説明

製麺機及び製麺機のカッター機構

【課題】 小形で簡易でありながら加圧力が十分な製麺機及び製麺機のカッター機構を提供する。
【解決手段】 複数の押出口93が設けられているノズル94を有するシリンダ部9と、シリンダ部9の中を摺動するピストン部8と、ピストン部8にシリンダ部9内を前進及び後退させる運動を与えるパンタグラフジャッキ7とを備える製麺機1とする。先端に押出口93を有するノズル94と、ノズル94の外面上を前進・後退自在に摺動する刃107とを有するカッター機構100とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蕎麦、パスタ、うどん等の麺類を押出成形する製麺機及び製麺機のカッター機構に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類の中でも蕎麦は、一般につなぎとしての小麦粉を加えた蕎麦粉に水を加えて練った蕎麦生地を押出加工して麺状に形成される。つなぎの小麦粉を加えない十割蕎麦は、粘弾性に富む生地を形成しないので、千切れやすく、麺状に成形が困難である。水を加える割合を表す加水率が50%以上であれば、麺生地が柔らかくなり、成形が比較的容易であるが、加水率を33〜40%と低くした十割蕎麦生地は硬くて弾力性に乏しく、これまでは小形の製麺機では、押出成形が困難であると考えられている。
【0003】
従来より、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているような各種の小形の製麺機が知られているが、加水率の低い十割蕎麦生地を押出成形するには、加圧力が不十分である。
【0004】
また、製麺機から押し出されてくる麺を切断するには、麺が適当な長さに押し出されたときに、ノズルにへらの先端を押し当てながらノズル面に沿って移動させて切ることが一般的であるが、この麺切りは比較的熟練を要し、失敗することが多いという問題がある。
【特許文献1】特開平11−196798号公報
【特許文献2】特開2002−153200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、小形で簡易でありながら加圧力が十分な製麺機を提供することを目的とする。また、本発明は、製麺機のカッター機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の製麺機は、複数の押出口が設けられているノズルを有するシリンダ部と、前記シリンダ部の中を摺動するピストン部と、前記ピストン部に前記シリンダ部内を前進及び後退させる運動を与えるパンタグラフジャッキとを備えることを特徴とする。この製麺機は、パンタグラフジャッキでピストン部を作動させてシリンダ部の押出口から麺を押出成形するように構成され、機構的に簡単である。パンタグラフジャッキは、小形でありながら、小さい力を極めて大きな力へ変換でき、ピストン部に高い圧力で押し出す力を与えることができるため、加水率が低い十割蕎麦生地のような硬くて弾力性に乏しい麺生地でも押出成形することができる。
また、本発明は、枠体に前記パンタグラフジャッキが固定され、前記シリンダ部が前記枠体に脱着可能に取り付けられることを特徴とする。パンタグラフジャッキは前進・後退する先端部に対して直交する方向へ伸縮するため、安全上枠体で囲う必要があると共に、構造的に強度の高い枠体でパンタグラフジャッキを支えていることにより、ピストン部によってシリンダ部の中の麺生地を押し出すときの高圧に耐えることができる。
また、前記枠体は、直立する支柱に対して前記支柱を軸として水平方向に回転可能に取り付けられていることが好ましい。製麺機の主要部を収めた枠体を水平方向へ移動可能にしていることにより、使用しないときに邪魔にならない位置へ配置し、使用するときに引き出して用いることが可能となる。
また、前記枠体が、前記直立する支柱に対して放射方向に取り付けられた前記支柱を軸として水平方向に回転可能なアームに対して回転可能に支持されていることが好ましい。枠体を水平軸と垂直軸に対して回転可能とすることにより、収納をより自在にすることができる。
さらに、前記シリンダ部のノズルの外面に沿って前進・後退自在に摺動する刃を有することが好ましい。ノズルの外面を摺動する刃を前進または後退させることによって、麺を容易に切断できる。
また、本発明の製麺機のカッター機構は、シリンダ部内の麺生地をピストン部で押し出して麺類を成形する製麺機の前記シリンダ部が、押出口を有するノズルと、前記ノズルの外面上を前進・後退自在に摺動する刃とを有することを特徴とする。このカッター機構は、シリンダ部のノズルの押出口からピストン部で押し出されてくる麺を、ノズルの外面を摺動する刃を前進または後退させることによって、切断できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製麺機は、簡単な機構ながら高圧で麺生地を押し出すことができると共に、低コストで提供することができる。
本発明の製麺機のカッター機構は、カッター部の刃をノズル板の外面に沿って前後に移動させて麺を切断できるため、熟練を要さずに麺を切断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の製麺機及び製麺機のカッター機構の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0009】
図1は、本発明の製麺機の一実施形態を示す一部断面を有する全体正面図である。この製麺機1は、台又は床等に直立させた支柱2の上部にT字状スリーブ3が支柱2に対して回転可能に取り付けられ、このスリーブ3には、水平方向に延びる円筒形の水平アーム4の一端部が固定されている。この水平方向の水平アーム4には、スリーブ5が水平アーム4に対して回転可能に取り付けられ、スリーブ5に矩形状の枠体6の上端が固定されている。この枠体6は、支柱2を垂直軸として水平方向に回転可能に支持され、かつ水平アーム4を水平軸として回転可能になっている。
【0010】
枠体6は、両端縁に補強リブを設けた細長い鉄板で制作され、水平方向にやや長い矩形状になっている。枠体6の上端面はスリーブ5に接合されている。枠体6の上枠61の中央の下面には、パンタグラフジャッキ(ネジ式ジャッキ)7の基部71が固定されている。この基部71に第1リンク72と第2リンク73のそれぞれの一端部がピン部材を介して軸支され、第1リンク72と第2リンク73のそれぞれの他端部と第3リンク74と第4リンク75のそれぞれの一端部とがピン部材を介して軸支され、更に、第3リンク74と第4リンク75のそれぞれの他端部が、前進・後退する可動部76にピン部材を介して軸支されて、枠体6の中に納められている。第2リンク73と第4リンク75の接続部に一端部が回転可能に結合されている長ネジボルト77が第1リンク72と第3リンク74の接続部にネジで結合し、長ネジボルト77の他端部は枠体6の縦枠62に設けられている図示しない細長い開口部を通って枠体6の外へ飛び出しており、先端にハンドル78が取り付けられている。ハンドル78を回転させることによって、長ネジボルト77が回転し、パンタグラフジャッキ7を伸縮させることによって可動部76を前進・後退させることができる。
【0011】
パンタグラフジャッキ7の可動部76は、合成樹脂製のピストン部8と接続されている。可動部76の下端には垂直方向の棒状のピストン支持体81の上端部が接合され、ピストン支持体81の下端部にはネジが設けられ、ピストン部8とピストン部8をピストン支持体81に固定するナット82が取り付けられている。
【0012】
枠体6の下枠63の中央部にはシリンダ部9を通すため、径がシリンダ部9の外径より大きい円形の開口部64が設けられ、その開口部64の両側にスペーサ65が前進・後退可能に配置されている。両スペーサ65の先端部には半円形の切り込みが設けられ、両スペーサ65の対向する先端部を接近させると、シリンダ部9の外形とほぼ一致する円形の開口部を形成するようになっている。
【0013】
シリンダ部9は、円筒形の本体91を有し、ピストン部8が本体91の中を摺動することができるようになっている。シリンダ部9の上端縁にフランジ部92が外側に張り出して設けられており、シリンダ部9の下端縁にはシリンダ部9の本体91中空部と連通している多数の押出口93が開口している矩形状のノズル板94が接合されている。このノズル板にカッター機構100が設けられている。
【0014】
図2にカッター機構100の底面図を示す。シリンダ部9の下端縁に多数の押出口93が設けられている矩形のノズル板94が接合されており、そのノズル板94の4隅には筒状のガイド102が取り付けられており、このガイド102に2本のスライドパイプ101が、ノズル板94の前後方向に摺動可能に支持されている。2本のスライドパイプ101の後端縁にはそれぞれ幅広のストッパ103が固定されている。2本のスライドパイプ101の前端縁には、これらのスライドパイプ101を連結して固定する連結部材104が固定され、連結部材104の前面にはハンドル105が固定されている。スライドパイプ101を手前に引き出したときのガイド102の近くの両スライドパイプ101にはそれぞれ刃支持部材106が設けられ、刃107が両スライドパイプ101の刃支持部材106間に掛け渡されている。刃107としては、例えば、ステンレス製等の薄板部材を用いることもできるが、幅があると麺生地が付着しやすいため、針金や糸(天蚕糸等)などの細い線状部材から構成することが好ましい。ハンドル105を前後方向に動かすことにより、スライドパイプ102に固定された刃107がノズル板94の外面に沿って前進・後退自在に摺動する。
【0015】
本発明の製麺機1の主要部は枠体6の中に納められ、枠体6は、支柱2に対して支柱2を垂直軸として回転可能であり、かつ支柱2に対して放射方向に取り付けられている水平アーム4を水平軸として回転可能であり、使用しないときには、枠体6を移動させて、邪魔にならない場所に収納しておくことができる。製麺するときに枠体6を引き出して用いることができる。
【0016】
この製麺機1の使用方法について説明する。パンタグラフジャッキ7は、ハンドル78を操作して縮めておき、ピストン部8が上昇している状態にする。スライド部65を後退させて枠体6の開口部64を露出させた状態でシリンダ部9の上端のフランジ部92を枠体6の開口部64の下から挿入し、スライド部65を前進させることによってシリンダ部9のフランジ部92がスライド部65に支持されて、シリンダ部9を枠体6に装着する。シリンダ部9を取り外すときは、シリンダ部9を手などで支えながらスライド部65を後退させて枠体6の開口部64を露出させることによって、シリンダ部9のフランジ部92を枠体6から抜き出すことができる。このようにして、シリンダ部9は枠体6に対して脱着自在になっている。
【0017】
次に、シリンダ部9内へ練った麺生地を投入する。麺生地は、例えば、蕎麦、うどん、パスタ、ラーメン、冷麺等の小麦粉等に水を加えて練った麺玉を用いることができる。ハンドル78を回してパンタグラフジャッキ7の長ネジボルト77を介して可動部76を前進させ、ピストン部8をシリンダ部9内へ侵入させ、ピストン部8で麺生地に圧力を加え、麺生地をノズル板94の押出口93から押し出す。パンタグラフジャッキ7は、ハンドル78を回転させることによって、800kg〜1トン程度の荷重を生じるため、加水率が低い十割蕎麦生地でも押出成形することができる。また、パンタグラフジャッキ7をネジ式として油圧を用いていないため、食品を油圧の油で汚染するおそれがない。
【0018】
押出口93から押し出されてくる麺が適当な長さになったときに、ハンドル78を回すのを停止し、カッター機構100のハンドル105を手動で前進させることによって、カッター機構100の刃107がノズル板94外面を摺動しながら前進し、押出口93から押し出されてくる麺を切断することができる。麺の切断には比較的熟練を要するが、カッター機構100を使えば、麺を簡単に切断することができる。また、ネジ式のパンタグラフジャッキ7は作動を停止しても、ピストン部8はその位置を保持することができるため、一人で製麺と麺のカットをすることが可能である。
【0019】
ピストン部8を最後まで前進させてシリンダ部9内の麺生地を全て押し出した後、後退させてピストン部8を初期の位置へ戻すことによって、次の麺玉を押し出す準備が整う。
【0020】
上記実施形態では、パンタグラフジャッキ7を手動のネジ式であると説明しているが、長ネジボルト77を電動で回転させる構成としてもよいことは勿論である。また、上記実施形態では、ノズル板はシリンダ部と一体として説明しているが、ノズル板をシリンダ部と別体とし、交換可能にしてもよい。また、カッター機構は、手動式としているが、電動式、エアー等の圧力を利用する方式等とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の製麺機は、蕎麦、うどん、パスタ、ラーメン、冷麺等の麺類を押出成形する用途に利用可能である。また、本発明のカッター機構は、製麺機で押し出されてくる麺を適当な長さに切断する用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の製麺機の一部断面を含む全体正面図である。
【図2】本発明の製麺機のカッター機構を示す底面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 :製麺機
2 :支柱
3 :T字スリーブ
4 :水平アーム
5 :スリーブ
6 :枠体
64 :開口部
65 :スライド部
7 :パンタグラフジャッキ
71 :基部
76 :可動部
77 :長ネジボルト
78 :ハンドル
8 :ピストン部
9 :シリンダ部
92 :フランジ部
93 :押出口
94 :ノズル板
100:カッター機構
101:スライドパイプ
102:ガイド
105:ハンドル
107:刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の押出口が設けられているノズルを有するシリンダ部と、前記シリンダ部の中を摺動するピストン部と、前記ピストン部に前記シリンダ部内を前進及び後退させる運動を与えるパンタグラフジャッキとを備えることを特徴とする製麺機。
【請求項2】
枠体に前記パンタグラフジャッキが固定され、前記シリンダ部が前記枠体に脱着可能に取り付けられることを特徴とする請求項1記載の製麺機。
【請求項3】
前記枠体が、直立する支柱に対して前記支柱を軸として水平方向に回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の製麺機。
【請求項4】
前記枠体が、前記直立する支柱に対して放射方向に取り付けられた前記支柱を軸として水平方向に回転可能なアームに対して回転可能に支持されていることを特徴とする請求項3記載の製麺機。
【請求項5】
さらに、前記シリンダ部のノズルの外面に沿って前進・後退自在に摺動する刃を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の製麺機。
【請求項6】
シリンダ部内の麺生地をピストン部で押し出して麺類を成形する製麺機の前記シリンダ部が、先端に押出口を有するノズルと、前記ノズルの外面に沿って前進・後退自在に摺動する刃とを有することを特徴とする製麺機のカッター機構。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−142162(P2010−142162A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322674(P2008−322674)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(508373235)
【Fターム(参考)】