説明

製造方法

本発明は、所望のオープンリーディングフレームのコドンを改変することにより、タンパク質発現細胞株を作製するのに必要な力価測定可能な選択圧のレベル、増幅サイクル数、およびそれにかかる時間を減らす方法を提供する。この目的のためのコドン最適化の使用を通じて、本発明の方法は、細胞株開発研究で長期間を節約して、より早い時間枠で十分な収量を確実にもたらす。さらに、本発明の方法は、以前に達成可能なよりも低い濃度の選択・増幅薬剤で細胞株を作製する。したがって、最終的な細胞株でより低いレベルの選択・増幅マーカーが観察される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用タンパク質を分泌することが可能な細胞株の作製方法を提供する。該方法は、コドン最適化遺伝子配列の使用を含み、これはプロトコールタイムラインの減少と、例えば選択・増幅系を介した抗体産生細胞株の作製の際に必要とされる抗葉酸剤の濃度の低下の両方をもたらす。
【背景技術】
【0002】
CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)、NS0細胞およびPerC6細胞などの哺乳動物細胞は、生物製剤を製造するために生物製剤産業で通常用いられている。これらの細胞は、遺伝子操作され、続いて、得られた細胞株をバイオリアクターで培養したときに所望のタンパク質が高力価で発現されることを確実にするように選択される。
【0003】
現在では、この目的で細胞を遺伝子操作し、続いて最良の細胞を選択するための多数の方法がある。これらの方法は多くの場合、組み込まれた発現ベクターのコピー数を増やして所望のタンパク質について得られる収量を改善するために、「増幅」ステップを含む。この「増幅」方法は、以前にBebbingtonおよびHentschelにより詳細に報告されている(DNA Cloning Volume III(IRL press,1987))。著者らは、多数の選択マーカー(多くの場合、宿主細胞の代謝に関与し、一定の培地条件においてその生存に必須の酵素をコードする核酸配列の形態で)を、所望のタンパク質を発現させるために設計された発現ベクターに機能的に連結して、それにより選択マーカーについての選択の際に、所望のタンパク質の発現についても選択することができる、と説明している。しかしながら、そのような選択後には、典型的には所望のタンパク質の力価は十分に高くないため、選択された細胞は「増幅」法にも供される。これらの方法は、通常、選択マーカーを阻害するある種の毒性薬物に細胞を供するステップを含む。そのような阻害を通して、このマーカーの発現レベルが増加している細胞集団が選択される可能性がある。このことは、多くの場合、同様に機能的に連結された発現カセットの発現レベルの増加につながる。そのような増加した発現または「増幅」は、通常、選択マーカーおよび機能的に連結された発現カセットのコピー数の増加をもたらすゲノム再構成により生じる。そのような「共増幅」を介して、力価は十分に改善され、得られる最良クローンを用いて好適な高いレベルの所望のタンパク質が産生される。増幅法に供された個々の細胞中のベクターコピー数をさらに調べて、タンパク質産生の「プラトー」に近づくまで、得られる産生レベルは典型的には遺伝子コピー数の増加に比例することが観察されている(BebbingtonおよびHentschel、上掲)。
【0004】
現在までに、増幅に適しており、したがって増幅可能選択マーカーと称される多くの異なる選択マーカーが明らかにされている。明らかになっているもののそれぞれはまた、選択・増幅法に際して細胞培養培地に添加される「選択・増幅」薬剤を伴っている。そのような選択マーカー/薬剤の組み合わせの例としては、以下のものが挙げられる:アデノシンデアミナーゼ/デオキシコホルマイシン、アスパラギン酸トランスカルバミラーゼ/N(ホスホアセチル)−L−アスパラギン酸、ジヒドロ葉酸レダクターゼ/メトトレキサート、グルタミン合成酵素/メチオニンスルホキシミン、メタロチオネイン−I/重金属、多剤耐性/アドリアマイシン(BebbingtonおよびHentschel、上掲;Kellems 1991,Current Opinion in Biotechnology 2:pp723−729を参照されたい)。さらに、より最近になって、ネオマイシン/G418およびゼオシンに対する耐性を付与するものなどの抗生物質選択マーカーが、コピー数を増やすためにも用いることができる場合があり、適切な対応する選択・増幅(抗生物質系の)選択薬剤と組み合わせた場合、時には選択・増幅マーカーとしても用いられていたことが報告されている(例えば、Sauttle and Enenkel:Biotech Bioeng 2004 89 pp530−538,Kwaks et al:Nature Biotech 2003;21;pp553−558)。
【0005】
この目的のために最良の遺伝子操作された細胞を選択する多数の方法がある中で、2種類の最もよく用いられている選択圧はグルタミン合成酵素(GS)およびジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)に基づく選択法である。
【0006】
GS法は、グルタミン合成酵素発現カセットを1つまたは複数の治療用タンパク質発現カセットに機能的に連結するステップを含む。得られる機能的に連結されたベクターを細胞に送達して、ベクターの染色体組み込みについて、細胞を培養する培地からグルタミンを枯渇させるかまたは除去することにより選択する。メチオニンスルホキシミン(MSX)などのグルタミン合成酵素阻害剤の添加も、多くの場合培地に追加され、これにより内因性宿主細胞レベルが高いグルタミン合成酵素活性が選択されるのを確実にする。もう一方のDHFR選択法は、DHFR選択圧を1つまたは複数の治療用タンパク質発現カセットに機能的に連結するステップを含む。機能的に連結されたベクターを細胞に送達して、ベクターの染色体組み込みについて、ヌクレオシド(例えば、ヒポキサンチンおよびチミジン)の除去または枯渇により選択する。DHFR法については典型的に、CHO DG44またはCHO DUX−B1などのDHFR陰性宿主細胞系統が通常用いられる。メトトレキサート(MTX)などの選択・増幅薬剤を用いるのも通常行なわれることである。
【0007】
漸増する量のMSXまたはMTX選択・増幅薬剤の対応するGSおよびDHFR選択系への添加または段階的力価測定が、多くの場合、遺伝子コピー数を増加させることにより発現を増大させるために行われる。このような方法は、細胞培養への選択・増幅薬剤の直接的な添加を含むことができる。あるいはまた、薬剤を、そのような細胞培養に用いる前に増殖培地に添加することもできる。細胞培養、または続いて細胞培養に用いられる培地へのそのような薬剤の直接的な添加または力価測定は、典型的には、「増幅」ステップと称される。例えば、GS系では、MSXレベルは500μMまで、およびこれを超えて添加するかまたは増加させることができるが、DHFR系では、MTX抗葉酸剤レベルは1μM濃度レベルまで、およびこれを超えて添加するかまたは増加させることができる。そのような薬剤をこのように用いて、続いて新たな選択薬剤濃度(各濃度ステップは、増幅「ラウンド」と称される)で成育する細胞の選択を可能にする培養期間を設けることにより、選択圧を保持するゲノム領域がそれにより増幅され、選択マーカーのコピー数を増加させることもできることが明らかになっている。結果として、選択マーカーを治療用タンパク質発現カセットに機能的に連結している場合、これらのカセットもまた増幅される。GS選択系およびDHFR選択系を用いる場合、適切な選択・増幅薬剤を用いることにより、所望のタンパク質の収量を、「産生プラトー」に達するまで著明に改善することができる(Bebbington and Hentschel(上掲)を参照されたい)。その結果、そのような選択および増幅を経過して成育するクローンを、続いて力価/収量についてスクリーニングして、最良のクローンが選択され、次いでさらに評価される。そのような力価測定およびスクリーニングから、1種または複数種の所望のタンパク質の引き続く産生のために1クローンを同定し、続いてそれだけを用いるのが通常である。
【0008】
典型的には、増幅「ラウンド」数および用いる選択・増幅薬剤濃度の両方が、選択・増幅プロトコールにおいて設定も固定もされていない。その代わり、通常は、選択・増幅法のために、産生閾値またはプラトーに達する点まで、徐々に厳しい条件にしていく。特に、抗体を発現させる場合、このプラトーに達しているクローンは、現行の改良された無血清バッチ培養モデルおよび産生バイオリアクターでは、0.3〜1.5g/Lの最終力価を産生することが観察されている。このことは、典型的には、そのような無血清バッチ培養条件において、細胞生産性(Qp)が10〜100pg/細胞/日であることを意味する。しかしながら、Qp(pg/細胞/日での)は重要ではあるが、最高のQpを有するクローンが常に最高の体積測定力価を示すわけではないので、これは生産性の独占的な決定要素ではない。近年の総説としては、Wurm 2004;Nature Biotechnology Vol 22;pp1393−1398を参照されたい。
【0009】
治験で用いる所望のタンパク質を製造するための製造キャンペーンにおいて用いる細胞株を作製するために、選択・増幅法はうまく用いられている。しかしながら、選択・増幅法により得られる力価は十分ではあるが、そのような方法は、時間、コストおよび安全性をはじめとする多くの理由により依然として望ましくない。例えば、細胞株「増幅」プロトコールでの増幅・選択薬剤の力価測定はクローン選択およびコロニー増殖を遅らせ、増幅の各ラウンドは完了までに1ヵ月以上かかる。第2に、メトトレキサートおよびメチオニンスルホキシミンのような選択・増幅薬剤は毒性化合物であり、治療的に用いる予定であれば除去しなければならない。第3に、選択・増幅薬剤耐性は哺乳動物細胞でも起こり得るものであり、これは厳格でない選択圧をもたらし、またクローン性および生成物収量の不安定性につながる可能性がある。第4に、増幅は時にはエピソームで起こり得る。そのようなエピソームおよび任意の機能的に連結された機能的発現カセットは、細胞分裂の間に常に均等に受け継がれるものではなく、培養物中の多様性および不安定性を増加させる。第5に、増幅プロトコールの間に生じるゲノム再構成が、宿主細胞ゲノムに無視できない変化を引き起こす可能性があり、これは得られたクローンでの多様な表現型につながる。第6に、選択・増幅薬剤副生成物(例えば、ポリグルタミン酸メトトレキサート)が細胞の別の機能を阻害する場合がある(例えば、Allegra et al 1985 J Biological Chem 260;17 pp9720−9726)。第7に、これらの選択・増幅薬剤の多くが、高レベルで曝露すれば細胞培養およびバイオリアクターの操作に従事している操作者にとっても潜在的に毒性である。第8に、哺乳動物宿主細胞中の組み込まれた発現ベクターのコピー数を増加させることにより、宿主細胞による反復配列誘発遺伝子サイレンシング(RIGS)活性がもたらされる場合があり、これにより、最終的に、組み込まれた各発現ベクターからの発現レベルの低下に至る可能性がある(例えば、McBurney MW et al Exp Cell Res 2002 274:1−8)。
【0010】
結果として、少ない増幅ラウンド数で、低いレベルの選択・増幅薬剤を用いて、なお治療用タンパク質の同じ最終収量を達成する選択・増幅法を用いることが非常に望ましいであろう。これにより、最終的な細胞株を作製するのにかかる時間は早くなり、かつ/または最終的な細胞株を作製するのに必要とされる望ましくない毒性薬剤のレベルを、細胞株作製、選択および培養において低下させるか、もしくは完全に除くことができる(M.Celina de la Cruz Edmonds et al,Mol Biotechnology 2006 34:179−190)。
【0011】
64種類の3塩基対コドン組み合わせが20種類のアミノ酸しかコードしていないことから、遺伝的コードには重複があることが何十年間も知られている。しかしながら、発現を増加させるためのコドンバイアスの使用は1980年代まで分かっていなかった。例えば、1982年に、BennetzenおよびHall(J Biol Chem 257 pp3026−3031)が、原核生物および真核生物の両方で強力に発現される遺伝子において生物種特異的なコドンバイアスを観察した。著者らは、このバイアスが生物分類学上多岐にわたっていることも記載した。その結果、組み換え発現系での発現を増大させるために、オープンリーディングフレームのコドン使用頻度を改変することができることがまもなく理解された。例えば、KotulaおよびCurtis(Biotechnolgy NY(1991)9:1386−9)は、高度に発現される内在性の酵母遺伝子により好まれるコドンにコドン使用頻度を偏重させるような、オープンリーディングフレームのコドン最適化により、酵母での哺乳動物抗体軽鎖の発現を顕著に改善させた。別の非常に注目すべき例は、哺乳動物細胞での発現を改善するための緑色蛍光タンパク質のコドン最適化である(Zolotukhin S J Virol(1996)70:4646−54;Yang et al Nucleic Acids Res 1996 24:4592−3)。
【0012】
最近のデータは、抗体重鎖および軽鎖をコードするオープンリーディングフレームのコドン最適化指数(CAI)スコアを上昇させることにより、得られた最適化された発現カセットをグルタミン合成酵素選択マーカーと機能的に連結した場合で、細胞をMSX選択・増幅薬剤とインキュベートした場合に、哺乳動物宿主細胞での産生収量をかろうじて改善することができることを示唆している。このデータ(IBC 2005 Cell Line Development and Engineering Conferenceで発表された)は、平均発現レベルは有意には改善されていないが、群中の中央値陽性クローンは若干増加した(37.8μg/mLから51.3μg/mL)ことを示唆したが、これは重鎖および軽鎖の両方のオープンリーディングフレームをコドン最適化した場合のみであった。より最近では、M.Celina de la Cruz Edmondsら(上掲)も、選択・増幅法を用いて所望のタンパク質を発現する遺伝子操作された細胞株を作製する際に、選択・増幅薬剤のレベルを低下させる必要性を認識していた。著者らは、トランスフェクトされた細胞の播種密度を変化させることにより、用いるMSXレベルを低下させ、同等かより高いレベルの所望のタンパク質を発現する遺伝子操作された細胞株を作製し維持するのに必要とされる期間(週数)を短縮することができることを実証した。
【0013】
最近発表された研究は、グルタミン合成酵素選択マーカーの使用と組み合わせたコドン最適化のアプローチを研究している。例えば、Kawleyらにより発表された研究(Molecular Biotechnology 2006 Vol 34;pp151−156)は、結果として得られる発現レベルに対するコドン最適化の影響を評価しているが、報告されている結果は達成された発現レベルでのほんのわずかな改善しか示唆していない。
【0014】
さらに最近、Cartonら(Protein Expression and Purification 55(2007)pp279−286)も、コドン最適化の影響を研究した。この研究は、種々のアプローチによる、重鎖および軽鎖抗体オープンリーディングフレームの部分コドン最適化を含んでいた。これらの改変されたコード配列を、続いてgpt選択マーカーに機能的に連結した発現カセット中でミニジーン形式(すなわち、イントロンを含む)として骨髄腫細胞で発現させた。いかなる増幅アプローチについても議論されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Bebbington and Hentschel:DNA Cloning Volume III,IRL press,1987
【非特許文献2】Kellems 1991:Current Opinion in Biotechnology 2:pp723−729
【非特許文献3】Sauttle and Enenkel:Biotech Bioeng 2004 89 pp530−538
【非特許文献4】Kwaks et al:Nature Biotech 2003; 21;pp553−558
【非特許文献5】Wurm 2004:Nature Biotechnology Vol 22;pp1393−1398
【非特許文献6】Allegra et al 1985 J Biological Chem 260;17 pp9720−9726
【非特許文献7】McBurney MW et al Exp Cell Res 2002 274:1−8
【非特許文献8】M. Celina de la Cruz Edmonds et al:Mol Biotechnology 2006 34:179−190
【非特許文献9】Bennetzen and Hall:J Biol Chem 257(1982)pp3026−3031
【非特許文献10】Kotula and Curtis:Biotechnolgy NY (1991)9:1386−9
【非特許文献11】Zolotukhin S J Virol (1996)70:4646−54
【非特許文献12】Yang et al Nucleic Acids Res 1996 24:4592−3
【非特許文献13】Kawley et al:Molecular Biotechnology 2006 Vol 34;pp151−156
【非特許文献14】Carton et al:Protein Expression and Purification 55(2007)pp279−286
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
当該技術分野には、増幅可能選択マーカーと機能的に連結された発現系を用いる場合に必要とされる選択・増幅薬剤のレベルを低下させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、所望のオープンリーディングフレームのコドンを変更することにより、タンパク質発現細胞株を作製するために必要とされる力価測定可能選択圧、増幅サイクル数、およびそれにかかる時間を低減させる方法を提供する。この目的でコドン最適化を用いることにより、本発明の方法は、一貫して、より早い時間枠で十分な収量をもたらし、これにより細胞株開発研究で何週も節約することになる。さらに、本発明の方法では、以前に達成可能であった濃度よりも低いレベルの濃度の選択・増幅薬剤を用いて細胞株を作製する。したがって、最終的な細胞株でのより低い選択・増幅マーカーが観察される。
【0018】
本発明は、治療用タンパク質を産生する細胞株を作製するための方法であって、以下のステップ:
(a)該治療用タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列を取得するステップ、
(b)第1のポリヌクレオチド配列を改変して第2のポリヌクレオチド配列を取得するステップであって、第2のポリヌクレオチド配列のコドン最適化指数が第1のポリヌクレオチド配列のものよりも大きく、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとは同じ治療用タンパク質をコードしているステップ、
(c)ステップ(b)の第2のポリヌクレオチド配列および細胞内で第2のポリヌクレオチド配列の増幅をもたらすことが可能な選択マーカーをコードする第3のポリヌクレオチド配列で少なくとも1つの細胞を形質転換するステップ、
(d)ステップ(c)の第3のポリヌクレオチドによりコードされる選択マーカーの不十分なレベルを発現する細胞株で細胞の増殖を阻害する選択薬剤の濃度を含有する培地中でステップ(c)の該少なくとも1つの細胞を増殖させ、複数の細胞を含む細胞株を作製し、それにより、第1のポリヌクレオチドで形質転換された細胞株で産生される該タンパク質の同等な産生プラトーに達するのに必要とされるであろうよりも、少ない増幅ラウンドで、かつ/または低い選択薬剤濃度で第2のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の産生プラトーに達するステップ
を含む。
【0019】
本明細書中に記載されるすべての同様の方法において、別途記載されない限り、増幅プロトコールまたは選択薬剤の濃度などのすべての他のパラメータは一定に保たれる。
【0020】
本発明の一実施形態では、第1の細胞株をバイオリアクター中で培養し、産生される治療用タンパク質を精製する。
【0021】
本発明の一実施形態では、第2のポリヌクレオチド配列のコドン最適化指数は0.9よりも大きく、別の実施形態では、第2のポリヌクレオチド配列のコドン最適化指数は0.91よりも大きく、また別の実施形態では、第2のポリヌクレオチド配列のコドン最適化指数は0.92よりも大きく、また別の実施形態では、第2のポリヌクレオチド配列のコドン最適化指数は0.95よりも大きい。
【0022】
本発明の別の実施形態では、計算上等価な治療用タンパク質産生収量に達するのに必要な選択薬剤のレベルは、第1のポリヌクレオチド配列を用いる同じ方法について用いられる選択薬剤の量と比較して、50%未満まで低下する。別の実施形態では、選択薬剤のレベルは、第1のポリヌクレオチド配列を用いる同じ方法について用いられる選択薬剤の量と比較して、25%未満まで低下し、また別の実施形態では、選択薬剤のレベルは、第1のポリヌクレオチド配列を用いる同じ方法について用いられる選択薬剤の量と比較して、5%未満まで低下し、また別の実施形態では、選択薬剤のレベルは、第1のポリヌクレオチド配列を用いる同じ方法について用いられる選択薬剤の量と比較して、3%未満まで低下する。
【0023】
本発明の一実施形態では、治療用タンパク質を産生する細胞株を作製する方法が提供され、該方法は、以下のステップ:
(a)治療用タンパク質をコードし、かつ0.9未満のコドン最適化指数を有する第1のポリヌクレオチド配列を取得するステップ、
(b)治療用タンパク質をコードする第2のポリヌクレオチド配列を取得するステップであって、該ポリヌクレオチド配列のコドン最適化指数が0.9よりも大きいステップ、
(c)治療用タンパク質をコードする第2のポリヌクレオチド配列、および第2のポリヌクレオチドの増幅をもたらすことが可能な選択マーカーをコードする第3のポリヌクレオチド配列で細胞株を形質転換するステップ、
(d)ステップ(c)の第3のポリヌクレオチド配列によりコードされる選択マーカーの不十分なレベルを発現する細胞株で細胞の増殖を阻害する選択薬剤の濃度を含有する培地中でステップ(c)の該少なくとも1つの細胞を増殖させて、複数の細胞を含む第1の細胞株を作製し、それにより、第1のポリヌクレオチドで形質転換した細胞株で産生される該タンパク質の同等な産生プラトーに達するのに必要とされるよりも少ない増幅ラウンドで、かつ/または低い選択薬剤濃度で第2のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の産生プラトーに達するステップ
を含む。
【0024】
本発明の一実施形態では、形質転換される細胞株は内在性細胞性酵素の破壊または阻害により、代謝的に欠陥がある。
【0025】
本発明の別の実施形態では、形質転換される細胞株はヌクレオシド合成経路に欠陥がある。
【0026】
本発明の一実施形態では、治療用タンパク質は抗体、その誘導体または抗原結合性断片である。
【0027】
本発明の一実施形態では、治療用タンパク質はモノクローナル抗体である。
【0028】
本発明の一実施形態では、選択マーカーはジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードするポリヌクレオチドであり、選択薬剤は抗葉酸剤である。別の実施形態では、抗葉酸剤はメトトレキサートである。
【0029】
本発明の別の実施形態では、選択マーカーはグルタミン合成酵素をコードするポリヌクレオチドであり、選択薬剤はメチオニンスルホキシミンである。
【0030】
本発明の一実施形態では、タンパク質産生のプラトーに達するのに1回の増幅ラウンドしか必要とされない。
【0031】
本発明の一実施形態では、治療用タンパク質の最終的な収量は、無血清バッチで0.3g/Lよりも多い。本発明の別の実施形態では、最終的な収量は、無血清バッチで0.5g/Lよりも多い。本発明のまた別の実施形態では、最終的な収量は、無血清バッチで0.8g/Lよりも多い。
【0032】
本発明の一実施形態では、用いるMTXの濃度は50nM未満または25nM未満または10nM未満である。本発明の別の実施形態では、用いるMTXの濃度は5nMである。
【0033】
本発明の別の実施形態では、1回のみの増幅ステップが行なわれるので、培養培地中で選択される細胞でタンパク質産生のプラトーに達するのに細胞培養培地中で選択・増幅薬剤の1種類の濃度のみが必要とされる。
【0034】
本発明の一実施形態では、本発明の方法により産生される抗体が提供される。別の実施形態では、この方法により産生される抗体が提供され、産生される該抗体は少なくとも1つの重鎖を含み、5%以下の非グリコシル化重鎖を有する。別の実施形態では、抗体の重鎖は95%グリコシル化されているか、96%グリコシル化されているか、97%グリコシル化されているか、98%グリコシル化されているか、または99%グリコシル化されている。また別の実施形態では、抗体は100%グリコシル化されている。本発明の一実施形態では、高度にグリコシル化された抗体はモノクローナル抗体である。本発明の一実施形態では、高度にグリコシル化された抗体は抗β−アミロイド抗体である。また別の実施形態では、抗体は配列番号18の重鎖配列および配列番号19の軽鎖配列を有する。
【0035】
本発明の別の実施形態では、本明細書中に記載される本発明の抗原結合性断片が提供され、該断片はFab,Fab’、F(ab’)、Fv、二重特異性、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、ミニボディ、単離された可変重鎖領域もしくは単離された可変軽鎖領域、血清由来タンパク質(例えば、増殖因子、サイトカイン、アルブミン等)またはそれらのコンビナトリアル融合体である。
【0036】
本発明の別の実施形態では、本明細書中に記載される抗体またはその抗原結合性断片の重鎖および/または軽鎖をコードする1以上の発現カセットを含むベクターを含む、安定的に形質転換された宿主細胞が提供される。例えば、そのような宿主細胞は軽鎖をコードする第1のベクターおよび重鎖をコードする第2のベクターを含むことができる。あるいはまた、そのような発現カセットは送達の前に組み合わせることができる。
【0037】
本発明の別の実施形態では、本発明による宿主細胞が提供され、該細胞は真核生物細胞であり、例えば該細胞は哺乳動物細胞である。そのような細胞株の例としては、以下のものが挙げられる:チャイニーズハムスター卵巣細胞、BHK細胞、HEK−293細胞、NS0細胞またはPerC6細胞(最近の総説として、Wurm 2004:Nature Biotechnology 22;11 pp1393−1398を参照されたい)。そのような宿主細胞は、有利な遺伝型および/または表現型改変を含んでもよく、例えば、CHO−DG44宿主系統は不活性化されたdhfr遺伝子のコピーを有し、他の宿主は不活性化されたグルタミン合成酵素遺伝子を有する場合がある。別の改変は、タンパク質グリコシル化に関与する酵素機構に対するものであり得る(例えば、Yamane−Ohnuki et al,Biotech Bioeng 2004 87:pp 614−622;Kanda et al,Journal of Biotechnology,2007 130:pp300−310;Imai−Nishiya et al BMC Biotechnol,2007 7:84)。また別の宿主は、宿主アポトーシス、発現および生存経路に対する有利な遺伝型および/または表現型改変を有し得る(例えば、Tey et al Biotechnol Bioeng 2000 68:31−43;Yallop et al Modern Biopharmaceuticals 2005 Chapter 3 pp779−807;Nivitchanyang et al Biotechnol Bioeng 2007 98:825−41;Figueroa et al Biotechnol Bioeng 2007 97:87−92)。宿主のこれらおよび他の改変は、単独でもしくは組み合わせて、非宿主遺伝子もしくは宿主遺伝子の過剰発現、遺伝子ノックアウトアプローチ、遺伝子サイレンシングアプローチ(例えば、siRNA)、または所望の表現型を有する下位系統の進化および選択などの標準的な技術によりもたらすことができる。そのような技術は、当該技術分野で十分に確立されている。
【0038】
本発明の別の実施形態では、本明細書中に記載される本発明に係る治療用タンパク質の製造方法が提供され、該方法は、培養培地中で、例えば無血清培養培地中で、宿主細胞を培養するステップを含む。
【0039】
本発明の別の実施形態では、前記抗体含有無血清培養培地に対して、少なくとも95%以上(例えば、98%以上)まで、前記治療用タンパク質をさらに精製する、本明細書中に記載される本発明に係る方法が提供される。
【0040】
本発明の一実施形態では、0.9より高いCAIスコアを有し、抗体、抗体関連ポリペプチド、またはその誘導体もしくは融合体をコードするオープンリーディングフレームを含む哺乳動物発現ベクターが提供される。
【0041】
別の実施形態では、第1のポリヌクレオチド配列および第2のポリヌクレオチド配列が同じ治療用タンパク質をコードし、第1のポリヌクレオチド配列よりも大きなコドン最適化指数を有する第2のポリヌクレオチド配列で形質転換されており、第1のポリヌクレオチド配列の増幅をもたらすことが可能な選択マーカーをコードする第3のポリヌクレオチド配列をさらに含む第1の細胞株が提供され、該第1の細胞株は、選択培地中で増殖させた場合に、該治療用タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドで形質転換した第2の細胞株と比較して、該治療用タンパク質のより高い収量を産生する。
【0042】
さらなる実施形態では、治療用タンパク質をコードし、0.9より大きなコドン最適化指数を有する第2のポリヌクレオチド配列で形質転換され、第2のポリヌクレオチド配列の増幅をもたらすことが可能な選択マーカーをコードする第3のポリヌクレオチド配列をさらに含む第2の細胞株が提供され、該第2の細胞株は、選択培地中で増殖させた場合に、該治療用タンパク質をコードし、0.9未満のコドン最適化指数を有する第1のポリヌクレオチドで形質転換した第1の細胞株と比較して、該治療用タンパク質のより高い収量を産生する。
【0043】
本発明の一実施形態では、0.9より高いCAIスコアは、表6に記載されているEMBOSS CAIスコア算出法を用いて算出される。
【0044】
本発明の別の実施形態では、本明細書中の上述の実施形態に係るベクターまたは発現カセットを含む細胞株が提供される。
【0045】
また別の実施形態では、本発明の方法により取得可能な細胞株またはその子孫が提供される。
【0046】
本発明の別の実施形態では、抗体、抗体関連ポリペプチドまたはその誘導体をコードする、0.9より高いCAIスコア(EMBOSSコドン使用頻度表E.human.cutを用いてもたらされる)を有するオープンリーディングフレームが組み込まれたゲノム、またはエピソームとして維持されるそのようなオープンリーディングフレームを有する哺乳動物細胞が提供される。
【0047】
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、用語「含んでいる」および「含む」は「からなっている」および「からなる」を取り込んでいる。すなわち、「含んでいる」および「含む」は、文脈が許容する場合、具体的には明記されていない他の要素または整数を包含する可能性を有する。
【0048】
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、用語「産生プラトー」は、追加の増幅ラウンドが典型的には増幅される親クローンに対して2倍未満の増加をもたらす、改良された無血清バッチ培養において達成される発現レベルを意味する。クローンが抗体を特異的に産生するように遺伝子操作されている場合、標準的な改良無血清産生培養において0.3g〜1.5g/Lを産生するクローンは、典型的には、現行の無血清改良培養法および培地組成を用いる場合、この産生プラトーに達しているものと考えることができる。
【0049】
産生プラトーに達している最終的なクローンの単一細胞サブクローニングは、フローソーティング(例えば、96ウェルプレート中で1ウェルあたり1細胞を投入する)、軟寒天コロニーピッキング、または限界希釈クローニングをはじめとする、多くの標準的な方法により行うことができる。受け入れウェルでの単一細胞増殖を確実にするために、投入された単一細胞の増殖を補助するために、馴化培地または一時的フィーダー培養を用いるべきである場合もある。生存フィーダー共培養物が必要な場合、それらは組み込まれた選択ベクターを含まない親宿主細胞を容易に含むことができ、それにより宿主細胞は投入された単一細胞クローンが健康に分裂し始めたときに、続いて選別することができる。
【0050】
本明細書を通して用いられるオープンリーディングフレーム(ORF)との用語は、1つまたは複数の所望のポリペプチド鎖をコードする核酸コード配列を意味する。そのようなORFコード配列内に含まれるコドンは、連続的であることができ、あるいはまた、それらがイントロンを含むこともできる。ORFに含まれる場合、イントロンまたは介在配列は、通常は宿主細胞中でのスプライシング反応により除去され、続いて成熟mRNAでの最終的な連続的オープンリーディングフレームが形成される。
【0051】
本明細書を通して用いられる「収量」は、溶液(例えば、培養ブロスまたは細胞溶解混合物もしくはバッファー)中の生成物(例えば、異種性に発現されたポリペプチド)の濃度を意味し、これは通常、mg/Lまたはg/Lで表現される。収量の増加は2種類の決められた条件で生成された生成物の濃度での絶対的なまたは相対的な増加を意味する場合がある。
【0052】
機能的に連結されたとの用語は、所望のタンパク質産物を発現する発現カセットを有する宿主細胞を選択するために用いる選択・増幅マーカーの使用を意味する。これは、選択・増幅マーカーを、所望のタンパク質を発現する発現カセットを担持するのと同じプラスミドまたはベクターにクローニングすることにより達成することができ、あるいはまた、別個のプラスミドまたはベクター上で細胞に送達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実験計画2、3、4、5、6(a)、6(b)および7(a)で用いたRSVプロモーターに基づくベクターの模式図である。EF−1αプロモーターに基づく評価(実験計画6および7)については、RSVプロモーターをヒトEF−1α由来プロモーターおよび第1イントロンで置き換えた(Kim,DW.,Gene,1990,91:217−23を参照されたい)。これはヒトゲノムDNAからのPCRにより得られた。このEF−1αプロモーターを続いてRSVに基づくプロモーターの代わりにベクター中にクローニングした。
【図2】CAIスコア:0.809を有する実験計画5の非最適化重鎖を示す。実験計画5(a)で用い、配列番号10である。
【図3】CAIスコア:0.761を有する実験計画5の非最適化軽鎖を示す。実験計画5(a)で用い、配列番号11である。
【図4】上昇したCAIスコア(0.847)を有する実験計画5(b)の重鎖ORFを示す。表5を参照されたい。配列番号12を参照されたい。
【図5】上昇したCAIスコア(0.833)を有する実験計画5(b)の軽鎖ORFを示す。表5を参照されたい。配列番号13を参照されたい。
【図6】上昇したCAIスコア(0.872)を有する実験計画5の重鎖ORFを示す。この配列は抗体実験計画5(c)で用いた。配列番号14を参照されたい。
【図7】上昇したCAIスコア(0.894)を有する実験計画5の軽鎖ORFを示す。この配列は抗体実験計画5(c)で用いた。配列番号15を参照されたい。
【図8】上昇したCAIスコア(0.982)を有する実験計画5の重鎖ORFを示す。この配列は抗体実験計画5(d)で用いた。配列番号16を参照されたい。
【図9】上昇したCAIスコア(0.976)を有する実験計画5の軽鎖ORFを示す。この配列は抗体実験計画5(d)で用いた。配列番号17を参照されたい。
【図10】抗体実験計画5のための重鎖および軽鎖RNAならびにタンパク質レベルを示す。
【図11】コドン最適化法の詳細を示す。
【図12A】実験計画5最終クローン選択で得られた実施例の生成物NGHCのデータを示す。
【図12B】実験計画5最終クローン選択で得られた実施例の生成物NGHCのデータを示す。
【図13】最終的な細胞株増幅および選択の後に約3ヵ月のさらなる開発を行なったO97−7(実験計画5(d)、5nM MTX選択クローン、CAI HC:0.982、LC:0.976)から生成された実施例の力価を示す。
【図14】種々の実験計画で遺伝子操作された細胞にて観察されたDHFR遺伝子コピーおよびタンパク質ならびにNeo遺伝子コピーの相対レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明により生成される治療用ポリペプチドをコードする遺伝子のコドン使用頻度を測定し、コドン最適化指数(CAI)により定義する。
【0055】
コドン最適化とは、得られるオープンリーディングフレームの発現を妨げる望ましくない二次的な配列機能を導入することを回避しながら、オープンリーディングフレームのコドンを、ヒト/哺乳動物遺伝子で好まれる同義のコドンに最適化することである。本発明者らは、好まれるヒトコドンは、非ヒト哺乳動物細胞(例えば、ハムスター由来細胞)での引き続く発現が計画される場合でさえも、非常に好適である。しかしながら、いずれかの所与のアミノ酸に対する最も好まれるコドンが、ある哺乳動物種で異なっていたとしても、これがヒトで優勢なものに代わり用いられることもある。各オープンリーディングフレームについて生成された「CAIスコア」は、オープンリーディングフレームがヒト/哺乳動物遺伝子により最も好まれる同義のコドンの使用に最適化されている程度を表す。本発明の文脈では、1のCAIスコアは、各コドン位置において各アミノ酸について最も適したコドンが用いられていることを意味する。本発明の方法での最適な結果のためには、治療用タンパク質をコードする遺伝子は十分に1に近いCAIを有し、それにより、顕著に少ない選択・増幅薬剤を用いて、かつ/または天然に存在する出発配列を発現させたときに観察されるのと比較してより速い時間で、治療用タンパク質の所望の発現レベルが達成され、例えば、CAIは少なくとも0.9、または少なくとも0.95、または少なくとも0.975である。
【0056】
しかしながら、すべてのコドンを最も好まれるコドンに置き換えるか、またはすべての最も好まれないコドンをより好まれるコドンで置き換える必要はない。唯一の条件は、得られる配列が天然には生じない高いCAIスコアを有し、発現妨害エレメントを有しないことである。Leto1.0(Entelechon,Regensburg,ドイツ)などの市販のソフトウェアは、好適な高いCAIスコアの配列を設計することができる。本発明での使用のためのコドン最適化された配列の設計における案内をさらに補助するために、NCBIゲノムビルド番号36に由来する24044 RefSEQデータベースヒト発現産物が解析されている(NM_規定された登録番号)。CAIスコア範囲が算出され、0.593〜0.894(平均スコア0.720)であった。このデータベース中の既知の発現遺伝子(理論上のものではなく)についての最も高いスコア(0.894)は、ケラチン結合タンパク質5−8(KRTAP5−8;NM_021046)および後期角化エンベロープ1A(late cornified envelope 1A;LCE1A;NM_178348)によりもたらされた。さらに、21182種のヒトIgG cDNAのデータベースは、0.576〜0.878(平均0.766)のIgGスコアを明らかにした。当業者の案内を補助するために、本発明での使用のために好適な配列は、後期角化エンベロープ1A(LCE1A;NM_178348)などの天然に存在する最も高いヒト遺伝子のもの以上かまたはそれを超えるCAIスコアを有し得る。より好ましくは、0.9を超えるCAIスコアを用いるべきである。
【0057】
コドン最適化を比較的短い配列(例えば、可変領域のみ)にわたって実施した場合、高産生クローンの上昇したレベルが観察されるが、コドン最適化をオープンリーディングフレーム全体にわたって実施した場合、もたらされる高産生クローンの範囲(すなわち、数)はさらに増加することが観察された(表5を参照されたい)。
【0058】
好まれるコドンの配列によっては、初期設定での通常の最適化アプローチが、正常には、高スコアARE(AUリッチエレメント(Akashi et al Blood 1994;Vol.83 pp3182−3187を参照されたい))RNA不安定化配列の導入を回避するであろう。しかしながら、時には、コドン最適化後に、偶然導入された発現妨害配列エレメントを除去する必要がある場合がある。これらの発現妨害配列には、限定するものではないが、以下のものが含まれる:
(i)機能的スプライシング部位、
(ii)対相似領域(例えば、直接、逆、または回文配列)、これは特に発現レベルを低下させ、かつ/または配列間の組み換え率を上昇させる、
(iii)機能的不安定化配列。
【0059】
稀に、最適化の際にそのような望ましくない妨害エレメントが作製された場合、あまり好まれないが最も好まれないものではないヒトコドン(選択は限れらるが)を用いて局所配列を破壊し、機能を不活性化することが推奨される。最高スコアからの小さなばらつきは、本発明における得られたオープンリーディングフレームの使用に著明な影響を与えない。
【0060】
オープンリーディングフレームの狭い領域が最適化されずに残っても(例えば、有用な制限部位を残すため)、このことは全体的なCAIスコアには著明に影響しないことも認識される。
【0061】
オープンリーディングフレームが融合タンパク質、ハイブリッドタンパク質またはキメラタンパク質をコードする場合、CAIスコアを上記と同じ様式で上昇させることが推奨される。高度に発現される内在性遺伝子の発現について宿主細胞により好まれる同義のコドンへのこの最適化はまた、融合されたかもしくは遺伝子操作されたオープンリーディングフレームの遺伝子または同類のcDNAの各々すべての構成要素について行なわれるべきである。タンパク質中に存在する純粋に合成的なコード配列(すなわち、先行する配列が存在しない配列)については、正確に同じ様式で、天然には存在しない高いヒト遺伝子CAIスコアを導入すべきである。後期角化エンベロープ1Aヒト遺伝子以上かそれを超えるCAIスコアを有するオープンリーディングフレームを本発明で用いるべきである。
【0062】
本明細書中に説明される本発明は、タンパク質をコードするオープンリーディングフレームのコドン最適化により、所望のタンパク質レベルを発現する遺伝子操作された細胞株を作製するために必要とされる、選択・増幅薬剤のレベル、時間、および増幅サイクル数を減らす方法を最初に説明するものである。この目的でコドン最適化を使用することにより、より早い時間枠で十分な収量が観察され、したがって細胞株開発研究で長期間を節約する。さらに、本発明者らはまた、以前に達成していたものよりも低い濃度の選択・増幅薬剤を用いて同等かまたは改善された細胞株を作製している。実際、本明細書中に記載されるそのような改善を、Celina de la Cruz Edmondsら(上掲)により記載されているものなどの標準的な細胞培養および播種プロトコールと組み合わせた場合に、遺伝子操作された細胞株からの同等かまたは改善された収量をもたらすのに必要な、選択・増幅薬剤レベルのさらなる低下、および時間のさらなる短縮が観察されるであろう。
【0063】
本発明は、治療用タンパク質が糖タンパク質である場合の使用に好適である。以前の研究では、処理の持続時間、温度、pH、浸透圧ならびに培地成分および添加物等の改変によりタンパク質生成物のグリコシル化を制御することができることが開示されているが(例えば、WO2002076578およびその引用文献を参照されたい)、本発明者らは、治療用ポリペプチド配列をコードするオープンリーディングフレームのコドン最適化(抗体治療用ポリペプチドの場合)が、CHO細胞亜型、選択・増幅方法または培地培養条件に依存せず、不完全なグリコシル化のレベルおよびグリコシル化部位占有率減少のレベルを低下させることができることを見出した。
【0064】
この驚くべき知見は、オープンリーディングフレームのコドン最適化によりタンパク質グリコシル化プロフィールに影響を与えることができることを最初に実証するものである。本明細書中に記載されるコドン最適化アプローチを用いることにより、宿主細胞を増殖させる条件ではなく、遺伝子配列に依存して、堅牢な製造プロセスを確実にすることができる。つまり、このことは、より多くの場合、生成物のグリコシル化プロフィールにもたらされる影響についての過剰な懸念なしに、標準的な培地および栄養供給開発の反復を通して培養条件および栄養供給を改善することを可能にする。
【0065】
コドン最適化の程度は、SharpおよびLiにより最初に記載された方法を用いて測定することができる(Nucleic Acid Res 1987 15:1281−95)。SharpおよびLiは、基本的にコドン優勢度統計に由来するが、異なる遺伝子間でのアミノ酸組成でのばらつきの影響を排除するために各アミノ酸について標準化されているコドン最適化指数(CAI)スコアを提案した。このCAI計算法は、容易に利用可能である(例えば、EMBOSS The European Molecular Biology Open Software Suiteを介して(Rice et al 2000:Trends in Genetics 16;pp276−277を参照されたい))。
【0066】
本発明での使用が意図されるオープンリーディングフレームをスコア付けするために、まず、適切な参照データベースを用いなければならない。第1に、用いる宿主細胞について検討すべきであり、続いて該宿主細胞で発現される遺伝子についての対応する同義コドン使用頻度(RSCU)の参照表を特定するべきである。得られるオープンリーディングフレームをいずれかの哺乳動物細胞タイプで発現させる場合には、典型的には、ヒトRSCUデータベースが参照のために好適である。データベースの一例は、EMBOSSにより提供されているものであり、これは参照としてEhum.cutコドン使用頻度表を用いてヒト細胞でのコドン使用頻度優勢度を決定している。別の参照コドン使用頻度表は、Massaerら(上掲)により記載されているものであり、ここでは、比較的少ない高度発現ヒト遺伝子を用いてコドン優勢度を決定している。これら2つの参照表同士は、最も好まれるコドンについて大まかには一致しているものの、1種類のアミノ酸(アルギニン)については顕著な乖離がある。したがって、本発明での使用のためにオープンリーディングフレームを設計する場合には、同じコドン使用頻度表同士を相互参照して、(i)オープンリーディングフレームに含めるための最も好まれるコドンを決定し、次に(ii)続いて得られたオープンリーディングフレームをCAIスコア付けして、そのスコアが本発明での使用のために好適であるのに十分に高いことを確認することが合理的である。例えば、ヒトおよび哺乳動物細胞での発現のためのオープンリーディングフレームを設計するために日常的にMasseaerらのデータベースを用いており、したがってCGCコドンがアルギニンをコードするのに最も好まれると考えられる場合、得られるオープンリーディングフレームのCAIスコアを決定するときにもこの優勢度参照データを用いるのが合理的である。
【0067】
本明細書中に記載される方法は、抗体またはその誘導体を発現させる場合に特に好適であり、EF−1α遺伝子に由来するプロモーターおよび発現エレメントにより駆動される発現カセットと組み合わせる場合に特に有効である。他のプロモーターおよび発現エレメント(例えば、RSV LTRに由来するもの)により駆動される発現カセットもまた好適である。発現カセットエレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、マトリックス結合領域(MARS)、インスレーター、非翻訳領域、イントロンなどの介在配列、およびポリアデニル化部位)は、多くの異なる組み合わせで組み合わせて、好適な発現カセットを作製し、所望のオープンリーディングフレームの発現を駆動し、かつ本発明で用いられる選択・増幅マーカーの発現を駆動することができることは当該技術分野で周知である。
【0068】
いずれかの所与の細胞株開発プロトコールでのクローンが、無血清改良バッチ産生での産生プラトーに近づくと、さらなる研究は以下のような方法論に最も注目して行われる:(i)最良クローンの単一細胞クローニング、(ii)血清添加バッチプロセス開発、(iii)灌流型プロセス開発、(iv)オーダーメード培地ならびに栄養供給配合および処方、ならびに(v)さらなる培養最適化。例えば、1つの個別のクローンについて産生閾値に達したら、それに由来する単一細胞サブクローンは、さらに厳しいレベルの選択・増幅薬剤でのさらなる選択・増幅法により作製された増幅された娘クローンよりも、通常さらに安定であり高収量である。実際、すでに産生閾値に近づいている最終的なクローンのさらなる選択・増幅は、多くの場合、不安定化を招き、最初の改良の後では、しばしば、増幅された親クローンよりも、改良無血清産生モデルバッチ培養において同様か低い力価を最終的にもたらし得る。したがって、時には、稀で偶発的なさらなる増幅イベントが2倍を超えて力価を上昇させることがあり得るが、発現閾値に近づいたら、安定した力価をさらに増加させるために代わりに用いることができる、さらに信頼性のある技術が存在する。
【0069】
本発明を以下の実施例により例証するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
これまで、15を超える抗体実験計画にDHFR選択法を用いてきた。この方法を用いたすべてのケースにおいて、好適な収量を有する細胞株を作製するために、少なくとも2ラウンドの増幅および選択・維持圧として最低でも50nMのMTXが必要であった。この方法によりこの期間に得られた典型的な結果は、表1の抗体1、2、3および4に代表される。抗体実験計画1は、その時点で利用可能であった標準的な方法を用いて実施した。抗体実験計画2〜9は、以下の材料および方法に従い実施した。
【0071】
オープンリーディングフレームのコドン最適化指数(CAI)の改善の影響を調べた。
【0072】
研究のために抗体5を最初に選択した。この研究は、野生型(すなわち、非コドン最適化)重鎖および軽鎖抗体オープンリーディングフレームに由来する抗体生成物(抗体5(a)として記録)、可変ドメインコード配列のみを広くコドン最適化した重鎖および軽鎖オープンリーディングフレーム(抗体5(b)または5(c)として記録)、または重鎖および軽鎖オープンリーディングフレームの全体のコドン最適化(抗体5(d)として記録)を発現させることを含んでいた。この研究の結果は表1〜5に示されている。
【0073】
実施例1:材料および方法
1.1 DNAクローニングおよびベクター構築
すべてのDNAクローニングは、確立された、制限酵素に基づくサブクローニングおよびPCRアッセンブリ法を用いて行なった(Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Third Edition:Sambrook et al(CSH Laboratory Press)を参照されたい)。発現および選択ベクターの代表的な模式図を示す(図1を参照されたい)。示したベクターはRSVプロモーターを例示しているが、表1に従い異なるプロモーターを用いた。他の点では、ベクターに変更は加えなかった。
【0074】
1.2 コドン最適化
CAI最適化ORF配列を研究した実験計画では、これらの配列は所望のオーバーラップしたオリゴヌクレオチドを組み合わせて用い、標準的な融合ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)とその後のクローニングおよび配列確認により作製した。すべて、標準的な方法により行った(Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Third Edition:Sambrook et al(CSH Laboratory Press)およびStemmer et al.,Gene.164(1):49−53,1995を参照されたい)。実験計画5(b)および5(c)のORFの最適化された領域の配列は、ヒト/哺乳動物細胞についてのMassaerコドン使用頻度優勢度を用いて設計した(図11を参照されたい)。
【0075】
抗体実験計画5(d)のために、コドン最適化ORF配列は、契約供給業者1が設計し、生成した。得られたORFは、0.9より高いCAIスコアを有していた。抗体実験計画6のための抗体可変ドメインをコードするコドン最適化配列は、契約供給業者2が設計し、生成した。続いて、これらの可変ドメインを、定常領域と可変領域との間に位置するユニークなクローニング部位を用いて(重鎖についてはSpeIを用い、軽鎖についてはBsiWIを用いて)、標準的サブクローニングにより、実験計画5(d)のコドン最適化した定常ドメインコード配列と組み合わせた(実験計画6(b)および6(d))。実験計画6(b)および6(d)のための全長抗体をコードする得られたORFは、各々、0.9を超えるCAIスコアを有していた。抗体実験計画7のコドン最適化ORFの全体は、契約供給業者2が設計および作製し、得られたORFは0.9を超えるCAIスコアを有していた。実験計画8および9のORFには、可変ドメイン配列を設計するために、Letoソフトウェアアルゴリズムを用いた。続いて、これらの配列を適切な定常ドメインコード配列と組み合わせることにより、イン・フレームの全長オープンリーディングフレームを作製した(上記のように、再びSpeI部位およびBsiWI部位を用いた)。抗体8のために、可変ドメインをコードする配列を、実験計画7からの対応する定常ドメインコード配列と融合させた。抗体9のために、作製した可変ドメインコード配列を、実験計画6(d)からの対応する定常ドメインコード配列と融合させた。実験計画8および9のための重鎖および軽鎖全体をコードする得られたORFもまた、各々、0.9より高いCAIスコアを有していた。
【0076】
図11(A)では、抗体実験計画5のCDR1をコードする軽鎖配列を、代表的なサンプル配列として示している。このCDRのアミノ酸配列を示している。例示的な、潜在的auuua不安定化AUリッチエレメント(ARE)を、ボックスで囲み、太字で示している(Akashi et al Blood 83:pp3182−3187も参照されたい)。アルギニンコドンも強調してある。第1に、改良したコドン最適化法はORFにわたって上昇したCAIスコアをもたらした。この抗体は、実験計画5(b)で用いた。示したように、この方法は最も好まれるコドンを含んでいるが(例えば、Tyrについて)、それはすべての場合についてではない(例えば、Leu)。第2に、最高のCAIスコアは、Massaerらに従う最も好まれるコドンを用いていた。この配列は、抗体実験計画5(c)で用いた。提供された最終的な配列は、コドン使用頻度データベースウェブサイトで利用可能なものなどのより大きなデータベースに従い最も好まれるコドンを用いていた。この抗体配列は、実験計画5(d)で用いた。図11(B)では、Massaerらから最適化した、ヒトで高度に発現される遺伝子のコドン優勢度表を示す。図11(C)では、ヒトについてのコドン使用頻度データベース(www.kazusa.org.jp/codon)(89533CD(38691091コドン)を含む)から最適化した、ヒト遺伝子についてのコドン優勢度表を示す。
【0077】
重鎖ORFと軽鎖ORFの両方について、オープンリーディングフレームを発現ベクターに挿入するために、ユニークなHindIII部位(5’)およびEcoRI部位(3’)を通常用いた。すべての配列を、確認してからトランスフェクションに用いた。
【0078】
例示的な配列については、図2、3、4、5、6、7、8、および9を参照されたい。これらの図面は、実験計画5の元のおよび最適化したオープンリーディングフレーム配列を示している。実験計画5のうちでは、5(d)のみが、得られるCAIスコアが0.9を超えるようにオープンリーディングフレームの領域で十分にコドン最適化されていたことに留意されたい。
【0079】
本明細書中で報告するすべてのCAIスコアについて、Ehum.cutコドン使用頻度表を参照のために用いた(EMBOSSから入手可能)。
【0080】
これらのスコアは、SharpおよびLi(上掲)により最初に報告された方法を用いるコドン最適化指数アプリケーションを用いて算出される。このアプリケーションは、EMBOSSスイートの一部分である。配列のCAIスコアを決定するために、バージョン2.8.0のEhum.cutコドン使用頻度ファイルおよび初期値のパラメータ設定を用いた。
【0081】
表6
EMBOSSから誘導されたEhum.cutコドン使用頻度表である。A欄:コドン配列;B欄:コードされるアミノ酸;C欄:その重複セットのうちの所与のコドンの割合;D欄:1000コドンあたりのコドン数;E欄:この表を誘導するために用いたデータセットでコドンが観察される回数。
【表1】


【0082】
1.3 細胞培養
懸濁に適応したCHO DG44細胞は、通常、以前に適応させた動物由来成分不含培地中に播種した。この培地は、アミノ酸、微量元素、ビタミン、グルコース、および酵母加水分解物を含有する基本組成からなっていた。この培地には、組み換えインスリン、脂質およびヌクレオシドも添加した。炭酸水素ナトリウムをバッファーとして培地に添加した。当該技術分野では、多くの同等な動物由来成分不含培地処方が公知である。ベクターで形質転換した細胞の最初の選択は、ヌクレオシド除去(DHFR選択のため)およびG418添加(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ選択のため)により行なった。力価順位付けに関して、96ウェルアッセイ力価は、細胞増殖、播種数、培地供給容量、およびプレートにわたる蒸発動態によりばらつきやすかった。結果として、振とうフラスコ産生モデルで生成された力価が、高収量増幅細胞株での細胞株順位についてより示唆的であった。そのようなモデルのために、すべての細胞を、同じ当初密度で播種した。そのようなモデルでは、生存率および増殖もモニタリングした。
【0083】
1.4 トランスフェクション前のDNA調製
等量(15μg)の重鎖および軽鎖発現ベクターを、200μL容量エッペンドルフ反応中で完了まで直線化し(NotIを用いて)、続いて、エタノール/酢酸ナトリウム沈殿した。次いでペレットを70%エタノール中で洗浄し、風乾し、50μLの分子生物学グレードの水に再懸濁した。
【0084】
1.5 トランスフェクション前のCHO DG44細胞の調製
健康な増殖中の細胞、1.2×10細胞(トランスフェクションあたり)を15mLまたは50mL試験管中で遠心(1000rpm、2〜10分)し、15mLの氷冷PBS/スクロース中で洗浄し、再度遠心し、次いで800μLの氷冷PBSスクロース中に再懸濁した。続いて、この細胞懸濁液を、予め調製したDNAに添加し、15分間氷上に置き、その後、冷却したエレクトロポレーションキュベットに移した。
【0085】
1.6 エレクトロポレーション
調製したDNAおよび細胞を含むキュベットを、Gene Pulser(25μF、0.38kVに設定)中でエレクトロポレーションし、続いて10分間氷上に戻した。次いで細胞を取り出し、240mLの非選択培地に添加し、40×96ウェルディッシュに非選択培地中で2〜5×10細胞/ウェルで播種した(すなわち、50μL/ウェル)。続いてプレートをホイルでくるみ、37℃、5%COで48時間インキュベートした。
【0086】
1.7 選択、増幅およびクローン同定
エレクトロポレーションの48時間後、150μLの選択培地を各ウェルに添加した。この選択培地は、G418を含有し、ヌクレオシドを含んでいない。それから1週間後、140μLの培地を、定着した細胞層を崩さないように新鮮な選択培地と交換し、3〜4週間後、すべての増殖中のクローン(典型的にはウェルあたり0.1コロニーの増殖、すなわち、96ウェルプレートあたり10ウェルでの増殖)を、抗体産生について力価測定した。続いて、特定された最上位クローン(典型的には20〜100)を、同じ選択培地中で24ウェルディッシュ〜6ウェルディッシュまでスケールアップした。次いでこれらのクローンを96ウェルディッシュに1000細胞/ウェルで播種し(クローンあたり96ウェル)、次いで200μL/ウェルの容量で5nMのメトトレキサートも含有する選択培地にて選択した。さらなる2〜3週間のインキュベーション後、最良クローンを再度スケールアップし、次いで50nM MTX中に1000細胞/ウェルで再び播種した。これらのクローンを、2〜3週間の増殖後に96ウェルプレート中でスクリーニングし、最良クローンをスケールアップして、続いて150nM MTXを用いて96ウェルディッシュに1000細胞/ウェルで播種した。最終的なクローンを産生能について評価するために、続いて150nM MTXでの最良クローンをスケールアップし、振とうフラスコ産生モデルで、生成される生成物の力価および品質について評価した。実験計画5(a)についての最良クローンは、17−9−6−1と名付けられたクローンであった。これは、無血清産生モデルで0.3g/Lの最終力価を生成した。
留意事項:ステップ1.7で必要とされるメトトレキサートのレベルおよび増幅ラウンドの回数は、実験計画および配列がコドン最適化されているかどうかによって変化した。
【0087】
1.8 力価分析
96ウェルプレートから得た培地サンプルについて、IGEN MシリーズM8/384アナライザー(Bioveris,MaryLand,米国)での自動化96ウェルサンドイッチELISA法により、製造業者の推奨および標準的な方法を用いて、抗体力価を測定した。当該サンドイッチは、ストレプトアビジンコーティング磁気コーティングビーズ、ビオチン化プロテインAおよびルテニウム標識F(ab)2断片からなっていた。次いで、被験サンプルについて生成されたシグナルを、抗体参照標準の希釈系列と比較した。非常に感度が高いアッセイではあるが、96ウェル培養での細胞増殖のばらつきと併せたアッセイのばらつきにより、高収量、増幅細胞株についてのこのアッセイのアッセイ中間精度および再現性は比較的低い。振とうフラスコおよびバイオリアクター産生モデルで得られる培地サンプルについて、比濁法(このアッセイでは、反応溶液中の不溶性の免疫沈降素により光線シグナルが散乱する)により、ベックマン・コールター・イメージシステム(Buckinghamshire,英国)ならびに製造業者の推奨および標準的な方法を用いて、抗体力価を測定した。被験サンプルについて生成されたシグナルを、再度抗体参照標準の希釈系列と比較した。報告するすべての力価は概算である。
【0088】
1.9 バイオリアクター振とうフラスコモデル(改良無血清バッチ産生モデル)
典型的には、動物由来成分不含培地を含む通気孔付きのフタをした標準的な250mL組織培養振とうフラスコ中、800,000細胞/mLで、総容量120mLまで、細胞を播種した。続いて、これらのフラスコを二酸化炭素を富化した空気中で振とうしながら、設定された温度でインキュベートし、細胞増殖を促進し、維持した。各クローンについて種々の条件を試験した(例えば、種々の温度条件)。本明細書中で報告する結果では、各クローンについての最も高い力価(標準的な条件にわたる)を例示している。典型的には、本明細書中で報告する産生モデル終点力価は、Vi−Cell(Beckman)での標準的なVi−Cell CHOパラメータ設定および製造業者の推奨プロトコールを用いたトリパンブルー排除に基づくアッセイにより決定して、細胞生存率が約50%まで落ちた時点で記録した。典型的には、この終点力価は、10〜20日間のインキュベーションの後にもたらされた。
【0089】
1.10 バイオリアクター培養法
すべての場合で、標準的なバイオリアクター培養法および装置を用いた。一連のシードを作製するために、典型的には、細胞をより大きな容量までスケールアップし、反復する3日〜4日法で1週間に2回継代した。図13に示す実験のために、シード細胞を用いて、以下のプロセス条件で駆動された3リットルApplikon卓上バイオリアクター(実施容量:2L)に播種した:温度34℃、pH設定値6.95、DO設定値30%。振とうフラスコモデルの場合と同様に、細胞生存率が約50%に落ちるまで培養を続けた。これらのバイオリアクターは、振とうフラスコならびに治験材料等を供給するために用いるさらに大きなバイオリアクターの両方の終点力価を大まかに模倣する。
【0090】
1.11 RT−QPCR解析(結果については、図10を参照されたい)
MagNA PureならびにRNA High Performance RNA単離キットおよびプロトコール(Roche)を用いる自動化シリカベース抽出により、CHO RNA抽出およびRT−QPCR反応を行なった。ランダムヘキサマーを用いる逆転写に続いて、ABI−7700(Applied Biosystems)を用いてPCR反応を行い、標準的な方法を用いてΔΔCt相対定量アルゴリズムにより解析した。反応を多重にし(18S+標的遺伝子[重鎖/軽鎖])、ここで最も存在量が多い標的である18Sはプライマーを制限し、標的反応の阻害を妨げた。Q−PCRに用いたプローブおよび隣接プライマー対を、配列番号1〜9に従って用いた。
【0091】
上記の重鎖および軽鎖プローブ/プライマーは、実験計画5(d)では上昇したORFコドン最適化のための使用に好適ではなく、図10(A)からは排除したことに留意されたい。
【0092】
1.12 ウエスタンブロット解析(結果については図10を参照されたい)
標準的な方法を用い、これは別の文献に詳細に説明されている(例えば、Sambrookら(上掲)を参照されたい)。簡潔には、ポリクローナルな等価な細胞抽出物を、全細胞溶解およびタンパク質抽出バッファーを用いて作製した。等量の各抽出物を、Laemmliローディングバッファーとともに加熱インキュベートし、次いでSDS−Pageゲルにロードし、Tris−グリシン泳動バッファーを用いて泳動し、タンパク質画分を分離した。分離したら、続いてタンパク質をニトロセルロースメンブレンに電気的トランスファーブロッティングし、全抗ヒトIgG(HRPコンジュゲート化)を用いてプローブ付けした。HRP基質とのインキュベーションによりシグナルを生成させ、X線フィルムに記録した。実験計画5(a)のための抗体軽鎖生成物を検出するためには、追加のさらに長い露出が必要であった。
【0093】
1.13 所望の組み換えタンパク質を産生するクローンでのDHFRレベルを決定するための蛍光メトトレキサート染色
各クローンをメトトレキサートなしで4〜5日間培養した後、10μMのAlexa−Fluor488−メトトレキサート(Molecular Probes/Invitrogen,Paisley)を、18〜22時間、37℃、5%COで、700,000個の生存細胞に添加した。続いて染色した細胞を回収し、培地で洗浄し、37℃、5%COで30分間インキュベートした。回収した細胞を培地で再度洗浄し、培地中に再懸濁し、濾過し、生/死排除色素であるヨウ化プロピジウム(Sigma,St Louis)を添加した後、BD FACS ARIAで解析した。図14(A)に示したデータは、ゲートされた生細胞のみのものである。
【0094】
1.14 DHFRおよびNeoレベルについてのゲノムDNAのqPCR解析
Qiagenから入手した標準的なキットを用いて、CHOゲノムDNA抽出を行なった。分光光度計測定を用いてDNA定量化および標準化を行なった後、ABI−7700(Applied Biosystems)を用いてPCR反応を行い、標準的な方法を用いてΔCt相対定量アルゴリズムにより解析した。Q−PCRに用いたプローブおよび隣接プライマー対は、配列番号20〜25に従い使用した。結果を図14(B)に示す。
【0095】
実施例2.CHO細胞でのモノクローナル抗体重鎖および軽鎖の発現
驚くべきことに、高いCAIスコアのORFではあるが、しかし天然のスコア(すなわち、LCE1A;NM1783480の後期角化エンベロープなどの最も高い観察される天然のヒトORFのものよりも低くスコア付けされている)である実験計画5(c)が、実験計画5(d)の天然に存在しない高いCAIスコアのオープンリーディングフレームよりも高い最高力価を生成し、5(d)の高産生細胞の範囲(数)が改善された(表5を参照されたい)。続いて、5(a)、(c)および(d)のうち最良のクローンを増幅し、さらに評価した。このさらなる評価のために、5(a)のクローンを対照として進め、本明細書中に記載される結果以前に観察された典型的な実験計画力価を代表させた。この実験の結果、予想外に早く、少ない増幅レベルで、実験計画5(d)から、高産生で安定なクローン(力価および増幅は40回の継代にわたって観察された)がもたらされた。実際、5(d)からの最終的な細胞株を作製するのに必要とされたメトトレキサートのレベルは、実験計画5(a)の非コドン最適化オープンリーディングフレームからの同じタンパク質生成物を同様かより低いレベルで発現する等価な細胞株を作製するのに必要とされるレベルと比較して、顕著に低かった(97%少ないメトトレキサート)(表1を参照されたい)。さらに詳細な解析を実施した。表2〜4を参照されたい。
【0096】
改変されたCAIスコア付けされたORFにより生成される得られる組み換えタンパク質の結合特性が、コドン最適化によって変化しているか否かを調べるために、CAIスコア0.809(HC)/0.761(LC)のORF、またはCAIスコア0.982(HC)/0.976(LC)のORFによりコードされる実験計画5の抗体について、結合特性を比較し、解析した。両方の材料をバイオリアクターで生成し、同様の精製方法により精製した。この比較を通して、抗体の結合特性はこの抗体をコードしたORFに対するCAIの変化により影響を受けていないことが示された。
【0097】
実験計画5(d)からの最上位産生クローンであるO97−7(表1に示す)を、細胞株のクローン性を確かなものにするために単一細胞クローン化し、最良のサブクローンにより得られた力価は、非クローン化親細胞と比較して、無血清改良バッチ培養において2倍近い増加をもたらした。図13に示されている力価は、1.10に記載されているような、2つの別個の3リットルApplikon卓上バイオリアクターでの無血清バッチ培養によりもたらされた。
【0098】
表1
各実験計画について、引き続くさらなる開発およびバンク化のために選択した最終的なクローンを示す。細胞株開発の各段階での各最終クローンについて生成された96ウェル力価(ng/mL)も強調してある。本明細書中に記載される結果以前に得られた典型的なデータは、抗体実験計画1、2、3および4として代表される。実験計画2と実験計画4とは、同じ生成物を発現することに留意されたい。実験計画2および4に関して、すべての実験は、同じベクター、宿主細胞およびプロトコールを用いて、しかし異なる実験者および装置を用いて、2つの独立した研究室で実施した。0、5、50および150nM MTXでの、以下に示すすべての力価は、96ウェル段階で得られたものである。より高い力価はバッチ産生モデルで顕著な改善を示さなかったので、より低いMTXのクローンを進めた(表2を参照されたい)。FIO=情報としてのみ、必要ではない。実験計画6(a)は、実験計画6(b)〜6(d)からのよりよい力価によって、プラトーに達する前に中止された。
【表2】

【0099】
表5
標準的トランスフェクションにより作製された非増幅細胞と、選択プロトコールにより作製され、続いてヌクレオシド除去およびG418添加により選択された非増幅細胞との比較である。すべての細胞株は、(実験計画5の)同じ抗体を発現する同じベクターであるが、抗体が、異なるCAIスコアを有してこれをコードするオープンリーディングフレームから発現されるベクターを含んでいる。実験計画5(a)(非最適化)のために、3回のさらなるトランスフェクションを実施したが、結果が基本的にバックグラウンドであったため、示していない。図(A)では、「5ngを超える力価の%」とは、スクリーニング後に5ng/mLを超える力価を示したウェルの割合(%)を意味し、「50ng/mLを超える力価の%」とは、スクリーニング後に50ng/mLを超える力価を示したウェルの割合(%)を意味する。「最上位力価」とは、スクリーニングしたすべてのうちで最高スコアの力価を意味する。「50位値」とは、スクリーニングした50番目に高い力価を意味する。「20位値」とは、スクリーニングした20番目に高い力価を意味する。(B)では、(A)で報告した最上位、20位および50位の力価をヒストグラム形式で表している。
【表3】


【0100】
表3
表1の実験計画の96ウェルプレートでの詳細な力価分析である。G418添加およびヌクレオシド除去選択後であるが、メトトレキサート添加を用いていない、最良クローンおよび50番目によいクローンの力価を示している。
【表4】

【0101】
表4
実験計画5および6で観察された上位20〜100位のクローンを、続いて6ウェルディッシュまでスケールアップし、その後、5nMメトトレキサートを含有する培地中で96ウェルプレートに再度播種した。96ウェルディッシュで、5nM(A1)および50nM(A2)濃度のメトトレキサート抗葉酸剤で選択した、実験5および6で観察された増殖中のクローンの平均力価および最高力価を示す。
【表5】

【0102】
表2
産生プラトーの実施例である。実施例(A):実験計画5(d)のために最終的に選択したクローンを、50nMのMTX中でさらに増幅した。親クローン(網かけ)の無血清産生モデル力価および得られた「増幅」娘クローンの最高力価を示す。同様の実施例(B、C、D、E、F、G)も示す。各実施例について、さらなる増幅後の娘クローンの最高力価を記録している。
【0103】
これにより、より早くより高い力価に到達することが、さらなる増幅ラウンドを通じてより高い力価に到達させようと試みることよりも、有益であることが示されている。
【表6】

【0104】
実施例3.抗体6および7ならびにEF−1aプロモーター
抗体6のために重鎖および軽鎖の両方のオープンリーディングフレームのコドン最適化を実施し、ORFにわたって0.9を超える最終的なCAIスコアを再びもたらした(表1を参照されたい)。野生型/出発オープンリーディングフレームおよびコドン最適化オープンリーディングフレームを、RSVに基づくプロモーター発現ベクターならびにヒト伸長因子−1α(EF−1a)プロモーターに基づく発現ベクター(cis作用インスレーター、エンハンサーおよびプロモーター発現エレメントを代わりに非ウイルス性プロモーター供給源から供給している)で発現させた。この実験の結果はまた、所望のタンパク質のオープンリーディングフレームを最初にコドン最適化した場合、最終的な高産生細胞株を得るのに、顕著に少ないメトトレキサートが必要であったことを実証した。実際に、抗体6が非最適化ORF(すなわち、0.9未満のCAIスコア)によりコードされていたトランスフェクション6(a)は、産生プラトー付近の細胞の作製前に、5nM MTXの段階で中止された。0.9を超えるORFを用いた細胞株(すなわち、トランスフェクション6(b)および6(d))からすでに得られていた収量と比較して、同等なタンパク質収量を産生することが可能な細胞株を作製するのには、顕著により多くの資源および時間が必要であろうことが明らかであったので、トランスフェクション6(a)では増幅法をさらに行なわなかった。さらに、コドン最適化ありまたはなしの同一条件のベクターを比較した場合、コドン最適化は常に、必要とされる抗葉酸剤レベルを低減させたことが観察された。また、実験計画7のために、実験計画6と同様にしてコドン最適化を実施し(表1を参照されたい)、コドン最適化したORF(0.9を超えるCAI)を、RSVならびにEF−1aプロモーターに基づく発現ベクターで発現させた。またしても、プロモーターに関係なく、CAI最適化ORFからは、組み換え産物をコードするために非最適化ORFを用いたすべての以前の実験計画と比較して、同等の高収量細胞株が、より早い時間で、より少ないメトトレキサートを用いて作製された(表1にまとめてある)。
【0105】
実施例4.mRNAレベル
この方法についてさらに研究するために、生成されるmRNAのレベルに対するコドン最適化の影響を、同じベクターから、しかし異なるCAIスコアを示すオープンリーディングフレームからの同じ生成物(実験計画5の抗体)を発現する同一条件のポリクローナル細胞集団で調べた。
【0106】
CHO細胞を、同じタンパク質生成物(実験計画5の抗体)をコードする、重鎖(HC)コード発現ベクターおよび軽鎖(LC)コード発現ベクターで共トランスフェクションした。各トランスフェクション集団は、ポリクローナルなプールとして維持した。各ベクター対は、同じ抗体重鎖(HC)および軽鎖(LC)をコードするが、異なるCAIスコアを有するオープンリーディングフレームからのものである。
【0107】
この実験の結果は、図10に示され、重鎖および軽鎖メッセンジャーの両方について、非最適化対照と比較してCAIスコアが上昇している場合、mRNAレベルの顕著な増加倍率が観察されることを明らかにしている。RNAレベルの同等な上昇(出発非最適化配列と比較して)が、解析したすべての最適化配列で生じた。同様に、またウエスタンブロットアッセイの範囲内で、すべての最適化配列について、細胞内タンパク質レベルの同等な上昇が見られた。しかしながら、細胞内タンパク質レベルではそのような同等性が見られたものの、分泌されるレベルには差異があった。天然に存在しない高いCAIスコアを有するオープンリーディングフレームを含む細胞は、より高いポリクローナル力価をもたらした。このことはさらに、細胞株開発プロトコールで天然に存在しない高いCAIスコアを有するオープンリーディングフレームを用いる場合、高産生クローンの範囲が改善されるとの知見を支持するものである。
【0108】
図10
(A):RT−QPCRにより測定したHCおよびLCメッセンジャーの細胞内RNAレベルである:リボソームRNAに対して標準化したすべてのシグナルおよび増加倍率は、非コドン最適化オープンリーディングフレームによりコードされる出発HCおよびLCについて生成されたシグナルに対するものである。Y軸:RNAシグナルの0〜50倍増加にわたる値である。X軸:a(h)は、非トランスフェクション細胞から取得したRNA抽出物から生成された陰性対照HCシグナル(二重)を表す;b(h)は、実験計画5(a)について用いたのと同様の非コドン最適化HCおよびLC発現ベクター(CAIスコアは、HCについて0.809、LCについて0.761)でトランスフェクションした細胞に由来するRNA抽出物から生成されたHCシグナルを表す;c(h)は、実験計画5(b)で用いたのと同様のコドン最適化HCおよびLC発現ベクター(CAIスコアは、HCについて0.847、LCについて0.833)でトランスフェクションした細胞に由来するRNA抽出物から生成されたHCシグナルを表す;d(h)は、実験計画5(c)で用いたのと同様のさらなるコドン最適化HCおよびLC発現ベクター(CAIスコアは、HCについて0.872、LCについて0.894)でトランスフェクションした細胞に由来するRNA抽出物から生成されたHCシグナルを表す。上記のものと同じRNA抽出物から生成された軽鎖シグナルは、a(l)、b(l)、c(l)およびd(l)にそれぞれ示されている。
【0109】
(B):ウエスタンブロット分析:同等の細胞抽出物をSDS−Pageで分離し、ブロッティングし、抗生成物抗体(HRPコンジュゲート化)で標識した。非トランスフェクション細胞の対照をレーン1に示す。生成物である重鎖および軽鎖オープンリーディングフレームを発現するポリクローナル細胞は以下のとおりである:レーン2および3:HC(CAIスコア0.809)およびLC(CAIスコア0.761)(上記の実験b(h)およびb(l)から発現されたタンパク質、実験計画5(a)で用いたのと等価なベクター);レーン4および5:HC(CAIスコア0.847)およびLC(CAIスコア0.833)(上記の実験c(h)およびc(l)から発現されたタンパク質、実験計画5(b)で用いたのと等価なベクター);レーン6および7:HC(CAIスコア0.872)およびLC(CAIスコア0.894)(上記の実験d(h)およびd(l)から発現されたタンパク質、実験計画5(c)で用いたのと等価なベクター);レーン8および9:HC(CAIスコア0.982)およびLC(CAIスコア0.976)(実験計画5(d)で用いたものと等価なベクターにより発現されるタンパク質)。
【0110】
(C):図10(B)に記載されるポリクローナル細胞についての、ng/mLで示される24時間生成物力価を示す。
【0111】
実施例5.高CAIを達成するための種々の方法。実施例(a)実験計画8および実施例(b)実験計画9
(a)実験計画8のために、Letoソフトウェアを用いて可変ドメインを設計した。続いて、それらを、実験計画7のために予め作製した同一の定常ドメインと、標準的な制限酵素消化・ライゲーション法を用いて融合させた。得られた重鎖および軽鎖ORFのスコアは、それぞれ0.954および0.919であった。次に、これらを細胞株開発計画に用い、またしても、これまでにコドン最適化前に用いたどれよりも、より早い時間枠で、より少ないメトトレキサートで、高収量細胞株がもたらされた(表1を参照されたい)。
【0112】
(b)実験計画9のために、Letoソフトウェアを再び用いて、可変ドメインを設計した。続いて、これらを、実験計画6(d)のために予め作製した同一の定常ドメインと、標準的な制限酵素消化・ライゲーション法を用いて融合させた。得られた重鎖および軽鎖ORFのスコアは、それぞれ0.975および0.973であった。次に、これらを細胞株開発計画に用い、またしても、これまでにコドン最適化前に用いたどれよりも、より早い時間枠で、より少ないメトトレキサートで、高収量細胞株がもたらされた(表1を参照されたい)。
【0113】
実施例6.グリコシル化に対する影響
両方の状況で、発現のために同じ宿主、培養培地およびDHFR選択・増幅系を用いたにもかかわらず、非最適化オープンリーディングフレームから発現させた場合に生成されるレベルと比較して、コドン最適化オープンリーディングフレームから発現させた場合に、非グリコシル化重鎖(NGHC)のレベルが顕著に低いことが明らかになった。さらに興味深いことに、同様な高レベルのNGHCは、同じ非最適化オープンリーディングフレームを、異なる培養条件および異なるベクター、選択・増幅法(グルタミン合成酵素/MSX)を用いて異なる宿主細胞で代わりに発現させた場合にも見られた(図12を参照されたい)。オープンリーディングフレームのコドン最適化と非グリコシル化重鎖の低下したレベルとのこの相関は、オープンリーディングフレームのCAIスコアを上昇させることによって、生成物の全体的な品質も向上させられることを明らかにする。
【0114】
6.1 Lonza CHOK1SVおよびグルタミン合成酵素選択系を用いる細胞株開発(図12)
ベクター構築および細胞株開発は、推奨されたLonza(Slough)プロトコールに従い実施した。すべての場合で、用いた培地はCD−CHO(Invitrogen)であった。非最適化オープンリーディングフレームを有する抗体実験計画5(a)で用いたオープンリーディンフレームを、最初にLonzaベクターpEE14.4(軽鎖に対して)およびpEE6.4(重鎖に対して)にサブクローニングした。続いて、これらのベクターを推奨Lozaプロトコールに従って組み合わせて、重鎖及び軽鎖を発現する単一の二遺伝子ベクターにした。次に、このベクターを、Lonza推奨使用説明書に従って、エレクトロポレーションを用いて、CHOK1SV宿主細胞と名付けられたLonza懸濁液適合CHOK1株に送達し、これもまた推奨であるグルタミン除去およびMSXの添加を用いて、選択および増幅した。得られたクローンを96ウェルで力価測定し、最良クローンを振とうフラスコにスケールアップして、さらに評価した。最良クローンを選択し、大規模バイオリアクターで生成物を生成した。このアプローチに関するさらなる一般的な詳細については、de La Cruz Edmondsら、2006 Molecular Biotechnology 34:179−190を参照されたい。
【0115】
6.2 生成物NGHC分析
プロテインAカラムを用いて、培養上清からタンパク質を精製した。次に、生成物をSDSキャピラリー電気泳動バイオアナライザーラボチップ(Lab-on-a-chip)装置(Agilent Technologies,Cheshire,英国)を用いて、還元条件下で、製造業者のプロトコールに従って分析した。非グリコシル化重鎖は、主要なグリコシル化重鎖分子種と比較してわずかに速く移動する分子種として観察される(図12Bを参照されたい)。
【0116】
図12:表(A)は、すべての分析からの代表的なデータを示す。異なる宿主細胞、ベクター、培地および培養法を用いて異なる選択・増幅プロトコール(グルタミン合成酵素/メトトレキサート)で非最適化オープンリーディングフレームを発現させるために実施した追加の実験も含められている(上記の実施例6.1を参照されたい)。(B)出発非最適化ORFおよびコドン最適化ORFから観察された例示的なNGHCトレースを示す。この分析は、同等の規模(1000リットル)のバイオリアクターから精製した生成物について実施した。これらの代表的なトレースの重ね合わせでは、非最適化ORF(CAI:HC 0.809、LC 0.761)からの生成物を発現するバイオリアクター細胞培養の回収物は、最適化したORF(CAI:HC 0.982、LC 0.976)から生成される生成物(わずか1.5%の非グリコシル化重鎖を含んでいた)と比較して、低下したグリコシル化部位占有率を有する重鎖をもたらした(10%の非グリコシル化重鎖)。
【0117】
実施例7.最終的な細胞株での選択・増幅薬剤のレベルに対する影響
DHFR選択系での漸増量のMTX選択・増幅薬剤の追加のまたは段階的な力価測定を、遺伝子コピー数の増加により発現を増加させるために行なう。トランスフェクションされたプラスミドDNAの遺伝子コピー数に対するコドン最適化の影響を調べるために、2種類の異なる半定量法を用いた(実験の説明については、1.13節および1.14節を参照されたい)。
【0118】
まず、FACS解析を用いた。この目的のために、実験計画2、3、4、5(d)、6(d)および7(b)について、最終的な細胞株またはその単一細胞クローンを蛍光メトトレキサートで染色し、FACSにより解析した。結果(図14Aに示されている)から、平均蛍光強度により示されるメトトレキサートのレベル、およびしたがってDHFRのレベルが、細胞株の増幅レベルと相関することが実証され、すなわち、5nM MTXで選択された最終的な細胞株(実験計画5(d)、6(d)および7(d))が最も低いDHFRレベルを有し、150nM MTXで選択された最終的な細胞株(実験計画3)が最も高いDHFRレベルを有する。さらに、DHFRおよびNeoについてのqPCRを、実験計画3、4、5(a)、5(d)、7(b)および9についての最終的な細胞株またはその単一細胞クローンから抽出されたゲノムDNAに対して実施した。結果(図14Bに示す)から、5nM MTXで選択された株(実験計画5(d)、7(b)および9)が、150nM MTXで選択された株(実験計画3、4および5(a))よりも、顕著に低いDHFRおよびNeoのDNAレベルを、したがってより少ないコピー数を有していることが実証される。
【0119】
上述の結果から、コドン最適化ORF(この実施例については、実験計画5(d)、6(d)、7(b)および9)から誘導された細胞株は、非最適化ORFから誘導された株(この実施例については、実験計画2、3、4、5(a))と比較して少ない遺伝子コピー数を有していることが実証される。したがって、コドン最適化ORF(CAI>0.9)の使用は、(非最適化ORFから誘導された細胞株と比較した場合)同等またはより高い力価を有し、より低いレベルの増幅で、より少ないコピー数のトランスフェクションDNAでの細胞株の作製をもたらす。より少ないコピー数、より少ない増幅された発現ベクターからの同等またはより高いレベルの抗体を生成するクローンの作製は、非常に望ましい。例えば、組み込まれた発現ベクターのコピー数が増加したときに、反復配列誘発遺伝子サイレンシング(RIGS)が誘導される場合があり、そのようなRIGSは翻って哺乳動物細胞でのそのようなベクターからの発現レベルの低下をもたらし得ることが示されている(例えば、McBurney MW et al Exp Cell Res 2002 274:1−8を参照されたい)。
【0120】
図14(A):実験計画2、3、4、5(d)、6(d)および7(b)の各々に対する最終的な細胞株について観察された平均蛍光のプロットである。DHFRに対する細胞染色は、材料および方法、実施例1に記載されているとおりに行なった。(B):実験計画3、4、5(a)、5(d)、7(b)および9に対する最終的な細胞株からのゲノムDNAに対するqPCRによる、DHFRおよびNeo DNAのレベルを示す。qPCRは、材料および方法、実施例1に記載されているとおりに行なった。観察された基準レベルに対して、DHFRおよびNeoについての最も低い値(実験計画7(b)で見られた)を1に設定し、すべての他の値をそれ以上の相対的増加倍率としてプロットした。各値の下には、解析された細胞株により発現されるタンパク質が0.9を超えるCAIを有するORFからのものであるか否か(Y=Yes、N=No)、および該細胞株を作製するのに必要とされたMTXレベル(nM MTX)も示している。
【表7】

【0121】
配列番号1

【0122】
配列番号2

【0123】
配列番号3

【0124】
配列番号4

【0125】
配列番号5

【0126】
配列番号6

【0127】
配列番号7

【0128】
配列番号8

【0129】
配列番号9

【0130】
配列番号10

【0131】
配列番号11


【0132】
配列番号12

【0133】
配列番号13

【0134】
配列番号14


【0135】
配列番号15

【0136】
配列番号16


【0137】
配列番号17

【0138】
配列番号18

【0139】
配列番号19

【0140】
配列番号20

【0141】
配列番号21

【0142】
配列番号22

【0143】
配列番号23

【0144】
配列番号24

【0145】
配列番号25


【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用タンパク質を産生する細胞株を作製する方法であって、以下のステップ:
(a)少なくとも1種の治療用タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列を取得するステップ、
(b)第1のポリヌクレオチド配列を改変して第2のポリヌクレオチド配列を取得するステップであって、第2のポリヌクレオチド配列のコドン最適化指数が、第1のポリヌクレオチド配列のコドン最適化指数より大きく、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは同じ治療用タンパク質をコードするステップ、
(c)ステップ(b)の第2のポリヌクレオチド配列および細胞内で第2のポリヌクレオチド配列の増幅をもたらすことが可能な選択マーカーをコードするポリヌクレオチド配列で少なくとも1つの細胞を形質転換するステップ、
(d)ステップ(c)の第3のポリヌクレオチドによりコードされる選択マーカーを不十分なレベルで発現する細胞株で細胞の増殖を阻害する選択薬剤濃度を含有する培地中で、ステップ(c)の少なくとも1つの細胞を増殖させ、複数の細胞を含む第1の細胞株を作製するステップであって、それにより、第1のポリヌクレオチドで形質転換した細胞株で産生される該タンパク質の同等な産生プラトーに達するのに必要とされるであろうよりも、少ない増幅ラウンドで、かつ/または低い選択薬剤濃度で、第2のポリヌクレオチドによりコードされるタンパク質の産生プラトーに達するステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
第1の細胞株をバイオリアクター中で培養し、産生される前記治療用タンパク質を精製する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2のポリヌクレオチド配列のコドン最適化指数が0.9より大きい、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
選択薬剤レベルが、第1のポリヌクレオチド配列を用いる同じ方法のために使用される選択薬剤の量と比較して50%未満まで低下する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
選択薬剤レベルが、第1のポリヌクレオチド配列を用いる同じ方法のために使用される選択薬剤の量と比較して25%未満まで低下する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
選択薬剤レベルが、第1のポリヌクレオチド配列を用いる同じ方法のために使用される選択薬剤の量と比較して5%未満まで低下する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
選択薬剤レベルが、第1のポリヌクレオチド配列を用いる同じ方法のために使用される選択薬剤の量と比較して3%未満まで低下する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
治療用タンパク質を産生する細胞株を作製する方法であって、以下のステップ:
(a)治療用タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列を取得するステップであって、該ポリヌクレオチド配列のコドン最適化指数が0.9より大きいステップ、
(b)該治療用タンパク質をコードする該ポリヌクレオチド配列および細胞株で該治療用タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチド配列の増幅をもたらすことが可能な選択マーカーをコードする第2のポリヌクレオチド配列で細胞株を形質転換するステップ、
(c)ステップ(b)の該ポリヌクレオチドによりコードされる選択マーカーを不十分なレベルで発現する細胞の増殖を阻害する上昇濃度または漸増濃度の選択薬剤を含有する培地中で、形質転換された細胞株を増殖させるステップであって、それにより、治療用タンパク質をコードし、0.9未満のコドン最適化指数スコアを有するポリヌクレオチド配列で形質転換した細胞株からの該治療用タンパク質の同じ収量を達成するのに必要とされる濃度と比較して、培地中の選択薬剤濃度が低下するステップ
を含む、上記方法。
【請求項9】
前記治療用タンパク質が、抗体、その誘導体または抗原結合性断片である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記治療用タンパク質がモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
形質転換される細胞株が、内在性細胞性酵素の破壊または阻害により、代謝的に欠陥がある、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
形質転換される細胞株が、ヌクレオシド合成経路に欠陥がある、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記選択マーカーがジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードするポリヌクレオチドであり、前記選択薬剤が抗葉酸剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗葉酸剤がメトトレキサートである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記選択マーカーがグルタミン合成酵素をコードするポリヌクレオチドであり、前記選択薬剤がメチオニンスルホキシミンである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
タンパク質産生プラトーに達するのに1回の増幅ラウンドしか必要とされない、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
最終的な収量が無血清バッチにおいて0.5g/Lより多い、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
用いるMTX濃度が50nM未満である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
用いるMTX濃度が5nMである、請求項1〜14および16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞株が哺乳動物細胞株である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞株がCHOまたはNS0である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第1のポリヌクレオチド配列よりも大きなコドン最適化指数を有する第2のポリヌクレオチド配列で形質転換された第2の細胞株であって、第1のポリヌクレオチドおよび第2のポリヌクレオチドは同じ治療用タンパク質をコードし、該細胞株は第1のポリヌクレオチド配列の増幅をもたらすことが可能な選択マーカーをコードする第3のポリヌクレオチド配列をさらに含み、該第2の細胞株は、両者を選択培地中で増殖させたときに該治療用タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドで形質転換された第1の細胞株と比較して該治療用タンパク質をより高収量で産生する、上記細胞株。
【請求項23】
治療用タンパク質をコードし、0.9より大きなコドン最適化指数を有する第2のポリヌクレオチド配列で形質転換され、第2のポリヌクレオチド配列の増幅をもたらすことが可能な選択マーカーをコードする第3のポリヌクレオチド配列をさらに含む第2の細胞株であって、該第2の細胞株は、該治療用タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドで形質転換された第1の細胞株と比較してより高収量の該治療用タンパク質を産生し、該第1のポリヌクレオチドは0.9未満のコドン最適化指数を有する、上記細胞株。
【請求項24】
0.9を超えるCAIスコアを有するオープンリーディングフレームを含む少なくとも1つの発現カセット、および増幅・選択マーカーを含む第2の発現カセットを含むベクター。
【請求項25】
宿主細胞に含まれる、0.9を超えるCAIスコアを有するオープンリーディングフレームを含む増幅された発現カセットであって、増幅・選択マーカーを含む第2の発現カセットに機能的に連結されている、上記発現カセット。
【請求項26】
請求項24に記載のベクターまたは請求項25に記載の発現カセットを含む細胞株。
【請求項27】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法により取得可能な細胞株またはその子孫。
【請求項28】
0.9より大きなCAIスコアを有する、増幅・選択マーカーに機能的に連結されたオープンリーディングフレームを含む細胞株。
【請求項29】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法により生成される抗体であって、生成された抗体が少なくとも1つの重鎖を含み、5%以下の非グリコシル化重鎖を有する、上記抗体。
【請求項30】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法を用いて生成される抗体であって、該抗体の重鎖が95%グリコシル化されている、上記抗体。
【請求項31】
請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法を用いて生成される抗体であって、該抗体の重鎖が96%グリコシル化されている、上記抗体。
【請求項32】
請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法を用いて生成される抗体であって、該抗体の重鎖が97%グリコシル化されている、上記抗体。
【請求項33】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法を用いて生成される抗体であって、該抗体の重鎖が98%グリコシル化されている、上記抗体。
【請求項34】
モノクローナルである、請求項29〜34のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項35】
抗β−アミロイド抗体である、請求項33または34に記載の抗体。
【請求項36】
配列番号18の重鎖配列および配列番号19の軽鎖配列を有する、請求項35に記載の抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−536358(P2010−536358A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521409(P2010−521409)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060834
【国際公開番号】WO2009/024567
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】