説明

補聴装置

【課題】会話が聞き取りやすい補聴装置を提供する。
【解決手段】本発明の補聴装置は、センター信号(C)、左前方信号(L)、右前方信号(R)、左後方信号(SL)、及び右後方信号(SR)の少なくとも5ch信号が供給される音声制御部6と、前記音声制御部からの出力が供給される補聴器2とを備え、前記音声制御部は、前記左前方信号(L)、前記右前方信号(R)、前記左後方信号(SL)、前記右後方信号(SR)が供給される音像定位処理部11を有し、前記補聴器は、前記音像定位処理部からの出力が供給される乗算器12と、前記センター信号(C)が供給される補聴処理部9と、前記乗算器からの出力および前記補聴処理部からの出力が供給されるレシーバとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TV放送などを聞き取るための補聴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の補聴装置の構成は以下のようになっていた。
すなわち、TV放送を補聴器用に加工する音声制御部と、この音声制御部からの出力が供給される補聴器とを備え、補聴器は、補聴処理部と、レシーバ(スピーカ)とを有する構成となっている。なお、これに類似する技術としては下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−246121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の補聴装置では、TV放送視聴時において、会話が聞き取りにくくなることがあった。すなわち、近年のTV放送等では、臨場感を出すために、センター信号(C)、左前方信号(L)、右前方信号(R)、左後方信号(SL)、右後方信号(SR)の少なくとも5ch信号が供給されるものも多く、これがそのまま補聴器に供給された場合には、会話が環境音に埋もれてしまい、結果として会話が聞き取りにくくなる。
そこで、本発明は、会話が聞き取りやすくなるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の補聴装置は、センター信号(C)、左前方信号(L)、右前方信号(R)、左後方信号(SL)、及び右後方信号(SR)の少なくとも5ch信号が供給される音声制御部と、前記音声制御部からの出力が供給される補聴器とを備え、前記音声制御部は、前記左前方信号(L)、前記右前方信号(R)、前記左後方信号(SL)、前記右後方信号(SR)が供給される音像定位処理部を有し、前記補聴器は、前記音像定位処理部からの出力が供給される乗算器と、前記センター信号(C)が供給される補聴処理部と、前記乗算器からの出力および前記補聴処理部からの出力が供給されるレシーバとを有し、これにより上記の課題を解決する。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、会話音となるセンター信号(C)を、環境音から分離して、補聴処理部によって補聴処理する。また、環境音となる左前方信号(L)、右前方信号(R)、左後方信号(SL)、右後方信号(SR)は、音像定位処理部によって、センター信号(C)とは離れた状態に処理した後、乗算器によって乗算する。このため、会話が聞き取りやすい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態にかかる補聴装置を示す斜視図
【図2】同制御ブロック図
【図3】同要部の制御ブロック図
【図4】同要部の制御ブロック図
【図5】同動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施形態を図面とともに詳細に説明する。
【0009】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施形態にかかる補聴装置を示し、使用者1は左右の耳にそれぞれ補聴器2を装着しており、テレビジョン受像機3からの音声は、音声制御無線送信機4、中継器5を介してこれら左右の補聴器2に供給されるようになっている。
【0010】
音声制御無線送信機4は図2に示すように、テレビジョン受像機3からの、センター信号(C)、左前方信号(L)、右前方信号(R)、左後方信号(SL)、右後方信号(SR)の少なくとも5ch信号が供給される音声制御部6と、この音声制御部6の出力側に接続された送信部7とを有し、送信部7からの出力は中継器5に無線電送されるようになっている。中継器5からの出力は補聴器2の受信部8に無線電送され、受信部8の出力は補聴処理部9を介してレシーバ(図示せず)に出力を供給するようになっている。図3は音声制御部6を詳細に示したものである。音声制御部6は、センター信号(C)が供給される乗算器(増幅器)10と、左前方信号(L)、右前方信号(R)、左後方信号(SL)、右後方信号(SR)が供給される音像定位処理部11とを有する。
【0011】
補聴器2の詳細な構造は、図4に示すように、音像定位処理部11からの出力が供給される乗算器(増幅器)12と、乗算器10からの出力が供給される補聴処理部9と、乗算器12からの出力および補聴処理部9からの出力が供給される上述したレシーバ(図示せず)とを有する。ここで、補聴処理部9は例えば、フーリエ変換により周波数毎の強さを分析し、補聴器使用者の聴力に基づいて設定された補聴パラメータによって周波数毎に増幅処理し、さらに逆フーリエ変換処理を行うものである。なお、乗算器10は省略可能である。
【0012】
本実施形態においては、会話音となるセンター信号(C)を、環境音である左前方信号(L)、右前方信号(R)、左後方信号(SL)、および右後方信号(SR)とは分離した状態で、補聴処理部9によって補聴処理するようにしているため、会話音が聞き取りやすい。また、これらの環境音は、音像定位処理部11によって、センター信号(C)に対して離れた場所から聞こえるように遠方処理しているので、さらに会話音を聞き取りやすくできる。また、環境音は、遠方処理後、乗算器12によって乗算するので、難聴者であっても、環境音を十分に自然な感じで聴きとることができる。結果として、難聴者であっても、会話音が聞き取りやすく、かつ臨場感のある視聴が楽しめる。
【0013】
図5は音像定位処理部11による環境音の遠方化処理を説明するためのものであり、このことはすでにサラウンドシステム技術で良く知られていることなので、簡単に説明する。図5(a)では、使用者1にとって左前方の音を、左前方から聞こえるようにするものであり、左右の補聴器2への伝達係数(pll、plr)を畳み込み演算するようにしている。図5(b)では使用者1にとって右前方の音を、右前方から聞こえるようにするものであり、左右の補聴器2への伝達係数(prl、prr)を畳み込み演算するようにしている。図5(c)では、使用者1にとって左後方の音を、左後方から聞こえるようにするものであり、左右の補聴器2への伝達係数(sll、srl)を畳み込み演算するようにしている。図5(d)では、使用者1にとって右後方の音を、右後方から聞こえるようにするものであり、左右の補聴器2への伝達係数(srl、srr)を畳み込み演算するようにしている。
【0014】
以上の畳み込みにおいて、環境音が前方左右、後方左右のより遠方に鳴るような伝達係数を畳み込み演算することにより、環境音の遠方化処理をする。その結果、例えばテレビジョン受像機3において、サッカー放送を視聴しているときには、解説者13の解説(会話)はセンター信号(C)として、環境音とは分離した状態で補聴処理部9によって補聴処理することになるので、極めて明瞭に聞き取れるものとなる。また、場内の歓声などの環境音は、左前方信号(L)、右前方信号(R)、左後方信号(SL)、右後方信号(SR)として、音像定位処理部11によって、センター信号(C)に対して遠方化処理を行った後、乗算器12によって乗算するようになっているので、環境音も十分に堪能できる。すなわち、補聴器使用者にとっては、すぐ近くから解説者13の解説がはっきりと聞こえると共に、遠くから場内の歓声などの環境音が聞こえるように認識されるので、結果として、臨場感のある視聴が楽しめる。
【0015】
これに対して、本実施形態の比較例として、場内の歓声などの環境音が、遠方化処理されていない場合、解説者13の解説(会話)がこの環境音に埋もれてしまう。すなわち、補聴器使用者にとっては、同じ場所から、解説者13の解説も場内の歓声などの環境音も聞こえるように認識されるので、結果として、解説者13の解説(会話)を聞き取ることができなくなる。解説者13の解説(会話)を聞き取りやすくするために、環境音だけを小さくすることも考えられるが、それでは臨場感のある視聴が出来なくなる。つまり、難聴者は小さな音は極めて聞き取りにくくなっているので、上述のごとく単に環境音を小さくしたものでは、その環境音はほとんど聞き取れずに、臨場感のある視聴が出来なくなるのである。
【0016】
本実施形態では、解説者13の解説(会話)はセンター信号(C)として、環境音とは分離した状態で補聴処理部9によって補聴処理しているので、使用者1本人の聴力に合致した状態で、極めて明瞭に聞き取ることができる。また、場内の歓声などの環境音も、左前方信号(L)、右前方信号(R)、左後方信号(SL)、右後方信号(SR)として、音像定位処理部11によって、センター信号(C)に対して遠方化処理を行った後、乗算器12によって乗算するようにしているので、環境音も十分に堪能でき、結果として臨場感のある視聴が楽しめる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の補聴装置によると、会話音が聞き取りやすく、臨場感のある視聴も楽しめるので、様々な補聴装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 使用者
2 補聴器
3 テレビジョン受像機
4 音声制御無線送信機
5 中継器
6 音声制御部
7 送信部
8 受信部
9 補聴処理部
10,12 乗算器
11 音像定位処理部
13 解説者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センター信号(C)、左前方信号(L)、右前方信号(R)、左後方信号(SL)、及び右後方信号(SR)の少なくとも5ch信号が供給される音声制御部と、
前記音声制御部からの出力が供給される補聴器とを備え、
前記音声制御部は、前記左前方信号(L)、前記右前方信号(R)、前記左後方信号(SL)、前記右後方信号(SR)が供給される音像定位処理部を有し、
前記補聴器は、前記音像定位処理部からの出力が供給される乗算器と、前記センター信号(C)が供給される補聴処理部と、前記乗算器からの出力および前記補聴処理部からの出力が供給されるレシーバとを有する、補聴装置。
【請求項2】
前記音声制御部は、前記センター信号(C)が供給される、さらなる乗算器を有し、
前記補聴器の前記補聴処理部に、前記さらなる乗算器からの出力が供給される、請求項1に記載の補聴装置。
【請求項3】
前記音声制御部の出力側に送信部を接続し、前記補聴器の前記補聴処理部の入力側に受信部を接続した、請求項1または2に記載の補聴装置。
【請求項4】
前記補聴器の前記受信部の入力側に中継器を接続した、請求項3に記載の補聴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−195907(P2012−195907A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60220(P2011−60220)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】