説明

補修用塗料

【課題】経時変化によっても補修した箇所を目立たないようにすることができる補修用塗料を提供する。
【解決手段】最表面にクリアー塗膜が形成されている着色塗装構成体に用いる補修用塗料に関する。前記着色塗装構成体はJIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系のL*値が45以下であり、前記着色塗装構成体のL*値との差が−1以上0未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装材や役物などの建材を留める付ける釘の頭(釘頭)や傷ついた部分などを目立たないように補修するための補修用塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、窯業系建材の表面にはエナメル塗料を塗布してエナメル塗膜を形成した後、エナメル塗膜の表面に透明なクリアー塗膜を形成することが行われている。また、窯業系建材は表面から釘などの固定具を打ち込んで胴縁などの下地に固定されるが、この場合、釘頭などの固定具の頭部が窯業系建材の表面に露出することになり、建物の外観を損ねるものであった。また、窯業系建材の表面は搬送時や施工時に傷つくこともあり、この傷ついた部分で建物の外観を損ねる場合もあった。そこで、固定具の頭部や傷ついた部分を目立たないように補修するために、補修用塗料が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この補修用塗料は窯業系建材の表面に形成されたエナメル塗料をそのまま利用している。また、補修用塗料は固定具の頭部や傷ついた部分よりもやや大きめに塗布し、固定具の頭部や傷ついた部分を覆うようにして窯業系建材のクリアー塗膜の表面に塗布されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−087564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようにして補修用塗料を塗布すると、経時変化で補修用塗料の塗膜が目立って、建物の外観が低下することがあった。この原因は、クリアー塗膜が平滑化や水分吸着などによって透明化が進み、施工当初よりも外観がやや黒味が増すにもかかわらず、補修用塗料は経時によっても色の変化がほとんど起こらないためと考えられる。従って、クリアー塗膜で覆われた窯業系建材の表面のエナメル塗料と、クリアー塗膜で覆われていない補修用塗料とで見え方が異なり、経時変化で補修用塗料の塗膜が目立つと考えられる。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、経時変化によっても補修した箇所を目立たないようにすることができる補修用塗料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る補修用塗料は、最表面にクリアー塗膜が形成されている着色塗装構成体に用いる補修用塗料であって、前記着色塗装構成体はJIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系のL*値が45以下であり、前記着色塗装構成体のL*値との差が−1以上0未満であることを特徴とするものである。
【0007】
前記補修用塗料は、アクリル樹脂を含有し、顔料重量含有率が15〜30%であることが好ましい。
【0008】
前記補修用塗料は、フッ素樹脂を含有し、顔料重量含有率が15〜40%であることが好ましい。
【0009】
前記補修用塗料は、ポリシロキサン骨格を有する無機物を含有し、顔料重量含有率が15〜40%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、経時変化によっても補修した箇所を目立たないようにすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0013】
本発明の補修用塗料は、顔料を含有するエナメル塗料を用いることができる。この場合、補修の際の塗装作業が1コート(1回)で済み、補修の手間が少なく、経済的となる。例えば、アクリル樹脂を主成分とするアクリル樹脂塗料に顔料を配合して補修用塗料とすることができる。また、フッ素樹脂を主成分とするフッ素樹脂塗料に顔料を配合して補修用塗料とすることができる。また、ポリシロキサン骨格を有する無機物を主成分とする無機塗料に顔料を配合して補修用塗料とすることができる。さらに、アクリルシリコン樹脂を主成分とするアクリルシリコン樹脂塗料に顔料を配合して補修用塗料とすることができる。
【0014】
上記の補修用塗料は、顔料重量含有率(PWC)が15%以上であることが好ましい。これにより、補修用塗料の隠蔽性を向上させることができる。補修用塗料の隠蔽性をより向上させるためには、顔料重量含有率を20%以上とするのが好ましい。また、アクリル樹脂塗料又はアクリルシリコン樹脂塗料を用いた補修用塗料は、顔料重量含有率が30%以下であることが好ましく、フッ素樹脂塗料又は無機塗料を用いた補修用塗料は、顔料重量含有率が40%以下であることが好ましい。これにより、補修部分と補修部分以外との間で耐候性の差を低減することができ、経年変化によって補修部分が目立つようになるのを少なくすることができる。経年変化によって補修部分をより目立ちにくくするためには、顔料重量含有率を20%以下とするのが好ましい。尚、顔料重量含有率(PWC)は、[(補修用塗料の含有顔料重量)/(補修用塗料の含有固形分重量)]×100で計算される。
【0015】
上記の補修用塗料は、着色塗装構成体の補修に用いることができる。着色塗装構成体としては窯業系建材などを例示することができる。窯業系建材としては外壁材や役物などの外装材を例示することができる。このような着色塗装構成体Aは、図1に示すように、基材1の表面に化粧用の着色層2を設け、着色層2の表面に透明なクリアー塗膜3を設けて形成されるものである。窯業系建材の場合、基材1はセメントを主成分とする窯業系基材で形成され、着色層2はエナメル塗料の塗膜などで形成することができる。また、クリアー塗膜3は、アクリル系樹脂塗料、アクリルシリコン系樹脂塗料、フッ素系樹脂塗料、無機系樹脂塗料などで形成することができる。
【0016】
上記の補修用塗料は、着色塗装構成体の補修部分に塗布される。この補修部分とは、着色塗装構成体を胴縁などの下地に釘などの固定具で固定した場合では、固定具の頭部(釘頭など)とその周囲部分をいう。固定具の頭部の周囲部分とは、例えば、固定具の頭部を中心とする直径7mm程度の円形の部分をいう。また、着色塗装構成体の傷ついた部分を補修部分とすることもできる。この場合も傷ついた部分だけでなく、傷ついた部分の周囲部分にも補修用塗料を塗布するものである。従って、図1に示すように、補修用塗料の乾燥硬化物で形成される補修塗膜4は補修部分のクリアー塗膜3の表面に形成されるものである。
【0017】
そして、上記の補修用塗料は、補修塗膜を形成した直後から3日後までの間において、上記着色塗装構成体の表面のL*値と補修塗膜の表面のL*値との差ΔL*値が−1以上0未満である。すなわち、補修塗膜を形成した直後から3日後までの間において、上記着色塗装構成体の表面よりも補修塗膜の表面の方が明度が低くて黒っぽくなるように、補修用塗料の樹脂の種類や顔料の含有量等を調製するものである。これにより、補修塗膜を形成した後の1〜3ヶ月間に、クリアー塗膜の黒味が増して、着色塗装構成体の表面のL*値と補修塗膜の表面のL*値との差がほとんど無くなり、補修部分を目立ちにくくすることができるものである。ここで、L*値とは、JIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系のL*値のことである。L*値は市販の色彩計を用いて計測することができる。また、補修塗膜を形成する前の着色塗装構成体のL*値は45以下であり、この場合には、特に、経年変化によっても補修部分を目立ちにくくすることができる。尚、着色塗装構成体のL*値は20以上であれば良い。また、補修塗膜を形成した直後から3日後までの間において、着色塗装構成体の表面のL*値と補修塗膜の表面のL*値との差ΔL*値が−1未満であったり0よりも大きい場合では、補修塗膜を形成した直後から3日後までの間において、補修部分が目立つことになり、外観が低下するため好ましくない。また、補修塗膜を形成した直後から3日後までの間において、着色塗装構成体の表面のL*値と補修塗膜の表面のL*値との差ΔL*値が0である場合は、補修塗膜を形成した直後から3日後までの間において、補修部分が目立たないが、経時変化により補修部分が目立って外観が低下するため好ましくない。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0019】
(実施例1)
着色塗装構成体としては窯業系建材を用いた。この着色塗装構成体は基材の表面にエナメル塗料の着色層を有し、着色層の表面に無機系樹脂塗料のクリアー塗膜を有して形成されている。また、着色塗装構成体の表面のL*値は色差計(コニカミノルタ社 CR400)での測定で30であった。補修用塗料としては、アクリル樹脂塗料(DNT製の「Vセラン♯200−9」)に顔料(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの三種類)をPWC15%で配合して調製した。次に、この補修用塗料をクリアー塗膜の表面に塗布して厚み30μmの補修塗膜を形成した。次に、補修塗膜形成直後の補修塗膜の表面のL*値を上記の色差計で測定し、上記の着色塗装構成体の表面のL*値との差ΔL*値を求めた。この結果、ΔL*値は−0.3であった。
【0020】
この後、[経時での着色塗装構成体の黒化による色外観差]と[耐候性劣化差]と[隠蔽性]とを評価した。
【0021】
[経時での着色塗装構成体の黒化による色外観差]は、垂直面南面1ヶ月曝露後の着色塗装構成体の補修部分(補修塗膜を形成した部分)のL*値と補修部分以外のL*値との差がΔL*値が1.5以上のときは×、それ以内は○とした。
【0022】
[耐候性劣化差]は、沖縄地区傾斜曝露2年後、着色塗装構成体の補修部分(補修塗膜を形成した部分)のL*値と補修部分以外のL*値との差ΔL*値が3以上の場合×、3未満の場合は○とした。
【0023】
[隠蔽性]は、白黒隠蔽紙にて10milアプリケーターで補修用塗料を塗布後の隠蔽性を目視で確認した。透けがある場合は×、わずかに透けてる場合は△、透けがない場合は○とした。
【0024】
(実施例2)
顔料をPWC30%にした以外は実施例1と同様にした。尚、実施例2は実施例1と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、実施例1と実施例2は、ΔL*値が同じであるが、PWCは異なる。
【0025】
(実施例3)
ΔL*値を−1にした以外は、実施例2と同様にした。尚、実施例3は実施例2と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、実施例2と実施例3は、PWCが同じであるが、ΔL*値は異なる。
【0026】
(実施例4)
L*値が45の着色塗装構成体を用い、ΔL*値を−0.1にした以外は、実施例2と同様にした。尚、実施例4は実施例2と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)及び着色塗装構成体のL*値を変えた。よって、実施例2と実施例4は、PWCが同じであるが、ΔL*値は異なる。
【0027】
(実施例5)
L*値が45の着色塗装構成体を用い、ΔL*値を−1にした以外は、実施例4と同様にした。尚、実施例5は実施例4と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、実施例4と実施例5は、PWCが同じであるが、ΔL*値は異なる。
【0028】
(実施例6)
L*値が20の着色塗装構成体を用い、ΔL*値を−1にした以外は、実施例3と同様にした。尚、実施例6は実施例3と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、実施例3と実施例6は、着色塗装構成体のL*値が異なるが、PWC及びΔL*値が同じである。
【0029】
(実施例7)
アクリル樹脂塗料の代わりに、無機塗料(パナソニック電工化研製の「MC−T440」)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0030】
(実施例8)
顔料をPWC30%にした以外は実施例7と同様にした。尚、実施例8は実施例7と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、実施例7と実施例8は、ΔL*値が同じであるが、PWCは異なる。
【0031】
(実施例9)
顔料をPWC40%にした以外は実施例7と同様にした。尚、実施例9は実施例7と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、実施例7と実施例9は、ΔL*値が同じであるが、PWCは異なる。
【0032】
(実施例10)
アクリル樹脂塗料の代わりに、フッ素樹脂塗料(DNT製の「Vフロン#200」)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0033】
(実施例11)
顔料をPWC30%にした以外は実施例10と同様にした。尚、実施例11は実施例10と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、実施例10と実施例11は、ΔL*値が同じであるが、PWCは異なる。
【0034】
(実施例12)
ΔL*値を−1にした以外は、実施例11と同様にした。尚、実施例12は実施例11と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、実施例11と実施例12は、PWCが同じであるが、ΔL*値を異なるようにした。
【0035】
(実施例13)
顔料をPWC40%にした以外は実施例10と同様にした。尚、実施例13は実施例10と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、実施例10と実施例13は、ΔL*値が同じであるが、PWCは異なる。
【0036】
(実施例14)
アクリル樹脂塗料の代わりに、アクリルシリコン樹脂(DNT製の「Vセランシリコンマイルド」)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0037】
(実施例15)
顔料をPWC30%にした以外は実施例14と同様にした。尚、実施例15は実施例14と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、実施例14と実施例15は、ΔL*値とPWCの両方が異なる。
【0038】
(比較例1)
着色塗装構成体として、表面のL*値が80のものを用い、顔料をPWC40%にした以外は、実施例1と同様にした。
【0039】
(比較例2)
着色塗装構成体として、表面のL*値が50のものを用いた以外は、比較例1と同様にした。尚、比較例2は比較例1と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、比較例1と比較例2は、着色塗装構成体の表面のL*値が異なるが、ΔL*値及びPWCは同じである。
【0040】
(比較例3)
着色塗装構成体として、表面のL*値が45のものを用い、ΔL*値を−1.1にし、顔料をPWC30%にした以外は、比較例1と同様にした。
【0041】
(比較例4)
ΔL*値を0.1にした以外は、比較例3と同様にした。尚、比較例4は比較例3と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、比較例3と比較例4は、PWCが同じであるが、ΔL*値を異なるようにした。
【0042】
(比較例5)
ΔL*値を0にした以外は、比較例4と同様にした。尚、比較例5は比較例4と顔料の組成(酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックの配合割合)を変えた。よって、比較例4と比較例5は、PWCが同じであるが、ΔL*値は異なる。
【0043】
【表1】

【符号の説明】
【0044】
A 着色塗装構成体
3 クリアー塗膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
最表面にクリアー塗膜が形成されている着色塗装構成体に用いる補修用塗料であって、前記着色塗装構成体はJIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系のL*値が45以下であり、前記着色塗装構成体のL*値との差が−1以上0未満であることを特徴とする補修用塗料。
【請求項2】
アクリル樹脂を含有し、顔料重量含有率が15〜30%であることを特徴とする請求項1に記載の補修用塗料。
【請求項3】
フッ素樹脂を含有し、顔料重量含有率が15〜40%であることを特徴とする請求項1に記載の補修用塗料。
【請求項4】
ポリシロキサン骨格を有する無機物を含有し、顔料重量含有率が15〜40%であることを特徴とする請求項1に記載の補修用塗料。


【図1】
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【公開番号】特開2012−229374(P2012−229374A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99871(P2011−99871)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)
【Fターム(参考)】