説明

製紙用シーム付きプレスフェルト

【課題】製紙機のプレスパートで用いられ、1対の経糸の折り返し部で端部接合用のループが形成されると共に、厚さ方向に重ねて配された各経糸により構成される基布層が2層重なり合うように織機上で一体的に製織された織布からなる基布を有する製紙用シーム付きプレスフェルトにおいて、優れた耐圧縮性を実現すると共に、特殊な織機を用いることなく低コストに製造することができるようにする。
【解決手段】2つの基布層11・12間を移動してその基布層を相互に結合する接結緯糸5a〜5hを有し、この接結緯糸が、幅方向に並んだ経糸3・4の複数本分の間隔をおいて入れ替わりながら基布層を構成するように織り込まれたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙機のプレスパートで用いられ、1対の経糸の折り返し部で端部接合用のループが形成されると共に、厚さ方向に重ねて配された各経糸により構成される基布層が2層重なり合うように織機上で一体的に製織された織布からなる基布を有する製紙用シーム付きプレスフェルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
抄紙機への掛け入れ作業性を向上させるため、有端のフェルトをフェルトランに引き込んだ上でその両端部を互いに接合して無端とする、いわゆるシーム付きフェルトが広く普及している。この種のシーム付きフェルトでは、基布を構成する経糸を厚さ方向に折り返して丈方向の両端部にループを形成し、その両端部のループを互いの中心孔が整合するように交互にかみ合わせて形成された共通孔に芯線を通すことで、両端部を接合するようにした構成が一般的である。
【0003】
一方、製紙機のプレスパートで使用されるプレスフェルトにおいては、製紙機上で繰り返し圧縮されることで徐々に薄くなり、これに伴って基布の空隙量が次第に小さくなるが、この空隙量は搾水性を左右する重要な要素の1つであり、製紙機の使用パートで要求されるレベルに維持されることが製紙機を効率良く稼働させる上で重要である。
【0004】
このような使用継続時の空隙量変化を小さく抑えるには、耐圧縮性、具体的には使用中に作用する圧縮力に対して潰れ難い圧縮抵抗性、及び圧縮力がなくなった際に元の状態に回復する圧縮回復性を向上させれば良く、特に大きな脱水量の使用パートでは空隙量が搾水性に与える影響が大きくなることから、このようなパート用のフェルトでは安定した搾水性を確保する観点から耐圧縮性を向上させることの重要度はより一層高くなる。
【0005】
また、フェルトの搾水性を高めるには基布の空隙量を増やせば良いが、これには、基布を構成する糸を太くする他、経糸を多重に配した構成の基布を採用すれば良く、このような多重構造の基布として、織機で多重織で織り上げた多重織構造のものや、織機で別々に織り上げられた複数枚の織物を重ね合わせたラミネート構造のものが知られている(特許文献1〜5参照)。
【0006】
しかしながら、多重織構造のものでは、使用継続時の空隙量変化が大きく、十分な耐圧縮性を得ることができない不都合がある。他方、ラミネート構造のものでは、使用継続時の空隙量変化が小さく、耐圧縮性の面では多重織構造のものより有利であるが、製造時に、複数枚の織布を別々に製織して熱セットを行い、さらに基布に不織繊維層を一体化させるニードリング工程で、皺を防止するために織布の寸法を合わせる作業が必要になり、工数が嵩むことから製造コストが上昇する難点がある。
【0007】
そこで、本件出願人は、優れた耐圧縮性を有するラミネート構造の利点を残しつつ、製造時の工数が嵩む難点を改善することを目的として、製紙フェルト用多重織基布(特願2006−25558)を先に提案した。これは、複数本の経糸が相互に一体化するように緯糸を絡合させた多重織部と、複数本の経糸の各々に絡合する緯糸が厚さ方向に重なり合って一重織の織物層を重ね合わせた状態となる一重織重合部とからなる単位組織の繰り返しで構成されたものである。
【0008】
また、シーム付きフェルトにおいては、抄紙機への掛け人れ性が良いことが最大の利点であるが、ラミネート構造の基布では、上下の織物の位置にずれが発生することで、ループが傾く可能性があり、このループの傾きは掛け入れ性を低下させる要因となり、特にループの傾きが不均一に発生した場合には、掛け入れ性の大きな低下が引き起こされる。このような観点から、シーム付きフェルトには、ラミネート構造の基布は不適であり、多重織構造の基布を使用することが一般的である。
【0009】
これに対して、ラミネート構造が有する利点である耐圧縮性を確保するために、地部をラミネート構造としつつ、ループの近傍部分を多重織構造として、ループの形状を安定させるようにした技術が知られている(特許文献6参照)。これによれば、基布を構成する織物のずれによりループが不均一に傾くことを防止して、掛け入れ性の低下を小さく抑えることができる可能性がある。
【特許文献1】特公平5−47675号公報
【特許文献2】特開平9−31881号公報
【特許文献3】特開2001−254287号公報
【特許文献4】特開2000−256984号公報
【特許文献5】特開2005−200819号公報
【特許文献6】WO2006/045892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記の多重織部と一重織重合部とからなる単位組織の繰り返しで構成された構造のものでは、一重織重合部の割合を大きく確保することで耐圧縮性を向上させることができるが、通常の織機において一重織重合部の緯糸に割り当てられる綾枚数に制限があるため、一重織重合部の割合を大きくするのに限界があり、また通常より多くの綾を使用可能な織機を用いることも考えられるが、この場合、製造コストが大幅に上昇する難点がある。
【0011】
また、前記の地部をラミネート構造としつつループの近傍部分のみを多重織構造としたものでは、ループの近傍部分と地部とで組織構造が異なることから、プレスロールによる加圧時に圧力差が生じるため、紙にシームマークが発生するおそれがあり、またこのシームマークの発生を避けるために多重織構造部分の幅を狭くしたのでは、上下の基布層の接結が不十分になってしまう不都合が生じる。さらに、このような構造の基布を製織するにあたっては、ループの近傍の多重織組織を形成するために2枚以上の綾粋が必要となり、通常より綾枚数の多い織機を使用するか、ループ際に多重織部用の整経糸を供給する装置を設置する必要があり、製造コストが嵩む難点がある。
【0012】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、優れた耐圧縮性を実現すると共に、特殊な織機を用いることなく低コストに製造することができるように構成された製紙用シーム付きプレスフェルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するために、本発明においては、請求項1に示すとおり、製紙機のプレスパートで用いられ、1対の経糸の折り返し部で端部接合用のループが形成されると共に、厚さ方向に重ねて配された各経糸により構成される基布層が2層重なり合うように織機上で一体的に製織された織布からなる基布を有する製紙用シーム付きプレスフェルトにおいて、2つの前記基布層間を移動してその基布層を相互に結合する複数の接結緯糸を有し、この複数の接結緯糸が、幅方向に並んだ前記経糸の複数本分の間隔をおいて入れ替わりながら前記基布層を構成するように織り込まれたものとした。
【0014】
これによると、接結緯糸同士が入れ替わる部分を除き、多くの部分が、経糸に絡合する緯糸が厚さ方向に重なり合うことで、別々に製織された複数枚の織布を重ね合わせたラミネート構造の基布と類似のラミネート構造部となるため、多重織構造の基布に比べて高い耐圧縮性を得ることができ、さらにラミネート構造部の比率を高めることで、ラミネート構造の基布と略同等の耐圧縮性を実現することができる。
【0015】
また、ラミネート構造部分の比率は織機の綾枚数と関係がなく、ラミネート構造部分の比率を高くするには、組織列(緯糸となる各整経糸の動きのパターン)を増やす、具体的には織機を制御するパソコンに入力する組織列数を増やすだけで良く、織機の構造に制限されない。このため、特別に多くの綾枚数を使用可能な高価な織機を導入することなく、既存の織機を用いて高い耐圧縮性を備えた基布を低コストに製造することができる。
【0016】
前記製紙用シーム付きプレスフェルトにおいては、請求項2に示すとおり、前記ループを形成する1対の経糸の各々により構成される製紙面側及び走行面側の前記基布層の組織構造が互いに同一である構成とすることができる。これによると、ループを形成する1対の経糸の各々による基布層の組織構造が互いに同一、すなわち各経糸に対する緯糸の絡合形態が2つの基布層で互いに同一となっているため、ループの基部において緯糸から経糸の各々に作用する外力が均一になり、ループの歪みを十分に除去して、ループの形態を精密に安定させることができる。
【0017】
前記製紙用シーム付きプレスフェルトにおいては、請求項3に示すとおり、前記経糸及び緯糸が、0.30mm以上の直径を有するモノフィラメントの単糸、あるいは糸番手10.0以下のモノフィラメントの撚り糸からなる構成とすることができる。これによると、基布の組織構造による耐圧縮性向上効果に加えて、耐圧縮性に優れた糸材を使用することで、フェルトの耐圧縮性をより一層高めることができる。
【0018】
前記製紙用シーム付きプレスフェルトにおいては、請求項4に示すとおり、前記接結緯糸とは別に、複数の前記基布層間を移動せずに単一の前記基布層のみを構成する通常緯糸を有し、この通常緯糸が、隣接するもの同士で互いに厚さ方向に重なり合うように織り込まれた構成とすることができる。これによると、通常緯糸が厚さ方向に重なり合うことでラミネート構造が形成されて、ラミネート構造部分の比率をより一層高めることができるため、耐圧縮性を向上させることができる。
【0019】
なお、本発明による基布は、織機上で一体的に製織された1枚の織布のみからなるものの他、前記の接結緯糸を有する織布にこれとは別に製織された織布を重ね合わせたラミネート構造としたものも可能である。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明によれば、接結緯糸が入れ替わる部分を除き、多くの部分がラミネート構造となるため、高い耐圧縮性を実現することができ、これにより使用継続時の空隙量変化を小さく抑えて、安定した搾水性を確保することができる。さらに織機の構造に制限されることなくラミネート構造部分を適宜に増やすことができるため、既存の織機を用いて耐圧縮性に優れたフェルトを低コストに製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、本発明によるフェルトを示す丈方向の断面図である。図2は、図1に示した基布の幅方向の模式的な断面図である。図3は、図1に示した基布の製織の状況を示す模式図である。図4は、図3に示したA部を拡大して示す模式図である。
【0023】
このフェルトは、図1に示すように、ニードリングにより基布1に不織繊維層2を積層一体化してなるものであり、基布1は、製紙面8側の第1の経糸3と走行面9側の第2の経糸4とが厚さ方向に重ねて設けられた経糸二重構造をなしており、この第1・第2の経糸3・4に緯糸5a〜5hが絡合して第1・第2の2つの基布層11・12が形成されている。
【0024】
また、経糸3・4となる糸の折り返しにより丈方向の両端部15・16に端部接合用のループ17・18がそれぞれ形成され、その互いの中心孔が整合するように交互にかみ合わされて形成された共通孔に接合用の芯線19を挿通することで両端部15・16が互いに接合される。
【0025】
緯糸(接結緯糸)5a〜5hは、図2に示すように、隣接する2本の緯糸5a・5b、緯糸5c・5d、緯糸5e・5f、及び緯糸5g・5hが互いに対をなしており、その一方が第1の経糸3に絡合して第1の基布層11を構成する領域では、他方が第2の経糸4に絡合して第2の基布層12を構成し、所定の間隔(経糸3・4の横5本分)をおいた同一の幅方向位置で互いに入れ替わるように第1・第2の基布層11・12間を移動して、2つの基布層11・12が相互に結合されるようになっている。
【0026】
この基布1では、第1・第2の経糸3・4による第1・第2の各基布層11・12の組織構造が互いに同一、すなわち第1・第2の経糸3・4に対する緯糸5a〜5hの絡合形態が第1・第2の各基布層11・12で互いに同一となっている。具体的には、製紙面側の第1の基布層11では、緯糸5a〜5hが、経糸3の1本ごとに浮沈する平織りで織り込まれており、走行面側の第2の基布層12でも、緯糸5a〜5hが経糸4の1本ごとに浮沈する平織りで織り込まれている。
【0027】
この基布1は、図3に示すように、製紙機上の第1・第2の経糸3・4を織機上で打込み糸として織り上げられ、製紙機上の緯糸5a〜5hは織機上では経糸(整経糸)となっており、ループ形成用芯材31に打込み糸を絡めてループ17・18を形成しながら袋織りで基布1が無端状に織り上げられる。
【0028】
具体的には、ループ17・18が織機上の耳部32・33の一方に形成され、この耳部32において経糸3・4となる打込み糸をループ形成用芯材31に引っ掛けて折り返すことでループ17・18が形成され、このようにして基布1が無端状に織り上げられ後、ループ17・18からループ形成用芯材31を引き抜くことで有端状に展開される。
【0029】
図4において緯糸5a〜5hとなる整経糸に付した数字は、16枚の綾を使用して製織する場合の綾番号を示し、各緯糸5a〜5hとなる整経糸が、異なる綾に通されて、図4中に点線で示すように、第1・第2の経糸3・4となる打込み糸に絡み合うように動かされる。
【0030】
この基布1においては、図2に示すように、緯糸5a〜5hの互いに対をなすもの同士が入れ替わる部分を除き、多くの部分が、経糸3・4に絡合する緯糸5a〜5hが厚さ方向に重なり合って互いに独立した織物層を重ね合わせたラミネート構造となるため、高い耐圧縮性を得ることができ、これにより使用継続時の空隙量変化を小さく抑えて、安定した搾水性を確保することができる。
【0031】
また、ラミネート構造部分の比率は織機の綾枚数と関係がなく、ラミネート構造部分の比率を高くするには、組織列(緯糸となる各整経糸の動きのパターン)を増やす、具体的には織機を制御するパソコンに入力する組織列数を増やすだけで良く、織機の構造に制限されない。
【0032】
特にここでは、第1・第2の経糸3・4による第1・第2の各基布層11・12の組織構造が互いに同一、すなわち第1・第2の経糸3・4に対する緯糸5a〜5hの絡合形態が第1・第2の各基布層11・12で互いに同一となっているため、ループ17・18の形態を均一化することができる。
【0033】
経糸3・4及び緯糸5a〜5hは共にモノフィラメントの単糸からなる。材質は経糸3・4及び緯糸5a〜5h共にポリアミドが好適である。また太さは、経糸3・4及び緯糸5a〜5h共に直径0.30mm以上の直径を有するもの、例えば経糸3・4及び緯糸5a〜5h共に直径0.35mmとすると良い。これによると、基布の組織構造による耐圧縮性向上効果に加えて、耐圧縮性に優れた糸を使用することで、フェルトの耐圧縮性をより一層高めることができる。
【0034】
図5は、本発明によるフェルトの基布の別の例を示す幅方向の模式的な断面図である。なお、丈方向の断面は、図1の例と略同一である。
【0035】
この基布51では、前記の例と同様に、製紙面側の第1の経糸53と走行面側の第2の経糸54とが厚さ方向に重ねて設けられた経糸二重構造をなしているが、ここでは前記の例と異なり、第1・第2の経糸53・54による第1・第2の各基布層57・58の組織構造が互いに異なる、すなわち第1・第2の経糸53・54に対する緯糸55a〜55hの絡合形態が第1・第2の各基布層57・58で互いに異なっている。
【0036】
具体的には、製紙面側の第1の基布層57では、緯糸55a〜55hが、3本の経糸53の走行面側を通った後に1本の経糸53の製紙面側を通る3/1崩織で織り込まれている。他方、走行面側の第2の基布層58では、緯糸55a〜55hが経糸54の1本ごとに浮沈する平織りで織り込まれている。
【0037】
緯糸(接結緯糸)55a〜55hは、前記の例と同様に、互いに対をなすものの一方が第1の経糸53に絡合して第1の基布層57を構成する領域で、他方が第2の経糸54に絡合して第2の基布層58を構成し、所定の間隔(経糸53・54の横7本分)で互いに入れ替わるように第1・第2の基布層57・58間を移動して、2つの基布層57・58が相互に結合されるようになっている。
【0038】
この基布51においては、緯糸55a〜55hの互いに対をなすもの同士が入れ替わる部分を除き、多くの部分が、経糸53・54に絡合する緯糸55a〜55hが厚さ方向に重なり合って互いに独立した織物層を重ね合わせたラミネート構造となるため、高い耐圧縮性を得ることができ、これにより使用継続時の空隙量変化を小さく抑えて、安定した搾水性を確保することができる。
【0039】
また、この基布51においては、2つの各基布層57・58が確実に接合されているため、基布層57・58相互のずれは発生せず、端部接合用のループの傾きはほとんど生じない。ただし、この基布51では、2つの基布層57・58の組織構造が互いに異なるため、ループの基部において緯糸55a〜55hから経糸53・54の各々に作用する外力が不均一になり、ループに若干の歪みが発生する可能性がある。これに対して、図2に示した例のように、2つの基布層11・12の組織構造を同一にすると、ループ17・18の基部において緯糸5a〜5hから経糸3・4の各々に作用する外力が均一になり、ループ17・18の歪みを十分に除去して、ループ17・18の形態を精密に安定させることができる。
【0040】
図6は、本発明によるフェルトの別の例を示す丈方向の断面図である。図7は、図6に示した基布の幅方向の模式的な断面図である。
【0041】
この基布61では、前記の例と同様に、製紙面側の第1の経糸63と走行面側の第2の経糸64とが厚さ方向に重ねて設けられた経糸二重構造をなしているが、ここでは前記の例と異なり、単位組織を構成する緯糸65a〜65hのうち、緯糸(通常緯糸)65c・65d・65g・65hが、第1・第2の経糸63・64による基布層67・68間を移動せずに第1・第2の基布層67・68のいずれかのみを構成している。
【0042】
緯糸(接結緯糸)65a・65b・65e・65fは、図7に示すように、互いに対をなすものの一方が第1の経糸63に絡合して第1の基布層67を構成する領域で、他方が第2の経糸64に絡合して第2の基布層68を構成し、所定の間隔(経糸63・64の横3本分)で互いに入れ替わるように第1・第2の基布層67・68間を移動して、2つの基布層67・68が相互に結合されるようになっている。
【0043】
この基布61においては、緯糸(接結緯糸)65a・65b・65e・65fが入れ替わる部分を除き、経糸63・64に絡合する2本の緯糸65a・65b及び緯糸65e・65fが厚さ方向に重なり合って互いに独立した織物層を重ね合わせたラミネート構造となるため、高い耐圧縮性を得ることができ、これにより使用継続時の空隙量変化を小さく抑えて、安定した搾水性を確保することができる。
【0044】
特にここでは、基布層67・68間を移動しない緯糸(通常緯糸)65c・65d・65g・65hが、2本ずつ互いに近接して設けられており、この2本の緯糸65c・65d及び緯糸65g・65hが厚さ方向に重なり合ってラミネート構造を形成することから、ラミネート構造部分の割合を高めることができるため、耐圧縮性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明にかかる製紙用シーム付きプレスフェルトは、優れた耐圧縮性を実現すると共に、特殊な織機を用いることなく低コストに製造することができる効果を有し、製紙機のプレスパート(圧搾部)で用いられるプレスフェルト、特に大きな脱水量を確保するために基布に大きな空隙量が要求されるパートや、プレス圧が高いために高い耐圧縮性が要求されるパートで用いられるプレスフェルトなどとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明によるフェルトを示す丈方向の断面図である。
【図2】図1に示した基布の幅方向の模式的な断面図である。
【図3】図1に示した基布の製織の状況を示す模式図である。
【図4】図3に示したA部を拡大して示す模式図である。
【図5】本発明によるフェルトの基布の別の例を示す幅方向の模式的な断面図である。
【図6】本発明によるフェルトの別の例を示す丈方向の断面図である。
【図7】図6に示した基布の幅方向の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1・51・61 基布
2 不織繊維層
3・4・53・54・63・64 経糸
5a〜5h・55a〜55h・65a・65b・65e・65f 緯糸(接結緯糸)
65c・65d・65g・65h 緯糸(通常緯糸)
8 製紙面
9 走行面
11・12・57・58・67・68 基布層
17・18 ループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙機のプレスパートで用いられ、1対の経糸の折り返し部で端部接合用のループが形成されると共に、厚さ方向に重ねて配された各経糸により構成される基布層が2層重なり合うように織機上で一体的に製織された織布からなる基布を有する製紙用シーム付きプレスフェルトであって、
2つの前記基布層間を移動してその基布層を相互に結合する複数の接結緯糸を有し、この複数の接結緯糸が、幅方向に並んだ前記経糸の複数本分の間隔をおいて入れ替わりながら前記基布層を構成するように織り込まれたことを特徴とする製紙用シーム付きプレスフェルト。
【請求項2】
前記ループを形成する1対の経糸の各々により構成される製紙面側及び走行面側の前記基布層の組織構造が互いに同一であることを特徴とする請求項1に記載の製紙用シーム付きプレスフェルト。
【請求項3】
前記経糸及び緯糸が、0.30mm以上の直径を有するモノフィラメントの単糸、あるいは糸番手10.0以下のモノフィラメントの撚り糸からなることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の製紙用シーム付きプレスフェルト。
【請求項4】
前記接結緯糸とは別に、複数の前記基布層間を移動せずに単一の前記基布層のみを構成する通常緯糸を有し、この通常緯糸が、隣接するもの同士で互いに厚さ方向に重なり合うように織り込まれたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の製紙用シーム付きプレスフェルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−19282(P2009−19282A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180514(P2007−180514)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000229852)日本フエルト株式会社 (55)
【Fターム(参考)】