネート樹脂ワニスが20.0重量%である。ここで、ポリウレタン樹脂系溶剤として中電工業製のパイネ#8000(商品名)が用いられている。
【0019】
カビ防止剤として、例えば日本エンバイロケミカル製のモニサイドS(商品名)を使用できる。このモニサイドSは、ハロゲン化硫黄化合物および有機窒素系化合物の混合品である。このカビ防止剤の混合比率は、カビ発生の抑制効果を上げるために、パイネ#8040の100重量部に対して1重量%以上、例えば1〜3重量%とされる。
【0020】
紫外線吸収剤として、例えばチバ・ガイギー製のチヌビン900(商品名)を使用できる。この紫外線吸収剤の混合比率は、パイネ#8040の100重量部に対して例えば1重量%以内とされる。
【0021】
上述した補修用塗料は、アクリル系の樹脂塗料であるアクリルポリオール樹脂ワニスの濃度をポリウレタン樹脂系溶剤で調整し、常温(5〜40℃)で使用可能な濃度にしている。そのため、例えば保護膜が劣化したFRP製標識板(図2A,B参照)、あるいは表面保護膜が劣化した鉄製の看板等に、この補修用塗料を、スプレー缶または霧吹きを用いてスプレー法で塗布し、このFRP製標識板あるいは鉄製の看板等を簡単に補修できる。このスプレーによる塗布方法によれば、刷毛塗りのように作業者の熟練度を必要とせず簡単に施工でき効率的であると共に、山間部での作業では作業者の運搬疲労度などを軽減できる。
【0022】
また、補修用塗料で補修されたFRP製標識板は、ガラス繊維が浮き出てきて、文字、図形が見えにくくなるまでの期間、つまり有効使用期間が延長される。同様に、補修用塗料で補修された鉄製の看板等も、文字、図形が見えにくくなるまでの期間、つまり有効使用期間が延長される。これにより、FRP製標識板、鉄製の看板等の製造費、およびその交換のための人件費等を節約できる。また、この補修用塗料に添加剤としてカビ防剤が含まれているので、カビの発生を抑制でき、カビで標識の文字、図形が見えにくくなることを防止でき、FRP製標識板、鉄製の看板等の有効使用期間をさらに延長できる。
【0023】
また、この補修用塗料に添加剤として紫外線吸収剤が含まれているので、例えばFRP製標識板を構成する繊維強化プラスチックスの紫外線による光酸化劣化を防止でき、これによってもFRP製標識板の有効使用期間の延長効果を得ることができる。
【0024】
なお、上述実施の形態においては、無黄変型ポリウレタン樹脂系エナメル塗料(パイネ#8040)を用いたものであるが、これと同様の組成を持つものであればその他のポリウレタン樹脂系エナメル塗料を使用し、それにカビ防止剤、紫外線吸収剤を添加することで同様の補修用塗料を得ることができる。
【0025】
また、上述したカビ防止剤、紫外線吸収剤の混合比率は一例であり、これに限定されるものではない。この混合比率は、ポリウレタン樹脂系エナメル塗料の種類、あるいはカビ防止剤、紫外線吸収剤の種類によっても変動する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、スプレー法で簡単に塗布でき、また補修後のカビの発生を抑制できるものであり、例えば山間部の鉄塔などに取り付けられた、保護膜の劣化したFRP製標識板、鉄製の看板等の補修を行う際に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】鉄塔に取り付けられる標識の一例を示す図である。
【図2】FRP製標識板の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1・・・FRP製標識板、5・・・文字、図形、6・・・紙体、7・・・FRPシート、8・・・保護膜、9・・・可撓性保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系の樹脂塗料からなる主剤と、
少なくとも、消泡剤、レベリング剤およびカビ防止剤を含む添加剤と、
ウレタン樹脂系の溶剤と、
イソシアネート樹脂系の硬化剤とを含有する
ことを特徴とする補修用塗料。
【請求項2】
上記添加剤は紫外線吸収剤をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の補修用塗料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−233010(P2006−233010A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49606(P2005−49606)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】