説明

製紙において樹脂分及び粘着物の付着を制御するための両性ポリマー

本発明は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)とアクリル酸及び/又はアクリルアミドの両性ポリマー、並びに場合によりケイ質材料を使用する、パルプ及び製紙過程における樹脂分及び粘着物の付着を制御するための方法及び組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマーのジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、アクリル酸及び場合によりアクリルアミドから形成される両性コポリマーを使用する、パルプ及び製紙過程において樹脂分及び粘着物の付着を抑制する方法に関する。方法は、場合により、ケイ質材料の添加を更に含むことができる。樹脂分及び粘着物は、機械パルプ、再生繊維、被覆損紙、白色紙などで見出される。本発明は、また、両性コポリマー及び場合によりケイ質材料を含む、製紙において樹脂分及び粘着物の制御のための組成物を包含する。
【0002】
本発明は、製紙において樹脂分及び粘着物の付着を制御及び防止するための、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)とアクリル酸及び場合によりアクリルアミドの両性ポリマーを含む組成物の使用を対象とする。組成物は、場合によりケイ質材料を更に含むことができる。
【0003】
ケイ質材料は、シリカベースの粒子、シリカミクロゲル、コロイドシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリケイ酸塩、カチオン性シリカ、アルミノケイ酸塩、ポリアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ポリホウケイ酸塩、ゼオライト、及び膨張性粘土の内の1種以上の材料から選択されることができる。ケイ質材料は、アニオン性微粒子材料の形態であることができる。ケイ質材料は、膨張性粘土である場合、典型的にはベントナイト型粘土であることができる。
【0004】
カチオン性ポリマーは、保持及び排水を改善するための凝集剤として、並びにアニオン性の屑(anionic trash)及び樹脂分及び粘着物の付着を制御するための凝固剤又は固定剤として、製紙において広く使用されてきた。そのうち、付着制御のために最も重要であり、広く使用されているカチオン性ポリマーの中に、ジアリルジアルキルアンモニウム化合物(例えば、DADMAC)の第四級アンモニウムポリマー及びポリアミンとして既知のエピクロロヒドリンとジメチルアミンとのコポリマーがある。DADMACのホモポリマー及び高いカチオン性電荷密度を持つポリアミンは、アニオン性の屑を中和するには良好であるが、樹脂分及び粘着物の付着を制御するにはある程度の成果しかあげられない。樹脂分及び粘着物の付着を防止するポリマー組成物の必要性が、依然として存在する。
【0005】
樹脂分及び粘着物は、機械の稼働性及び紙の品質の両方に影響を与え得る、製紙の湿潤段階(wet end)における妨害物質である。本明細書で使用される用語「樹脂分」は、パルプ化過程で繊維から放出される木材由来の疎水性粒子のコロイド分散を称し、木材ピッチとも呼ばれる。木材ピッチには、脂肪酸、樹脂酸、それらの不溶性の塩、及び脂肪酸とグリセロールとのエステル、ステロール、並びにその他の脂肪及びろうが含まれる。樹脂分の疎水性成分、特にトリグリセリドは、そのような樹脂分の存在が付着問題に至ることになるかどうかを決定する主な要因の一つであると考えられる。付着形成樹脂分は、しばしば、有意に多い量のトリグリセリドを含有する。
【0006】
本明細書で使用する用語「粘着物」は、接着剤及びコーティングのような、再生繊維の成分から生じる、粘着性材料及び妨害物質を称する。粘着物は、被覆損紙、ボール紙製造用の再生古紙、及び脱インキパルプ(DIP)から生じることができる。被覆損紙からの粘着物は、時には、白色ピッチと呼ばれる。樹脂分及び粘着物の付着は、しばしば、最終製品の欠陥及び抄紙機の不稼働時間に至り、工場の利益損失を引き起こす。これらの問題は、製紙工場が、保護及び環境を理由にプロセス水システムを「閉鎖」する場合に、より顕著となる。樹脂分及び粘着物がシステムから制御された様式で連続的に除去されなければ、これらの妨害物質は、蓄積して、最終的に付着及び稼働性の問題に至ることになる。現在実施されている技術は、樹脂分又は粘着物をこれらが凝集する機会を得る前に繊維に固定するか、あるいは、代わりに樹脂分又は粘着物をポリマーで被覆して非粘着性にし、したがって凝集できなくすることに基づいている。
【0007】
3つの化学的な方法が、脂肪分及び粘着物の付着を制御するために製紙工場で一般的に使用されている:
1)非粘着化、
2)安定化、
3)固定。
しかし、これらの方法は、互いに相容れないことがあるので一般には一緒に使用されない。非粘着化において、化学薬品は、樹脂分及び粘着物の周りに水の境界層を作り付着性を低減するために使用される。非粘着化は、タルク及びベントナイトのような樹脂分吸着剤の添加によって達成することができる。しかし、タルクのような樹脂分吸着剤は、タルク/樹脂分粒子が界面活性剤及び水溶性ポリマーを持つ紙シートに保持されない場合では、結局のところ樹脂分付着の問題に寄与することになり得る。安定化では、界面活性剤及び分散剤が、コロイド安定性を化学的に向上し、樹脂分及び粘着物が凝固又は付着することなくプロセスを通過することを可能にするために使用される。
【0008】
固定では、ポリマーが、樹脂分及び粘着物を繊維に固定し、白水系から除去するするために使用される。製紙システムにおける妨害物質は、通常、アニオン性の性質があり、時には、アニオン性の屑又はカチオン要求(cationic demand)と呼ばれる。アニオン性の屑は、付着形成又は化学添加剤への妨害を通して多様な方法で製紙に悪影響を与える、コロイド状(樹脂分及び粘着物)の溶解した物質からなる。カチオン性ポリマーによるカチオン要求を低減することによるアニオン性の屑の除去は、固定を介した付着制御の一つの方法である。樹脂分及び粘着物制御のためにカチオン性ポリマー凝固剤を使用する利点は、樹脂分及び粘着物が、最終紙製品の繊維の間に分散している微視的粒子の形態でシステムから除去されることである。
【0009】
カチオン性ポリマーは、通常、樹脂分及び粘着物を固定によって制御する固定剤として使用される。ポリビニルアルコールのようなPCT特許出願第200188264号で考察されている非イオン性ポリマー及びポリアクリルアミド−酢酸ビニルのようなコポリマーが、非粘着化による粘着物制御のために開発及び使用されてきた。米国特許第6,051,160号は、おそらく樹脂分安定化機構による樹脂分付着制御に使用される、スチレンと無水マレイン酸とのコポリマーのような疎水的に修飾されたアニオン性ポリマーを開示する。
【0010】
DADMACのホモポリマーが、通常、アニオン性の屑の制御又は樹脂分の制御のために、単独で又は他の成分と共に固定剤として使用される。
【0011】
カナダ特許第1,194,254号は、ポリDADMACによる水性パルプ中の木材ピッチ粒子の低減方法を教示する。この特許は、再生二次繊維からの粘着物含有パルプのための、ポリDADMACの使用を教示していない。製紙業者は、今日、増加する再生二次繊維の使用に直面している。過去に使用された未使用繊維と異なって、再生繊維は、にかわ、接着剤、及びコーティング結合剤のような多くの供給源からの粘着物を含有する。カナダ特許は、また、DADMACホモポリマーの使用のみに限定されている。
【0012】
米国特許第5,989,392号は、損紙含有パルプ中のアニオン性の屑及び樹脂分の、付着を制御するための架橋DADMACポリマーの使用を教示する。パルプ濾液の濁度試験が、樹脂分付着制御におけるポリマーの性能を評価するために使用される。従来の線状ポリDADMACに勝る架橋又は分岐鎖ポリDADMACの溶液の改善された効率が示される。使用される架橋又は分岐鎖ポリDADMACは、トリアリルアミン塩酸塩又はメチレンビスアクリルアミドのようなポリオレフィン性架橋用モノマーを使用して調製される。
【0013】
米国特許第4,964,955号は、パルプ化及び製紙における樹脂分を低減するために、ポリDADMACとカオリン粘土との水性スラリーを使用する方法を開示する。
【0014】
米国特許第4,913,775号は、水溶性で実質的に線状のカチオン性ポリマーを剪断段階の前に製紙用紙料に適用し、次に剪断段階の後にベントナイトを導入して再凝集する方法を提供する。この方法は、向上された排水、また良好な形成及び保持を提供する。商標名HYDROCOLでCiba Specialty Chemicalsにより商業化されているこの方法は、10年を超える間成功を収めてきた。しかし、この方法は、保持及び排水に関連し、樹脂分及び粘着物の制御に関連しない。ベントナイト及びカチオン性ポリマーは、通常、製紙過程において薄い紙料に添加される。
【0015】
米国特許第4,795,531号は、低分子カチオン性有機ポリマーを完成紙料に添加し、次にコロイドシリカ及び少なくとも500,000の分子量の高分子荷電アクリルアミドコポリマーに添加する製紙方法を記載する。
【0016】
米国特許第5,256,252号は、DADMACポリマーと共に酵素(リパーゼ)を使用する、樹脂分付着の制御方法を開示する。この特許は、この方法に必要な成分である酵素の使用に一層関連している。濾液濁度試験が、樹脂分制御性能を評価するために使用される。
【0017】
米国特許第5,230,774号は、DADMACのホモポリマーと炭酸アンモニウムジルコニウムとのブレンドを添加することによる、樹脂分付着の制御方法を指向する。ポリマーの中にDADMACのコポリマーは存在しない。
【0018】
米国特許第5,131,982号は、白色ピッチを制御する被覆損紙処理のための、DADMACホモポリマー及びコポリマーの使用を教示する。この特許は、DADMACポリマーを再パルプ化被覆損紙に添加し、次に、紙シートを形成する前に、処置された被覆損紙パルプを他の繊維供給源と混合する方法を教示する。機械パルプ及び脱インキ再生パルプについての樹脂分及び粘着物制御のための、DADMACポリマーの使用は、教示されていない。特許請求されるコポリマーは、主に、DADMACとアクリルアミドとのコポリマーであって、アクリルアミドが25%を超えるものである。
【0019】
欧州特許出願第464,995号は、木材ピッチ付着又は天然樹脂分を制御するための、DADMACとアクリル酸塩との両性コポリマーの使用を開示する。濾液濁度試験は、樹脂分付着制御性能を評価するために使用される試験方法のうちの1つである。開示されるポリマーは、再生パルプ及び被覆損紙における粘着物及び白色ピッチの付着制御での使用について特許請求されていない。
【0020】
PCT特許出願第200034581号は、製紙過程における保持/排水/形成助剤としてのDADMAC、アクリルアミド及びアクリル酸の両性ターポリマーの使用を教示する。ターポリマーは、また、被覆損紙の白色ピッチを制御するために教示される。DADMAC、アクリルアミド及びアクリル酸のターポリマーは、白色ピッチを処理するために開示され、ここでターポリマーは、25%を超えるアクリルアミド及び50%以下のDADMACを含有する。濾液濁度試験が、ポリマーの白色ピッチ付着制御性能を求めるために使用される。
【0021】
欧州特許出願第058622号は、DADMAC、DADEAC、アクリルアミド及びアクリル酸のエマルションコポリマーによる、製紙過程の際の木材ピッチの付着を低減又は防止する方法を教示する。このコポリマーは、45〜50%のアクリルアミド、50重量%以下のDADMAC、及び少なくとも2重量%の、現在市販されていない、希なモノマーであるDADEAC(ジアリルジエチルアンモニウムクロリド)を含有する。再生繊維の粘着物制御のためのコポリマーの使用について何も述べられていない。
【0022】
米国特許第4,505,828号は、水攻法による石油回収における及び製紙における排水助剤としての、アクリルアミド、アクリル酸及びジメチルアミノエチルメタクリレートから作製される逆エマルション両性コポリマーの使用を教示する。DADMAC、アクリルアミド及びアクリル酸の両性ターポリマー溶液の使用は、教示されていない。この特許は、製紙における樹脂分及び粘着物の付着制御に関連していない。
【0023】
米国特許第3,639,208号は、アクリルアミドとDADMACとのコポリマーを部分的に加水分解することにより得られる、DADMAC、アクリルアミド及びアクリル酸の所定の両性ターポリマーの製法及び組成物を開示する。コポリマー及びその加水分解ターポリマーは、70%未満のDADMACを含有する。得られるターポリマーは、製紙において歩留向上剤として使用される。樹脂分制御のための、両性ターポリマーの使用は、教示されていない。
【0024】
米国特許第5,837,100号は、保持及び/又は排水を改善する被覆損紙処理のための、分散ポリマーと凝固剤とのブレンドの使用を教示する。水分散ポリマーは、アクリルアミドと第四級ジメチルアミノエチルアクリレートとのコポリマーである。凝固剤は、エピクロロヒドリンとジメチルアミンとのコポリマーである。濁度低減試験が、ポリマーの活性効率を求めるために使用される。
【0025】
増大した樹脂分及び粘着物固定力を持つ固定剤が要求されている。付着制御のために従来から使用されているミョウバン、デンプン及び低分量カチオン性凝固剤が、アニオン性の屑及び有害物質(樹脂分及び粘着物)を中和し、錯体を形成することができる。しかし、これらは樹脂分と粘着物の錯体を繊維に固定するために、十分な電荷及び/又は分子量を持ち得ない。繊維に強く固定されていない場合、錯体は系の中で濃縮されることになり、付着の問題に至ることになる。
【0026】
本発明による稼働性の改善のための固定剤における革新は、樹脂分及び粘着物の制御のために高い固定力を持つ多数のジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)コポリマーを開発するに至った。これらのDADMACポリマーは、製紙水系から有害な樹脂分及び粘着物を除去するために、既存の市販の固定剤製品よりも相当に大きな力を有する。ポリマーは、ケイ質材料と組み合わされると、また、有効である。
【0027】
上記の検討は、製紙において有効なポリマーにより樹脂分及び粘着物の付着を制御する必要性があることを示している。樹脂分及び粘着物の付着を防止することになるポリマー組成物の探求が経験した成果は限られたもので、探求は、しか上げられず、依然として続いている。今、アクリル酸(AA)単位がDADMACコポリマー含有量の重量に基づいて約0.2〜約30%の量である、高いDADMAC及びアクリル酸単位を有する両性DADMACコポリマーが、樹脂分及び粘着物の低減に非常に有効であることが見出された。両性ポリマーは、それら自体で使用される場合、及びケイ質材料と組み合わされる場合に、有効である。
【0028】
固定及びアニオン性の屑の低減の両方によって付着を制御できる二元機能ポリマーが、望ましい。本明細書中に記載される本発明の水溶性の両性ポリマーは、これらが、固定及び電荷中和のために、カチオン性官能基に加えてアニオン性及び非イオン性水素結合基を含有するので、この二重の目的を満足させる。ポリマーは、また、ケイ質材料と組み合わされると有効である。
【0029】
両性ポリマーは、同じポリマー分子中に陽及び陰電荷の両方を含有する高分子電解質である。両性DADMACポリマーは、形成されたポリマーに陰電荷も含有する、DADMACポリマーである。
【0030】
本発明の一つの目的は、pHの変化に応答して、ポリマーに可変の電荷密度及び疎水性を付与する、アニオン基を含有するDADMACの両性ポリマーにより製紙において樹脂分及び粘着物付着の制御を提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、イオン電荷相互作用に加えて、水素結合を通して追加的な相互作用を提供できる、非イオン性官能基を更に含有するDADMACの両性ポリマーを、製紙において樹脂分及び粘着物付着の制御のために提供することである。
【0032】
しがって、本発明は、製紙において樹脂分及び粘着物付着の制御の方法であって、以下:
【0033】
【化2】

【0034】
〔式中、Xはアニオンであり;
Mは、水素、アンモニウム、ナトリウム又はカリウムであり;
Rは、水素又はメチルであり;
1は、メチル又はエチルであり;
nは、約70〜約99.8重量%であり、
mは、約0.2〜約30重量%であり、そして
pは、約0〜約30.8重量%であり、
ここで、両性ポリマーの総重量に基づいてn+m+p=100%である〕
で示される両性ポリマーを含む組成物を完成紙料に添加することを含む方法を包含する。
【0035】
好ましくは、XはClであり、
Mはナトリウムであり、
両性ポリマーの総重量に基づいて、
nは、約85〜約98重量%であり、
mは、約1〜約15重量%であり、そして
pは、約1〜約10重量%である。
【0036】
両性ポリマー組成物は、少なくとも1種のケイ質材料を更に含むことができる。
【0037】
両性ポリマーは、完成紙料に、ケイ質材料の前、後、又はそれと同時に添加することができる。例えば、両性ポリマーは、ケイ質材料を完成紙料に別個に添加する前に、完成紙料に添加することができる。
【0038】
カチオン性電荷対アニオン性電荷の比率とは、両性ポリマーを形成する、1種のカチオン性モノマー又は複数のカチオン性モノマーのモルを1種のアニオン性モノマー又は複数のアニオン性モノマーのモルにより割った比率を言う。
【0039】
本発明者たちは、カチオン電荷対アニオン電荷の比率が約1.2を超えるカチオン性の両性DADMACポリマーが、樹脂分及び粘着物を微視的粒子の形態でシステムから除去することによって脂肪分及び粘着物の付着を制御するのに使用して良好な結果を得ることができることを見出した。
【0040】
本発明は、製紙において脂肪分及び粘着物の付着を制御及び防止するために、水溶性の両性ポリマーを含む組成物を適用することを指向するものである。その方法は、組成物を添加して、木材ピッチ付着を制御するために機械パルプを処理する、粘着物又は脂肪分付着を制御するために被覆損紙を処理する、及び粘着物付着を制御するために再生パルプを処理する工程を含む。両性ポリマーを含む組成物は、更に、ケイ質材料を含むことができる。ケイ質材料は、両性ポリマーの後、前、又はそれと同時に添加することができる。ケイ質材料は、両性ポリマーの後、前、又はそれと同時に、別個に添加することができる。
【0041】
カチオン性の両性ポリマーは、例えば、DADMACと(メタ)アクリル酸及び/又はアクリルアミドとのラジカル重合により作製される。
【0042】
本発明において、両性ポリマーは、カチオン電荷とアニオン電荷の両方を含有する任意のポリマーである。両性ポリマーは、総カチオン電荷含有量が総アニオン電荷よりも多い両性ポリマーである。両性ポリマーは、カチオン性とアニオン性のモノマーから誘導される2種のモノマーから形成されるポリマー、又はカチオン性、アニオン性及び非イオン性のモノマーから誘導される3種のモノマーのターポリマーにすることができる。
【0043】
カチオン性ポリマーは、電荷中和によってアニオン性の屑を除去するために製紙において通常使用される。アニオン性の屑は、付着形成又は化学添加剤への妨害を通して多様な方法で製紙に悪影響を与える、コロイド状(樹脂分及び粘着物)の及び溶解した物質からなる。コロイド粒子を繊維に固定し、カチオン性ポリマーによるカチオン要求を低減することによってアニオン性の屑を除去することは、樹脂分及び粘着物の付着制御の一つの方法である。樹脂分及び粘着物制御のためにカチオン性ポリマー凝固剤を使用する利点は、樹脂分及び粘着物が、最終紙製品の繊維の間に分散している微視的粒子の形態でシステムから除去されることである。
【0044】
発明者たちは、樹脂分及び粘着物の紙繊維への固定及び電荷中和が、約1.2を超える、好ましくは約4を超える、最も好ましくは約5を超える、カチオン電荷対アニオン電荷のモル比を持つ両性コポリマーの使用により向上できることを見出した。両性コポリマーは、ジアリルジアルキルアンモニウム化合物と、(メタ)アクリル酸(及び/又はその塩)と、場合によりアクリルアミドとの重合により形成される。例えば、ジアリルジアルキルアンモニウム化合物は、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)である。
【0045】
本発明の両性ポリマーは、以下の構造:
【0046】
【化3】

【0047】
〔式中、Xはアニオンであり;
Mは、水素、アンモニウム、ナトリウム又はカリウムであり;
Rは、水素又はメチルであり;
1は、メチル又はエチルであり;
nは、約70〜約99.8重量%であり;
mは、約0.2〜約30重量%であり、そして
pは、約0〜30重量%であり、ここで、両性ポリマーの総重量に基づいてn+m+p=100%である〕
で表わされることができる。
【0048】
好ましくは、XはClであり;
Mはナトリウムであり;
両性ポリマーの総重量に基づいて、
nは、約85〜約98重量%であり;
mは、約1〜約15重量%であり、そして
pは、約1〜約10重量%である。
【0049】
上記のポリマーの単位nは、ジアリルジアルキルアンモニウム化合物から選択されるカチオン性モノマーから誘導される単位を表わす。
【0050】
例えば、カチオン性モノマーは、ジアリルジエチルアンモニウムハロゲン化物又はジアリルジメチルアンモニウムハロゲン化物にすることができる。
【0051】
上記のポリマーの単位mは、加水分解されたアクリルアミド、並びに(メタ)アクリル酸及び/又はそれらの塩から選択される少なくとも1種のアニオン性モノマーから誘導される単位を表わす。
【0052】
本発明に従って使用するための両性DADMACポリマーは、アニオン電荷を超えるカチオン電荷を含有するものにすることができる。n/mのモル比は、例えば約1.2を超える、約4を超える、又は約5を超えることができる。
【0053】
両性DADMACポリマーは、約10,000〜20,000,000、約100,000〜約2,000,000、又は約300,000〜約2,000,000の範囲の重量平均分子量を有することができる。
【0054】
両性DADMACポリマーは、乾燥固形分に基づいて約0.01〜約20lbs/ton(0.0045〜9.1kg/Mg)、又は約0.2〜約20lbs/ton(0.091〜9.1kg/Mg)の範囲の用量で使用できる。
【0055】
両性ポリマーの重合は、適切なフリーラジカル開始剤を使用する、水溶液重合、油中水逆エマルション重合、又は分散重合によって実施できる。適切な開始剤の例には、過硫酸アンモニウム(APS)のような過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びt−ブチルペルオキシピバレートのような過酸化物;2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸、及び2,2′−アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ開始剤;並びにt−ブチルヒドロペルオキシド/Fe(II)及び過硫酸アンモニウム/重亜硫酸塩のようなレドックス開始剤系が含まれる。過硫酸アンモニウム(APS)を使用する水溶液重合が、例えば、DADMAC、(メタ)アクリル酸及びアクリルアミドから両性ポリマーを調製するために好ましい方法である。
【0056】
(メタ)アクリル酸モノマーは、その酸形態で重合に使用できる。次に、生成された酸ポリマー溶液は、適切な塩基により中和されて所望のpH及び対イオンにすることができる。代わりに(メタ)アクリル酸モノマーは、重合の前に部分的に又は完全に中和できる。(メタ)アクリル酸モノマー単位の重合に適切な塩基の例には、NaOH、KOH、及び(NH4)OHが含まれる。
【0057】
重合は、酸素の不在下で実施してもよい。酸素は、撹拌しながら真空をかけるか、又は窒素若しくはアルゴンのような不活性ガスでパージすることによって、反応媒体から除去することができる。次に、重合は不活性ガスのシール下で実施することができる。
【0058】
ケイ質材料は、ケイ酸ベースの粒子、シリカミクロゲル、コロイド状シリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、ポリアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ポリホウケイ酸塩、及びゼオライトの内の1種以上の材料から選択されることができる。このケイ質材料は、アニオン性微粒子材料の形態でよい。代わりに、ケイ質材料はカチオン性シリカでよい。
【0059】
本発明のもう一つの実施態様において、ケイ質材料は、シリカ及びポリケイ酸塩から選択することができる。シリカは、例えば米国特許第4,961,825号に記載されている任意のコロイド状シリカであってもよい。ポリケイ酸塩は、例えば米国特許第4,388,150号に記載されているコロイド状ケイ酸であってもよい。
【0060】
本発明のポリケイ酸塩は、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を酸化することにより、調製することができる。例えば、別名活性シリカとしても知られているポリケイ酸ミクロゲルは、鉱酸又は酸交換樹脂、酸性塩、及び酸性ガスの使用により、アルカリ金属ケイ酸塩を約8〜約9のpHに部分的に酸性化することにより、調製することができる。十分な三次元網状構造を形成させるために、新たに形成されたポリケイ酸を熟成させることが望ましくなり得る。一般に、熟成の時間は、ポリケイ酸がゲル化するためには不十分である。特に好ましいケイ質材料には、ポリアルミノケイ酸塩が含まれる。ポリアルミノケイ酸塩は、例えば、米国特許第5,176,891号に記載されているように、初めにポリケイ酸微粒子を形成し、次にアルミニウム塩で後処理することによって作製される、例えば、アルミン酸化ポリケイ酸であってもよい。そのようなポリアルミノケイ酸塩は、アルミニウムが優先的に表面に位置しているケイ酸微粒子からなる。
【0061】
代わりに、ポリアルミノケイ酸塩は、例えば、米国特許第5,482,693号に記載されているように、アルカリ金属ケイ酸塩を酸及び水溶性アルミニウム塩と反応させることにより形成される、1000m2/gを超える表面積を持つポリ粒子状(polyparticulate)ミクロゲルであってもよい。典型的には、ポリアルミノケイ酸塩は、約1対約10〜約1対約1500(約1:約10〜約10:約1500)のアルミナ:シリカのモル比を有することができる。
【0062】
ポリアルミノケイ酸塩は、約1.5〜約2.0重量%の水溶性アルミニウム塩、例えば硫酸アルミニウムを含有する濃硫酸を使用して、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を約pH9〜約10に酸性化することによって形成することができる。水溶液は、三次元ミクロゲルを形成するため十分に熟成させることができる。典型的には、ポリアルミノケイ酸塩は、水性ポリケイ酸塩を希釈して約0.5重量%のシリカにする前に、約2時間半まで熟成させる。
【0063】
ケイ質材料は、例えば、WO−A−9916708に記載されているように、コロイド状ホウケイ酸塩であってもよい。コロイド状ホウケイ酸塩は、アルカリ金属ケイ酸塩の希薄水溶液をカチオン性交換樹脂と接触させてケイ酸を生成し、次にアルカリ金属ホウ酸塩の希薄水溶液をアルカリ金属水酸化物と一緒に混合してヒール(heel)を形成し、約0.01〜約30%のB23を含有し、約7〜約10.5のpHを有する水溶性を形成することによって、調製することができる。
【0064】
ケイ質材料がシリカ又はケイ酸塩型材料である場合、シリカ質材料は、10nmを超える粒径を有する。シリカ又はケイ酸塩材料は、例えば、約20〜約250nmの範囲、又は約40〜約100nmの範囲の粒径を有する。
【0065】
ケイ質材料は、膨張性粘土にすることができる。膨張性粘土は、例えば、典型的にはベントナイト型粘土であることができる。好ましい粘土は、水中で膨張性であり、それには、天然に水膨張性である粘土、又は例えば水膨張性にするためにイオン交換により変性されうる粘土が含まれる。適切な水膨張性粘土には、しばしば、ヘクトライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト、アタパルジャイト及び海泡石と呼ばれる粘土が挙げられるが、これらには限定されない。これらの粘土は、天然に存在する又は合成のいずれかであってもよい。合成ヘクトライト粘土の例は、Southern Clay Products, Inc., U.S.A.から入手可能なLAPONITEである。典型的なアニオン性膨張粘土は、米国特許第4,753,710号及び同第4,913,775号に記載されている。
【0066】
粘土は、ベントナイト型粘土であってもよい。ベントナイトは、アルカリ金属ベントナイトとして提供されてもよい。ベントナイトは、天然であっても、又は合成であってもよい。天然に存在するベントナイトは、ナトリウムベントナイトのようなアルカリベントナイト、又は通常はカルシウム若しくはマグネシウム塩である、アルカリ土類金属塩としてのいずれかであってもよい。一般に、アルカリ土類金属ベントナイトは、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムによる処理で活性化される。活性化された膨張性ベントナイト粘土は、しばしば、乾燥粉末として製紙工場に提供される。代わりに、ベントナイトは、例えば、米国特許第5,223,098号、同第6,024,790号及び同第6,045,657号に記載されているように、例えば少なくとも約15〜約20%の固形分の、活性ベントナイトのハイソリッド流動性スラリーとして提供されてもよい。
【0067】
ベントナイトは、水性ベントナイトスラリーとしてセルロース懸濁液に適用されてもよい。ハイソリッド流動性スラリーとして製紙工場に供給される場合、スラリーは、通常、適切な濃度に希釈される。典型的には、ベントナイトスラリーは、10重量%までのベントナイトを含む。ベントナイトスラリーは、普通、少なくとも約3重量%のベントナイト粘土、典型的には約5重量%のベントナイトを含むことになる。ベントナイトは、セルロース懸濁液に、両性ポリマーの添加の前又は後のいずれかで添加することができる。ベントナイトは、また、両性ポリマーと共に、同時ではあるが、別個に添加することもできる。
【0068】
望ましくは、ケイ質材料は、懸濁液の乾燥重量に基づいて、少なくとも約100重量ppmの量で適用される。望ましくは、ケイ質材料の用量は、約10,000重量ppm以上程に多くしてもよい。本発明の一つの好ましい態様では、約100〜約500重量ppmの用量が効果的であることが判明している。代わりに、例えば約1000〜約2000重量ppmのより多い用量のケイ質材料が、望ましくなり得る。
【0069】
製紙工業では、用量は、頻繁に、完成紙料の乾燥重量に基づいてkg/tonの単位で表わされることがよくある。この単位で表わすと、完成紙料に添加されるケイ質材料の量は、完成紙料の乾燥重量に基づいて約0.2〜約10kg/ton(0.2〜10kg/Mg)、約1.0〜約6kg/ton(1.0〜6kg/Mg)、又は約1.0〜約4kg/ton(1.0〜4kg/Mg)の範囲になり得る。
【0070】
両性ポリマー対ケイ質材料の重量対重量比は、約0.2対約10、約1対約1〜約1対約4、又は約1対約2の範囲にすることができる。例えば、固定剤又はポリマーは、約0.5〜約2kg/ton(0.5〜2kg/Mg)の範囲であり、ケイ質材料は約1〜約2kg/ton(1〜2kg/Mg)の範囲であることができる。
【0071】
付着の制御には、ケイ質材料及びポリマー固定剤は、好ましくは、製紙過程の間に濃厚な紙料(約2〜4%のセルロース濃度)に添加される。
【0072】
重合法に使用されるフリーラジカル開始剤の量は、総モノマー濃度及び使用されるモノマーの種類に依存し、モノマー全体の約99重量%を超える変換率を達成するため、投入された総モノマーの約0.2〜約5.0重量%の範囲にすることができる。
【0073】
本発明の具体的な実施態様が以下の実施例により例示される。これらの実施例は、本発明の例示であり、本発明を制限することを意図しない。
【0074】
実施例
ポリマーの合成
実施例1
両性DADMACポリマー1〜10及び対照DADMACホモポリマーの合成
ポリマー1を作製する手順をこの実施例で記載した。他のポリマーを、同じ手順に従って作製したが、異なるモノマー重量比、開始剤の投入、及び温度を使用して、異なる組成及び分子量を有するポリマーを得た。ポリマーの分子量は、20%のポリマー固形分で体積粘度率又はBrookfield粘度(BV)を使用して、測定した。高い20%BV値は高いMWを示す。合成されたポリマーの特性を表1に示す。
【0075】
冷却器、温度計、窒素入口及びオーバーヘッド撹拌機を備えた1リットル反応器に、66%モノマーDADMAC 453.86g、アクリル酸15.8g、脱イオン水59g及びVersene(Na4EDTA)0.15gを投入した。25%NaOH溶液35gを反応器に室温でゆっくりと加え、アクリル酸を中和した。重合混合物を窒素でパージし、撹拌しながら約90℃の温度に加熱した。14.5%過硫酸アンモニウム(APS)水溶液36gを反応器に165分間かけてゆっくりと投入した。反応温度を約100℃を超えて上昇させ、次にAPS投入時間の間は100〜110℃に維持した。APS投入の後に、反応混合物を脱イオン水で固形分約40%に希釈し、90℃で約30分間保持した。次に、メタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisufite)5.6gを含有する水溶液を、40分かけて添加した。反応を90℃で更に30分間保持して、重合を完了させた(99%を超える変換率)。ポリマー溶液を十分な水で固形分約35%に希釈した。この生成物は、固形分35.5重量%を有し、8,800cpsの25℃ Brookfield粘度及び20%固形分での約400cpsの25℃ Brookfield粘度(20%BV)を有した。20%BVは、ポリマーの分子量に比例し、したがって、データは、異なる溶液ポリマーの分子量を比較するために使用した。特に異なる記述がない限り、全ての百分率は総重量に基づく。全てのモノマー比率は、モノマーの総重量に基づく。
【0076】
【表1】


1.DADMACのホモポリマー
2.1000〜3000cpsの粘度、スピンドルLV3を30rpmで使用;3000〜8000cpsの粘度、スピンドルLV3を12rpmで使用;8,000〜16,000cpsの粘度、スピンドルLV3を6rpmで使用。
*M1=DADMAC;M2=アクリル酸(AA);M3=アクリルアミド
【0077】
性能評価
表2に掲記する市販製品も比較のため評価に使用した。
【0078】
【表2】


1.DADMAC 95重量%とアクリルアミド5重量%とのコポリマー
2.DADMAC 50重量%とアクリルアミド50重量%とのコポリマー
【0079】
真空排水濾液濁度試験を、本発明の両性ポリマー及び市販の固定剤製品の性能、並びに脂肪分、粘着物及び他の汚染物を繊維に固定し、したがってこれらの汚染物が製紙の間に付着するのを制御及び防止するそれらの能力を実証するために使用した。詳細な試験手順を下記に示す。
【0080】
1.3〜5%稠度の完成紙料約250mLを、バッフルを備えたBrittジャーの中に、計量して入れる。1000rpmで撹拌するようにに設定したIKAミキサーによって適切な混合を供する。
2a.必要な量のポリマーを、撹拌した濃厚な紙料に加え、2分間混合させる。
2b.場合により、必要な量のケイ質材料を、撹拌した濃厚な紙料に加え、2分間混合させる。
3.次に処理した濃厚な紙料を、真空下でWhatman 541濾紙(直径11cm、粗目−粒子>20〜25ミクロンについて保持)により濾過する。
4.真空濾過を、「濡れ線」が消えるまで、又は約200mLの濾液を回収するまで続ける。
5.濾液の濁度を適切な濁度計により測定する。
6.濾液のカチオン電荷要求(CCD)をコロイド滴定により決定する。
【0081】
使用される用量は、パルプ固形分1トン(Mg)(乾燥重量)当たりの活性ポリマーの重量である。
【0082】
濾液濁度が低いほど、用いた処理の樹脂分及び粘着物制御が大きく、したがって、使用したポリマーの性能がより良好である。
【0083】
実施例2
この実施例で試験した試料は、全て、約400cpsの20%BVにより表わされる、相対的に低い分子量を有する。試験を、深刻な粘着物の付着問題に悩むライナーボード工場からの100%再生古紙段ボール(OCC)完成紙料で実施した。この実施例は、同様のMWを持っているが、両性DADMACコポリマーポリマー1が、対照のDADMACホモポリマーよりも濁度の低減を良好に行うことを示した。表2Bにおける対照、ポリマー1及びポリマー2についての結果は、AAアニオン性成分の組み込みによる性能の改善が、AA含有量が10%を超えると低減することを実証した。
【0084】
【表3】

【0085】
実施例3
この実施例で試験した試料は、全て、約600cps超の20%BVにより表わされる、より高い分子量を有する。試験を、製紙工場からの100%再生脱インキパルプ完成紙料で実施した。この実施例は、AAアニオン性成分の組み込みによる性能の改善が、AA含有量が10%を超えると低減することを更に実証した。表3Aを参照すること。製紙工場で付着制御に通常使用されている市販の固定剤(Alcofix 159、中MWポリアミン)もこの試験に入れた。本発明のポリマー3は、濁度の低減において市販の固定剤よりも相当に良好な性能をもたらした。
【0086】
【表4】

【0087】
実施例4
被覆損紙に関する性能
本発明のDADMACコポリマーの白色ピッチ制御の性能を、異なる種類の被覆損紙で評価した。試料を、以下の3種類の損紙で試験した。
・ 45# Pub Matte、軽量上質紙
・ 38# DPO、重量砕木含有
・ 70# DPO、重量砕木含有
ポリマー処理のそれぞれの用量について、濾液の濁度及びカチオン要求を測定した。試験の結果を表4A、4B及び4Cに示す。
【0088】
【表5】

【0089】
既存の市販の固定剤製品(Alcofix 269、Alcofix 110及びAlcofix 159)の試験データも比較のために得て、該データは、本発明のコポリマーを使用する利点を示す。本発明のコポリマーは、試験した全ての市販の製品よりも相当に良好な性能をもたらした。
【0090】
実施例5
再生脱インキパルプ(DIP)完成紙料に関する性能
既存の市販の固定剤製品Alcofix 161、DADMACとアクリルアミドとのコポリマーに勝る両性DADMACコポリマーの性能を示すために、再生脱インキパルプ(DIP)の試験データを得た。新規のDADMACベースの系両性ポリマー試料は、市販の製品よりも相当に良好な性能をもたらした。市販のDADMACコポリマー(Alcofix 161)に勝る平均濁度低減約50%までの改善を得た。
【0091】
表5の濾液濁度(FT)の結果は、両性DADMACコポリマーによるDIP完成紙料処理を示し、市販のDADMACコポリマー(Alcofix 161)で処理された完成紙料と比較した。
より低いFTは、粘着物の付着制御についてより良好な性能を示す。
【0092】
【表6】

【0093】
実施例6
TMP、DIP及びTMP/DIPミックス完成紙料に関する性能
本発明の両性DADMACコポリマーを、9個の市販製品と一緒に、製紙工場からの3種類の完成紙料(TMP、DIP及びDIP&TMPミックス)に関して評価した。試験に含まれる多様な市販固定剤製品は、異なる分子量を有する3種のDADMACホモポリマー、異なるモノマー比率及び分子量を有する3種のDADMACとアクリルアミドとの2種のコポリマー、異なる分子量及び構造を有する3種のポリエピアミン、並びに1種のカチオン性デンプンであった。試験される9種の市販固定剤の中で、DADMACコポリマーであるAlcofix 161が、市販製品のうちで一貫して最良の性能を示した。したがって、本発明の両性DADMACコポリマーの結果は、既存の市販の固定剤製品に勝る性能を示すために、Alcofix 161のみと比較した。表6A、B及びCから判るように、本発明の両性DADMACコポリマーは、3種の完成紙料全てについて最良の市販固定剤よりも相当に良好な性能を示した。本発明の両性DADMACコポリマーを使用すると、Alcofix 161に勝る約20〜約74%より大きい濁度除去の改善が観測された。
【0094】
【表7】

【0095】
実施例7
固定剤及びベントナイトの異なる用量(乾燥固形分に基づくkg/ton(kg/Mg))での100%TMPの処理済完成紙料の濾液濁度(FT)。
濁度及び総エステル濃度(樹脂分の測度)を濾液で決定し、表7で比較した。試験手順は、2%稠度の完成紙料を試験し、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して、残留エステル、トリグリセリドエステル及び総エステル樹脂分濃度を定量した以外は、表2に示される市販の固定剤について実施したものと実質的に同じ手順であった。
【0096】
GC分析を、入口温度300℃及びFID検出器の温度350℃のDB−5HT 5m×0.25mm×0.10μmカラムで実施した。加熱プログラム:初期温度100℃で1分間保持し、次に15℃/分で350℃まで上昇させ、15分間保持した。
【0097】
【表8】


1.DADMAC、アクリル酸及びアクリルアミドのターポリマー。
2.ベントナイトは、Ciba Specialty Chemical Corp.から商品名HYDROCOL 2D1で供給された。HYDROCOL 2D1は、水性スラリーの総重量に基づいて5%水性スラリーとして供給された。
【0098】
実施例8
ポリマー及びベントナイトによる被覆損紙の処理
完成紙料は、主に漂白したTMPであった。完成紙料を、約12〜20%の被覆損紙と組み合わせ、製紙過程からの白水を使用して約3%の稠度に希釈した。ベントナイトを、5%水性スラリーとして1.5kg/tonの用量で最初に加え、続いてポリマー10を加えた。表8は、両性ポリマーがベントナイトと組み合わされる場合、濁度の改善を示した。
【0099】
【表9】


1.ベントナイトは、Ciba Specialty Chemical Corp.から商品名HYDROCOL 2D1で供給された。
【0100】
上記の記載及び実施例は、本発明の例示であり、制限することを意図しないことを理解するべきである。本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変形及び変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙において樹脂分及び粘着物の付着を制御する方法であって、以下の構造(I):
【化1】


〔式中、Xはアニオンであり;
Mは、水素、アンモニウム、ナトリウム又はカリウムであり;
Rは、水素又はメチルであり;
1は、メチル又はエチルであり;
nは、約70〜約99.8重量%であり、mは、約0.2〜約30重量%であり、そして
pは、約0〜約30重量%であり、
ここで、両性ポリマーの総重量に基づいてn+m+p=100%である〕
により表わされる両性ポリマーを含む組成物を、シート形成の前に完成紙料に添加する行程を含む、方法。
【請求項2】
XがClであり、
Mがナトリウムであり、
nが、約85〜約98重量%であり、
mが、約1〜約15重量%であり、そして
pが、約0〜約10重量%である
請求項1記載の方法。
【請求項3】
組成物がケイ質材料を更に含む、請求項1記載の更なる方法。
【請求項4】
両性ポリマーが、完成紙料に添加され、続いてケイ質材料が添加される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ケイ質材料が、完成紙料に添加され、続いて両性ポリマーが添加される、請求項3記載の方法。
【請求項6】
ケイ質材料がアニオン性微粒子材料である、請求項3記載の方法。
【請求項7】
ケイ質材料が、シリカベースの粒子、シリカミクロゲル、コロイドシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリケイ酸塩、カチオン性シリカ、アルミノケイ酸塩、ポリアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ポリホウケイ酸塩及びゼオライトから選択される少なくとも1種の材料からのものである、請求項3記載の方法。
【請求項8】
ケイ質材料が膨張性粘土である、請求項3記載の方法。
【請求項9】
膨張性粘土が、ヘクトライト、スメクチタイト(smectitite)、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト(hormite)、アタパルジャイト及び海泡石から選択される少なくとも1種の粘土である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
mが約1〜約8重量%である、請求項2記載の方法。
【請求項11】
pが約1〜約8重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
両性ポリマーが、n/mのモル比の約1.2以上を有する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
n/mのモル比が約4以上である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
nが、ジアリルジアルキルアンモニウム化合物から選択される少なくとも1つのカチオン性モノマーから誘導される単位を表わし;
mが、加水分解されたアクリルアミド、(メタ)アクリル酸及び/又はそれらの塩から選択される少なくとも1種のアニオン性モノマーから誘導される単位を表わす
請求項1記載の方法。
【請求項15】
アニオン性モノマーが加水分解されたアクリルアミドである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
アニオン性モノマーが(メタ)アクリル酸及び/又はその塩である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
カチオン性モノマーが、ジアリルジエチルアンモニウムハロゲン化物又はジアリルジメチルアンモニウムハロゲン化物である、請求項14記載の方法。
【請求項18】
式(I)の両性ポリマーが、約10,000〜約20,000,000の範囲の重量平均分子量を有する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
完成紙料が、熱機械パルプ、再生パルプ、被覆損紙、脱インキパルプ、又はこれらの混合物を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
請求項1記載の構造(I)及び場合によりケイ質材料を含む、製紙において樹脂分及び粘着物を制御するための組成物。

【公表番号】特表2008−505257(P2008−505257A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519768(P2007−519768)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052964
【国際公開番号】WO2006/003122
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(592006855)チバ スペシャルティ ケミカルズ ウォーター トリートメント リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Water Treatments Limited
【Fターム(参考)】