説明

補助錠

【課題】引き違い窓に設置する補助錠を簡単な構成として、コストを低減する。
【解決手段】基体部1の第1平面部4と第2平面部5を、外側の窓枠に取り付ける。基体部1の小傾斜部6にある回転軸部3で、回転腕部2の脚部9を回転可能に基体部1に取り付ける。小傾斜部6に、解錠状態と施錠状態を安定に保つための2つの突起部10を設ける。脚部9の先端には、突起部10と係合する切欠部11を2つ設ける。解錠状態においては、回転腕部2が基体部1に密着して収納される。施錠状態においては、回転腕部2の阻止腕部8が内側の窓枠の動きを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助錠に関し、特に、引き違い窓用の補助錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防犯効果を高めるために、引き違い窓に補助錠を設置して、引き違い窓の主錠が破られても、補助錠で窓が開かないようにしている。補助錠としては、ガラス窓のフレームに固定される種々の簡易錠が使用されている。以下に、補助錠の従来例をいくつかあげる。
【0003】
特許文献1に開示された「防犯金具」は、外側の引違戸又は窓を開けられないようにするものである。図3(a)に示すように、ベース部材を、外側の引違戸の内面に貼り着ける。ストッパー部材を、ピンにより起立状態と水平状態とに回転可能に、ベース部材の下端に取り付ける。起立状態では、引違戸の開閉操作を許す。水平状態に回倒されて支持された状態では、内側の引違戸の動きを制止する。磁石で、ストッパー部材をベース部材に離脱可能に吸着させて、起立状態にする。
【0004】
特許文献2に開示された「引違窓の錠」は、引違窓を開けられないようにするものである。図3(b)に示すように、ガラス戸の間隙より薄いベースを、一方のガラス戸の枠の側面に固定する。レバーの基端部を、着脱可能で回転可能にベースに取り付ける。レバーの先端部をL字状に折り曲げ、他方のガラス戸の枠の端面に当接する当接部材を取り付ける。
【0005】
特許文献3に開示された「引違い障子」は、開放幅を制限したものである。図3(c)に示すように、窓枠に収められる引違い障子の摺り合せ面の一方に、起伏自在なストッパーを設ける。自由開放時において、他方の障子の召合せ筐をストッパーに衝合させ、その開放幅を規制する。
【0006】
特許文献4に開示された「引戸用突掛け錠」は、引戸に突っ掛けて止める錠である。図3(d)に示すように、基板の板面に取付孔を穿つ。基板の左右端に側片を形成する。基板の上面前部にマグネット片を固着する。長方形の基板の下面に、裏面に剥離紙を貼著した接着テープを固着する。後端中央に突出片を形成した起伏板を、基板の上面内側に介装する。起伏板の後端を、基板の側片より挿通したピンにより、軸止めする。ピンに、起伏板の押上げ用スプリングを取り付ける。
【0007】
特許文献5に開示された「引戸用途中施錠器具」は、引戸を途中で施錠するものである。図3(e)に示すように、窓枠取付け用本体と施錠用板金とを、回転自在に接合する。本体に設けられた突起部により、施錠用板金は、本体に対して直角以上は回らない。施錠用板金の一端は、直角に折曲げ可能であり、他端は半円形の先端を有する。
【0008】
特許文献6に開示された「警報付補助錠」は、取看板に施錠体を回動可能に取り付けたものである。図3(f)に示すように、施錠体は、警報音を発する発音体を有している。一側面に、発音体を鳴動させるスイッチを設けてある。周面の挿入孔に、ホルダーに支持されたボタン型電池を入れる。
【0009】
特許文献7に開示された「警報付補助錠」は、一方の引違い戸に取り付けられる取看板に施錠体を枢支したものである。図3(g)に示すように、施錠体の少なくとも一側面を、他方の引違い戸が当接する当接側面とする。当接側面の枢支部寄りを突出させた。
【0010】
特許文献8に開示された「引き違い窓用ロック装置」は、取付作業や構造や操作方法が簡単で、補助錠として利用できるものである。図3(h)に示すように、固定部を、室外側可動窓枠内に装着されている面板へ固定する。面板側へ弾性変形する脚部が、固定部から室内側可動窓枠の引き側端縁に向けて延びている。脚部の先端の係止部が、閉塞状態にある引き違い窓の室内側可動窓枠の引き側端縁に係止して、室内側可動窓枠の開放方向への移動を規制する。
【0011】
特許文献9に開示された「引き違い戸防犯システム」は、侵入者が引き違い戸を開けられないようにしながら警報音を発するものである。図3(i)に示すように、取付板に規制片を起立自在に重合させた補助錠を、一方の引き違い戸に固着する。補助錠の接触を感知する検知部を設けた警報器を、他方の引き違い戸に取り付ける。補助錠の規制片を起立させているときに、引き違い戸を開ける動作をすれば、警報器は補助錠の接触を感知して警報音を出す。起立させた規制片によって、引き違い戸のそれ以上の開き動作を阻止する。
【0012】
特許文献10に開示された「アルミサッシ用補助錠」は、起伏板をバネで押し上げるものである。図3(j)に示すように、基板と起伏板は、長方形の一方に開口した箱状に形成されている。各辺端部には、側片が設けられている。基板の側片と起伏板の側片の全てを貫通して軸支孔を設ける。軸支孔に支軸部材を挿通して、基板と起伏板を軸支する。起伏板は、基板の開口面から突出しない状態で、基板に内接して収納される。箱状の基板に、起伏板が自在に出没できる。
【0013】
特許文献11に開示された「窓用施錠装置」は、軽量コンパクトで防犯性が高い、引き戸式開閉体に取り付ける錠である。図3(k)に示すように、プレート本体は、ポリカーボネート製の平板状のものである。その側方に、ポリカーボネート製の平板状のプレート係止片を設けてある。金属製の回転ピンを圧入固定して、両者を連結する。
【0014】
【特許文献1】実開昭50-067098号公報
【特許文献2】実開昭51-018894号公報
【特許文献3】実開昭51-122897号公報
【特許文献4】実開昭56-036856号公報
【特許文献5】実開昭56-102364号公報
【特許文献6】実開平01-163669号公報
【特許文献7】実開平01-168674号公報
【特許文献8】特開2000-234465号公報
【特許文献9】特開2001-152723号公報
【特許文献10】特開2004-232345号公報
【特許文献11】特開2007-198025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上記従来の補助錠では次のような問題がある。構造がかなり複雑であるのでコストがかかり、手軽に補助錠を設置することができない。構造が簡単な分離型のものでは、部品を紛失するおそれがある。
【0016】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、引き違い窓に設置する補助錠を簡単な構成として、コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明では、外側の窓枠に取り付けるための第1平面部と第2平面部があって第1平面部と第2平面部の間に小傾斜角の小傾斜部と大傾斜角の大傾斜部とがある基体部と、内側の窓枠の動きを阻止するための阻止腕部と阻止腕部に対して小傾斜角をなしている脚部とからなる回転腕部と、脚部が小傾斜部に対して平行に面内回転するように脚部を小傾斜部に取り付けるための回転軸部とからなる補助錠の小傾斜部に、解錠状態と施錠状態を安定に保つための2つの突起部を設け、脚部の先端には、突起部と係合する切欠部を設け、解錠状態においては、阻止腕部が第1平面部に平行に密着して収納され、施錠状態においては、阻止腕部が第2平面部と小傾斜角の2倍の角度をもって保持されるような構成とした。
【発明の効果】
【0018】
上記のように構成したことにより、2つまたは3つの部品で組み立てることができ、加工も簡単であるので、補助錠のコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1と図2を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
本発明の実施例は、基体部を外側の窓枠に取り付け、回転腕部を回転可能に基体部に取り付け、解錠状態においては、回転腕部が基体部に密着して収納され、施錠状態においては、回転腕部の阻止腕部が内側の窓枠の動きを阻止する補助錠である。
【0021】
図1は、本発明の実施例における補助錠の構成を示す図である。図1(a)は平面図である。図1(b)は側面図である。図1(c)は裏面図である。図2は、補助錠の動作を示す図である。図2(a)は、解錠状態の斜視図である。図2(b)は、解錠状態の側面図である。図2(c)は、解錠状態の上面図である。図2(d)は、施錠途中の状態の斜視図である。図2(e)は、施錠状態の斜視図である。図2(f)は、施錠状態の側面図である。図2(g)は、施錠状態の上面図である。
【0022】
図1と図2において、基体部1は、回転腕部を外側の窓枠に回転可能に取り付ける金属部材である。取り付ける相手は、引き違い窓でも引き違い戸でもよいが、ここではそれらを総称して窓ということにする。回転腕部2は、回転して解錠状態から施錠状態になる金属部材である。回転軸部3は、基体部と回転腕部を回転可能に連結する部材である。カシメやリベットなどを利用できる。
【0023】
第1平面部4と第2平面部5は、外側の窓枠に取り付ける部分である。小傾斜部6は、回転軸部を保持する部分である。大傾斜部7は、小傾斜部と第2平面部をつなぐ部分である。阻止腕部8は、内側の窓枠の動きを阻止する部材である。脚部9は、阻止腕部を回転軸部につなぐ部分である。突起部10は、解錠状態と施錠状態を安定に保つための突起である。切欠部11は、突起部と係合する部分である。
【0024】
上記のように構成された本発明の実施例における補助錠の機能と動作を説明する。図1に示すように、基体部1には、第1平面部4と、小傾斜角の小傾斜部6と、大傾斜角の大傾斜部7と、第2平面部5がある。第1平面部6と第2平面部7で、外側の窓枠に取り付ける。解錠状態の補助錠の高さは、外側窓枠と内側窓枠の間の隙間より低くしてある。小傾斜部6には、回転腕部2の脚部9を取り付ける回転軸部3がある。
【0025】
脚部9が小傾斜部6に対して平行に面内回転するように、脚部9を小傾斜部6に取り付ける。回転腕部2には、内側の窓枠の動きを阻止するための阻止腕部8と、阻止腕部8に対して小傾斜角をなしている脚部9とがある。阻止腕部8は、強度を高めるために、縁を絞り加工して、浅い箱状にしてある。小傾斜部6に、解錠状態と施錠状態を安定に保つための2つの突起部10を設ける。脚部9の先端には、突起部10と係合する切欠部11を2つ設ける。
【0026】
解錠状態においては、阻止腕部8が第1平面部4に平行に密着して収納される。施錠状態においては、阻止腕部8が第2平面部5と小傾斜角の2倍の角度をもって保持される。主錠を破壊して、窓を開けようとすると、阻止腕部8の先端が内側の窓枠に当たって、窓の開きを阻止する。強い力でさらに窓を開けようとすると、阻止腕部8が基体部1から離れる方向に変形するので、窓がさらに開く方向に窓枠が動くことはできない。さらに強い力で補助錠全体を破壊しないかぎり、窓は開かない。
【0027】
次に、図2を参照しながら、補助錠の動作を説明する。図2(a)に示すように、補助錠の第1平面部4と第2平面部5を、外側窓枠の内側で、内側窓枠の近くに取り付ける。ねじ止めでも接着剤による接着でもよい。解錠状態では、阻止腕部8は、図の左側にあり、外側窓枠と平行になって収納されている。図2(b)に示すように、水平に一直線状になっている。図2には示していないが、突起部と切欠部が係合して、安定に保持される。図2(c)に示すように、大傾斜部7の部分が最も高くなっているが、この部分が内側窓枠に触れないような高さとなっているので、内側窓を左方向に開けることができる。同様に、外側窓を右方向に開けることもできる。内側窓を左方向に一杯に閉め、外側窓を右方向に一杯に閉めた状態で、補助錠を施錠することができる。
【0028】
補助錠を施錠するときは、阻止腕部8の先端を窓の上方に持ち上げて、図2(d)に示すように、回転軸部3を中心として180度回転させる。すると、図2(e)に示すように、施錠状態となる。施錠状態では、図2(f)に示すように、阻止腕部8は右方向に水平になる。その先端は、内側窓枠に最も接近している。図2には示していないが、突起部と切欠部が係合して、安定に保持される。図2(g)に示すように、阻止腕部8は、外側窓枠に対してかなり大きな角度で開いている。この角度は、小傾斜部6が外側窓枠に対して傾斜している角度の2倍である。阻止腕部8が内側窓枠に当たる位置にあるので、内側窓枠を左方向に移動させようとしても、阻止腕部8に当たって動かせない。したがって、内側窓を開くことができない。同様に、外側窓を右方向に開くこともできない。解錠する場合は、図2(d)に示すのと逆方向に、回転軸部3を中心として180度回転させて、図2(a)に示す状態にする。
【0029】
補助錠を内側窓枠から少し離れたところに取り付けて、窓を少ししか開けられない状態にすることもできる。また、阻止腕部8に弾力性を持たせることで、阻止腕部8を指で押さえて外側窓枠に近づけると、施錠状態でも内側窓を開けられるようにできる。再び内側窓を閉めると、阻止腕部8は弾力で元に戻り、施錠状態となる。
【0030】
上記のように、本発明の実施例では、補助錠を、基体部を外側の窓枠に取り付け、回転腕部を回転可能に基体部に取り付け、解錠状態においては、回転腕部が基体部に密着して収納され、施錠状態においては、回転腕部の阻止腕部が内側の窓枠の動きを阻止する構成としたので、補助錠のコストを低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の補助錠は、引き違い窓の補助錠として最適である。また、防犯用でなくても、引き違い窓などが不用意に開かないようにする留め具としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例における補助錠の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例における補助錠の動作を示す図である。
【図3】従来の補助錠の概念図である。
【符号の説明】
【0033】
1 基体部
2 回転腕部
3 回転軸部
4 第1平面部
5 第2平面部
6 小傾斜部
7 大傾斜部
8 阻止腕部
9 脚部
10 突起部
11 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側の窓枠に取り付けるための第1平面部と第2平面部があって前記第1平面部と前記第2平面部の間に小傾斜角の小傾斜部と大傾斜角の大傾斜部とがある基体部と、内側の窓枠の動きを阻止するための阻止腕部と前記阻止腕部に対して小傾斜角をなしている脚部とからなる回転腕部と、前記脚部が前記小傾斜部に対して平行に面内回転するように前記脚部を前記小傾斜部に取り付けるための回転軸部とからなる補助錠であって、前記小傾斜部には、解錠状態と施錠状態を安定に保つための2つの突起部があり、前記脚部の先端には、前記突起部と係合する切欠部があり、解錠状態においては、前記阻止腕部が前記第1平面部に平行に密着して収納され、施錠状態においては、前記阻止腕部が前記第2平面部と前記小傾斜角の2倍の角度をもって保持されることを特徴とする補助錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−114799(P2009−114799A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291447(P2007−291447)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000152664)株式会社日乃本錠前 (24)