説明

製膜装置および製膜方法

【課題】光硬化型の液滴を用いた製膜装置におけるノズルの詰まりを適切に防止すること。
【解決手段】光硬化型の液滴を吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドに備えられ、前記液滴を硬化させるための光源と、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御する液面制御手段と、を備え、前記液面制御手段は、各ノズルに対する前記光源からの光の照射度合いに応じて、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に光硬化型の液滴を吐出して膜を形成する製膜装置および製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に光硬化型インクを吐出して膜を形成し、画像等を描画する製膜装置が知られている。
このような製膜装置においては、例えば、記録媒体をプラテンに吸着し、その記録媒体上をキャリッジが走査方向に往復運動することにより、記録媒体に光硬化型インクの膜を形成する。
【0003】
そして、記録媒体に吐出された光硬化型インクに対し、紫外線等の光を照射することで、光硬化型インクを硬化させる。
光硬化型インクを用いる技術として、例えば、特許文献1に記載されたインクジェット記録方法が挙げられる。
特許文献1に記載された技術では、ノズル内でインクが形成するメニスカスを制御することによって、安定的な印字を行うこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−305846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光硬化型インクを用いる製膜装置においては、インクを硬化させるために照射した光が、記録媒体あるいはプラテンによって反射し、ノズルに到達する可能性がある。
ノズルに光が到達した場合、ノズル内の光硬化型インクが硬化し、ノズルが詰まる原因となる。
【0006】
ここで、特許文献1に記載された技術においては、安定的な印字を目的としてノズル内におけるインクのメニスカスを制御しているものの、紫外線硬化型インクに紫外線が到達してインクが硬化し、ノズルが詰まるという事態を適切に防止することができない。
このように、従来の技術においては、光硬化型の液滴を用いた製膜装置におけるノズルの詰まりを適切に防止することが困難であった。
本発明の課題は、光硬化型の液滴を用いた製膜装置におけるノズルの詰まりを適切に防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る製膜装置は、
光硬化型の液滴を吐出する複数のノズルを有する記録ヘッド(例えば、図1の記録ヘッド13)と、前記記録ヘッドに備えられ、前記液滴を硬化させるための光源(例えば、図2の紫外線ランプ13a)と、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御する液面制御手段(例えば、図2の水頭値制御機構13b)と、を備え、前記液面制御手段は、各ノズルに対する前記光源からの光の照射度合いに応じて、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御することを特徴とする。
【0008】
このような構成により、光源からの光がノズル内の液滴に照射されることにより液滴が硬化する事態を避けることができ、ノズルの詰まりを防止することができる。
即ち、本発明によれば、光硬化型の液滴を用いた製膜装置におけるノズルの詰まりを適切に防止することが可能となる。
【0009】
また、本発明の一態様は、
前記液面制御手段は、前記ノズルに対する前記光源からの光の照射度合いが大きいほど、該ノズルにおける前記液滴の液面位置をノズル内に引き込んだ状態とすることを特徴とする。
このような構成により、各ノズルに合わせて液滴に光が照射されにくい状態とすることができ、より確実にノズルの詰まりを防止することができる。
【0010】
また、本発明の一態様は、
前記液面制御手段は、前記ノズルに供給される前記液滴の圧力を制御する自己封止弁を備え、該自己封止弁によって液圧を制御して前記液滴の液面位置を変化させることを特徴とする。
このような構成により、自己封止弁によって圧力を制御することで、確実に液滴の液面位置を制御することができる。
【0011】
また、本発明の一態様は、
前記液面制御手段は、前記ノズルに連通する液滴タンクの高さ位置を変化させる機構を備え、該液滴タンクの高さを制御して前記液滴の液面位置を変化させることを特徴とする。
このような構成により、簡単に液滴の液面位置を制御することができる。
また、本発明の一態様は、
前記液面制御手段は、前記光源からの距離を前記光源からの光の照射度合いとして、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御することを特徴とする。
このような構成により、把握が容易なノズルと光源との距離を基に、液滴の液面位置を制御することができる。
【0012】
また、本発明の一態様は、
前記液面制御手段は、前記ノズルに対する前記光源からの光の入射角を前記光源からの光の照射度合いとして、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御することを特徴とする。
このような構成により、液滴を硬化させる光がノズルに入射する状態をより正確に反映させて液滴の液面位置を制御できるため、より適確にノズルの詰まりを防止することができる。
【0013】
また、本発明の一態様は、
前記液面制御手段は、前記ノズルに対する前記光源からの光の入射エネルギーを前記光源からの光の照射度合いとして、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御することを特徴とする。
このような構成により、液滴を硬化させる直接的な要因である光のエネルギーを反映させて液滴の液面位置を制御できるため、より適確にノズルの詰まりを防止することができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る製膜方法は、
光硬化型の液滴を吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドから液滴を吐出する液滴吐出工程と、前記記録ヘッドに備えられ、前記液滴を硬化させるための光源から光を照射する光照射工程と、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御する液面制御工程と、を含み、前記液面制御工程では、各ノズルに対する前記光源からの光の照射度合いに応じて、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御することを特徴とする。
これにより、光源からの光がノズル内の液滴に照射されることにより液滴が硬化する事態を避けることができ、ノズルの詰まりを防止することができる。
即ち、本発明によれば、光硬化型の液滴を用いた製膜装置におけるノズルの詰まりを適切に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】インクジェットプリンター1の概略を模式的に示す図である。
【図2】記録ヘッド13の構成を示す図である。
【図3】水頭値制御機構13bによる水頭値制御の概念を示す模式図である。
【図4】吐出性評価の結果の一例を示す図である。
【図5】水頭値と、インクを正常に吐出可能な駆動電圧との関係を示す特性図である。
【図6】インクジェットプリンター1が実行する印刷制御処理を示すフローチャートである。
【図7】水頭値制御機構の他の方式例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照して本発明に係る製膜装置および製膜方法の実施の形態を説明する。
本実施形態では、フィルム等の記録媒体Pに対し、印刷対象である画像等を形成するインクジェットプリンター1に本発明を適用した例について説明する。本実施形態のインクジェットプリンター1は、記録媒体Pの搬送方向と交差する方向に記録ヘッド13を移動させて画像の形成等を行うシリアルヘッド型インクジェットプリンターである。
【0017】
(構成)
図1は、インクジェットプリンター1の概略を模式的に示す図である。図1(a)は、インクジェットプリンター1を上方から見た図である。また、図1(b)は、インクジェットプリンター1を側方から見た図である。
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、記録媒体Pを搬送する搬送機構2、記録媒体Pにインクを吐出する印刷機構3、およびインクジェットプリンター1の筐体4を備える。これら搬送機構2、および印刷機構3は制御部5によって動作が制御される。
【0018】
搬送機構2は、副搬送方向Xの上流側に配された供給ローラー6、および副搬送方向Xの下流側に配された巻取ローラー7を備える。副搬送方向Xとは、インクジェットプリンター1における記録媒体Pの搬送方向である。また、供給ローラー6の回転軸には、円筒状に巻かれた記録媒体Pが保持されている。さらに、巻取ローラー7の回転軸には、供給ローラー6に保持されている記録媒体Pの一端が固定されている。そして、搬送機構2は、供給ローラー6および巻取ローラー7のそれぞれを図示しない紙送りモーターで回転させ、供給ローラー6に巻回されている記録媒体Pを副搬送方向Xに送出し、送出される記録媒体Pを巻取ローラー7で巻き取る。これにより、記録媒体Pを副搬送方向Xに搬送する。
【0019】
また、搬送機構2は、供給ローラー6と巻取ローラー7との間の上流側に配された第1ニップローラー8、および下流側に配された第2ニップローラー9を備える。第1ニップローラー8および第2ニップローラー9のそれぞれは、一定距離を隔てて平行に配された上下一対のローラーで構成される。また、第1ニップローラー8および第2ニップローラー9のそれぞれの上下方向の位置は、互いに同じ高さに設定される。そして、搬送機構2は、第1ニップローラー8および第2ニップローラー9のそれぞれに、搬送される記録媒体Pを上下一対のローラー間に挟み込ませる。これにより、記録媒体Pを第1ニップローラー8および第2ニップローラー9と同じ高さで、かつ水平に搬送する。
さらに、搬送機構2は、第1ニップローラー8と第2ニップローラー9との間の下方に配されたステージ10を備える。ステージ10の上面、つまり、副搬送方向Xに搬送される記録媒体Pと対向する面には、記録媒体Pを吸着させる水平面が形成されている。
【0020】
また、搬送機構2は、第1ニップローラー8、および第2ニップローラー9を昇降する図示しない昇降装置を備える。そして、搬送機構2は、昇降装置に第1ニップローラー8、および第2ニップローラー9を昇降させ、搬送される記録媒体Pを昇降させる。これにより、第1ニップローラー8、および第2ニップローラー9を下降させ、ステージ10の上面に記録媒体Pを吸着させる。また、第1ニップローラー8、および第2ニップローラー9を上昇させ、吸着している記録媒体Pをステージ10の上面から離間させる。
【0021】
印刷機構3は、ステージ10の上方に配された記録ヘッド(インクジェットヘッド)13を備える。
印刷機構3は、主搬送方向Yに沿って摺動可能に記録ヘッド13を支持するスライドレール14、および記録ヘッド13を摺動させる動力を発生する図示しないキャリッジモーターを備える。そして、印刷機構3は、キャリッジモーターを駆動することにより、スライドレール14に従って記録ヘッド13を主搬送方向Yに沿って摺動させ、記録ヘッド13を主搬送方向Yに沿って往復移動させる。これにより、印刷機構3は、記録ヘッド13を主搬送方向Yに沿って往復移動させながらインクドットを形成し、記録ヘッド13の副搬送方向X両端のノズル間距離に相当する幅の画像を形成する。
【0022】
図2は、記録ヘッド13の構成を示す図である。
図2において、記録ヘッド13の下面、つまり、ステージ10に吸着された記録媒体Pの上面と対向する面には、副搬送方向Xに沿って配列された複数のノズルからなるノズル列が複数列形成されている。そして、記録ヘッド13は、必要箇所のノズルに必要量のインク滴を吐出させる。これにより、記録媒体Pの上面に微小なインクドットを形成する。本実施形態においては、1つのノズル列は1つのインクの流路を備えており、後述する水頭値の制御は、このノズル列を単位として行われる。また、記録ヘッド13には、紫外線ランプ13aが設置されており、記録媒体Pに吐出されたインクドットに対して、紫外線ランプ13aが紫外線を照射する。なお、本実施形態においては、紫外線ランプ13aは、記録ヘッド13の両端(主搬送方向Yの前端および後端位置)に設置されており、記録ヘッド13の搬送方向に応じて、ノズル列の下流側となる紫外線ランプ13aが点灯するものとする。図2においては、この下流側の紫外線ランプ13aのみを図示している。
【0023】
また、記録ヘッド13は、図2に示すように、複数のノズル列それぞれにインクの水頭値(ノズル内におけるインクの液面位置)を制御する水頭値制御機構13bを備える。
水頭値制御機構13bは、記録ヘッド13の搬送時に点灯する紫外線ランプ13aと各ノズル列との距離L1〜Ln(nは自然数)に応じて、各ノズル列におけるインクの水頭値を制御する。水頭値制御機構13bは、インクタンクの圧力を制御する自己封止弁を備え、自己封止弁によってインクに付与する圧力を制御する方式とすることが可能である。具体的には、例えば特開2007−160926号公報の図5に開示されるような自己封止弁を用いることができる。
【0024】
図3は、水頭値制御機構13bによる水頭値制御の概念を示す模式図である。
図3に示すように、水頭値制御機構13bは、紫外線ランプ13aからの距離が小さいノズル列ほど、負値である水頭値の絶対値を大きくし、ノズルの開口部よりもインクを流路の奥に引き込む。
これにより、水頭値制御機構13bは、記録媒体Pあるいはステージ10の上面(プラテン)に反射した紫外線がノズル内のインクに照射されることを防止している。
【0025】
図1に戻り、制御部5は、図示しないCPU、ROM、RAM等を備え、インクジェットプリンター1の各部および各機構等の全体を制御する。なお、ROMには、記録ヘッド13の搬送方向に対応して、各ノズル列の目標水頭値および目標水頭値に合わせて選択されたノズルの駆動電圧を示すデータが記憶されている。
制御部5には、記録媒体Pを搬送機構2に搬送させる搬送制御部5a、および記録媒体Pに対し印刷機構3によってインクを吐出させる印刷制御部5bが含まれる。
印刷制御部5bは、水頭値制御機構13bによって各ノズル列に与えられた水頭値に合わせて、後述するように印刷時におけるノズルの駆動電圧を変化させる。
【0026】
(目標水頭値の決定方法)
次に、水頭値制御機構13bによる水頭値制御の目標値(目標水頭値)の決定方法について説明する。
本実施形態においては、インクジェットプリンター1の設計時に、目標水頭値を実験によって決定する。なお、目標水頭値は、インク吐出時に点灯する紫外線ランプ13aに対応して(即ち、記録ヘッド13の搬送方向と対応して)決定される。
【0027】
具体的には、以下のような手順によって、目標水頭値を決定する。
手順1.記録ヘッド13、紫外線ランプ13aおよびプラテン(ステージ10)を含む各構成要素の物理的配置を設計する。
手順2.設計に従い、各構成要素を組み立てて、各ノズル列の吐出性評価を行う。
手順3.吐出性評価の結果から各ノズル列の目標水頭値を決定する。
【0028】
図4は、手順2における吐出性評価の結果の一例を示す図である。
図4に示す例では、ノズル列の数が6(N1〜N6)、水頭値の値を9段階(P1〜P9)の吐出性評価結果を示している。
手順2における吐出性評価では、注目する紫外線ランプ13aに近いものから順にノズル列をノズル列N1〜N6とし、各ノズル列の水頭値を、P1、P2、・・・P9と段階的に変化させる。なお、水頭値(負値)はP1からP9の順に絶対値が大きく、インクを大きく引き込む状態である。
【0029】
そして、それぞれの段階における水頭値で、装置の動作上、紫外線ランプ13aが一番長く点灯している(あるいは、プラテンで反射した紫外線が一番長く照射される)時間だけ、記録ヘッド13を駆動しない状態で紫外線ランプ13aを点灯する。
その直後に記録ヘッド13の各ノズルに駆動電圧パルスを与え、インクが正常に吐出されているか否かによって、吐出性の良否を判定する。なお、このような吐出性評価を、記録ヘッド13に備えられた各紫外線ランプ13aと各ノズルとの関係について実施する。
図4に示す吐出性評価結果では、インクの引き込み量が最も小さい水頭値P1において、紫外線ランプ13aからの距離が大きいノズル列N5,N6で吐出性が良好(良)であり、それ以外のノズル列では吐出性が不良(否)となっている。
【0030】
そして、水頭値の絶対値が大きい(インクの引き込み量が大きい)ほど、ノズル列N5,N6より紫外線ランプ13aに近いものも順に吐出性が良好となり、水頭値P9では、全てのノズル列における吐出性が良好となっている。
したがって、図4に示す吐出性評価結果を基に、紫外線ランプ13aからの距離に応じて、各ノズル列で吐出性が良好となるように、ノズル列それぞれの目標水頭値を決定することができる。なお、このように決定された目標水頭値は、制御部5のROMに記憶される。
【0031】
(水頭値−駆動電圧特性)
次に、水頭値とノズルの駆動電圧との関係について説明する。
図5は、水頭値と、インクを正常に吐出可能な駆動電圧との関係を示す特性図である。
なお、図5に示す特性図では、水頭値を付与しない状態を水頭値0、その場合に正常にインクを吐出可能な駆動電圧を1とし、それらを基準とした相対値によって、水頭値および駆動電圧を表している。
【0032】
図5に示すように、水頭値を種々異ならせた場合、インクはノズルの開口部から引き込まれている量が異なるため、目標水頭値が決定されることに対応して、その引き込み量に合わせた駆動電圧を選択する。
目標水頭値に合わせて選択された各ノズルの駆動電圧は、制御部5のROMに記憶されており、印刷制御部5bは、この駆動電圧によって、各ノズルを駆動する。なお、本実施形態において、目標水頭値が記録ヘッド13の搬送方向と対応して決定されることから、駆動電圧も記録ヘッド13の搬送方向と対応して決定される。
【0033】
(動作)
次に、動作を説明する。
図6は、インクジェットプリンター1が実行する印刷制御処理を示すフローチャートである。
図6に示す印刷制御処理は、不図示のホストコンピューターから印刷の実行が指示入力されることに対応して開始される。
図6において、印刷制御処理が開始されると、インクジェットプリンター1は、制御部5のROMに記憶されている目標水頭値および各ノズルの駆動電圧を示すデータを読み出す(ステップS1)。
【0034】
次に、インクジェットプリンター1は、ホストコンピューターから送信される印刷データを受信バッファーに格納する(ステップS2)。
この印刷データには、制御コマンドが記述されたヘッダと、印刷すべき画像のラスタデータである印刷画像データとが含まれている。
次に、インクジェットプリンター1は、印刷制御部5bによって、印刷データに含まれる制御コマンドを解釈し(ステップS3)、さらに、印刷データに含まれる印刷画像データを一行分読み出す(ステップS4)。
【0035】
続いて、インクジェットプリンター1は、印刷制御部5bによって記録ヘッド13を駆動し、主搬送方向Yの往路および復路の印刷を行うと共に、紫外線ランプ13aから紫外線を照射する(ステップS5)。
このとき、記録ヘッド13の各ノズル列は、それぞれに設定されている目標水頭値となるよう水頭値制御機構13bによって、インクの水頭値が制御される。
【0036】
これにより、記録ヘッド13の紫外線ランプ13aが照射した紫外線がノズル内のインク(吐出前の静止状態のインク)に継続的に照射されてインクが硬化することにより、ノズルに詰まりが発生する事態を防止できる。
また、各ノズルの駆動電圧は、目標水頭値に合わせて選択された電圧とされているため、水頭値が種々異なる状態に設定された各ノズルから、適切なインクの吐出を行うことができる。
【0037】
次いで、インクジェットプリンター1は、印刷が終了したか否かの判定を行う(ステップS6)。印刷が終了したか否かについては、例えば、印刷制御部5bが、印刷データの制御コマンドに、最後の印刷データであることを示すフラグが記述されていることを検出することによって判定する。
ステップS6において、印刷が終了していないと判定した場合、インクジェットプリンター1は、搬送制御部5aによって搬送機構2を制御し、印刷用紙の搬送を行って(ステップS7)、ステップS1の処理に戻る。
【0038】
一方、ステップS6において、印刷が終了したと判定した場合、インクジェットプリンター1は、印刷制御処理を終了する。
以上のように、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、各ノズル列について紫外線ランプからの距離に応じた目標水頭値を設定し、記録ヘッドの駆動時には、水頭値制御機構が、目標水頭値となるように各ノズルの水頭値を制御する。
したがって、記録媒体あるいはプラテンによって反射した紫外線がノズル内のインクに照射されることによりインクが硬化する事態を避けることができ、ノズルの詰まりを防止することができる。
【0039】
即ち、本発明によれば、光硬化型の液滴を用いた製膜装置におけるノズルの詰まりを適切に防止することが可能となる。
また、各ノズルの水頭値が目標水頭値とされたときに、各ノズルは水頭値に合わせた駆動電圧で駆動される。
したがって、各ノズルにおけるインクの吐出性を良好なものとし、正常なインクの吐出を行うことができる。
【0040】
(応用例1)
本実施形態においては、水頭値制御機構として、自己封止弁によってインクに付与する圧力を制御する方式を例に挙げて説明したが、水頭値制御機構は、他の方式を用いることも可能である。
図7は、水頭値制御機構の他の方式例を示す模式図である。
図7に示す方式では、ノズルに連通するインクタンクの高さ位置を制御する機構を備えている。そして、インクタンクの高さ位置を下降させて水頭値(負値)の絶対値を増大させると共に、インクタンクの高さ位置を上昇させて水頭値の絶対値を減少させる。
このような方式によっても、第1実施形態と同様に水頭値を制御することができる。
【0041】
(応用例2)
本実施形態においては、水頭値制御機構13bが、紫外線ランプ13aと各ノズル列との距離に応じて、各ノズル列におけるインクの水頭値を制御するものとして説明したが、各ノズル列への紫外線の入射角に応じて、各ノズル列におけるインクの水頭値を制御することも可能である。
具体的には、記録媒体Pあるいはプラテン(ステージ10上面)で反射する紫外線の各ノズルへの入射角を算出し、その入射角に応じて、各ノズル列におけるインクの水頭値を制御する。
これにより、インクを硬化させる紫外線がノズルに入射する状態をより正確に反映させてインクの水頭値を制御できるため、より適確にノズルの詰まりを防止することができる。
【0042】
(応用例3)
本実施形態においては、水頭値制御機構13bが、紫外線ランプ13aと各ノズル列との距離に応じて、各ノズル列におけるインクの水頭値を制御するものとして説明したが、各ノズル列に入射する紫外線のエネルギーに応じて、各ノズル列におけるインクの水頭値を制御することも可能である。
具体的には、各ノズルに入射する紫外線のエネルギーを測定あるいは推定し、その入射エネルギーに応じて、各ノズル列におけるインクの水頭値を制御する。
これにより、インクを硬化させる直接的な要因である紫外線のエネルギーを反映させてインクの水頭値を制御できるため、より適確にノズルの詰まりを防止することができる。
このような構成は、特に、記録ヘッド13が2つの光源を備える場合等に有効なものとなる。
【符号の説明】
【0043】
1 インクジェットプリンター、2 搬送機構、3 印刷機構、4 筐体、5 制御部、5a 搬送制御部、5b 印刷制御部、6 供給ローラー、7 巻取ローラー、8 第1ニップローラー、9 第2ニップローラー、10 ステージ、13 記録ヘッド、13a 紫外線ランプ、13b 水頭値制御機構、14 スライドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化型の液滴を吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに備えられ、前記液滴を硬化させるための光源と、
前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御する液面制御手段と、を備え、
前記液面制御手段は、各ノズルに対する前記光源からの光の照射度合いに応じて、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御することを特徴とする製膜装置。
【請求項2】
前記液面制御手段は、前記ノズルに対する前記光源からの光の照射度合いが大きいほど、該ノズルにおける前記液滴の液面位置をノズル内に引き込んだ状態とすることを特徴とする請求項1記載の製膜装置。
【請求項3】
前記液面制御手段は、前記ノズルに供給される前記液滴の圧力を制御する自己封止弁を備え、該自己封止弁によって液圧を制御して前記液滴の液面位置を変化させることを特徴とする請求項1または2記載の製膜装置。
【請求項4】
前記液面制御手段は、前記ノズルに連通する液滴タンクの高さ位置を変化させる機構を備え、該液滴タンクの高さを制御して前記液滴の液面位置を変化させることを特徴とする請求項1または2記載の製膜装置。
【請求項5】
前記液面制御手段は、前記光源からの距離を前記光源からの光の照射度合いとして、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の製膜装置。
【請求項6】
前記液面制御手段は、前記ノズルに対する前記光源からの光の入射角を前記光源からの光の照射度合いとして、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の製膜装置。
【請求項7】
前記液面制御手段は、前記ノズルに対する前記光源からの光の入射エネルギーを前記光源からの光の照射度合いとして、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の製膜装置。
【請求項8】
光硬化型の液滴を吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドから液滴を吐出する液滴吐出工程と、
前記記録ヘッドに備えられ、前記液滴を硬化させるための光源から光を照射する光照射工程と、
前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御する液面制御工程と、を含み、
前記液面制御工程では、各ノズルに対する前記光源からの光の照射度合いに応じて、前記ノズルにおける前記液滴の液面位置を制御することを特徴とする製膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−224812(P2011−224812A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94767(P2010−94767)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】