説明

補修防水層構造

【課題】繊維強化樹脂層の欠損等を、工期を延ばすことなく、強制乾燥が可能で作業性がよく、仕上がり性に影響しない補修防水層構造の提供である。
【解決手段】単位重量当たり水系防水塗材に対して骨材の表面積を150〜250cmとなるように骨材を配合した水系防水塗材組成物からなる層を介在させること、また、水系防水塗材と補強布からなる層を重層する補修防水層構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水構造の補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂の防水構造は、強度や表面硬度が高く強靭であり、耐久性、寸法安定性に優れた防水であるため、住宅ベランダ、屋上、駐車場等の床面ライニング工法として使用されている。この様な防水施工は、不燃板、合板、ケイ酸カルシウム板、モルタル、コンクリート等の従来使用される防水下地に繊維強化樹脂層を形成し、その繊維強化樹脂層の上に、耐候性、平滑性、美観の向上や繊維強化樹脂層の保護を目的にトップコート樹脂層を設けることによって行われる。しかし、これらの防水構造が破損等により、部分的に修理する方法はなく、同様な防水構造で補修すると膨れ、はがれを生じることとなった。
【0003】
厚さが0.5〜5mmの範囲の比較的厚い防水塗布膜を形成する際に、表面に皮張りし難く、表面に亀裂(クラック)が発生し難く、乾燥速度が速く、高い伸び率の防水塗布膜が形成され、かつ、防水塗布膜を形成する際の作業手順が制約されない、水性エマルジョン防水塗料組成物が樹脂成分100重量部に対して、無機質系充填剤成分を30〜100重量部分散してなる水性エマルジョン防水塗料組成物において、樹脂成分がアクリル系樹脂成分30〜70重量%と、ビチューメン成分70〜30重量%との混合物であり、無機質系充填剤成分が表面積150〜400m/gのセピオライト1〜20重量%と、平均粒子径が10〜40μmの粒状微粉末成分99〜80重量%との混合物とすることが開示されている。(特許文献1)
【0004】
樹脂組成物として揮発性成分を含まない樹脂組成物を用いた防水層構造、この防水層構造の防水層形成方法として、チョップドストランド状の繊維補強布に、水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材が含浸されて形成された繊維強化樹脂層とし、前記チョップドストランド状の繊維補強布は、ガラスチョップドストランドマット状、ビニロンチョップドストランドマット状の繊維補強布であり、下地の上に水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材を塗布して含浸下塗りとし、含浸下塗りの上にチョップドストランド状の繊維補強布を敷き、繊維補強布の上に水性アクリル樹脂組成物を主成分とする防水材を塗布して繊維強化樹脂層を形成する工程とする防水層形成方法が開示されている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−129164号公報
【特許文献2】特開2006−316613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、繊維強化樹脂層の欠損等の補修を、工期を延ばすことなく、強制乾燥が可能で作業性がよく、仕上がり性に影響しない補修施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、水系防水塗材単位当たり、骨材の比表面積と配合重量の積が150〜250cmとなる骨材を配合した水系防水塗材組成物からなる層を介在させることを特徴とする水系塗材補修防水層構造で、乾燥性及び施工性が良い。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の介在させた層に、水系防水塗材と補強布からなる層を重層することを特徴とする補修防水層構造で、膨れにくく、仕上り性が良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、施工現場で、熱風機により強制乾燥が可能となり、工期を遅延させることなく、養生不足から来るふくれ発生を解消し、施工時の作業性も仕上がり性も良い水系塗材防水層構造となる特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で使用する骨材は、非反応性で骨材の乾時の比表面積が50〜250cm/gであり、比表面積50cm/g未満となると粒径が粗く仕上りが悪い、平滑性に劣る、塗り重ね時に界面に空隙が入るなどの悪傾向となり、250cm/gを超えると作業性、強制乾燥性の阻害要因となる。骨材の製品としては、東北硅砂(株)の6号硅砂、7号硅砂等がある。
配合量は水系防水塗材の単位当たり重量に対して配合する骨材の比表面積と骨材の配合量の積が150〜250cmが好ましい。この範囲であれば水系防水塗材と骨材が充分濡れて、塗付性も良く、強制乾燥性も高くなる。下限未満となると流動性が高くなり過ぎて、不陸のある補修部位や強制乾燥時に面を形成できないことがある。上限を超えると、水系防水塗材と骨材との濡れが低下し、骨材と水系防水塗材が馴染んでいない部分が生じ、これにより平滑性や成形性を低下させるため、塗り重ね時に界面に空隙を含む恐れがある。前記、単位当たり重量を別の表記をすると、水系防水塗材1グラムに表面積が150〜250cmとなるように骨材の粒度と配合部数を選択する。
【0011】
本発明の水系防水塗材はポリアクリル樹脂エマルジョン、アクリル共重合樹脂エマルジョン、ポリウレタン樹脂エマルジョン、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、シリコン樹脂エマルジョン、アクリルシリコン樹脂エマルジョン等の各種樹脂エマルジョンを単独或いは併用したもので、耐候性、結合材としての物性バランスから、結合材がポリアクリル樹脂系エマルジョンである水系防水塗材が好ましい。
【0012】
本発明で使用する補強布は繊維を織布としたものやチョップドストランドマットが補強布として適し、価格の点で後者が好ましい。水系防水塗材との親和性、補強の点でガラスチョップドストランドマット状補強布、ビニロンチョップドストランドマット状補強布がさらに好ましい。
【0013】
本発明の施工方法は、不燃板、合板、ケイ酸カルシウム板、モルタル、コンクリート等の防水下地上に、必要に応じてプライマーを施し、プライマーを施工した場合にはプライマー乾燥後、有機溶剤、揮発性反応希釈剤を含まない水系防水塗材に対して比表面積50〜250cm/gの骨材の混合を上記好適配合とした防水塗膜を層形成し、さらにビニロン繊維マット等の補強布と水系防水塗材で形成される繊維強化樹脂層で欠損等の補修を行う。前記骨材配合の最も好ましい例として、水系防水塗材100重量部に対して7号硅砂150重量部の混合がある。
【0014】
この骨材との混合に適した水系防水塗材は、JIS K5601−1−2:1999(塗料成分試験方法−第1部:通則−第2節:加熱残分)に準じて測定した固形分が50〜85重量%、BM型回転粘度計(No.3またはNo.4、60rpm)を用い、JIS K5600−2−3:1999[塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第3節:粘度(コーン・プレート粘度計法)]に準じて測定した23℃雰囲気下における粘度が0.5〜7.0Pa・s、及びTI値が1.0〜7.0の範囲にあるものが好ましい。この粘度及びTI値の範囲から外れた場合、両者の下限未満となると塗布具による均一化が円滑に行えない他、補修箇所に高低がある場合、塗材の流出で樹脂が充填されていない部分が生じ、両者の上限を超えると骨材への濡れ性、作業性が悪い他、塗布具の操作に負荷が高く、仕上がりが悪くなる。
【0015】
以下、実施例と比較例によって具体的に説明する。
【実施例1】
【0016】
合板下地上にプライマーとしてジョリエースJA−170(アイカ工業(株)、商品名、水系2液エポキシ樹脂系プライマー、固形分51%)を0.2kg/m塗布し乾燥後、繊維強化樹脂層として、1液水系アクリル樹脂系組成物、ジョリエースJA−110(アイカ工業(株)、固形分70%、粘度−BM、No.3、60rpm 3.60Pa・s、TI値3.30)を0.5kg/m塗布し、補強布としてJR−200KM(アイカ工業(株)製、ビニロン繊維マット、商品名、目付量135g/m)を敷いて、さらにJA−110を1.5kg/m塗布した。塗布した繊維補強層を40×40mm程度撤去して乾燥させた後、これを模擬補修部位とし、補修防水塗材として1液水系アクリル樹脂系組成物、ジョリエースJA−110を100重量部に対して6号硅砂(東北硅砂(株)、平均粒径340μm)を250重量部混合したものを補修部位にパテ状に埋めて、ドライヤーで60分強制乾燥させた後、さらに繊維強化樹脂層としてJA−110を0.5kg/m塗布し、JR−200KMを敷いて、その上にJA−110を1.5kg/m塗布した。この乾燥後、トップコート樹脂層に、ジョリエースJA−180(アイカ工業(株)、商品名、水系1液アクリルウレタン樹脂系トップコート、固形分50%)を0.2kg/m塗布し、実施例1とした。
【実施例2】
【0017】
実施例1の補修防水塗材として7号硅砂(東北硅砂(株)、平均粒径180μm)を150重量部混合した以外実施例1と同じに行い実施例2とした。
【実施例3】
【0018】
実施例1の補修防水塗材として8号硅砂(東北硅砂(株)、平均粒径110μm)を100重量部混合した以外同実施例1と同じに行い実施例3とした。
【0019】
比較例1
実施例1の補修防水塗材として5号硅砂(東北硅砂(株)、平均粒径500μm)を300重量部混合した以外実施例1と同じに行い比較例1とした。
【0020】
比較例2
実施例1の補修防水塗材として7号硅砂を200重量部混合した以外実施例1と同じに行い比較例2とした。
【0021】
比較例3
実施例1の補修防水塗材として6号硅砂を150重量部混合した以外実施例1と同じに行い比較例3とした。
【0022】
比較例4
実施例1の補修部位をJA−110を0.5kg/m塗布し、JR−200KMを敷いて、その上にJA−110を1.5kg/m塗布した以外実施例1と同じに行い比較例4とした。
【0023】
【表1】

【0024】
骨材の比表面積として下記の式1により求めた。
【数1】

S:骨材の比表面積(cm/g)、ρ:骨材の密度(g/cm)、d:骨材の平均粒度(cm)
なお、それぞれの配合骨材の絶乾密度と平均粒径より算出した。
【0025】
作業性試験
試験温度23℃下で寸法約900×900×10mmの普通合板に寸法400×400mmにて塗布量2.0kg/mをゴム製ヘラで塗布し,作業性を評価した。
評価結果は下記に区分した。
○ :作業中に肌われ、ずれ、作業への影響などの支障がない。
△ :肌われ、重いなどでやや作業に支障がある。
× :肌われ、ずれ、重いなどで作業できない。
【0026】
表面性試験
試験温度23℃下で寸法約900×900×10mmの普通合板に寸法400×400mmにて塗布量2.0kg/mをゴム製ヘラで塗布した後、乾燥後、表面の平滑性を目視によって評価した。
評価結果は下記に区分した。
○:目立った不陸がなく、平滑性良好なもの。
△:不陸が一部認められ、やや平滑性に劣るもの。
×:全面に一様に不陸が発生しており、平滑性に劣るもの。
【0027】
耐ふくれ性試験
実施例、比較例で作製したものについて試験温度23℃で投光機(500Wレフランプ、東芝ライテック製)を高さ50cmから1時間照射後の塗膜表面のふくれ発生の有無を目視によって評価した。
評価は下記に区分した。
○:ふくれなし。
△:若干のふくれ(直径1cm未満のもの)が確認される。
×:直径1cmを超えるふくれが発生する。
【0028】
総合評価
作業性試験、表面性試験、耐ふくれ性試験結果を下記の3段階評価によって、総合的な評価とした。
○:△、×がない。
△:○以外で×がない。
×:×が1つでもある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系防水塗材単位当たり、骨材の比表面積と配合重量の積が150〜250cmとなる骨材を配合した水系防水塗材組成物からなる層を介在させることを特徴とする水系塗材補修防水層構造。
【請求項2】
請求項1に記載の介在させた層に、水系防水塗材と補強布からなる層を重層することを特徴とする補修防水層構造。

【公開番号】特開2011−208422(P2011−208422A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76789(P2010−76789)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】