説明

製紙ボイラー・システムにおける汚染の検出及び低減方法

本発明は、製紙プロセスにおける、ボイラー復水及び/又はボイラー給水の汚染を検出する方法並びにシステムに関する。本方法は1つ以上の腐食応力監視装置によって、製紙プロセスのボイラー復水及び/又はボイラー給水の1つ以上の位置における酸化還元電位を測定することを含む。制御装置は、測定されたか、又は計算された酸化還元電位が、最適範囲内にあるか否かを評価するため操作可能である。この制御装置は、製紙プロセスのボイラー給水及び/又は1つ以上のサテライト給水配置に、1つ以上の還元剤及び/又は1つ以上のpH調節化学物質の有効量を、直接供給するための信号の送信を引き起こすために操作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にボイラー復水及び/又はボイラー給水の汚染を検出する方法に関する。より具体的には、本発明は工業的プロセスにおけるボイラー復水及び/又はボイラー給水の汚染の検出並びに低減に関する。本発明は、製紙プロセスの復水流における、ボイラー・システムの金属の腐食及び化学添加物に関連する変化の検出に特定の関連を有する。
【背景技術】
【0002】
給水源としては、他の補給水源よりも、追加費用を発生せず、従って他の給水源を軟質化、脱塩、又は加熱する費用を避けるために、良質の復水が好まれる。とりわけ、その熱容量は、要求される蒸気負荷を発生させるための費用を低減させる。付加的な価値は、ティッシュやタオルなどの高度に吸水性の製品を製造する製紙工場での復水の戻し率を最大化することに存在する。とりわけ、ティッシュ及びタオルを製造する製紙工場での、ボイラー給水へのさまざまな汚染物質の負荷は、システム、特にヤンキー・ドライヤー(ヤンキー乾燥機)(即ち、ティッシュ又はタオルのシートを製造する機械ドラム)における問題を発生させる。ヤンキー・ドライヤーの性質は、復水流中に相当の溶解気体(例えば、CO)を生成させる。溶解気体の大部分の源は、ボイラー・システムに補給水(makeup water)を通じて導入されるため、復水の戻しを最大化することは、システムに充填される気体を最小化させ、同様にそのことによりヤンキー・ドライヤー復水の管理をより容易にする。
【0003】
製紙工場システムにおける復水の戻しには、いくつかの潜在的な否定的側面が存在する。時折、製紙はバッチ式プロセスであり、その中の各バッチは、同一の抄紙機械の異なる時間に製造される異なる等級の紙であると定義される。抄紙機及びヤンキー・ドライヤーのどちらも蒸気圧の下に稼動し、そのため休止時間が生じると、蒸気流が停止され、蒸気圧を使用する構成部品は冷却する。かかる構成部品における完全な蒸気の衰弱及び真空状態を防止するために、真空解消弁を開放して、以前蒸気により占有されていた空間に空気を導入することを可能とする。導入された大気中の酸素分画は、熱い金属表面の腐食を引き起こして、酸化鉄を生成させる。抄紙又はティッシュ機械が休止する時間が長いほど、よりこの化学反応は進行し、より多くの酸化鉄が生成される。加えて、抄紙機の冷却及び起動時の間に引き起こされる、熱収縮及び膨張の応力が、既に存在する金属酸化物層の亀裂及び剥離を引き起こし、酸素の攻撃を受けて腐食され得るより多くの新たな金属表面を露出させる。機械が稼動状態に戻る際に、蒸気の流れ及び復水は、酸化鉄が形成された金属表面全体を洗い流し、酸化物粒子を剥ぎ取る。これらの粒子は復水の戻り流おける追加的な汚染物質を形成する。
【0004】
上述したように、この復水はボイラー給水の好適な源である。しかし、復水が酸化物粒子を含む場合、ボイラーは、その接水側に堆積物が成長するリスクにさらされる。最初に、これらの粒子は熱伝達に抵抗する堆積層を形成し、ボイラーの熱効率を低下させる。最終的には、堆積層は肥厚化し、ボイラーの管の過熱及び機能不全を引き起こすため、補修のためにボイラーを取り外すことが必要になる。そのほか、ボイラーの接水側で、鉄の堆積物の、より油断できない影響が発生する。酸化鉄堆積物はその性質として、多孔質又は透過性であり、水がそれを通過して、次いで炎に隣接した最も熱い位置で濃縮することを可能にし、蒸気の蒸発及びボイラー水の塩類の濃縮を引き起こす。一部の例では、この濃縮は堆積物の下で(かかる堆積物の除去方法は、現在係属中の特許文献1、「Method and Device for Cleanup and Deposit Removal from Internal Hot Water System Surfaces」に開示されている)、腐食反応が生じて、システム中(例えば、ボイラーの管中)の金属が、当技術分野において苛性腐食(caustic corrosion)又は苛性脆化(caustic embrittlement)と称せられる機構により溶解する点まで進行する。その結果は、過熱による機能不全によるものと同じであり、ボイラーを補修のためにラインから取り外さなければならず、その際には紙又はティッシュ/タオル乾燥のための蒸気発生に用いることはできないため、製紙工場での生産を縮小させ、追加費用を発生させる。
【0005】
正常稼動及び休止期間条件の両方における腐食を最小化するために、いくつかの製紙工場では抄紙機械の蒸気システムに化学添加物を供給している。これらの化学物質は、酸素腐食及び酸性腐食機構を解決するために、典型的には揮発性の塩基性アミンと混合された、脱酸素剤、金属不動態化/調節剤、還元剤である。この技術の現状においては、抄紙機械復水の腐食性をリアルタイムで継続的に監視して制御する能力がなく、条件が高度に変動することが知られているにも関わらず、変化するシステム条件に基づきこれらの化学添加物の用量をリアルタイムで調節する能力もない。化学添加物の基礎供給用量が供給され、及びグラブサンプル又はいくつかの他の監視プログラムが整っている場合には、折に触れて調整される。
【0006】
製紙工業では、他の水処理目的に用いられる装置を、復水の性質に関する継続的なオンライン情報を提供するために適応させることを長期間模索してきた。例えば、復水流中の鉄粒子を測定するために濁度を用いる制御システムが、抄紙機械の領域を流れている復水サンプル中に濁度計を設置することで実現された。この計測器は、十分高い濃度の粒子が感知された場合に、次いで切り替え弁を活性化するために用いられることができる。グラブサンプルの鉄濃度を分析することにより、あらかじめ選択された鉄濃度により、復水の投棄が始動され得るような関係付けを開発することができる。
【0007】
復水の鉄濃度の管理における濁度測定の使用は、すぐに不都合に陥る。サンプルの濁度測定に用いられる装置は実験室用であり、抄紙機械領域の条件に耐えることができない。分析のために濁度計は冷却されたサンプルを必要とするが、プロセス内のサンプル冷却器の信頼性に問題があることが判明した。更に、製紙工場が提供する冷却水温度の季節変動も問題であった。冷却水が暖かすぎる場合、サンプルは十分に冷却されず、濁度の検出のために用いられる光学系は曇ってしまい、結果は信頼できないものとなる。これらの問題の設計による解決を提供するための努力にもかかわらず、オンライン監視のツールとしての濁度による復水の鉄濃度の測定は、数年間使用されたのみで、断念された。
【0008】
製紙工業における今日の復水監視の標準は、2つのアプローチにより代表される。第一に、鉄粒子に加え、濃縮蒸解液などのイオン性溶液が復水を時々汚染し得る。溶液としては、この工業では導電性に基づく投棄又は排水システムの一種を採用しており、これによってサンプル中の過剰の導電性の検出が排水システムの起動を引き起こす。かかるシステムは、顕著なイオン性の汚染事象についてのみ有効であるが、鉄粒子は検出を与えるほど十分に復水の導電性を上昇させない。第二に、休止期間条件に引き続き、ボイラーの給水として使用するために、鉄濃度が許容可能であるかを決定するために手動での復水試験が用いられる。その性質により、かかる手動の試験は相当程度のばらつきを許容してしまい、正確な制御の達成を困難にする。ほとんどの場合、技術的に要求されるよりも長時間復水が投棄されてしまい、失われた復水のための追加の費用、並びに同時に増加された給水及び付随する処理の必要性を発生させる。
【0009】
従って、製紙工業においては、ボイラーの給水の源としての高品質の復水のリターン成績及び効率を改善する要求が存在する。ボイラー給水及び蒸気/復水システムへの化学添加物の注入を最適化するための、改良されたオンライン方法に対する特定の要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第11/852,695号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は製紙プロセスにおけるボイラー復水及び/又はボイラー給水の汚染を検出するための方法を提供する。この方法は、製紙プロセスのボイラー復水及び/又はボイラー給水における1つ以上の位置において、操作温度及び圧力下において、酸化還元電位(以後、「ORP」と称する)を測定する能力のある1つ以上の装置(以後「CSM装置」と称する)によってORPを測定することを含む。好適には、CSM装置は、測定されたORP又は測定されたORPに基づいて計算されたORPが、最適範囲内にあるか否かを評価するために操作可能である制御装置と通信している。測定されたORP又は計算されたORPが最適範囲内にない場合に、この制御装置は、製紙プロセスのボイラー給水及び/又は1つ以上のサテライトの供給位置において、1つ以上の還元剤及び/又は1つ以上のpH調節化学物質の有効量の供給を指令する信号の送信を引き起こす。
【0012】
別の態様では、本発明は、製紙プロセスにおけるボイラー復水及び/又はボイラー給水の汚染の検出システムである。このシステムは、オンラインであり及び作動している製紙システムの蒸気発生器から導出される、復水流中のORPを測定する能力のある、少なくとも1つの装置と通信する制御装置を含む。少なくとも1つの化学物質注入ポンプが、制御装置から受け取られた、測定されたORP、及び化学物質注入ポンプの操作に関する信号により活性化されて、少なくとも1つの還元剤及び/又はpH制御化学物質をボイラー給水、及び/又は1つ以上のサテライトの供給位置に注入するために用いられる。熱力学的な連絡が、製紙機械、並びにボイラー又は蒸気発生器から導出された蒸気及び/又は復水流(例えば、ヤンキー・ドライヤー)の間のインターフェースにより形成される。このシステムは、更に復水返送配管及び復水投棄システム(例えば、投棄弁)を含むことができる。
【0013】
本発明は、腐食応力モニター(Corrosion Stress Monitor;以下「CSM」)による製紙プロセスに付随する復水流を管理する新たな方法も提供する。本発明は、ティッシュ又はペーパータオルの等級を製造するプロセスに対する明確な利益とともに、製紙プロセスで用いられる、熱水系の復水システムの腐食を最小化するその能力において独特の有用性を有する。好適な実施形態において、このCSMは、作動温度及び圧力において酸化還元電位を測定する(かかる測定も本明細書では時に「ORP」と称される)ために作動可能である。流れている復水流内、又はオフラインに設置されたCSMは、制御装置システムと協働して、不動態化及びオンラインの化学添加物処理プログラムの適用の最適化のために、システム中の金属濃度を検出する。本方法の範囲は、化学添加物による処理にリアルタイムの調節を行い、従って給水の性質を改善するために信頼できる復水流データを生成する能力、及びそれらのデータをフィードバック、フィードフォワード、又は予測ループにおいて用いる能力を包含する。
【0014】
好適な態様では、本発明はリアルタイム調節を行うために、化学物質注入ポンプを処理するための継続的又は間歇的なフィードバック、フィードフォワード、又は予測ループを提供するために実行される。本発明は、分析器の信号をポンプ調節論理に変換するプログラミング論理を包含し、及び好適な実施形態においては、複数の化学物質注入の一つ又はそれぞれを、独自の基準に基づいて制御する。本発明が既存の電気抵抗腐食プローブ、直線偏光プローブ、及び/又は金属損失を測定する他の技法からの読み取りを管理・統合し得ることも予想される。実施形態では、これらの読み取りは、例えばプログラミング論理制御装置(PLC)を介して、他の化学物質の投入を無効化又は修正し、及びポンプの速度を変化させためにプログラムされるであろう。
【0015】
休止状態が発生する場合、前記CSMは不動態化処理のための供給を最適化する能力があり、それにより存在する水の化学的性質の結果としての金属の状態をオンラインで検知することが可能となる。もし、休止状態の結果として、復水がいくらかの酸素を含む場合には、前記CSMはこの状態を検知し、及び前記制御装置の構成部品は、腐食を最小化するための保護的条件を復元するために、化学添加物(例えば還元剤/アミンの組み合わせ)の用量を増加させるために、信号を1つ以上の化学物質注入ポンプに送信する。
【0016】
復水のサンプリング(オンラインでのCSMへの曝露を介する)は、流路の任意の点で行い得るが、プロセス流路の終わりでの復水のORPが、典型的にこのシステムの化学的状態を示す。システムの回転率は、一般的に、供給される用量がこれらの条件の間に過剰とならないような十分な率にあり、更に追加的な化学物質の供給の適用は、注入ポンプの注意深い選択により管理され得る。好適には、このCSMは、全システムの成績を代表する液体流に対して曝露される。典型的には、かかる曝露は、システム内の更に下流よりも、特定の相の開始時に生じる。理想的な曝露は、よく混合された流れているサンプル流内で生じる。しかしながら、前記CSMは、任意の適切な位置に配置され得ることを理解されたい。
【0017】
本発明の利点は、製紙工場のボイラーに戻される給水源としての復水の容積を最大化し、復水中の化学添加物の存在量を最適化することである。
【0018】
本発明の別の利点は、操作温度及び圧力下において、復水の性質を測定し、及びこれらの測定をフィードバック、フィードフォワード、又は予測ループに包含することにより、復水のボイラー給水へのリサイクルを最適化する堅固な方法を提供することである。
【0019】
本発明の更なる利点は、従来の復水測定システムに付随する遅延時間を、復水の性質を作動温度及び圧力下での測定を可能にすることにより、除去又は削減する方法を提供することである。
【0020】
本発明の付加的な利点は、製紙機械に供給される化学添加物の制御の最適化を提供し、それにより蒸気発生器の信頼性、及び安全性に脅威を与える腐食副生物粒子の生成、及び戻りを最小化することである。
【0021】
本発明のより更なる利点は、復水の性質をオンライン及び本質的にリアルタイムで測定する方法を提供し、並びに場合によりサンプルの調整システムの費用を回避することである。
【0022】
本発明の更なる利点は、廃棄する水の容積を最小化することにより、汚染された復水に起因する潜在的な安全性及び環境に対する危険性を低減することである。
【0023】
本発明の更に別の利点は、工業的合金(鉄及び軟鉄などの鋼を含む)が製紙ボイラー・システムにおいて腐食する可能性を決定又は予測するための方法を提供することである。
【0024】
付加的な特性及び利点は本明細書において記載され、及び以下の発明の詳細な説明、図面、及び実施例から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の好適な実施形態を含む、典型的な抄紙機械の乾燥機部分の構成を図示しており、腐食応力モニターの配置を示している。
【図2】図2は、本発明の好適な実施形態を含む例示的なカスケード式(cascading)復水システム設計を図示しており、腐食応力モニターの配置を示している。
【図3】図3は、ティッシュ又はタオル等級の製紙プロセスに応用される、本発明の好適な実施形態を示している。
【図4】図4は、システム中の腐食生成物の増加が、特定の温度及び圧力におけるORP値の変化に与える影響を化学物質供給量との関係において示している。
【図5】図5は、腐食及び腐食生成物の移動を最小化する能力のある3相制御スキームを図示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照するが、ここには典型的な製紙プロセス100における本発明の好適な実施形態が図示されている。この典型的なプロセスでは、サーモコンプレッサーの使用によりプロセスの各部分が独立して作動することが可能になっている。蒸気供給105(典型的に約175psiの蒸気圧力)は、蒸気発生器又はボイラー(図示せず)から進行し、主乾燥機部分125、フェルト乾燥機部分135、第一乾燥機部分145、及びリード乾燥機部分155へ分配される。冷却された蒸気(即ち、復水)は、次に主乾燥機分離器120、フェルト乾燥機分離器130、第一乾燥機分離器140、及びリード乾燥機分離器150を通過して進む。復水は主受液器160に集められ、ここには1つ以上のCSM装置が位置165において配置されている。この復水は、「復水返送」と標識された経路を経由して給水(図示せず)に戻る。位置165のCSM装置に捕捉されたORP信号は、制御装置115に送信され、そこで今度は何らかの追加の化学物質(例えば、還元剤、アミン、pH制御剤など)がサテライト供給点110に加えられるべきか否かが決定され、かかるデータ又は指令をサテライト供給点110に送信(直接的か、又は中間的制御装置又は装置を介するかのいずれかにより)するために制御装置は作動され得る。
【0027】
図2は、カスケード式復水システム200における本発明の実施形態を示している。当技術分野において周知であるように、この種類のシステムは激しい蒸気を滝のように落とし、従ってCO濃度が上昇し、復水pHが低下することが可能になる。高圧蒸気供給205a(温度調整水、典型的に約175psiの蒸気圧力)、及び低圧蒸気供給205b(典型的に約55psiの蒸気圧力)は、蒸気発生器又はボイラー(図示せず)から進行し、(高圧蒸気供給205aに関して)第三乾燥機部分245及び(低圧蒸気供給205bに関して)第一乾燥機部分225、第二乾燥機部分235、第三乾燥機部分245、及び縮み(creping)乾燥機255に分配される。次に冷却された蒸気(即ち、復水)は、構成要素の配列を通過して蒸気発生器(図示せず)への給水へと戻る。図示されたシステムでは、構成要素の配列は第一乾燥機部分復水タンク220及び第一部分主乾燥機タンク222;第二乾燥機部分フラッシュ乾燥機タンク234及び第二乾燥機部分主乾燥機タンク236;第三乾燥機部分フラッシュ乾燥機タンク240及び第三乾燥機部分主乾燥機タンク242;並びに受液器タンク230a及び230bを含む。
【0028】
この復水は、「復水返送」と標識された経路を経由して給水(図示せず)に戻る。位置265a及び/又は265bの1つ以上の位置のCSM装置に捕捉されたORP信号は、制御装置215に送信され、そこで今度は何らかの追加の化学物質(例えば、還元剤、アミン、pH制御剤など)がサテライト供給点210、210a、210b、210c、及び/又は210dに加えられるべきか否かが決定される。制御装置215は、かかるデータ又は指令をサテライト供給点に送信(直接的か、又は中間的制御装置又は装置を介するかのいずれかにより)するために作動され得る。
【0029】
本発明は、ボイラーシステムが利用される任意の製紙プロセスに応用できることを理解されたい。本発明は、蒸気源に依存するヤンキー・ドライヤーの使用に起因して、ティッシュ又はタオル等級の紙を製造する製紙プロセスにおいて、特定の有用性を有する。かかる等級の紙は、当技術分野で周知のさまざまな方法を用いて製造し得る。一例は、現在係属中の米国特許出願第11/564,946号、「Method of Applying a Super−Absorbent Composition to Tissue and Towel Substrates」に開示されている。
【0030】
図3は、ティッシュ又はタオル等級の製紙プロセス300の具体的実施形態を示している。この種のシステムは、典型的に低圧蒸気源305a(一般的に約170psiの蒸気圧力)及び高圧蒸気源305b(一般的に約600psiの蒸気圧力)の2つの蒸気源を含む。この実施形態では、低圧蒸気305aは、蒸気発生器(図示せず)から、過熱防止装置345及びヤンキー・ドライヤー320を通過して進行する。冷却された蒸気はヤンキー・ドライヤー320に存在し、及びヤンキー分離器325を通過して進行し、これは更にサーモコンプレッサー335及びフラッシュ・タンク330に迂回される。
【0031】
この復水は、「復水返送」と標識された経路を経由して給水(図示せず)に戻る。位置365a及び/又は365bの1つ以上の位置のCSM装置に捕捉されたORP信号は、制御装置315に送信され、そこで今度は何らかの追加の化学物質(例えば、還元剤、アミン、pH制御剤、など)がサテライト供給点310a及び/又は210bに加えられるべきか否かが決定される。制御装置315は、かかるデータ又は指令をサテライト供給点に送信(直接的か、又は中間的制御装置又は装置を介するかのいずれかにより)するために作動され得る。
【0032】
記載されたシステム並びにCSM装置及びサテライト供給点のための配置は、単に例示的なものであり、熟練した当業者により決定される他の適切な任意の配置を用い得る。例えば、前述の化学物質を導入するためのサテライト供給配置は、抄紙機械蒸気だめ、低圧温度調整水(図2のもの)、復水戻し、給水、又は任意の他の適切な配置を含み得ることを理解されたい。
【0033】
好適な実施形態では本発明の方法は、情報を受け取り処理して、さまざまな構成要素(例えば、化学物質注入ポンプ)に指令を提供するために作動可能な制御装置を含む。用語「制御装置」とは、手作業を行うオペレーター、又はプロセッサ、記憶装置、デジタル保存媒体、ブラウン管、液晶ディスプレー、プラズマ・ディスプレー、タッチ・スクリーン、又は他のモニター、及び/又は他の構成要素を有する電子装置を称する。好適には、この制御装置は、1つ以上の、特定用途向け集積回路、プログラム、コンピュータにより遂行可能な指令又はアルゴリズム、1つ以上のハードワイアード装置、無線装置、及び/又は1つ以上の機械的装置と統合して作動可能である。更にこの制御装置は、本発明のフィードバック、フィードフォワード、又は予測ループを統合するために作動可能である。制御装置システムの機能のいくつか又は全ては、ローカル・エリア・ネットワーク、広域ネットワーク、無線ネットワーク、インターネット接続、マイクロ波中継装置、赤外線リンクなどを通じた通信のために、ネットワーク・サーバーなどのように中心位置にあることができる。加えて、信号伝達及び信号処理アルゴリズム促進のために、シグナル・コンディショナ又はシステム・モニターなどの他の構成要素が包含され得る。
【0034】
好適にはこの制御装置は、計測システム・パラメータに付随する、任意の測定又は予測された特性に優先順位を付けるために階層論理を含む。例えばこの制御装置は、システムの特定の部分から受け取られたORP測定値を、他のものよりも優先するようにプログラムされることができる。かかる階層論理の目的は、システム・パラメータの改善された制御、及び円形制御ループの防止であることを理解されたい。
【0035】
一実施形態では、この方法は自動化制御装置を含む。別の実施形態では、この制御装置は、手動又は半手動である。例えば、製紙プロセスがシステム内のさまざまなセンサーから受け取った1つ以上のデータセットを有する場合、この制御装置が、どのデータポイント/データセットを更に処理するかを自動的に決定するか、又はオペレーターが部分的若しくは全体的にその決定を行うかの、いずれかが行われる。製紙プロセスからのデータセットは、例えば、酸化還元電位、pH、特定の化学物質若しくはイオンの濃度(例えば、経験的に、自動的に、蛍光的に、電気化学的に、比色分析的に決定された、直接測定された、計算により決定された)、温度、圧力、プロセス流速、溶解した若しくは懸濁した固体、などの変数又はシステム・パラメータを含み得る。かかるシステム・パラメータは、典型的に、pHセンサー、イオン分析器、温度センサー、熱電対、圧力センサー、腐食プローブ、及び/又は任意の他の適切な装置又は方法などの任意の種類の適切なデータ捕捉装置により測定され得る。データ捕捉装置は、好適には前記制御装置と通信しており、及び代替的な実施形態に従うと、制御装置により付与されるより高度な機能を有し得る(本明細書に記載される制御アルゴリズムの任意の部分を含む)。
【0036】
測定されたパラメータ又は信号の、化学物質ポンプ、アラーム、若しくは他のシステム構成要素に向けたデータ送信は、有線、若しくは無線ネットワーク、ケーブル、デジタル加入者回線、インターネットなどの任意の適切な装置を用いて達成し得る。イーサーネット標準、無線インターフェース(例えば、IEEE802.1a/b/g/x、802.16、Bluetooth、光、赤外、無線周波数など)、ユニバーサル・シリアル・バス、電話ネットワークなど、及びかかるインターフェース/接続の組み合わせなどの任意の適切なインターフェース標準を用いることができる。本明細書に用いられる用語「ネットワーク」は、これらのデータ送信方法の全てを包含する。記載された任意の装置(例えば、プラント記録保管システム、データ解析ステーション、データ捕捉装置、プロセス・ステーションなど)が、上述又は他の適切なインターフェース若しくは接続を用いて互いに接続され得る。
【0037】
少なくとも1つの実施形態では、前記制御論理は、システム・サイクルに基づいて変化する速度において化学物質供給を制御するように構造化されている。例えば、抄紙機械がオフラインになったばかりの場合には、信号はスケジュールに従う所定の速度での化学物質供給を開始する。稼動状態に戻った場合には、信号は、同一又は異なる速度で一定期間化学物質の供給を開始させる。正常稼働中に第三のアルゴリズムが、腐食制御のために用いられる。かかる多重アルゴリズムのアプローチにより、抄紙機械の負荷サイクルは、リアルタイムのCSMデータ、及びシステム稼動に関する時間にも続くデータに基づく多様なレベルで積極的に制御される。
【0038】
一実施形態では、システム・パラメータ情報は、システムから受け取られて保存される。別の実施形態では、システム・パラメータ情報は、時刻表又は予定表に従い処理される。更なる実施形態では、システム・パラメータ情報は、リアルタイムで、又は実質的にリアルタイムで直ちに処理される。かかるリアルタイムの受領は、例えば、コンピュータ・ネットワーク上の「ストリーミング・データ」を含み得る。
【0039】
別の実施形態によると、正常稼働中に、腐食生成物の生成を継続的に最小化するために、システムの腐食防護のレベルにおける小さな変動の検出にさえもCSMを作動させることができる。システム腐食防護のレベルの指標としてのORP検出には、任意の適切な装置を用い得るが、好適な装置としては、「Method of Inhibiting Corrosion in Hot Water Systems」と題された米国特許出願第11/403,420号、並びに「High Temperature and Pressure Oxidation−Reduction Potential Measuring and Monitoring Device for Hot Water Systems」と題された第11/668,048号、及び第12/114,288号に記載されたものなどが挙げられる。次いで、制御装置は、かかる変動のいずれかが給水中の化学添加物の調整を必要とするかを決定する。
【0040】
かかる添加物は、給水、サテライト供給位置及び/又は蒸気復水の化学的性質への変化及び調整を含むことができる。例えば、この変化は、給水、サテライト供給位置及び/又は蒸気復水への酸素の添加、又は1つ以上の脱酸素剤の添加を含み得る。定義により、脱酸素剤は還元剤(還元体)であるが、全ての還元剤が必ずしも脱酸素剤であるわけではない。実用的用途のために、低温での相応の反応性が要求される。つまり、好適な反応動力学が存在する。そのうえに、システムの制御並びに腐食の制御のためのシステムの水の化学的性質への他の変化及び調整は、他の酸化剤(酸化体)又は還元剤(還元体)の添加を含み得る。
【0041】
本発明は好適には、給水、サテライト供給位置及び/又は蒸気復水への還元剤の添加量に基づき化学添加物を調整することを含む。用語「還元体」とは、還元剤として反応する能力のある任意の化学物質を称する。還元剤の代表的な非限定的例としては、ヒドラジン、亜硫酸塩、カルボヒドラジド、N,N−ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキノン、エリソルビン酸塩、メチルエチルケトオキシム、ヒドロキシルアミン、タルトロン酸、エトキシキン、メチルテトラゾン、テトラメチルフェニレンアミン、セミ−カルバジド類、ジエチルアミノエタノール、2−ケトグルコン酸、N−イソプロピルヒドロキシルアミン、アスコルビン酸、没食子酸、及びヒドロキシアセトンが挙げられる。
【0042】
少なくとも1つの実施形態では、本発明は、給水又はサテライト供給サイトに加えられる、pH制御化学物質の量を制御することを含む。「pH制御化学物質」とは、溶液、組成物、及び/又は製剤に加えられたときに、pHを調整、管理、若しくは維持する能力のある適切な化学物質若しくは化合物を意味する。代表的なpH調節化学物質としては、シクロヘキサミン、モルホリン、ジエチルアミノエタノール(DEAE)、メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミンなどのアンモニア及びアミン類、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
休止状態が生じたときに、前記CSMは、金属の状態が好適な低腐食状態に戻るまで、金属不動態化処理の供給を最適化する能力がある。熱水系での休止状態での腐食防御の重要性の一具体例は、「Method and Device for Preventing Corrosion in Hot Water Systems Undergoing Intermittent Operations」と題された、現在係属中の米国特許出願第11/852,616号に一般的に記載されている。
【0044】
以上の記述は、説明の目的のためのみに提供され、本発明の範囲を制限する意図のない、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解され得るであろう。
【実施例】
【0045】
実施例1
ティッシュ又は製紙工場の復水システムの測定及び制御は、未だにCSMアプローチを用いて試みられてはいない。しかし、腐食を抑制するための化学添加物の適用は一連の製紙工場において用いられている。CSM制御装置の配備に起因する改善された制御は、以下の両方又はそのいずれかを改善するであろう:1)所定の成績レベルのORPへ適用することによる化学添加物の成績、又は2)現在のところ、既存の監視能力によっては最適化できていない適用の経済性。現時点において行い得る最善は、化学添加物プログラムの現在の適用を参照し、次いで、上述の改善のいずれか又は両方が、制御方法論が配備されたときに実現されることを期待することである。
【0046】
実施例2
この実施例は、化学物質供給量及びシステムの腐食生成物増加の可能性との関係におけるORPの設定範囲を、達成又は維持するための化学物質供給の理論的なシナリオを説明している。所望のCSM(即ち、一定温度及び圧力でのORP)を達成するためにシステムに供給される必要のある化学物質量が図4のグラフのX軸に示されている。所望のORP範囲はY1−軸に示されている。Y2−軸は温度及び圧力でのORPレベルを変化させることにより予期される腐食生成物の増加量を示している。これらのORP値が腐食生成物の増加を予測するものであり、制御装置を介するORPの調整がかかる腐食生成物に対して影響を与えることが明白である。
【0047】
実施例3
この実施例は、腐食及び腐食生成物のシステム内での移動を最小化するための時限のCSM制御スキームの活用可能性を説明している。抄紙機械は、起動時には100%で2時間、還元剤又は他の化学物質がポンプにより注入(図5のX軸のフェーズAとして指定される)されることができる。フェーズBでは、化学物質供給速度は−325mV(小さな範囲内)の設定点を達成するためにCSMからの入力を介して制御される。設定点/範囲は、個別の特定の用途に対して通常当業者により決定されることを理解されたい。抄紙機械が停止されると(例えば補修のためなど、又は紙の破断に起因して)、制御シークエンスはフェーズCに示されるように80%で化学物質をポンプ注入する。かかるシークエンスは系内の腐食及び腐食生成物の復水流への放出の最小化を導くことが、図5に見ることができる。
【0048】
実施例4
この実施例は、本発明に対する工業からの顕著な需要を説明している。従来の技術においては、製紙プロセスのボイラー・システムは十分よく制御されてはいない。より大きな製紙機械では、腐食を受けやすい内表面積は巨大である(2インチの内径で、17マイルの長さの管の内表面積とおよそ等しい)。現在の方法がおおむね良好な腐食制御を提供するとは言いながら、処理しきれない腐食のレベルによって、ボイラー・システムに移動され、堆積物イオンの問題がもたらされるほどに十分に多量の酸化鉄又は他の腐食副生成物がもたらされている。
【0049】
本発明は、多くの異なる形態において実施可能であるが、その詳細は、本発明の具体的な好適な実施形態において、示されかつ記載されている。本開示は本発明の原理の例示であり、本発明を説明された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。更に本発明は、本明細書において記載されたさまざまな実施形態のいくつか、又は全ての可能な組み合わせを包含するものである。本明細書において言及された、全ての特許、特許出願、及び参考文献は、参照によりその全体が本願に組み込まれる。
【0050】
当業者には、本明細書に現在記載された好適な実施形態に対する、さまざまな変更及び修正が自明であることを理解されたい。かかる変更及び修正は、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、及びその意図された利点を損なうことなく可能である。従って、かかる変更及び修正も添付された請求範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙プロセスにおけるボイラー復水及び/又はボイラー給水の汚染を検出する方法であって:
(a)前記製紙プロセスのボイラー復水及び/又はボイラー給水の1つ以上の位置において、その操作温度及び圧力において酸化還元電位(以下、「ORP」と呼ぶ)を測定する能力のある1つ以上の装置(以下、「CSM装置」と呼ぶ)によりORPを測定することであって、該CSM装置は制御装置と通信させるために作動可能である測定を行うこと;及び
(b)測定されたORPを前記制御装置に送信すること;
(c)前記測定されたORP又は前記測定されたORPに基づいて計算されたORPが最適範囲内にあるか否かを評価すること;及び
(d)前記測定されたORP、又は前記計算されたORPが前記最適範囲内にない場合には、前記制御装置は、1つ以上の還元剤、及び/又は1つ以上のpH調節化学物質の有効量を前記製紙プロセスのボイラー給水及び/又は1つ以上のサテライト供給位置の中に供給することを命令する信号の送信を引き起こすこと、とを含む方法。
【請求項2】
前記1つ以上の設置されたCSM装置が、前記ボイラー復水及び/又は前記ボイラー給水と接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サテライト供給位置が、抄紙機械蒸気だめ、低圧温度調整水、復水戻り、給水、及びそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記測定されたORP又は信号を無線により送信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記最適範囲がユーザにより定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
連続的に、自動的に、及び/又はオンラインにより、前記方法を操作することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法を間歇的に操作することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ボイラー復水及び/又はボイラー給水に付随する1つ以上の弁を開放又は閉鎖する機構を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ネットワークを通じて前記方法を操作することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
その上に保存されたコンピュータにより実行可能な指令を有するデジタル保存媒体であって、該指令は請求項1に記載の方法を実行する媒体。
【請求項11】
製紙プロセスにおけるボイラー復水及び/又はボイラー給水の汚染を検出するシステムであって:
オンラインであり及び操作中の製紙プロセスの蒸気発生器から導出される復水流中の酸化還元電位(以下、「ORP」)を測定する能力のある、少なくとも1つの装置と通信する制御装置;及び
前記蒸気発生器のために、少なくとも1つの還元剤及び/又はpH制御化学物質を、ボイラー給水内及び/又は1つ以上のサテライト供給位置内に注入するために用いられる、少なくとも1つの化学物質注入ポンプであって、測定されたORP及び該化学物質注入ポンプの操作に関係する信号を、受信し、送信するために操作可能であるポンプ;
前記抄紙機械及び前記ボイラー又は蒸気発生器から導出された蒸気及び/又は復水流の間に熱力学的接続を形成するインターフェース;
復水返送ライン;
並びに復水廃棄システムを含む、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−524882(P2012−524882A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507256(P2012−507256)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/030969
【国際公開番号】WO2010/123724
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】