説明

製紙における有害物質を結合するためのステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する吸着剤

この発明は、(a)ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する少なくとも1つの成分を供給し;(b)紙パルプあるいは繊維質材料を供給し;(c)前記ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する少なくとも1つの成分を前記紙パルプあるいは繊維質材料に添加し;(d)前記紙パルプあるいは繊維質懸濁物中の有害物質の前記ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する少なくとも1つの成分への結合を可能にする:各ステップからなる製紙における有害物質結合方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は、製紙における有害(妨害)物質を結合あるいは除去するためのステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する物質の適用に関する。
【0002】
製紙における有害物質の除去あるいは結合は益々大きな意味を得ている。問題点は製紙において発生した排水が循環系に流入し、その際に有害物質がそこで累進的に濃縮されることである。その有害物質が例えば製紙機械のローラ上の沈着物の形成、フィルタの粘着等の多様な生産障害を誘発する可能性がある。それらの現象によって紙生産の中断がもたらされる。製造中断回数を最小化するために、既にフローボックス内にポリマーあるいは吸着剤を添加することによって循環水中に発生した有害物質を結合することが好適である。ここで殆どの主要な有害物質は負に帯電している。それらは例えば、製紙サイクル中に繊維によってもたらされるフミン酸、樹脂コロイド、リグニン派生物、リグニンスルホン酸塩である。さらに紙細片のリサイクリングによって製紙装置内にもたらされる有害物質が挙げられる。その紙細片は通常再び分散させて製紙装置内に注入する。従ってその中に含まれている含有物質および添加物質が全てサイクル内に還流する。それによってカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ポリホスホネート、および珪酸塩等が追加的に含有される。その他の積荷された有害物質は、紙コーティングに使用されるラテックスである。これは強度に凝集する傾向があり、その凝集物が粘着性の白い残留物(いわゆる白色ピッチ)として製紙装置に沈積する。
【0003】
従来の技術において、タルクの使用による粘着性物質(いわゆる“粘着物(Sticky)”)の除去が広範に開示されている。すなわち、P.ビザ、E.ガクシュ、およびP.カイザー氏等の製紙工業週報11/12(2002年)759頁以降の“タルクの使用による改善された粘着物除去”により少なくとも今世紀の初頭以来粘着性の沈積物の削減のためのタルクの作用が記述されている。殆ど全ての既知の天然および合成粘着物質が疎水性である。タルクは天然に疎水性の表面を備えていて容易に粘着物表面に付着しそれを被覆して低粘性化させることができるため、粘着物の結合に最も適している。
【0004】
さらに例えば米国特許第5368962号明細書には、紙材料中の有害物質の制御のためのベントナイト等のモンモリロナイトの適用が記述されている。またベントナイトのアルカリ処理も1つの可能性である。
【0005】
米国特許第4964955号明細書にも製紙工程における有害物質の削減方法が記載されている。その中において有害物質結合のために、(b)実質的に水溶性の粒子状基材上に塗布された(a)水溶性の陽イオン性ポリマーを有する粒子状の化合物が含まれている。そのポリマーは、粒子状の化合物が少なくとも約+30mVのゼータ電位を有するように充分に正電性であることが必要となる。そのポリマーはポリ(ジアルキルジアリルアンモニウムハロゲン化物)とすることが好適である。基材は例えばフィロ珪酸塩鉱物とされる。
【0006】
同様に欧州特許出願公開第0760406号A2明細書は、有害物質結合におけるポリ(甲基塩化アンモニウム(dadmac)/アクリルアミド)とベントナイトの組み合わせに関するものである。
【0007】
英国特許第2297334号A明細書には有害物質制御のためのスメクタイト質粘土の適用が開示されており、そのスメクタイト質粘土は以下のように改質されている:一価の交換性陽イオンが0.20ないし0.60の範囲の等価のイオン比で存在し;第1の種類の二価の交換性陽イオンが0.40ないし0.80の範囲の等価のイオン比で存在し;第2の種類の二価の交換性陽イオンが0.00ないし0.20の範囲の等価のイオン比で存在しここで前記第1の種類の二価の交換性陽イオンがカルシウムを含み、前記第2の種類の交換性陽イオンはマグネシウムを含んでいる。
【0008】
従来の技術において使用されている有害物質結合用の媒体の多くは極めて高価であり、また特定の有害物質化合物に対しては最適でない。従って製紙工程における有害物質の結合のための媒体が常に求められている。
【0009】
従って本発明の目的は、従来の技術の問題点を克服することができるよう改善された製紙工程の有害物質結合方法を提供することである。本発明の目的はさらに、簡便かつ低コストに製造することが可能な媒体を可能にし、また高いレベルで疎水性成分を含んだ有害物質結合を達成することである。
【0010】
前記の課題は、請求項1の方法によって解決される。
【0011】
本発明の枠内において意外なことに、ステベンサイトおよび/またはケロライトを含んだ成分を製紙プロセスにおいて使用することによって好適な有害物質結合あるいは除去が可能になることが判明した。その際そのステベンサイトおよび/またはケロライトを含んだ成分が有害物質をその疎水性部分を含めて極めて高いレベルで結合あるいは吸着する。従って前記の成分は吸着剤あるいは吸収剤として見ることができ、それらの概念はここで明瞭化のためいずれも同義であるとする。
【0012】
本発明の枠内において有害物質とは文献中において“粘着材”あるいは“粘着物”とも呼称されている粘着性物質、ならびにいわゆる“ピッチ”、すなわち特に樹脂であると理解される。ここで、本明細書冒頭に挙げられた例も有害物質に含めることができる。“ピッチ”および“粘着物”成分の詳細なリストは例えば国際公開第01/09424号パンフレットの第1頁および第2頁に記載されており、その開示を本明細書中において引用する。
【0013】
極めて好適な特徴は、製紙プロセスにおける疎水性の有害物質の結合あるいは除去のためにステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する少なくとも1つの成分を適用することである。
【0014】
本発明の第1の特徴によれば、使用される成分がステベンサイトあるいはステベンサイト相を含む。
【0015】
ステベンサイトとして理解されるものは専門家の間で周知である。ステベンサイトのより詳細な特性は、例えばJ.L.マーチン・ド・ビダレス氏等による粘土鉱物(1991年)第26版第329ないし342頁、およびG.B.ブリンドリ氏等による鉱物学マガジン(1977年)第41巻第443ないし452頁に記載されており、それらをここで引用する。ステベンサイトの判定はそこに記載されているように実施することができる。特徴的なものは10Å(オングストローム)の格子間隔(基礎間隔)における回折ピークであり、その位置が異なった湿度によって顕著な移動を示す。本発明の第1の特徴によれば、ステベンサイトあるいはステベンサイト含有成分としてはブリンドリ氏等の文献(上述参照)のような10Åの格子間隔(基礎間隔)における固有回折ピークを有する材料が挙げられ、またそこに記載されているような異なった湿度あるいはエチレングリコールを用いた処理(後述参照)によるピークの移動を有することが好適である。特徴的なことは、さらに約17Åの格子間隔(基礎間隔)におけるエチルグリコールを用いた処理である。それについては、G.B.ブリンドリ氏等による文献(上記参照)の図2に示されたステベンサイトの粉末X線回折画像とそれに関しての記述を参照することができる。従って本発明によれば、マイコトキシン吸着剤あるいはステベンサイト含有成分内にステベンサイトを使用した際に異なった湿度あるいはエチレングリコールを用いた処理によって前記ブリンドリ氏等による文献(上記参照)の図2に関する記述のような10Åの格子間隔のおける回折ピークが特徴的である。それによって使用されるステベンサイトが例えば純粋なケロライトと異なったものとなる。
【0016】
ここでは簡略化のために“ステベンサイト”という表現はステベンサイト含有成分も含むものとする。“ステベンサイト含有成分”の概念は、本発明に従ってステベンサイトと共に他の構成成分も含んでいる成分が使用可能であることを示す。例えば市販の多くのステベンサイト製品は、ステベンサイトの他に多様な分量で添加鉱物を含んでいる。さらに、ステベンサイトと例えば特に層状珪酸塩等の鉱物成分からなるその他の成分の混合も考えられる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、実質的あるいは完全にステベンサイトあるいは少なくとも1つのステベンサイト含有成分からなる、少なくとも1つのステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分が使用される。
【0018】
本発明の別の特徴によれば、使用される成分がケロライトあるいはケロライト相を含んでいる。
【0019】
ケロライトの意義は当業者において周知でありここでは詳細な説明を省略することができる。例えばここでもブリンドリ氏等による文献(上記参照)を引用することができる。ケロライトの判定はそこに記述されているように実施することができる。ケロライトの化学分析によってRSi10(OH)・nHOに近い組成が得られ、ここでRは主にMgを示し、nは約0.8ないし1.2となる。ここで特徴的なものは10Åの格子間隔(基礎間隔)における回折ピークであり、その位置は異なった湿度によっても全く伸長を示さず、また500℃まで全く熱収縮を示さない。ここでG.B.ブリンドリ氏等による文献(上記参照)の図2に示されているケロライトの粉末X線回折画像およびそれに関する記述を引用することができる。本発明の一実施形態によれば、本発明に係るステベンサイトあるいは少なくとも1つのステベンサイト含有成分の組成が部分的あるいは完全にケロライトあるいは少なくとも1つのケロライト含有成分によって代替される。
【0020】
ここで“ケロライト”という表現は簡略化のためケロライト含有成分も含めるものとする。“ケロライト含有成分”の概念は、本発明に従ってケロライトと共に他の構成成分も含んでいる成分が使用可能であることを示す。例えば市販の多くのケロライト製品は、ケロライトの他に多様な分量で添加鉱物を含んでいる。さらに、ケロライトと例えば特に層状珪酸塩等の鉱物成分からなるその他の構成成分の混合も考えられる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、実質的あるいは完全にケロライトあるいは少なくとも1つのケロライト含有成分からなる、少なくとも1つのステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分が使用される。
【0022】
本発明の別の特徴によれば、使用される成分がステベンサイトあるいはステベンサイト相ならびにケロライトあるいはケロライト相の両方を含んでいる。そのようなステベンサイトおよびケロライトを含有する成分が極めて良好な有害物質結合特性を示すことが判明した。
【0023】
好適な実施形態によれば、使用されるステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分が少なくとも10重量%、特に少なくとも50重量%、さらに好適には少なくとも75重量%、さらに好適には少なくとも90重量%、特に好適には少なくとも95重量%のステベンサイトおよび/またはケロライトを含んでいる。従って意外なことに、ステベンサイトおよび/またはケロライトが本発明に従って使用される成分内において鉱物学的に主相を形成すれば極めて良好な有害物質結合が得られることが判明した。
【0024】
本発明の枠内においてさらに、少なくとも15重量%、特に少なくとも17重量%、さらに好適には少なくとも20重量%の酸化マグネシウム含有率を有するステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分が特に好適であることが判明した。それに対応する鉱物は市販で入手可能である。さらに、使用されるステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分、特にステベンサイトあるいはステベンサイト含有成分の酸化マグネシウム含有率が40重量%、特に35重量%を超えないことが好適であり、多くのケースにおいては32重量%を超えないことが好適である。
【0025】
酸化マグネシウムの含有率は材料の層構造の正確な形成を決定するものでもある。本発明がその真偽によって限定されるものではないが、本発明に従って使用される材料、特にステベンサイトの層構造が多数の異なった有害物質の吸着のための極めて好適な多孔性および極めて効果的な表面を形成することが推定される。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、特に高いステベンサイト比率を有する成分においてBET表面積(DIN66131号に従って測定、方法欄参照)が少なくとも60m/g、特に少なくとも80m/g、特に好適には少なくとも100m/gであることが極めて好適である。その高いBET表面積によっていくつかの有害物質に対してさらに効果的な吸着が可能となる。
【0027】
さらに、40meq/100g未満、特に35meq/100g未満、特に好適には30meq/100g未満の陽イオン交換容量(CEC:cation exchange capacity)を有する成分が特に良好な結果を示すことが判明した。そのCECは後述する方法欄に記載されているように判定することができる。
【0028】
別の好適な実施形態によれば、CECが少なくとも2meq/100g、特に少なくとも5meq/100g、さらに好適には少なくとも10meq/100g、特に好適には少なくとも15meq/100gであるステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分が使用される。
【0029】
ここで“陽イオン交換容量”(CEC)とは、mVal/100gで示された全ての交換可能な陽イオンの合計であると理解され、後述する例(陽イオン交換容量の判定)において記述するようなCEC分析方法によって判定される。陽イオン交換容量は例えばカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、およびカリウムイオン等の全ての交換可能な二価あるいは一価の陽イオンの合計を含む。陽イオン交換容量を判定するためにステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分を塩化アンモニウム溶液で処理する。そこでステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分に対するアンモニウムイオンの高い親和性のため実質的に全ての交換可能な陽イオンがアンモニウムイオンによって交換される。分離および洗浄の後にステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分の窒素含有量が測定され、それからアンモニウムイオンの含有率が算定される。
【0030】
前述したように、本発明に従って使用されるステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分は、例えばタルク等の従来使用されていた製品に比べて著しく良好な有害物質結合あるいは除去特性を示す。
【0031】
市販のベントナイト等の他の作用物質と比べて、ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分は通常顕著に高い固形分含有率を有する(水性の)スラリまたは懸濁液に加工でき、その際そのスラリあるいは懸濁液の過度に高い粘度が加工および配量に影響を与えることがないという利点を有している。実用上多くの製紙工場において有害物質結合のために使用される作用物質あるいは成分を含めた原材料が液体で添加される。配量されるスラリあるいは懸濁液の固形分含有率が高いほど、配量あるいは投入する分量ならびに搬送する量が少なくなる。
【0032】
本発明の枠内においてさらに、ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分を活性化すればその有害物質結合効果をさらに高めることができることが判明した。特にステベンサイト含有成分においてより良好な活性化の効果が示された。本発明において活性化とは、ステベンサイト含有成分中のステベンサイトの中間層陽イオン、特に二価あるいはそれ以上の多価の中間層陽イオンの一価陽イオンに対しての少なくとも部分的な交換であると理解される。交換される一価陽イオンは特にHまたは1つあるいは複数のアルカリイオンとすることができる。好適な活性化の形態は酸あるいはアルカリを使用した活性化である。それに限定するものではないがアルカリ活性化の好適な一例がソーダを用いた活性化である。そのため、例えば通常25ないし40重量%の湿度を有する湿った多孔性の粘土を、無水の粘土に対して5重量%まで、特に4重量%までのソーダ、炭酸カリウム、または例えばリン酸エステルあるいはクエン酸塩等のその他のアルカリイオンの塩と混合し、また必要に応じて押出成形する。その乾燥ならびに粉砕する。
【0033】
ステベンサイト含有成分の酸活性化は、通常1つあるいは複数の酸を用いた処理によって実施することができる。そのためその成分を少なくとも1つの無機および/または有機酸と接触させる。ここで原則的に当業者において周知である任意の粘土の酸活性化方法を使用することができる。本発明の一実施形態によれば、余分な酸および活性化に際して生じた塩を洗浄することは不要となる。むしろ、酸活性化に際して一般的なように酸の使用後に洗浄ステップは実施せず、処理された成分を乾燥ならびに必要に応じて所要の粒子大に粉砕する。
【0034】
酸活性化は例えば固形の酸または酸溶液を用いて実施することができる。従って一実施形態において成分の酸活性化は水性の相中で実施される。そのため酸を水性の溶液としてステベンサイト含有成分と接触させる。その際例えば、まず好適には粉末形態で用意されるステベンサイト含有成分を水中で懸濁させる。その後酸を例えば濃縮した形態で添加する。しかしながらステベンサイト含有成分は直接水性の酸溶液中で懸濁させるか、または水性の酸溶液をステベンサイト含有成分上に付加することもできる。好適な実施形態によれば、水性の酸溶液を好適には破砕されたあるいは粉末状のステベンサイト含有成分上に噴霧することができ、その際水分量を可能な限り低く選定する。ここで例えば濃縮された酸あるいは酸溶液を使用する。少ない酸分量を噴霧するとしばしば“表面改質”とも呼ばれる表面活性化のみが達成される。その酸分量は、無水(絶対乾燥)のステベンサイト含有成分に対して1ないし10重量%、特に2ないし6重量%の強酸、特に硫酸等の鉱酸に選択することが好適である。必要であれば、余剰な水分を蒸発させ活性化されたステベンサイト含有成分を必要に応じて所要の細度まで粉砕することができる。前述したように、本発明に係る方法の一実施形態によれば洗浄ステップは不要である。必要であれば、水性の酸溶液の使用後に所要の湿度に到達するまで乾燥させれば充分である。大抵得られた活性ステベンサイト含有成分の水分含有率は20重量%未満、特に10重量%未満に設定される。
【0035】
前述した水性酸溶液あるいは濃縮酸を用いた活性化のために、酸は任意に選択することができる。鉱酸ならびに有機酸の双方、またはそれらの酸の混合物を使用することができる。塩酸、リン酸、あるいは硫酸等の一般的な鉱酸を使用することができ、ここで硫酸が好適である。ここで濃縮または希釈酸あるいは酸溶液を使用することができる。有機酸としては例えばクエン酸あるいは蓚酸を使用することができる。
【0036】
本発明の極めて好適な実施形態によれば、ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分はCECに対して少なくとも50%、特に少なくとも80%の比率でH、Na、K、および/またはLi等の一価の陽イオンを有している。その比率は例えば酸あるいはアルカリ塩(例えばソーダ)による成分の活性化によって達成するかあるいは高めることができる。特に、ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分のCECに対して少なくとも90%、特に略100%の一価陽イオンとすることが好適である。
【0037】
本発明に係るステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分を使用した方法は、一般的に全ての製紙あるいは厚紙製造プロセスに適用することができる。紙パルプおよび繊維質懸濁物という表現には、紙、厚紙、その他の繊維質等の製造に使用される全ての有害物含有化合物あるいは液流が含まれる。それ以外では、“(紙)パルプ”および“繊維質懸濁物”という表現は当業者において周知であり、従ってその詳細な説明は省略する。
【0038】
本発明の好適な実施形態によれば、パルプあるいは繊維質懸濁物は(微細)砕木懸濁物とする。砕木は一般的に微細に切削された(微細に粉砕された)木材であり、大抵は熱あるいは化学処理を施していないものである。その際砕木懸濁物は破砕後に直接適用するかあるいは過酸化漂白を施すことができ、それによっていわゆる過酸化漂白された砕木が得られる。意外なことに、本発明に従って使用されるステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分が砕木あるいは過酸化処理された砕木によって得られた紙種類において極めて良好な結果を示すことが判明した。しかしながら、本発明に係る方法はその他の紙種類に対しても好適に使用することができる。従って例えばパルプあるいは繊維質懸濁物が(砕木と並んで)高度に精錬された繊維分を含むことができ、それは例えばいわゆる新聞紙に該当する。本発明はさらにいわゆる“インク抜きしたパルプ”(DIP材料)に対しても極めて良好な結果をもたらす。それは例えば古紙から製造される紙材料に該当する。それにおいては特に雑誌および新聞の接着剤から疎水性の粘着物が発生する。それも本発明に係るステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分によって最終製品内に良好に結合することができる。本発明に係るステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分を有効に適用することができるその他の紙材料には、TMP材料(サーモメカニカルパルプ)、硫酸塩セルロース、亜硫酸塩セルロース、ならびに異なったセルロースの混合物が含まれる。紙種類および製紙工場の地理に応じてそれらのセルロースが異なった比率で混合され、最終製品の材料要求品質に適合するようにされる。
【0039】
本発明の好適な実施形態によれば、紙パルプあるいは繊維質懸濁物内の好適な砕木比率はいずれもパルプあるいは懸濁物全体の乾燥重量に対して少なくとも10重量%;特に少なくとも30重量%とされる。
【0040】
本発明がその真偽によって限定されるものではないが、本発明に係る方法における少なくとも1つのステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分は、有害物質を結合するかあるいはそれと相互作用を発生させ従って例えばローラ等の製紙装置の部品上への凝集および沈積を防止するように作用することによって良好な効果をもたらすことが推定される。
【0041】
製紙工程における有害物質の濃度は通常濾過液中において陽イオン要求(陽イオン帯電要求)、濁色度測定、ならびに化学的酸素要求の3ステップ方式によって判定される。陽イオン要求に関して、有害物質が全て負に帯電していて濾過液を短鎖の陽イオン性高分子電解質にフィルタリングすることが前提となる。使用量はいわゆる陽イオン要求に換算される。濁色度測定に関しては、有害物質が部分的にコロイド状に存在していてその濃度は濁色に起因する吸光度によって判定し得ることが前提となる。化学的酸素要求に関しては、酸化剤によって存在する有機化合物の比率が検査される。それらの方法は製紙業界において広く普及しているものの、近年の研究によって濾過液中の全成分を平均化し、特に危険な有害物質を極部分的にしか捕捉しないことが判明している。このことは例えば、部分的に疎水性の化合物から組成されるいわゆる樹脂コロイドが極小さな表面積しか備えることができず従って陽イオン要求にあまり寄与しないことに起因する。他方、リグニンは高い陽イオン要求を有し;それが濾過液中に存在した場合極僅かに製紙工程の障害となるのみである。近年の研究によってさらに、濁色度測定とコロイド状有害物質の間に常に相関性が存在するものではないことが示されている。その従来の有害物質測定方法に関する新しい理論のため、本発明に係るステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分はさらにその効果を新しい方法で特性診断される。それは例えば、F.オーサ氏およびB.ホルムボム氏の“製紙プロセス水および排水における木材抽出物の有効判定方法”パルプおよび製紙科学ジャーナル1994年12月第20巻第12号、J361頁以降に記載の方法に従った濾過液のガスクロマトグラフィ分析方法である。砕木を含有する紙の製造に際して、個々の樹脂成分の濃度はガスクロマトグラフィ方法によって判定される。それは完全な定量分析に係り、他方濁色度、陽イオン要求、および化学的酸素要求等の一般的測定方法は実質的に最良でも半定量的に評価する。さらに、L.ヴェーサロ氏等(後述の“濾過液のフローサイトメトリ分析”参照)により、紙濾過液中のコロイド状有害物質の数を判定するためにいわゆるフローサイトメトリが極めて好適である判明している。そのため、その新規の方法が本発明においてもステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分の有害物質削減効果を判定するために使用される。
【0042】
本発明に従って使用される少なくとも1つのステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分のパルプあるいは繊維質懸濁物への添加は、当業者において適宜であるとされる製紙工程中の任意の位置で実施することができる。その際特に粉末内における直接的な添加が推奨され、その理由はそこにおいて紙材料に対する長い接触時間が可能であり、高い有害物質結合の確率が達成されるためである。その他の添加場所はいわゆる高密度領域全体である。また、水浄化のための“気泡分離”のための添加も考えられる。多くの場合、使用される製紙装置において例えば配量装置あるいは配量ポンプの形式の添加剤添加位置が既に存在している可能性があり、それを本発明に従って使用されるステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分の添加のために使用することができる。そのステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分は粉末形態および懸濁液あるいはスラリの形態のいずれにおいて使用することもできる。その懸濁液あるいはスラリによって多くの場合より良好な配量特性が達成され、大量生産の連続稼働プロセスにおいて容易に自動化することができる。
【0043】
さらに、本発明に従って使用されるステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分の作用は特定の粒子大を保持した場合に極めて良好となることが判明した。従って、本発明の極めて好適な実施形態によれば、ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分の粒子大は45μmの湿式篩残留分が2重量%未満、特に1重量%未満、特に好適には0.5重量%未満となるように選定される。湿式篩残留分の測定については後述する例の前に詳細に記述する。好適な粒子大は光散乱法(マルバーン)によって判定することができる。本発明の極めて好適な実施形態によれば、平均粒子大(D50)(試料容積に対して)0.5ないし10μm、特に2ないし8μm、特に好適には3ないし6μmとなる。
【0044】
本発明の枠内においてさらに、プロセス中においてタルクの使用を行わなければ本発明に従って使用されるステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分の適用が極めて好適な有害物質結合をもたらすことが判明した。例えば従来の技術に従ったポリ(dadmac)あるいはポリアクリルアミド等の陽イオンポリマーの使用も、本発明に従って使用されるステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分の補助によって削減するか、あるいは全く回避することができる。
【0045】
本発明に係る方法におけるステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分の投入量は当業者において実験によって機械的に判定することができる。多くの場合紙パルプあるいは繊維質懸濁物トン当たりに対するその投入量は、いずれも無水のパルプ/懸濁物(乾燥重量)に対して0.5ないし12kg/t、特に1ないし8kg/t、特に好適には1.5ないし7kg/tとすることが好適である。
【0046】
本発明の枠内においてさらに、本発明に係る方法によって脂肪酸等の非イオン有害物質の良好な結合を可能にするばかりでなく、ステロール、ステリルエステル、およびトリグリセリド等の疎水性有害物質の効果的な結合あるいは除去をも可能にすることが判明した。意外なことにそれによって達成される結果は、従来のベントナイトによって得られるものと、タルクによって得られるものの両方を超越するものである。
【0047】
本発明の別の側面は、前述したような製紙工程における有害物質結合のための少なくとも1つのステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分の適用に関する。前述したように、前記の少なくとも1つのステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分は砕木を含有している紙パルプあるいは繊維質懸濁物内に投入することが好適である。しかしながら全ての紙種類あるいはパルプが本発明に係る適用に含まれる。特に好適なものは、前述した砕木あるいは過酸化処理された砕木を含有する紙種類であり、それは例えば新聞紙が該当するように(砕木と並んで)高度に浄化された繊維分を含むもの、いわゆる“インク抜きされたパルプ”(DIP材料)、TMP材料(サーモメカニカルパルプ)、硫酸塩セルロース、亜硫酸塩セルロース、ならびに異なったセルロースの混合物とすることができる。
【0048】
方法欄: 別途の記載がない限り、以下に定義する分析方法が使用される:
1.陽イオン交換容量(CEC分析)および陽イオン比率の判定
原理: 粘土(ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分)を多量の水性NHCl溶液によって処理し、さらに洗浄し、粘土上に滞留したNH量をケルダール法によって測定する。
【0049】
Me(粘土)+NH ― NH(粘土)+Me
(Me=H,K,Na,1/2Ca2+,1/2Mg2+...)
【0050】
装置: 篩、63μm;エルレンマイヤフラスコ、300ml;分析秤;薄膜吸込みフィルタ、400ml;ニトロセルロースフィルタ、0.15μm(サルトリウス社製);乾燥庫;還流式冷却器;ヒータ板;蒸留ユニット、VAPODEST−5(ゲアハルト社製、No.6550);メスシリンダ、250ml;バーナ−AAS;化学材料:2N NHCl溶液ネスラー試薬(メルク社製、品番9028);ホウ酸溶液、2%濃度;苛性ソーダ、32%濃度;0.1N塩酸;NaCl溶液、0.1%濃度;KCl溶液、0.1%濃度。
【0051】
実施: 5gの粘土を63μm篩で篩分けして110℃で乾燥させる。その後分析秤上で天秤式に正確に2gをエルレンマイヤフラスコ内に計り入れ、100mlの2N NHCl溶液を混合する。懸濁液を還流しながら1時間沸騰させる。高濃度にCaCOを含有している粘土の場合は、アンモニアが発生する可能性がある。その場合は、アンモニア臭が確認されなくなるまでNHCl溶液を付加する。湿式の試験紙によって追加的な検査を実施することができる。約16時間の放置時間後にNH粘土を薄膜吸込みフィルタを介して濾過し、極めて無イオンになるまで完全脱塩水(約800ml)によって洗浄する。洗浄水の脱イオンの証明は、NHイオンに対して反応するネスラー試薬を使用して行う。洗浄時間は粘土の種類に従って30分ないし3日間の間で変化し得る。洗浄されたNH粘土をフィルタから取り出し、110℃で2時間乾燥させ、粉砕し、篩にかけ(63μm篩)、再度110℃で2時間乾燥させる。その後粘土のNH含有率をケルダール法によって判定する。CECの算定:粘土のCECは、ケルダール法によって求めたNH粘土のNH含有率(いくつかの粘土材料のCEC、添付資料参照)である。表示値はmVal/100gの粘土(meq/100g)で示される。
【0052】
例:窒素含有率=0.93%;
分子重量:N=14.0067g/mol
【0053】
【数1】

【0054】
CEC=66.4meq/100gのNH粘土
【0055】
交換された陽イオンならびにその比率:
交換によって自由化された陽イオンは洗浄液(濾過液)中に存在する。一価の陽イオン(“交換可能な陽イオン”)の比率および種類は濾過液中でDIN38406号第22部に従ってスペクトルによって判定した。例えばAAS判定のために洗浄液(濾過液)を収束させて250mlメスシリンダ内に注入し、測定指標まで完全脱塩水を充填する。FAAS(フレーム原子吸光分析)に適した測定条件は、以下の表から見取ることができる。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
陽イオンの計算:
【0059】
【数2】

【0060】
モル質量(g/モル):Ca=20.040;K=39.096;Li=6.94;Mg=12.156;Na=22.990;Al=8.994;Fe=18.616
【0061】
いわゆる超活性化された粘土(ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分)、すなわち理論値よりも多い量のソーダによって活性化された粘土において、検出される一価の陽イオンの量の合計が前述した特定のCECを超えることが可能である。そのような場合一価の陽イオン(Li、K、Na)の総含有量がCECの100%として見られる。
【0062】
2. BET表面積の判定:
その判定はDIN66131号に従って実施される(多点測定)。
【0063】
3. 湿式篩残留物の判定:
色素および充填材の使用に際して、検査される材料が存在するか、ならびに通常の粒子と粒子大が異なっている粗目成分がどれくらいの比率で含まれるかが重要である。この比率は、洗浄液として水を使用して水性の懸濁物を篩い分けることによって判定される。湿式篩残留物としては、固定的な条件で判定された残留物が該当する。
【0064】
装置:化学天秤、プラスチック容器、ペンドラウリック社LD50;篩:200mm直径、メッシュ幅0.025(25μm)、0.045mm(45μm)、0.053mm(53μm)、または0.063(63μm);超音波槽
【0065】
まず、2000gの水中における5%の被検成分(ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分)の懸濁物(窯乾燥、すなわち110℃での乾燥後)を生成した。そのため成分を930rpmで約5分攪拌する。さらにrpmで15分間の攪拌した後懸濁物を清潔かつ乾燥した篩(45μmのメッシュ幅)に注入し、流れている水道水によって叩きながら洗浄水が透明になるまで洗浄する。篩残留物を水道水で洗浄した後篩を5分間超音波槽内に曝し、それによって残留微細成分を篩い分ける。ここで、篩を超音波槽内に曝す際に水面と篩底部の間に空気が滞留しないように留意すべきである。超音波処理の後にもう一度水道水で短時間後洗浄する。その後篩を取り出して超音波槽内の水を交換する。この超音波槽内における工程は、水中の汚濁が全く確認されなくなるまで繰り返す。篩を残留物と共に空気循環式乾燥庫内で重量が一定(窯乾燥)になるまで乾燥させる。冷却後に刷毛を用いて残留物をシャーレ内に移転する。評価:出力重量に対しての(%)である湿式篩残留物(NSR)
【0066】
4. マルバーンに従った粒子大判定:
これは一般的な方法である。英国マルバーンインスツルーメント社のマスタサイザを製造者の指示に従って使用する。測定は所与の試料チャンバ(“乾燥粉末供給器”)を使用して空気中で実施し、試料容量に対しての値が求められた。
【0067】
5. 有害物質結合検査:
有害物質結合の検査は以下のように実施される:
a) 紙材料の製造および濾過:
過酸化漂白された砕木を用いた実験
選択された紙材料(過酸化物漂白された砕木)は直接製紙工場から入手するか、あるいは使用前に冷蔵庫に貯蔵することができる。紙材料はよく振って完全乾燥状態で10gを2000mlのガラスシャーレ内で温かい脱イオン水によって1%に希釈した。150rpmで攪拌する一方、紙材試料を加熱板によって40℃に加熱した。その温度に到達したら、パスツールピペットを使用して検査する量の吸着剤を前記の紙材試料に添加する。続いて、試料内における吸着時間を40℃で30分に設定し、混合物を150rpmで攪拌する。濾過水を生成するために希釈された試料(1重量%の固形分)を脱水および固化装置内(ドイツ国ミューテック社製のミューテックDF3 03)で420秒間脱水する(170μmの篩、700rpmの攪拌速度)。この濾過水試料を分析検査する(例参照)。
【0068】
DIPを用いた実験
古紙材料(“DIP”)を1%の固形分含有率に希釈し、40℃の水と攪拌棒(スイス国エスゲ社製の“エスゲ−ツァウバー棒”を用い、いわゆる混錬盤を適用して30秒間レベルIIで均一化した。
【0069】
その後150rpmで攪拌し、吸着剤(ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分)を添加して磁気攪拌機を用いてさらに30分間攪拌した。その後砕木実験(後述参照)の場合と同様に脱水した。濾過液をフローサイトメトリによって検査した。
【0070】
b) 濾過水のフローサイトメトリ分析:
ここでは、ヴェーサロ氏等による2003年2月の製紙技術第44(1)巻第45頁の“濾過水のフローサイトメトリ分析”に記載され、また2002年8月26−29日のアボ/フィンランドにおける第7回欧州リグノセルロースおよびパルプワークショップの“過酸化物漂白された機械加工パルプ懸濁物におけるpHと塩化カルシウムの作用”ならびに2004年のノルディックパルプアンドペーパーリサーチジャーナル第19巻第4号第450頁以降の“製紙における細菌および木材皮脂粒子のフローサイトメトリ”によって補完されているように、いわゆるフローサイトメトリが使用される。簡単に言うとここで、蛍光マーキングされた粒子を数えるために光分散方法を伴う。
【0071】
古紙材料の濾過液中の疎水性粒子あるいは砕木の濾過液中のピッチ粒子をフローサイトメトリ用に蛍光着色料で着色するために、モレキュラー・プローブス/インビトロゲン・ディテクション・テクノロジース(米国加州92008カールスバッド市1600ファラディアベニュ私書箱6482号のインビトロゲン株式会社)の着色料ナイルレッドを商品の説明に従って使用した。
【0072】
c) 濾過水のガスクロマトグラフィ分析:
ここでF.オルサ氏およびB.ホルムボン氏等による“製紙工程における水および排水中の木材抽出物の簡便な判定方法”(パルプおよび紙科学ジャーナル1994年12月第20巻第22号、第361頁以降)の方法が使用される。
【0073】
次に、以下に記述する非限定的な例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0074】
例1:
以下の材料について有害物質結合検査を行った。
【0075】
検査のために以下に記述する2種類のステベンサイト含有成分をいずれも粉砕した生粘土として使用し、その際両方の生粘土を製紙工程において一般的な粒子大に粉砕した。そのため粉砕によって1重量%未満の湿式篩残留分が45μmとなるように調節した。平均粒子大(D50、容積に関して)は2ないし8μmであった。試料の水分含有率は10±4%であった。主相としてのステベンサイトはブリンドリ氏等(前述参照)およびマーチン・ド・ビダレス氏等(前述参照)の文献に従って確認した。使用された両方の材料、吸着剤1および吸着剤2中において一定比率のケロライトも確認できた。上記の両方の文献に記述されているように、ステベンサイトは、エチレングリコールを用いた処理後、加熱後、あるいは異なった湿度において特に粉末X線回折画像および回折パターンの移動によるとケロライトおよびその他のスメクタイト質層状珪酸塩と異なったものとなる。本発明に係る材料を特徴付けるためにさらに酸化マグネシウム含有率およびCECを参考にすることができる。
【0076】
使用された本発明に係る材料に関する分析データが以下の表1ないし表3に示されている。
【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
例2:
前述と同様に高い負荷のかかった古紙材料による濾過実験を行った。この紙材料に濾過の前に本発明に係る添加剤(ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分)をいずれも紙材料の乾燥重量に対して3kg/tおよび6kg/tの分量で添加した。参考濾過実験においては添加剤を付加せずに濾過した。並行して、比較システムとして陽イオン化されたタルクを3kg/tおよび6kg/tの分量で使用した。
【0081】
濾過液をフローサイトメトリ(前述参照)によって疎水性粒子の濃度の観点において特徴判定した。その結果は図1にグラフ表示されている。
【0082】
図1に示されているように、本発明に係る添加剤によって濾過液中の疎水性粒子が顕著に削減され、他方比較例として使用された陽イオン化タルクによれば同じ使用濃度でも明確な効果は見られない。
【0083】
例3:
例2と同様な濾過実験を過酸化漂白された砕木を使用して実施した。本発明に係る添加剤を再びいずれも紙材料の乾燥重量に対して3kg/tおよび6kg/tの分量で添加した。追加的な本発明に係る添加剤として吸着剤2をアルカリ活性化形態で添加した(=吸着剤3)。その材料は、湿った吸着剤2の材料を3%の無水ソーダと共に混錬しその後乾燥および粉砕することによって製造した(湿式篩残留1重量%未満;平均粒子大(D50)1ないし6μm)。
【0084】
濾過液をフローサイトメトリならびにオルサ氏およびホルムボン氏等によるガスクロマトグラフィ法(前述参照)の両方を用いて検査した。
【0085】
図2にはフローサイトメトリの結果が示されている。この紙材料においても本発明に係る添加剤の吸着剤1および吸着剤2によって濾過液中のピッチ粒子の数の大幅な低下がもたらされた。ここでも比較材料(陽イオン化されたタルク)は9kg/tの配量において顕著な効果を示さなかった。
【0086】
図3にはガスクロマトグラフィによる濾過液の特性判定が示されている。ここで示されている結果はフローサイトメトリのものと極めて良好な相関性を有している。
【0087】
両方の検査方法によって得られたデータによって、本発明に係る材料である吸着剤2のアルカリ活性化によって紙材料中の有害物質の大幅な改善、または濾過液中の有害物質のさらなる削減がもたらされる(吸着剤3参照)ことが示されている。この効果は、ステベンサイト中におけるCa2+イオンとNaイオンの交換(CECの100%)に起因するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る添加剤である吸着剤1および吸着剤2ならびに比較添加剤としての陽イオン化されたタルクを異なった配量で添加した際の濾過液中の疎水性粒子のグラフィック表示を示した説明図である。
【図2】本発明に係る添加剤である吸着剤1および吸着剤2ならびに比較添加剤としての陽イオン化されたタルクを異なった配量で添加した際の濾過液中のピッチ粒子のグラフィック表示を示した説明図である。フローサイトメトリによって測定した。
【図3】本発明に係る添加剤である吸着剤1および吸着剤2ならびに比較添加剤としての陽イオン化されたタルクを異なった配量で添加した際の濾過液中の抽出物の濃度のグラフィック表示を示した説明図である。抽出物をガスクロマトグラフィによって測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する少なくとも1つの成分を供給し;
(b) 紙パルプあるいは繊維質材料を供給し;
(c) 前記ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する少なくとも1つの成分を前記紙パルプあるいは繊維質材料に添加し;
(d) 前記紙パルプあるいは繊維質懸濁物中の有害物質の前記ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する少なくとも1つの成分への結合を可能にする、
各ステップからなる製紙における有害物質結合方法。
【請求項2】
ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分がステベンサイトおよびケロライトの両方を含有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分が酸あるいはアルカリによって活性化された成分であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分が0.5ないし10μm、特に2ないし8μm、特に好適には3ないし6μmの平均粒子大(D50、試料容積に対して)を有する顆粒形態で使用されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分はCECに対して少なくとも50%、特に少なくとも80%、特に好適には少なくとも約90%の比率でH、Na、K、および/またはLi等の一価の陽イオンを有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分が45μmの湿式篩残留分が1重量%未満である顆粒形態で使用されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分の添加がタルクの不在化で実施されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
紙パルプあるいは繊維質懸濁物(乾燥重量)に対して約0.5ないし10kg/t、特に紙パルプあるいは繊維質懸濁物に対して1ないし7kg/tの割合で使用することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
紙パルプあるいは繊維質懸濁物が砕木成分を含有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
紙パルプあるいは繊維質懸濁物内の砕木の比率はいずれもパルプあるいは懸濁物全体(乾燥重量)に対して少なくとも10重量%;特に少なくとも30重量%とされることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
紙製造における有害物質結合あるいは有害物質除去のためのステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する成分の適用。
【請求項12】
適用が砕木成分を有する紙パルプあるいは繊維質懸濁物内で行われることを特徴とする請求項11記載の適用。
【請求項13】
紙パルプあるいは繊維質懸濁物が疎水性の有害物質成分を含むことを特徴とする請求項11または12記載の適用。
【請求項14】
紙パルプあるいは繊維質懸濁物にステベンサイトおよび/またはケロライトを含有する少なくとも1つの成分と並んで固着剤、またはタルクあるいはベントナイト等のその他の剤を添加することを特徴とする請求項11ないし13のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−506224(P2009−506224A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527376(P2008−527376)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008214
【国際公開番号】WO2007/022942
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(507294959)ジュート−ヒェミー アクチェンゲゼルシャフト (21)
【Fターム(参考)】