説明

製版装置及び画像形成装置

【課題】小ロットの印刷を低コストで行うことができ、且つ画質の良好な画像を形成する。
【解決手段】製版装置20は、撥インク性の版粒子15を表面に担持する第1担持体1と、転移温度を境に可逆的に硬度が変化する感温性材料からなる第2担持体2と、第2担持体2を選択的に転移温度以上に加熱するサーマルヘッド5と、第2担持体2を転移温度未満に冷却する冷却ローラー6と、第1担持体1を版粒子15を介して第2担持体2に当接及び離間させる第1駆動部13と、第1駆動部13により第1担持体1を第2担持体2に当接させ、画像信号に対応してサーマルヘッド5に第2担持体2を選択的に加熱させた後、冷却ローラー6に第2担持体2を冷却させ、第1駆動部13により第1担持体1を第2担持体2から離間させることで、第2担持体2の加熱部分のみに版粒子15を固着させて版像を形成する制御部90と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製版装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、代表的な画像形成方法として、平版印刷版を用いたオフセット印刷方式が知られている。かかるオフセット印刷方式では、まず、画像情報に対応して版表面に親水性部分と親インク性(疎水性)部分を形成する。次いで、親水性部分に湿し水を付着させ、親インク性部分にのみ選択的にインクを付着させてインク像を形成する。更に、形成したインク像をブランケットローラーを介して記録媒体上に転写することで画像形成を行う。
【0003】
このオフセット印刷方式では連続的に高画質の画像形成を行うことが可能であるが、感光層で覆われたアルミニウム板(PS版)に対し、画像情報に応じて露光、エッチングを行うなど製版工程が複雑であり、また、製版工程で排出される廃液の処理が必要となる。
また、オフセット印刷方式では、PS版上に形成された版像を消去してPS版を再使用するといったことができない。これに対しては、版の表面をチタン又はチタン合金で構成し、版表面を可逆的に親水化及び疎水化することで版の再利用を可能とする技術も提供されているが(例えば、特許文献1参照)、この技術では一度形成された版像を消去するのに長時間を要するため小ロットの印刷を行う上で好ましくない。
このように、オフセット印刷方式は、製版工程が複雑で、しかも版を再利用することが困難であるため製版コストが高く、印刷部数が少ない場合には単価が非常に高くなってしまう。そこで、小ロットの印刷を低コストで行うため、製版コストの低い印刷方式が求められている。
【0004】
これに対し、オフセット印刷のような複雑な製版工程がない画像形成方式として、静電潜像を乾式トナーや湿式トナーによって現像する電子写真方式(例えば、特許文献2参照)、磁気潜像を磁性トナーによって現像するマグネトグラフィ(例えば、特許文献3参照)、インクを微小液滴として吐出するインクジェット方式(例えば、特許文献4参照)等が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−353974号公報
【特許文献2】特開2005−352371号公報
【特許文献3】特開2009−51119号公報
【特許文献4】特開2004−148618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複雑な製版工程がないこれらの各画像形成方式では、色材として粉体や液滴を使用しているため、粉体や液滴が飛散する等して、オフセット印刷に比べて画質が低下するという問題がある。また、電子写真方式では、静電気により潜像を形成するため、環境によって帯電量が変化する場合があり安定した画質を維持することが難しく、マグネトグラフィ方式では、磁性トナーを使用しているためカラー化する際の色再現性が悪いといった問題がある。更に、インクジェット方式では、低粘度のインクを使用するため記録媒体上でインクが滲んだり、ヘッドの目詰まりによって画像欠損が発生したりするという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、小ロットの印刷を低コストで行うことができ、且つ、画質の良好な画像を形成することができる製版装置及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
撥インク性の版粒子を表面に担持する第1担持体と、
転移温度を境界として可逆的に硬度が変化する感温性材料からなる第2担持体と、
前記第2担持体を選択的に転移温度以上に加熱して軟化させる加熱手段と、
前記第2担持体を転移温度未満に冷却して硬化させる冷却手段と、
前記第1担持体を前記版粒子を介して前記第2担持体に当接及び離間させる駆動部と、
前記駆動部により前記第1担持体を前記第2担持体に当接させ、画像信号に対応して前記加熱手段に前記第2担持体を選択的に加熱させた後、前記冷却手段に前記第2担持体を冷却させ、前記駆動部により前記第1担持体を前記第2担持体から離間させることで、前記第2担持体の加熱された部分のみに前記版粒子を固着させ、前記第2担持体上に前記版粒子が固着された領域と前記版粒子が固着されない領域とからなる版像を形成する制御部と、を備えることを特徴とする製版装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、
上記製版装置と、
版像が形成された前記第2担持体にインクを供給し、前記第2担持体上にインク像を形成するインク供給手段と、
前記インク像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小ロットの印刷を低コストで行うことができ、且つ、画質の良好な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る画像形成装置を示す図である。
【図2】画像形成装置における画像形成ユニットを示す概略構成図である。
【図3】画像形成ユニットの制御系を示すブロック図である。
【図4】製版装置による版の形成を説明する図である。
【図5】変形例に係る画像形成ユニットを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る画像形成装置1000を示す図である。
図1には、画像形成装置として、複数の画像形成ユニットを備えるフルカラー方式の画像形成装置1000を図示しているが、本発明は、フルカラー方式にのみ限定されるものではなく、モノクロ画像のみを形成する1色(ブラック等)の画像形成ユニットを採用している画像形成装置への適用も可能である。また、本発明は、小型のプリンタ、オフィス用複合機、および商業印刷を用途とする高速・大量印刷可能な画像形成装置などへの適用が可能である。
【0014】
図1に示すように、本発明の画像形成装置1000は、画像形成部100、給紙部58及び排紙ストッカー57等で構成されていて、画像形成部100には操作部50が設けられている。
【0015】
画像形成部100の内部には、後述する画像形成ユニット100Aが、フルカラー画像を形成するための各色に対応して複数設けられている。画像形成ユニット100Aは、給紙部58から搬送された記録媒体Sに対して画像形成を行う。画像形成がなされ、必要に応じて後処理がなされた記録媒体Sは排紙ストッカー57に排出される。
【0016】
画像形成ユニット100Aについて、図2を参照して以下説明する。図2は、画像形成ユニット100Aの概略構成を示す図である。また、画像形成ユニット100Aは、本発明に係る製版装置20を含んでいる。
【0017】
画像形成ユニット100Aは、第2担持体2の表面上に版像を形成する製版装置20と、版像が形成された第2担持体2の表面にインクを供給してインク像を形成するインク供給部(インク供給手段)8、第2担持体2上に形成されたインク像が転写されるブランケットローラー9、記録媒体Sをブランケットローラー9に押圧して記録媒体Sにインク像を転写する押圧ローラー(転写手段)10、ブランケットローラー9の付着物を除去するブランケットローラー清掃器11等を具備している。
【0018】
画像形成ユニット100Aを構成する、インク供給部8、ブランケットローラー9、押圧ローラー10及びブランケットローラー清掃器11は、それぞれ既存のオフセット印刷方式の画像形成装置に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0019】
製版装置20は、撥インク性の版粒子15を表面に担持する第1担持体1、第1担持体1に版粒子15を供給する供給装置3、第1担持体1に担持される版粒子15を単層化する版粒子単層化装置4、第1担持体1の表面に担持された版粒子15を除去する第1クリーニング部7、転移温度Tmを境にして可逆的に硬度が変化する感温性材料からなる第2担持体2、第1担持体1を第2担持体2に当接及び離間させる第1駆動部(駆動部)13、第2担持体2を回動させる第2駆動部14、第2担持体2を転移温度Tm以上に選択的に加熱して軟化させるサーマルヘッド(加熱手段)5、第2担持体2を転移温度Tm未満に冷却して硬化させる冷却ローラー(冷却手段)6、第2担持体2の表面をクリーニングする第2クリーニング部12、各部を制御する制御部90等により構成されている。制御部90は、画像形成ユニット100Aを構成する各部を制御している。
ここで、本発明における撥インク性とは、アルキル基等の疎水基の影響により疎水性を呈し、且つ臨界表面張力が低いことをいう。言い換えると、撥インク性とは、純水接触角が90°以上、臨界表面張力が25mN/m以下であることをいうが、厳密にこの数値範囲に限られるものではない。
【0020】
画像形成ユニット100Aを構成する上記の各部材は、第2担持体2の表面近傍に設けられており、第2駆動部14による第2担持体2の回動方向に沿って、第1駆動部13、サーマルヘッド5、冷却ローラー6、インク供給部8、ブランケットローラー9、第2クリーニング部12の順に配置されている。
【0021】
第1担持体1は、表面に粘着ゲルを有する薄膜粘着シートが無端ベルト状に形成され、表面の粘着力により版粒子15を担持するものである。第1担持体1は、サーマルヘッド5と第2担持体2との間に設けられるため、サーマルヘッド5による熱を効率的に第2担持体2に伝えられるように薄膜であることが好ましい。例えば、厚さ10μmのポリイミドシートを基材とし、当該基材に厚さ10μmの粘着ゲルを塗布したものが用いられる。
なお、第1担持体1の基材としては、ポリイミドに限らず、サーマルヘッド5による加熱温度以上の耐熱温度を有する材料であれば良い。また、第1担持体1の表面に塗布される粘着剤としては、粘着ゲルに限らず、アクリル系その他の粘着剤であっても良いが、版粒子15へ転移しないものに限られる。版粒子15へ転移しない粘着剤としては、アルキル基等の疎水基の影響が大きい材料が多く含まれる粘着剤が好ましい。
【0022】
第1担持体1は、第1駆動部13及び冷却ローラー6に張架され、図2中の矢印方向に回動可能に支持されている。また、第1担持体1は、第1駆動部13と冷却ローラー6との間における領域A(図2参照)において第2担持体2の表面に当接し、当該領域A以外の部分において第2担持体2から離間している。つまり、第1駆動部13が駆動して第1担持体1を回動させることにより、第1担持体1を第2担持体2に当接及び離間させることができる。
【0023】
なお、第1担持体1は、第1駆動部13による遠心力や機内風によって、版粒子15を表面から脱落させることなく担持できるものであれば薄膜粘着シートでなくとも良く、例えば、第1担持体1の表面に微細形状を設けてアンカー効果により版粒子15を担持するものであっても良いし、版粒子15に電荷や磁力を付与して第1担持体1の周辺に所望の電界や磁界を形成することにより、クーロン力や磁気吸引力により版粒子15を担持するものであっても良い。例えば、第1担持体1は、電子写真技術における現像ローラーのように、版粒子15を摩擦帯電させるとともに第1担持体1の表面に版粒子15の粒子層を形成するようにしても良い。
【0024】
第1担持体1の近傍には、供給装置3、版粒子単層化装置4及び第1クリーニング部7が設けられている。
供給装置3は、版粒子15を第1担持体1に供給し、第1担持体1の表面全体に版粒子15を担持させるものである。供給装置3により第1担持体1の表面に供給された版粒子15は、第1担持体1の表面の粘着力及び粒子間の凝集力により、第1担持体1の表面上に複数層に亘って付着し、版粒子15の層を形成する。版粒子15は、撥インク性の材料を用いることができ、例えば、アルミニウム、チタン等の金属粒子やシリカ粒子に対して、シランカップリング疎水処理を行ったものや、テフロン(登録商標)やPTFE(polytetrafluoroethylene)等のフッ素系化合物を表面にコーティングしたもの、シリコンパウダー等が挙げられる。また、シリコンゴムを表面にコーティングした粒子であっても良い。版粒子15の平均粒径は、記録媒体S上に形成される画像の画質を考慮すると、好ましくは0.5μm〜30μmであり、より好ましくは1μm〜5μmである。具体的には、このような版粒子15として、日本触媒(株)製の粒径1μmのシーホスターKE−H100の表面にシランカップリング疎水処理を施したものを使用することができる。
【0025】
版粒子単層化装置4は、第1担持体1の表面上に形成された版粒子15の層を、版粒子15の1粒子分の層にする(単層化)ための装置である。版粒子単層化装置4は、例えば、第1担持体1の表面に近接した筒状の中空形状をしたエア放出部4aと、エア放出部4aから放出されるエアを吸引する吸引部4bとから構成されている。
【0026】
エア放出部4aは、電力により回転駆動するファンなどの気流発生装置を内蔵し、第1担持体1の表面にエアを吹き付ける。エア放出部4aから放出されたエアにより、第1担持体1の表面に形成された版粒子15の層のうち第1担持体1に直接接触していない版粒子15、即ち、粒子間の凝集力によって第1担持体1に付着している版粒子15のみが吹き飛ばされて、吸引部4bに吸引される。吸引部4bに吸引された版粒子15は、所定のフィルタによって回収され、画像形成部100内に版粒子15が飛散することを防止している。また、吸引部4bの近傍には、吸引部4bにより回収された版粒子15をスクリュー部材や空気圧による搬送手段によって供給装置3に戻す機構が設けられていることが好ましく、この場合には、版粒子15を再利用することができる。
【0027】
エア放出部4aにより第1担持体1の表面に放出するエアの風量としては、粒子間の凝集力によって第1担持体1に付着する版粒子15を吹き飛ばせる程度であって、第1担持体1の表面の粘着力によって第1担持体1に付着する版粒子15を吹き飛ばさない程度の風量であれば良く、エア放出部4aの形状や画像形成部100の構成に応じて適宜調整するものとする。
本実施形態では、版粒子15を担持する第1担持体1が薄膜粘着シートで構成されていることにより、第1担持体1は、第1担持体1の表面に直接接触している版粒子15のみに対して付着力を有しており、表面に接触していない版粒子15に対しては付着力を有していない。したがって、第1担持体1の表面に付着する2層目以降の版粒子15を除去・回収することが容易であり、版粒子単層化装置4による版粒子15の単層化を行い易い。
【0028】
なお、版粒子単層化装置4は、エア放出部4a及び吸引部4bから構成されるものでなくとも良く、例えば、第1担持体1の表面に形成された版粒子15の層に対して粘着部材やウレタンゴムブレードを当接させて2層目以降の版粒子15を除去する構成や、第1担持体1に超音波振動を加えて2層目以降の版粒子15を除去する構成であっても良い。
【0029】
第2担持体2は、ドラム状に形成された第2駆動部14の表面を覆うように設けられている。第2駆動部14は、図2中の矢印方向に回転駆動することにより、第2担持体2を回動させる。第2駆動部14は、例えば、ガラス、アルミニウムその他の材料により構成されている。
【0030】
第1クリーニング部7は、第1担持体1を挟んで第2担持体2と反対側に設けられ、第1担持体1に接触して設けられている。
第1クリーニング部7は、図2中の矢印方向に回転駆動可能に構成されており、表面にはウェブシートが設けられている。ウェブシートには、純水やイソプロピルアルコール水溶液等の洗浄液を含ませてある。第1クリーニング部7が回転駆動することにより、第1担持体1の表面がウェブクリーニングされて第1担持体1に担持される版粒子15が除去され、第1担持体1は版粒子15を担持していない状態となる。第1担持体1は、粘着ゲルの粘着力によって版粒子15を担持しているため、第1クリーニング部7により版粒子15が除去された後も、粘着力が失われない。したがって、第1担持体1を交換することなく継続して版の形成を行うことができるとともに、第1担持体1に版粒子15をムラなく担持させることができる。
なお、第1クリーニング部7は、スポンジローラー等により構成されていても良く、この場合には、スポンジローラー表面に純水やイソプロピルアルコール水溶液等の洗浄液を含ませてある。
【0031】
第2担持体2は、転移温度Tmを境界として可逆的に硬度が変化する感温性材料からなる。この第2担持体2に用いられる感温性材料としては、例えば、側鎖結晶性ポリマーが好ましい。
【0032】
側鎖結晶性ポリマーの組成としては、例えば、炭素数16以上、好ましくは炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート30〜99質量部と、炭素数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル0〜70質量部と、極性モノマー1〜10質量部とを重合させて得られる重合体等が挙げられる。
【0033】
炭素数16以上の直鎖状アルキル基を側鎖とする(メタ)アクリレートとしては、例えば、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数16〜22の線状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。極性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有エチレン不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するエチレン不飽和単量体等が挙げられる。
【0034】
具体的には、第2担持体2に用いられる感温性材料としては、例えば、ニッタ(株)製のクールオフインテリマーを用いることができる。クールオフインテリマーは、純水接触角が90°であって、転移温度Tm以上で軟化した状態となって粘着性を発現し、転移温度Tm未満では硬化した状態となる。クールオフインテリマーのこのような状態変化は、熱を加える度に可逆的に繰り返させることができ、その状態変化は約5℃の温度範囲で急峻に起きる。クールオフインテリマーは、例えば、厚さが40μm、転移温度Tmが55℃のものを用いることができるが、これらの値は版粒子15の種類や画像形成部100の構成等によって適宜設定変更可能である。
【0035】
また、第2担持体2に用いられる感温性材料としては、上記したクールオフインテリマーを用いることが可能であるが、第2担持体2は親インク性であることが好ましいため、親インク性の感温性材料を用いることがより好ましい。ここで、本発明における親インク性とは、ヒドロキシル基やアミノ基等の親水基の影響により親水性を呈し、且つ臨界表面張力が高いことをいう。したがって、第2担持体2に用いられる感温性材料は、ヒドロキシル基やアミノ基等の親水基を多く含む化合物や、アルキル基等の疎水基を含まない化合物を材料として用いることが好ましく、臨界表面張力の大きな材料を用いることが好ましい。
【0036】
第1駆動部13は、第1担持体1を介して第2担持体2に当接して設けられ、図2中の矢印方向に回転駆動することにより第1担持体1を回動させる。また、第1駆動部13は、その回転軸が第2駆動部14の回転軸と平行となるように設けられている。
【0037】
サーマルヘッド5は、第1担持体1の領域Aにおいて第1担持体1を介して第2担持体2に当接するように設けられ、当該位置に固定されている。
サーマルヘッド5は、第1駆動部13及び第2駆動部14の回転軸と互いに平行となる向きに延在して設けられ、当該延在方向に沿って複数の発熱素子(図示略)が配設されている。サーマルヘッド5は、制御部90により処理されて出力された画像信号に基づいて、複数の発熱素子を選択的に発熱させることにより、第2担持体2の表面を選択的に加熱する。したがって、第1駆動部13及び第2駆動部14が回転駆動することによって、第2担持体2の表面のうち非画像部分に対応する領域がサーマルヘッド5により転移温度Tm以上に加熱されて、当該領域のみが軟化する。第2担持体2の軟化した領域は粘着性を発現し、第1担持体1に担持された版粒子15と接着する。
【0038】
なお、第2担持体2を選択的に加熱して軟化させる加熱手段としては、例えば、画像信号に応じて変調され放射するレーザー光を第1駆動部13及び第2駆動部14の回転軸方向と平行な方向に走査させるレーザー発光手段を用いるものであっても良い。この場合、第2担持体2の表面のうち加熱する領域を精密に制御することが可能となり、精度良く版を形成することができる。これにより、形成された版を用いて記録媒体S上に高画質の画像を形成することができる。
【0039】
冷却ローラー6は、第1担持体1を介して第2担持体2の全幅に亘って当接して設けられ、図2中の矢印方向に回転駆動可能に構成されている。冷却ローラー6及び第1駆動部13が第2担持体2の全幅に亘って当接して配置されるので、冷却ローラー6及び第1駆動部13に張架される第1担持体1は、領域Aにおいて第2担持体2に密着して当接される。冷却ローラー6は、第1担持体1を介して第2担持体2を転移温度Tm未満の温度に冷却する。これにより、サーマルヘッド5によって加熱されて軟化した第2担持体2が硬化する。第2担持体2の表面のうちサーマルヘッド5により加熱された領域において、第1担持体1に担持された版粒子15は、転移温度Tm未満に冷却されて硬化した第2担持体2に固着される。
ここで、第2担持体2が版粒子15を固着する力は、第1担持体1が版粒子15を担持する力よりも大きい。そうすると、第1駆動部13により第1担持体1が第2担持体2から離間されると、第2担持体2の表面のうちサーマルヘッド5により加熱された領域には版粒子15が固着され、サーマルヘッド5により加熱されていない領域には版粒子15が固着されない。即ち、サーマルヘッド5により加熱されていない領域においては、版粒子15は第1担持体1に担持されたままである。これにより、第2担持体2上に版粒子15が固着される領域と版粒子15が固着されない領域とを形成することができ、第2担持体2の表面上に版像を形成することができる。
【0040】
なお、冷却ローラー6は、第2担持体2を選択的に冷却できるように構成されていても良い。この場合、冷却ローラー6は、第1駆動部13及び第2駆動部14の回転軸と互いに平行となる方向に沿って複数のペルチェ素子が配設されて構成され、制御部90により処理されて出力された画像信号に基づいて、複数のペルチェ素子を選択的に冷却させる。これにより、冷却ローラー6は、第2担持体2の表面のうち非画像部分に対応する領域を選択的に冷却する。冷却ローラー6が第2担持体2の非画像部分に対応する領域(サーマルヘッド5により加熱された部分)のみを選択的に冷却できるので、冷却ローラー6の表面上に温度むらが生じることを抑制できる。冷却ローラー6の表面上の温度むらを抑制できるので、冷却ローラー6は第2担持体2の表面を十分に冷却することができ、第2担持体2上に精度良く版を形成することができる。
【0041】
上記のようにそれぞれ構成される第1担持体1、第1駆動部13、サーマルヘッド5及び冷却ローラー6は、それぞれ所定の接離機構(図示略)により、第2担持体2から離間させることができるように構成されている。記録媒体Sに対して同じ画像を繰り返し形成する場合には、当該接離機構によって第1担持体1、第1駆動部13、サーマルヘッド5及び冷却ローラー6を第2担持体2から離間する。
【0042】
インク供給部8は、インク供給ローラー8a、インク容器8b及びインク規制ブレード8cから構成されている。
インク容器8bには、インクが貯留されており、図示しないインク補充器から適宜インクが補充される。インク容器8bに貯留されるインクは、親インク性の材料表面に付着し易く、撥インク性の材料表面に付着しにくい性質を有する。したがって、インク容器8bに貯留されるインクは、親水性の高い材料が多く含まれ、表面張力が高いことが好ましい。更に、インク容器8bに貯留されるインクは、高粘度であることが好ましく、例えば100Pa秒程度の粘度を有していることが好ましい。インクの粘度を高くすることによって、第2担持体2に供給されたインクが、第2担持体2の非画像部分に対応する領域に固着された版粒子15同士の間に入り込むことを抑制することができ、インクのかぶり等の画像不良の発生を抑制することができる。同様の理由により、インクの表面張力を高くすることによってもインクのかぶり等の画像不良の発生を抑制することができる。
このようなインクの例として、既存の水なしオフセット油性インク(例えば、DICグラフィックス(株)製のDRI-O-COLORナチュラリス)に20質量%の純水を混合したものが挙げられる。この他には、水なしオフセット油性インクにエタノール等のアルコールを混合したものや、水系インクを増粘剤によってオフセットインクと同程度に高粘度化したものが用いられる。
【0043】
インク供給ローラー8aは、第2担持体2に当接して設けられ、図2中の矢印方向に回転駆動可能に構成されている。インク供給ローラー8aは、回転駆動することでインク容器8b内を通過して、インク容器8bに貯留されるインクを表面に保持し、インク規制ブレード8cに当接する。インク規制ブレード8cは、インクを保持したインク供給ローラー8aの表面に当接する位置に設けられ、インク供給ローラー8aの表面に保持されたインクを2μm〜50μm、好ましくは4μm〜10μmの厚さのインク層とする。表面にインク層が保持されたインク供給ローラー8aは、第2担持体2に当接して第2担持体2の表面に適切量のインクを供給する。第2担持体2の表面において、版粒子15が固着された領域(非画像部に対応する領域)には版粒子15が撥インク性であるためインクが付着せず、版粒子15が固着されていない領域(画像部に対応する領域)にのみインクが付着する。これにより、湿し水を用いることなく第2担持体2の表面上にインク像を形成することができる。
【0044】
ブランケットローラー9は、第2担持体2に当接して設けられ、図2中の矢印方向に回転駆動可能に構成されている。ブランケットローラー9は、第2担持体2と当接して、第2担持体2の表面上に形成されたインク像が表面に転写される。また、ブランケットローラー9の表面は、親インク性に構成されている。
【0045】
押圧ローラー10は、ブランケットローラー9に当接して設けられ、図2中の矢印方向に回転駆動可能に構成されている。押圧ローラー10は、画像形成時に給紙部58から供給される記録媒体Sをブランケットローラー9との間にニップし、ニップした記録媒体Sをブランケットローラー9側へ押圧しながら回転することにより、記録媒体S上にブランケットローラー9の表面のインク像を転写する。これにより、記録媒体S上に画像が形成される。
【0046】
ブランケットローラー清掃器11は、インク像を記録媒体Sに転写した後であって次のインク像が表面に転写される前のブランケットローラー9に当接して設けられ、ブランケットローラー9の表面をウェブクリーニングして付着物を除去する。これにより、ブランケットローラー9の表面に残ったインク等の付着物が次の記録媒体Sに転写されてしまうことを防止でき、画像品質の低下を抑制することができる。
【0047】
また、図2に示すように第2担持体2とブランケットローラー9との周長及び回転速度が等しい場合には、ブランケットローラー清掃器11は、所定の接離機構(図示略)により、ブランケットローラー9から離間させることができるように構成されているものとする。第2担持体2とブランケットローラー9との周長及び回転速度が等しければ、記録媒体Sに対して同じ画像を繰り返し形成する場合には、ブランケットローラー9の表面にインク等の付着物が残存していても画像品質の低下は起きないためである。つまり、記録媒体Sに対して同じ画像を繰り返し形成する場合には、ブランケットローラー清掃器11はブランケットローラー9から離間し、記録媒体S上に形成する画像を切り替える場合には、ブランケットローラー清掃器11はブランケットローラー9に当接し、ブランケットローラー9に付着した付着物を除去する。
【0048】
第2クリーニング部12は、ブランケットローラー9にインク像を転写した後であって第1担持体1と接触する前の第2担持体2の表面をクリーニングできるように設けられている。第2クリーニング部12は、第2担持体2の表面から版粒子15を除去する超音波洗浄部16、第2担持体2の表面に残留するインクを除去するウェブクリーニング部17、第2担持体2の表面上の凹凸を平滑化する加熱ローラー18から構成されている。これらの各部材は、第2担持体2の回転方向に沿って超音波洗浄部16、ウェブクリーニング部17及び加熱ローラー18の順に配置されている。
【0049】
超音波洗浄部16は、洗浄液容器16a及び超音波振動部16bから構成されている。洗浄液容器16aには洗浄液が貯留されており、当該洗浄液に第2担持体2の一部が浸るように構成されている。洗浄液容器16aに貯留される洗浄液は、画像形成ユニット100Aの各部を劣化させるようなものでなければ特に限定されるものではないが、例えば、イソプロピルアルコール水溶液等が用いられる。洗浄液容器16aには、図示しない洗浄液補充器から適宜洗浄液が補充される。超音波振動部16bは、洗浄液容器16aの下面に設けられ、洗浄液容器16aに貯留された洗浄液を介して第2担持体2の表面に超音波を発振する。これにより、第2担持体2の表面に固着された版粒子15を第2担持体2から除去して版像を消去することができる。また、版粒子15は撥インク性であり極性をもつ親水基が少ないため、第2担持体2との相互作用が小さい。したがって、短時間の超音波洗浄で第2担持体2から版粒子15を容易に除去することができる。
【0050】
ウェブクリーニング部17は、圧接ローラー17aによりウェブシート17bを第2担持体2の表面に押し当て、送り出しローラー17c及び巻き取りローラー17dが第2担持体2の回転方向と同じ方向に回転することにより(図2参照)、ウェブシート17bを第2担持体2の回転方向と対向する方向に移動させながら第2担持体2の表面に残留するインクを除去する。また、ウェブシート17bには、インク洗浄液を含ませてあることが好ましい。ウェブシート17bに含ませる洗浄液としては、一般的なオフセット印刷のインク洗浄液で構わないが、例えば、金陽社(株)製のマジカルウォッシュを用いることができる。
【0051】
加熱ローラー18は、第2担持体2の表面に当接して設けられ、図2中の矢印方向に回転駆動可能に構成されている。加熱ローラー18は、第2担持体2の表面に接触しながら第2担持体2を転移温度Tm以上、例えば80℃に加熱することで、第2担持体2を軟化させ平滑化する。これにより、版粒子15が除去されることにより第2担持体2の表面に現れる凹みや、ウェブクリーニング部17との摩擦により形成される傷を消去して第2担持体2の表面を平滑にすることができる。
【0052】
また、第2クリーニング部12は、第2担持体2の表面の一部が洗浄液容器16aの洗浄液に浸り、ウェブクリーニング部17及び加熱ローラー18が第2担持体2の表面に当接するように設けられているが、所定の接離機構(図示略)により第2担持体2から離間させることができるように構成されている。これにより、記録媒体Sに対して同じ画像を繰り返し形成する場合には、第2クリーニング部12が第2担持体2から離間した状態となり、第2クリーニング部12がクリーニングを行うことなく繰り返し同じ画像を形成することができる。また、記録媒体S上に形成する画像を切り替える場合には、第2クリーニング部12が第2担持体2に近接した状態となり、第2クリーニング部12は第2担持体2に固着された版粒子15や第2担持体2の表面に残留するインクを除去して表面を平滑な状態にする。これにより、第2担持体2は、新たな画像を形成できる状態となる。
なお、第2クリーニング部12の近傍には、第2クリーニング部12によって第2担持体2から除去した版粒子15を回収する機構が設けられていても良く、回収した版粒子15をスクリュー部材や空気圧による搬送手段によって供給装置3に戻すように構成されていても良い。この場合、第2クリーニング部12には、第2担持体2から回収された版粒子15とその他のものとを分離する機構が設けられていると、より効率的となる。
【0053】
制御部90は、図3に示すように、製版装置20及び画像形成ユニット100Aの各部を制御する。図3は、画像形成ユニット100Aの制御系を示すブロック図である。制御部90は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を備え、製版装置20及び画像形成ユニット100A用の各種処理プログラムに従って各種動作を行う。
具体的には、制御部90は、第1駆動部13により第1担持体1を第2担持体2に当接させ、画像信号に対応してサーマルヘッド5に第2担持体2を選択的に加熱させ、冷却ローラー6に第2担持体2を冷却させ、第1駆動部13により第1担持体1を第2担持体2から離間させることで、第2担持体2の加熱された部分のみに版粒子15を固着させ、第2担持体2上に版粒子15が固着された領域と版粒子15が固着されない領域とからなる版像を形成する。
【0054】
ここで、図4を参照して、上記したように構成される製版装置20による版の形成について説明する。図4は、版粒子15を介して当接及び離間する第1担持体1と第2担持体2の概略構成を示す拡大断面図であって、サーマルヘッド5により加熱されない部分(画像部)と、サーマルヘッド5により加熱される部分(非画像部)とをそれぞれ示している。
先ず、図4(a)に示すように版粒子15を単層で担持した第1担持体1は、第1駆動部13により回動し、第2担持体2に当接する(図4(b)参照)。続いて、サーマルヘッド5により第2担持体2の表面のうち非画像部に対応する領域である領域Bが選択的に転移温度Tm以上に加熱され、当該領域Bにおいて第2担持体2が軟化するとともに粘着性を発現する。第1担持体1は、第2担持体2に密着して当接するので、第2担持体2の表面のうち加熱されて軟化した領域Bにおいては版粒子15が第2担持体2に埋め込まれる(図4(c)参照)。第2担持体2はサーマルヘッド5により選択的に加熱された後、冷却ローラー6により冷却される。これにより、第2担持体2の表面のうち加熱されて軟化した領域が転移温度Tm未満に冷却されて硬化する。第2担持体2が硬化することによって版粒子15が第2担持体2に固着される。冷却ローラー6によって第2担持体2が冷却された後、第1駆動部13により第1担持体1は第2担持体2から離間される(図4(d)参照)。ここで、第2担持体2が版粒子15を固着する力は第1担持体1が版粒子15を担持する力よりも大きい。したがって、第1担持体1が第2担持体2から離間されると、第2担持体2の表面のうちサーマルヘッド5によって加熱された領域B(非画像部に対応する領域)においては版粒子15が第2担持体2に固着され、サーマルヘッド5により加熱されなかった領域(画像部に対応する領域)においては版粒子15が第1担持体1に担持されたままの状態となる。このようにして、第2担持体2上に、版粒子15が固着される領域と版粒子15が固着されない領域とからなる版像が形成される。
第2担持体2から離間された第1担持体1は第1駆動部13により回動し、第1クリーニング部7により第1担持体1の表面上に残留する版粒子15が全て除去される。第1担持体1は粘着ゲルの粘着力により版粒子15を担持しているため、第1クリーニング部7によるウェブクリーニング後も粘着力が失われない。したがって、版を形成した後も第1担持体1を継続して使用することができ、第1クリーニング部7によるウェブクリーニングのすぐ後に当該第1担持体1に版粒子15を担持させることができる。ウェブクリーニング後の第1担持体1は第1駆動部13により回動し、供給装置3及び版粒子単層化装置4により第1担持体1の表面に再び単層の版粒子15が担持される。
【0055】
以上、本実施形態によれば、撥インク性の版粒子15を担持した第1担持体1を、転移温度Tmを境にして可逆的に硬度が変化する第2担持体2に当接させた状態で、画像信号に対応して第2担持体2を選択的に加熱した後、当該第2担持体2を冷却し、第1担持体1を第2担持体2から離間させることで、第2担持体2上に版粒子15が固着される領域と固着されない領域とからなる版像を形成することができる。これにより、オフセット印刷方式よりも簡易に版を形成することが可能であり、形成した版を用いて画質の良好な画像を形成することができる。また、第2担持体2は転移温度Tmを境にして可逆的に硬度が変化する感温性材料からなり、この第2担持体2に版粒子15を固着させることにより版を形成しているため、低コストで版を形成することができる。また、第2担持体2上に撥インク性の版粒子15を固着させることにより版像を形成しているため、第2担持体に湿し水を付与することなくインク像を形成することができ、低コストで容易に画像形成を行うことができる。したがって、小ロット印刷における印刷コストを低く抑えることができる。
【0056】
また、サーマルヘッド5は、薄膜粘着シートである第1担持体1を介して第2担持体2を選択的に加熱するので、第2担持体2の形状や構造に依らず、第2担持体2を効率的に加熱することができる。これにより、第2担持体2上に精度良く版を形成することができる。
【0057】
また、冷却ローラー6が第2担持体2を選択的に冷却できるように構成されている場合には、冷却ローラー6により第2担持体2の表面のうちサーマルヘッド5により加熱された領域のみを選択的に冷却できるので、冷却ローラー6の表面上に温度むらが生じることを抑制することができる。これにより、冷却ローラー6が第2担持体2の表面を十分に冷却することができ、第2担持体2上に精度良く版を形成することができる。
【0058】
また、第2担持体2に固着された版粒子15を超音波洗浄により除去する超音波洗浄部16を備えているので、第2担持体2上から版粒子15を除去して、第2担持体2上に形成された版像を消去することができる。第2担持体2は感温性材料からなるため、版粒子15が除去された第2担持体2に対して再び版粒子15を固着させて版像を形成することができ、版の切り替えが容易であるとともに、第2担持体2を繰り返し使用することができる。したがって、小ロット印刷における印刷コストを更に低く抑えることができる。
また、版粒子15が撥インク性であるため、第2担持体2との相互作用が小さく、超音波洗浄部16による超音波洗浄によって第2担持体2から版粒子15を短時間で容易に除去することができる。
【0059】
また、第1担持体1は粘着ゲルの粘着力により版粒子15を担持するので、第1担持体1から版粒子15を除去するためにウェブクリーニングを行った後も第1担持体1の粘着力は失われず、継続して版の形成を行うことができる。これにより、小ロット印刷における印刷コストを更に低く抑えることができる。
【0060】
<変形例>
ここで、図5を参照して画像形成ユニット100Aの変形例について説明する。図5は、変形例に係る画像形成ユニット100Bを示す概略構成図である。
以下に説明する以外の構成は上記実施形態の画像形成ユニット100Aと略同様であるため、同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0061】
変形例に係る画像形成ユニット100Aは、図5に示すように、ブランケットローラー9及びブランケットローラー清掃器11を備えておらず、押圧ローラー10が第2担持体2の表面に当接して設けられている。
【0062】
押圧ローラー10は、第2担持体2の表面に当接して設けられ、図5中の矢印方向に回転駆動可能に構成されている。押圧ローラー10は、第2担持体2との間に記録媒体Sをニップした状態で回転し、第2担持体2上に形成されるインク像を記録媒体Sに転写する。
このように、画像形成ユニット100Bは第2担持体2に湿し水を付与することなくインク像を形成することができるため、ブランケットローラーを介することなく、記録媒体Sを第2担持体2に直接当接させてインク像を転写させることができる。
【0063】
以上のように、変形例に係る画像形成ユニット100Bによれば、第2担持体2上に形成されたインク像を記録媒体Sに直接転写することができるので、ブランケットローラーを省略することができ、画像形成ユニット100Bの装置構成及び画像形成ユニット100Bによる画像形成処理を簡略化することができる。また、ブランケットローラーを省略できるので、ブランケットローラー清掃器を設ける必要がなく、ブランケットローラーの清掃を行う必要もないので、版の切り替えを短時間で行うことができる。また、ブランケットローラー及びブランケットローラー清掃器が省略されることで、画像形成装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、第2担持体はドラム状の第2駆動部の表面に設けられるものとしたが、第2担持体はベルト状の部材に設けられているものとしても良い。同様に、第1担持体をベルト状であるものとしたが、第1担持体はドラム状であるものとしても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、サーマルヘッドを第1担持体の内側に設け、第1担持体を介して第2担持体を選択的に加熱するものとしたが、サーマルヘッドを第2担持体の内側(第2駆動部側)に設け、第2担持体を内側から加熱するものとしても良い。
【0066】
また、上記実施形態では、第2担持体に固着された版粒子を除去する超音波洗浄部を備えるものとしたが、当該超音波洗浄部を備えていなくても良い。また、第2担持体に固着された版粒子を超音波洗浄によって除去するものとしたが、超音波洗浄以外の方法によって版粒子を除去するものとしても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 第1担持体
2 第2担持体
3 供給装置
4 版粒子単層化装置
4a エア放出部
4b 吸引部
5 サーマルヘッド(加熱手段)
6 冷却ローラー(冷却手段)
7 第1クリーニング部
8 インク供給部(インク供給手段)
8a インク供給ローラー
8b インク容器
8c インク規制ブレード
9 ブランケットローラー
10 押圧ローラー(転写手段)
11 ブランケットローラー清掃器
12 第2クリーニング部
13 第1駆動部(駆動部)
14 第2駆動部
15 版粒子
16 超音波洗浄部
16a 洗浄液容器
16b 超音波振動部
17 ウェブクリーニング部
17a 圧接ローラー
17b ウェブシート
17c 送り出しローラー
17d 巻き取りローラー
18 加熱ローラー
20 製版装置
90 制御部
100 画像形成部
100A、100B 画像形成ユニット
1000 画像形成装置
S 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥インク性の版粒子を表面に担持する第1担持体と、
転移温度を境界として可逆的に硬度が変化する感温性材料からなる第2担持体と、
前記第2担持体を選択的に転移温度以上に加熱して軟化させる加熱手段と、
前記第2担持体を転移温度未満に冷却して硬化させる冷却手段と、
前記第1担持体を前記版粒子を介して前記第2担持体に当接及び離間させる駆動部と、
前記駆動部により前記第1担持体を前記第2担持体に当接させ、画像信号に対応して前記加熱手段に前記第2担持体を選択的に加熱させた後、前記冷却手段に前記第2担持体を冷却させ、前記駆動部により前記第1担持体を前記第2担持体から離間させることで、前記第2担持体の加熱された部分のみに前記版粒子を固着させ、前記第2担持体上に前記版粒子が固着された領域と前記版粒子が固着されない領域とからなる版像を形成する制御部と、を備えることを特徴とする製版装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、前記第1担持体を介して前記第2担持体を加熱することを特徴とする請求項1に記載の製版装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記第2担持体を選択的に転移温度未満に冷却することを特徴とする請求項1又は2に記載の製版装置。
【請求項4】
前記第2担持体に固着された前記版粒子を超音波洗浄により除去する超音波洗浄部を更に備えることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の製版装置。
【請求項5】
前記第1担持体は、粘着ゲルの粘着力により前記版粒子を担持することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の製版装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の製版装置と、
版像が形成された前記第2担持体にインクを供給し、前記第2担持体上にインク像を形成するインク供給手段と、
前記インク像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記インク像が転写されるブランケットローラーを更に備え、
前記転写手段は、前記ブランケットローラーを介して前記インク像を記録媒体に転写することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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