説明

複合フィルム

【課題】柔軟性および耐水性を有する複合フィルムを提供すること。
【解決手段】複合フィルムは、アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとを含む複合フィルムであって、アクリル系ポリマーが、少なくともアクリル酸系モノマー、および、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなり、かつ、アクリル酸の含有量がアクリル成分中、1重量%以上、30重量%以下であり、ウレタンポリマーが、ジオール及びジイソシアネートを反応させてなるウレタン成分を用いてなり、NCO/OH(当量比)=1.1〜2.0であり、また、複合フィルムはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)可溶分を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系ポリマー及びウレタンポリマーを含む複合フィルムに関し、特に、柔軟性および耐水性を有する複合フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系ポリマーとウレタンポリマーの複合フィルムは、高強度と高破断伸びを両立できるフィルムとして、例えば、特開2003−96140号公報、特開2003−171411号公報、特開2004−10662号公報等に開示されている。この複合フィルムは、フィルムとして高強度、高破断伸び等の強靭な物性を有しているが、例えば自動車塗膜等の塗装面保護用粘着シートの基材として用いようとすると、フィルムとしての柔軟性(特に曲面に対する柔軟性)や耐水性が十分でないという問題があった。
【0003】
特表2001−520127号公報には、このような塗装面保護用粘着シートとして、相互侵入高分子網目層(IPN層)、および、少なくとも1層のフルオロ含有ポリマー層を含む多層フィルムが開示されている。この多層フィルムのIPN層にはウレタンポリマーとアクリルポリマーのIPN複合体が用いられており、アクリルモノマーとアクリル架橋剤、および、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン架橋物先駆体の混合液を、基材上に塗布し、熱によりアクリルモノマーおよびウレタン先駆体であるポリオール/ポリイソシアネートを不干渉様式で、それぞれ重合、架橋させて得られる。
【0004】
この方法によれば、用いられる単量体の種類や組み合わせ、配合比等による制限(制約)が生じ難いという利点はある。しかしながら、ウレタン重合はアクリルのような連鎖反応に比べて遅い重付加反応であることから、少しでも反応を促進させるためにジブチル錫ラウレートのような環境負荷がある化学物質を触媒として添加することを必要としており、しかも、更にフィルム化後には90℃以上の高温で数時間以上という長時間の反応が必要であるので、生産性の面で課題があった。
【0005】
この生産性の課題の解決のために、IPN層を特開2003−96140号公報に開示されているような逐次合成と光重合を利用して得ようとすると、架橋ウレタンポリマーがアクリルモノマーおよび架橋剤の存在下で膨潤した状態となるため、シロップの粘度が著しく上昇してコーティングやキャスティングによる基材への塗布は極めて困難になるという問題が生じた。
【0006】
【特許文献1】特開2003−96140号公報
【特許文献2】特開2003−171411号公報
【特許文献3】特開2004−10661号公報
【特許文献4】特開2004−10662号公報
【特許文献5】特表2001−520127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、柔軟性および耐水性を有する複合フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複合フィルムは、アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとを含む複合フィルムであって、前記アクリル系ポリマーが、少なくとも、アクリル酸系モノマー、および、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなり、かつ、前記アクリル酸系モノマーの含有量が前記アクリル成分中、1重量%以上、30重量%以下であり、前記ウレタンポリマーが、ジオール及びジイソシアネートを反応させてなるウレタン成分を用いてなり、NCO/OH(当量比)=1.1〜2.0であり、また、前記複合フィルムはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)可溶分を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の複合フィルムは、アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとを含む複合フィルムであって、前記アクリル系ポリマーが、少なくとも、アクリル酸系モノマー、および、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなり、かつ、前記アクリル酸系モノマーの含有量が前記アクリル成分中、1重量%以上、30重量%以下であり、前記ウレタンポリマーが、ジオール及びジイソシアネートを含むウレタン成分を用いてなり、NCO/OH(当量比)=1.1〜2.0であり、また、前記複合フィルムはゲル分率が50%以上、99.5%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、前記アクリル系ポリマーは、少なくともアクリル酸系モノマー、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマー、および、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記アクリル成分と前記ウレタン成分との重量比率が10/90〜90/10の範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明において前記アクリル成分は、アクリル酸系モノマーを1重量%以上、30重量%以下、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを20重量%以上、99重量%以下、および、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーを0重量%以上、50重量%以下の範囲で合計重量が100重量%となるように含有することが好ましい。
【0013】
本発明において、前記ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーは、アクリロイルモルホリン及び/又はイソボルニルアクリレートであることが好ましい。
【0014】
また、前記ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーは、アクリル酸n−ブチルであることが好ましい。
【0015】
また、前記複合フィルムの吸水率は10%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明においては、前記複合フィルムの100%モジュラスが0.5MPa以上、11.5MPa以下であり、破断伸びが200%以上、1500%以下であり、破断強度が5MPa以上、70MPa以下であることが好ましい。
【0017】
本発明において前記ウレタン成分は、さらに水酸基含有アクリルモノマーを用いて反応させてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、柔軟性および耐水性を有する複合フィルムを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の複合フィルムは、アクリル系ポリマーとウレタン系ポリマーとを含有する。このアクリル系ポリマーは、少なくともアクリル酸系モノマー、および、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなる。本発明においては、アクリル系ポリマーは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーをさらに含むアクリル成分を用いてなることが好ましい。
本発明においてアクリル酸系モノマーとは、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中では特にアクリル酸が好ましい。このアクリル酸系モノマーの含有量は、アクリル成分中、1重量%以上、30重量%以下であり、2重量%以上、25重量%以下であることが好ましい。アクリル酸系モノマーの含有量が1重量%未満では、反応に長時間を要し、フィルム化することが非常に困難であり、また、フィルムの強度が十分でない問題が生じる場合がある。アクリル酸系モノマーの含有量が30重量%を超える場合には、フィルムの吸水率が大きくなり、耐水性に問題が生じる場合がある。本発明においてアクリル酸系モノマーはウレタン成分、アクリル成分との相溶性に大きく影響するものであり、極めて重要な機能を有する必須構成要素である。
なお、本発明において「フィルム」という場合には、シートを含み、「シート」という場合には、フィルムを含む概念とする。
【0020】
本発明において、Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、t−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは、2種以上を併用することができる。
本発明においては、Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、および、ジシクロペンタニルアクリレートからなる群のうち少なくとも1つを用いることが好ましく、アクリロイルモルホリン及び/又はイソボルニルアクリレート、あるいは、アクリロイルモルホリン及び/又はジシクロペンタニルアクリレートを用いることが更に好ましく、特にイソボルニルアクリレートを用いることが好ましい。
Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、アクリル成分中、20重量%以上、99重量%以下であることが好ましく、30重量%以上、98重量%以下であることが更に好ましい。この単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が20重量%未満では、フィルムの強度が十分でないという問題が生じることがあり、99重量%を超えると、フィルムの剛性が上がりすぎて脆くなる場合がある。
【0021】
本発明において、Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソブチル、2−メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルオロフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは、2種以上を併用することができる。
本発明においては、Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリル酸n−ブチルを用いることが特に好ましい。
Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーは含有されていなくても良い(含有量が0重量%)が、含有されている場合の含有量は、アクリル成分中、0重量%より多く、50重量%以下であることが好ましく、0重量%より多く、45重量%以下であることが更に好ましい。この単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が50重量%を超える場合には、フィルムの強度が十分でない問題が生じることがある。
【0022】
アクリル系モノマーは、ウレタンとの相溶性、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。
【0023】
本発明においては、上記アクリル系モノマーとともに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノまたはジエステル、及びその誘導体、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イミドアクリレート、N−ビニルピロリドン、オリゴエステルアクリレート、ε−カプロラクトンアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロドデカトリエンアクリレート、メトキシエチルアクリレート等のモノマーを共重合してもよい。なお、これら共重合されるモノマーの種類や使用量は、複合フィルムの特性等を考慮して適宜決定される。
【0024】
また、特性を損なわない範囲内で他の多官能モノマーを添加することもできる。多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができ、特に好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。
【0025】
多官能モノマーはアクリル系モノマー100重量部に対して、1重量部以上、20重量部以下含まれることができる。多官能モノマーの含有量が1重量部以上であれば、複合フィルムの凝集力は十分であり、20重量部以下であれば、弾性率が高くなりすぎることがなく、被着体表面の凹凸に追従することができる。
【0026】
ウレタンポリマーは、ジオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ジオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、一般的には触媒が用いられるが、本発明によれば、ジブチルチンジラウレート、オクトエ酸錫のような環境負荷が生じる触媒を用いなくても反応を促進させることができる。
【0027】
低分子量のジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコールが挙げられる。
【0028】
また、高分子量のジオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、あるいは上述の2価のアルコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオールや、アクリルポリオール、カーボネートポリオール、エポキシポリオール、カプロラクトンポリオール等が挙げられる。これらの中では、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD)等が好ましく使用される。
【0029】
アクリルポリオールとしては水酸基を有するモノマーの共重合体の他、水酸基含有物とアクリル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。エポキシポリオールとしてはアミン変性エポキシ樹脂等がある。
【0030】
本発明に使用されるジオールは線状(リニア)のジオールであり、分岐構造を含まない。また、形成されたウレタンポリマーも架橋構造を含まないものである。したがって、IPN構造とは構造的に全く異なるものである。
【0031】
本発明においては、上記ジオールを、アクリル系モノマーへの溶解性、イソシアネートとの反応性等を考慮して、単独あるいは併用して使用することができる。強度を必要とする場合には、低分子量ジオールによるウレタンハードセグメント量を増加させると効果的である。伸びを重視する場合には、分子量の大きなジオールを単独で使用することが好ましい。また、ポリエーテルポリオールは、一般的に、安価で耐水性が良好であり、ポリエステルポリオールは、強度が高い。本発明においては、用途や目的に応じて、ポリオールの種類や量を自由に選択することができ、また、塗布する基材等の特性、イソシアネートとの反応性、アクリルとの相溶性などの観点からもポリオールの種類、分子量や使用量を適宜選択することができる。
【0032】
ジイソシアネートとしては芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体等が挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンジイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。
【0033】
これらのジイソシアネート類は単独あるいは併用で使用することができる。複合フィルムが適用される(塗布等される)基材等の特性、アクリル系モノマーへの溶解性、水酸基との反応性などの観点から、ジイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択すればよい。
【0034】
本発明において、ウレタンポリマーを形成するためのジオール成分とジイソシアネート成分の使用量は、ジオール成分の使用量は、ジイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が1.1以上、2.0以下であることが好ましく、1.15以上、1.35以下であることがさらに好ましい。NCO/OH(当量比)が1.1未満では、フィルム強度が低下しやすい。また、NCO/OH(当量比)が2.0以下であれば、伸びと柔軟性を十分確保することができる。
【0035】
上記ウレタンポリマーに対し、水酸基含有アクリルモノマーを添加してもよい。水酸基含有アクリルモノマーを添加することにより、ウレタンプレポリマーの分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入することができ、アクリル系モノマーとの共重合性が付与され、ウレタン成分とアクリル成分との相溶性が高まり、破断強度などのS−S特性の向上を図ることもできる。水酸基含有アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。水酸基含有アクリルモノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜5重量部である。
【0036】
複合フィルムには、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。これらの添加剤は、ジイソシアネートとジオールとの重合反応前に、あらかじめ加えておいてもよいし、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとをそれぞれ重合させる前に、添加してもよい。
【0037】
また、塗工の粘度調整のため、少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0038】
本発明の複合フィルムは、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)可溶分を有するものである。例えば、複合フィルムのゲル分率は、50%以上、99.5%以下であることが好ましく、更に好ましくは60%以上、99.5%以下であり、特に好ましくは75%以上、99.5%以下である。ゲル分率が50%以上、99.5%以下である複合フィルムは、透明性、耐溶剤性に優れ、かつ、フィルム強度が高いという利点がある。
本発明において、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)可溶分はゲル分率で示すことができ、例えば以下のようにして求めることができる。複合フィルムから約0.1gを秤量してステンレス製200メッシュの金網で包み、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中に入れ、40℃で7日間浸漬する。その後、金網をDMFから取り出し、複合フィルムのみを金網から取り出した後、130℃で2時間乾燥し、冷却後、フィルムの重量を測定し、DMF浸漬後のフィルムの重量と浸漬前のフィルムの重量を下記式に代入してゲル分率を求める。

ゲル分率(%)=(DMF浸漬後のフィルムの重量/DMF浸漬前のフィルムの重量)×100
【0039】
本発明の複合フィルムは、例えば、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離処理面に複合フィルム用の塗布液を塗布し、その上に透明のセパレータ等をのせて、その上から紫外線等を照射してフィルムを形成し、その後、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートおよびセパレータを除去して得ることができる。なお、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムの替わりに、適当な基材を使用することもできるし、あるいは、剥離処理されたポリエチレンテレフタレート等の剥離基材上に、粘着剤層を設けて、その上に複合フィルムを形成しても良い。また、複合フィルムを形成した後に、別途作製した粘着剤層を積層して、粘着剤層/複合フィルムの積層シートを作製してもよい。このような粘着剤層/複合フィルムの積層シートは、自動車のボディーを保護するためのチッピングシートとして好適である。あるいは、複合フィルムのままで、自動車の塗装面や建造物等の被着体に粘着剤を塗布等した上に複合フィルムを貼り合わせて使用することもできる。
【0040】
本発明に用いられる基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン、2軸延伸ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂等が使用される。中でもPETは、精密部品の加工に使用する場合には適度な固さを有しているので好適であり、さらにまた、品種の豊富さやコスト面からも有利であるので、好ましく使用される。フィルムの材料は、用途や必要に応じて設けられる粘着剤層の種類等に応じて、適宜決定することが好ましく、例えば紫外線硬化型粘着剤を設ける場合には、紫外線透過率の高い基材が好ましい。
【0041】
本発明において複合フィルムは、例えば、アクリル系モノマーを希釈剤として、このアクリル系モノマー中でジオールとジイソシアネートとの反応を行ってウレタンポリマーを形成し、アクリル系モノマーとウレタンポリマーとを主成分として含む混合物を基材(必要に応じて剥離処理されている)等の上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じて、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射することにより、硬化させて形成することができる。
【0042】
具体的には、ジオールをアクリル系モノマーに溶解させた後、ジイソシアネート等を添加してジオールと反応させて粘度調整を行い、これを基材等に塗工した後、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、複合フィルムを得ることもできる。この方法では、アクリル系モノマーをウレタン合成中に一度に添加してもよいし、何回かに分割して添加してもよい。また、ジイソシアネートをアクリル系モノマーに溶解させた後、ジオールを反応させてもよい。この方法によれば、分子量が限定されるということはなく、高分子量のポリウレタンを生成することもできるので、最終的に得られるウレタンの分子量を任意の大きさに設計することができる。
【0043】
この際、酸素による重合阻害を避けるために、基材上に塗布したウレタンポリマーとアクリル系モノマーとの混合物の上に、剥離処理したシートをのせて酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に基材を入れて、酸素濃度を下げてもよい。
【0044】
本発明において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプ等を用いることができる。
【0045】
紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、100〜5,000mJ/cm、好ましくは1,000〜4,000mJ/cm、更に好ましくは2,000〜3,000mJ/cmである。紫外線の照射量が100mJ/cmより少ないと、十分な重合率が得られないことがあり、5,000mJ/cmより多いと、劣化の原因となることがある。
【0046】
また、紫外線照射する際の温度については特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、温度が高すぎると重合熱による停止反応が起こり易くなり、特性低下の原因となりやすいので、通常は70℃以下であり、好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。
【0047】
ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとを主成分とする混合物には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル、アニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等の置換アセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等の置換アルファーケトール、2−ナフタレンスルフォニルクロライド等の芳香族スルフォニルクロライド、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等の光活性オキシムが好ましく用いられる。
【0048】
本発明の複合フィルムの厚みは、目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、自動車のボディーを保護するために用いられるチッピング用途の場合には、複合フィルムの厚さは50〜500μm程度であることが好ましく、更に好ましくは100〜300μm程度であることが好ましい。
【0049】
本発明の複合フィルムは、そのままでも使用することができるが、片面または両面に粘着剤層を形成して粘着シートとすることもできる。粘着剤組成としては特に限定されず、アクリル系、ゴム系等、一般的なものを使用することができる。粘着剤の形成方法も特に限定されるものではなく、複合フィルムに、溶剤系、エマルジョン系の粘着剤を直接塗布し、乾燥する方法、これらの粘着剤を剥離紙に塗布し、予め粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層を複合フィルムに貼り合わせる方法等を適用することができる。放射線硬化型粘着剤を複合フィルムに塗布し、粘着剤層と、フィルムの両方に放射線を照射することにより、複合フィルムと粘着剤層を同時に硬化させて、形成する方法も適用することができる。なお、この場合には、粘着剤層と複合フィルム層は、多層構成となるように塗布することもできる。
【0050】
粘着剤層の厚みについては、特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、通常は3〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがさらに好ましく、特に10〜30μm程度であることが好ましい。
本発明において、複合フィルムは、その片面または両面に他のフィルムを積層することができる。他のフィルムを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等のような熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂等が挙げられる。なお、他のフィルムは単層構成でもよいが、同種の、又は異種の材料からなる複数の層による多層構造のフィルムでもよい。
【0051】
本発明の複合フィルムは、アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含有する複合フィルムであるので、高強度と高破断伸びを両立することができる。また、本発明の複合フィルムは、アクリル酸、Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマー、および、Tgが0℃以下の単官能(メタ)アクリル系モノマーを含有するアクリル成分と、ウレタン成分とを用いてなり、しかも可溶分およびゲル分を有するので、曲面に対する柔軟性に優れており、耐水性に優れている。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりがない限り、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。
【0053】
(実施例1)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を10部、アクリロイルモルホリン(ACMO)を20部、アクリル酸n−ブチル(BA)を20部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.4部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の13.6部を滴下し、65℃で10時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(IRGACURE819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)を0.25部添加した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0054】
ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物を、厚さ50μmの剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の剥離処理面上に、硬化後の厚みが220μmになるように塗布した。この上に、セパレータとして剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)を重ねて被覆した後、被覆したセパレータ面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、剥離処理されたPETフィルム上に複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、力学物性の評価、ゲル分率の測定、吸水率の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0055】
(実施例2)
実施例1において、光重合開始剤の種類と使用量を、1−[4−(2−ヒドロキシエトン)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を0.05部使用した以外は実施例1と同様にして、剥離処理されたPETフィルム上に複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0056】
(実施例3)
実施例1において、アクリル系モノマーの種類と配合量を、アクリル酸(AA)を5部、アクリロイルモルホリン(ACMO)を25部、アクリル酸n−ブチル(BA)を20部に変更した以外は実施例1と同様にして、剥離処理されたPETフィルム上に複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
(実施例4)
実施例1において、アクリル系モノマーの種類と配合量を、アクリル酸(AA)を5部、アクリロイルモルホリン(ACMO)を25部、アクリル酸n−ブチル(BA)を20部に変更し、ウレタン成分の種類と配合量を、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を37.2部、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)を12.8部に変更した以外は実施例1と同様にして、剥離処理されたPETフィルム上に複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.15であった。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例5)
実施例1において、ウレタン成分の種類と配合量を、ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD)(数平均分子量800、旭化成(株)製の商品銘柄「T5650J」)を38部、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)を12部に変更した以外は実施例1と同様にして、剥離処理されたPETフィルム上に複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0059】
(実施例6)
実施例1において、ウレタン成分の種類と配合量を、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.7部、キシリレンジイソシアネート(XDI)を13.3部に変更した以外は実施例1と同様にして、剥離処理されたPETフィルム上に複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0060】
(実施例7)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を10部、アクリロイルモルホリン(ACMO)を20部、アクリル酸n−ブチル(BA)を20部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.4部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の13.6部を滴下し、65℃で10時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。次いで、このウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物に、メタノールを1部添加し、65℃で2時間反応させた。その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(IRGACURE819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)を0.25部添加した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0061】
ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物を、厚さ50μmの剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の剥離処理面上に、硬化後の厚みが220μmになるように塗布した。この上に、セパレータとして剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)を重ねて被覆した後、被覆したセパレータ面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、剥離処理されたPETフィルム上に複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、力学物性の評価、ゲル分率の測定、吸水率の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0062】
(実施例8)
実施例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)40部、アクリル酸n−ブチル(BA)5部を用いた以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリルポリマーフィルムを形成した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表2に示す。
【0063】
(実施例9)
実施例8において、ウレタン−アクリル系モノマー混合物を作製した後、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)2部を滴下し、65℃で1時間反応させた以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリルポリマーフィルムを形成した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表3に示す。
【0064】
(実施例10)
実施例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)5.5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)44部、アクリル酸n−ブチル(BA)5.5部を用い、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG、分子量650)32.8部、ポリイソシアネートとして、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)12.2部を用い、光重合開始剤として、0.275部のビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(商品名 IRGACURE 819)を用いた以外は実施例1と同様にして、ウレタン−アクリルポリマーフィルムを形成した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表3に示す。
【0065】
(実施例11)
実施例9において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)35部、アクリル酸n−ブチル(BA)10部を用いた以外は実施例9と同様にして、ウレタン−アクリルポリマーフィルムを形成した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表3に示す。
【0066】
(実施例12)
実施例11において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)5部、イソボルニルアクリレート(IBXA)45部を用いた以外は実施例11と同様にして、ウレタン−アクリルポリマーフィルムを形成した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表3に示す。
【0067】
(比較例1)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を5部、アクリロイルモルホリン(ACMO)を25部、アクリル酸n−ブチル(BA)を20部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を39.4部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の10.6部を滴下し、65℃で10時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(IRGACURE819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)を0.25部添加した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=0.90であった。
【0068】
ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物を、厚さ50μmの剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の剥離処理面上に、硬化後の厚みが220μmになるように塗布した。この上に、セパレータとして剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)を重ねて被覆した後、被覆したセパレータ面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、剥離処理されたPETフィルム上に複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。
得られた複合フィルムについて、力学物性の評価、ゲル分率の測定、吸水率の測定を行った。その結果を表4に示す。
【0069】
(比較例2)
比較例1において、ウレタン成分の種類と配合量を、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を38.5部、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)を11.5部に変更した以外は比較例1と同様にして、剥離処理されたPETフィルム上に複合フィルム(セパレータを備えている)を形成した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.00であった。
得られた複合フィルムについて、実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表4に示す。
【0070】
(比較例3)
比較例1において、アクリル系モノマーの種類と配合量を、アクリロイルモルホリン(ACMO)を30部、アクリル酸n−ブチル(BA)を20部に変更し、ウレタン成分の種類と配合量を、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.4部、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)を13.6部に変更した以外は比較例1と同様にして、剥離処理されたPETフィルム上にフィルムの形成を試みた。しかしながら、1週間を経過してもフィルム化を達成することはできなかった。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0071】
(比較例4)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリロイルモルホリン(ACMO)を20部、アクリル酸n−ブチル(BA)を20部、ウレタン成分として、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.4部投入し、かつ、ウレタン反応触媒として、ジブチル錫ジラウレート(DBTL)を0.025部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の13.6部を滴下し、65℃で4時間反応させた。次いで、これにメタノールを1部滴下し、65℃で2時間反応させた後、アクリル酸(AA)10部を投入し、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を作製した。その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(IRGACURE819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)を0.25部添加した。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0072】
ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物を、厚さ50μmの剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の剥離処理面上に、硬化後の厚みが220μmになるように塗布した。この上に、セパレータとして剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)を重ねて被覆した後、被覆したセパレータ面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、剥離処理されたPETフィルム上にフィルム(セパレータを備えている)を形成した。得られたフィルムは白色を呈していた。
得られたフィルムについて、力学物性の評価、ゲル分率の測定、吸水率の測定を行った。その結果を表4に示す。
【0073】
《評価試験》
(1)力学物性の評価
得られた複合フィルムについて、力学物性の評価として、下記評価方法に基づき100%モジュラス、破断伸び、破断強度の測定を行った。
すなわち、得られた複合フィルムを、幅1cm×長さ13cmに切断した後、セパレータおよび剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し、引張試験機として「オートグラフASG−50D型」(島津製作所製)を用い、引張速度200mm/min、チャック間距離50mm、室温(23℃)で引張試験を行い、応力−歪み曲線を求めた。複合フィルムの100%伸張時における単位面積当たりの応力を100%モジュラスとした。
また、フィルムが破断した時の応力を求めて破断強度とし、フィルムが破断した時の歪み(伸び率)を求めて破断伸度した。
【0074】
(2)ゲル分率の評価
得られた複合フィルムから約0.1gを秤量してステンレス製200メッシュの金網で包み、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中に入れ、40℃で7日間浸漬した。その後、金網をDMFから取り出し、複合フィルムのみを金網から取り出した後、130℃で2時間乾燥し、冷却後、フィルムの重量を測定した。DMF浸漬後のフィルムの重量と浸漬前のフィルムの重量を下記式に代入してゲル分率を求めた。

ゲル分率(%)=(DMF浸漬後のフィルムの重量/DMF浸漬前のフィルムの重量)×100
【0075】
(3)吸水率の評価
得られた複合フィルムを、3cm×3cmの大きさに切断した後、セパレータおよび剥離処理されたPETフィルムを除去した。この複合フィルムの重量を測定した。次に、98℃の沸騰水中に5分間浸漬した後、取り出し、表面に付着した水滴を紙ウエスで軽く押し当てて取り除き、ただちにフィルムの重量を測定した。沸騰水に浸漬後のフィルム重量と、浸漬前のフィルム重量を下記式に代入し、吸水率を求めた。

吸水率(%)=(浸漬後のフィルムの重量/浸漬前のフィルムの重量)×100
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
表1〜表3から明らかなように、本発明の実施例1〜12の複合フィルムは、100%モジュラスが0.5〜11.5MPaの範囲内にあり、破断伸びが200%〜1500%の範囲内にあり、破断強度が5〜70MPaの範囲内にあり、かつ、吸水率が10%以下であり、優れた特性を有するフィルムであることが分かった。
【0081】
一方、表4から明らかなように、ゲル分率が0%である比較例1〜2および比較例4は、破断強度が5MPaに満たないものであり、強度が劣ったものであることが分かった。また、アクリル酸を含有しない比較例3は、反応が極端に遅くて1週間経過してもシート化を達成することができなかった。アクリル酸を反応開始時から存在させずに、後から添加した比較例4は、伸びが61%で破断したため、100モジュラスの測定ができず、破断強度も非常に低いものであり、また、形成されたフィルムは白色を呈していることが分かった。また、比較例4ではウレタン重合触媒を使用したものであり、環境問題の観点から好ましくないものであった。
【0082】
本発明によれば、高強度および高破断伸びを両立しつつ、曲面における柔軟性および耐水性を有する複合フィルムを提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の複合フィルムは、柔軟性および耐水性が要求されるフィルムに好適に使用することができる。例えば、屋外の天候、溶剤、ほこり、油脂および海洋環境などを含む有害環境にさらされる表面の保護および装飾用のフィルムとして使用することができる。また、自動車のボディーを保護するためのチッピング用のシートとしても好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとを含む複合フィルムであって、前記アクリル系ポリマーが、少なくとも、アクリル酸系モノマー、および、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなり、かつ、前記アクリル酸系モノマーの含有量が前記アクリル成分中、1重量%以上、30重量%以下であり、前記ウレタンポリマーが、ジオール及びジイソシアネートを反応させてなるウレタン成分を用いてなり、NCO/OH(当量比)=1.1〜2.0であり、また、前記複合フィルムはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)可溶分を有することを特徴とする複合フィルム。
【請求項2】
アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとを含む複合フィルムであって、前記アクリル系ポリマーが、少なくとも、アクリル酸系モノマー、および、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなり、かつ、前記アクリル酸系モノマーの含有量が前記アクリル成分中、1重量%以上、30重量%以下であり、前記ウレタンポリマーが、ジオール及びジイソシアネートを含むウレタン成分を用いてなり、NCO/OH(当量比)=1.1〜2.0であり、また、前記複合フィルムはゲル分率が50%以上、99.5%以下であることを特徴とする請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマーが、少なくともアクリル酸系モノマー、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマー、および、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなることを特徴とする請求項1または2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記アクリル成分と前記ウレタン成分との重量比率が10/90〜90/10の範囲内であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記アクリル成分が、アクリル酸系モノマーを1重量%以上、30重量%以下、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを20重量%以上、99重量%以下、および、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーを0重量%以上、50重量%以下の範囲で合計重量が100重量%となるように含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーが、アクリロイルモルホリン及び/又はイソボルニルアクリレートであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項7】
前記ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーが、アクリル酸n−ブチルであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項8】
前記複合フィルムの吸水率が10%以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項9】
前記複合フィルムの100%モジュラスが0.5MPa以上、11.5MPa以下であり、破断伸びが200%以上、1500%以下であり、破断強度が5MPa以上、70MPa以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項10】
前記ウレタン成分が、さらに水酸基含有アクリルモノマーを用いて反応させてなることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の複合フィルム。

【公開番号】特開2009−120663(P2009−120663A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294250(P2007−294250)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】