説明

製鋼スラグ固化体及びその製造方法

【課題】本発明は、原材料を流し込む型枠を利用した定形品及び利用しない無定形品のいずれであっても、全体が均質で、気孔率が30%〜50%と大きく,且つ圧縮強度が5N/mm2以上と高い水硬化性の固化体と、該固化体を安価に製造可能な製鋼スラグ固化体の製造方法とを提供することを目的としている。
【解決手段】骨材及び結合材として作用する製鋼スラグに、別種の結合材及び水を添加して混練後、その混練物を型枠に流し込み又は地盤上に打設し、養生して固化した新規な製鋼スラグ固化体と、その製造方法とを提案した。具体的には、製鋼スラグとして、粒径10mm以下を30質量%以上含有するものを用いると共に、固化後の固化体の見掛け気孔率が30〜50%になるように、混練前に新規な増粘剤を添加してから、水結合材比を質量比率((水/結合材)×100%)で60〜250%として混練する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼スラグ固化体及びその製造方法に係わり、特に、製鋼スラグを骨材及び結合材の両方として働かせ、所望の気孔率及び圧縮強度を有する水硬性固化体を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所の製鋼工場からは、転炉スラグを始めとして,溶銑予備処理スラグ、クロム鉱石溶融還元炉スラグ、二次精錬スラグ、ステンレス精錬炉スラグ、電気炉スラグ等の製鋼スラグが大量に発生する。かかる製鋼スラグは、未溶融の生石灰を含有しており、自然崩壊するため、大量に再利用できないのが現状であり、その用途開発が熱望されている。そのため、これら製鋼スラグの大量利用を図る目的で、これまでにも、製鋼スラグを主材として水硬性固化体(以下、単に固化体という)を製造する技術の研究報告は数多くある。
【0003】
例えば、直径5mm以下に風砕して球状化した転炉スラグ又は溶銑予備処理スラグを、コンクリート用骨材とし、かつその際の砂:スラグの体積比を9:1〜7:3の割合で配合し、更に減水剤と増粘剤とを併用して使用することを特徴とする転炉スラグ、溶銑予備処理スラグの利用方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、製鋼スラグと高炉水砕スラグに、セメント、高炉スラグ微粉末及びフライアッシュのうちの1種又は2種以上を混合し、水を添加して混練した後、即時脱型成形して製造することを特徴とする製鋼スラグを用いたコンクリート状固化体の製造方法も開示されている(特許文献2参照)。さらに、海中等における人工岩盤、地盤改良材等への利用を目的として、製鋼スラグと、中和スラッジ及び又はセメント系汚泥からなる微粉末物質とを含有する製鋼スラグ含有固化組成物も開示されている(特許文献3参照)。
【0004】
加えて、主要な用途を漁礁、藻礁等の定形品(以下、ブロック)とし、沿岸環境改善への寄与をあげ、固化の手法としては、製鋼スラグ中のフリーライム(以下、f−CaO)の炭酸化反応を利用し、強度発現と同時に、海域使用下での製鋼スラグ特有の高pHによる海水の白濁汚染防止を実現しているものもある。例えば、粉粒状の製鋼スラグ、SiO2含有物質及び水を混練して形成した硬化体であって、前記製鋼スラグに溶銑予備処理スラグ、SiO2含有物質に高炉微粉末を採用すると共に、水を除く全配合成分中における粒径1.8mm以下の溶銑予備処理スラグの含有率を15〜55質量%、高炉スラグ微粉末の含有率を5〜40質量%としてなる水中沈設ブロックが開示されている(特許文献4参照)。
【0005】
ところで、上記のような海洋で使用されるブロックは、多孔質コンクリート並の10N/mm2程度の圧縮強度及び十分な炭酸化皮膜を有する必要があると言われる。そして、現在は、その要求を十分に達成し得る固化体が製造可能になっている。
【0006】
しかしながら、見掛け気孔率が30〜50%と大きく、かつ多孔質コンクリート並の10N/mm2程度の圧縮強度及び十分な炭酸被覆を施した固化体の製造技術が確立しているとは言えない。
【0007】
特許文献2、3、4記載の技術を例に挙げると、炭酸固化体を得るには、まず炭酸化前にベースとなる成形固化体を製造するが、その製造方法は、水と結合材との質量比率、すなわち水結合材比が35〜50%と比較的流動性に乏しい混練物にしてから、型枠に流し込む。そして、流し込んだ後に型枠を振動させたり、あるいは加圧成型してから養生し、固化体とする。
【0008】
この成形固化体製造に際して、見掛け気孔率を30〜50%と大きくするために、単位水量を350kg/m3以上とすると、混練物中で原材料の分離が生じ、大きいものは下の方へ沈降し、小さなものは上の方へ凝集する。また、脱水乾燥後の成形固化体全体での見掛け気孔率は高いが、気孔は上の方に多く分布し、下の方で少なくなり、成形固化体の高さ方向で気孔の分布が不均一となる。
【0009】
さらに、水結合材比が12.5〜35%未満と低くすると、混練物中での材料の分離は、上記した水結合材比が35%以上の場合よりも減少するが、混練物の流動性が低下し、型枠に流し込むことが困難となる。このように、混練物を型枠内に流し込み、固化する場合には、主材となる製鋼スラグの粒度分布、水結合材比及び加振等に起因して得られる固化体が不均質なものとなり易く、この現象は、大型のブロックになればさらに顕著な問題となる。
【0010】
特許文献1記載の技術は、結合材の他に砕石及び砂を必須とし、製鋼スラグの使用量は最大でも245kg/m3程度である。したがって、見掛け気孔率を30〜50%と大きくするために、単位水量を350kg/m3以上とすると、製鋼スラグの使用量は、最大でも200kg/m3程度となり極めて少なく、製鋼スラグの有効利用促進とは言いがたい。
【0011】
一方、製鋼スラグに水を加えて、型枠へ充填し、炭酸ガスの通気で、あるいは炭酸水の循環で製鋼スラグの炭酸化が起こる(特許文献5参照)が、成形固化体に十分な強度が得られるまで、脱枠することができない(現実的には、脱枠後に更なる炭酸化の進行と強度向上のための養生が必要と推定される)。さらに、型枠は、気体及び/又は液体に対して十分な密閉性を有していなければならず、前記固化体を安定して安価に量産するには、高価な型枠が多数必要となる。その場合、炭酸化反応のより一層の効率化が必要となる。ところが、固化体の強度を製鋼スラグの自硬性と炭酸化だけで得ようとするのは、従来の大気あるいは水蒸気エージングによって製鋼スラグの粉化・膨張を促進し、無害化することを考えれば、矛盾した考えである。
【特許文献1】特開平5−279095号公報
【特許文献2】特開2003−2726号公報
【特許文献3】特開平6−263490号公報
【特許文献4】特開2002−105925号公報
【特許文献5】特開平11−71160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑み、原材料を流し込む型枠を利用した定形品及び利用しない無定形品のいずれであっても、全体が均質で、気孔率が30〜50%と大きく、且つ圧縮強度が5N/mm2以上の水硬化性の固化体と、該固化体を安定して安価に製造可能な製鋼スラグ固化体の製造方法とを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0014】
すなわち、本発明は、骨材及び結合材として作用する製鋼スラグに、別種の結合材及び水を添加して混練後、その混練物を型枠又は地盤上に打設し、養生して固化した製鋼スラグ固化体であって、前記製鋼スラグとして、粒径10mm以下を30質量%以上含有するものを用い、固化後の固化体の見掛け気孔率が30〜50%で、圧縮強度が5 N/mm2以上であることを特徴とする製鋼スラグ固化体である。
【0015】
また、本発明は、骨材及び結合材として作用する製鋼スラグに、別種の結合材及び水を添加して混練後、その混練物を型枠に流し込み又は地盤上に打設し、養生して固化する製鋼スラグ固化体の製造方法において、前記製鋼スラグとして、粒径10mm以下を30質量%以上含有するものを用いると共に、固化後の固化体の見掛け気孔率が30〜50%になるように、前記混練前又は混練中に増粘剤を添加してから、前記別種の結合材に対する前記水の質量比率である水結合材比を60〜250%として混練することを特徴とする製鋼スラグ固化体の製造方法である。
【0016】
この場合、前記別種の結合材が、前記製鋼スラグに対する外掛けの質量比率で、高炉スラグ微粉末:5〜30%及びフライアッシュ:5〜50%から選ばれた一種又は二種であることが好ましい。さらに、前記製鋼スラグに、前記製鋼スラグに対する外掛けの質量比率で、別種の結合材として石膏:1〜8%、消石灰:1〜6%、生石灰:0.1〜6%、セメント:0.1〜6%から選ばれた一種又は二種以上添加すると一層良い。加えて、前記増粘剤が混練物の粘度を3000mPa・sec以上とするものであることが好ましい。さらに加えて、前記固化後に得られた固化体の圧縮強度が10 N/mm2以上になるように、該固化体に水を散布し、水分を5〜10質量%に保持した状態で大気中に放置、又は二酸化炭素富化雰囲気に晒したり、あるいは固化体を、炭酸含有水に浸漬し、又は二酸化炭素雰囲気にしたオートクレーブ内に保持して、炭酸化するのが良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、炭酸化前の固化体として、固化体の全体で高い通気性と必要十分な材料強度が均一になっており、結果的に種々の用途に利用でき、経済的で品質の優れた固化体が得られると共に、その固化体を安価に、且つ安定して製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の最良の実施形態を説明する。
【0019】
まず、発明者は、主原料の製鋼スラグはその微粉末自体が水と混練すると水硬性を有するので、該製鋼スラグとして、粒径10mm以下を30質量%以上含有するものを用いることにして、骨材と結合材の両方の働きをさせることにした。粒径10mm以下が30%未満では、水硬性が弱くなり、好ましくないからである。
【0020】
また、既存の研究から、この製鋼スラグにさらに別種の結合材として高炉スラグ微粉末、フライアッシュが有効であることが分かっている。つまり、前者は潜在水硬性とポゾラン反応性を有し、後者はポゾラン反応性を有するからである。さらに、石膏、消石灰及び生石灰は、製鋼スラグの微粉部と同様に、アルカリ刺激材としての効果がある。
【0021】
次に、発明者の検討によれば、炭酸化によって水中ブロック等に適切な強度を有する製鋼スラグ固化体を得るには、炭酸化前の水和反応で製造する固化体の性状を均質に、特に固化体の全体で気孔(この場合、外気と接触する所謂「開気孔」である)を均一に分布させ、30〜50%の高い気孔率を確保する必要のあることがわかった。30%未満だと、開気孔が不足して固化体の通気性が悪く、炭酸化が不十分となるし、50%超えでは圧縮強度が弱くなり過ぎるからである。そのため、発明者は、前記10mm以下にした製鋼スラグに水と共に添加する別種の結合材の添加量について鋭意研究し、水と別種の結合材との適切な質量比率(水結合材比ともいい、(水/結合材)×100%で定義する)として60%〜250%が良いことを見出した。
【0022】
なお、水結合材比を60〜250%とした理由は、以下の通りである。つまり、水結合材比が60%未満では、その後の短時間の養生で固化体の強度はある程度大きくなるが、見掛け気孔率が30%未満となり、炭酸化の皮膜形成効率が落ちる。また、250%超えでは、混練物の粘性が不十分になり、型枠を利用しない場合に打設高さが得られないばかりか、ブリージングも見られるようになり、材料の分離が顕著となり、均質な固化体にならないからである。
【0023】
そこで、発明者は、これらの課題を解決するために、混練物が適切な粘性を有しているのが有効であることを見出した。さらに、混練物が適切な粘性を有するためには、水中不分離コンクリートを製造する際に利用する増粘剤が有効であることを見出した。このように増粘剤を加えることにより、混練物が適切な粘性を有し、水結合材比を60〜250%としても混練物中の原材料が分離せずに均質な固化体を製造することができる。
【0024】
その増粘剤は、前記したように、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、グアガム、キサンタンガム、アルギン酸等である。例えば、第一工業製薬社製の商品名「ユニショットA-10(セルロースエーテル系増粘剤)」、ポゾリス物産「アクリス-12(セルロースエーテル系増粘剤)」などが好ましく用いることができる。これらを利用すると、混練物の粘度が3000mPa・s以上となる。そこで、発明者は、増粘剤の利用を本発明の要件としたのである。
【0025】
かかる本発明によれば、前記混練物を流し込む型枠を用いても、また用いなくても、全体が均質で、かつ通気性に優れた炭酸化前の固化体を得ることが可能となる。
【0026】
引き続き、上記した本発明に係る製鋼固化体の製造で利用する別種の結合材及びアルカリ刺激剤について補足する。
【0027】
まず、製鋼スラグに対し、5〜30質量%の高炉スラグ微粉末を結合材として添加し、さらに混練前及び/又は混練中に増粘剤を添加してから、水結合材(高炉スラグ微粉末)比130%でモルタルを作製すると、見掛け気孔率50%程度の固化体が得られる。同様に、5〜50質量%のフラィアッシュを添加しても、水結合材(フライアッシュ)比130%でモルタルを作製することによって、見掛け気孔率50%程度の固化体が得られる。なお、増粘剤は粉末と液体のものがあるが、液体の場合でも水結合材比を算出する際の水には含めないこととする。
【0028】
また、石膏、消石灰、石灰、各種セメントについては、製鋼スラグのアルカリ刺激性の補完として、つまりf−CaO(フリーライム)の少ない製鋼スラグに対し、外掛で1〜8質量%の石膏、0.1〜6質量%の消石灰、0.1〜6質量%の生石灰、0.1〜6質量%のセメントの添加が強度発現に有効であることを見出した。これらの結合材(アルカリ刺激材としての結合材)として作用する副材は、製鋼スラグのサイズ、アルカリ刺激材としての効果及び炭酸化前の固化体の要求特性に合わせて組み合わせて使用すれば良い。なお、これらのアルカリ刺激材は、水結合材比を算出する際の結合材に含めることとする。また、本発明でいう高炉スラグ微粉末とは,粒状高炉水砕スラグを微粉砕したものであり、一般的にはJlS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」のことである。本発明における石膏は、無水石膏、半水石膏、二水石膏の何れを用いても良い。さらに、本発明でいうフライアッシュは、JIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」は勿論、この規格を満たさない原粉、加圧流動床灰(PFBC灰)等の使用が可能である。セメントには、JlS R 5210「ポルトランドセメント」,JIS R 5211「高炉セメント」,JIS R 5212「シリカセメント」,JIS R 5213「フライアッシュセメント」,JIS R 5214「エコセメント」のいずれもが利用できる。製鋼スラグとしては、前記した転炉スラグ、溶銑予備処理スラグ、クロム鉱石溶融還元炉スラグ、二次精錬スラグ、ステンレス精錬炉スラグ、電気炉スラグから選ばれたいずれか一種又は二種以上を混合して用いれば良い。
【0029】
また、本発明では、上述した固化体を炭酸化して、炭酸化皮膜の形成を行う、その方法としては、まず第一に、該固化体に適宜水を散布し、水分量を5〜10%に保った状態での大気中でのエージング(いわゆる風化)することが考えられる。最も低コストであるからである。具体的に実施したところ、気温、降雨、粉塵等の影響がある程度認められたが、夏場で3ヶ月、冬場で6ヶ月の大気エージングによって、大きさが一辺1000mmの立方体のブロックで10N/mm2の圧縮強度が得られ、さらに固化中の固化体を水/固化体比20の条件でpHを測定したところ、7.9〜8.8の範囲にあり、海水の白濁汚染を起こす心配がないことが確認できた。
【0030】
第二の方法としては、前記固化体を大気圧下で20〜30容量%の二酸化炭素雰囲気(石灰焼成キルンの排気ガス等)での炭酸化を行うことが挙げられる。ただし、その際、固化体の水分量は5〜10%に保つ必要がある。この場合、炭酸化皮膜の形成は、pHの変化を観察して5〜20日で終了することが分かった。
【実施例】
【0031】
表1に示した特性の製鋼スラグを実施例と比較例に用いた。スラグAが最大粒径10mm、10mm以下100%、粗粒率2.7であり、スラグBが最大粒径25mm、10mm以下32%、粗粒率5.5である。スラグCが最大粒径25mm、10mm以下20%、粗粒率6.8である。その際、該製鋼スラグに添加した別種の結合材、増粘剤(第一工業製薬社製の商品名「ユニショット A-10」)及び水の配合量は、表2に示す通りである。これらをミキサーで混練した後、混練物を高さ1000mm×幅1000mm×長さ1000mmの型枠に打設し、材齢7日まで20℃で湿潤養生し、上記サイズの固化体とした。その固化体からは、多くの位置よりサイズが直径100mmφ×200mm高さの試料を採取し、各試料のアルキメデス法による見掛け気孔率及びJIS A1108による圧縮強さの測定を行なった。その測定結果も表2に併せて示す。
【0032】
次に、表2の各実施例、比較例に対応する固化体は、水分5質量%程度を維持しながら大気エージングを行い、前記同様に固化体より多くの位置で試料を採取し、各試料の見掛け気孔率、圧縮強さ及び純水:固体=20:1でpHの測定を行った。なお、表2に示した変動係数(%)とは、エージング期間(表2の場合、7日)中の各試料の測定値で得た標準偏差の平均値に対する割合である。また、表3には、エージング期間を延長した場合の測定結果を示す。さらに、炭酸化の手法として、表1の各実施例に対応する固化体を、材齢7日まで20℃で湿潤養生後に、CO2濃度が20容量%の石灰キルンの排ガスを72時間通気させ、この後、野外でエージングした。所定期間のエージングが経過後、前記同様に固化体より多くの位置で試料を採取し、各試料の見掛け気孔率、圧縮強度及びpHの周時変化を調査した。その結果は、表4の通りである。粒径10mm以下を30質量%以上含有するスラグA及びスラグBを用いた実施例は、圧縮強度がエージング前で5N/mm2以上であり、エージングにより10N/mm2以上と十分な強度を有するが、粒径10mm以下が20質量%であるスラグCを用いた比較例は、圧縮強度がエージング前で5N/mm2未満であり、エージングをしても10N/mm2未満と十分な強度とは言いがたい。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
表1〜表4に示したように、本発明に係る製鋼スラグ固化体の製造方法によれば、従来の製造方法で得た固化体に比べ全体が均質で、炭酸化前の固化体として具備すべき特性である高い通気性と必要十分な材料強度が得られることが明らかである。その結果、これら固化体は、経済的に有利に種々の用途に利用されることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材及び結合材として作用する製鋼スラグに、別種の結合材及び水を添加して混練後、その混練物を型枠又は地盤上に打設し、養生して固化した製鋼スラグ固化体であって、
前記製鋼スラグとして、粒径10mm以下を30質量%以上含有するものを用い、固化後の固化体の見掛け気孔率が30〜50%で、圧縮強度が5N/mm2以上であることを特徴とする製鋼スラグ固化体。
【請求項2】
骨材及び結合材として作用する製鋼スラグに、別種の結合材及び水を添加して混練後、その混練物を型枠又は地盤上に打設し、養生して固化する製鋼スラグ固化体の製造方法において、
前記製鋼スラグとして、粒径10mm以下を30質量%以上含有するものを用いると共に、固化後の固化体の見掛け気孔率が30〜50%になるように、前記混練前又は混練中に増粘剤を添加してから、前記別種の結合材に対する前記水の質量比率である水結合材比を60〜250%として混練することを特徴とする製鋼スラグ固化体の製造方法。
【請求項3】
前記別種の結合材が、前記製鋼スラグに対する外掛けの質量比率で、高炉スラグ微粉末:5〜30%及びフライアッシュ:5〜50%から選ばれた一種又は二種であることを特徴とする請求項2記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
【請求項4】
前記製鋼スラグに、前記製鋼スラグに対する外掛けの質量比率で、前記別種の結合材として石膏:1〜8%、消石灰:1〜6%、生石灰:0.1〜6%、セメント:0.1〜6%から選ばれた一種もしくは二種以上添加することを特徴とする請求項2又は3記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
【請求項5】
前記混練物の粘度を3000mPa・sec以上とするものであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
【請求項6】
前記固化後に得られた固化体の圧縮強度が10N/mm2以上になるように、該固化体に水を散布し、水分を5〜10質量%に保持した状態で大気中に放置、又は二酸化炭素富化雰囲気に晒して、該固化体を炭酸化することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。
【請求項7】
前記固化後に得られた固化体の圧縮強度が10N/mm2以上になるように、該固化体を、炭酸含有水に浸漬し、又は二酸化炭素雰囲気にしたオートクレーブ内に保持して、炭酸化することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の製鋼スラグ固化体の製造方法。

【公開番号】特開2006−45048(P2006−45048A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186658(P2005−186658)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000200301)JFEミネラル株式会社 (79)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)