説明

複合センサ

【課題】多くの種類のセンサをまとめることにより、センサの取付スペースの改善を図るとともに、センサの取付作業も改善することのできる複合センサを提供する。
【解決手段】キャップ部2、センサ保持部3、収納ケース部4からなり、センサ保持部3は、横方向に配置された遮光板3Aと、遮光板3Aの底部に縦方向に設けられた取付板3Bとを備えている。そして、遮光板3Aの上面には、日射センサ8A〜8C、オートライトセンサ9が、遮光板3Aの底面には赤外線センサ11,11がそれぞれ取り付けられている。また、取付板3Bには、温度センサ及び湿度センサを収容したセンサ収容箱12、及び空気成分、空気汚染物質及び空気中の臭い等を検出する環境センサ13が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合センサに係り、特に自動車のインストルメントパネル等に搭載される複合センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車には空気調和装置が設けられているが、この空気調和装置を自動コントロールするには、車両に各種センサ(温度センサ、湿度センサ及び日射センサ等)を搭載し、それら各種センサからの検出信号をマイコンが取り込んで演算を行い、その演算結果に基づいて車室内への吹き出し風量や吹き出し方向を制御している。
【0003】
ところで、従来の自動車においては、上記各種センサはインストルメントパネルやフロントガラス内面等に、センサ毎に別々に取り付けられている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3137525号公報
【特許文献2】実用新案登録第2605926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術のように、各種センサがインストルメントパネルやフロントガラス内面等に、センサ毎に別々に取り付けられていると、各種センサを個々に取り付ける作業が煩雑であるとともに、各種センサに繋がったハーネスの配索作業も大変である。
【0005】
また、最近はセンサの種類が増加する傾向にあるが、これらすべてのセンサをインストルメントパネル等に取り付けようとしても、スペース的に限界がある。
【0006】
本発明の課題は、多くの種類のセンサをまとめることにより、センサの取付スペースの改善を図るとともに、センサの取付作業も改善することのできる複合センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、遮光板が横方向に配設され、前記遮光板の上面に日射センサが、前記遮光板の下側に温度センサがそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、遮光板の上面に日射センサが設けられているので、太陽光の入射方向と日射量を正確に検出することができる。また、遮光板の下側に温度センサが設けられているので、太陽光が直接温度センサに当たるのが回避され、温度センサ周囲の空気の温度を正確に検出することができる。
【0009】
また、上記構成によれば、複合センサとして日射センサと温度センサをまとめたことにより、センサの取付スペースの改善を図ることができ、さらにはセンサの取付作業の改善も図ることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記日射センサは、前記遮光板の左右及び前部に配置されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記遮光板の底面には取付板が縦方向に設けられ、該取付板に前記温度センサが設けられていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記取付板には、前記温度センサ以外に、湿度センサと、空気成分、空気汚染物質及び空気中の臭い等を検出する環境センサとが設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4において、前記取付板の周囲には空気流が形成され、前記環境センサは、前記空気流に沿って前記温度センサ及び湿度センサよりも下流側に配置されていることを特徴としている。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項2〜5のいずれか一項において、前記遮光板の上面には、前記日射センサ以外に、所定以上の強さの可視光を検出するオートライトセンサが設けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項2〜6のいずれか一項において、前記遮光板の下側には、人の顔の温度を測定する赤外線センサが設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項8に記載の発明はインストルメントパネルの発明であり、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合センサを搭載したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多くの種類のセンサをまとめることにより、センサの取付スペースの改善を図るとともに、センサの取付作業も改善することのできる複合センサを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
【実施例】
【0019】
図1〜図4は本発明に係る複合センサを分解したときの様子を示しており、図1は後部斜め上方から見たときの分解斜視図、 図2は後部斜め下方から見たときの分解斜視図、図3は前部斜め上方から見たときの分解斜視図、 図4は前部斜め下方から見たときの分解斜視図である。
【0020】
図1及び図2において、図の左斜め下方は後部側を、右斜め上方は前部側をそれぞれ示している。また、図3及び図4において、図の左斜め下方は前部側を、右斜め上方は後部側をそれぞれ示している。なお、上記複合センサを自動車のインストルメントパネルの上面に取り付ける場合は、後部(正面)側が車両後方(つまり車室内側)に向けて、前部側が車両前方に向けて設置される。
【0021】
また、図5はキャップ部を外したときの複合センサの斜視図である。図6〜図8は本発明に係る複合センサの外観を示しており、図6は後部(正面)斜め上方から見た斜視図、図7は正面図、図8は中心線から若干ずらせて見たときの底面図である。
【0022】
本発明に係る複合センサ1は、図1〜図4に示すように、キャップ部2と、センサ保持部3と、収納ケース部4とから構成されている。
【0023】
キャップ部2は有底円筒形状を成し、有底部分2Aが上側に、開口端2Bが下側にそれぞれ位置するようにして使用される。キャップ部2は、太陽光が透過できる半透明の材料で形成されている。キャップ部2の側壁2Cには後部側に2つの貫通孔5,5が形成されている。また、キャップ部2の側壁2Cには後部側に係止孔6が、前部側に係止孔7がそれぞれ形成されている。
【0024】
センサ保持部3は、横方向に配置され太陽光を遮光する遮光板3Aと、遮光板3Aの底面に設けられ縦方向に配置された取付板3Bとを備えている。遮光板3Aや取付板3Bはポリフタルアミド(PPA)で構成されている。また、取付板3Bの板厚は、取付板3B自身の強度が確保できれば、薄い方がよい。それは取付板3Bにおける熱伝導を低く抑えるためである。なお、遮光板3Aと取付板3Bとは一体的に形成されている。
【0025】
遮光板3Aの上面には、その前部(本実施例では前部右側)に日射センサ8Aが取り付けられている。遮光板3Aの前部左右は斜めにカットされ、そのカットされた面にも日射センサ8B,8Cが取り付けられている。また、遮光板3Aの上面には、その前部(本実施例では前部左側)にオートライトセンサ9が取り付けられている。このオートライトセンサ9は、車両がトンネル等に入った時にヘッドライト等を自動的に点灯させるためのものである。さらに、遮光板3Aの上面には、その中央部に制御IC10が取り付けられている。この制御IC10は、複合センサ1全体を制御するためのものである。
【0026】
また、遮光板3Aの底面には取付板3Bを挟んで左右に赤外線センサ11,11が取り付けられている。これら赤外線センサ11,11は、運転席又は助手席に着座した人の顔の温度を測定するためのものである。
【0027】
取付板3Bの上部には、図1及び図2に示すように、センサ収容箱12が取り付けられ、このセンサ収容箱12には温度センサ及び湿度センサ(温度センサ及び湿度センサ共に図示省略)が収容されている。また、取付板3Bの下部には貫通孔3Cが形成されている。
【0028】
取付板3Bの下部には、図3及び図4に示すように、センサ収容箱12が取り付けられた面と反対側の面に、貫通孔3Cに合致させて環境センサ13が設けられている。環境センサ13はその内部にヒータが設けられているため、温度センサ(つまりセンサ収容箱12)からできるだけ離して配置するのがよい。環境センサ13は、空気成分、空気汚染物質及び空気中の臭い等を検出する。
【0029】
取付板3は三次元射出成形回路部品(MID:Molded Interconnects Device)として製作することが可能であり、環境センサ13の周囲の回路パターン14は、取付板3BがMIDとして製作されたことを示している。なお、本実施例では、各種センサと制御IC10間の通信はLIN(Local Interconnect Network)を利用している。
【0030】
収納ケース部4は、図1〜図4に示すように、遮光板3Aの部分が載置される上部ケース4Aと、上部ケース4Aの底面から下方に延設された円筒状の下部ケース4Bと、下部ケース4Bの横方に配置され3本の信号取出線15が内蔵されたコネクタ4Cとを備えている。上部ケース4Aには貫通孔4Dが形成され、この貫通孔4Dは下部ケース4Bの内部に連通している。
【0031】
また、上部ケース4Aには、その前部と後部の外周部に、外側に向けて突出した係止爪16,17がそれぞれ形成されている。これら係止爪16,17は、キャップ部2の係止孔6,7にそれぞれ係合可能になっている。
【0032】
次に、上記構成の複合センサの組み立て手順について説明する。
【0033】
まず、センサ保持部3の遮光板3Aの上面に日射センサ8A〜8C、オートライトセンサ9及び制御IC10を、底面に赤外線センサ11,11をそれぞれ取り付け、さらに、取付板3Bに、温度センサや湿度センサが収容されたセンサ取付箱12と、貫通孔3C付近に環境センサ13とを取り付ける。
【0034】
次に、取付板3Bを収納ケース部4の貫通孔4Dを介して下部ケース4C内に収納するとともに、遮光板3Aを収納ケース部4の上部ケース4Aに載置する。このとき、信号取出線15は、遮蔽板3Aに形成された3つの貫通孔18(図1参照)にそれぞれ挿通される。センサ保持部3を収納ケース部4に組み付けた様子を図5に示す。
【0035】
そして、センサ保持部3及び収納ケース部4に対して上方よりキャップ部2を組み付ける。このとき、キャップ部2の側壁2Cに形成された2つの貫通孔5,5が、センサ保持部3の遮光板3A底面の赤外線センサ11,11に合致するように位置合わせを行い、最後に、収納ケース部4の係止爪16,17をキャップ部2の係止孔6,7にそれぞれ係合させて、キャップ部2、センサ保持部3及び収納ケース部4を結合する。その結合した様子を図6〜図8に示す。
【0036】
次に、上記構成の複合センサ1をインストルメントパネルに設置したときの作用について説明する。この場合、収納ケース部4の下部ケース4B先端は空気調和装置に接続され、下部ケース4B内は負圧となる。
【0037】
日射センサ8A〜8Cは、キャップ部2を透過してきた太陽光を検出し、その検出信号を制御IC10(又は車両搭載の他のマイコン)に送信し、これにより、車両に対する太陽光の入射方向及び日射量を検知することができる。
【0038】
また、収納ケース部4の下部ケース4B内が負圧となっているので、車室内の空気がキャップ部2の貫通孔5,5を介して収納ケース部4の下部ケース4B内に流入して空気流を形成する。この空気流の温度及び湿度をセンサ収容箱12内の温度センサ及び湿度センサで検出することにより、車室内の温度及び湿度を検知することができる。さらに、空気流は環境センサ13も通過するので、この環境センサ13によって、車室内の空気成分、空気汚染物質及び空気中の臭い等を検出することができる。
【0039】
さらに、運転席又は助手席に人が着座したとき、その人の顔からは赤外線が放射されるので、この赤外線をキャップ部2の貫通孔5,5を介して赤外線センサ11,11で測定することにより、運転席又は助手席に着座した人の顔の温度を測定することができる。
【0040】
本実施例によれば、遮光板3Aの上面に日射センサ8A〜8Cが設けられているので、太陽光の入射方向と日射量を正確に検出することができる。また、遮光板3Aの下側にセンサ収納箱12(つまり温度センサ)が設けられているので、太陽光が直接温度センサに当たるのが回避され、温度センサ周囲の空気の温度を正確に検出することができる。
【0041】
また、複合センサ1として、日射センサ8A〜8C、オートライトセンサ9、赤外線センサ11,11、環境センサ13、及びセンサ収容箱12内の温度センサと湿度センサをまとめたことにより、センサの取付スペースの改善を図ることができ、さらにはセンサの取付作業及びハーネスの配索作業の改善も図ることができる。また、複数のセンサがまとめられる結果、見栄えが良くなって、意匠的にも有利である。
【0042】
さらに、空気流の流れに沿って環境センサ13をセンサ収納箱12よりも下流側に配置したので、環境センサ13の熱がセンサ収容箱12内の温度センサに影響するのを極力抑えることができ、車室内の温度を正確に測定することができる。
【0043】
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【0044】
例えば、本発明の複合センサ1には、日射センサ8A〜8C、オートライトセンサ9、赤外線センサ11,11、環境センサ13、温度センサ及び湿度センサに限らず、他のセンサも搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る複合センサを分解して後部斜め上方から見たときの様子を示しており、(a)はキャップ部の斜視図、(b)はセンサ保持部の斜視図、(c)は収納ケース部の斜視図である。
【図2】図1の複合センサを分解して後部斜め下方から見たときの様子を示しており、(a)はキャップ部の斜視図、(b)はセンサ保持部の斜視図、(c)は収納ケース部の斜視図である。
【図3】図1の複合センサを分解して前部斜め上方から見たときの様子を示しており、(a)はキャップ部の斜視図、(b)はセンサ保持部の斜視図、(c)は収納ケース部の斜視図である。
【図4】図1の複合センサを分解して前部斜め下方から見たときの様子を示しており、(a)はキャップ部の斜視図、(b)はセンサ保持部の斜視図、(c)は収納ケース部の斜視図である。
【図5】キャップ部を外したときの複合センサの斜視図である。
【図6】本発明に係る複合センサを後部斜め上方から見た斜視図である。
【図7】図6の複合センサの正面図である。
【図8】図6の複合センサの底面を示しており、中心線から若干ずらせて見たときの図である。
【符号の説明】
【0046】
1 複合センサ
2 キャップ部
3 センサ保持部
3A 遮光板
3B 取付板
4 収納ケース部
8A〜8C 日射センサ
9 オートライトセンサ
11 赤外線センサ
12 センサ収容箱(温度センサと湿度センサ)
13 環境センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光板が横方向に配設され、前記遮光板の上面に日射センサが、前記遮光板の下側に温度センサがそれぞれ設けられていることを特徴とする複合センサ。
【請求項2】
前記日射センサは、前記遮光板の左右及び前部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の複合センサ。
【請求項3】
前記遮光板の底面には取付板が縦方向に設けられ、該取付板に前記温度センサが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合センサ。
【請求項4】
前記取付板には、前記温度センサ以外に、湿度センサと、空気成分、空気汚染物質及び空気中の臭い等を検出する環境センサとが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の複合センサ。
【請求項5】
前記取付板の周囲には空気流が形成され、前記環境センサは、前記空気流に沿って前記温度センサ及び湿度センサよりも下流側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の複合センサ。
【請求項6】
前記遮光板の上面には、前記日射センサ以外に、所定以上の強さの可視光を検出するオートライトセンサが設けられていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の複合センサ。
【請求項7】
前記遮光板の下側には、人の顔の温度を測定する赤外線センサが設けられていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の複合センサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合センサを搭載したことを特徴とするインストルメントパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−224588(P2008−224588A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66565(P2007−66565)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】