説明

製材の積み重ね時に間に挟むスペーサ及び製材の乾燥方法

【課題】
製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材の水平方向への曲がりが防止できるようにした、製材の積み重ね時に間に挟むスペーサを提供する。
【解決手段】
符号S1は、製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟むスペーサを示している。スペーサS1は、剛性を有する所要長さの四角筒体形状を有している。スペーサS1の上面と下面の対向する二つの面上には、凸条20が表面に所要のパターンを繰り返し有するよう形成された凸条プレート2が固定されている。凸条プレート2はリベット11を用いてスペーサS1の全長にわたって設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟むスペーサ及び製材の乾燥方法に関する。更に詳しくは、乾燥にあたり製材の曲がりが防止できるようにしたものに関する。また、製材のスペーサと接触した部分の変色防止ができるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建築材となる木材(本明細書では「製材」と記載する)は、建築後に材が乾燥・収縮することで生じる不具合、カビの発生や腐食の防止等のために、生木を十分に乾燥させた状態で使用される。通常、この乾燥は、製材と製材の間に木製の角材からなるスペーサを挟んで複数段積み重ね、乾燥室や屋外で風通しを良くした状態で行われる。
【0003】
製材は乾燥することによって収縮するので、単に積み重ねただけの状態では一部の製材に曲がりが発生してしまうことがある。従って、通常、製材の乾燥は、積み重ねた状態で上部側から下向きの荷重をかけて、できるだけ曲がらないよう対策が施された状態で行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−264668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した製材の乾燥方法には、次のような課題があった。
即ち、上記したように製材の乾燥は、通常、積み重ねた上部側から下向きの荷重をかけた状態で行われているので、垂直方向に対しての曲がりはある程度防止できる。しかし、水平方向に対しては上記した下向きの荷重だけでは抑えきれず、曲がり防止を図ることは困難であった。
【0006】
従って、製材は、乾燥終了後に表面を削ることでまっすぐに仕上げられるように、予め周りに削り代を有するよう切り出されている。この削り代は、製材が比較的大きく曲がった場合でも、生産目標とした寸法のものを得ることができ、その製材自体が不良品とならないよう、比較的大きく形成されている。そのため従来の製材の製造にあたっては、無駄となる部分が多く、歩留まりが悪いという課題があった。
【0007】
本発明者は、製材の乾燥にあたり、積み重ねた状態における水平方向に対しての曲がりもある程度防止することができれば、削り代を小さくすることができ、これにより無駄となる部分が少なくできるので歩留まりも良くなるのではないかとの着想を得た。
本発明は、上記着想に基づき、種々の実験を行うことによって完成されたものである。
【0008】
本発明の目的は、製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材の水平方向の曲がりが防止できるようにすることにある。
また本発明の他の目的は、製材のスペーサと接触した部分の変色防止も図ることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
第1の発明にあっては、
製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟むスペーサであって、
製材と接する面に、製材の動きを拘束または実質的に拘束して曲がりを防止する曲がり防止手段が設けてあることを特徴とする、
スペーサである。
【0010】
第2の発明にあっては、
製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟むスペーサであって、
製材と接する面に、製材に刺さるか、食い込むかまたはめり込んで製材の動きを拘束または実質的に拘束して曲がりを防止する曲がり防止手段が設けてあることを特徴とする、
スペーサである。
【0011】
第3の発明にあっては、
製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟むスペーサであって、
製材と接する面に、製材に刺さるか、食い込むかまたはめり込んで製材の動きを拘束または実質的に拘束して曲がりを防止する曲がり防止手段が設けてあり、また、製材と接する部分は熱伝導性または放熱性が良い状態になるよう構成してあることを特徴とする、
スペーサである。
【0012】
第4の発明にあっては、
製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟むスペーサであって、
製材と接する面には凸部及び凹部が形成してあり、当該凸部の表面には、上記製材に刺さるか、食い込むかまたはめり込んで製材の動きを拘束または実質的に拘束して曲がりを防止する曲がり防止手段が設けてあることを特徴とする、
スペーサである。
【0013】
第5の発明にあっては、
製材を積み重ねて乾燥する製材の乾燥方法であって、
第1,第2,第3または第4の発明に係るスペーサを製材と製材の間に挟んで、曲がり防止手段により製材の動きを拘束または実質的に拘束して乾燥することを特徴とする、
製材の乾燥方法である。
【0014】
(作 用)
本発明に係るスペーサの作用を説明する。
本発明に係るスペーサは、製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟む。このスペーサの製材と接する面には、製材の動きを拘束または実質的に拘束して曲がりを防止する曲がり防止手段が設けてあり、この曲がり防止手段によって製材の動きを拘束または実質的に拘束する。
【0015】
本発明に係るスペーサは、製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟む。このスペーサの製材と接する面には、製材の動きを拘束または実質的に拘束して曲がりを防止する曲がり防止手段が設けてあり、この曲がり防止手段が、製材に刺さるか、食い込むかまたはめり込んで、製材の動きを拘束または実質的に拘束する。
【0016】
製材と接する部分の熱伝導性または放熱性が良い状態になるよう構成してあるものは、例えば、スペーサ自体が外気と略同じ温度を有するので、これにより従来から使用しているスペーサよりも、製材のスペーサと接触した部分が乾燥し易い状態となる。
【0017】
また、製材と接する面に凸部及び凹部が形成してあるものは、製材を積み重ねた場合に、凸部が製材と接触しており、その間に凹部が形成されるので、上記したスペーサよりも更に製材のスペーサと接触した部分が乾燥し易くなる。
【0018】
本発明に係る製材の乾燥方法によれば、曲がり防止手段により製材の動きを拘束または実質的に拘束した状態にできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。
本発明に係るスペーサよれば、製材と接する面に設けてある曲がり防止手段により製材の動きを拘束または実質的に拘束することができる。または、曲がり防止手段が、製材に刺さるか、食い込むかまたはめり込んで、製材の動きを拘束または実質的に拘束することができる。これにより乾燥における製材の曲がりが防止できる。
【0020】
製材と接する部分の熱伝導性または放熱性が良い状態になるよう構成してあるものは、例えば、スペーサ自体が外気と略同じ温度を有するようにでき、これにより従来から使用しているスペーサよりも、製材のスペーサと接触した部分が乾燥し易い状態にできる。従って、従来のスペーサを使用した場合よりも、製材のスペーサと接触した部分の変色を防止することが可能である。
【0021】
また、スペーサ本体の製材と接する面に凸部が形成してあるものは、製材を積み重ねた場合に、凸部が製材と接触しており、その間に凹部が形成されるので、上記したスペーサよりも更に製材のスペーサと接触した部分が乾燥し易い状態にでき、変色防止を図ることができる。
【0022】
本発明に係る製材の乾燥方法によれば、曲がり防止手段により製材の動きを拘束または実質的に拘束した状態で乾燥できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。
図1は本発明に係るスペーサの第1の実施の形態を示す斜視説明図、
図2は図1に示すスペーサの端部を示す拡大斜視説明図である。
符号S1は、製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟むスペーサを示している。
【0024】
スペーサS1は、剛性を有する所要長さの四角筒体形状を有している。符号10は中空部を示している。スペーサS1の上面と下面の対向する二つの面上には、曲がり防止手段である凸条20が表面に所要のパターンを繰り返し有するよう形成された凸条プレート2が固定されている。凸条プレート2はリベット11(固定手段)を用いてスペーサS1の全長にわたって設けられている。本実施の形態でスペーサS1は、アルミニウム製のものを使用した。
【0025】
(作 用)
図3は図1に示すスペーサS1の使用状態を示す説明図である。
図1ないし図3を参照して本実施の形態で示すスペーサS1の作用を説明する。
スペーサS1は、製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟んで使用される。本実施の形態では、所要長さの角柱形状を有するよう切り出された製材K1を乾燥する場合を例に挙げて説明する。
【0026】
製材K1は、地面上に所要間隔をもって置かれた台部材4上に、これと略直交した状態となるように複数本並べて設置される。スペーサS1は、製材K1の上面上において台部材4と垂直方向で対応する位置に、製材K1と略直交した状態となるよう設けられる。このときスペーサS1は、凸条プレート2が上側と下側に配置されるよう設けられる。スペーサS1が上面上に設置された製材K1には、更に別の製材K1が積み重ねられる。そして更にその製材K1の上面上にも、別のスペーサS1が上記の場合と同じように、台部材4と垂直方向で対応する位置に積み重ねられる。製材K1とスペーサS1は、この状態を繰り返して複数段積み重ねられる。
【0027】
最上段に設置された製材K1の上面上において台部材4と垂直方向で対応する位置には、上方から押圧力をかけるための重し5(図3では想像線で示している)が設けられる。重し5の重量によって下方に向けて押圧力がかかることにより、乾燥における垂直方向に対しての曲がりが防止できる。
【0028】
更に、重し5によって押圧力がかかることにより、凸条プレート2に形成された凸条20が、製材K1に刺さるか、食い込むかまたはめり込んだ状態になる。スペーサS1は剛性を有しているので、これにより製材K1は動きが実質的に拘束された状態になる。つまりスペーサS1によれば、水平方向に対しての曲がりも防止できる。
【0029】
また、スペーサS1は、製材K1と接触する面に凸条プレート2が設けられたものであり、凸条20が上側と下側に形成されたこと以外は、今までのスペーサと殆ど使い方は変わらないので、使用に際して熟練等は必要なく、取り替えた場合でも直ぐ使用できる。
【0030】
スペーサS1は、熱伝導性または放熱性の良いアルミニウム製の四角筒体形状を有しているので、スペーサS1自体が外気と略同じ温度を有するようにでき、これにより従来から使用しているスペーサよりも、製材K1のスペーサS1と接触した部分は乾燥し易い。従って、従来のスペーサを使用した場合よりも、製材K1のスペーサS1と接触した部分の変色が防止できる。
【0031】
スペーサS1を使用した場合では、凸条20が製材K1に刺さるか、食い込むかまたはめり込んだ状態になっているので、スペーサS1は製材K1から簡単に外れない。これにより例えば、フォークリフト等で運搬する場合であっても製材K1は位置がずれたりし難く、積み直しの回数を減らすことができる。
【0032】
なお、スペーサS1の凸条プレート2を設けていない対向する二つの表面には、例えば、図4に示すような凹凸部3を全長にわたり設けることもできる。
図4は本発明に係るスペーサの第2の実施の形態を示す拡大斜視説明図である。スペーサS2の凹凸部3は、所要の高さを有する凸部30を長さ方向に間隔をあけて設けて、その間に相対的に凹部31が設けられるように形成されている。
【0033】
図5は図4に示すスペーサS2の使用状態を示す説明図である。
なお、図5において上記図1ないし図4で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。
【0034】
スペーサS2は、乾燥にあたりそれほど曲がりが生じないような板状の製材K2を積み重ねる際に使用される。このような製材K2の場合では、凸条20を刺すか、食い込ませるかまたはめり込ませる必要がないので、凹凸部3を構成する凸部30が製材K2と接触するよう、即ち、この凸部30が上側と下側に配置されるよう設けて積み重ねることができる。
【0035】
スペーサS2を用いてこのように製材K2を積み重ねた場合では、凸部30が製材K2と接触しており、その間に凹部31が形成されているので、スペーサS1よりも更に製材K2のスペーサS2と接触した部分が乾燥し易い状態にでき、変色防止を図ることができる。
【0036】
図6は本発明に係るスペーサの第3の実施の形態を示す拡大斜視説明図である。
なお、図6において上記図1ないし図5で示したものと同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は、必要な事項を除き省略する。
【0037】
スペーサS3は、剛性を有する所要長さの四角筒体形状を有している。スペーサS3の製材と接する面となる対向する二つの表面には、全長にわたり凹凸部3aが形成されている。凹凸部3aは、所要の高さを有する凸部30aを長さ方向に間隔をあけて設けて、その間に相対的に凹部31aが設けられるように形成されている。凹凸部3aを構成する凸部30aの表面には、曲がり防止手段である凸条300が形成されている。
【0038】
(作 用)
図6を参照して、第3の実施の形態で示すスペーサS3の作用を説明する。
なお、上記したスペーサS1やスペーサS2と共通する構成により生じる同様の作用、効果については説明を省略し、相違する点についてのみ説明する。
【0039】
スペーサS3によれば、製材を積み重ねた状態で重しによって上方から押圧力がかかることにより、凸部30aの表面に形成された凸条300が、製材に刺さるか、食い込むかまたはめり込んだ状態になる。また、このとき製材と接触している凸部30aの間には凹部31aが形成されているので、製材のスペーサS3と接触した部分も乾燥し易い状態になっている。つまり、スペーサS3によれば、水平方向に対しての曲がりを防止しつつ、なおかつ製材のスペーサS3と接触した部分の変色防止も図ることができる。
【0040】
上記実施の形態においてスペーサS1、S2、S3は、四角筒形状を有するものを使用したが、スペーサの形状はこれに限定するものではなく、例えば、多角筒形状や多角柱形状(中実の四角柱等)を有するものを使用することもできる。
【0041】
また、スペーサS1、S2、S3はアルミニウム製のものを使用したが、これも限定するものではなく、例えば、ステンレスや鉄等の他の金属、セラミックス等の材料を使用することもできる。
【0042】
上記実施の形態で示す凸条20は、凸条プレート2を固定することによって形成したが、これも限定するものではなく、凸条20は、例えば、スペーサの表面を削り出して設けることもできる。
【0043】
上記実施の形態では、曲がり防止手段として凸条を例示したが、これは特に限定するものではない。例えば、製材に刺さるか、食い込むかまたはめり込んで製材の動きを拘束または実質的に拘束し曲がりを防止するような、点状のもの等でも良い。
【0044】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るスペーサの第1の実施の形態を示す斜視説明図。
【図2】図1に示すスペーサの端部を示す拡大斜視説明図。
【図3】図1に示すスペーサの使用状態を示す説明図。
【図4】本発明に係るスペーサの第2の実施の形態を示す拡大斜視説明図。
【図5】図4に示すスペーサの使用状態を示す説明図。
【図6】本発明に係るスペーサの第3の実施の形態を示す拡大斜視説明図。
【符号の説明】
【0046】
S1,S2,S3 スペーサ
K1,K2 製材
10 中空部
11 リベット
2 凸条プレート
20 凸条
3 凹凸部
30 凸部
300 凸条
31 凹部
4 台部材
5 重し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟むスペーサであって、
製材と接する面に、製材の動きを拘束または実質的に拘束して曲がりを防止する曲がり防止手段が設けてあることを特徴とする、
スペーサ。
【請求項2】
製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟むスペーサであって、
製材と接する面に、製材に刺さるか、食い込むかまたはめり込んで製材の動きを拘束または実質的に拘束して曲がりを防止する曲がり防止手段が設けてあることを特徴とする、
スペーサ。
【請求項3】
製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟むスペーサであって、
製材と接する面に、製材に刺さるか、食い込むかまたはめり込んで製材の動きを拘束または実質的に拘束して曲がりを防止する曲がり防止手段が設けてあり、また、製材と接する部分は熱伝導性または放熱性が良い状態になるよう構成してあることを特徴とする、
スペーサ。
【請求項4】
製材を積み重ねて乾燥するにあたり、製材と製材の間に挟むスペーサであって、
製材と接する面には凸部及び凹部が形成してあり、当該凸部の表面には、上記製材に刺さるか、食い込むかまたはめり込んで製材の動きを拘束または実質的に拘束して曲がりを防止する曲がり防止手段が設けてあることを特徴とする、
スペーサ。
【請求項5】
製材を積み重ねて乾燥する製材の乾燥方法であって、
請求項1,2,3または4記載のスペーサを製材と製材の間に挟んで、曲がり防止手段により製材の動きを拘束または実質的に拘束して乾燥することを特徴とする、
製材の乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−32990(P2007−32990A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219512(P2005−219512)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(591202155)熊本県 (17)
【Fターム(参考)】