製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法及びその装置
【課題】 製鉄所発生廃棄物等を製鋼工程の原料として直接使用できるような鉄合金等の付加価値の高い回収物を得ることが可能な再資源化方法、及びそのための装置を提供する。
【解決手段】 鉄鉱石屑や、製銑工程、および製鋼工程にて発生する製鉄所ダスト1や、酸洗工程、および鍍金工程にて発生する鉄、ニッケル、およびクローム等の物質を含有するスラッジのような各種廃棄物3を被処理物としてロータリキルン7を用いて処理する方法である。ロータリキルン7の上流側から下流側へ被処理物を移動させる間に被処理物から有価な回収物を回収する再資源化する製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法及びそのための装置である。ロータリキルン7の上流側では、被処理物を還元性雰囲気中で加熱して被処理物中の酸化物を還元すると共に、被処理物を溶融することによって、溶融金属およびスラグを含む還元生成物たる溶融生成物を得る。ロータリキルン7の下流側では、溶融生成物から有価な回収物を回収する。
【解決手段】 鉄鉱石屑や、製銑工程、および製鋼工程にて発生する製鉄所ダスト1や、酸洗工程、および鍍金工程にて発生する鉄、ニッケル、およびクローム等の物質を含有するスラッジのような各種廃棄物3を被処理物としてロータリキルン7を用いて処理する方法である。ロータリキルン7の上流側から下流側へ被処理物を移動させる間に被処理物から有価な回収物を回収する再資源化する製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法及びそのための装置である。ロータリキルン7の上流側では、被処理物を還元性雰囲気中で加熱して被処理物中の酸化物を還元すると共に、被処理物を溶融することによって、溶融金属およびスラグを含む還元生成物たる溶融生成物を得る。ロータリキルン7の下流側では、溶融生成物から有価な回収物を回収する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法およびこの方法を実施する装置に関し、特に、製鉄所において発生する廃棄物を被処理物として処理することにより被処理物から付加価値の高い回収物を得るための方法およびこの方法を実施する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に製鉄所においては大量の廃棄物が発生し、これらの廃棄物には、例えば、鉄鉱石屑、製銑工程あるいは製鋼工程にて発生するダスト等が含まれる。これらの廃棄物は包括的に製鉄所発生廃棄物、あるいは単に廃棄物と呼ぶ。
【0003】製鉄所発生廃棄物は再処理しリサイクルして、製鉄所廃棄物廃棄物中に残っている鉄分等の有価金属を回収することが好ましい。このことを考慮して、上記の廃棄物、特に、鉄鉱石ダストならびに製銑/製鋼ダストを処理しリサイクルするための種々の方法が提案されている。しかし、従来、これらの方法は、技術面およびコスト上の問題等があって、産業上の利用は難しかった。そこで、これらの廃棄物は、十分にはリサイクルされずに、埋め立て処分されることが多かった。
【0004】しかし、環境規制の強化、再資源化推進の観点、さらには埋立地の狭隘化等に因り、廃棄物の埋め立てを続けていくことは、困難になってきた。
【0005】ところで、上述したように、製鉄所の製銑/製鋼工程にて発生する廃棄物には、鉄分等が含まれているので、製銑/製鋼工程にて再利用されることが好ましい。しかし、この製鉄所の廃棄物には、一般に、亜鉛や鉛等の重金属が多く含まれており、これが問題である。即ち、再利用例として、製鉄所で発生した廃棄物を、仮にそのままの状態で、製銑工程にて使用されている焼結機や高炉に投入しようとすると、これら装置の運転に廃棄物に含まれている亜鉛等の重金属によって障害がもたらされることは、この分野においてよく知られている処である。このことを考慮して、製鉄所で発生する廃棄物を製鉄所で再利用するために、亜鉛や鉛等の重金属を除去するための方法が、提案ならびに実行されている。従来、製鉄所において、焼結機や高炉等へ戻すために廃棄物から亜鉛あるいは鉛等を除去する方法としては、以下に述べる2つの方法が主に採られている。
【0006】具体的にいえば、第1の方法は、ロータリキルンにて酸化亜鉛をコークスからなる還元剤を用いて還元/蒸発してダストから取り除くと共に、さらに鉄酸化物をも還元し、亜鉛含有量の低い還元鉄を得る方法である。得られた還元鉄は、高炉または焼結機に戻される。第2の方法は、湿式サイクロンにて亜鉛成分を濃縮し、亜鉛濃度の高いものは非鉄製錬の原料として供給し、濃度の低いものは高炉または焼結機へ戻す方法である。
【0007】ここで、高炉または焼結機は、前述したように、製銑工程にて使用されている装置である。つまり、上記第1または第2の方法により亜鉛を十分に除去したとしても、その処理物は、製鉄所における一連のプロセスのうちの比較的前方の工程である製銑工程に戻されるのがせいぜいであるのが実情である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】一般に、第1の方法では、ロータリキルンに投入する前にダストを予め所定のサイズのペレット状にする前処理が必要であったり、亜鉛を除去した後の回収物中の鉄等の有価金属の純度が低いために上述のごとく単に製銑工程には戻せるものの、製鋼工程には戻すことができない。つまり、第1の方法は、回収物の価値に対して処理コストが高いという問題点がある。第2の方法では、亜鉛成分の濃縮が十分ではないし、十分に亜鉛成分を濃縮することにより亜鉛を十分に除去した回収物を得られたとしても、やはり、製銑工程に戻せるものの、製鋼工程には戻すことができない。いずれにしても、従来の亜鉛の除去方法はいずれも、低い処理コストで付加価値の高い回収物を得ることは不可能である。
【0009】ロータリキルンを用いた第1の方法には、さらに詳しくは、次のような問題点がある。第1の方法は、ロータリキルンによる直接還元製鉄法の一種である。即ち、現象面を捕えれば、あくまでも気固反応による還元鉄の製造である。この処理においては、ロータリキルンを運転するにつれて、その内壁面に種々の付着物が付着するのを避けることはできない。このことは、この分野にてよく知られていることでもある。内壁面に付着物が付着したロータリキルンは、操業停止せずに長時間に亘って運転することは困難である。
【0010】このため、このことを考慮して、従来、ロータリキルンは、内壁面に付着物が付着しないように、炉内温度を少くとも鉄の溶融温度程度かそれ以下の低い雰囲気温度で運転しなければならない。実際には、ロータリキルンは、1200℃以下程度の比較的低い炉内温度で運転されている。
【0011】このような比較的低い温度であっても、還元を完了させるために、従来は、内径Dに対して長さLが長い(L/D≧20)構造のロータリキルンが多用されており、その下流側(出口側)に加熱バーナを設ける構造が採用されている。
【0012】上記構造の従来のロータリキルンは、実際上、かなり大型であって、高価である。このことと、前述したように、ロータリキルンを用いた亜鉛の除去方法自体が低い処理コストで付加価値の高い回収物を得ることが不可能であることとを併せ考えると、ロータリキルンを用いるこの従来法は、廃棄物を再利用するのに際して積極的に用いることはできない。
【0013】ロータリキルンを製鉄所の廃棄物のリサイクルに適用することには、さらに、以下の問題がある。
【0014】従来のロータリキルンでは、加熱バーナがロータリキルンの下流側に配置されており、燃焼ガスが、ロータリキルン中における処理物の移動方向に対して反対の方向に流されている。この燃焼ガスの流れ方は、対向流と呼ばれる。燃焼ガスによって、ロータリキルン内をその下流側へ向かって移動する廃棄物は加熱される。従来のロータリキルンは前述のごとく長いので、燃焼ガスによる炉内温度は、ロータリキルンの下流側から上流側へ向かうにつれて下がるような分布を呈している。この温度分布は、ロータリキルンから排出するまでの間に被処理物の還元を完了させる目的上、好ましいものであるが、ロータリキルンの特定の領域、概して、十分に加熱できないロータリキルンの上流側の領域では、上記した温度分布と関連して、ロータリキルンの内壁面上への付着物の生成をもたらす。この付着物は、リング状に形成されるのでダムリングと呼ばれる。ダムリングは、ロータリキルン内における被処理物の移動を妨げるので好ましくないことはいうまでもない。
【0015】また、製鉄所の廃棄物には、上述した鉄鋼石屑やダストに加えて、酸洗工程および鍍金工程等から発生するスラッジがある。スラッジはダストに比べて含水率が高いため、従来のロータリキルンで処理を行おうとする場合には、脱水すると共に、造粒化する前処理が必要である。さらに、スラッジは、油分を含んでいるものが多く、このようなスラッジは、脱水処理が実際上不可能であり、勿論この後の造粒化処理もできない。したがって、従来のロータリキルンでは、スラッジは事実上処理されていない。
【0016】さらに、製鉄所あるいはその他の設備から発生する廃棄物としては、紙屑、木屑、プラスチック廃棄物、パルプ屑やパルプ残滓、および廃油等の可燃物、ならびに炭素質を含有する廃棄物がある。可燃物は、鉄鉱石屑、ダスト、およびスラッジを処理して還元鉄を製造する際に、燃料として利用できる可能性がある。また、炭素質を含有する廃棄物は、還元鉄を製造する際に、還元剤として利用できる可能性がある。このため、これら自体の処理はもとより、還元剤としての有効利用が望まれる。しかし、従来のロータリキルンを用いて、鉄鉱石屑、ダスト、およびスラッジ等の廃棄物を処理する際に、可燃物、ならびに炭素質を含有する上記廃棄物を還元剤として使用すると、ロータリキルン内にて、温度が安定しなかったり、処理物を円滑に移動させることができない。
【0017】本発明の技術的課題は、ロータリキルンを用いながらも、前述した問題を解決し得る製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法およびその方法を実施するための装置を提供することである。
【0018】本発明の他の技術的課題は、低い処理コストで、製鉄所発生廃棄物等を製鋼工程の原料として直接使用できるような鉄合金等の付加価値の高い回収物を得ることができる再資源化方法、およびその方法を実施するための装置を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、製鉄所の製銑、製鋼工程等にて発生する廃棄物を被処理物としてロータリキルンを用いて処理する方法にて、該ロータリキルンの上流側から下流側へ被処理物を移動させる間に被処理物から有価な回収物を回収する製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法であって、前記ロータリキルン内の前記上流側にて、被処理物を還元雰囲気中で加熱して被処理物中の酸化物を還元すると共に、被処理物を溶融することによって、溶融金属およびスラグを含む還元生成物たる溶融生成物を得る工程と、前記ロータリキルンの前記下流側にて、前記溶融生成物から有価な回収物を回収する工程とを有することを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法が得られる。
【0020】本発明によればまた、製鉄所の製銑、製鋼工程等にて発生する廃棄物を被処理物として処理するロータリキルンを有し、前記ロータリキルンによって、その上流側から下流側へ被処理物を移動させる間に被処理物から有価な回収物を回収する製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置であって、前記ロータリキルンの前記上流側に、被処理物を加熱して被処理物から低沸点金属を蒸発および除去すると共に高沸点金属を得、さらに高沸点金属を溶融させる加熱バーナを有し、前記ロータリキルンは、前記加熱バーナと協働して還元雰囲気中で被処理物中の酸化物を還元する気固反応部を備え、溶融金属およびスラグを含む還元生成物たる溶融生成物を得るものであり、前記ロータリキルンはさらに、その前記下流側に、前記溶融生成物から有価な回収物を回収する回収部を備えることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置が得られる。
【0021】このようにして、本発明では、鉄鉱石屑や、製銑工程、製鋼工程にて発生するダストを再利用可能な資源に再生する。つまり、ダストを還元、溶融して鉄合金とスラグとの二層に分離し、別々に回収すること、回収した鉄合金はそのまま製鋼原料として利用することが可能である。勿論、銑鉄原料として利用してもよい。さらに、スラグをもセメントや路盤材等として利用することが可能である。
【0022】また、ダストのみならず、酸洗工程、鍍金工程等から発生する各種廃棄物をも、ダストに混合して同時還元溶融処理を行い、同様に再利用可能な資源として回収することができる。さらに、紙屑、木屑、廃油等の可燃物は燃料の一部として利用すると共に、炭素質を含有する各種廃棄物をも、還元に必要な炭材として利用することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法、ならびに、この方法を実施するための装置を併せて説明する。
【0024】本発明による再資源化方法は、ダスト等のロータリキルンへの投入物を短時間で高温まで昇温することによって、気固反応で生成した還元鉄をこの高温領域で、後述するように冷却されると鉄合金になる溶融金属とスラグとの二層に分離し、別々に回収する。尚、スラグは溶融状態であっても非溶融状態であってもよい。このため、従来問題となっていたロータリキルンの内壁への付着物が付着することによる操業時のトラブルも減少し、付加価値の高い回収物を得ることが可能になる。
【0025】本再資源化方法に用いるロータリキルンは、その長さLと内径Dとの比(L/D)を従来のものに比較して大幅に小さく、望ましくはL/Dを5以下とし、加熱用バーナーを被処理物の投入側に設置し、ロータリキルン全体の温度を高温まで上昇することができる構造であり、ロータリキルン内壁面に付着物が発生しても、それをバーナーで加熱することにより溶融させ除去することができる等、従来のロータリキルン法とは明らかに異なる手段を採用している。
【0026】さて、本再資源化方法では、ロータリキルンにより、鉄鉱石屑や、製銑工程、製鋼工程で発生するダスト、並びに酸洗工程、鍍金工程から発生する鉄、ニッケル、クローム等の物質を含有するスラッジ等を炭素質還元剤により還元溶融し、再利用可能な回収物を得る。即ち、還元剤により被処理物に含まれる金属酸化物を還元し、亜鉛等の低沸点金属は蒸発させて除去する。一方、鉄等の高沸点金属は溶融金属として、また、残りはスラグとして分離して回収する。
【0027】従って、回収した鉄合金は、直接に、製鋼工程に再利用可能な低亜鉛物質(重量比率でZn/Fe=1.0/1000以下)となる。尚、回収した鉄合金は、製銑工程に再利用してもよい。
【0028】被処理物をロータリキルン内に投入する前に、まず、炭素質還元剤(微粉炭、粉コークス、その他)と被処理物とを公知の乾式又は湿式混合法で混合する。その後、乾式処理したものは、直接にキルンに投入するか、或は別途湿式法で得た脱水ケーキ等とさらに混合してから投入する。また、湿式処理したものは脱水して脱水ケーキとし、これを直接にキルンに投入するか、或は微粉炭等をさらに混合してからキルンに投入する。
【0029】また、本発明におけるロータリキルンの基本的に具備すべき条件および構造は、以下の項目(1) 〜(4) に示す通りである。
【0030】条件および構造(1) 処理物の投入部側に加熱用のバーナを備える。即ち、燃焼ガスの流れと被処理物の流れとを並行流とする。
【0031】条件および構造(2) ロータリキルンの長さLと径Dとの比を、L/D≦5とする。
【0032】条件および構造(3) ロータリキルンの傾斜を1〜2度程度とし、反応や溶融に必要な滞留時間が確保できる構造とする。
【0033】条件および構造(4) ロータリキルンのガス排出端は、2次燃焼室に連結されている構造とする。
【0034】さて、本発明においては、鉄合金の回収率を向上させるために、廃棄物としてのスラグ生成物質、例えば焼却灰等を上記ダストおよびスラッジ等に混合して溶融処理を行い、生成した溶融金属表面を十分なスラグ層で覆い、酸化を防止する手段を必要により講じる。
【0035】また、ロータリキルンの排出端に連結する2次燃焼室は、ロータリキルン排ガス中の未燃物を完全に燃焼させるのに加え、ダイオキシン等の有害物質の高温熱分解も行い、無害なガスとして系外に放出する。高温のロータリキルン排ガスの熱量およびこの燃焼室での燃焼熱は、後段のボイラーにより蒸気で回収し、プロセス全体の熱損失を低減させる。
【0036】溶融金属、スラグは、ロータリキルンの排出端の下部に設置された水槽に投入され、冷却後、系外へ排出される。水槽内は循環水で撹拌し、溶融金属およびスラグの冷却が十分行われる構造とする。回収品の用途上、鉄合金とスラグとの分離が必要な場合は後段で磁選等で分離する。
【0037】図1は、本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の処理フローを説明するための図である。
【0038】以下、図1を参照して、本発明の処理フローを説明する。
【0039】まず、被処理物の前処理を行う。本例では、製鉄所ダスト1−1および製鉄所スラッジ1−2を含む製鉄所廃棄物を主な処理物として説明する。製鉄所ダスト1−1は、鉄鉱石屑、製銑工程または製鋼工程等から捕集されたダスト、あるいは焼却灰などである。製鉄所スラッジ1−2は、鍍金工程または酸洗工程等から生じたスラッジである。
【0040】さて、製鉄所ダスト1−1は、微粉炭あるいは粉コークスなどの炭素質還元剤2と、湿式混合槽4を用いて混合された後、脱水装置5を用いて脱水ケーキにされる。脱水ケーキは、ロータリキルン7へ投入される。尚、製鉄所ダスト1−1のうち、焼却灰などのスラグ生成物は、直接にロータリキルン7に投入されることがある。
【0041】製鉄所スラッジ1−2は、その大部分が、前述のごとく脱水処理が困難であるので、湿式混合せずに直接にロータリキルン7に投入される。直接投入される製鉄所スラッジ1−2のうち、炭素還元が必要なものについては、これが直接投入されたとときに、外装還元剤(図示せず)を別途ロータリキルン7へ投入することで対処する。
【0042】また、本発明では、紙屑、木屑、プラスチック廃棄物、パルプ屑、パルプ残滓、あるいは廃油などの各種廃棄物2を、還元剤もしくは炭素質還元剤3のサポート的な物質として、炭素質還元剤3と同様に被処理物に対して湿式混合槽4を用いて混合して用いることができる。勿論、還元剤として用いられるとしても、各種廃棄物2は実質的に処理されるので、被処理物とみなすこともできる。各種廃棄物2のうち、比重が小さいものや油分を含んでいるものは、湿式混合には不適なので、直接にロータリキルン7に投入して用いられる。
【0043】ロータリキルン7の被処理物の投入部の雰囲気温度は、500〜700℃にされる。この際、前述したように、必要に応じて外装還元剤を投入してもよい。ロータリキルン7は、その被処理物の投入部に、加熱用のバーナー6を備えた並行流タイプである。
【0044】これら脱水ケーキ等の被処理物は、投入部の雰囲気温度を500〜700℃にしたロータリキルン7に投入される。この際、前述したように、必要に応じて外装還元剤の投入も行ってもよい。ロータリキルン7は、その被処理物の投入部に加熱用のバーナー6を備えた並行流タイプである。
【0045】次に、ロータリキルン7内で、被処理物の加熱、還元、溶融を行う。
【0046】即ち、ロータリキルン7内に投入された被処理物は、ロータリキルン7内をその排出端側に向かって移動しながら投入端側に設置されているバーナー6により加熱され、以下の工程(1) 〜(4) を経ながら、還元溶融され、溶融金属とスラグとに分離され、ロータリキルン7から排出され、さらに冷却される。
【0047】工程(1) 乾燥工程では、ロータリキルン7に投入された被処理物は、昇温と共に含有水分が蒸発し、乾燥されてロータリキルン7内を移動する。このとき、被処理物は、造粒化されてもよい。
【0048】工程(2) 還元工程では、乾燥が完了した頃から、被処理物に含まれる鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、鉛等の酸化物の還元反応が活発になり、ベッドの温度が約1000℃〜1200℃で還元はほぼ完了する。還元により生成された沸点の低い亜鉛等の金属は蒸発し、還元性のベッドから酸化性のガス空間に移行し、この雰囲気で酸化され、排ガスと共にロータリキルン7外へ飛散し、後段の集塵機14で捕集される。
【0049】また、還元された鉄等の高沸点金属は還元性のベッド内に滞留する。これらの金属酸化物の還元反応生成物として一酸化炭素を生成するが、バーナー6からの過剰な空気によりベッド直上で燃焼し、バーナー6による熱ガスと共にベッドの加熱に寄与する。また、この一酸化炭素の燃焼フレームはベッドを還元性雰囲気に維持することにも貢献している。
【0050】工程(3) 溶融工程では、気固反応による還元が終了し、さらに1200℃以上に温度上昇すると還元鉄は還元剤としての炭素を飽和しながら銑鉄となって融体化する。この溶融生成物は、主に、クロム、ニッケル等の金属もその中に取り込みながら高炭素の鉄合金となる。鉄合金成分を分離した残りの酸化物、即ちSiO2 、CaO、Al2 O3 等はスラグとなる。これらは、ロータリキルン7の1250〜1300℃に保持された排出部へ移行し、ここで溶融金属とスラグとは比重差で分離し、比重の大きい溶融金属の表面をスラグが覆う形で存在し、上層のスラグが溶融金属を酸化性雰囲気から遮断する役目も果たす。比重分離した溶融金属およびスラグは、ロータリキルン7の排出端から冷却水槽10へと排出される。
【0051】尚、有害物質である六価クロムを含有した被処理物も、上記還元、溶融工程にて処理され、金属クロム又は三価クロムに還元されて、無害なものになる。
【0052】工程(4) 溶融金属およびスラグのロータリキルン7から排出する工程および冷却工程では、ロータリキルン7から排出された溶融金属とスラグは、ロータリキルン7の排出端の下部に設置された冷却水槽10に投入され、冷却される。冷却水槽10内は循環水で撹拌し、溶融金属、スラグの冷却が十分行われる構造となっている。冷却された溶融金属、即ち、鉄合金とスラグは、搬出機12により系外へ排出される。回収品の用途上、鉄合金とスラグとの分離が必要な場合は、後段で磁選等で分離する。
【0053】次に、ロータリキルン7からの排ガス処理を行う。ロータリキルン7からの排ガスは、ロータリキルン7の排出端に連結している2次燃焼室11に導入され、ここでロータリキルン7の排ガス中の未燃物の完全燃焼および有害物資の熱分解を行い、熱回収のための装置(ボイラー等の熱交換器13)に送られる。ボイラー等の熱交換器13を出たガスは集塵機14を経て大気に放出される。
【0054】被処理物の性質と、回収物の所望量ならびに品質と、還元剤ならびに燃料の費用とを考慮して、ロータリキルン内の雰囲気として、(A) 還元性もしくは難酸化性雰囲気と、(B) 弱酸化性雰囲気のいずれかを選択することができる。
【0055】(A) 還元性もしくは難酸化性雰囲気ロータリキルン7内を還元性雰囲気または溶融金属の酸化が起こり難い酸素成分の少い難酸化性雰囲気に維持する場合、ロータリキルン7内に還元剤を十分に満たさなければならない。具体的には、被処理物に対する還元剤の添加量を概ね還元当量の2倍以上にするか、またはガス空間における還元反応生成物である一酸化炭素濃度が、ロータリキルン7のガス排出部すなわち出口側において概ね5%以上にする。この条件の場合には、ロータリキルンの排出部に湯溜まり部を設けて溶融金属とスラグとを滞留させることが好ましい。湯溜まり部では、スラグと溶融金属とが十分に接触し、スラグ中に取り込まれた金属元素の溶融金属内への移行やスラグ/メタル分配反応によって、溶融金属とスラグ間で各元素の分配がなされる。よって、組成的に安定した溶融金属とスラグがロータリキルンから回収物として排出される。この結果、鉄合金の回収率が向上する。さらには、金属分の少いスラグを生成することが可能になり、その再利用分野がより拡大する。
【0056】湯溜まり部を設けたロータリキルンとしてはさまざまな構造を採用でき、そのいくつかについて図面を参照して説明する。
【0057】図2を参照して、最も簡単な形状のロータリキルン21は、入口端(図の左側)から排出端(図の右側)までの全長が例えば、10〜15mである。ロータリキルン21は、その内面に湯溜まり部211および排出堰212を有している。湯溜まり部211は、ロータリキルンの排出端から上流側に向かって所定の範囲(例えば、1〜2m)の間に、溶融金属の湯溜まりが形成される。即ち、上記所定の範囲のみ内径を他の範囲よりも大きくして湯溜まり部211が形成される。溶融金属およびスラグを含む溶融生成物を一定時間滞留させ、金属のスラグからの分離を促進させる。こうするために、湯溜まり部211となる上記範囲において、シェル外径を変えずに内部の耐火物層(図2では、特には図示せず)の厚みを小さくするか、内部の耐火物層の厚みは変えずにシェル外径を大きくする。
【0058】図3(a)および(b)に示すロータリキルン22は、湯溜まり部221を有し、操業停止時に上述した溶融生成物をロータリキルン外へに排出するための排出路223と、この排出路223を開閉するための排出用栓224を湯溜まり部221に設ける。排出用栓224は排出路223に着脱され、排出路223を開閉する。
【0059】図4(a)および(b)に示すロータリキルン23は、湯溜まり部231にて、リフター233が設けられている。
【0060】このリフター233の効果は、湯溜まり部231においてスラグを掻き揚げることにより、スラグ層と溶融メタル層との接触をより良好にし、スラグ層中に取り込まれている金属元素のメタル層中への移行およびスラグ/メタル分配反応の促進をはかることにある。
【0061】図5に示すロータリキルン24は、筒状を呈するシェルと、このシェルの筒内面に形成された内部耐火物層とにより構成されている(図中、シェルと内部耐火物層とを特に区別しては図示しない)。内部耐火物層は、湯溜まり部241(内径D1、長さL1)と、これよりも小さい内径の中間部244(内径D2、長さL2)と、中間部244によって湯溜まり部241とは分離され、かつ湯溜まり部241の内径D1と同じ寸法の内径D3の気固反応部243(長さL3)とを構成している。気固反応部243は、中間部244により、湯溜まり部から分離されている。湯溜まり部241、中間部244、および気固反応部243は、内部耐火物層の厚さを変えることにより、シェル外径を変えずに任意の寸法および形状にすることができる。加えて、気固反応部のベッド厚みが厚くなり、ベッド雰囲気への酸化性雰囲気の影響が軽減され、ベッド部を還元雰囲気に保つことが容易になる。さらに、中間部244により、湯溜まり部241に滞留する溶融生成物が気固反応部243にまで拡大して被処理物の上流側から下流側への転動を阻害することがない。さらに、気固反応部243および湯溜まり部241の範囲の変更がシェル外径を変更することなく、内面の耐火物層の張り替えによって容易に変更できる。
【0062】図6(a)および(b)に示すロータリキルン25は、湯溜まり部251と、排出堰252と、内堰253を有している。この構造によれば、湯溜まり部251にて、常に溶融金属Mの表面をある厚さのスラグSの層で覆い、溶融金属Mの表面が酸化性雰囲気に接することを防止する。
【0063】図7(a)および(b)に示すロータリキルン26は、湯溜まり部261にロータリキルンの長手方向に延びる溶融金属のための溝部263を設け、溶融生成物中の溶融金属Mはこの溝を通って排出する。一方、溶融生成物中のスラグSはロータリキルン全周にわたって排出される。この構造の効果は、スラグと溶融金属の排出位置が異なるために両者を分離して排出できる点、さらに、仮に溶融生成物が大量に生成された時でもこの影響で湯溜まり部261の溶融生成物が一挙に排出されてしまうことを防止できる点である。
【0064】(B) 弱酸化性雰囲気生成した溶融生成物を長時間滞留させると酸化が起こるような雰囲気をロータリキルン内に維持する場合には、被処理物に対する還元剤添加量を概ね還元当量の2倍以下にする。ガス空間における還元反応生成物である一酸化炭素濃度は、ロータリキルンのガス排出端にて概ね5%以下にする。このような条件の場合には、ロータリキルンの排出部に湯溜まりが形成するような堰を設けない。即ち、ロータリキルンを、生成した溶融生成物をロータリキルン内に滞留させることなく、可及的速やかに排出するような構造にする。この場合は、前述した湯溜まり部がある場合に比べると、鉄合金の回収率が多少低く、かつスラグ中に含まれる金属成分が多少多くなるものの、還元剤の添加量が還元当量の1.2〜1.5倍と少くてよく、かつ還元生成物である一酸化炭素がロータリキルン内で燃焼するので、燃料を低減できるという利点がある。
【0065】
【実施例】以下、上述した形態の本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法、及びその方法を実施するための装置について、具体的な実施例を説明する。
【0066】本実施例では、製鉄所から発生する代表的なダストについて試験を実施した。試験に供したダストは、ステンレス鋼の生成過程で発生したものである。
【0067】原料(被処理物)としてのステンレス系ダストの組成を以下の表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】原料の前処理として、上記粉ダストを、還元剤である微粉コークスと湿式で混合し、脱水後、試験装置に投入した。ダスト/コークスの混合比率は、重量比で100/43(還元等量の2倍のコークス)の割合である。
【0070】本試験に用いた試験装置は、図8に示すように、ロータリキルンタイプであり、しかもバッチ処理型の試験炉(ロータリファーネス、以後、R/Fと記す)である。したがって、実機ロータリキルンと全く同じ構造ではないが、実機ロータリキルンの長さ方向の位置は、本試験炉における処理時間に対応付けることができる。図8を参照すると、本R/Fは、炉室54と、バーナー55と、駆動用スプロケット56と、ローラー57と、スリップリング58と、排出プラグ59と、第1の覗窓60と、炉内監視カメラ61と、第2の覗窓62とを有している。炉室54の内径Dは1300mm、長さLは500mmである。
【0071】試験方法は、まず、前記含水率22%の脱水ケーキ140kgを、予め500℃に保持されているR/F炉に投入し、プロパンガスを燃料として昇温した。
【0072】R/Fの回転数は0.4rpm、ベッドの昇温速度は図9に示す通りである。ダスト(脱水ケーキ)を投入してから30分毎にサンプリングを行い、融体生成までの脱亜鉛率、鉄還元率(鉄酸化物の還元率)、金属化率を分析結果から求めた。尚、脱亜鉛率は、(初めの亜鉛含有量−現時点における亜鉛含有量)/(初めの亜鉛含有量)である。鉄還元率は、(初めの酸素含有量−現時点における酸素含有量)/(初めの酸素含有量)である。金属化率は、(現時点におけるメタリックFe)/(現時点における全Fe)である。
【0073】更に、溶融生成物が生成した以後も溶融金属、スラグのサンプリングを続け、これらの組成分析から、鉄合金、スラグへの各元素の配分量を求めた。試験は同一条件で5回行った。
【0074】上記試験の結果を記す。実施した5回の試験は、サンプルの分析結果からバラツキは少なかったので、実施した5回の試験結果の一つを図10に示す。
【0075】図10は、溶融生成物が生成されるまでの、鉄酸化物の還元率(鉄還元率)、鉄金属化率、及び脱亜鉛結果を示すものである。
【0076】図10を参照すると、ダストをロータリキルンに投入してから約90分で各値とも90%以上に達していることがわかる。
【0077】ダスト投入から約100分で溶融金属が生成された。この時のベッドの温度は約1250〜1300℃で、スラグも融体化している。120分で採取した鉄合金及びスラグを分析した分析結果を以下の表2に示す。尚、表2において、Me.FeはメタリックFeを示し、T.Feは全Feを示す。
【0078】
【表2】
【0079】鉄合金はNi、Crを含んだ高炭素オーステナイト系ステンレスの成分に近く、非磁性であった。Pは0.09〜0.15%、Sは0.05〜0.14%である。
【0080】上記分析値から、Fe、Ni、Crのダスト中の含有量を各々100とした場合の、鉄合金におけるFe、Ni、およびCrの回収率を図11に示す。この回収率は、結果的に、鉄合金に対するFe、Ni、およびCrの配分率を表している。
【0081】図11からわかるように、鉄合金へのFe、Ni、ならびにCrの回収率は、Feが92〜98%、Niがほぼ100%、ならびにCrが56〜72%であった。
【0082】
【発明の効果】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法及びその装置によれば、鉄鉱石屑や、製銑工程、および製鋼工程にて発生するダストや、酸洗工程、および鍍金工程にて発生する鉄、ニッケル、およびクローム等の物質を含有するスラッジのような廃棄物を被処理物としてロータリキルンを用いて処理して再資源化する製鉄所発生廃棄物等の再資源化が可能であって、被処理物をロータリキルン内で還元剤を用いて還元するに際し、ロータリキルン上流側の気固反応部にて、被処理物中の低沸点金属を還元蒸発させて除去する。
【0083】また、被処理物中の高沸点金属は還元作用により還元生成物として融体化し、ロータリキルン下端にて、高沸点金属を他のスラグ構成物質と分離するため、直接、製鋼原料として使用できる付加価値の高い回収物として得ることが可能である。これは、従来、鉄鉱石屑や、製銑工程、製鋼工程で発生したダストは、脱亜鉛処理を施して、高炉または焼結機に戻していたのに対して、工業的により有用である。また、本発明では、鉄合金のみならず、金属含有量が少なく、酸化の心配がないスラグの再利用の途も開ける。
【0084】本発明によればまた、ダストのみならず、製鉄所発生の各種廃棄物、例えば酸洗工程、鍍金工程から発生するスラッジについても、従来は困難または不可能であった脱水処理自体をせずに処理できるので、その再資源化が可能となる。さらに、リサイクルが難しく従来は焼却されたり、埋め立てられたりしていた多種多様な廃棄物等も同時に処理することが可能となる。例えば、この廃棄物は、パルプ屑、家庭ごみ等である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の処理フローを説明するための図である。
【図2】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルン(装置)の一例を示す概略図である。
【図3】(a)は本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルンの他の例を示す概略図、(b)はその断面図である。
【図4】(a)は本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルンの他の例を示す概略図、(b)はその断面図である。
【図5】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルンの他の例を示す概略図である。
【図6】(a)は本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルンの他の例を示す概略図、(b)はその断面図である。
【図7】(a)は本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルンの他の例の要部を示す概略図、(b)はその断面図である。
【図8】(a)は本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の実施例に用いるロータリファーネス(試験炉)を示す図、(b)はその部分的な側面図である。
【図9】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の実施例におけるベッドの昇温速度を示す図である。
【図10】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の実施例における融体生成までの、鉄還元率、鉄金属化率、および脱亜鉛結果を示す図である。
【図11】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の実施例におけるダスト含有元素についての鉄合金における回収率を示す図である。
【符号の説明】
1−1 製鉄所ダスト
1−2 製鉄所スラッジ
2 各種廃棄物
3 炭素質還元剤
4 湿式混合槽
5 脱水装置
6 バーナー
7 ロータリキルン
10 冷却水槽
11 2次燃焼室
12 搬出機
13 ボイラー等の熱交換器
14 集塵機
21〜26 ロータリキルン
223 排出路
224 排出用栓
233 リフター
243 気固反応部
244 中間部
253 内堰
263 溝部
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法およびこの方法を実施する装置に関し、特に、製鉄所において発生する廃棄物を被処理物として処理することにより被処理物から付加価値の高い回収物を得るための方法およびこの方法を実施する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に製鉄所においては大量の廃棄物が発生し、これらの廃棄物には、例えば、鉄鉱石屑、製銑工程あるいは製鋼工程にて発生するダスト等が含まれる。これらの廃棄物は包括的に製鉄所発生廃棄物、あるいは単に廃棄物と呼ぶ。
【0003】製鉄所発生廃棄物は再処理しリサイクルして、製鉄所廃棄物廃棄物中に残っている鉄分等の有価金属を回収することが好ましい。このことを考慮して、上記の廃棄物、特に、鉄鉱石ダストならびに製銑/製鋼ダストを処理しリサイクルするための種々の方法が提案されている。しかし、従来、これらの方法は、技術面およびコスト上の問題等があって、産業上の利用は難しかった。そこで、これらの廃棄物は、十分にはリサイクルされずに、埋め立て処分されることが多かった。
【0004】しかし、環境規制の強化、再資源化推進の観点、さらには埋立地の狭隘化等に因り、廃棄物の埋め立てを続けていくことは、困難になってきた。
【0005】ところで、上述したように、製鉄所の製銑/製鋼工程にて発生する廃棄物には、鉄分等が含まれているので、製銑/製鋼工程にて再利用されることが好ましい。しかし、この製鉄所の廃棄物には、一般に、亜鉛や鉛等の重金属が多く含まれており、これが問題である。即ち、再利用例として、製鉄所で発生した廃棄物を、仮にそのままの状態で、製銑工程にて使用されている焼結機や高炉に投入しようとすると、これら装置の運転に廃棄物に含まれている亜鉛等の重金属によって障害がもたらされることは、この分野においてよく知られている処である。このことを考慮して、製鉄所で発生する廃棄物を製鉄所で再利用するために、亜鉛や鉛等の重金属を除去するための方法が、提案ならびに実行されている。従来、製鉄所において、焼結機や高炉等へ戻すために廃棄物から亜鉛あるいは鉛等を除去する方法としては、以下に述べる2つの方法が主に採られている。
【0006】具体的にいえば、第1の方法は、ロータリキルンにて酸化亜鉛をコークスからなる還元剤を用いて還元/蒸発してダストから取り除くと共に、さらに鉄酸化物をも還元し、亜鉛含有量の低い還元鉄を得る方法である。得られた還元鉄は、高炉または焼結機に戻される。第2の方法は、湿式サイクロンにて亜鉛成分を濃縮し、亜鉛濃度の高いものは非鉄製錬の原料として供給し、濃度の低いものは高炉または焼結機へ戻す方法である。
【0007】ここで、高炉または焼結機は、前述したように、製銑工程にて使用されている装置である。つまり、上記第1または第2の方法により亜鉛を十分に除去したとしても、その処理物は、製鉄所における一連のプロセスのうちの比較的前方の工程である製銑工程に戻されるのがせいぜいであるのが実情である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】一般に、第1の方法では、ロータリキルンに投入する前にダストを予め所定のサイズのペレット状にする前処理が必要であったり、亜鉛を除去した後の回収物中の鉄等の有価金属の純度が低いために上述のごとく単に製銑工程には戻せるものの、製鋼工程には戻すことができない。つまり、第1の方法は、回収物の価値に対して処理コストが高いという問題点がある。第2の方法では、亜鉛成分の濃縮が十分ではないし、十分に亜鉛成分を濃縮することにより亜鉛を十分に除去した回収物を得られたとしても、やはり、製銑工程に戻せるものの、製鋼工程には戻すことができない。いずれにしても、従来の亜鉛の除去方法はいずれも、低い処理コストで付加価値の高い回収物を得ることは不可能である。
【0009】ロータリキルンを用いた第1の方法には、さらに詳しくは、次のような問題点がある。第1の方法は、ロータリキルンによる直接還元製鉄法の一種である。即ち、現象面を捕えれば、あくまでも気固反応による還元鉄の製造である。この処理においては、ロータリキルンを運転するにつれて、その内壁面に種々の付着物が付着するのを避けることはできない。このことは、この分野にてよく知られていることでもある。内壁面に付着物が付着したロータリキルンは、操業停止せずに長時間に亘って運転することは困難である。
【0010】このため、このことを考慮して、従来、ロータリキルンは、内壁面に付着物が付着しないように、炉内温度を少くとも鉄の溶融温度程度かそれ以下の低い雰囲気温度で運転しなければならない。実際には、ロータリキルンは、1200℃以下程度の比較的低い炉内温度で運転されている。
【0011】このような比較的低い温度であっても、還元を完了させるために、従来は、内径Dに対して長さLが長い(L/D≧20)構造のロータリキルンが多用されており、その下流側(出口側)に加熱バーナを設ける構造が採用されている。
【0012】上記構造の従来のロータリキルンは、実際上、かなり大型であって、高価である。このことと、前述したように、ロータリキルンを用いた亜鉛の除去方法自体が低い処理コストで付加価値の高い回収物を得ることが不可能であることとを併せ考えると、ロータリキルンを用いるこの従来法は、廃棄物を再利用するのに際して積極的に用いることはできない。
【0013】ロータリキルンを製鉄所の廃棄物のリサイクルに適用することには、さらに、以下の問題がある。
【0014】従来のロータリキルンでは、加熱バーナがロータリキルンの下流側に配置されており、燃焼ガスが、ロータリキルン中における処理物の移動方向に対して反対の方向に流されている。この燃焼ガスの流れ方は、対向流と呼ばれる。燃焼ガスによって、ロータリキルン内をその下流側へ向かって移動する廃棄物は加熱される。従来のロータリキルンは前述のごとく長いので、燃焼ガスによる炉内温度は、ロータリキルンの下流側から上流側へ向かうにつれて下がるような分布を呈している。この温度分布は、ロータリキルンから排出するまでの間に被処理物の還元を完了させる目的上、好ましいものであるが、ロータリキルンの特定の領域、概して、十分に加熱できないロータリキルンの上流側の領域では、上記した温度分布と関連して、ロータリキルンの内壁面上への付着物の生成をもたらす。この付着物は、リング状に形成されるのでダムリングと呼ばれる。ダムリングは、ロータリキルン内における被処理物の移動を妨げるので好ましくないことはいうまでもない。
【0015】また、製鉄所の廃棄物には、上述した鉄鋼石屑やダストに加えて、酸洗工程および鍍金工程等から発生するスラッジがある。スラッジはダストに比べて含水率が高いため、従来のロータリキルンで処理を行おうとする場合には、脱水すると共に、造粒化する前処理が必要である。さらに、スラッジは、油分を含んでいるものが多く、このようなスラッジは、脱水処理が実際上不可能であり、勿論この後の造粒化処理もできない。したがって、従来のロータリキルンでは、スラッジは事実上処理されていない。
【0016】さらに、製鉄所あるいはその他の設備から発生する廃棄物としては、紙屑、木屑、プラスチック廃棄物、パルプ屑やパルプ残滓、および廃油等の可燃物、ならびに炭素質を含有する廃棄物がある。可燃物は、鉄鉱石屑、ダスト、およびスラッジを処理して還元鉄を製造する際に、燃料として利用できる可能性がある。また、炭素質を含有する廃棄物は、還元鉄を製造する際に、還元剤として利用できる可能性がある。このため、これら自体の処理はもとより、還元剤としての有効利用が望まれる。しかし、従来のロータリキルンを用いて、鉄鉱石屑、ダスト、およびスラッジ等の廃棄物を処理する際に、可燃物、ならびに炭素質を含有する上記廃棄物を還元剤として使用すると、ロータリキルン内にて、温度が安定しなかったり、処理物を円滑に移動させることができない。
【0017】本発明の技術的課題は、ロータリキルンを用いながらも、前述した問題を解決し得る製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法およびその方法を実施するための装置を提供することである。
【0018】本発明の他の技術的課題は、低い処理コストで、製鉄所発生廃棄物等を製鋼工程の原料として直接使用できるような鉄合金等の付加価値の高い回収物を得ることができる再資源化方法、およびその方法を実施するための装置を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、製鉄所の製銑、製鋼工程等にて発生する廃棄物を被処理物としてロータリキルンを用いて処理する方法にて、該ロータリキルンの上流側から下流側へ被処理物を移動させる間に被処理物から有価な回収物を回収する製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法であって、前記ロータリキルン内の前記上流側にて、被処理物を還元雰囲気中で加熱して被処理物中の酸化物を還元すると共に、被処理物を溶融することによって、溶融金属およびスラグを含む還元生成物たる溶融生成物を得る工程と、前記ロータリキルンの前記下流側にて、前記溶融生成物から有価な回収物を回収する工程とを有することを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法が得られる。
【0020】本発明によればまた、製鉄所の製銑、製鋼工程等にて発生する廃棄物を被処理物として処理するロータリキルンを有し、前記ロータリキルンによって、その上流側から下流側へ被処理物を移動させる間に被処理物から有価な回収物を回収する製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置であって、前記ロータリキルンの前記上流側に、被処理物を加熱して被処理物から低沸点金属を蒸発および除去すると共に高沸点金属を得、さらに高沸点金属を溶融させる加熱バーナを有し、前記ロータリキルンは、前記加熱バーナと協働して還元雰囲気中で被処理物中の酸化物を還元する気固反応部を備え、溶融金属およびスラグを含む還元生成物たる溶融生成物を得るものであり、前記ロータリキルンはさらに、その前記下流側に、前記溶融生成物から有価な回収物を回収する回収部を備えることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置が得られる。
【0021】このようにして、本発明では、鉄鉱石屑や、製銑工程、製鋼工程にて発生するダストを再利用可能な資源に再生する。つまり、ダストを還元、溶融して鉄合金とスラグとの二層に分離し、別々に回収すること、回収した鉄合金はそのまま製鋼原料として利用することが可能である。勿論、銑鉄原料として利用してもよい。さらに、スラグをもセメントや路盤材等として利用することが可能である。
【0022】また、ダストのみならず、酸洗工程、鍍金工程等から発生する各種廃棄物をも、ダストに混合して同時還元溶融処理を行い、同様に再利用可能な資源として回収することができる。さらに、紙屑、木屑、廃油等の可燃物は燃料の一部として利用すると共に、炭素質を含有する各種廃棄物をも、還元に必要な炭材として利用することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法、ならびに、この方法を実施するための装置を併せて説明する。
【0024】本発明による再資源化方法は、ダスト等のロータリキルンへの投入物を短時間で高温まで昇温することによって、気固反応で生成した還元鉄をこの高温領域で、後述するように冷却されると鉄合金になる溶融金属とスラグとの二層に分離し、別々に回収する。尚、スラグは溶融状態であっても非溶融状態であってもよい。このため、従来問題となっていたロータリキルンの内壁への付着物が付着することによる操業時のトラブルも減少し、付加価値の高い回収物を得ることが可能になる。
【0025】本再資源化方法に用いるロータリキルンは、その長さLと内径Dとの比(L/D)を従来のものに比較して大幅に小さく、望ましくはL/Dを5以下とし、加熱用バーナーを被処理物の投入側に設置し、ロータリキルン全体の温度を高温まで上昇することができる構造であり、ロータリキルン内壁面に付着物が発生しても、それをバーナーで加熱することにより溶融させ除去することができる等、従来のロータリキルン法とは明らかに異なる手段を採用している。
【0026】さて、本再資源化方法では、ロータリキルンにより、鉄鉱石屑や、製銑工程、製鋼工程で発生するダスト、並びに酸洗工程、鍍金工程から発生する鉄、ニッケル、クローム等の物質を含有するスラッジ等を炭素質還元剤により還元溶融し、再利用可能な回収物を得る。即ち、還元剤により被処理物に含まれる金属酸化物を還元し、亜鉛等の低沸点金属は蒸発させて除去する。一方、鉄等の高沸点金属は溶融金属として、また、残りはスラグとして分離して回収する。
【0027】従って、回収した鉄合金は、直接に、製鋼工程に再利用可能な低亜鉛物質(重量比率でZn/Fe=1.0/1000以下)となる。尚、回収した鉄合金は、製銑工程に再利用してもよい。
【0028】被処理物をロータリキルン内に投入する前に、まず、炭素質還元剤(微粉炭、粉コークス、その他)と被処理物とを公知の乾式又は湿式混合法で混合する。その後、乾式処理したものは、直接にキルンに投入するか、或は別途湿式法で得た脱水ケーキ等とさらに混合してから投入する。また、湿式処理したものは脱水して脱水ケーキとし、これを直接にキルンに投入するか、或は微粉炭等をさらに混合してからキルンに投入する。
【0029】また、本発明におけるロータリキルンの基本的に具備すべき条件および構造は、以下の項目(1) 〜(4) に示す通りである。
【0030】条件および構造(1) 処理物の投入部側に加熱用のバーナを備える。即ち、燃焼ガスの流れと被処理物の流れとを並行流とする。
【0031】条件および構造(2) ロータリキルンの長さLと径Dとの比を、L/D≦5とする。
【0032】条件および構造(3) ロータリキルンの傾斜を1〜2度程度とし、反応や溶融に必要な滞留時間が確保できる構造とする。
【0033】条件および構造(4) ロータリキルンのガス排出端は、2次燃焼室に連結されている構造とする。
【0034】さて、本発明においては、鉄合金の回収率を向上させるために、廃棄物としてのスラグ生成物質、例えば焼却灰等を上記ダストおよびスラッジ等に混合して溶融処理を行い、生成した溶融金属表面を十分なスラグ層で覆い、酸化を防止する手段を必要により講じる。
【0035】また、ロータリキルンの排出端に連結する2次燃焼室は、ロータリキルン排ガス中の未燃物を完全に燃焼させるのに加え、ダイオキシン等の有害物質の高温熱分解も行い、無害なガスとして系外に放出する。高温のロータリキルン排ガスの熱量およびこの燃焼室での燃焼熱は、後段のボイラーにより蒸気で回収し、プロセス全体の熱損失を低減させる。
【0036】溶融金属、スラグは、ロータリキルンの排出端の下部に設置された水槽に投入され、冷却後、系外へ排出される。水槽内は循環水で撹拌し、溶融金属およびスラグの冷却が十分行われる構造とする。回収品の用途上、鉄合金とスラグとの分離が必要な場合は後段で磁選等で分離する。
【0037】図1は、本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の処理フローを説明するための図である。
【0038】以下、図1を参照して、本発明の処理フローを説明する。
【0039】まず、被処理物の前処理を行う。本例では、製鉄所ダスト1−1および製鉄所スラッジ1−2を含む製鉄所廃棄物を主な処理物として説明する。製鉄所ダスト1−1は、鉄鉱石屑、製銑工程または製鋼工程等から捕集されたダスト、あるいは焼却灰などである。製鉄所スラッジ1−2は、鍍金工程または酸洗工程等から生じたスラッジである。
【0040】さて、製鉄所ダスト1−1は、微粉炭あるいは粉コークスなどの炭素質還元剤2と、湿式混合槽4を用いて混合された後、脱水装置5を用いて脱水ケーキにされる。脱水ケーキは、ロータリキルン7へ投入される。尚、製鉄所ダスト1−1のうち、焼却灰などのスラグ生成物は、直接にロータリキルン7に投入されることがある。
【0041】製鉄所スラッジ1−2は、その大部分が、前述のごとく脱水処理が困難であるので、湿式混合せずに直接にロータリキルン7に投入される。直接投入される製鉄所スラッジ1−2のうち、炭素還元が必要なものについては、これが直接投入されたとときに、外装還元剤(図示せず)を別途ロータリキルン7へ投入することで対処する。
【0042】また、本発明では、紙屑、木屑、プラスチック廃棄物、パルプ屑、パルプ残滓、あるいは廃油などの各種廃棄物2を、還元剤もしくは炭素質還元剤3のサポート的な物質として、炭素質還元剤3と同様に被処理物に対して湿式混合槽4を用いて混合して用いることができる。勿論、還元剤として用いられるとしても、各種廃棄物2は実質的に処理されるので、被処理物とみなすこともできる。各種廃棄物2のうち、比重が小さいものや油分を含んでいるものは、湿式混合には不適なので、直接にロータリキルン7に投入して用いられる。
【0043】ロータリキルン7の被処理物の投入部の雰囲気温度は、500〜700℃にされる。この際、前述したように、必要に応じて外装還元剤を投入してもよい。ロータリキルン7は、その被処理物の投入部に、加熱用のバーナー6を備えた並行流タイプである。
【0044】これら脱水ケーキ等の被処理物は、投入部の雰囲気温度を500〜700℃にしたロータリキルン7に投入される。この際、前述したように、必要に応じて外装還元剤の投入も行ってもよい。ロータリキルン7は、その被処理物の投入部に加熱用のバーナー6を備えた並行流タイプである。
【0045】次に、ロータリキルン7内で、被処理物の加熱、還元、溶融を行う。
【0046】即ち、ロータリキルン7内に投入された被処理物は、ロータリキルン7内をその排出端側に向かって移動しながら投入端側に設置されているバーナー6により加熱され、以下の工程(1) 〜(4) を経ながら、還元溶融され、溶融金属とスラグとに分離され、ロータリキルン7から排出され、さらに冷却される。
【0047】工程(1) 乾燥工程では、ロータリキルン7に投入された被処理物は、昇温と共に含有水分が蒸発し、乾燥されてロータリキルン7内を移動する。このとき、被処理物は、造粒化されてもよい。
【0048】工程(2) 還元工程では、乾燥が完了した頃から、被処理物に含まれる鉄、クロム、ニッケル、亜鉛、鉛等の酸化物の還元反応が活発になり、ベッドの温度が約1000℃〜1200℃で還元はほぼ完了する。還元により生成された沸点の低い亜鉛等の金属は蒸発し、還元性のベッドから酸化性のガス空間に移行し、この雰囲気で酸化され、排ガスと共にロータリキルン7外へ飛散し、後段の集塵機14で捕集される。
【0049】また、還元された鉄等の高沸点金属は還元性のベッド内に滞留する。これらの金属酸化物の還元反応生成物として一酸化炭素を生成するが、バーナー6からの過剰な空気によりベッド直上で燃焼し、バーナー6による熱ガスと共にベッドの加熱に寄与する。また、この一酸化炭素の燃焼フレームはベッドを還元性雰囲気に維持することにも貢献している。
【0050】工程(3) 溶融工程では、気固反応による還元が終了し、さらに1200℃以上に温度上昇すると還元鉄は還元剤としての炭素を飽和しながら銑鉄となって融体化する。この溶融生成物は、主に、クロム、ニッケル等の金属もその中に取り込みながら高炭素の鉄合金となる。鉄合金成分を分離した残りの酸化物、即ちSiO2 、CaO、Al2 O3 等はスラグとなる。これらは、ロータリキルン7の1250〜1300℃に保持された排出部へ移行し、ここで溶融金属とスラグとは比重差で分離し、比重の大きい溶融金属の表面をスラグが覆う形で存在し、上層のスラグが溶融金属を酸化性雰囲気から遮断する役目も果たす。比重分離した溶融金属およびスラグは、ロータリキルン7の排出端から冷却水槽10へと排出される。
【0051】尚、有害物質である六価クロムを含有した被処理物も、上記還元、溶融工程にて処理され、金属クロム又は三価クロムに還元されて、無害なものになる。
【0052】工程(4) 溶融金属およびスラグのロータリキルン7から排出する工程および冷却工程では、ロータリキルン7から排出された溶融金属とスラグは、ロータリキルン7の排出端の下部に設置された冷却水槽10に投入され、冷却される。冷却水槽10内は循環水で撹拌し、溶融金属、スラグの冷却が十分行われる構造となっている。冷却された溶融金属、即ち、鉄合金とスラグは、搬出機12により系外へ排出される。回収品の用途上、鉄合金とスラグとの分離が必要な場合は、後段で磁選等で分離する。
【0053】次に、ロータリキルン7からの排ガス処理を行う。ロータリキルン7からの排ガスは、ロータリキルン7の排出端に連結している2次燃焼室11に導入され、ここでロータリキルン7の排ガス中の未燃物の完全燃焼および有害物資の熱分解を行い、熱回収のための装置(ボイラー等の熱交換器13)に送られる。ボイラー等の熱交換器13を出たガスは集塵機14を経て大気に放出される。
【0054】被処理物の性質と、回収物の所望量ならびに品質と、還元剤ならびに燃料の費用とを考慮して、ロータリキルン内の雰囲気として、(A) 還元性もしくは難酸化性雰囲気と、(B) 弱酸化性雰囲気のいずれかを選択することができる。
【0055】(A) 還元性もしくは難酸化性雰囲気ロータリキルン7内を還元性雰囲気または溶融金属の酸化が起こり難い酸素成分の少い難酸化性雰囲気に維持する場合、ロータリキルン7内に還元剤を十分に満たさなければならない。具体的には、被処理物に対する還元剤の添加量を概ね還元当量の2倍以上にするか、またはガス空間における還元反応生成物である一酸化炭素濃度が、ロータリキルン7のガス排出部すなわち出口側において概ね5%以上にする。この条件の場合には、ロータリキルンの排出部に湯溜まり部を設けて溶融金属とスラグとを滞留させることが好ましい。湯溜まり部では、スラグと溶融金属とが十分に接触し、スラグ中に取り込まれた金属元素の溶融金属内への移行やスラグ/メタル分配反応によって、溶融金属とスラグ間で各元素の分配がなされる。よって、組成的に安定した溶融金属とスラグがロータリキルンから回収物として排出される。この結果、鉄合金の回収率が向上する。さらには、金属分の少いスラグを生成することが可能になり、その再利用分野がより拡大する。
【0056】湯溜まり部を設けたロータリキルンとしてはさまざまな構造を採用でき、そのいくつかについて図面を参照して説明する。
【0057】図2を参照して、最も簡単な形状のロータリキルン21は、入口端(図の左側)から排出端(図の右側)までの全長が例えば、10〜15mである。ロータリキルン21は、その内面に湯溜まり部211および排出堰212を有している。湯溜まり部211は、ロータリキルンの排出端から上流側に向かって所定の範囲(例えば、1〜2m)の間に、溶融金属の湯溜まりが形成される。即ち、上記所定の範囲のみ内径を他の範囲よりも大きくして湯溜まり部211が形成される。溶融金属およびスラグを含む溶融生成物を一定時間滞留させ、金属のスラグからの分離を促進させる。こうするために、湯溜まり部211となる上記範囲において、シェル外径を変えずに内部の耐火物層(図2では、特には図示せず)の厚みを小さくするか、内部の耐火物層の厚みは変えずにシェル外径を大きくする。
【0058】図3(a)および(b)に示すロータリキルン22は、湯溜まり部221を有し、操業停止時に上述した溶融生成物をロータリキルン外へに排出するための排出路223と、この排出路223を開閉するための排出用栓224を湯溜まり部221に設ける。排出用栓224は排出路223に着脱され、排出路223を開閉する。
【0059】図4(a)および(b)に示すロータリキルン23は、湯溜まり部231にて、リフター233が設けられている。
【0060】このリフター233の効果は、湯溜まり部231においてスラグを掻き揚げることにより、スラグ層と溶融メタル層との接触をより良好にし、スラグ層中に取り込まれている金属元素のメタル層中への移行およびスラグ/メタル分配反応の促進をはかることにある。
【0061】図5に示すロータリキルン24は、筒状を呈するシェルと、このシェルの筒内面に形成された内部耐火物層とにより構成されている(図中、シェルと内部耐火物層とを特に区別しては図示しない)。内部耐火物層は、湯溜まり部241(内径D1、長さL1)と、これよりも小さい内径の中間部244(内径D2、長さL2)と、中間部244によって湯溜まり部241とは分離され、かつ湯溜まり部241の内径D1と同じ寸法の内径D3の気固反応部243(長さL3)とを構成している。気固反応部243は、中間部244により、湯溜まり部から分離されている。湯溜まり部241、中間部244、および気固反応部243は、内部耐火物層の厚さを変えることにより、シェル外径を変えずに任意の寸法および形状にすることができる。加えて、気固反応部のベッド厚みが厚くなり、ベッド雰囲気への酸化性雰囲気の影響が軽減され、ベッド部を還元雰囲気に保つことが容易になる。さらに、中間部244により、湯溜まり部241に滞留する溶融生成物が気固反応部243にまで拡大して被処理物の上流側から下流側への転動を阻害することがない。さらに、気固反応部243および湯溜まり部241の範囲の変更がシェル外径を変更することなく、内面の耐火物層の張り替えによって容易に変更できる。
【0062】図6(a)および(b)に示すロータリキルン25は、湯溜まり部251と、排出堰252と、内堰253を有している。この構造によれば、湯溜まり部251にて、常に溶融金属Mの表面をある厚さのスラグSの層で覆い、溶融金属Mの表面が酸化性雰囲気に接することを防止する。
【0063】図7(a)および(b)に示すロータリキルン26は、湯溜まり部261にロータリキルンの長手方向に延びる溶融金属のための溝部263を設け、溶融生成物中の溶融金属Mはこの溝を通って排出する。一方、溶融生成物中のスラグSはロータリキルン全周にわたって排出される。この構造の効果は、スラグと溶融金属の排出位置が異なるために両者を分離して排出できる点、さらに、仮に溶融生成物が大量に生成された時でもこの影響で湯溜まり部261の溶融生成物が一挙に排出されてしまうことを防止できる点である。
【0064】(B) 弱酸化性雰囲気生成した溶融生成物を長時間滞留させると酸化が起こるような雰囲気をロータリキルン内に維持する場合には、被処理物に対する還元剤添加量を概ね還元当量の2倍以下にする。ガス空間における還元反応生成物である一酸化炭素濃度は、ロータリキルンのガス排出端にて概ね5%以下にする。このような条件の場合には、ロータリキルンの排出部に湯溜まりが形成するような堰を設けない。即ち、ロータリキルンを、生成した溶融生成物をロータリキルン内に滞留させることなく、可及的速やかに排出するような構造にする。この場合は、前述した湯溜まり部がある場合に比べると、鉄合金の回収率が多少低く、かつスラグ中に含まれる金属成分が多少多くなるものの、還元剤の添加量が還元当量の1.2〜1.5倍と少くてよく、かつ還元生成物である一酸化炭素がロータリキルン内で燃焼するので、燃料を低減できるという利点がある。
【0065】
【実施例】以下、上述した形態の本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法、及びその方法を実施するための装置について、具体的な実施例を説明する。
【0066】本実施例では、製鉄所から発生する代表的なダストについて試験を実施した。試験に供したダストは、ステンレス鋼の生成過程で発生したものである。
【0067】原料(被処理物)としてのステンレス系ダストの組成を以下の表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】原料の前処理として、上記粉ダストを、還元剤である微粉コークスと湿式で混合し、脱水後、試験装置に投入した。ダスト/コークスの混合比率は、重量比で100/43(還元等量の2倍のコークス)の割合である。
【0070】本試験に用いた試験装置は、図8に示すように、ロータリキルンタイプであり、しかもバッチ処理型の試験炉(ロータリファーネス、以後、R/Fと記す)である。したがって、実機ロータリキルンと全く同じ構造ではないが、実機ロータリキルンの長さ方向の位置は、本試験炉における処理時間に対応付けることができる。図8を参照すると、本R/Fは、炉室54と、バーナー55と、駆動用スプロケット56と、ローラー57と、スリップリング58と、排出プラグ59と、第1の覗窓60と、炉内監視カメラ61と、第2の覗窓62とを有している。炉室54の内径Dは1300mm、長さLは500mmである。
【0071】試験方法は、まず、前記含水率22%の脱水ケーキ140kgを、予め500℃に保持されているR/F炉に投入し、プロパンガスを燃料として昇温した。
【0072】R/Fの回転数は0.4rpm、ベッドの昇温速度は図9に示す通りである。ダスト(脱水ケーキ)を投入してから30分毎にサンプリングを行い、融体生成までの脱亜鉛率、鉄還元率(鉄酸化物の還元率)、金属化率を分析結果から求めた。尚、脱亜鉛率は、(初めの亜鉛含有量−現時点における亜鉛含有量)/(初めの亜鉛含有量)である。鉄還元率は、(初めの酸素含有量−現時点における酸素含有量)/(初めの酸素含有量)である。金属化率は、(現時点におけるメタリックFe)/(現時点における全Fe)である。
【0073】更に、溶融生成物が生成した以後も溶融金属、スラグのサンプリングを続け、これらの組成分析から、鉄合金、スラグへの各元素の配分量を求めた。試験は同一条件で5回行った。
【0074】上記試験の結果を記す。実施した5回の試験は、サンプルの分析結果からバラツキは少なかったので、実施した5回の試験結果の一つを図10に示す。
【0075】図10は、溶融生成物が生成されるまでの、鉄酸化物の還元率(鉄還元率)、鉄金属化率、及び脱亜鉛結果を示すものである。
【0076】図10を参照すると、ダストをロータリキルンに投入してから約90分で各値とも90%以上に達していることがわかる。
【0077】ダスト投入から約100分で溶融金属が生成された。この時のベッドの温度は約1250〜1300℃で、スラグも融体化している。120分で採取した鉄合金及びスラグを分析した分析結果を以下の表2に示す。尚、表2において、Me.FeはメタリックFeを示し、T.Feは全Feを示す。
【0078】
【表2】
【0079】鉄合金はNi、Crを含んだ高炭素オーステナイト系ステンレスの成分に近く、非磁性であった。Pは0.09〜0.15%、Sは0.05〜0.14%である。
【0080】上記分析値から、Fe、Ni、Crのダスト中の含有量を各々100とした場合の、鉄合金におけるFe、Ni、およびCrの回収率を図11に示す。この回収率は、結果的に、鉄合金に対するFe、Ni、およびCrの配分率を表している。
【0081】図11からわかるように、鉄合金へのFe、Ni、ならびにCrの回収率は、Feが92〜98%、Niがほぼ100%、ならびにCrが56〜72%であった。
【0082】
【発明の効果】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法及びその装置によれば、鉄鉱石屑や、製銑工程、および製鋼工程にて発生するダストや、酸洗工程、および鍍金工程にて発生する鉄、ニッケル、およびクローム等の物質を含有するスラッジのような廃棄物を被処理物としてロータリキルンを用いて処理して再資源化する製鉄所発生廃棄物等の再資源化が可能であって、被処理物をロータリキルン内で還元剤を用いて還元するに際し、ロータリキルン上流側の気固反応部にて、被処理物中の低沸点金属を還元蒸発させて除去する。
【0083】また、被処理物中の高沸点金属は還元作用により還元生成物として融体化し、ロータリキルン下端にて、高沸点金属を他のスラグ構成物質と分離するため、直接、製鋼原料として使用できる付加価値の高い回収物として得ることが可能である。これは、従来、鉄鉱石屑や、製銑工程、製鋼工程で発生したダストは、脱亜鉛処理を施して、高炉または焼結機に戻していたのに対して、工業的により有用である。また、本発明では、鉄合金のみならず、金属含有量が少なく、酸化の心配がないスラグの再利用の途も開ける。
【0084】本発明によればまた、ダストのみならず、製鉄所発生の各種廃棄物、例えば酸洗工程、鍍金工程から発生するスラッジについても、従来は困難または不可能であった脱水処理自体をせずに処理できるので、その再資源化が可能となる。さらに、リサイクルが難しく従来は焼却されたり、埋め立てられたりしていた多種多様な廃棄物等も同時に処理することが可能となる。例えば、この廃棄物は、パルプ屑、家庭ごみ等である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の処理フローを説明するための図である。
【図2】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルン(装置)の一例を示す概略図である。
【図3】(a)は本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルンの他の例を示す概略図、(b)はその断面図である。
【図4】(a)は本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルンの他の例を示す概略図、(b)はその断面図である。
【図5】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルンの他の例を示す概略図である。
【図6】(a)は本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルンの他の例を示す概略図、(b)はその断面図である。
【図7】(a)は本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法を実施するために用いるロータリキルンの他の例の要部を示す概略図、(b)はその断面図である。
【図8】(a)は本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の実施例に用いるロータリファーネス(試験炉)を示す図、(b)はその部分的な側面図である。
【図9】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の実施例におけるベッドの昇温速度を示す図である。
【図10】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の実施例における融体生成までの、鉄還元率、鉄金属化率、および脱亜鉛結果を示す図である。
【図11】本発明による製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法の実施例におけるダスト含有元素についての鉄合金における回収率を示す図である。
【符号の説明】
1−1 製鉄所ダスト
1−2 製鉄所スラッジ
2 各種廃棄物
3 炭素質還元剤
4 湿式混合槽
5 脱水装置
6 バーナー
7 ロータリキルン
10 冷却水槽
11 2次燃焼室
12 搬出機
13 ボイラー等の熱交換器
14 集塵機
21〜26 ロータリキルン
223 排出路
224 排出用栓
233 リフター
243 気固反応部
244 中間部
253 内堰
263 溝部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 製鉄所の製銑、製鋼工程等にて発生する廃棄物を被処理物としてロータリキルンを用いて処理する方法にて、該ロータリキルンの上流側から下流側へ被処理物を移動させる間に被処理物から有価な回収物を回収する製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法であって、前記ロータリキルン内の前記上流側にて、被処理物を還元雰囲気中で加熱して被処理物中の酸化物を還元すると共に、被処理物を溶融することによって、溶融金属およびスラグを含む還元生成物たる溶融生成物を得る工程と、前記ロータリキルンの前記下流側にて、前記溶融生成物から有価な回収物を回収する工程とを有することを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項2】 請求項1に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法において、前記ロータリキルンは、前記上流側に加熱バーナを備えており、さらに、燃焼ガスを被処理物の移動方向に対して並行に流しながら被処理物を所定の温度に加熱することによって、前記ロータリキルンの前記上流側にて被処理物を溶融させる工程を有することを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項3】 請求項2に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法において、被処理物は、低沸点金属および高沸点金属を含んでおり、前記ロータリキルンの上流側にて被処理物を加熱する前記工程は、被処理物から前記低沸点金属を蒸発および除去するステップと、前記高沸点金属を得るステップとを含むことを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項4】 請求項1に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法において、前記溶融金属および前記スラグを含む還元生成物たる前記溶融生成物を得る前記工程は、前記溶融生成物をそのまま前記ロータリキルンを通して有価な回収物として得ることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項5】 請求項1に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法において、前記溶融生成物は、第1の比重を持つ第1の材質と、前記第1の比重よりも大きい第2の比重を持つ第2の材質とを含んでおり、前記ロータリキルンの前記下流側にて前記溶融生成物から有価な回収物を回収する前記工程は、該溶融生成物を前記比重差によって前記第1の材質と前記第2の材質とに分離するステップを含むことを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項6】 請求項1に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法において、前記ロータリキルンの前記下流側にて前記溶融生成物から有価な回収物を回収する前記工程は、前記溶融金属の層の上面を前記スラグの層で覆うことによって該溶融金属の再酸化を防止するステップを含むことを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項7】 製鉄所の製銑、製鋼工程等にて発生する廃棄物を被処理物として処理するロータリキルンを有し、前記ロータリキルンによって、その上流側から下流側へ被処理物を移動させる間に被処理物から有価な回収物を回収する製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置であって、前記ロータリキルンの前記上流側に、被処理物を加熱して被処理物から低沸点金属を蒸発および除去すると共に高沸点金属を得、さらに高沸点金属を溶融させる加熱バーナを有し、前記ロータリキルンは、前記加熱バーナと協働して還元雰囲気中で被処理物中の酸化物を還元する気固反応部を備え、溶融金属およびスラグを含む還元生成物たる溶融生成物を得るものであり、前記ロータリキルンはさらに、その前記下流側に、前記溶融生成物から有価な回収物を回収する回収部を備えることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項8】 請求項7に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、内径Dおよび長さLを持ち、該内径Dと該長さLとの比が、L/D≦5の範囲内にあることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項9】 請求項7に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その内壁に前記溶融生成物が実質的に付着しないような長さを持つことを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項10】 請求項7に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、前記上流側に設けられた被処理物の投入端と、前記下流側に設けられた被処理物の排出端と、前記排出端の付近に設けられた堰と、前記堰から前記上流側までの所定の領域に設けられ、内側径が他の領域の内径よりも大きい前記溶融生成物の湯溜まり部とを備えていることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項11】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その前記湯溜まり部に前記溶融生成物を掻き揚げるためのリフタを備えていることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項12】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その前記湯溜まり部から前記排出端にまで延びる溝部を備えていることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項13】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その前記湯溜まり部の前記上流側に内堰を備えており、前記内堰は、前記湯溜まり部にて前記溶融金属の層の上面が十分な厚さの前記スラグの層により覆われるようにするためのものであることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項14】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その前記湯溜まり部から前記ロータリキルンンの外周面にまで延び、栓によって開閉可能な前記溶融生成物の排出路を備えていることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項15】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、筒状を呈するシェルと、該シェルの筒内面に形成された内部耐火物層とにより構成されており、前記内部耐火物層は、前記湯溜まり部、これよりも小さい内径の中間部、および中間部によって湯溜まり部とは分離され、かつ湯溜まり部と同じ内径の気固反応部を構成していることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項16】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その中で発生したガスを排出するためのガス排出口を備えていることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項17】 請求項7に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンの前記ガス排出口に連通し、ガス排出口から排出されるガスを燃焼する二次燃焼室を有していることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項1】 製鉄所の製銑、製鋼工程等にて発生する廃棄物を被処理物としてロータリキルンを用いて処理する方法にて、該ロータリキルンの上流側から下流側へ被処理物を移動させる間に被処理物から有価な回収物を回収する製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法であって、前記ロータリキルン内の前記上流側にて、被処理物を還元雰囲気中で加熱して被処理物中の酸化物を還元すると共に、被処理物を溶融することによって、溶融金属およびスラグを含む還元生成物たる溶融生成物を得る工程と、前記ロータリキルンの前記下流側にて、前記溶融生成物から有価な回収物を回収する工程とを有することを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項2】 請求項1に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法において、前記ロータリキルンは、前記上流側に加熱バーナを備えており、さらに、燃焼ガスを被処理物の移動方向に対して並行に流しながら被処理物を所定の温度に加熱することによって、前記ロータリキルンの前記上流側にて被処理物を溶融させる工程を有することを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項3】 請求項2に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法において、被処理物は、低沸点金属および高沸点金属を含んでおり、前記ロータリキルンの上流側にて被処理物を加熱する前記工程は、被処理物から前記低沸点金属を蒸発および除去するステップと、前記高沸点金属を得るステップとを含むことを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項4】 請求項1に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法において、前記溶融金属および前記スラグを含む還元生成物たる前記溶融生成物を得る前記工程は、前記溶融生成物をそのまま前記ロータリキルンを通して有価な回収物として得ることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項5】 請求項1に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法において、前記溶融生成物は、第1の比重を持つ第1の材質と、前記第1の比重よりも大きい第2の比重を持つ第2の材質とを含んでおり、前記ロータリキルンの前記下流側にて前記溶融生成物から有価な回収物を回収する前記工程は、該溶融生成物を前記比重差によって前記第1の材質と前記第2の材質とに分離するステップを含むことを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項6】 請求項1に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法において、前記ロータリキルンの前記下流側にて前記溶融生成物から有価な回収物を回収する前記工程は、前記溶融金属の層の上面を前記スラグの層で覆うことによって該溶融金属の再酸化を防止するステップを含むことを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化方法。
【請求項7】 製鉄所の製銑、製鋼工程等にて発生する廃棄物を被処理物として処理するロータリキルンを有し、前記ロータリキルンによって、その上流側から下流側へ被処理物を移動させる間に被処理物から有価な回収物を回収する製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置であって、前記ロータリキルンの前記上流側に、被処理物を加熱して被処理物から低沸点金属を蒸発および除去すると共に高沸点金属を得、さらに高沸点金属を溶融させる加熱バーナを有し、前記ロータリキルンは、前記加熱バーナと協働して還元雰囲気中で被処理物中の酸化物を還元する気固反応部を備え、溶融金属およびスラグを含む還元生成物たる溶融生成物を得るものであり、前記ロータリキルンはさらに、その前記下流側に、前記溶融生成物から有価な回収物を回収する回収部を備えることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項8】 請求項7に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、内径Dおよび長さLを持ち、該内径Dと該長さLとの比が、L/D≦5の範囲内にあることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項9】 請求項7に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その内壁に前記溶融生成物が実質的に付着しないような長さを持つことを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項10】 請求項7に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、前記上流側に設けられた被処理物の投入端と、前記下流側に設けられた被処理物の排出端と、前記排出端の付近に設けられた堰と、前記堰から前記上流側までの所定の領域に設けられ、内側径が他の領域の内径よりも大きい前記溶融生成物の湯溜まり部とを備えていることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項11】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その前記湯溜まり部に前記溶融生成物を掻き揚げるためのリフタを備えていることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項12】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その前記湯溜まり部から前記排出端にまで延びる溝部を備えていることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項13】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その前記湯溜まり部の前記上流側に内堰を備えており、前記内堰は、前記湯溜まり部にて前記溶融金属の層の上面が十分な厚さの前記スラグの層により覆われるようにするためのものであることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項14】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その前記湯溜まり部から前記ロータリキルンンの外周面にまで延び、栓によって開閉可能な前記溶融生成物の排出路を備えていることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項15】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、筒状を呈するシェルと、該シェルの筒内面に形成された内部耐火物層とにより構成されており、前記内部耐火物層は、前記湯溜まり部、これよりも小さい内径の中間部、および中間部によって湯溜まり部とは分離され、かつ湯溜まり部と同じ内径の気固反応部を構成していることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項16】 請求項10に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンは、その中で発生したガスを排出するためのガス排出口を備えていることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【請求項17】 請求項7に記載の製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置において、前記ロータリキルンの前記ガス排出口に連通し、ガス排出口から排出されるガスを燃焼する二次燃焼室を有していることを特徴とする製鉄所発生廃棄物等の再資源化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開平9−222217
【公開日】平成9年(1997)8月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−330505
【出願日】平成8年(1996)12月11日
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【公開日】平成9年(1997)8月26日
【国際特許分類】
【出願日】平成8年(1996)12月11日
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
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