製紙用フェルト及びその製造方法
【課題】基布となる有端の織布の端部を相互に接合した部分で地部と大きな物性上の違いが発生することがなく、且つ織布の端部の接合作業を簡単にして製造工数を削減することができるようにする。
【解決手段】基布1に不織繊維層2をニードリングにより積層一体化してなり、基布となる有端の織布11の端部11a・11bが相互に接合されるフェルトにおいて、基布となる織布の端部が接合相手となる端部と互いに重ね合わされ、この互いに重ね合わされる重合領域13・14に、緯糸4を引き抜いて形成された無緯糸部15・17と、地部と同様の有緯糸部16・18とを設け、一方の端部11a側の無緯糸部15及び有緯糸部16が、他方の端部11b側の有緯糸部18及び無緯糸部17にそれぞれ重なるようにする。
【解決手段】基布1に不織繊維層2をニードリングにより積層一体化してなり、基布となる有端の織布11の端部11a・11bが相互に接合されるフェルトにおいて、基布となる織布の端部が接合相手となる端部と互いに重ね合わされ、この互いに重ね合わされる重合領域13・14に、緯糸4を引き抜いて形成された無緯糸部15・17と、地部と同様の有緯糸部16・18とを設け、一方の端部11a側の無緯糸部15及び有緯糸部16が、他方の端部11b側の有緯糸部18及び無緯糸部17にそれぞれ重なるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基布に不織繊維層をニードリングにより積層一体化してなり、基布となる有端の織布の端部が相互に接合された製紙用フェルト及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抄紙機への掛け入れ作業性を向上させるため、有端のフェルトをフェルトランに引き込んだ上でその両端部を互いに接合して無端とする、いわゆるシーム付きフェルトが知られている。
【0003】
この種のシーム付きフェルトでは、基布を構成する経糸の折り返しにより丈方向の両端部に形成されたループをかみ合わせてできた共通孔に芯線を通すことで、両端部を接合するようにしており、製造するにあたっては、抄紙機上の緯糸を織機上で経糸(整経糸)とし、抄紙機上の経糸を織機上で打込み糸として織り上げることで、基布の両端部にループを形成する方式の他に、有端の織布を折り畳むことで両端部に形成された折曲部での経糸の折り返しによりループを形成する方式が知られている(特許文献1・2参照)。
【特許文献1】特開平1−306696号公報
【特許文献2】特許第2838547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記の折り畳み方式によるシーム付きフェルトは、有端の織布を用いることができることから、小型や高速の織機を用いて低コストに製造することができ、また織布を適当な寸法に裁断することで多様な丈寸法の基布を容易に製造することができる利点を有しているが、その反面、織布の端部を相互に接合する必要があり、この端部の接合にあたっては、丈方向の外力に対して十分な強度を確保すると共に、接合箇所で厚みや通水性(開口率)などの物性が地部と大きく異なると、製紙品質を低下させる原因となることから避けることが望ましく、このような観点から、従来は縫合による接合が一般的に行われているが、これには非常に手間を要する難点がある。この織布の端部の接合に関する問題は、有端の織布から無端の基布を製作してエンドレスフェルトとする場合も同様である。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、基布となる有端の織布の端部を相互に接合した部分で地部と大きな物性上の違いが発生することがなく、且つ織布の端部の接合作業を簡単にして製造工数を削減することができるように構成された製紙用フェルト及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明においては、請求項1に示すとおり、基布に不織繊維層をニードリングにより積層一体化してなり、前記基布となる有端の織布の端部が相互に接合された製紙用フェルトにおいて、前記基布となる織布の各端部に、緯糸を引き抜いて形成された無緯糸部と、地部と同様の有緯糸部とからなる重合領域が設けられ、互いに接合される一対の端部の一方に設けられた前記有緯糸部及び無緯糸部が、他方に設けられた前記無緯糸部及び有緯糸部にそれぞれ重なるように、前記織布の端部が互いに重ね合わされたものとした。
【0007】
これによると、重合領域で、地部と同様の有緯糸部に経糸のみの無緯糸部が重なり合うものの、この重合領域では地部に比較して経糸に相当する分だけ厚みや通水性などの物性が変化するだけであり、地部との物性上の違いを小さく抑えることができる。しかも、重合領域では、織布の経糸及び緯糸に不織繊維層の形成繊維が絡み付くことで、織布の端部同士が強固に一体化されるため、縫合などの手間を要する処理を行わずとも、丈方向の外力に対して十分な強度を確保することができる。
【0008】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項2に示すとおり、前記織布の各端部にそれぞれ設けられた前記無緯糸部の経糸を交互にかみ合わせて形成された共通孔に芯線が挿通された構成とすることができる。これによると、重合領域で互いに重ね合わされた織布部分が芯線を介して相互に接合されるため、丈方向の外力に対してずれることなく、高い寸法安定性を得ることができる。
【0009】
特にこの構成では、不織繊維層の形成繊維の絡み付きによらずに丈方向の外力に対して高い強度を確保することができるため、基布に不織繊維層を積層一体化するニードリング工程において、基布に張力を付与して基布を適度に緊張させた状態とする際に、織布の端部がずれることを防止することができる。また織布の端部の仮止めのために縫合や溶着を行うことも可能であるが、この場合、ミシンや超音波ウェルダーなどの接合装置の構造上の都合から接合寸法が制約されるため、幅寸法が大きい基布では全幅に渡って一様に接合することが難しいが、前記のように経糸をかみ合わせて芯線を挿通する構成では、接合装置が不要であり、全幅に渡る接合を容易に行うことができる。
【0010】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項3に示すとおり、前記有緯糸部が、前記織布の末端側に設けられた構成とすることができる。これによると、丈方向の引張力に対して、互いに重なり合う重合領域の有緯糸部同士が引っ掛かるようにして端部のずれが抑制されるため、高い接合強度を得ることができる。
【0011】
なお、織布の末端には、解れを防止するために溶着や接着剤の塗布などを行うと良い。
【0012】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項4に示すとおり、製紙面側から樹脂材料が含浸又は塗布された構成とすることができる。これによると、重合領域を重ね合わせた形態の基布の接合部と地部との構造上の違いに起因する紙へのマークの発生を低減することができる。基布の接合部では、不織繊維層によりかなりのマーク低減効果が得られるが、樹脂材料の含浸・塗布による樹脂加工によりマークをより一層低減することができる。さらに、樹脂加工を施すことにより、厚さ保持性、搾水性、表面の平滑性、耐久性などの向上を図ることができる。
【0013】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項5に示すとおり、前記基布が、前記織布を複数枚重ね合わせて構成され、この複数枚の織布ごとに端部を前記重合領域により接合した各接合部が丈方向にずらして配置された構成とすることができる。これによると、織布の接合部が別の織布の地部と重なり合って補強されるため、高い強度を得ることができる。
【0014】
また本発明においては、請求項6に示すとおり、基布に不織繊維層をニードリングにより積層一体化してなり、前記基布となる有端の織布の端部が相互に接合された製紙用フェルトの製造方法において、前記基布となる織布の各端部に、緯糸を引き抜いて形成された無緯糸部と、地部と同様の有緯糸部とからなる重合領域を設け、互いに接合される一対の端部の一方に設けられた前記有緯糸部及び無緯糸部が、他方に設けられた前記無緯糸部及び有緯糸部にそれぞれ重なるように、前記織布の端部を互いに重ね合わせたものとした。
【0015】
これによると、重合領域で、地部と同様の有緯糸部に経糸のみの無緯糸部が重なり合うものの、この重合領域では地部に比較して経糸に相当する分だけ厚みや通水性などの物性が変化するだけであり、地部との物性上の違いを小さく抑えることができる。しかも、重合領域では、織布の経糸及び緯糸に不織繊維層の形成繊維が絡み付くことで、織布の端部同士が強固に一体化されるため、縫合などの手間を要する処理を行わずとも、丈方向の外力に対して十分な強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、織布の端部を相互に接合した部分と地部との物性上の違いを小さく抑えることができ、且つ織布の端部の接合作業を簡単にして製造工数を削減することができ、製造コストを削減する上で大きな効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明によるフェルトの一例を示す断面図である。このフェルトは、基布1に不織繊維層2をニードリングにより積層一体化してなるものであり、基布1は、経糸3に緯糸4を絡合させた織布を2層重ね合わせた二重構造をなしている。
【0019】
このフェルトは、シーム付きフェルトであり、基布1には、丈方向の端部1a・1bでの経糸3の折り返しにより接合ループ6・7が形成されており、この接合ループ6・7を互いの中心孔が整合するように交互にかみ合わせて形成された共通孔に芯線8を挿通することで、本フェルトが無端状に接合される。
【0020】
図2は、図1に示したフェルトの製造過程を段階的に示す模式的な断面図である。図3は、図1に示した織布の要部を示す斜視図である。
【0021】
基布1は、図2に示すように、端部11a・11bを相互に重ね合わせてリング状にした1枚の有端の織布11を潰すように折り畳んで製作され、丈方向の両端にそれぞれ形成される折曲部11c・11dにて接合ループ6・7が形成され、この2つの折曲部11c・11dを境界にして第1〜第3の部分11e〜11gに区画される。
【0022】
織布11の端部11a・11bは、図3に示すように、互いに重ね合わされるようにして接合され、端部11a・11bの各重合領域13・14には、緯糸4を引き抜いて形成された無緯糸部15・17と、地部と同様の有緯糸部16・18とが設けられ、一方の端部11a側の無緯糸部15及び有緯糸部16が、他方の端部11b側の有緯糸部18及び無緯糸部17にそれぞれ重なり合う。
【0023】
有緯糸部16・18は、織布11の末端から所定の丈方向長に渡って設けられ、その内側に無緯糸部15・17が設けられており、この無緯糸部15・17の丈方向長は、重なり合う有緯糸部16・18に対応する長さに設定される。また織布11の末端には、図1に示すように、解れを防止するために超音波ウェルダーによる溶着部23が形成されている。なお、溶着の他に接着剤の塗布などで解れ止めを行うことも可能である。
【0024】
織布11から基布1を製作するにあたっては、まず図2(A)に示すように、折曲部11c・11dとなる部分の緯糸4を、接合ループ6・7の大きさに応じて所要の本数抜き取る。また同様に無緯糸部15・17となる部分の緯糸4を、その無緯糸部15・16の丈方向寸法に応じて所要の本数抜き取る。
【0025】
次に図2(B)に示すように、織布11を折り畳んで、図2(C)に示すように、第1〜第3の部分11e〜11gを互いに重ね合わせ、また織布11の端部11a・11bの無緯糸部15・17及び有緯糸部16・18を互いに重ね合わせる。そして図2(D)に示すように、両端部の接合ループ6・7をかみ合わせて芯線21を通すことにより、折り畳まれた状態の織布11をエンドレスに接合して、形状を安定させるための熱セットを行う。
【0026】
このようにして基布1が製作され、接合ループ6・7を噛み合わせて芯線21を通してエンドレスに接合した状態で、不織繊維層2を形成するためのバットを重ねてニードリングを行うことにより、図1に示したシーム付きフェルトが得られる。
【0027】
なお、織布11の端部11a・11bの無緯糸部15・17及び有緯糸部16・18は、製造途中でのずれを防止するため、溶着や縫合などにより仮止めするようにしても良い。
【0028】
このように構成された基布1においては、図1に示したように、重合領域13・14において、地部と同様の有緯糸部16・18に経糸3のみの無緯糸部15・17が重なり合うものの、この重合領域13・14では地部に比較して経糸3に相当する分だけ厚みが大きくなるだけであり、地部との厚みの違いを小さく抑えることができる。さらに、重合領域13・14では地部に比較して経糸3に相当する分だけ通水性が低下するだけであり、地部との通水性の違いを小さく抑えることができる。
【0029】
またこの基布1においては、重合領域13・14において織布11の経糸3及び緯糸4に不織繊維層2の形成繊維が絡み付き、端部11a・11bをそれぞれ備えた織布部分11e・11g同士が強固に一体化され、さらに丈方向の全長に渡って延在する織布部分11fとも一体化され、織布部分11e・11gの相対的なずれが抑制される。さらに織布11の末端側に有緯糸部16・18が設けられているため、丈方向の引張力が作用すると、互いに重なり合う重合領域13・14の有緯糸部16・18同士が引っかかってずれが抑制される。このため、丈方向の外力に対して高い強度を得ることができる。
【0030】
図4は、図1に示したフェルトの変形例を示す断面図である。図5は、図4に示した織布の要部を示す斜視図である。
【0031】
この基布41では、織布11の端部11a側の重合領域13に、無緯糸部15及び有緯糸部16が交互に2つずつ設けられ、また同様に端部11b側の重合領域14にも、無緯糸部17及び有緯糸部18が交互に2つずつ設けられており、一方の端部11a側の無緯糸部15及び有緯糸部16が、他方の端部11b側の有緯糸部18及び無緯糸部17にそれぞれ重ね合わされる。
【0032】
なお、織布11の端部11a・11bの各重合領域13・14に、無緯糸部15・17及び有緯糸部16・18をそれぞれ3つ以上設けることも可能である。
【0033】
図6は、本発明によるフェルトの別の例を示す断面図である。この基布61では、前記図1の例と同様に、織布11の端部11a・11bの各重合領域13・14に無緯糸部15・17と有緯糸部16・18とが設けられ、一方の端部11a側の無緯糸部15及び有緯糸部16が、他方の端部11b側の有緯糸部18及び無緯糸部17にそれぞれ重ね合わされるが、特にここでは、前記の例とは異なり、端部11a・11bの各無緯糸部15・17の経糸3を相互にかみ合わせ形成された共通孔に芯線62が挿通されて、端部11a・11bをそれぞれ備えた織布部分11e・11gが相互に接合されている。
【0034】
この構成では、一方の端部11a側の無緯糸部15の経糸3が芯線62に絡み合い、この絡合部分63が、他方の端部11b側の有緯糸部18の緯糸4に拘束され、また他方の端部11b側の無緯糸部17の経糸3が芯線62に絡み合い、この絡合部分64が、一方の端部11a側の有緯糸部16の緯糸4に拘束されるため、端部11a・11bをそれぞれ備えた織布部分11e・11gの相対的なずれが阻止され、丈方向の外力に対してずれることなく、高い寸法安定性を得ることができる。
【0035】
特にこの構成では、不織繊維層2の形成繊維の絡み付きによらずに丈方向の外力に対して高い強度を確保することができるため、基布61に不織繊維層2を積層一体化するニードリング工程において、図2(D)に示した例と同様に、接合ループ6・7により基布61をエンドレスに接合して、ロールにより基布61に張力を付与して基布61を適度に緊張させた状態とした際に、織布11の端部11a・11bがずれることを防止することができる。
【0036】
図7は、図6に示した織布の接合作業状況を示す模式的な断面図である。図6に示した基布61は、図2に示した例と略同様の要領で製作されるが、芯線62により織布部分11e・11gを接合するには、まず(A)に示すように、無緯糸部15・17の経糸3を折り曲げ、ついで(B)に示すように、端部11a・11bの各経糸3の屈曲部を交互にかみ合わせ、これにより形成された共通孔に芯線62を挿通する。そして(C)に示すように、有緯糸部16・18をそれぞれ無緯糸部17・15に重ね合わせる。
【0037】
なお、製造途中での端部11a・11bの反り返りを防止するため、無緯糸部15・17及び有緯糸部16・18の重なり合うもの同士を溶着や縫合などにより仮止めするようにしても良い。
【0038】
図8は、図6に示したフェルトの変形例を示す断面図である。この基布81では、前記図4の例と同様に、織布11の端部11a側の重合領域13に、無緯糸部15及び有緯糸部16が交互に2つずつ設けられ、また同様に端部11b側の重合領域14に、無緯糸部17及び有緯糸部18が交互に2つずつ設けられており、一方の端部11a側の無緯糸部15及び有緯糸部16が、他方の端部11b側の有緯糸部18及び無緯糸部17にそれぞれ重ね合わされる。
【0039】
さらにここでは、前記図6の例と同様に、無緯糸部15・17の経糸3を相互にかみ合わせ形成された共通孔に芯線62が挿通されて、端部11a・11bをそれぞれ備えた織布部分11e・11gが相互に接合されており、この芯線62による接合箇所が2つ設けられている。
【0040】
図9は、本発明によるフェルトの別の例を示す断面図である。このフェルトは、エンドレスフェルトであり、基布91は、1枚の有端の織布11の端部11a・11bを相互に接合することで無端状をなし、前記の例のような接合ループを備えていない。織布11の端部11a・11bは、前記図1の例と同様に、重合領域13・14に形成された無緯糸部15・17及び有緯糸部16・18を重ね合わて接合される。
【0041】
なお、本発明による端部の接合構造は、前記のように折り畳み方式の基布を製作する際に1枚の有端の織布の端部を接合したり、1枚の有端の織布の端部を接合してエンドレスの基布を製作する他、複数の有端の織布から端部を接合して基布に仕上げる際にも適用することができる。
【0042】
図10は、本発明によるフェルトの別の例を示す断面図である。このフェルトは、前記の例と同様に、エンドレスフェルトであるが、この基布101は、2枚の有端の織布102・103を重ね合わせた2層構造をなしている。織布102は、端部102a・102bを前記の要領で相互に接合して無端状をなし、同様に織布103も、端部103a・103bを前記の要領で相互に接合して無端状をなし、これらの端部102a・102b及び端部103a・103bの各接合部が丈方向にずらして配置されている。
【0043】
この構成では、織布102・103の一方の接合部が他方の地部と重なり合って補強されるため、強度を高めることができる。
【0044】
図11は、図1に示したフェルトの樹脂含浸部を示す断面図である。本フェルトでは、製紙面25側から樹脂材料を含浸して形成された樹脂含浸部27を有している。ここでは、樹脂含浸部27が、走行面26側の不織繊維層部分2bを除く、製紙面25側の不織繊維層部分2a及び基布1の領域に形成されている。またこの樹脂含浸部27は、未硬化の樹脂材料の浸漬などの適宜な含浸処理により、僅かな通水性を有するように形成される。
【0045】
樹脂含浸部27を形成する樹脂材料は、不織繊維層2の柔軟性を阻害しない適度な弾性を有するエラストマー材料、例えばポリウレタンなどが好適である。また樹脂材料の含浸量は、用途に応じて要求される通水性などの特性に基づいて適宜に設定すれば良いが、例えば製紙用ベルトとしての用途では、通水性を有しないように形成する構成も可能である。
【0046】
このように樹脂材料の含浸による樹脂加工を施すと、重合領域を重ね合わせた形態の基布の接合部と地部との構造上の違いに起因する紙へのマークの発生を低減することができ、さらに、厚さ保持性、搾水性、表面の平滑性、耐久性などの向上を図ることができる。
【0047】
なお本発明は、前記の樹脂含浸部27のような形態に限定されるものではなく、製紙面25側から樹脂材料を塗布して樹脂塗布層を形成し、製紙面25側の不織繊維層部分2aにおける表面部分のみに樹脂材料が存在する形態も可能である。また、走行面26側の不織繊維層部分2bを含めてフェルトの全層を覆うように樹脂含浸部を形成する形態も可能であり、用途に応じて適宜な形態を採用すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明にかかる製紙用フェルト及びその製造方法は、基布となる有端の織布の端部を相互に接合した部分で地部と大きな物性上の違いが発生することがなく、且つ織布の端部の接合作業を簡単にして製造工数を削減することができる効果を有し、抄紙機の各種パートで用いられる製紙用フェルト(製紙用ベルトを含む)として有用であり、特にプレスパート(圧搾部)で用いられるプレスフェルトとして使用するとより効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明によるフェルトの一例を示す断面図
【図2】図1に示したフェルトの製造過程を段階的に示す模式的な断面図
【図3】図1に示した織布の要部を示す斜視図
【図4】図1に示したフェルトの変形例を示す断面図
【図5】図4に示した織布の要部を示す斜視図
【図6】本発明によるフェルトの別の例を示す断面図
【図7】図6に示した織布の接合作業状況を示す模式的な断面図
【図8】図6に示したフェルトの変形例を示す断面図
【図9】本発明によるフェルトの別の例を示す断面図
【図10】本発明によるフェルトの別の例を示す断面図
【図11】図1に示したフェルトの樹脂含浸部を示す断面図
【符号の説明】
【0050】
1・91・101 基布
2 不織繊維層
3 経糸
4 緯糸
6・7 接合ループ
11・102・103 織布
11a・11b・102a・102b・103a・103b 端部
11e〜11g 織布部分
13・14 重合領域
15・17 無緯糸部
16・18 有緯糸部
28 樹脂含浸部
62 芯線
【技術分野】
【0001】
本発明は、基布に不織繊維層をニードリングにより積層一体化してなり、基布となる有端の織布の端部が相互に接合された製紙用フェルト及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抄紙機への掛け入れ作業性を向上させるため、有端のフェルトをフェルトランに引き込んだ上でその両端部を互いに接合して無端とする、いわゆるシーム付きフェルトが知られている。
【0003】
この種のシーム付きフェルトでは、基布を構成する経糸の折り返しにより丈方向の両端部に形成されたループをかみ合わせてできた共通孔に芯線を通すことで、両端部を接合するようにしており、製造するにあたっては、抄紙機上の緯糸を織機上で経糸(整経糸)とし、抄紙機上の経糸を織機上で打込み糸として織り上げることで、基布の両端部にループを形成する方式の他に、有端の織布を折り畳むことで両端部に形成された折曲部での経糸の折り返しによりループを形成する方式が知られている(特許文献1・2参照)。
【特許文献1】特開平1−306696号公報
【特許文献2】特許第2838547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記の折り畳み方式によるシーム付きフェルトは、有端の織布を用いることができることから、小型や高速の織機を用いて低コストに製造することができ、また織布を適当な寸法に裁断することで多様な丈寸法の基布を容易に製造することができる利点を有しているが、その反面、織布の端部を相互に接合する必要があり、この端部の接合にあたっては、丈方向の外力に対して十分な強度を確保すると共に、接合箇所で厚みや通水性(開口率)などの物性が地部と大きく異なると、製紙品質を低下させる原因となることから避けることが望ましく、このような観点から、従来は縫合による接合が一般的に行われているが、これには非常に手間を要する難点がある。この織布の端部の接合に関する問題は、有端の織布から無端の基布を製作してエンドレスフェルトとする場合も同様である。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、基布となる有端の織布の端部を相互に接合した部分で地部と大きな物性上の違いが発生することがなく、且つ織布の端部の接合作業を簡単にして製造工数を削減することができるように構成された製紙用フェルト及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明においては、請求項1に示すとおり、基布に不織繊維層をニードリングにより積層一体化してなり、前記基布となる有端の織布の端部が相互に接合された製紙用フェルトにおいて、前記基布となる織布の各端部に、緯糸を引き抜いて形成された無緯糸部と、地部と同様の有緯糸部とからなる重合領域が設けられ、互いに接合される一対の端部の一方に設けられた前記有緯糸部及び無緯糸部が、他方に設けられた前記無緯糸部及び有緯糸部にそれぞれ重なるように、前記織布の端部が互いに重ね合わされたものとした。
【0007】
これによると、重合領域で、地部と同様の有緯糸部に経糸のみの無緯糸部が重なり合うものの、この重合領域では地部に比較して経糸に相当する分だけ厚みや通水性などの物性が変化するだけであり、地部との物性上の違いを小さく抑えることができる。しかも、重合領域では、織布の経糸及び緯糸に不織繊維層の形成繊維が絡み付くことで、織布の端部同士が強固に一体化されるため、縫合などの手間を要する処理を行わずとも、丈方向の外力に対して十分な強度を確保することができる。
【0008】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項2に示すとおり、前記織布の各端部にそれぞれ設けられた前記無緯糸部の経糸を交互にかみ合わせて形成された共通孔に芯線が挿通された構成とすることができる。これによると、重合領域で互いに重ね合わされた織布部分が芯線を介して相互に接合されるため、丈方向の外力に対してずれることなく、高い寸法安定性を得ることができる。
【0009】
特にこの構成では、不織繊維層の形成繊維の絡み付きによらずに丈方向の外力に対して高い強度を確保することができるため、基布に不織繊維層を積層一体化するニードリング工程において、基布に張力を付与して基布を適度に緊張させた状態とする際に、織布の端部がずれることを防止することができる。また織布の端部の仮止めのために縫合や溶着を行うことも可能であるが、この場合、ミシンや超音波ウェルダーなどの接合装置の構造上の都合から接合寸法が制約されるため、幅寸法が大きい基布では全幅に渡って一様に接合することが難しいが、前記のように経糸をかみ合わせて芯線を挿通する構成では、接合装置が不要であり、全幅に渡る接合を容易に行うことができる。
【0010】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項3に示すとおり、前記有緯糸部が、前記織布の末端側に設けられた構成とすることができる。これによると、丈方向の引張力に対して、互いに重なり合う重合領域の有緯糸部同士が引っ掛かるようにして端部のずれが抑制されるため、高い接合強度を得ることができる。
【0011】
なお、織布の末端には、解れを防止するために溶着や接着剤の塗布などを行うと良い。
【0012】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項4に示すとおり、製紙面側から樹脂材料が含浸又は塗布された構成とすることができる。これによると、重合領域を重ね合わせた形態の基布の接合部と地部との構造上の違いに起因する紙へのマークの発生を低減することができる。基布の接合部では、不織繊維層によりかなりのマーク低減効果が得られるが、樹脂材料の含浸・塗布による樹脂加工によりマークをより一層低減することができる。さらに、樹脂加工を施すことにより、厚さ保持性、搾水性、表面の平滑性、耐久性などの向上を図ることができる。
【0013】
前記製紙用フェルトにおいては、請求項5に示すとおり、前記基布が、前記織布を複数枚重ね合わせて構成され、この複数枚の織布ごとに端部を前記重合領域により接合した各接合部が丈方向にずらして配置された構成とすることができる。これによると、織布の接合部が別の織布の地部と重なり合って補強されるため、高い強度を得ることができる。
【0014】
また本発明においては、請求項6に示すとおり、基布に不織繊維層をニードリングにより積層一体化してなり、前記基布となる有端の織布の端部が相互に接合された製紙用フェルトの製造方法において、前記基布となる織布の各端部に、緯糸を引き抜いて形成された無緯糸部と、地部と同様の有緯糸部とからなる重合領域を設け、互いに接合される一対の端部の一方に設けられた前記有緯糸部及び無緯糸部が、他方に設けられた前記無緯糸部及び有緯糸部にそれぞれ重なるように、前記織布の端部を互いに重ね合わせたものとした。
【0015】
これによると、重合領域で、地部と同様の有緯糸部に経糸のみの無緯糸部が重なり合うものの、この重合領域では地部に比較して経糸に相当する分だけ厚みや通水性などの物性が変化するだけであり、地部との物性上の違いを小さく抑えることができる。しかも、重合領域では、織布の経糸及び緯糸に不織繊維層の形成繊維が絡み付くことで、織布の端部同士が強固に一体化されるため、縫合などの手間を要する処理を行わずとも、丈方向の外力に対して十分な強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明によれば、織布の端部を相互に接合した部分と地部との物性上の違いを小さく抑えることができ、且つ織布の端部の接合作業を簡単にして製造工数を削減することができ、製造コストを削減する上で大きな効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明によるフェルトの一例を示す断面図である。このフェルトは、基布1に不織繊維層2をニードリングにより積層一体化してなるものであり、基布1は、経糸3に緯糸4を絡合させた織布を2層重ね合わせた二重構造をなしている。
【0019】
このフェルトは、シーム付きフェルトであり、基布1には、丈方向の端部1a・1bでの経糸3の折り返しにより接合ループ6・7が形成されており、この接合ループ6・7を互いの中心孔が整合するように交互にかみ合わせて形成された共通孔に芯線8を挿通することで、本フェルトが無端状に接合される。
【0020】
図2は、図1に示したフェルトの製造過程を段階的に示す模式的な断面図である。図3は、図1に示した織布の要部を示す斜視図である。
【0021】
基布1は、図2に示すように、端部11a・11bを相互に重ね合わせてリング状にした1枚の有端の織布11を潰すように折り畳んで製作され、丈方向の両端にそれぞれ形成される折曲部11c・11dにて接合ループ6・7が形成され、この2つの折曲部11c・11dを境界にして第1〜第3の部分11e〜11gに区画される。
【0022】
織布11の端部11a・11bは、図3に示すように、互いに重ね合わされるようにして接合され、端部11a・11bの各重合領域13・14には、緯糸4を引き抜いて形成された無緯糸部15・17と、地部と同様の有緯糸部16・18とが設けられ、一方の端部11a側の無緯糸部15及び有緯糸部16が、他方の端部11b側の有緯糸部18及び無緯糸部17にそれぞれ重なり合う。
【0023】
有緯糸部16・18は、織布11の末端から所定の丈方向長に渡って設けられ、その内側に無緯糸部15・17が設けられており、この無緯糸部15・17の丈方向長は、重なり合う有緯糸部16・18に対応する長さに設定される。また織布11の末端には、図1に示すように、解れを防止するために超音波ウェルダーによる溶着部23が形成されている。なお、溶着の他に接着剤の塗布などで解れ止めを行うことも可能である。
【0024】
織布11から基布1を製作するにあたっては、まず図2(A)に示すように、折曲部11c・11dとなる部分の緯糸4を、接合ループ6・7の大きさに応じて所要の本数抜き取る。また同様に無緯糸部15・17となる部分の緯糸4を、その無緯糸部15・16の丈方向寸法に応じて所要の本数抜き取る。
【0025】
次に図2(B)に示すように、織布11を折り畳んで、図2(C)に示すように、第1〜第3の部分11e〜11gを互いに重ね合わせ、また織布11の端部11a・11bの無緯糸部15・17及び有緯糸部16・18を互いに重ね合わせる。そして図2(D)に示すように、両端部の接合ループ6・7をかみ合わせて芯線21を通すことにより、折り畳まれた状態の織布11をエンドレスに接合して、形状を安定させるための熱セットを行う。
【0026】
このようにして基布1が製作され、接合ループ6・7を噛み合わせて芯線21を通してエンドレスに接合した状態で、不織繊維層2を形成するためのバットを重ねてニードリングを行うことにより、図1に示したシーム付きフェルトが得られる。
【0027】
なお、織布11の端部11a・11bの無緯糸部15・17及び有緯糸部16・18は、製造途中でのずれを防止するため、溶着や縫合などにより仮止めするようにしても良い。
【0028】
このように構成された基布1においては、図1に示したように、重合領域13・14において、地部と同様の有緯糸部16・18に経糸3のみの無緯糸部15・17が重なり合うものの、この重合領域13・14では地部に比較して経糸3に相当する分だけ厚みが大きくなるだけであり、地部との厚みの違いを小さく抑えることができる。さらに、重合領域13・14では地部に比較して経糸3に相当する分だけ通水性が低下するだけであり、地部との通水性の違いを小さく抑えることができる。
【0029】
またこの基布1においては、重合領域13・14において織布11の経糸3及び緯糸4に不織繊維層2の形成繊維が絡み付き、端部11a・11bをそれぞれ備えた織布部分11e・11g同士が強固に一体化され、さらに丈方向の全長に渡って延在する織布部分11fとも一体化され、織布部分11e・11gの相対的なずれが抑制される。さらに織布11の末端側に有緯糸部16・18が設けられているため、丈方向の引張力が作用すると、互いに重なり合う重合領域13・14の有緯糸部16・18同士が引っかかってずれが抑制される。このため、丈方向の外力に対して高い強度を得ることができる。
【0030】
図4は、図1に示したフェルトの変形例を示す断面図である。図5は、図4に示した織布の要部を示す斜視図である。
【0031】
この基布41では、織布11の端部11a側の重合領域13に、無緯糸部15及び有緯糸部16が交互に2つずつ設けられ、また同様に端部11b側の重合領域14にも、無緯糸部17及び有緯糸部18が交互に2つずつ設けられており、一方の端部11a側の無緯糸部15及び有緯糸部16が、他方の端部11b側の有緯糸部18及び無緯糸部17にそれぞれ重ね合わされる。
【0032】
なお、織布11の端部11a・11bの各重合領域13・14に、無緯糸部15・17及び有緯糸部16・18をそれぞれ3つ以上設けることも可能である。
【0033】
図6は、本発明によるフェルトの別の例を示す断面図である。この基布61では、前記図1の例と同様に、織布11の端部11a・11bの各重合領域13・14に無緯糸部15・17と有緯糸部16・18とが設けられ、一方の端部11a側の無緯糸部15及び有緯糸部16が、他方の端部11b側の有緯糸部18及び無緯糸部17にそれぞれ重ね合わされるが、特にここでは、前記の例とは異なり、端部11a・11bの各無緯糸部15・17の経糸3を相互にかみ合わせ形成された共通孔に芯線62が挿通されて、端部11a・11bをそれぞれ備えた織布部分11e・11gが相互に接合されている。
【0034】
この構成では、一方の端部11a側の無緯糸部15の経糸3が芯線62に絡み合い、この絡合部分63が、他方の端部11b側の有緯糸部18の緯糸4に拘束され、また他方の端部11b側の無緯糸部17の経糸3が芯線62に絡み合い、この絡合部分64が、一方の端部11a側の有緯糸部16の緯糸4に拘束されるため、端部11a・11bをそれぞれ備えた織布部分11e・11gの相対的なずれが阻止され、丈方向の外力に対してずれることなく、高い寸法安定性を得ることができる。
【0035】
特にこの構成では、不織繊維層2の形成繊維の絡み付きによらずに丈方向の外力に対して高い強度を確保することができるため、基布61に不織繊維層2を積層一体化するニードリング工程において、図2(D)に示した例と同様に、接合ループ6・7により基布61をエンドレスに接合して、ロールにより基布61に張力を付与して基布61を適度に緊張させた状態とした際に、織布11の端部11a・11bがずれることを防止することができる。
【0036】
図7は、図6に示した織布の接合作業状況を示す模式的な断面図である。図6に示した基布61は、図2に示した例と略同様の要領で製作されるが、芯線62により織布部分11e・11gを接合するには、まず(A)に示すように、無緯糸部15・17の経糸3を折り曲げ、ついで(B)に示すように、端部11a・11bの各経糸3の屈曲部を交互にかみ合わせ、これにより形成された共通孔に芯線62を挿通する。そして(C)に示すように、有緯糸部16・18をそれぞれ無緯糸部17・15に重ね合わせる。
【0037】
なお、製造途中での端部11a・11bの反り返りを防止するため、無緯糸部15・17及び有緯糸部16・18の重なり合うもの同士を溶着や縫合などにより仮止めするようにしても良い。
【0038】
図8は、図6に示したフェルトの変形例を示す断面図である。この基布81では、前記図4の例と同様に、織布11の端部11a側の重合領域13に、無緯糸部15及び有緯糸部16が交互に2つずつ設けられ、また同様に端部11b側の重合領域14に、無緯糸部17及び有緯糸部18が交互に2つずつ設けられており、一方の端部11a側の無緯糸部15及び有緯糸部16が、他方の端部11b側の有緯糸部18及び無緯糸部17にそれぞれ重ね合わされる。
【0039】
さらにここでは、前記図6の例と同様に、無緯糸部15・17の経糸3を相互にかみ合わせ形成された共通孔に芯線62が挿通されて、端部11a・11bをそれぞれ備えた織布部分11e・11gが相互に接合されており、この芯線62による接合箇所が2つ設けられている。
【0040】
図9は、本発明によるフェルトの別の例を示す断面図である。このフェルトは、エンドレスフェルトであり、基布91は、1枚の有端の織布11の端部11a・11bを相互に接合することで無端状をなし、前記の例のような接合ループを備えていない。織布11の端部11a・11bは、前記図1の例と同様に、重合領域13・14に形成された無緯糸部15・17及び有緯糸部16・18を重ね合わて接合される。
【0041】
なお、本発明による端部の接合構造は、前記のように折り畳み方式の基布を製作する際に1枚の有端の織布の端部を接合したり、1枚の有端の織布の端部を接合してエンドレスの基布を製作する他、複数の有端の織布から端部を接合して基布に仕上げる際にも適用することができる。
【0042】
図10は、本発明によるフェルトの別の例を示す断面図である。このフェルトは、前記の例と同様に、エンドレスフェルトであるが、この基布101は、2枚の有端の織布102・103を重ね合わせた2層構造をなしている。織布102は、端部102a・102bを前記の要領で相互に接合して無端状をなし、同様に織布103も、端部103a・103bを前記の要領で相互に接合して無端状をなし、これらの端部102a・102b及び端部103a・103bの各接合部が丈方向にずらして配置されている。
【0043】
この構成では、織布102・103の一方の接合部が他方の地部と重なり合って補強されるため、強度を高めることができる。
【0044】
図11は、図1に示したフェルトの樹脂含浸部を示す断面図である。本フェルトでは、製紙面25側から樹脂材料を含浸して形成された樹脂含浸部27を有している。ここでは、樹脂含浸部27が、走行面26側の不織繊維層部分2bを除く、製紙面25側の不織繊維層部分2a及び基布1の領域に形成されている。またこの樹脂含浸部27は、未硬化の樹脂材料の浸漬などの適宜な含浸処理により、僅かな通水性を有するように形成される。
【0045】
樹脂含浸部27を形成する樹脂材料は、不織繊維層2の柔軟性を阻害しない適度な弾性を有するエラストマー材料、例えばポリウレタンなどが好適である。また樹脂材料の含浸量は、用途に応じて要求される通水性などの特性に基づいて適宜に設定すれば良いが、例えば製紙用ベルトとしての用途では、通水性を有しないように形成する構成も可能である。
【0046】
このように樹脂材料の含浸による樹脂加工を施すと、重合領域を重ね合わせた形態の基布の接合部と地部との構造上の違いに起因する紙へのマークの発生を低減することができ、さらに、厚さ保持性、搾水性、表面の平滑性、耐久性などの向上を図ることができる。
【0047】
なお本発明は、前記の樹脂含浸部27のような形態に限定されるものではなく、製紙面25側から樹脂材料を塗布して樹脂塗布層を形成し、製紙面25側の不織繊維層部分2aにおける表面部分のみに樹脂材料が存在する形態も可能である。また、走行面26側の不織繊維層部分2bを含めてフェルトの全層を覆うように樹脂含浸部を形成する形態も可能であり、用途に応じて適宜な形態を採用すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明にかかる製紙用フェルト及びその製造方法は、基布となる有端の織布の端部を相互に接合した部分で地部と大きな物性上の違いが発生することがなく、且つ織布の端部の接合作業を簡単にして製造工数を削減することができる効果を有し、抄紙機の各種パートで用いられる製紙用フェルト(製紙用ベルトを含む)として有用であり、特にプレスパート(圧搾部)で用いられるプレスフェルトとして使用するとより効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明によるフェルトの一例を示す断面図
【図2】図1に示したフェルトの製造過程を段階的に示す模式的な断面図
【図3】図1に示した織布の要部を示す斜視図
【図4】図1に示したフェルトの変形例を示す断面図
【図5】図4に示した織布の要部を示す斜視図
【図6】本発明によるフェルトの別の例を示す断面図
【図7】図6に示した織布の接合作業状況を示す模式的な断面図
【図8】図6に示したフェルトの変形例を示す断面図
【図9】本発明によるフェルトの別の例を示す断面図
【図10】本発明によるフェルトの別の例を示す断面図
【図11】図1に示したフェルトの樹脂含浸部を示す断面図
【符号の説明】
【0050】
1・91・101 基布
2 不織繊維層
3 経糸
4 緯糸
6・7 接合ループ
11・102・103 織布
11a・11b・102a・102b・103a・103b 端部
11e〜11g 織布部分
13・14 重合領域
15・17 無緯糸部
16・18 有緯糸部
28 樹脂含浸部
62 芯線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布に不織繊維層をニードリングにより積層一体化してなり、前記基布となる有端の織布の端部が相互に接合された製紙用フェルトであって、
前記基布となる織布の各端部に、緯糸を引き抜いて形成された無緯糸部と、地部と同様の有緯糸部とからなる重合領域が設けられ、互いに接合される一対の端部の一方に設けられた前記有緯糸部及び無緯糸部が、他方に設けられた前記無緯糸部及び有緯糸部にそれぞれ重なるように、前記織布の端部が互いに重ね合わされたことを特徴とする製紙用フェルト。
【請求項2】
前記織布の各端部にそれぞれ設けられた前記無緯糸部の経糸を交互にかみ合わせて形成された共通孔に芯線が挿通されたことを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
【請求項3】
前記有緯糸部が、前記織布の末端側に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
【請求項4】
製紙面側から樹脂材料が含浸又は塗布されたことを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
【請求項5】
前記基布が、前記織布を複数枚重ね合わせて構成され、この複数枚の織布ごとに端部を前記重合領域により接合した各接合部が丈方向にずらして配置されたことを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
【請求項6】
基布に不織繊維層をニードリングにより積層一体化してなり、前記基布となる有端の織布の端部が相互に接合された製紙用フェルトの製造方法であって、
前記基布となる織布の各端部に、緯糸を引き抜いて形成された無緯糸部と、地部と同様の有緯糸部とからなる重合領域を設け、互いに接合される一対の端部の一方に設けられた前記有緯糸部及び無緯糸部が、他方に設けられた前記無緯糸部及び有緯糸部にそれぞれ重なるように、前記織布の端部を互いに重ね合わせたことを特徴とする製紙用フェルトの製造方法。
【請求項1】
基布に不織繊維層をニードリングにより積層一体化してなり、前記基布となる有端の織布の端部が相互に接合された製紙用フェルトであって、
前記基布となる織布の各端部に、緯糸を引き抜いて形成された無緯糸部と、地部と同様の有緯糸部とからなる重合領域が設けられ、互いに接合される一対の端部の一方に設けられた前記有緯糸部及び無緯糸部が、他方に設けられた前記無緯糸部及び有緯糸部にそれぞれ重なるように、前記織布の端部が互いに重ね合わされたことを特徴とする製紙用フェルト。
【請求項2】
前記織布の各端部にそれぞれ設けられた前記無緯糸部の経糸を交互にかみ合わせて形成された共通孔に芯線が挿通されたことを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
【請求項3】
前記有緯糸部が、前記織布の末端側に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
【請求項4】
製紙面側から樹脂材料が含浸又は塗布されたことを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
【請求項5】
前記基布が、前記織布を複数枚重ね合わせて構成され、この複数枚の織布ごとに端部を前記重合領域により接合した各接合部が丈方向にずらして配置されたことを特徴とする請求項1に記載の製紙用フェルト。
【請求項6】
基布に不織繊維層をニードリングにより積層一体化してなり、前記基布となる有端の織布の端部が相互に接合された製紙用フェルトの製造方法であって、
前記基布となる織布の各端部に、緯糸を引き抜いて形成された無緯糸部と、地部と同様の有緯糸部とからなる重合領域を設け、互いに接合される一対の端部の一方に設けられた前記有緯糸部及び無緯糸部が、他方に設けられた前記無緯糸部及び有緯糸部にそれぞれ重なるように、前記織布の端部を互いに重ね合わせたことを特徴とする製紙用フェルトの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−277741(P2007−277741A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102824(P2006−102824)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000229852)日本フエルト株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000229852)日本フエルト株式会社 (55)
【Fターム(参考)】
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