説明

製品測定装置および製品測定方法

【課題】製品の座面の面としての精度の測定を可能とする製品測定装置を提供する。
【解決手段】導電性の製品を固定する導電性の基台20と、製品100の測定箇所の理想形状に対応する形状の電気抵抗体120が表面に配置され、測定箇所に接触される測定子10と、基台20および測定子10に接続され、電流を流し、測定子10と製品100との接触面積により電気抵抗値を測定する抵抗測定器30と、を有する製品測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定子を使って製品の所望の箇所を測定するための製品測定装置および製品測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品のある箇所、たとえば、テーパー状の座面を有する製品の該座面の品質検査を行う際には、球体の測定子を用いる。球体の測定子は、表面に電気抵抗体を有する。測定子をテーパー状座面に押し付けて接触させた際の測定子と座面との接触線の長さは、座面のテーパー角によって異なる。したがって、接触線の長さによる抵抗値を測定することによって、座面のテーパー角が得られる。たとえば、特許文献1参照。
【0003】
しかし、上記方法では、電気抵抗体と座面との接触線長さから、座面のテーパー角を測定できるものの、座面の面としての精度を測定できない。
【特許文献1】特開平5−71910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製品の座面の面としての精度の測定を可能とする製品測定装置および製品測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
製品測定装置は、基台と、測定子と、抵抗測定器とを有する。基台は、導電性材料により形成されており、導電性の製品を固定する。測定子は、前記製品の測定箇所の理想形状に対応する形状の電気抵抗体が表面に配置され、前記測定箇所に接触される。抵抗測定器は、前記基台および前記測定子に接続され、電流を流し、前記測定子と前記製品との接触面積により電気抵抗値を測定する。
【0006】
製品測定方法では、導電性の基台の上に、導電性の製品を固定する。次に、固定した前記製品の測定箇所に、該測定箇所の理想形状に対応する形状の電気抵抗体が表面に配置された測定子を接触させる。前記基台、前記製品および前記測定子に電流を流し、前記測定子と前記製品との接触面積による電気抵抗値を測定する。
【発明の効果】
【0007】
測定子の表面の電気抵抗体が、製品の測定箇所の理想形状に対応しているので、測定箇所全体として、測定子と測定箇所との接触面積を電気抵抗値として測定できる。この抵抗値により、測定箇所の全体の精度を評価できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0009】
図1は製品測定装置の概略構成を示す図、図2は測定子の斜視図、図3は測定子を製品に押し付けている様子を示す図、図4は測定子が製品に歪んで当たっている様子を示す図である。
【0010】
製品測定装置は、測定子10、基台20、抵抗測定器30、ストレインアンプ40および制御部50を有する。
【0011】
測定子10は、製品100のテーパー状座面の精度を測定するための接触子である。測定子10は、製品100のテーパー状座面に挿入されるヘッド部12と、ヘッド部12を支持する柱状の柱部14とを含む。
【0012】
ヘッド部12は、図2に示すように、製品100のテーパー状座面の理想形状(完成形状)に合致する形状の電気抵抗体120が表面に配置されている。電気抵抗体120は、錐状のヘッド部12の軸Xに対して垂直な面により、図中のA、B、Cの3つの部分に分割されている。さらに、電気抵抗体120は、軸Xを通り放射方向に延びる面により、図中a、b、c、dの4つの部分に分割されている。したがって、電気抵抗体120は、12個の片により、製品100のテーパー状座面の理想形状に合致する形状を形成している。電気抵抗体120の各片の間には、絶縁体122が配置され、各片同士の電気的な接続を防止する。絶縁体122を設ける代わりに、各片間に溝を形成してもよい。
【0013】
柱部14は、たとえば、円柱状などの柱状に形成されている。柱部14は、ヘッド部12を支持すると共に、製品100への押し付け力を伝達する。押し付け力は、図示しない、測定子保持手段によって、発生される。柱部14の表面の同周上には、複数の歪ゲージ140が取り付けられている。歪ゲージ140は、図示しない金属箔を含み、柱部14の変形に伴い金属箔を変形させ、その抵抗値を変動させる。歪ゲージ140は、それぞれ後述するストレインアンプ40に電気的に接続されている。
【0014】
基台20は、導電性の製品100を載置して固定する。基台20は導電性物質により形成されている。
【0015】
抵抗測定器30は、基台20および測定子10と電気的に接続されている。ここで、抵抗測定器30は、測定子10の複数片に分割された各電気抵抗体120にそれぞれ電気的に接続されている。抵抗測定器30は、測定子10の各電気抵抗体120、製品100および基台20に電流を流すことによって、各電気抵抗体120および製品100間の接触面積による抵抗値を測定する。測定結果は、制御部50に送信される。
【0016】
ストレインアンプ40は、上述の歪ゲージ140のそれぞれと接続されている。ストレインアンプ40は、ブリッジ回路と電流増幅器とを含み、各歪ゲージ140の微小な抵抗変化を検出する。これにより、測定子10の柱部14の歪みを検出する。検出結果は、制御部50に送信される。
【0017】
制御部50は、抵抗測定器30から受信した各電気抵抗体120と製品100間の抵抗値を、第1基準値と比較する。第1基準値は、予め規定されており、たとえば、製品が理想形状である場合に、測定子10を用いて測定すれば得られる抵抗値である。この第1基準値と、実際の抵抗測定器30からの抵抗値とを比較することによって、製品の精度を確認できる。特に、本実施形態では、電気抵抗体120が複数に分割されているので、分割して測定する箇所ごとの製品100の第1基準値を予め用意する。これにより、製品100の測定箇所の部分ごとにも精度を評価できる。全体を評価する場合には、各電気抵抗体120と製品との間の抵抗値を合算して、各測定箇所の第1基準値を合算したものと比較すればよい。
【0018】
また、制御部50は、ストレインアンプ40から受信した各歪ゲージ140の抵抗値を、第2基準値と比較する。第2基準値は、予め規定されている。第2基準値は、測定子10が測定に適した圧力で製品100に押し付けられたときの歪ゲージ140の抵抗値である。
【0019】
上述のように、複数の歪ゲージ140は、柱部14の同円周上に設けられている。図3
において点線で示すように、測定子10のヘッド部12と製品100の測定箇所は、ほぼ合致する形状である。したがって、測定子10が、製品100に真っ直ぐに押し付けられている場合、各歪ゲージ140は、同様の抵抗値を示す。制御部50は、ストレインアンプ40を通じて、各歪ゲージ140の抵抗値を監視する。制御部50は、全ての抵抗値が第2基準値と同等程度になったら、すなわち、第2基準値との誤差が許容範囲内になったら、図示しない測定子10の押圧手段を制御して、押圧を停止する。
【0020】
また、図4に示すように、測定子10の軸がずれて、測定子10が製品100に対して歪んで押し付けられている場合、図中右側の歪ゲージ140aの方が、図中左側の歪ゲージ140bよりも縮められる。これにより、歪ゲージ140aの抵抗が、歪ゲージ140bの抵抗値とのバランスを崩して大きくなる。制御部50は、ストレインアンプ40からの抵抗値を監視し、バランスが崩れたのを検出すると、図示しない測定子10の移動手段を制御して、測定子10の姿勢や位置を変更する。
【0021】
制御部50は、バランスが崩れたかどうかを、たとえば、歪ゲージ140の抵抗値が所定値以上ずれたかどうかで判断できる。あるいは、制御部は、歪ゲージ140ごとの第2基準値に対する誤差を比較して、所定値以上の場合に、バランスが崩れたと判断できる。
【0022】
(効果)
以上のような、製品測定装置によれば、測定子10の表面の電気抵抗体120が、製品100の測定箇所の理想形状に対応しているので、測定箇所全体として、測定子10と測定箇所との接触面積を電気抵抗値として測定できる。測定した抵抗値により、測定箇所の全体の精度を評価できる。
【0023】
また、電気抵抗体120が複数の分割片に分けられているので、分割片に対応する測定箇所の一部ごとにも、測定子10と測定箇所との接触面積を電気抵抗値として測定できる。したがって、測定箇所の一部ごとにも精度を評価できる。特に、電気抵抗体120が錐状体をなし、該錐状体の軸X方向に対して垂直な面により複数に分割されているので、製品100の測定箇所を軸X方向に区切って、部分ごとの精度を評価できる。さらに、電気抵抗体120が該錐状体の軸Xを通り放射方向に延びる面により分割されているので、製品100の測定箇所を周方向に区切って、部分ごとの精度を評価できる。なお、測定した全ての分割片の電気抵抗値を合算することによって、測定箇所の全体の精度も評価できる。
【0024】
歪ゲージ140の検出結果に基づいて、測定子10の押し付け力を制御するので、押し付け力の強弱による出力値のバラツキをなくし、より正確な製品精度の評価を可能にする。
【0025】
複数の歪ゲージ140によって柱部14の歪みを測定し、測定子10の位置や姿勢のずれを判断するので、測定子10が、製品100の測定箇所とずれて接触していることを判断できる。この判断に基づいて、測定子の位置を補正することによって、製品の測定箇所を正確に測定でき、製品精度の評価をより正確にできる。
【0026】
(変形例)
以上、製品測定装置について説明してきたが、これに限定されない。種々の変形や改変が可能である。
【0027】
たとえば、電気抵抗体120が複数片に分割されている場合について説明したが、これに限定されない。電気抵抗体120が分割されずに、一つの片のみであってもよい。この場合、製品の測定箇所を全体として測定し、精度を評価できる。
【0028】
また、電気抵抗体120が集まって錐状体をなしていたが、製品100の測定箇所の理想形状であれば、いかなる形状でもよい。たとえば、一部に球面を含むような測定箇所を測定する場合、電気抵抗体120も球面を有する形状を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】製品測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】測定子の斜視図である。
【図3】測定子を製品に押し付けている様子を示す図である。
【図4】測定子が製品に歪んで当たっている様子を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
10 測定子、
12 ヘッド部、
14 柱部、
20 基台、
30 抵抗測定器、
40 ストレインアンプ、
50 制御部、
100 製品、
120 電気抵抗体、
122 絶縁体、
140、140a、140b 歪ゲージ、
X 軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の製品を固定する導電性の基台と、
前記製品の測定箇所の理想形状に対応する形状の電気抵抗体が表面に配置され、前記測定箇所に接触される測定子と、
前記基台および前記測定子に接続され、電流を流し、前記測定子と前記製品との接触面積により電気抵抗値を測定する抵抗測定器と、
を有する製品測定装置。
【請求項2】
前記測定子の前記電気抵抗体は複数の分割片に分割され、該分割片は相互に電気的に非接続状態である請求項1記載の製品測定装置。
【請求項3】
前記電気抵抗体は、錐状体であり、該錐状体の軸方向に対して垂直な面により、複数に分割されている請求項2記載の製品測定装置。
【請求項4】
前記電気抵抗体は、錐状体であり、該錐状体の軸を通り放射方向に延びる面により、複数に分割されている請求項2または請求項3に記載の製品測定装置。
【請求項5】
前記製品の測定箇所に押し付けられることによって生じる、前記測定子の歪を検出する歪ゲージと、
前記歪ゲージの検出結果に基づいて、前記測定子の押し付け力を制御する制御部と、
を更に有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の製品測定装置。
【請求項6】
前記歪ゲージは、前記電気抵抗体が設けられた部分を支持する柱部の同周上に複数個取り付けられており、
前記制御部は、各歪ゲージの出力値に基づいて、前記柱部の歪みを測定して、前記測定子の位置や姿勢のずれを判断する請求項5に記載の製品測定装置。
【請求項7】
導電性の基台の上に、導電性の製品を固定する工程と、
固定した前記製品の測定箇所に、該測定箇所の理想形状に対応する形状の電気抵抗体が表面に配置された測定子を接触させる工程と、
前記基台、前記製品および前記測定子に電流を流し、前記測定子と前記製品との接触面積による電気抵抗値を測定する工程と、
を含む製品測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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