説明

製品の把持装置

【課題】製品を把持する際、製品が把持手段内を移動してしまうことを防止し、芯出しを行いながら把持することができる把持装置を提供する。
【解決手段】製品の把持装置は、第一のラック91aと第二のラック91bとが一体に設けられた第一のアーム部材91と、第一のアーム部材91の進退を駆動する駆動手段92と、第三のラック93bが設けられた第二のアーム部材93と、第一のラック91aの駆動力を第三のラック93bに伝達する第一の歯車群94と、第四のラック95bが設けられた第三のアーム部材95と、第二のラック91bの駆動力を第四のラック95bに伝達する第二の歯車群96と、第一の把持手段65aと、第二の把持手段65bと、第三の把持手段65cと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の把持、又は、製品を把持することにより、製品外周に隆起部を成形する把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ラックと歯車を使用して製品を把持する把持装置として、第一の把持爪、及び、第一の把持爪に平行に配置された第二の把持爪と、第一の把持爪に連結した第一のラックと、第二の把持爪に連結した第二のラックと、第一のラック及び第二のラックに噛合うピニオンと、を設け、モーターからの駆動力を第一のラックに伝達することにより、ピニオンが回転し、第一の把持爪及び第二の把持爪が開閉動作して製品を把持する把持装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような製品を把持する把持装置では、ピニオンの回転軸を固定することで、第一の把持爪及び第二の把持爪が同期して駆動し、製品に均等な圧力を付加して製品を把持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平2−25735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1の製品の把持装置では、第一の把持爪及び第二の把持爪が平行に配置されたのみであり、製品を把持した時に把持手段である第一の把持爪及び第二の把持爪の間を製品が把持爪と平行方向に移動可能であるので、製品を把持した時に製品が把持爪内を平行方向に移動してしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、上記事情により鑑みなされたもので、製品を把持する際、製品が把持手段内を移動してしまうことを防止し、製品を芯出しを行いながら把持する、又は、製品が把持手段内を移動してしまうことを防止し、製品を芯出しを行いながら把持し、把持の圧力を上げることで製品外周に隆起部を成形する把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の製品の把持装置は、前後方向に進退する第一のラックと、第一のラックと軸線を中心に線対称に配置された第二のラックとが一体に設けられた第一のアーム部材と、第一のアーム部材の進退を駆動する駆動手段と、第一のアーム部材の進退方向から90度〜180度傾斜した方向に進退可能で第三のラックが設けられた第二のアーム部材と、第一のラックの駆動力を第三のラックに伝達する第一の歯車群と、第一のアーム部材の進退方向から−90度〜−180度傾斜した方向に進退可能で、第三のラックと軸線を中心に線対称に配置された第四のラックが設けられた第三のアーム部材と、第二のラックの駆動力を第四のラックに伝達する第二の歯車群と、第一のアーム部材の軸線方向の一端に設けられた第一の把持手段と、第二のアーム部材に設けられた第二の把持手段と、第三のアーム部材に設けられ、第二の把持手段と軸線を中心に線対称に配置された第三の把持手段と、を有することを第一の特徴とする。
【0008】
本発明の製品の把持装置は、第二のアーム部材は、第一のアーム部材の進退方向から−120度±10度傾斜した方向に進退し、第三のアーム部材は、第一のアーム部材の進退方向から120度±10度傾斜した方向に進退することを第二の特徴とする。
【0009】
本発明の製品の把持装置は、第一の把持手段、第二の把持手段、及び、第三の把持手段は、突起が外周に成形された回転可能なローラーであることを第三の特徴とする。
【0010】
本発明の製品の把持装置は、製品は、円筒形のシャフトであることを第四の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明における製品の把持装置によれば、前後方向に進退する第一のラックと、第一のラックと軸線を中心に線対称に配置された第二のラックとが一体に設けられた第一のアーム部材と、第一のアーム部材の進退を駆動する駆動手段と、第一のアーム部材の進退方向から90度〜180度傾斜した方向に進退可能で第三のラックが設けられた第二のアーム部材と、第一のラックの駆動力を第三のラックに伝達する第一の歯車群と、第一のアーム部材の進退方向から−90度〜−180度傾斜した方向に進退可能で、第三のラックと軸線を中心に線対称に配置された第四のラックが設けられた第三のアーム部材と、第二のラックの駆動力を第四のラックに伝達する第二の歯車群と、第一のアーム部材の軸線方向の一端に設けられた第一の把持手段と、第二のアーム部材に設けられた第二の把持手段と、第三のアーム部材に設けられ、第二の把持手段と軸線を中心に線対称に配置された第三の把持手段と、を有するため、第一のアーム部材に設けられた第一及び第二のラックが前進する時に、第二のアーム部材に設けられた第三のラック、第三のアーム部材に設けられた第四のラックが同期して移動し、第一のアーム部材の一端に設けられた第一の把持手段と、第二のアーム部材に設けられた第二の把持手段と、第三のアーム部材に設けられ第三の把持手段が同期して三方向から同時に製品に近づき把持するので、製品を把持する際、製品が把持手段内を移動してしまうことを防止し、3方向から芯出しを行いながら把持することができる。
【0012】
本発明における製品の把持装置によれば、第二のアーム部材は、第一のアーム部材の進退方向から−120度±10度傾斜した方向に進退し、第三のアーム部材は、第一のアーム部材の進退方向から120度±10度傾斜した方向に進退するため、製品の周り360度について、120度±10度のほぼ均等な三方向から製品が把持でき、製品の把持を安定させることができる。
【0013】
本発明における製品の把持装置によれば、第一の把持手段、第二の把持手段、及び、第三の把持手段は、突起が外周に成形された回転可能なローラーであるため、前後方向に進退する第一のラック及び第二のラックの前進方向への圧力を上げることで、突起により製品を把持する際に、ローラーが回転し、製品の外周に均等な隆起部を成形することができる。
【0014】
本発明における製品の把持装置によれば、製品は、円筒形のシャフトであるため、製品の軸芯出しを行いながら、把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本発明の実施例におけるカムシャフトの正面図であり、(b)は、第一実施例の複数のカムロブがシャフトに組み付けられた状態の断面正面図である。
【図2】本発明の実施例におけるカムロブの組付装置の側面図である。
【図3】本発明の実施例におけるカムシャフトの製造方法の第一のカムロブをシャフトに組付ける工程を表す図であり、(a)は、シャフトの一端を保持し、第一のカムロブが載置されたパレットをカムロブ組付装置の所定位置に配置した状態の要部部分断面正面図、(b)は、シャフトをカムロブのカムロブ軸穴に挿入した状態でシャフトの他端を軸芯出しを行いながら保持した状態の要部部分断面正面図、(c)は、シャフトの両端を保持した状態で上部ローラーにより第一の隆起部を成形する状態の要部部分断面正面図、(d)は、第一の隆起部が成形されシャフトに所定の位相を出した状態の要部部分断面正面図、(e)は、シャフトの両端を保持した状態で第一のカムロブが載置されたパレットが移動して第一の隆起部に第一のカムロブの一方側面が圧接されて、シャフトに第一のカムロブが組付けられた状態の要部部分断面正面図、(f)は、シャフトの両端を保持した状態で第一のカムロブの入っていた部分が空となったパレットを所定位置に戻す状態の要部部分断面正面図、(g)は、シャフトの両端を保持した状態で下部ローラーにより第一のカムロブの他方側面側も隆起部を成形する状態の要部断面正面図である。
【図4】本発明の実施例における製品の把持装置の平面図であり、(a)は、製品の把持前状態の平面図、(b)は、製品の把持状態の平面図である。
【図5】本発明の実施例における製品の把持装置のV−V線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施例について、添付図面を参照して説明する。図1乃至図5は本発明の実施例を示すもので、図1は、(a)は、カムシャフトの正面図であり、(b)は、複数のカムロブがシャフトに組み付けられた状態の断面正面図である。図2は、カムロブの組付装置の側面図である。図3は、カムシャフトの製造方法の第一のカムロブをシャフトに組付ける工程を表す図であり、(a)は、シャフトの一端を保持し、第一のカムロブが載置されたパレットをカムロブ組付装置の所定位置に配置した状態の要部部分断面正面図、(b)は、シャフトをカムロブのカムロブ軸穴に挿入した状態でシャフトの他端を軸芯出しを行いながら保持した状態の要部部分断面正面図、(c)は、シャフトの両端を保持した状態で上部ローラーにより第一の隆起部を成形する状態の要部部分断面正面図、(d)は、第一の隆起部が成形されシャフトに所定の位相を出した状態の要部部分断面正面図、(e)は、シャフトの両端を保持した状態で第一のカムロブが載置されたパレットが移動して第一の隆起部に第一のカムロブの一方側面が圧接されて、シャフトに第一のカムロブが組付けられた状態の要部部分断面正面図、(f)は、シャフトの両端を保持した状態で第一のカムロブの入っていた部分が空となったパレットを所定位置に戻す状態の要部部分断面正面図、(g)は、シャフトの両端を保持した状態で下部ローラーにより第一のカムロブの他方側面側も隆起部を成形する状態の要部断面正面図である。図4は、製品の把持装置の平面図であり、(a)は、製品の把持前状態の平面図、(b)は、製品の把持状態の平面図である。図5は、製品の把持装置のV−V線における断面図である。
【0017】
まず、図1に基づいてカムシャフト1を説明する。図1の(a)に示す如く、カムシャフト1は、軸線方向に延びるシャフト2と、シャフト2上に軸線方向に所定の間隔をおいて組み付けられた第一のカムロブ3及び第二のカムロブ4を含む複数のカムロブ及び複数のジャーナル5を有する。図1の(b)に示す如く、カムシャフト1は、第一のカムロブ3の一方側面3aとカムロブ3を軸線方向に貫通するカムロブ軸孔3bの一方側面3a側に成形された嵌合凹部3cにシャフト2外周の第一の隆起部2aが結合されており、第一のカムロブ3の他方側面側も一方側面3a側と同様に結合されて、シャフト2に第一のカムロブ3が組付けられている。また、第二のカムロブ4の一方側面4aとカムロブ4を軸線方向に貫通するカムロブ軸孔4bの一方側面4a側に成形された嵌合凹部4cにシャフト2外周の第二の隆起部2bが結合されており、第二のカムロブ4の他方側面側も一方側面側と同様に結合されて、シャフト2に第二のカムロブ4が組付けられている。尚、図示しないが、他のカムロブ及びジャーナル5も第一のカムロブ3及び第二のカムロブ4と同様にシャフト2外周に隆起部により結合されて、シャフト2に組付けられている。
【0018】
次に、図2に基づいてシャフト2に第一のカムロブ3、第二のカムロブ4、ジャーナル5を組み付ける組付装置60について説明する。組付装置60は、基台74の上に箱型フレーム75が取り付けられている。この箱型フレーム75には、第一のカムロブ3の一方側面3a側の第一の隆起部2a、第二のカムロブ4の一方側面4a側の第二の隆起部2bを成形する上部ローラー65がシャフト2の軸線方向と平行に移動可能に取り付けられている。同様に箱型フレーム75には、第一のカムロブ3の他方側面側の隆起部、第二のカムロブ4の他方側面側の隆起部を成形する下部ローラー66もシャフト2と平行に移動可能に取り付けられている。尚、上部ローラー65及び下部ローラー66が本発明の製品を芯出ししながら把持する把持装置に該当する。
【0019】
箱型フレーム75には、上部ローラー65及び下部ローラー66と、複数のカムロブ3、4及びジャーナル5が載置されたパレット80とをシャフト2の軸線方向に移動する移動装置としてのボールネジ69、ラック70が取付けられている。箱型フレーム75の内部には図示しない内部駆動モーターが取り付けられ、内部駆動モーターにより発生した駆動力は、上部ローラー65の根本に配置された図示しないギヤ及びラック70に伝達され、上部ローラー65が上下方向に移動可能となる。更に、箱型フレーム75下部には駆動モーター72が取り付けられ、駆動モーター72により発生した駆動力は、ボールネジ69へ伝達され、下部ローラー66及びパレット80が移動可能となる。更に箱型フレーム75には、シャフト2の軸線方向と平行となるようにリニアガイド73が取り付けられ、このリニアガイド73により上部ローラー65、下部ローラー66、パレット80は、シャフト2の軸線方向と平行に移動可能となる。
【0020】
箱型フレーム75の上部の前面側には、シャフト2を回転させるスピンドルモーター64とスピンドル63が取り付けられ、スピンドル63の下部には、シャフト2の一端を把持するコレット61が設けられている。
【0021】
箱型フレーム75の下部の前面側には、シャフト2の他端を軸芯を出しを行いながら保持するセンター62、センター62を軸線方向に駆動するセンター駆動装置76が設けられ、シャフト2の一端をコレット61で把持し、他端をセンター62をシャフト2のシャフト軸穴2cに差し込み保持することで、組付装置60におけるシャフト2の軸線方向の移動を規制する。
【0022】
更に、箱型フレーム75の前面側には、第一のカムロブ3、第二のカムロブ4等の複数のカムロブ、複数のジャーナル5を保持するパレット80が着脱自在に取付られている。このパレット80の下部には、パレット80を回転してシャフト2へ組付けるカムロブ及びジャーナルを選択するパレット回転モーター68が取り付けられている。また、パレット80の下部から組付装置60の外側に向けて、複数のカムロブ、複数のジャーナルが組付けられ、入っていた部分が空となったパレット80と新たな複数のカムロブを載せたパレットとを入れ替える入れ替え装置としてのコンベア67が取り付けられている。
【0023】
続いて、製品の把持装置である上部ローラー65について図4に基づいて説明する。上部ローラー65は、図4(a)に示す如く、第一の把持手段として第一ローラー65a、第二の把持手段として第二のローラー65b、第三の把持手段として第三のローラー65cを有する。また、図5に示す如く、第一のローラー65a、第二の 65b、第三のローラー65cには、外周に突起99が成形されている。
【0024】
第一のローラー65aを製品まで当接させた後、製品との当接を解除するように動作させる手段として、前後方向に進退する第一のラック91aと、第一のラック91aと軸線を中心に線対称に配置された第二のラック91bとが一体に設けられ、第一のローラー65aを軸線方向一端に取り付ける第一のアーム部材91を有する。
【0025】
また、第二のローラー65bを製品まで当接させた後、製品との当接を解除するように動作させる手段として、第一のラック91aの進退方向から−120度傾斜した方向に進退する第三のラック93bを有し、第三のラック93bに対し垂直方向に延び、第二のローラー65bがその先端に取付られる第二のアーム部材93と、第一のラック91aの駆動力を第三のラック93bに伝達する大平歯車94a、小平歯車94bからなる第一の歯車群94を有する。
【0026】
更に、第三のローラー65cを製品まで当接させた後、製品との当接を解除するように動作させる手段として、第二のラック91bの進退方向から120度傾斜した方向に進退する第四のラック95bを有し、第四のラック95bに対し垂直方向に延び、第三のローラー65cがその先端に取付られる第三のアーム部材95と、第二のラック91bの駆動力を第四のラック95bに伝達する大平歯車96a、小平歯車96bからなる第二の歯車群96を有する。ここで、8尚、製品の把持装置である下部ローラー66も上部ローラー65と同一の構成のため、説明は省略する。
【0027】
続いて、図3に基づいて第一のカムロブ3をシャフト2に組み付け、カムシャフト1を製造するカムロブの組み付け方法について説明する。まず、図3(a)に示す如く、組付装置60上部のコレット61により、シャフト2の一端を保持する。この時、シャフト2の軸芯とパレット80に保持された第一のカムロブ3のカムロブ軸穴3bの軸芯は一致する。次に図3(b)に示す如く、シャフト2を第一のカムロブ3のカムロブ軸穴3bに挿入した状態でシャフト2の他端をセンター62により軸芯出しを行いながら保持する。次に図3(c)に示す如く、シャフト2の両端を保持し、図示しないスピンドル63、スピンドルモーター64によりシャフト2を回転させた状態で上部ローラー65をシャフト2の外周に押し付け、シャフト2の外周に第一の隆起部2aを成形する。次に図3(d)に示す如く、上部ローラー65をシャフト2から離間させ、シャフト2を回転させ、シャフト2を所定の位相とする。次に図3(e)に示す如く、シャフト2の両端を保持した状態で第一のカムロブ3が載置されたパレット80が第一の隆起部2aへ移動して第一の隆起部2aに第一のカムロブ3の一方側面3aを圧接し、シャフト2に第一のカムロブ3が組付ける。次に図3(f)に示す如く、シャフト2の両端を保持した状態でカムロブの入っていた部分が空となったパレット80を所定位置まで下降させる。次に図3(g)に示す如く、シャフト2の両端を保持した状態で下部ローラー66により第一のカムロブ3の他方側面側も隆起部を成形して、シャフト2への第一のカムロブ3の組付けが完了する。続いて一旦シャフト2の一端の保持を解除し、パレット80を回転させて、第二のカムロブ4又はジャーナル5を所定位置に準備し、図3(a)〜図3(g)までの組付けを順次行い、この組付けを繰り返し、複数のカムロブ及びジャーナルの組付けが完了する。次のカムシャフト1を製造する場合には、カムロブの入っていた部分が空となったパレット80は、コンベア67により組付装置60の外部へ運ばれ、他の場所で図示しないカムロブ供給装置により複数のカムロブ及びジャーナルを載置したパレット80がコンベア67により組付装置60の所定位置まで運ばれる。
【0028】
ここで、製品の把持装置である上部ローラー65及び下部ローラー66をシャフト2の外周に押し付け、シャフト2の外周にカムロブ3の一方側面側の第一の隆起部2aとカムロブ3の他方側面側の隆起部を成形するシャフト2の把持方法について、図4(a)、図4(b)に基づき詳述する。シャフト2の両端が組付装置60に保持されると、第一のローラー65a、第二のローラー65b、第三のローラー65cの中心に配置される。
【0029】
次に、油圧シリンダからなる駆動手段92が駆動して、第一のラック91aと第二のラック91bが設けられた第一のアーム部材91が前進する。第一のアーム部材91が前進すると、第一のラック91aに噛合う大平歯車94aが時計周りに回転し、大平歯車94aに噛合う小平歯車94bが反時計周りに回転する。小平歯車94bが反時計周り方向に回転すると、小平歯車94bに噛合う第三のラック93bが取り付けられた第二のアーム部材93が、第一のアーム部材91の前進に同期して、シャフト2の方向に移動する。
【0030】
同様に油圧シリンダからなる駆動手段92が駆動して、第一のアーム部材91が前進すると、第二のラック91bに噛合う大平歯車96aが反時計周りに回転し、大平歯車96aに噛合う小平歯車96bが時計周りに回転する。小平歯車96bが時計周り方向に回転すると、小平歯車96bに噛合う第四のラック95bが取り付けられた第三のアーム部材95が、第一のアーム部材91の前進に同期してが、シャフト2の方向に移動する。このため、図4(b)に示す如く、第一のアーム部材91に設けられた第一のローラー65a、第二のアーム部材93に設けられた第二のローラー65b、第三のアーム部材95に設けられた第三のローラー65cが同期して、シャフト2の外周に当接し、更に駆動手段92で加圧することで、第一のローラー65a、第二のローラー65b、第三のローラー65cの外周の突起99がシャフト2の外周に芯出しした状態で食い込み、シャフト2の外周に第一の隆起部2a及びカムロブ3の他方側面側も隆起部を成形する。
【0031】
以上のように、本発明における製品の把持装置によれば、前後方向に進退する第一のラック91aと、第一のラック91aと軸線100を中心に線対称に配置された第二のラック91bとが一体に設けられた第一のアーム部材91と、第一のアーム部材91の進退を駆動する駆動手段92と、第一のアーム部材91の進退方向から90度〜180度傾斜した方向に進退可能で第三のラック93bが設けられた第二のアーム部材93と、第一のラック91aの駆動力を第三のラック93bに伝達する第一の歯車群94と、第一のアーム部材91の進退方向から−90度〜−180度傾斜した方向に進退可能で、第三のラック93bと軸線100を中心に線対称に配置された第四のラック95bが設けられた第三のアーム部材95と、第二のラック91bの駆動力を第四のラック95bに伝達する第二の歯車群96と、第一のアーム部材91の軸線方向の一端に設けられた第一の把持手段65aと、第二のアーム部材93に設けられた第二の把持手段65bと、第三のアーム部材95に設けられ、第二の把持手段65bと軸線100を中心に線対称に配置された第三の把持手段65cと、を有するため、第一のアーム部材91に設けられた第一のラック91a及び第二のラック91bが前進する時に、第二のアーム部材93に設けられた第三のラック93b、第三のアーム部材95に設けられた第四のラック95bが同期して移動し、第一のアーム部材91の一端に設けられた第一の把持手段65aと、第二のアーム部材93に設けられた第二の把持手段65bと、第三のアーム部材95に設けられ第三の把持手段65cが同期して三方向から同時に製品2に近づき把持するので、製品2を把持する際、製品2が把持手段内を移動してしまうことを防止し、3方向から芯出しを行いながら把持することができる。
【0032】
更に、第二のアーム部材93は、前記第一のアーム部材91の進退方向から−120度±10度傾斜した方向に進退し、前記第三のアーム部材95は、第一のアーム部材91の進退方向から120度±10度傾斜した方向に進退するため、製品の周り360度について、120度±10度のほぼ均等な三方向から製品2が把持でき、製品2の把持を安定させることができる。
【0033】
そして、第一の把持手段65a、第二の把持手段65b、及び、第三の把持手段65cは、突起99が外周に成形された回転可能なローラーであるため、前後方向に進退する第一のラック91a及び第二のラック91bの前進方向への圧力を上げることで、突起により製品を把持する際に、ローラーが回転し、製品の外周に均等な隆起部2aを成形することができる。
【0034】
その上、製品2は、円筒形のシャフトであるため、製品2の軸芯出しを行いながら、把持することができる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【0036】
例えば、好適な実施例では、第一のラック91aの駆動力を第三のラック93bに伝える第一の歯車群94として、大平歯車94aと小平歯車94bを用い、第二のラック91bの駆動力を第四のラック95bに伝える第二の歯車群96として、大平歯車96aと小平歯車96bを用いているが、軸線100を中心に左右対称で第一のラック91aの駆動力を第三のラック93bに伝え、同じ駆動力を第二のラック91bから第四のラック95bに同期して伝えるのであれば、他の歯車の組み合わせでもよい。
【0037】
また、第一のラック91aと第二のラック91bからなる第一のアーム部材91、第三のラック93bと第二のアーム部材93、第四のラック95bと第三のアーム部材95は、各々一部材から構成されているが、複数部材を組付けて一体に動く仕様にしてもよい。
【0038】
第二のアーム部材93は、第一のアーム部材91の進退方向から−120度傾斜した方向に進退し、第三のアーム部材95は、第一のアーム部材91の進退方向から120度傾斜した方向に進退しているが、第一の把持手段65a、第二の把持手段65b、第三の把持手段65cが120度づつ異なる方向から同期して製品を把持するのであれば、第二のアーム部材93及び第三のアーム部材95を異なる角度で取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
2 製品(シャフト)
65a 第一の把持手段(第一のローラー)
65b 第二の把持手段(第二のローラー)
65c 第三の把持手段(第三のローラー)
91 第一のアーム部材
91a 第一のラック
91b 第二のラック
92 駆動手段
93 第二のアーム部材
93b 第三のラック
94 第一の歯車群
95 第三のアーム部材
95b 第四のラック
96 第二の歯車群
100 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に進退する第一のラック(91a)と、第一のラック(91a)と軸線(100)を中心に線対称に配置された第二のラック(91b)とが一体に設けられた第一のアーム部材(91)と、
第一のアーム部材(91)の進退を駆動する駆動手段(92)と、
第一のアーム部材(91)の進退方向から90度〜180度傾斜した方向に進退可能で第三のラック(93b)が設けられた第二のアーム部材(93)と、
第一のラック(91a)の駆動力を第三のラック(93b)に伝達する第一の歯車群(94)と、
第一のアーム部材(91)の進退方向から−90度〜−180度傾斜した方向に進退可能で、第三のラック(93b)と軸線(100)を中心に線対称に配置された第四のラック(95b)が設けられた第三のアーム部材(95)と、
第二のラック(91b)の駆動力を第四のラック(95b)に伝達する第二の歯車群(96)と、
第一のアーム部材(91)の軸線方向の一端に設けられた第一の把持手段(65a)と、
第二のアーム部材(93)に設けられた第二の把持手段(65b)と、
第三のアーム部材(95)に設けられ、第二の把持手段(65b)と軸線(100)を中心に線対称に配置された第三の把持手段(65c)と、を有することを特徴とする製品を把持する把持装置。
【請求項2】
前記第二のアーム部材(93)は、前記第一のアーム部材(91)の進退方向から−120度±10度傾斜した方向に進退し、前記第三のアーム部材(95)は、第一のアーム部材(91)の進退方向から120度±10度傾斜した方向に進退することを特徴とする請求項1記載の製品の把持装置。
【請求項3】
前記第一の把持手段(65a)、第二の把持手段(65b)、及び、第三の把持手段(65c)は、突起が外周に成形された回転可能なローラーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の製品の把持装置。
【請求項4】
前記製品は、円筒形のシャフト(2)であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の製品の把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250295(P2012−250295A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122783(P2011−122783)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000238360)武蔵精密工業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】