説明

複合モノフィラメント及びその製造方法

【課題】鞘材となる樹脂に機能性成分を配合し、その機能性である除菌、消臭、抗酸化などの作用を最大限に発現させるように、鞘材表面に露出させた複合モノフィラメント及びその製造方法を提供する。
【解決手段】芯材Xを形成する第1熱可塑性樹脂と、鞘材Yを形成する添加粒子Pを含みかつ前記第1熱可塑性樹脂よりも低融点の第2熱可塑性樹脂とを、共押出成形して未延伸の芯鞘接合型の複合モノフィラメントを形成し、該未延伸の複合モノフィラメントを延伸して、第2熱可塑性樹脂中に配合した添加粒子Pを、前記鞘材Yの表面に露出させた複合モノフィラメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機や空気清浄機のフィルタをはじめとする種々の用途に有用な機能性(消臭性、有機物分解性など)、紡糸性、延伸性、経済性に優れた芯鞘接合型の複合モノフィラメント及びその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、空調機や空気清浄機に組み込むフィルタとして、コスト的に有利でかつ成形性、機械的強度、耐水性、耐薬品性などの特性がすぐれている複合モノフィラメントを用いたフィルタが広く用いられている。
例えば特許文献1には、ポリオレフィン系の第1樹脂と、カテキン類等の機能性成分とセラミックス成分とが配合されたポリオレフィン系の第2樹脂とを、前者が芯成分、後者が鞘成分となるように共押出成形して、芯成分と鞘成分とで構成された芯鞘接合型の複合フィラメントが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−159029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の複合フィラメントは、カテキン類等の機能性成分やセラミックス成分は、鞘成分となる第2樹脂の内部に練り込まれてしまっており、鞘材表面に露出させることができず、カテキン類等の機能性成分の効果向上が求められていた。
そこで、本発明は、鞘材に配合した粗粒物を鞘材の表面に露出させた複合モノフィラメントを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、鞘材となる樹脂に機能性成分を配合し、その機能性である除菌、消臭、抗酸化などの作用を最大限に発現させるように、鞘材表面に露出させた複合モノフィラメント及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の複合モノフィラメントは、芯材Xを形成する第1熱可塑性樹脂(R1)と、鞘材Yを形成する添加粒子(P)を含みかつ前記第1熱可塑性樹脂(R1)よりも低融点の第2熱可塑性樹脂(R2)とを、共押出成形して未延伸の芯鞘接合型の複合モノフィラメントを形成し、該未延伸の複合モノフィラメントを延伸して、第2熱可塑性樹脂(R2)中に配合した添加粒子(P)を、前記鞘材Yの表面に露出させてなることを特徴とする。
(2)本発明の複合モノフィラメントは、前記(1)において、前記添加粒子(P)が、金属粒子(M)及び/又はセラミックス粒子(C)であることを特徴とする。
(3)本発明の複合モノフィラメントは、前記(1)又は(2)において、前記添加粒子(P)が、さらにその表面に微細粒子(P1)が固着していることを特徴とする。
(4)本発明の複合モノフィラメントは、前記(3)において、前記微細粒子(P1)が、白金ナノ粒子であることを特徴とする。
(5)本発明の複合モノフィラメントの製造方法は、芯材Xを形成する第1熱可塑性樹脂(R1)と、鞘材Yを形成する添加粒子(P)を含みかつ前記第1熱可塑性樹脂(R1)よりも低融点の第2熱可塑性樹脂(R2)とを、共押出成形して未延伸の芯鞘接合型の複合モノフィラメントを形成し、該未延伸の複合モノフィラメントを延伸して、第2熱可塑性樹脂(R2)中に配合した添加粒子(P)を、前記鞘材Yの表面に露出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の複合モノフィラメントにあっては、芯材Xにより必要な強度が得られ、鞘材Yにより、消臭性、抗微生物性、抗酸化性などの機能性が得られる。
また、鞘材Yの表面から粗粒物が露出しているので、粗粒物が有する機能性の効果が直接発揮される。
そして、鞘材Yに存在する微細な金属粒子(M)も添加粒子(P)のセラミックス粒子(C)の表面に固着されているので、金属粒子が本来有する消臭性、抗微生物性、抗酸化性などの優れた機能性が最大限に発揮される。
しかも、水と接触したり水洗するような使い方をしても、金属粒子(M)やセラミックス粒子(C)が鞘材Yから容易には脱離しないので、その機能性が長期にわたり持続する。
さらに、セラミックス粒子(C)の存在は、温湿度変化などの環境変化に対する複合モノフィラメントの寸法安定性や耐熱性の向上にも貢献する。
さらにまた、機能性を有する添加粒子は、鞘材Yにのみ配合するだけでよいので、添加粒子の添加量を大きく減ずることができ、経済的にも有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施の形態の複合モノフィラメントの断面図である。
【図2】添加粒子(P)の表面に微細粒子(P1)を固着させた状態を示す説明図である。
【図3】鞘材と芯材とを共押出成形して未延伸の複合モノフィラメントを製造する方法を示す概略説明図である。
【図4】未延伸の複合モノフィラメントを延伸して、添加粒子を鞘材の表面上に露出させた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施の形態の複合モノフィラメントの断面図である。図2は、添加粒子(P)の表面に微細粒子(P1)を固着させた状態を示す説明図である。図3は、鞘材と芯材とを共押出成形して未延伸の複合モノフィラメントを製造する方法を示す概略説明図である。図4は、未延伸の複合モノフィラメントを延伸して、添加粒子を鞘材の表面上に露出させた状態を示す説明図である。
【0009】
〈複合モノフィラメント〉
図1に示すように、本実施形態の複合モノフィラメントは、芯材Xと鞘材Yとで構成された芯鞘接合型の複合フィラメントであり、第2熱可塑性樹脂(R2)中に含まれた添加粒子(P)が、鞘材Yの表面に露出している。芯鞘接合型の複合モノフィラメントは、従来公知の芯鞘型であればよく、同心円芯鞘型、偏心芯鞘型、多心芯鞘型のいずれであってもよい。
【0010】
〈芯材X〉
本発明において、芯材Xは第1熱可塑性樹脂(R1)で形成されており、ガラス転移温度または融点まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂である。この熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、などが挙げられるが、本発明においてはいずれも使用できる。
【0011】
〈鞘材Y〉
鞘材Yは、添加粒子(P)を配合した第2熱可塑性樹脂(R2)で形成されており、第2熱可塑性樹脂(R2)の例としても、上記芯材Xを構成する第1熱可塑性樹脂(R1)と同様のものを用いることができる。
【0012】
芯材Xや鞘材Yを構成するポリエチレンは、エチレンが重合した最も単純な構造をもつ高分子であり、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、があるが、いずれも使用可能である。ポリエチレンは、エチレンのホモポリマーのみならず、エチレンを主体とするプロピレンやブテン−1などのα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
ポリエチレンのメルトインデックス(MI)は、0.1〜100、好ましくは0.2〜80とすることが多い。なお、MIとあるのは、温度190℃、荷重2160g、オリフィス孔径2.092mmの条件で10分間押し出した試料の質量をg数で表わしたものである。
【0013】
芯材Xや鞘材Yを構成するポリプロピレンは、プロピレンを重合させたポリマーであり、プロピレンのホモポリマーのみならず、プロピレンを主体とするエチレン、ブテン−1などのα−オレフィンとの共重合体であってもよい。
ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は0.3〜400、好ましくは0.5〜200とする。
【0014】
ポリプロピレンの代表例は、融点がたとえば150℃以上のプロピレン単独重合体であり、そのような高融点のポリプロピレンを芯材Xとする複合フィラメントは、紡糸性、延伸性、物性(強度、寸法安定性)などの点において特に好ましい。
なお、メルトフローレート(MFR)とは、温度230℃、荷重2160g、オリフィス孔径2.092mmの条件で10分間押し出した試料の質量をg数で表わしたものである。
【0015】
上記の構成の複合モノフィラメントにおいて、鞘材Yとなる第2熱可塑性樹脂(R2)は、芯材Xとなる第1熱可塑性樹脂(R1)よりも低融点の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。例えば5℃以上、より好ましくは30℃以上低い融点の樹脂を用いる。
なお、同じ樹脂で、芯材X及び鞘材Yとする場合は、樹脂の平均分子量を大きくすることで高い融点の芯材Xとすることができる。
【0016】
鞘材Yに配合する添加粒子(P)の種類は、特に限定するものではないが、延伸時の加熱で溶融しないものであればよく、樹脂、金属、ガラス、セラミックス、などの粒子が挙げられる。機能性を有する添加粒子を添加することにより、鞘材Yにその機能を持たせることができる。
【0017】
鞘材Yに配合する金属粒子(M)としては、その素材を特に限定するものではないが、白金、金、銀、銅、ニッケル、ステンレス、などが挙げられ、その金属粒子(M)の有する機能を鞘材Yに持たせることができる。
【0018】
例えば、白金,金、銀などの金属粒子(M)は、光触媒の機能を有するとされるが、高価であるので、その平均粒径が1〜5nm程度の微細粒子(P1)を、セラミックス粒子(C)の表面に固着させて用いることができる。
また、セラミックス粒子(C)の表面に固着させることにより、鞘材Yに配合した白金,金、銀などの金属粒子(M)を消耗または消失させることなく、長期に渡る除菌作用、消臭作用、抗酸化作用などの触媒効果をもたらすことが可能となる。
【0019】
鞘材Yに配合するセラミックス粒子(C)としては、種々のセラミックスが用いることができ、また上記セラミックス粒子(C)に、シリカゲルなどの無機質材料を添加したものも用いることもできる。
【0020】
シリカゲルとしては、含水ケイ酸ゲルを経て得られるシリカゲルが好適に用いられる。このときには、ケイ酸塩の水溶液を酸と混合することによりpHを調整して含水ゲルとなし、さらにこの含水ゲルを水洗してイオンを除去してから乾燥することによりシリカゲルを得る。
【0021】
その他、鞘材Yに配合するセラミックス粒子(C)として無機質材料があるが、無機質材料としては、リン酸、硫酸、硝酸、炭酸などの無機酸の多価金属塩、アルカリ金属やアルカリ土(類)金属のフッ化物やケイフッ化物、コロイダルシリカ、アルコール等の有機溶媒を媒体とするオルガノシリカゾルを用いることができる。
また、各種の粘土鉱物、酸化物、水酸化物、複合酸化物、窒化物、炭化物、ケイ化物、ホウ化物、ゼオライト、クリストバライト、ケイ藻土、ケイ酸の多価金属塩なども用いることができる。
粘土鉱物としては、カオリン、ろう石、セリサイト、ベントナイトなどが挙げられる。
酸化物としては、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、マグネシアなどが挙げられる。
水酸化物としては、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、マンガンの水酸化物などが挙げられる。
複合酸化物としてはミョウバンが挙げられ、窒化物としては窒化ケイ素、窒化ホウ素などが挙げられ、炭化物としては炭化ケイ素、炭化ホウ素などが挙げられる。
ケイ酸の多価金属塩としては、アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、マンガン塩などが挙げられる。
【0022】
先にも述べたように、鞘材Yは、添加粒子(P)が配合された第2熱可塑性樹脂(R2)で形成される。添加粒子(P)を複数種類配合する場合、第2熱可塑性樹脂(R2)にそれぞれ配合することもできるが、予め複数種類の添加粒子(P)を混合した複合体粒子を製造し、その複合体粒子を第2熱可塑性樹脂(R2)に配合することが、複数添加粒子の均一分散の観点から好ましい。
【0023】
鞘材Yにおける、第2熱可塑性樹脂(R2)と添加粒子(P)の割合は、第2熱可塑性樹脂(R2)100質量部に対して、添加粒子(P)の割合が1〜50質量部とすることが望ましい。好ましくは2〜30質量部である。
添加粒子(P)が、金属粒子(M)とセラミックス粒子(C)及びその他の添加粒子とからなる場合の割合は、それらの合計量を上記範囲とすることが望ましい。
添加粒子の配合量が余りに少ないときは、所望の消臭性、抗微生物性、生理活性、抗酸化性などの機能性が充分には発揮されず、一方、後者の配合量を余りに多くしても、機能性は一定以上に上がらないばかりでなく、複合モノフィラメントの生産性が低下したり、強度や風合が低下したりするというマイナス面が目立つようになる。
【0024】
添加粒子(P)が金属粒子(M)とセラミックス粒子(C)とで構成される場合は、金属粒子(M)とセラミックス粒子(C)との間の関係において、セラミックス粒子(C)100質量部に対し金属粒子(M)を0.1〜10質量部とすることが望ましい。好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.2〜1質量部である。
金属粒子(M)の割合が余りに少ないときには所望の消臭性、抗微生物性、生理活性、抗酸化性などの機能性が不足し、金属粒子(M)の割合が余りに多いときには、セラミックス粒子(C)に対するバランスを崩し、コスト的にも不利となる。
なお、図2に示すように、金属粒子(M)として、微細粒子を用いるときは、微細粒子である金属粒子と大きな粒子であるセラミックス粒子とを混合し、例えば加熱焼結して、セラミックス粒子の表面に微細粒子を固着させたものを予め製造しておくことで、微細粒子の金属粒子(M)を鞘材Yである第2熱可塑性樹脂(R2)の中に埋もれさせずに、鞘材Yの表面上に露出させることができる。
【0025】
〈芯材Xと鞘材Yとの割合〉
複合モノフィラメントにおける芯材Xと鞘材Yとの割合は、質量比で、芯材X:鞘材Y=30:70〜80:20、好ましくは、35:65〜75:25である。鞘材Yの割合が少ないと、添加粒子(P)の割合が過小となるので所期の機能性が充分には奏されず、添加粒子(P)の保持ができなくなるからである。一方、鞘材Yの割合が多いと、延伸後において添加粒子(P)が鞘材Yの中に埋もれて鞘材Yの表面に露出されなくなるからである。
【0026】
〈複合モノフィラメントの製造法〉
図3に示すように、本実施形態の複合モノフィラメントは、第1熱可塑性樹脂(R1)と、添加粒子(P)が配合された第2熱可塑性樹脂(R2)とを、第1熱可塑性樹脂(R1)が芯材X、添加粒子(P)が配合された第2熱可塑性樹脂(R2)が鞘材Yとなるように、それぞれの溶融温度以上の温度で共押出成形することにより製造することができる。共押出成形は、2台の押出機を用い、複合ダイFから同心円の線状に下方へ吐出することにより達成できる。
なお第2熱可塑性樹脂(R2)側は、予め内添する材料の濃度の濃いマスターバッチを作製しておいて、そのマスターバッチを第2熱可塑性樹脂(R2)と混合して成形に供することもできる。
【0027】
第1熱可塑性樹脂(R1)や第2熱可塑性樹脂(R2)には、必要により、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、艶消し剤、流動性改善剤、可塑剤、難燃剤などの助剤を添加しておくこともできる。特に、複数種類の添加粒子(P)を配合した第2熱可塑性樹脂(R2)には、酸化防止剤等の安定剤と共に、金属石鹸をはじめとする凝集防止性ないし分散性の向上に有効な成形助剤を併用配合して、添加粒子(P)の均一分散を確保することが好ましい。
また、金属粒子(M)を配合する場合には、その担持性を向上させるため、銅塩、鉄塩、カルシウム塩、チタン塩、アルミニウム塩、銀塩、スズ塩、亜鉛塩、クロム塩、コバルト塩などの金属イオン源を適当量共存させておくこともできる。
【0028】
図4に示すように、共押出成形により製造された未延伸の複合モノフィラメントを、その後の延伸処理により引き延ばし鞘Yの肉厚を薄くすることにより、鞘Y中に配合された添加粒子(P)を、鞘Yの表面上に露出させる。このとき、鞘Yを構成する第2熱可塑性樹脂(R2)の融点を、芯材Xを構成する第1熱可塑性樹脂(R1)の融点よりも低くすると、鞘Yがより引き延ばされて鞘Yの肉厚が薄くなり、鞘Y中に配合されている添加粒子(P)が鞘Yの表面上に露出されるのである。なお、延伸後の鞘Yの肉厚は特に規定するものではないが、添加粒子(P)の平均粒径よりも小さくすることが望ましい。
【0029】
なお、延伸倍率に特に限定はないものの、倍率が余りに小さいときは、第2熱可塑性樹脂(R2)に配合した添加粒子(P)を鞘材Yの表面に露出させる割合が不足するので、延伸倍率は5倍以上とすることが望ましい。一方、延伸倍率を余りに大きくすると、芯鞘接合界面において層間剥離を起こしやすくなるなどのトラブルを生ずることがあるので、延伸倍率の上限は一般には10倍程度までとすることが好ましい。また、延伸温度は、鞘Yを構成する第2熱可塑性樹脂(R2)の軟化温度以上で行うことが望ましい。
【0030】
〈応用、用途〉
本実施形態の複合モノフィラメントは、極細デニールから極太デニールまで任意の太さとすることができる。また、複合モノフィラメントを用いて、ネット、ロープ、ベルト、糸、パイル、綿(ワタ)状物、織布、不織布、編布などの二次製品を得ることもできる。
さらに、この複合モノフィラメントやその二次製品を、天然繊維(木綿、麻、絹、羊毛等)、合成樹脂(ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等)系の繊維やモノフィラメント、半合成繊維(アセテート等)、再生繊維(レーヨン等)、無機繊維(金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維等)や、モノフィラメントあるいはそれらの二次製品と組み合わせて用いることもできる。
【0031】
本実施形態の複合モノフィラメントまたはその二次製品の用途の例として、フィルタ(空調機、空気清浄機、真空掃除機等のフィルタ)、内装材(壁用シート、床材等)、敷物材(マット、カーペット等)、自動車内装材(シートクロス、天井材、床材)、履物材料、産業資材、衣料材料、寝具、衛生材料、医療用品、日用品、台所用品、トイレタリー用品、包装材料などが挙げられる。
【0032】
また、本実施形態の複合モノフィラメントに、光触媒として有効な酸化チタンや金属粒子を配合し、それらを鞘材Yの表面に露出させることにより、極めて効率のよい光触媒機能を有する素材とすることができる。
【実施例】
【0033】
次に、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。
【0034】
<実施例1>
芯材Xとなる第1熱可塑性樹脂(R1)として、融点が163℃でMFRが3.1のポリプロピレン(PP)を用意した。鞘材Yとなる第2熱可塑性樹脂(R2)として、融点が128℃でMFRが17.3のポリプロピレン(PP)を用意した。
第2熱可塑性樹脂(R2)に、金属粒子(M)として、平均粒径1μmの銅粉末130部と、セラミックス粒子(C)として、平均粒径325メッシュアンダーのシリカ粒子400部と、乾式混合した後配合した。
複合ダイを備えた2台の押出機により、鞘材Yについては205℃で、芯材Xについては230℃で共押出成形し、ついで延伸温度230℃で約6倍に延伸することにより、300デニールの複合モノフィラメントを得た。このときの芯材は200デニールであった。
【0035】
<実施例2>
芯材Xとなる第1熱可塑性樹脂(R1)として、融点が163℃でMFRが5.9のポリプロピレン(PP)を用意した。鞘材Yとなる第2熱可塑性樹脂(R2)として、MIが16.1の高密度ポリエチレン(HDPE)を用意した。第2熱可塑性樹脂(R2)に、添加粒子(P)を10質量部配合した。添加粒子は、以下のようにして製造した。すなわち、コロイダルシリカを白金粒子コロイド(平均粒子径5nm程度)と混合したものに、平均粒子径1μm程度のシリカ粒子を加えて混練し、厚み1〜2mm程度の厚みのシートとしたものを約900〜1000℃で焼結し、シリカ粒子の表面に白金粒子を固着させた。
複合モノフィラメントの製造方法については、実施例1と同様にした。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の複合モノフィラメントは、芯材Xにより必要な強度が得られ、鞘材Yにより、消臭性、抗微生物性、抗酸化性などの機能性が得られ、また、鞘材Yの表面から粗粒物が露出しているので、粗粒物が有する機能性の効果が直接発揮され、フィルター、マスク、壁材などに適用でき、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0037】
C セラミックス粒子
F 複合ダイ
M 金属粒子
P 添加粒子
X 芯材
Y 鞘材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材Xを形成する第1熱可塑性樹脂(R1)と、
鞘材Yを形成する添加粒子(P)を含みかつ前記第1熱可塑性樹脂(R1)よりも低融点の第2熱可塑性樹脂(R2)とを、
共押出成形して未延伸の芯鞘接合型の複合モノフィラメントを形成し、
該未延伸の複合モノフィラメントを延伸して、
第2熱可塑性樹脂(R2)中に配合した添加粒子(P)を、
前記鞘材Yの表面に露出させてなることを特徴とする複合モノフィラメント。
【請求項2】
前記添加粒子(P)が、
金属粒子及び/又はセラミックス粒子であることを特徴とする請求項1に記載の複合モノフィラメント。
【請求項3】
前記添加粒子(P)が、
さらにその表面に微細粒子(P1)が固着していることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合モノフィラメント。
【請求項4】
前記微細粒子(P1)が、白金ナノ粒子であることを特徴とする請求項3に記載の複合モノフィラメント。
【請求項5】
芯材Xを形成する第1熱可塑性樹脂(R1)と、
鞘材Yを形成する添加粒子(P)を含みかつ前記第1熱可塑性樹脂(R1)よりも低融点の第2熱可塑性樹脂(R2)とを、
共押出成形して未延伸の芯鞘接合型の複合モノフィラメントを形成し、
該未延伸の複合モノフィラメントを延伸して、
第2熱可塑性樹脂(R2)中に配合した添加粒子(P)を、
前記鞘材Yの表面に露出させることを特徴とする複合モノフィラメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−222732(P2010−222732A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70973(P2009−70973)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(501021678)株式会社セラフト (17)
【Fターム(参考)】