説明

複合マーカ

【課題】使用するマーカの種類を少なくし、誤認識を低減させること。
【解決手段】少なくとも3つ以上の光学的に識別可能な特徴点を有し、当該特徴点の3次元的配置が既知であるマーカ11と、同一な特徴点を有する上記マーカ11を持つ複合マーカのうち、何れのものであるかを特定できる上記マーカ11の特定情報を記憶する記憶部12Cと、上記記憶部12Cに記憶された上記マーカ11の特定情報を非接触に送信するアンテナ12A及びICチップ12Bとを、一体的に配置した複合マーカ10を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーカを用いて情報呈示を行うシステムで使用する複合マーカに関する。
【背景技術】
【0002】
実世界中の対象物及び/又は既定のマーカに対し、所定の関連情報を呈示する情報呈示装置としては、バーコードリーダが一般的によく知られている。
【0003】
そのうち、対象物及び/又は既定のマーカの空間情報を利用して、情報を呈示する装置がある。例えば、特許文献1には、名刺上に印刷された2次元コードをカメラで読み込み、コンピュータ内のプログラムでIDを解析し、このIDに相当する人物の顔写真を、あたかも名刺上の2次元コードの横にあるかのごとく、コンピュータ上のディスプレイに表示することが開示されている。
【特許文献1】特開2000−82107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された装置は、既定のマーカについて画像入力を行い、その空間定位情報を解析し表記されたIDを認識することで、所定の関連情報を出力する情報呈示装置であるが、マーカと所定の情報とは1対1で対応している。従って、10種類の情報を呈示したい場合は、10種類のマーカを準備する必要があった。
【0005】
しかしながら、極めて多数のマーカが設定され、しかも処理する側の装置がPDA等の携帯型端末である場合には、高精度の画像処理は期待できないために、マーカを誤認識する可能性が高くなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、使用するマーカの種類を少なくし、誤認識を低減させることが可能な複合マーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複合マーカの一態様は、
少なくとも3つ以上の光学的に識別可能な特徴点を有し、当該特徴点の3次元的配置が既知である光学的マーカ部と、
同一な特徴点を有する上記光学的マーカ部を持つ複合マーカのうち、何れのものであるかを特定できる上記光学的マーカ部の特定情報を記憶する記憶手段と、
上記記憶手段に記憶された上記光学的マーカ部の特定情報を非接触に送信する送信部と、
を具備し、
上記光学的マーカ部、上記記憶手段及び上記送信部が一体的に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、見かけ上、使用するマーカの種類を少なくし、誤認識を低減させることが可能な複合マーカを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1(A)は本発明の第1実施形態に係る複合マーカ情報取得装置の適用された情報呈示装置の構成を示す図である。また、図1(B)は本発明の第1実施形態に係る複合マーカの表面の正面図であり、図1(C)はその複合マーカの裏面の正面図である。
【0011】
本実施形態において、複合マーカ10は、図1(B)及び(C)に示すように、情報を符号化したシンボルであるマーカ11と、非接触IDタグ12とが一体になったものである。
【0012】
ここで、マーカ11は、複合マーカ10の表面に配されたもので、予め定められた形状の枠部11Aと、その内部に記された文字を含む記号や意匠11Bとから構成される。即ち、少なくとも3つ以上の光学的に識別可能な特徴点を有し、当該特徴点の3次元的配置が既知であるとともに、当該特徴点を含むように撮影した画像から当該画像を撮影したカメラとの相対的位置姿勢が特定可能なものとなっている。
【0013】
また、非接触IDタグ12は、マーカ裏面(或いは内部)に設けられたもので、本実施形態では、電力受信とデータ送受信を兼ねるアンテナ12Aと、電子素子を内蔵したICチップ12Bと、情報を記憶する記憶部12Cとで構成されたRFIDタグとして提供されている。なお、ICチップ12Bと記憶部12Cは、別体構成としたが、1チップのICにより構成しても構わない。また、ICチップ12B及び記憶部12Cが矩形であり、ICチップ12Bにアンテナ12Aとしてダイポールアンテナが配置されている構成を示したが、それらの形状は適宜変更可能である。
【0014】
非接触IDタグ12としてのRFIDタグは、送受信回路を含むICチップ12Bで、搬送波に乗せて送信される外部からのデータをアンテナ12Aを介して受信し、その搬送波により必要な電力を発生させ、その電力を用いて、記憶部12Cに対してデータ読み出し及び書き込みと、アンテナ12Aを介しての送信を行い、外部に情報を送信するようになっている。
【0015】
上記記憶部12Cは、予め、上記マーカ11に関連する情報又はそのマーカ11を有する複合マーカ10が固定された物品に関連する情報を記憶するものである。なお、本発明において、「固定」とは、物品に直接固定されるものに限らず、間接的な固定、つまり物品に対して所定の位置姿勢関係が変化することなく配置されることも含むものとする。上記記憶部12Cに記憶される情報としては、本実施形態では、当該複合マーカ10の設置されるエリア情報が書き込まれている。例えば、5階建ての建物(全領域)に複合マーカ10を設置する場合は、その全領域を複数に区分した区分領域(例えばフロア毎)とし、エリア情報として区分領域毎に異なる情報つまり何階であるかを示す情報が書き込まれる。この場合、同一の記号や意匠11B、例えば「50」を持つマーカが各区分領域にあっても構わない。
【0016】
このような複合マーカ10を使用する情報呈示装置20は、図1(A)に示すように、画像入力部21、マーカ検出部22、RFID読取部23、位置姿勢検出部24、マーカ情報格納部25、関連情報生成部26、関連情報格納部27、重畳画像生成部28、及び表示部29から構成されている。ここで、該情報呈示装置20は、カメラ付PDAやカメラ付携帯電話機等の携帯型端末として提供されるものである。この場合、全ての構成をその携帯型端末内に設けても良いが、一部を通信によりアクセス可能なサーバ上に配置しても構わない。但し、携帯型端末は、少なくとも、画像入力部21とRFID読取部23と表示部29とを備えることが必要である。
【0017】
ここで、画像入力部21は、所定の撮影範囲を有するカメラにより、対象物(物品)に直接又は間接的に固定された複合マーカ10を撮影するもので、その撮影した画像をマーカ検出部22に入力する。マーカ検出部22は、画像入力部21より入力された画像内から複合マーカ10のマーカ11を検出し、その検出結果をRFID読取部23と位置姿勢検出部24に供給するものである。
【0018】
RFID読取部23は、上記マーカ検出部22よりマーカ検出の検出結果を受けて、上記複合マーカ10のRFIDタグである非接触IDタグ12から情報を読み出すために、搬送波にデータ読み出しの指令を乗せて送信し、非接触IDタグ12から読み出した情報を位置姿勢検出部24に供給するものである。
【0019】
即ち、本実施形態では、画像入力部21のカメラの撮影範囲内に情報取得範囲(非接触IDタグ12から情報を受信可能な範囲)が存在する場合にのみ、RFID読取部23による情報の読み出しを行うことで、情報呈示装置のバッテリの消耗を抑えるものである。ここで、情報取得範囲は、カメラの撮影範囲内にその一部でも存在すれば良いが、撮影範囲が情報取得範囲を全て含んだ方がより確実に受信できるため、本実施形態では、上記マーカ11を検出することで、カメラの所定の撮影範囲内に上記マーカ11が入ったときに、即ち、マーカ11に対して所定の位置姿勢になったと推定されたときに、RFID読取部23による情報の読み出しを開始させるようにしている。なお、この所定の位置姿勢は、概ね上記マーカ11に対して正対した時の位置姿勢、つまりは、上記非接触IDタグ12のアンテナ12Aに対して正対した時の位置姿勢である。
【0020】
位置姿勢検出部24は、上記RFID読取部23からの非接触IDタグ12から読み出した情報と上記マーカ検出部22からのマーカ情報とを用いて、マーカ情報格納部25に格納されている情報から対応するマーカを同定し、画像入力部21のカメラの位置及び姿勢を検出して、その検出結果を関連情報生成部26に供給するものである。なお、マーカ情報格納部25には、マーカのテンプレート画像やマーカの属するエリア情報、マーカの配置されている位置姿勢情報等のマーカに関する情報が格納されている。
【0021】
関連情報生成部26は、上記位置姿勢検出部24で検出された画像入力部21のカメラの位置姿勢に応じて、関連情報格納部27から予め設定された情報を抽出して関連情報を生成し、重畳画像生成部28に供給するものである。ここで、関連情報格納部27には、モデル空間上に配置されたモデルの位置姿勢情報や形状情報、属性情報等の関連情報が格納されている。
【0022】
重畳画像生成部28は、上記画像入力部21からの画像と上記関連情報生成部26で生成した関連情報とを重畳し、表示部29に供給するものである。表示部29は、この重畳画像生成部28で生成された重畳画像を表示する。
【0023】
図2(A)は、上記のような構成の情報呈示装置20の動作フローチャートである。
【0024】
まず、画像入力部21のカメラにより、図2(B)に示すように複合マーカ10が固定された物品30を撮影し、その画像をマーカ検出部22に入力してマーカ11を検出する(ステップS1)。このマーカ検出部22においては、まず、画像内から複合マーカ10の表面に配されマーカ11の予め定められた形状、本実施形態では四角枠である枠部11Aを検出する(四角枠の検出は、公知の画像処理手法であるので、説明は省略する)。次に、その検出した枠部11A(四角枠)の四隅の画像内での座標を検出し、四角枠の内部を抽出してアフィン変換を行う。そして、アフィン変換後の画像とマーカ情報格納部25に予め登録してあるマーカのテンプレート画像とのパターンマッチングを行い、マーカ11の同定(この場合、記号や意匠11Bが「50」のマーカであることを同定する。しかし、まだエリア情報が未入手のため、どのエリアの「50」のマーカであるのかまでは、特定できていない)を行う。もし、マーカのテンプレート画像と一致しない画像であれば、マーカとして検出せずに(ステップS2)、上記ステップS1に戻る。
【0025】
マーカ11が検出されると、RFID読取部23により非接触IDタグ12からエリア情報を読み出す(ステップS3)。これは、RFID読取部23が搬送波にデータ読み出しの指令を乗せて送信することにより行われる。即ち、非接触IDタグ12においては、アンテナ12Aで受信した搬送波により必要な電力を発生させ、ICチップ12Bはその電力を用いて記憶部12C内の情報を読み出して、アンテナ12Aにより送信を行う。RFID読取部23は、この非接触IDタグ12から送信されてきた情報を受信し、その受信した情報がエリア情報かどうかを判定する(ステップS4)。判定の結果、エリア情報を検出できなかった場合は、上記ステップS3に戻って、再度、非接触IDタグ12から情報の読み出しを行う。これに対して、エリア情報(例えば、「エリア1」)を検出したら、次のステップを実行する。
【0026】
次に、位置姿勢検出部24では、上記マーカ検出部22によって検出されたマーカ情報(「50」のマーカ)と上記RFID読取部23で検出したエリア情報(「エリア1」)とから、上記画像入力部21のカメラで撮影した複合マーカ10を同定(「エリア1」の「50」のマーカ)する(ステップS5)。
【0027】
こうしてマーカが同定されると、マーカ情報格納部25から対応するマーカの空間定位情報(マーカの配置されている位置姿勢情報)を入手できるので、位置姿勢検出部24では、画像内でのマーカ11の四隅の位置から画像入力部21のカメラの位置姿勢を検出することが可能になる(ステップS6)。そして、関連情報生成部26では、この位置姿勢検出部24で検出したカメラの位置姿勢に応じて、関連情報格納部27から予め設定された情報を抽出して関連情報を生成する(ステップS7)。
【0028】
ここで、例えば「エリア1」の「50」のマーカに関しては、関連情報格納部27には、図2(C)に示すように、対応する物品30の3次元モデル27Aと、そのモデル空間で複合マーカ10の下に配されたアノテーション情報(「高温注意」)27Bとが、関連情報として格納されている。
【0029】
従って、重畳画像生成部28は、上記画像入力部21からの画像と上記関連情報生成部26で生成した関連情報とを重畳し、図2(D)に示すように、表示部29の表示画面29Aに重畳画像を表示する(ステップS8)。
【0030】
以上のようにして、複合マーカ10のエリア情報とマーカ情報とが検出され、カメラの位置姿勢が検出されると、表示画面29A上には重畳画像が表示されるものである。
【0031】
[第2実施形態]
図3は本発明の第2実施形態に係る複合マーカ情報取得装置の適用された情報呈示装置20の構成を示す図である。これは、非接触IDタグ12としてのRFIDタグにエリアIDを記憶した場合の構成である。
【0032】
即ち、非接触IDタグ12の記憶部12Cに、上記第1実施形態のようなエリア情報そのものを記憶するのではなく、本実施形態では、エリアに対応するIDが記憶されている。このような場合には、情報呈示装置にエリア情報格納部40を設けておき、RFID読取部23において、エリアIDに対応するエリア情報を抽出する。
【0033】
なお、非接触IDタグ12には、ユニークなIDを記憶してエリア情報格納部40にテーブルを持っても良いし、マーカの存在する空間定位情報(緯度経度等)を記憶しても、もちろん構わない。
【0034】
図4(A)は、本実施形態の情報呈示装置20の動作フローチャートである。
【0035】
即ち、上記第1実施形態と同様に、画像入力部21のカメラにより複合マーカ10が固定された物品30を撮影し、その画像をマーカ検出部22に入力してマーカ11を検出する(ステップS1)。
【0036】
そして、マーカが検出されると(ステップS2)、本実施形態では、RFID読取部23は、非接触IDタグ12からID情報を読み出す(ステップS11)。これは、RFID読取部23が搬送波にデータ読み出しの指令を乗せて送信することにより行われる。即ち、非接触IDタグ12においては、アンテナ12Aで受信した搬送波により必要な電力を発生させ、ICチップ12Bはその電力を用いて記憶部12C内の情報を読み出して、アンテナ12Aにより送信を行う。RFID読取部23は、この非接触IDタグ12から送信されてきた情報を受信し、その受信した情報がID情報(エリアID)かどうかを判定する(ステップS12)。判定の結果、ID情報を検出できなかった場合は、上記ステップS11に戻って、再度、非接触IDタグ12から情報の読み出しを行う。これに対して、ID情報を検出した場合には、RFID読取部23は、そのID情報に対応するエリア情報をエリア情報格納部40から抽出することで、エリアを同定し、エリア情報を位置姿勢検出部24に与える(ステップS13)。
【0037】
その後は、上記第1実施形態と同様に、位置姿勢検出部24で、マーカ情報とエリア情報とから、上記画像入力部21のカメラで撮影した複合マーカ10を同定し(ステップS5)、位置姿勢検出部24で、画像入力部21のカメラの位置姿勢を検出して(ステップS6)、関連情報生成部26で、そのカメラの位置姿勢に対応する関連情報を生成する(ステップS7)。そして、重畳画像生成部28で、上記画像入力部21からの画像とその生成した関連情報とを重畳して、表示部29の表示画面29Aに重畳画像を表示する(ステップS8)。
【0038】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態は、上記第1実施形態で説明したような構成の複合マーカ10と情報呈示装置を用いてマーカ11を検出し、非接触IDタグ12としてのRFIDタグからID情報を検出し、その検出したID情報によってマーカを同定するものである。
【0039】
即ち、上記第1実施形態では、複合マーカ10におけるマーカ11の記号や意匠11Bは、「50」や「51」のように複数種類存在し、それによってマーカ情報を得て、そのマーカ情報と非接触IDタグ12から読み出したID情報とに基づいてマーカを同定していたが、本実施形態では、どのエリアのどの複合マーカ10もそのマーカ11の記号や意匠11Bは1種類(例えば「50」のみ)とし、各複合マーカ10の非接触IDタグ12の記憶部12Cに、当該複合マーカ10を同定するためのユニークなID情報を記憶しておくようにしているものである。
【0040】
図4(B)は、そのような複合マーカ10とした場合の複合マーカ情報取得装置の適用された情報呈示装置20の動作フローチャートである。
【0041】
即ち、上記第1実施形態と同様に、画像入力部21のカメラにより複合マーカ10が固定された物品30を撮影し、その画像をマーカ検出部22に入力してマーカ11を検出する(ステップS1)。
【0042】
そして、マーカが検出されると(ステップS2)、本実施形態では、RFID読取部23は、非接触IDタグ12からID情報を読み出す(ステップS11)。これは、RFID読取部23が搬送波にデータ読み出しの指令を乗せて送信することにより行われる。即ち、非接触IDタグ12においては、アンテナ12Aで受信した搬送波により必要な電力を発生させ、ICチップ12Bはその電力を用いて記憶部12C内の情報を読み出して、アンテナ12Aにより送信を行う。RFID読取部23は、この非接触IDタグ12から送信されてきた情報を受信し、その受信した情報がID情報(エリアID)かどうかを判定する(ステップS12)。判定の結果、ID情報を検出できなかった場合は、上記ステップS11に戻って、再度、非接触IDタグ12から情報の読み出しを行う。
【0043】
これに対して、ID情報を検出した場合には、位置姿勢検出部24で、その読み出されたID情報から、上記画像入力部21のカメラで撮影した複合マーカ10を同定する(ステップS21)。
【0044】
その後は、上記第1実施形態と同様に、その位置姿勢検出部24で更に、画像入力部21のカメラの位置姿勢を検出して(ステップS6)、関連情報生成部26で、そのカメラの位置姿勢に対応する関連情報を生成する(ステップS7)。そして、重畳画像生成部28で、上記画像入力部21からの画像とその生成した関連情報とを重畳して、表示部29の表示画面29Aに重畳画像を表示する(ステップS8)。
【0045】
なお、ステップS21における上記位置姿勢検出部24でのID情報からの複合マーカ10の同定は、上記ID情報を、既知情報に基づいて配置領域を特定できるIDとし、その既知情報をマーカ情報格納部25に登録しておくことで、容易に実施することができる。例えば、上記ID情報としては、実世界座標系における位置(緯度、経度、高度)を含むものとすれば良い。
【0046】
[第4実施形態]
図5(A)は本発明の第4実施形態に係る複合マーカ10の表面の正面図であり、図5(B)はその複合マーカ10の裏面の正面図である。
【0047】
本実施形態に係る複合マーカ10は、非接触IDタグ12であるRFIDタグのアンテナ12Aの位置を上方、例えばマーカ11の枠部11Aよりも外側に対応する位置にオフセットしたものである。
【0048】
前述の第1乃至第3実施形態に係る複合マーカ10では、図1(C)に示すようにその複合マーカ10の中心部にアンテナ12Aが設置されていたが、物品に複合マーカ10を固定する際、当該物品全体像を撮像するとした場合に、その撮影範囲の中心になるように物品の中心付近に固定しないと非接触IDタグ12の情報の読み出しが確実に行えないという問題がある。これに対して、本実施形態のようにアンテナ12Aを上方にオフセットすると、本実施形態に係る複合マーカ10を物品の下方に固定しても、その物品の撮影時にアンテナ12Aが撮影範囲の中心になるので、確実に情報の読み出しが行えるようになる。
【0049】
また、場合によっては、特定の者にだけ情報を提示したいことがある。そのような場合には、物品の中央に複合マーカ10を固定し、アンテナ12Aのオフセット位置を特定者にだけ知らせておくことで、それを知らない一般者にはアンテナ12Aを撮影範囲の中心に捉えることができないので、非接触IDタグ12の情報の読み出しが行えないようにすることができる。
【0050】
なお、図では上方にアンテナ12Aをオフセットした場合のみを示しているが、そのオフセットの方向は上方に限定されるものではない。
【0051】
また、マーカ11の検出時に、アンテナ12Aの既知のオフセット位置または方向を示す矢印等のシンボルを、表示部29の表示画面29Aに重畳表示してもよい。この重畳表示された矢印等に応じて、複合マーカ情報取得装置としての情報呈示装置20とアンテナ12Aの相対位置を操作者が調整すれば、情報取得に最適な相対位置を維持できるようになる。すなわち、上記のような矢印等の表示により、非接触IDタグ12の情報取得をするときの複合マーカ情報取得装置(情報呈示装置20)とアンテナ12Aとの相対的位置が、正確な情報取得を期待できる、より適当な位置関係となるように、操作者を案内または誘導することが可能となる。
【0052】
[第5実施形態]
図6(A)は本発明の第5実施形態に係る複合マーカ10の表面の正面図であり、図6(B)はその複合マーカ10の裏面の正面図である。
【0053】
本実施形態は、上記第4実施形態のように非接触IDタグ12であるRFIDタグのアンテナ12Aの位置を上方にオフセットした場合、そのアンテナ12Aの位置を示す線13を、複合マーカ10の表面に配したものである。
【0054】
即ち、上記第4実施形態では、複合マーカ10のアンテナ12Aの位置を予め把握していないと非接触IDタグ12の情報の読み出しが確実にできない恐れがあったが、本実施形態では、アンテナ位置を示す線13が画面中心になるように画像入力部21のカメラを向けることにより、非接触IDタグ12からの情報の読み出しがより確実になる。
【0055】
非接触IDタグ12のアンテナ12Aの位置を下方にオフセットした場合には、図7(A)及び(B)に示すようになる。
【0056】
なお、アンテナの位置を示す表示は、線13に限定されるものではなく、2次元バーコード等の画像であっても構わない。
【0057】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0058】
例えば、情報を符号化したシンボルとして、少なくとも3つ以上の光学的に識別可能な特徴点を有し、当該特徴点の3次元的配置が既知であるとともに、当該特徴点を含むように撮影した画像から当該画像を撮影したカメラとの相対的位置姿勢が特定可能な光学的マーカを例に説明したが、3次元的な位置姿勢が特定できるようなマーカとして機能するものであれば、どのようなものであっても良い。
【0059】
また、非接触IDタグ12はRFIDタグに限定されるものではなく、赤外線等、非接触に情報を送信できるものであれば、どのようなものでも構わない。
【0060】
更に、上記実施形態では、非接触IDタグ12の記憶部12Cに、エリア情報やエリアID、ID情報等を記憶するものとしたが、更に、当該複合マーカ10のマーカ11における記号や意匠11Bの情報も記憶するようにしても良い。例えば、その記号や意匠11Bの相対的配置が特定できる配置情報を記憶すれば、マーカ情報格納部25にマーカの配置されている位置姿勢情を格納しておかなくても、マーカ11の位置姿勢を推定できるようになる。
【0061】
(付記)
前記の具体的実施形態から、以下のような構成の発明を抽出することができる。
【0062】
(1) 少なくとも3つ以上の光学的に識別可能な特徴点を有し、当該特徴点の3次元的配置が既知である光学的マーカ部と、
同一な特徴点を有する上記光学的マーカ部を持つ複合マーカのうち、何れのものであるかを特定できる上記光学的マーカ部の特定情報を記憶する記憶手段と、
上記記憶手段に記憶された上記光学的マーカ部の特定情報を非接触に送信する送信部と、
を具備し、
上記光学的マーカ部、上記記憶手段及び上記送信部が一体的に配置されていることを特徴とする複合マーカ。
【0063】
(対応する実施形態)
この(1)に記載の複合マーカに関する実施形態は、第3乃至第5実施形態が対応する。ここで、それらの実施形態において、複合マーカ10が上記複合マーカに、マーカ11が上記光学的マーカ部に、記憶部12Cが上記記憶手段に、アンテナ12A及びICチップ12Bが上記送信部に、それぞれ対応する。
【0064】
(作用効果)
この(1)に記載の複合マーカは、光学的マーカ部の特定情報を送信するようにしている。
【0065】
従って、この(1)に記載の複合マーカによれば、同一の光学的マーカ部を持つ複合マーカを区別可能になるので、見かけ上、使用するマーカの種類を少なくすることができると共に、誤認識を低減させることが可能なとなる。
【0066】
(2) 上記送信部は、アンテナとICチップとから構成されていることを特徴とする(1)に記載の複合マーカ。
【0067】
(対応する実施形態)
この(2)に記載の複合マーカに関する実施形態は、第3乃至第5実施形態が対応する。
【0068】
(作用効果)
この(2)に記載の複合マーカによれば、必要な回路をICチップとして形成しているので、薄く構成することができる。
【0069】
(3) 上記記憶手段に記憶される特定情報は、実世界座標系における位置を含むことを特徴とする(1)に記載の複合マーカ。
【0070】
(対応する実施形態)
この(3)に記載の複合マーカに関する実施形態は、第3乃至第5実施形態が対応する。
【0071】
(作用効果)
この(3)に記載の複合マーカによれば、実世界座標系における位置を記憶しているので、該複合マーカから情報を取得する装置において、当該複合マーカを特定できると共に、直接的に当該複合マーカの配置を検出できる。
【0072】
(4) 上記記憶手段に記憶される特定情報は、既知情報に基づいて配置領域を特定できるIDを含むことを特徴とする(1)に記載の複合マーカ。
【0073】
(対応する実施形態)
この(4)に記載の複合マーカに関する実施形態は、第3乃至第5実施形態が対応する。
【0074】
(作用効果)
この(4)に記載の複合マーカによれば、該複合マーカから情報を取得する装置において、IDと既知情報により容易に当該複合マーカを特定できると共に、当該複合マーカの配置を検出できる。
【0075】
(5) 上記複合マーカが配置される領域内には、上記光学的マーカ部が同一な複数の複合マーカが配置されることを特徴とする(1)乃至(4)の何れかに記載の複合マーカ。
【0076】
(対応する実施形態)
この(5)に記載の複合マーカに関する実施形態は、第3乃至第5実施形態が対応する。
【0077】
(作用効果)
この(5)に記載の複合マーカによれば、上記特定情報によって光学的マーカ部を特定できるので、同じ特徴点を有する光学的マーカ部を複数使用しても問題とならない。よって、見かけ上のマーカの種類を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る複合マーカ情報取得装置の適用された情報呈示装置の構成を示す図、図1(B)は、本発明の第1実施形態に係る複合マーカの表面の正面図であり、図1(C)は、その複合マーカの裏面の正面図である。
【図2】図2(A)は、第1実施形態における情報呈示装置の動作フローチャートを示す図、図2(B)は実空間に配置された物品を示す図、図2(C)は関連情報格納部に記憶された関連情報を示す図であり、図2(D)は表示例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施形態に係る複合マーカ情報取得装置の適用された情報呈示装置の構成を示す図である。
【図4】図4(A)は、第2実施形態における情報呈示装置の動作フローチャートを示す図であり、図4(B)は、本発明の第3実施形態に係る複合マーカ情報取得装置の適用された情報呈示装置の動作フローチャートを示す図である。
【図5】図5(A)は、本発明の第4実施形態に係る複合マーカの表面の正面図であり、図5(B)は、その複合マーカの裏面の正面図である。
【図6】図6(A)は、本発明の第5実施形態に係る複合マーカの表面の正面図であり、図6(B)は、その複合マーカの裏面の正面図である。
【図7】図7(A)は、第5実施形態に係る複合マーカの変形例の表面の正面図であり、図7(B)は、その変形例の複合マーカの裏面の正面図である。
【符号の説明】
【0079】
10…複合マーカ、 11…マーカ、 11A…枠部、 11B…記号や意匠、 12…非接触IDタグ、 12A…アンテナ、 12B…ICチップ、 12C…記憶部、 13…線、 20…情報呈示装置、 21…画像入力部、 22…マーカ検出部、 23…RFID読取部、 24…位置姿勢検出部、 25…マーカ情報格納部、 26…関連情報生成部、 27…関連情報格納部、 27A…3次元モデル、 27B…アノテーション情報、 28…重畳画像生成部、 29…表示部、 29A…表示画面、 30…物品、 40…エリア情報格納部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つ以上の光学的に識別可能な特徴点を有し、当該特徴点の3次元的配置が既知である光学的マーカ部と、
同一な特徴点を有する上記光学的マーカ部を持つ複合マーカのうち、何れのものであるかを特定できる上記光学的マーカ部の特定情報を記憶する記憶手段と、
上記記憶手段に記憶された上記光学的マーカ部の特定情報を非接触に送信する送信部と、
を具備し、
上記光学的マーカ部、上記記憶手段及び上記送信部が一体的に配置されていることを特徴とする複合マーカ。
【請求項2】
上記送信部は、アンテナとICチップとから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の複合マーカ。
【請求項3】
上記記憶手段に記憶される特定情報は、実世界座標系における位置を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合マーカ。
【請求項4】
上記記憶手段に記憶される特定情報は、既知情報に基づいて配置領域を特定できるIDを含むことを特徴とする請求項1に記載の複合マーカ。
【請求項5】
上記複合マーカが配置される領域内には、上記光学的マーカ部が同一な複数の複合マーカが配置されることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の複合マーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−172299(P2006−172299A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366184(P2004−366184)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】