説明

複合体

少なくとも1つの標的タンパク質および前記標的タンパク質に対して結合親和性を有する少なくとも1つの結合分子を含む複合体であって、結合親和性を有する前記分子が、少なくとも1つの水溶性ポリマーに共有結合または非共有結合で結合している複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的タンパク質、結合分子、およびポリマーの複合体に関する。前記複合体の調製法および複合体の使用法も更に開示される。
【背景技術】
【0002】
多くの疾患の根底にある分子生物学的原理の理解が進み、ヒトポリペプチドの向上した組換え発現および送達系が利用可能になったことに主に起因して、タンパク質などのポリペプチドを治療応用に使用することが近年広がっている。ポリペプチド療法は、特に遺伝性の遺伝子欠損のため、特定の天然ポリペプチドが患者に欠乏または欠如する疾患に主として使用されている。
【0003】
例えば、血友病は、特定の血漿タンパク質の欠乏により引き起こされる疾患である。血友病患者は、血液凝固カスケードのタンパク質構成要素の機能障害により引き起こされる出血性の罹患に苦しむ。罹患凝固因子に依存して、2つのタイプの血友病を区別することができる。両方とも、共通して、可溶性フィブリノゲンの不溶性フィブリンクロットへの変換が阻害されている。これらは、主として男性集団が罹患するX染色体連鎖劣性遺伝疾患である。
【0004】
血友病Aは、男性10000人当たり1〜2人が罹患する。血友病Aは、血液凝固カスケードの重要なエレメントであり非常に大型の糖タンパク質(Mw、およそ330kDa(Furie B., Furie B.C., Cell (1988) 53, 505-518))である第VIII因子の欠乏または欠損により引き起こされる。このポリペプチドの配列は、3つの領域、いわゆるA1およびA2ドメインで構成されるN末端領域、中央のBドメイン領域、ならびにA3、C1、およびC2ドメインで構成されるC末端領域に細分化することができる。血液中で、第VIII凝固因子は、不活性前駆物質として存在する。この因子は、安定化担体タンパク質として機能するフォンビルブラント因子(vWF)と強固に非共有結合で結合する。3つの特異的位置(740、372、1689位)におけるトロンビンによる第VIII因子のタンパク質分解切断は、この因子のvWFからの解離を導き、カスケード内で凝血促進機能を放出する。その活性型では、第VIII因子は第IXa因子の補助因子として機能し、それにより第X因子のタンパク質分解活性化を数桁加速させる。
【0005】
血友病Bは、男性25,000人に約1人に起こる。血友病Bは、セリンプロテアーゼである第IX因子(クリスマス因子)の欠乏により特徴付けられる。この415アミノ酸ポリペプチドは、56kDaの糖タンパク質として肝臓で合成される。これが適切な機能を果たすためには、ビタミンKの存在下でしか生じない翻訳後カルボキシル化ステップが必要である。
【0006】
両タイプの出血性疾患の治療は、伝統的に、ヒト血漿由来の第VIII因子または第IX因子の濃縮タンパク質剤の点滴を伴う。この方法は、血友病の効果的な療法であるが、肝炎またはエイズを引き起こすウイルスなどの種々の感染因子または血栓塞栓因子を伝染させるリスクを伴う。或いは、凝固因子を産生するための幾つかの組換えDNA技術が記述されている。この目的のために、野生型第VIII因子および第IX因子の対応するcDNAが単離され、好適な発現ベクターにクローニングされた(欧州特許出願公開第160457号;国際公開第86/01961号、米国特許第4,770,999号、第5,521,070号、および第5,521,070号)。
【0007】
第VIII因子の場合、血液凝固活性を示す複合体を産生するためにサブユニットを組換え発現させることは、当技術分野で公知である(例えば、欧州特許出願公開第150735号、欧州特許出願公開第232112号、欧州特許出願公開第0500734号、国際公開第91/07490号、国際公開第95/13300号、米国特許第5,045,455号、および第5,789,203号から)。更に、高度にグリコシル化されたBドメインをコードする配列を部分的にまたは完全に欠如する短縮型cDNA変種の発現が記述されている(例えば、国際公開第86/06101号、国際公開第87/04187号、国際公開第87/07144号、国際公開第88/00381号、国際公開第94/29471号、欧州特許出願公開第251843号、欧州特許出願公開第253455号、欧州特許出願公開第254076号、米国特許第4,868,112号、および第4,980,456号、欧州特許出願公開第294910号、欧州特許出願公開第265778号、欧州特許出願公開第303540号、ならびに国際公開第91/09122において)。より最近では、活性化プロテインCによる第VIII因子のタンパク質分解性不活化を阻害するために、または治療患者に阻害性抗体の形成をもたらす免疫原性を低減させるために、様々な選択された点突然変異が導入された(例えば、米国特許第5,859,204号、5,422,260号、および第5,451,521号、国際公開第97/49725号、国際公開第99/29848号、ならびにM. L. Liu et al., British J. Haematol. 103: 1051-1060 (1998)を参照)。
【0008】
しかしながら、第VIII因子などのポリペプチド療法には、短い循環半減期、免疫原性、およびタンパク質分解を含む多数の欠点が伴う。例えば、ヒト体内のタンパク質第VIII因子の半減期は約12時間であるが、重症のフォンビルブランド病(vWD)患者では、半減期は約2時間である。最近は、予防的治療が、先進国における血友病患者の最先端治療である。予防的治療では、通常1週当たり2〜4回の点滴が行われる。
【0009】
例えば、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロン、およびモノクローナル抗体など、治療目的に使用される多数の更なるタンパク質が存在する。
【0010】
多くの場合、治療用タンパク質の半減期を増加させて有効性を増加させるあるいは患者に投与される治療用タンパク質の量を低減させることは有用である。これにより、治療コストも低減される。
【0011】
従来技術では、ポリペプチド治療薬の循環半減期の短さに対しては、ポリマーをポリペプチドに共有結合で結合(attach)することによって対処している。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、またはヒドロキシエチルデンプン(HES)を結合(attach)させることにより、幾つかのポリペプチドの半減期がいくらか向上することが示されている。
【0012】
しかしながら、ポリマーの結合(attachment)には多くの問題が観察されている。例えば、ポリマーの結合(attachment)は、薬物活性の減少をもたらし得る。更に、タンパク質にポリマーを結合するために使用されるある種の試薬は、反応性が不十分であり、従って長い反応時間を必要とし、その間にタンパク質の変性および/または不活化が生じる可能性がある。また、結合(attachment)が不完全または不均一である場合、異なる特性を有する化合物の混合集団が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の1つの目的は、従来技術の欠点を克服することであり、特に、点滴頻度(infusion rate)を低減させ、患者の生活の質を増加させるために、ヒトまたは動物循環中のタンパク質の半減期を延長させるための改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの実施形態では、本発明は、ヒトまたは動物の循環中の標的タンパク質の半減期を増加させるための方法に関する。
【0015】
1つの実施形態では、本発明は、少なくとも1つの標的タンパク質および前記標的タンパク質に対して結合親和性を有する少なくとも1つの結合分子を含む複合体であって、結合親和性を有する前記分子が、少なくとも1つの水溶性ポリマーに共有結合または非共有結合で結合している複合体を開示する。
【0016】
驚くべきことに、標的タンパク質を、該タンパク質に強固に結合(associating)可能な結合分子を介してポリマーに非共有結合で結合させることにより、結果として半減期の著しい増加がもたらされることが見出され、患者にとって劇的に有益であることが明らかになった。
【0017】
結合分子が該タンパク質の特異的結合部位に結合(association)するため、結合分子に結合したポリマーは該タンパク質の近傍に位置することとなり、従って該タンパク質の生理学的特性に影響を及ぼす。該ポリマーのサイズおよび物理的特性のため、腎臓による該タンパク質の循環からのクリアランス、および/または例えば特定の細胞への取り込みによる該タンパク質の分解が妨害されると考えられる。
【0018】
場合によっては、形成された複合体の全体サイズは、循環から除去され得る分子の最大サイズを超過していてもよい。特に、ポリマーに結合したタンパク質は、腎臓の膜を通過することができず、従って血流中に残り、尿を介して排泄されることはない。
【0019】
結合分子およびポリマーは、協同して結合体を形成し、標的タンパク質は、前記結合体に非共有結合で結合させられる。好ましくは、結合分子は、前記結合体のポリマーに共有結合で結合させられる。
【0020】
また、結合体は、細胞によるタンパク質の取り込み、および/または分解酵素によるタンパク質の認識および結合を妨害してもよい。特に、結合体は、タンパク質に結合した際に、タンパク質の分解および/またはクリアランスまたは全体的な電荷の変更に関与する特定のタンパク質領域を遮蔽してもよい。例えば、結合体は、(i)タンパク質の細胞への取り込みを促進する受容体または因子、および/または(ii)プロテアーゼ、ユビキチン結合酵素、プロテアソームなどの分解経路に関与するタンパク質、によって認識されるタンパク質の結合領域を遮蔽する。
【0021】
更に、本発明の複合体および方法は、治療に使用されるタンパク質の、循環中での半減期を延長するために、それらタンパク質を化学的に修飾する必要はないという利点も提供する。むしろ、本発明による結合体は、例えばそれらの機能を発揮させるために既存の医薬組成物に組み込むことができる。臨床承認に依存する薬学的応用の場合、このことは、治療用物質が変化しないため従来の結合戦略より有利である。本発明による複合体は、好ましくはex vivoで形成される。
【0022】
従って、第1の態様では、本発明は、少なくとも1つの標的タンパク質および前記標的タンパク質に対して結合親和性を有する少なくとも1つの結合分子を含む複合体であって、結合親和性を有する前記結合分子が、少なくとも1つのポリマーに好ましくは共有結合で結合している複合体を提供する。結合分子およびポリマーは協同して、標的タンパク質の結合部位に結合する結合体を形成する。
【0023】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の複合体に存在する結合体、および複合体を形成するためのその使用を対象とする。
【0024】
第3の態様では、本発明は、第1の態様の複合体を調製するための方法であって、標的タンパク質を結合体と接触させるステップを含む方法を提供する。
【0025】
第4の態様では、本発明は、ヒトまたは動物の循環中の標的タンパク質の半減期を増加させる方法であって、ポリマーと、標的タンパク質に対する結合能を有する結合分子と、を含む結合体に、標的タンパク質を接触させるステップを含む方法を提供する。
【0026】
第5の態様では、本発明は第1の態様の複合体の医薬における使用、および医薬組成物の調製における使用をそれぞれ対象とする。更に、この態様は、第1の態様の複合体を含む医薬組成物をも対象とする。
【0027】
第6の態様では、本発明は、第3の態様の結合体を調製するための方法であって、ポリマーを結合分子に結合させるステップを含む方法を提供する。
【0028】
本発明のこれらの態様の具体的実施形態が、下記および添付の特許請求の範囲において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】血液凝固因子VIIIの3次元構造を示す図であり、低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質(LRP)とヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)との相互作用部位が強調されている。
【図2】第VIII因子とヘパリノイド−HESの1:1結合体との複合体の構造を示す図である。
【図3】共有結合アプタマー−HES結合体(A=アプタマー)を有する標的タンパク質の模式図を示す図である。
【図4】翻訳後修飾された標的タンパク質と模倣分子−HES結合体との結合の模式図を示す図である。
【図5】表面プラズモン共鳴を使用した、HESヘパリン結合体の結合解析を示す図である。
【図6】in vitroで第VIII因子と比較した第VIII因子HES結合体の半減期延長を示す図である。
【図7】in vivoで第VIII因子と比較した第VIII因子HES結合体の半減期延長を示す図である。
【図8】フコイダンに対するヒト第VIII因子および第IX因子の、表面プラズモン共鳴に基づく結合解析を示す図である。
【図9】活性化HES(C1マレイミドHES−点線)、チオールで修飾されたLMWH(実線)、および精製LMWH−HES結合体(破線)のSEC−dRI/UV/MALS測定から得られた屈折率クロマトグラムを示す図である。カラム:Superdex200 10/300 GL;移動相:150mM NaClを有する50mMリン酸緩衝液 pH=6.5(ピーク>40分:塩)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義:
本明細書中において、以下の表現は、好ましくは下記に示されるような意味を有することが一般的に意図される。ただし、それらの表現が使用されている文脈が異なる意味での使用を示唆している場合は、その限りではない。
【0031】
本明細書中において、「含む」という表現は、「本質的に〜からなる」および「〜からなる」という表現をも包含し、具体的に指す。
【0032】
本明細書中において、「複合体」という用語は、特に、複数の化合物間の非共有結合による物理的結合(physical association)を意味する。複合体中の各化合物(ここでは少なくとも標的タンパク質および結合体)は、1つまたは複数の(非共有結合による)分子間力、例えばイオン相互作用、双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、および/または疎水性効果、によって結合(associate)している。
【0033】
「結合体」という用語は、特に、各化合物に由来する特性の少なくとも幾つかが結合体において保持されるように互いに連結している複数の化合物を意味する。連結は、共有結合により達成されてもよくまたは非共有結合により達成されてもよい。好ましくは、結合体の化合物は、共有結合により連結されている。1つの結合体中の種々の化合物は、化合物の原子間の1つまたは複数の共有結合により互いに直接結合していてもよい。或いは、各化合物は、化合物の原子に共有結合で結合しているリンカー分子により互いに結合していてもよい。結合体が2つを超える化合物で構成される場合、例えば、1つの化合物が次の化合物に結合(attach)することでこれら化合物が鎖構造状に連結していてもよく、または幾つかの化合物が各々中央にある1つの化合物に結合(attach)していてもよい。
【0034】
本明細書中において、「タンパク質」という用語は、アミノ酸の分子鎖、または複数のアミノ酸鎖の複合体を指す。タンパク質は、天然アミノ酸ならびに人工アミノ酸のいずれを含有していてもよく、生物由来であっても合成由来であってもよい。タンパク質は、例えばグリコシル化、アミド化、カルボキシル化、および/またはリン酸化によって、天然に修飾されてもよく(翻訳後修飾)または合成的に修飾されていてもよい。タンパク質は、少なくとも2つのアミノ酸を含むが、いなかる特定の長さである必要もない。この用語はいかなるサイズ制限も含まない。本出願では、「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、互換的に使用される。好ましくは、タンパク質は、少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも100個のアミノ酸、および最も好ましくは少なくとも100個のアミノ酸を含む。
【0035】
「核酸」という用語は、一本鎖および二本鎖の核酸およびリボ核酸、ならびにデオキシリボ核酸を包含する。
【0036】
「結合部位」という用語は、特に、その形状、疎水性、および/または(部分的)電荷の結果としての、タンパク質の領域を指す。好ましくは、結合部位は、例えばヘパリンなどの標的分子と非共有結合により天然で結合(associating)可能である。
【0037】
結合部位の具体的例は、ヘパリン、ならびに/またはヘパラン硫酸、ヘパリノイド、および/もしくはそれらの誘導体などの緊密に関連した化合物に結合可能なヘパリン結合部位である。別の例は、一価金属イオン、二価金属イオン、三価金属イオン、および四価金属イオンからなる群から選択される金属イオンに結合可能な金属イオン結合部位である。例示的な金属イオンは、亜鉛、銅、コバルト、カドミウム、および水銀イオンである。更なる例は、RGDペプチド、つまりアミノ酸配列、アルギニン(R)、グリシン(G)、アスパルテート(D)を含有するペプチド、または密接に関連する配列を有するペプチド、および/またはそれらの誘導体に結合可能なRGD結合部位である。更なる例は、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質(saccharolipid)、ポリケチド、ステロール脂質、プレノール脂質(prenol lipid)、および脂肪酸等の脂質に結合可能な脂質結合部位である。
【0038】
本明細書中において、「結合分子」という用語は、タンパク質の結合部位に非共有結合で結合可能な化合物を意味する。好ましくは、結合部位への結合は特異的であり、つまり、それは、タンパク質の天然環境、例えばヒトまたは動物循環中に存在する他のほとんどの分子との相互作用より強力である。好ましい実施形態では、生理学的条件下で、1mM以下、より好ましくは300μM以下、100μM以下、30μM以下、10μM以下、3μM以下、1μM以下、300nM以下、100nM以下、30nM以下、および最も好ましくは10nMまたは1nM以下の解離定数を有する親和性で結合性部分が結合部位に結合する。結合性部分の構造および組成は、それが結合部位に結合することができる限り、いかなる点においても限定されない。好ましくは、結合性部分は、非毒性であり生理学的許容される。例えば、結合性部分は、ペプチド部分、サッカライド部分、核酸部分、脂質部分、もしくはそれらの模倣化合物、またはそれらの組合せであってもよい。結合分子の具体的な例は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、特にヘパリン模倣ペプチドなどのヘパリン様分子、RGDペプチド、金属イオン模倣体、および脂質、それらの誘導体、およびそれらの模倣体である。
【0039】
「ポリマー」という用語は、特に、共有結合で結合したより大型の分子を形成する複数の分子種(「モノマー」)で構成される化合物を指す。ポリマーは、天然であってもよくまたは合成であってもよく、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、または樹状であってもよい。ポリマーは、反応性基などの好適な置換基で更に誘導体化されてもよい。
【0040】
「水溶性ポリマー」という用語は、水に可溶性であるポリマーを指す。マイクロタイタープレートおよびチューブなどを生成するために使用される固体ポリマーとは対照的に、水可溶性ポリマーは、1mg/mlの濃度で、相分離せずに水との溶液を形成する。
【0041】
「ヒドロキシアルキルデンプン」または「HAS」という用語は、少なくとも1つのヒドロキシアルキル基により置換されているデンプン誘導体を指す。デンプンは、好ましくは、ジャガイモデンプンまたはトウモロコシデンプンなどの天然デンプンである。ヒドロキシアルキル基は、好ましくは、グルコース単位のC2、C3、および/またはC6炭素原子で酸素に結合しており、主としてC2およびC6に存在する。導入されたヒドロキシアルキル基の量は、1グルコース分子当たりのヒドロキシアルキル基の平均数として定義されるモル置換度MSとして表すことができる(最大MS=3.0;通常は0.4〜0.7)。結合(attach)したヒドロキシアルキル基は、任意の好適な化学構造を有していてもよいが、好ましくは例えば1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐の低級アルキル基である。好ましくは、ヒドロキシアルキル基は、2〜8個、より好ましくは2〜4個の炭素原子を有する。例えば、ヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、またはヒドロキシブチル基であってもよく、ヒドロキシエチル、特に2−ヒドロキシエチルが最も好ましい。ヒドロキシアルキル基がヒドロキシエチル、好ましくは2−ヒドロキシエチルであるヒドロキシアルキルデンプンは、「ヒドロキシエチルデンプン」または「HES」と呼ばれる。
【0042】
化合物の「誘導体」は、特に、1つまたは複数の化学的部分によって置換されているかおよび/または1つもしくは複数の化学的部分が欠失している前記化合物を指す。誘導体には、天然のプロセス(例えば、タンパク質のリン酸化、核酸のメチル化など)によって得られるもの、ならびに化学合成によって得られるものが包含される。誘導体の例示的な置換基は、ヒドロキシ、カルボキシ、ケト、アルデヒド、アミノ、亜硫酸、硫酸、およびリン酸基などの官能基、またはアルキル、アリール、アルコキシなどその他の基である
【0043】
標的化合物の「模倣体」は、本明細書中において、特に、標的化合物の特性と類似した1つまたは複数の特性を有する化合物を意味する。特に、標的化合物が、タンパク質の特異的結合部位に結合可能である場合、標的化合物(例えば、ヘパリン)の模倣体も、好ましくは同様の親和性で前記結合部位に結合することができる。より好ましくは、結合部位に対する親和性を定義する模倣体の解離定数は、標的化合物の解離定数の1000倍以下、より好ましくは標的化合物の解離定数の500倍以下、100倍以下、50倍以下、20倍以下、10倍以下、5倍以下、2倍以下、1.5倍以下、1.2倍以下であり、最も好ましくは、標的化合物の解離定数と等しいかまたはそれより低い。
【0044】
好ましい実施形態では、模倣体の3次元構造および/または電荷の空間的分布は、少なくとも結合部位への結合に関連する部分またはその一部において、目標化合物の3次元構造および/または電荷の空間的分布と類似している。
【0045】
「リンカー」とは、複数の標的化合物を互いに連結させる化学的部分である。この目的のため、リンカー分子は、それが目標化合物に結合する前には、標的化合物と共有結合を形成可能な官能基を提示している。2つの標的化合物間の連結は、1つのリンカー分子を使用して形成されてもよく、または第2の(または両方の)標的分子と結合させる前に、一連のリンカー分子を互いに結合させてもよい。
【0046】
「循環」という用語は、本明細書中において、特に、ヒトまたは動物の心臓血管系および/またはリンパ系、好ましくは心臓、血液、および血管を含む心臓血管系を指す。
【0047】
化合物の「半減期」は、特に、化合物の量がその初期値の半分に減衰するのに必要な時間を指す。例えば、循環中の化合物の半減期は、循環中の化合物の濃度が、初期濃度(例えば化合物が循環に加えられた時の濃度)の半分に減少するのに必要な時間である。循環中の化合物の半減期は、化合物の腎クリアランス速度、化合物の(酵素性)分解速度、化合物の細胞への取り込み速度などの様々な要因の影響を受ける。
【0048】
「医薬組成物」という用語は、特に、ヒトまたは動物への投与に好適な組成物、つまり薬学的に許容される成分を含有する組成物を指す。好ましくは、医薬組成物は、担体、希釈剤、または、緩衝剤、保存剤、もしくは張性調節剤などの医薬賦形剤と共に、活性化合物またはその塩もしくはそのプロドラッグを含む。
【0049】
化合物の「分子量」という用語は、特に、1モルの前記化合物の重量を指す。化合物が多分散である場合、分子量は、多分散混合物の重量平均分子量を指し、従って混合物に含まれる個々の化合物は、示された重量平均分子量より高いかまたは低い分子量を有していてもよい。
【0050】
本明細書中で言及された特許、特許出願、科学論文、および他の文書は全て、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0051】
本発明は、ヒトまたは動物循環中の標的タンパク質の半減期を、ポリマーに結合させた結合分子を使用して、該ポリマーを該標的タンパク質に非共有結合で結合させることにより増加させることができるという知見に基づく。
【0052】
この点で、本発明は、標的タンパク質と、ポリマー性部分および該標的タンパク質に対して結合能を有する結合性部分を含む結合体とを含み、該標的タンパク質が該結合体に非共有結合で結合している複合体に関する。
【0053】
循環半減期を増加させる標的タンパク質は、該結合性部分と結合(associating)可能な結合部位を提示している限り、いかなるタンパク質であってもよい。好ましくは、タンパク質は水溶性である。ある実施形態では、タンパク質は、ヒトおよび/または動物において薬理活性を有し、好ましくは、疾患(例えば後に述べるような疾患)の治療に有用である。好ましくは、標的タンパク質は、治療の際に例えば静脈内または動脈内注射により、循環に直接投与される。
【0054】
好ましい実施形態では、標的タンパク質は治療活性を有する。好適な標的タンパク質は、ヘパリン結合部位、RGDペプチド結合部位、RGDモチーフ、金属イオン結合部位、脂質結合部位、および核酸結合部位からなる群から選択される結合部位を含む。
【0055】
好適な標的タンパク質は、第IX因子、第VIII因子(野生型およびBドメイン欠失)、第VII因子/第VIIa因子、トロンビン、抗トロンビン、組織プラスミノーゲン活性化因子、およびフォンビルブラント因子(vWF)などの血液凝固タンパク質、エリトロポイエチンなどの増殖因子、顆粒球刺激因子(G−CSF)、マクロファージCSF(M−CSF)、および顆粒球マクロファージCSF(GM−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF)、インターロイキンなどのサイトカイン、アルファ1−アンチトリプシン(A1AT)、インテグリン、ディスインテグリン(disintegrin)などのプロテアーゼ阻害剤、フィブロネクチンおよびビトロネクチン(vitroncectin)などの細胞外マトリックスタンパク質、マトリックスメタロプロテアーゼおよびADAM/ADAMTSタンパク質などのメタロプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、アポリポタンパク質、輸送タンパク質、ホルモン、阻害または制御作用性タンパク質、ならびにそれらの誘導体および変異体から選択される。
【0056】
幾つかの実施形態では、標的タンパク質は、10kDa以上の、好ましくは30kDa以上の、および最も好ましくは50kDa以上の分子量を有する。更に、タンパク質は、1000kDa以下の、好ましくは500kDa以下、最も好ましくは200kDa以下の分子量を有していてもよい。
【0057】
ヘパリン結合部位を含む好適な標的タンパク質は、例えば、抗トロンビン、トロンビン、フォンビルブラント因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、第VIII因子、第IX因子、ビトロネクチン、プロテインCインヒビター、組織因子経路インヒビター、血小板第4因子、ヒスチジンに富む糖タンパク質、トロンボスポンジン、ウロキナーゼ、フィブロネクチン、線維芽細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、リパーゼ、アポリポタンパク質B、アポリポタンパク質Eである。
【0058】
本発明に好適な結合部位の例は、ヘパリン結合部位、RGDペプチド結合部位、RGDモチーフ、Src相同性2(SH2)ドメイン、Src相同性3(SH3)ドメイン、金属イオン結合部位、脂質結合部位、および核酸結合部位である。好ましい実施形態では、タンパク質は、図1に示されている血液凝固因子VIIIの結合部位などのヘパリン結合部位を含む。
【0059】
RGD結合部位を含む標的タンパク質には、例えばインテグリンが包含される。RGDモチーフ含有標的タンパク質の例は、ディスインテグリン、ならびにフィブロネクチンおよびビトロネクチンなどの細胞外マトリックスタンパク質である。
【0060】
金属イオン結合部位を含む標的タンパク質には、例えば、マトリックスメタロプロテアーゼおよびADAM/ADAMTSタンパク質などのメタロプロテアーゼ;およびメタロチオネイン(metallotheonein)が包含される。
【0061】
脂質結合部位を含む標的タンパク質には、例えば、アポリポタンパク質が包含される。
【0062】
好ましい実施形態では、標的タンパク質は、標的タンパク質の分解および/またはクリアランスに少なくとも部分的に寄与する結合性部分に対する結合部位を含む。
【0063】
結合体の結合性部分は、循環中のその半減期が増加される標的タンパク質に応じて選択されなければならない。好ましくは、結合性部分は、標的タンパク質に対して選択的に結合する。通常、標的タンパク質および結合体の複合体は、結合性部分に結合可能な他のタンパク質の非存在下でin vitroで形成される。
【0064】
標的タンパク質に対する結合性部分の強力な親和性および特異性は、複合体が特定の期間無傷のまま存在する(つまり投与の際に結合(associate)する)ことを確実にするために好ましい。これは、半減期の延長を達成するために重要である。2つの化合物の相互作用の結合強度は、通常、その解離定数Kdによって表される。解離定数Kdは、平衡定数であり、結合化合物に対する未結合化合物の比率、例えばタンパク質−結合体複合体に対する遊離標的タンパク質および遊離結合体の濃度を記述する。生体系における典型的な範囲は、マイクロモル〜ピコモルである。例えば、生理学的な塩濃度下では、タンパク質(つまり、ヘパリン結合タンパク質)に対するヘパリン結合のKd値は、低〜高ナノモルの範囲にある。例えば、Olson et al., 1981 J. Biol. Chem., 256, 11073-11079では、抗トロンビンIIIに対するヘパリンの結合について、7.2+/−1.9×10−8Mの解離平衡定数が決定されており、これは、タンパク質−ヘパリノイド相互作用が高親和性であることを実証している。
【0065】
従って、標的タンパク質−結合性部分相互作用、および同様に標的タンパク質−結合体相互作用の解離定数Kdは、好ましくは、マイクロモルまたはそれ未満の範囲にある。好ましくは、前記解離定数は、100μM以下、より好ましくは100nM以下である。
【0066】
結合分子は、ペプチド部分、サッカライド部分、核酸部分、脂質部分その他の有機化合物などの任意の化学的性質のものでよい。
【0067】
1つの実施形態では、結合分子は、標的タンパク質の天然リガンド、または標的タンパク質に結合可能なリガンドの一部を含む。しかしながら、結合分子は、標的タンパク質の天然リガンドを含まなくてもよい。1つの実施形態では、結合分子は、標的タンパク質の天然リガンドの模倣体を含む。そのような模倣体は、いかなる化学的性質であってもよく、好ましくは、天然および/または人工アミノ酸を含むペプチド模倣体、天然および/または人工モノサッカライドを含むサッカライド模倣体、通常のリン酸ジエステル結合または人工的結合により結合させた天然および/または人工ヌクレオチドまたはペプチド核酸を含む核酸模倣体または有機化合物模倣体である。
【0068】
従って、標的タンパク質がヘパリン結合部位を含む場合、結合分子は、ヘパリン部分、ヘパラン硫酸部分、またはフコイダン、硫酸化フカン、もしくはヘパリノイドのような、つまり高度に酸性の、例えば高度に硫酸化された多糖類、もしくはそれらの模倣体などのヘパリン様部分でもよい。ヘパリンは、エノキサパリン(クレキサン;Mw=4,2kDa)または完全合成ペンタサッカリドフォンダパリヌクス(アリクストラ;1726.77g/mol)などの、約8000Da未満の重量平均分子量を有する低分子ヘパリン(LMWH)でもよい。好ましくは、ヘパリン、ヘパラン硫酸、またはヘパリノイドは、平均して、ペンタサッカリドなどの3〜20個のモノサッカリド単位、より好ましくは5〜15個のモノサッカリド単位で構成される。
【0069】
好ましくは、ヘパリン様分子は、ヘパリン模倣ペプチドなどの、標的タンパク質のヘパリン結合部位に結合するペプチドである。従って、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の模倣体は、好ましくはGluまたはAspのような負電荷アミノ酸、硫酸化アミノ酸などの負電荷基で修飾されたアミノ酸、特に硫酸化チロシン、およびリン酸化アミノ酸、特にリン酸化チロシン、セリン、もしくはトレオニン、および/または側鎖に酸性部分を有する非天然アミノ酸を含むペプチドでもよい。好ましくは、ヘパリン模倣ペプチドは、硫酸化チロシンなどの1つまたは複数の硫酸化アミノ酸を含む。1つの実施形態では、模倣ペプチドは、アミノ酸モチーフX−Y(SO)−X−Y(SO)を含み、式中、Y(SO)は、硫酸化チロシンであり、Xは、負電荷アミノ酸、セリン、アラニン、またはグリシンであり、Xはアスパルテート、アラニンであるかまたは存在しない。例示的な模倣ペプチドは、以下のアミノ酸モチーフを含む。
− SY(SO)DY(SO)、
− SY(SO)DY(SO)SY(SO)DY(SO)または
− Y(SO)Y(SO)GGY(SO)DY(SO)。
【0070】
更に、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の模倣体は、スラミンまたはその誘導体などの化学的な化合物、スルホン化ポリマー、アミノ酸側鎖を有するポリマー、モノサッカリドまたはジサッカリド側鎖を有するポリマーなどの有機ポリマーまたは硫酸化サッカライド、特に硫酸化ペンタサッカライドでもよい。
【0071】
ヘパリンの好適な模倣体は、例えば、H. H. A. M. Hassan, Mini-Reviews in Medicinal Chemistry 7:1206-1235 (2007)、S. H. Kim and K. L. Kiick, Peptides 28:2125-2136 (2007)、およびH. D. Maynard and J.A. Hubbell, Acta Biomateriala 1:451-459 (2005)に記載されており、これら文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
標的タンパク質がRGD結合部位を含む場合、結合性部分は、RGDモチーフを含む天然または合成ペプチドでもよい。好適な配列は、ディスインテグリンおよび細胞外マトリックスタンパク質、例えばフィブロネクチン、ビトロネクチンなどのインテグリン結合タンパク質に見出すことができる。
【0073】
標的タンパク質がRGDモチーフを含む場合、結合性部分は、例えば、幾つかのインテグリン、またはRGDモチーフに特異的に結合する合成化合物、例えば国際公開第90/03983号または国際公開第97/08203号に記載されているような環状ペプチドに見出されるようなRGD結合タンパク質ドメインなどの、RGD結合ペプチドでもよい。
【0074】
標的タンパク質がSH2ドメインを含む場合、結合性部分は、好ましくはチロシン残基、より好ましくはリン酸化チロシン残基を含むSH2結合ペプチド、またはSH2結合ペプチドの模倣体でもよい。
【0075】
標的タンパク質がSH3ドメインを含む場合、結合性部分は、好ましくはプロリン残基を含むSH3結合ペプチド、またはSH3結合ペプチドの模倣体でもよい。好ましくは、SH3結合ペプチドは、Pがプロリン、Xが任意のアミノ酸、好ましくは脂肪族アミノ酸であるアミノ酸モチーフP−X−X−PまたはRがアルギニン、Kがリジン、およびXが任意のアミノ酸であるアミノ酸モチーフR−X−X−Kを含む。
【0076】
標的タンパク質が金属イオン結合部位を含む場合、結合分子は、アミン、カルボン酸、またはチオールなどの金属錯体の配位子でもよい。
【0077】
標的タンパク質が脂質結合部位を含む場合、結合性部分は、リン脂質または脂肪酸などの脂質でもよい。
【0078】
標的タンパク質が核酸結合部位を含む場合、結合性部分は、一本鎖または二本鎖のリボ核酸またはデオキシリボ核酸などの天然または合成核酸、またはペプチド核酸などのその模倣体でもよい。核酸結合部位が配列特異的である場合、結合性部分は、好ましくは、結合モチーフの配列全体と約80%、85%、90%、95%、または98%の配列同一性を有する配列などの、必要な配列または密接に関連する配列を有する核酸である。
【0079】
1つの実施形態によると、結合分子は、抗体、またはその可変領域もしくは結合性部分を含む抗体の一部ではない。更なる実施形態によると、標的タンパク質は、抗体、またはその可変領域もしくは結合性部分を含む抗体の一部ではない。更に、1つの実施形態によると、結合分子も標的タンパク質も、抗体、またはその可変領域もしくは結合性部分を含む抗体の一部ではない。
【0080】
好ましい実施形態では、標的タンパク質は、第VIII因子または第IX因子などのヘパリン結合部位を有するタンパク質であり、結合性部分は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヘパリノイド、またはそれらの模倣体である。
【0081】
標的タンパク質の機能に対する結合分子の影響を最小限に抑えるために、結合性部分は、好ましくは可能な限り小さくあるべきである。従って、結合性部分は、好ましくは50kDa以下、より好ましくは10kDa以下、更により好ましくは5kDa以下の分子量を有する。更に、結合分子は、100Da以上、例えば500Da以上の分子量を有していてもよい。
【0082】
標的タンパク質の半減期の増加は、主として結合体の結合に起因する。従って、結合体は、標的タンパク質に結合すると、好ましくは、ヒトまたは動物体内の循環中の標的タンパク質の半減期を増加させる。例えば、結合体は、標的タンパク質に結合すると、標的タンパク質の循環からのクリアランスまたは標的タンパク質の分解を妨害することができてもよく、ならびに/または細胞による標的タンパク質の取り込み、および/もしくは分解酵素による標的タンパク質の認識および結合に関与する標的タンパク質の1つまたは複数の領域を遮蔽することができてもよい。
【0083】
ポリマーは、少なくとも1つの天然または合成の直鎖、分岐、または樹状ポリマーを包含し、好ましくは水および体液に可溶性であり、より好ましくは親水性である。好ましい実施形態では、ポリマー部分は、生物学的に不活性であり、および/または薬学的に許容される
【0084】
ポリマーは、所望の目的に好適な任意のサイズであり得る。これを考慮すると、ポリマーは、好ましくは、5kDa以上、より好ましくは10kDa以上の分子量を有する。上限としては、ポリマーは、1000kDa以下の、より好ましくは300kDa以下、および最も好ましくは200kDa以下の分子量を有する。
【0085】
特定の実施形態では、ポリマーは、多糖類、ポリペプチド、核酸、ポリエーテル、ポリエステル、およびポリオレフィンからなる群から選択されるポリマーを含む。好ましくは、ポリマー部分は、以下からなる群から選択されるポリマーを含む。ポリエチレングリコール(PEG)、PEGホモポリマー、mPEG、ポリプロピレングリコールホモポリマー、プロピレングリコールを有するエチレングリコールのコポリマーを含み、前記ホモポリマーおよびコポリマーが、置換されていないかまたは1つの末端が例えばアシル基で置換されているポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリグリセリンまたはポリシアル酸、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)およびそのコポリマー、ポリグルタミン酸、炭水化物、セルロース、およびメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、特にヒドロキシエチルデンプン(HES)およびデキストリン、ならびにそれらの誘導体などのデンプン、硫酸デキストラン(dextransulfat)、カルボキシメチルデキストラン、架橋デキストラン、およびカルボキシメチルデキストリンなどのデキストランおよびデキストラン誘導体、キトサン、ポリビニルアルコール、およびポリビニルエチルエーテル、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrollidon)、アルファ,ベータ−ポリ[(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド、ポリオキシエチル化ポリオール。
【0086】
特定の実施形態では、ポリマーは、少なくとも5kDa、および好ましくは最大1000kDa、より好ましくは8〜500kDa、および更により好ましくは10〜300ka、および100〜300kDaの平均分子量(Mw)を有するヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはヒドロキシエチルデンプンを含む。ポリマーは、1グルコース単位当たり約0.4〜約1.3、好ましくは0.4〜0.9または0.4〜0.7のヒドロキシアルキル(ヒドロキシエチル)によるモル置換度を有していてもよい。
【0087】
ポリマーは、結合性部分に直接結合させてもよい。ポリマー部分および/または結合性部分が、適切な結合基を有していない場合、それらが他方の分子上の少なくとも1つの反応性基と反応して結合体を形成することができるように、1つまたは複数のリンカーを使用してポリマーおよび/または結合分子を適切に修飾することができる。この目的のためには、当技術分野で公知の任意の好適な結合戦略を使用することができる。好適なリンカー、ポリマー部分、および結合方法は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2007/101698号およびOrlando, Michele、学位論文、Modification of proteins and low molecular weight substances with hydroxyethyl starch (HES)、Justus-Liebig-Universitat、ギーセン、ドイツ、2003年にも詳細に記載されている。好ましくは、結合は特異的であり、その結果結合分子および/またはポリマーの1つまたは規定数の反応性基のみが結合に使用される。ポリマー、結合分子、および所望により用いてもよい1つまたは複数のリンカー、を相互に結合させるには、任意の好適な反応性基を使用することができる。
【0088】
従って、結合分子またはポリマーがペプチドを含む場合、結合反応は、アルファ鎖アミノ基もしくはカルボキシ基を、または好ましくはペプチドに一度だけ生じるアミノ酸の側鎖反応性基を特異的に対象とすることができる。好適な側鎖反応性基の例は、システインのチオール基、リジン、アルギニン、またはヒスチジンのアミノ基、アスパラギン酸またはグルタミン酸のカルボキシ基、アスパルテートまたはグルタメートのアミド基、およびセリン、トレオニン、またはチロシン(thyrosine)のヒドロキシ基である。しかしながら、人工アミノ酸により導入された反応性基も、結合に使用することができる。
【0089】
結合分子またはポリマーがペプチドを含む場合、もう一方の部分に存在するかまたは導入された以下の反応性基を結合に使用することができる。
− ペプチドのアミノ基と反応するアシル化基、例えば酸無水物基、N−アシルイミダゾール基、アジド基、N−カルボキシ無水物基、ジケテン基、ジアルキルピロカルボン酸基、イミドエステル基、カルボジイミド活性化カルボキシル基。上記の基は全て、例えばタンパク質のアミノ基と反応して、アシルまたは類似の結合を伴う共有結合を形成することが知られている。
− ハロ−カルボキシル基、マレイミド基、活性化ビニル基、エチレンイミン基、ハロゲン化アリール基、2−ヒドロキシ−5−ニトロ−ベンジルブロミド基などの、ペプチドのスルフヒドリル(メルカプト)基、チオメチル基、イミダゾ基、またはアミノ基と反応するアルキル化基、およびペプチドのアミノ基と反応し、還元剤と共に用いられる脂肪族アルデヒド基およびケトン基。
− ジアゾカルボキシレート基、ならびにカルボジイミドおよびアミン基の組み合わせ、などの、ペプチドのカルボキシル基と反応するエステルおよびアミド形成基。
− ヨウ素などの酸化剤の存在下でスルフヒドリル基と反応する5、5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)基、オルト−ピリジルジスルフィド基、およびアルキルメルカプタン基などの、ペプチドのスルフヒドリル基と反応するジスルフィド形成基。
− シクロヘキサンジオン基などのジカルボニル基、およびペプチドのグアニジン部分と反応する他の1,2−ジケトン基。
− ペプチドのフェノール基と反応するジアゾ基。
− ペプチドのアミノ基と反応する、臭化シアンと多糖類との反応に由来する反応性基。
【0090】
結合反応を実施するのに好適なアミノ酸が、ペプチドを含む結合性部分/ポリマー部分にない場合、ペプチドにそれぞれのアミノ酸を、好ましくはそのアミノ終末端またはカルボキシ終末端に導入することができる。
【0091】
結合性部分および/またはポリマー部分がサッカライドを含む場合、結合反応は、サッカライドの還元末端のアルデヒド/ヘミアセタール基またはケト/ヘミケタール基をそれぞれ特異的に対象とすることができる。好適な結合戦略は、例えば、国際公開第2004/024776号A1に記載されている。
【0092】
例えば、還元末端のアルデヒド(aldhyde)/ヘミアセタール基を、他方の部分に存在するかまたは導入された第一級アミノ基による還元的アミノ化に供してもよい。この反応は、好ましくは、水素化ホウ素(例えばシアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム)または有機ホウ素複合体などの還元剤の存在下で実施される。或いは、アルデヒド/ヘミアセタール基を、ヨウ素、臭素、または好適な金属イオンなどの酸化剤を使用した選択的酸化または電気化学的酸化に供してもよく、その結果としてエステル、ラクトン、またはアミドなどのカルボキシ基または活性化カルボキシ基がもたらされる。その後、(活性化)カルボキシ基を、例えば以下のものなどの活性化剤の存在下でアミノ基と反応させてもよい。N−ヒドロキシサクシニミド、N−ヒドロキシフタルイミド、チオフェノール、p−ニトロフェノール、o,p−ジニトロフェノール、トリクロロフェノール、トリフルオロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(HOBt)、3−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン(HOOBt)、4−ヒドロキシ−3−ニトロベンゼンスルホン酸(HNSA)、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、3,4−ジヒドロ−4−オキソベンゾトリアジン−3−オール、4−ヒドロキシ−2、5−ジフェニル−3(2H)−チオフェノン−1,1−ジオキシド、3−フェニル−1−(p−ニトロフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン)、[1−ベンゾトリアゾリル−N−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート](BOP)、[1−ベンゾトリアゾリルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、[O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、[O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)、[O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−ビス(ペンタメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート、[O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−ビス(テトラメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート、カルボニルジイミダゾール(CDI)、またはカルボジイミド、例えば、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、またはジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)。
【0093】
結合性部分および/またはポリマー部分が核酸を含む場合、結合は、2’−ヒドロキシ基、3’−ヒドロキシ基、または5’−ヒドロキシ基によって行うことができる。結合性部分が脂肪酸を含む場合、そのカルボキシ基を使用することができる。ポリマー部分が、ポリエステル、ポリエーテル、またはポリオレフィンなどの有機ポリマーを含む場合、もし存在すればポリマーの終端の反応性基、ポリマーの単量体単位の反応性基、または導入された反応性基を、結合に使用することができる。
【0094】
従って、本発明による結合体は、所望によっては、まずポリマー部分および/または結合性部分を化学的に修飾して、他方の部分で利用可能であるかまたは他方の部分に導入された化学基と反応可能な少なくとも1つの化学基をその上に有するポリマー部分および/または結合性部分を生成し、次にポリマー部分および結合性部分を共に反応させて、共有結合で結合したそれらの結合体を形成することによって、製作することができる。或いは、所望によっては修飾されていてもよいポリマー部分または所望によっては修飾されていてもよい結合性部分を、まず(更なる)リンカーに結合させ、次にリンカーを所望によっては修飾されていてもよい他方の部分に結合させてもよい。
【0095】
結合反応の特定の実施形態では、第1のリンカーはポリマー部分に結合させられ、ここで前記第1のリンカーは、ポリマー部分と反応せず、ポリマー部分に存在しない反応性基を保持する。第2のリンカーは結合性部分に結合させられ、ここで前記第2のリンカーは、結合性部分と反応せず、結合性部分に存在しない反応性基を保持する。その後、第3のリンカーが、第1および第2のリンカーに順次または同時に結合させられる。第1および第2のリンカーに第3のリンカーを結合させるのに使用される反応性基は、この目的に好適な任意の反応性基であり得る。更に、第1および第2のリンカーをそれぞれポリマー部分および結合性部分に結合させる間、リンカーの反応性基は保護基により保護されていてもよい。
【0096】
ポリマー部分、結合性部分、および所望により用いてもよい1つまたは複数のリンカーを互いに結合するために使用することができる例示的な反応性基は、C−C二重結合またはC−C三重結合または芳香族C−C結合、ハロゲン化アシル、ハロ、ヒドロキシ、アルデヒド、アミド、アミノ、アミノオキシ、ヒドロキシアミノ、カルボニル、カルボキシ、活性化エステル、シアノ、チオシアノ、イミノ、ニトロ、ニトロソ、ニトリル、ペルオキシ、ホスホ、スルホニル、スルフィニル、チオール、ヒドラジン、およびヒドラジド基である。リンカーを互いに結合させるのに有用な反応性基対は、例えば、アミノ基およびスクシンイミドエステル基、チオール基およびマレイミド基である。
【0097】
結合反応に使用することができる保護基の例は以下の通りである:
− アルコール保護用:アセチル(Ac)、β−メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、メトキシメチルエーテル(MOM)、p−メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラン(THP)、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、およびトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテルなどのシリルエーテル、メチルエーテル、およびエトキシエチルエーテル(EE)。
− アミン保護用:カルボベンジルオキシ(Cbz)、p−メトキシベンジルカルボニル(MozまたはMeOZ)、tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、3,4−ジメトキシベンジル(DMPM)、p−メトキシフェニル(PMP)、トシル(Ts)、およびスルホンアミド(Nosyl&Nps)。
− カルボニル基保護用:アセタール、ケタール、アシラール、およびジチアン;および
− カルボン酸保護用:メチルエステル、ベンジルエステル、tert−ブチルエステル、およびシリルエステル。
【0098】
結合体中の結合分子数およびポリマー数は、適合する限り自由に選択することができる。従って、結合体は、1つだけ、2つ以上、3つ以上、および4つ以上などの1つまたは複数の結合分子を含んでいてもよい。同様に、結合体は、1つだけ、2つ以上、3つ以上、および4つ以上などの1つまたは複数のポリマーを含んでいてもよい。1つの実施形態では、結合体は、1つの結合分子および1つのポリマーを含む。
【0099】
結合分子をポリマーに結合させるためにリンカーが使用される場合、1つのリンカーは、2つの分子を互いに、例えば1つの結合性部分を1つのポリマー部分に結合させることができ、または1つのリンカーは、2つを超える分子を互いに、例えば1つの結合性部分を2つ以上のポリマーに、2つ以上の結合分子を1つのポリマーに、または2つ以上の結合分子を2つ以上のポリマーに結合させることができる。
【0100】
リンカーは、任意の好適な長さであり得るが、できるだけ短いことが好ましい。しかしながら、リンカーは、ポリマー部分が結合性部分および標的タンパク質の相互作用を妨害しないように、十分に長いことが望ましい。分子の結合に好適なリンカーは、従来技術において周知であり、商業的に入手可能でもある。
【0101】
結合体におけるリンカーの形成に好適な分子は、リンカーを結合分子、ポリマーおよび/または別のリンカー分子に結合させるために、2つ以上の官能基(上述のような)を含む。これら官能基は、好ましくは、脂肪族または芳香族炭水化物に由来するものなどの、薬学的に許容される架橋基により結合させられる。リンカーは、ホモ二官能性であってもよく、またはヘテロ二官能性であってもよい。
【0102】
結合体全体は、所望の応用に好適な任意のサイズを有することができる。しかしながら、結合体は、好ましくは5〜1000kDa、好ましくは20〜300kDaの分子量を有する。
【0103】
本発明の複合体は、1つまたは複数の、例えば1、2、3、または4つ以上の標的タンパク質、および1つまたは複数の、例えば1、2、3、または4つ以上の結合体で構成されていてもよい。1つの実施形態では、複合体は、1つの標的タンパク質のみおよび1つの結合体のみを含む。
【0104】
ヒトまたは動物の循環に投与された際の、本発明の複合体中の標的タンパク質の半減期は、好ましくは、その遊離形態(例えば、小型イオンと結合しているに過ぎず、本発明の結合体とは結合していない)で投与された際の半減期と比較して、少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、および最も好ましくは少なくとも10倍増加される。
【0105】
本発明の複合体は、医学に使用することができる。好ましくは、複合体中の標的タンパク質は、特定の疾患の治療または予防に有用な医薬活性を有する。より好ましくは、標的タンパク質は、ヒトまたは動物患者の循環においてその医薬活性を発揮する。好ましくは、治療または予防される疾患は、ヒトまたは動物体内の天然タンパク質の欠損または量の減少または非存在によって引き起こされる。
【0106】
特に、該疾患は、特定のタンパク質の遺伝子における先天性または後天性の欠損によって引き起こされてもよい。そのような疾患の具体的な例は、血友病Aおよび血友病Bである。例えば、標的タンパク質は第VIII因子であってもよく、複合体は血友病Aの治療に使用されてもよく、または標的タンパク質は第IX因子であってもよく、複合体は血友病Bの治療に使用されてもよい。
【0107】
従って、別の態様では、本発明は、本発明の複合体を含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、ヒトまたは動物患者に複合体を投与するのに好適な、任意の薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤を更に含むことができる。これらは、好ましくは非経口的に、特に注射、例えば静脈内または動脈内注射により投与される。
【0108】
好ましくは、医薬組成物は、1pM〜1mMの濃度の本発明の複合体、または1用量当たり1pg〜500mg、好ましくは100ng〜500mg、の量の本発明の複合体を含む。
【0109】
本発明の複合体は、標的タンパク質を結合体と接触させることにより調製することができる。標的タンパク質は、例えば生理学的塩濃度および約6.0〜約8.5の範囲にある生理学的pHを有する好適な溶媒、好ましくは水性溶媒中で結合体と接触させてもよい。しかしながら、溶媒および条件が複合体の形成を阻害しない限り、他の溶媒および条件で標的タンパク質を結合体と結合させてもよい。
【0110】
更なる態様では、本発明は、複合体を形成するために使用される結合体に関する。結合体の特定の実施形態は、本発明の複合体に関するセクションに上述されており、それは上記開示に参照されている。更に、本発明は、本発明の複合体を調製するための、それぞれの結合体の使用に関する。好ましくは、前記複合体はex vivoで調製される。
【0111】
更に、本発明は、ヒトまたは動物の循環中の標的タンパク質の半減期を増加させる方法であって、ポリマー部分と、標的タンパク質に対する結合能を有する結合性部分と、を含む本発明の結合体に、標的タンパク質を接触させるステップを含む方法を提供する。標的タンパク質を結合体と接触させた後、それらは複合体を形成する。複合体は、接触の際に直接形成されてもよく、または例えばヒトまたは動物の循環などの適切な環境へと標的タンパク質および結合体を移す際にのみ形成されてもよい。好ましくは、ヒトまたは動物体内への投与前に、標的タンパク質を結合体と接触させる。特定の実施形態では、本方法は、ヒトまたは動物身体の外部で実施される。
【0112】
標的タンパク質を、10:1〜1:10000、好ましくは1.2:1〜1:100、およびより好ましくは1:1〜1:10のモル比で結合体と接触させる。
【0113】
以下においては、標的タンパク質がヘパリン結合部位を含む好ましい実施形態をより詳細に記述する。
【0114】
止血に関与する多数のタンパク質が、ヘパリンまたはヘパリノイドに結合する。中でも、アンチトロンビン、トロンビン、フォンビルブラント因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、第VIII因子、および第IX因子は、ヘパリンまたはヘパリン様の酸性多糖類に結合する。ヘパリノイドの結合は、タンパク質表面上に発現されるいわゆるヘパリン結合ドメインにより媒介される。ヘパリノイドタンパク質相互作用は比較的親和性が高いため、ヘパリノイドまたは化学的に修飾されたその誘導体による、ヘパリン結合タンパク質の非共有結合による修飾が可能になる。
【0115】
血液凝固第VIII因子の結晶構造に見ることができるように(図1を参照)、S558〜Q565位のヘパラン硫酸プロテオグリカンは、ヒドロキシアルキルデンプンの結合に利用可能である。
【0116】
加えて、R484〜F509位および/またはE1811〜K1818位で第FVIII因子に結合した低密度リポタンパク質受容体関連タンパク(LRP)を、結合の標的とすることができる(図1を参照)。
【0117】
一般的に、生物学的機構の修飾は、異化および/または活性などが、特定の分子間相互作用の増大または阻害を結果としてもたらすように意図されている。その結果として、標的タンパク質の半減期が増加する。
【0118】
結合リガンドは、例えばヘパリンなどの酸性で負電荷の多糖類、または模倣ペプチド、核酸、および/もしくは有機分子などの他の結合物質でもよい。
【0119】
結合分子として、これらの高親和性リガンド(highly affine ligand)をそのまま、または特定の修飾をして使用することができる。
【0120】
結合体を形成するためには、それらを、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS/HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびオリゴ糖などのポリマーに結合させなければならない。
【0121】
酸性多糖類は、ヘパリン、ヘパラン硫酸、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、および例えばフコイダン、硫酸化フカン、またはガラクタンのような、他の酸性好ましくは陰イオン性の炭水化物ポリマーでもよい。
【0122】
「ヘパリノイド」と呼ばれるヘパリン様酸性オリゴ糖は、高度に酸性の、例えば高度に硫酸化された多糖類である。ヘパリノイドは、ほとんどの種に広範に見出され、少なくともヘパラン硫酸は、事実上全ての動物に見出される。
【0123】
ヘパリンは、典型的には、D−グルコサミンおよびD−グルクロン酸またはL−イズロン酸のいずれかでできている二糖の繰り返しで構成される。D−グルコサミン(D-gulcosamin)は、N―アセチル化またはN−硫酸化アミノヘキソースとして存在することができ、C6またはC3で更に硫酸化されていてもよい。ポリサッカライド鎖は、典型的には、3kDa〜40kDaに及ぶ分子量を有する様々な長さであり得、還元末端および非還元末端を有する。還元末端は、多くの化学反応に、つまりタンパク質、炭水化物、および他の反応パートナーに結合させるために使用することができる。ヘパリン、ヘパリン硫酸の構造は、‘Heparin-Binding Proteins’ by H. Edward Conrad, Academic Press, 1998に詳細に記述されている。
【0124】
ヘパリンは、in vivoでの抗凝固用に、および医療用具の表面被覆用に商業的に使用されている。
【0125】
ヘパリンおよびヘパリノイドの顕著な特性は、多数のいわゆるヘパリン結合タンパク質との強力な相互作用である。100個を超えるタンパク質がヘパリノイドに結合することが見出されている。それらの中で、凝固第VIII因子または第IX因子だけでなく、凝固およびフィブリン溶解だけに関連しているわけではない多数の他のタンパク質が、特異的かつ強力にヘパリノイドと結合する。ヘパリン結合タンパク質の最も顕著で典型的な例は、アンチトロンビンである。
【0126】
他のヘパリン結合タンパク質は、例えば、アンチトロンビン、トロンビン、フォンビルブラント因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、第VIII因子、第IX因子、ビトロネクチン、プロテインCインヒビター、組織因子経路インヒビター、血小板第4因子、ヒスチジンリッチ糖タンパク質、トロンボスポンジン、ウロキナーゼ、フィブロネクチン、線維芽細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、リパーゼ、アポリポタンパク質B、およびアポリポタンパク質Eである。
【0127】
それらの中で、凝固およびフィブリン溶解に関連する多数のタンパク質が、特異的かつ強力にヘパリノイド(heparonoid)と結合する。ヘパリン結合タンパク質の最も顕著で典型的な例は、アンチトロンビンである。
【0128】
ヘパリン結合タンパク質は、少なくとも1つのいわゆるヘパリン結合ドメインを示す。ヘパリン結合ドメインの性質および共通の構造的特徴は、例えば、H. E. Conrad, ‘Heparin-Binding Proteins’, Academic Press, 1998により、以前に記述されている。
【0129】
ヘパリン−タンパク質結合の際立った特性は、その比較的高い親和性である。ヘパリノイド−タンパク結合の結合強度は、通常、上述のようにその解離定数Kdによって表される。
【0130】
タンパク質のヘパリン結合部位に非共有結合で結合する人工酸性多糖類を合成することは、リガンド間の、つまり人工酸性多糖類と結合するタンパク質との間の更に高い結合親和性をその結果としてもたらすことができる。
【0131】
従って、ヘパリノイドのような酸性多糖類および特別に合成された人工酸性多糖類は、高親和性、非共有結合でヘパリン結合タンパク質、例えばヒトまたは組換え凝固第VIII因子、ヒトまたは組換え凝固第IX因子、ヒトまたは組換えフォンビルブラント因子、および他の結合タンパク質のような止血に関与するヘパリン結合タンパク質に結合する理想的なリガンドである。
【0132】
ヘパリンおよびヘパラン硫酸は、大量に存在する分子であり、多種多様な異なる結合パートナーと相互作用し、従ってある種の乱交雑的な結合挙動を示す。
【0133】
ヘパリンを他のヘパリノイドに置換することにより、標的タンパク質に対する結合親和性および特異性を誘発および最適化できるであろう。更に、例えば、人工的に合成されたまたは植物由来の陰イオン性多糖類に切り換えることにより、またはヘパリン模倣ペプチドを使用することにより、ウイルスまたはプリオンなどの伝染因子を含有するリスクを低減できるであろう。
【0134】
1つの考え得るヘパリン代替物は、フコイダンまたは硫酸化フカンである。
【0135】
フコイダンは、世界中の沿岸水域に大量に存在する硫酸化植物多糖類(Mwは平均20.000Da)である。それらは、褐藻類(Phyaeophyceae)および海生無脊椎動物に主として見出される。褐藻類に由来するフコイダンは、複雑な高度に分岐した硫酸化多糖類構造を含むが、海生無脊椎動物に由来する硫酸化フカンは、単一の連結タイプのみを含み、規則的な反復オリゴ糖構造だが多様な硫酸化パターンを示すフコースの直鎖ホモポリマーである(Pomin & Mourao, 2008;Berteau & Mulloy, Glycobiology 13, 2003に概説)。フコイダンおよび硫酸化フカンは、グリコサミノグリカンおよび他の硫酸化グルカンの硫酸置換パターンを模倣できることによって多くの生物活性を共有するため(Berteau & Mulloy, 2003)、ヘパリン代替物として示唆されている。それらは、ヘパリンのように、凝固のモジュレーターとして機能することができ(Chargaff et al., 1936)、炎症、細胞増殖および接着、ウイルス感染、ならびに受精などの多くの生物活性に影響を及ぼすことができる(Boisson-Vidal et al., 1995)。フコイダンは、植物由来であるため、ウイルスまたはプリオンなどの感染因子を含有する可能性はより低い。これにより、フコイダンは、半減期延長目的用でヘパリン結合タンパク質と非共有結合で結合するフコイダン−ポリマー結合体のような、ヘパリンの望ましい代替物となる。
【0136】
ヘパリンおよびヘパリノイドに依存せず、前記標的タンパク質に対して高度に特異的で親和性な非共有結合による結合パートナーとして多数の可能な種が存在する。これらの結合種には、特異的結合ペプチド(例えば抗体認識ドメインに由来する配列)もしくは模倣ペプチド、非中和抗体、低分子、またはDNA/RNA断片(例えば、アプタマー)が包含される。
【0137】
アプタマーとは、in vitroセレクション法または同等のSELEX法(指数関数的濃縮によるリガンドの系統進化)(Tuerk. & Gold (1990) Science)の過程を繰り返すことにより、低分子、タンパク質、核酸などの種々の分子標的に結合するように、ならびに細胞、組織、および生物などにさえ結合するように操作された核酸種である(Ellington & Szostak (1990) Nature)。アプタマーは、一般に使用されている生体分子、抗体の分子認識特性に匹敵する分子認識特性、すなわち低ナノモルからピコモル範囲の高特異性および親和性を提供するため、治療応用に有用である。それらの識別認識に加えて、アプタマーは、完全に試験管内で操作することができ、化学合成により容易に生成され、望ましい保管特性を有し、治療応用において免疫原性をほとんどまたは全く誘発しないため、抗体より有利な点を提供する。
【0138】
アプタマーは、標的タンパク質に対する非常に特異的かつ高親和性の結合を示すため、アプタマーは本明細書において、アプタマー−ポリマー結合体内の、標的タンパク質に対する非共有結合による結合パートナーとして示唆される(図3を参照)。アプタマーは、in vitro由来であるため、ウイルスまたはプリオンなどの感染因子を全く含まず、そのため半減期を延長させる手法のための望ましい成分となる。
【0139】
わずかに異なる手法では、半減期延長のための非共有結合による結合パートナーとの特異的相互作用の有望な標的として翻訳後修飾(グリコシル化などのPTM)が注目されている。
【0140】
一例として、本明細書には、グリコシル化FVIII/vWF複合体が挙げられる。FVIII/vWFの脱シアリル化は、例えば、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGP−R;Sodetz et al., JBC 1977 & 1978)による迅速な血漿クリアランスの要因である。これら十分に特徴がわかっているASGP−R相互作用に関する知識(Meier 2005)に基づいて、ASGP−R模倣ペプチドを生成および合成し、短いリンカーを介してポリマー、例えばHES/HAS部分に結合することができるであろう(図4を参照)。その後、この結合体を使用してASGP−R結合部位を遮断し、遮蔽効果または立体障害による受容体媒介性クリアランスを阻害することができ、従って血漿半減期を延長することができるであろう。
【0141】
標的タンパク質と酵素との特異的な非共有結合による相互作用に基づく模倣ペプチドを使用する別の例は、エラスターゼとG−CSFとの相互作用である:
【0142】
エラスターゼは、好中球エラスターゼ(NE)またはヒト好中球エラスターゼ(HNE)としても知られており、G−CSFと特異的に結合する(Hunter et al., 2003)。エラスターゼ結合領域のアミノ酸配列に基づいて、模倣ペプチドを生成および合成し、ポリマーに(例えば短いリンカーを介してHES/HAS部分に)結合させて、G−CSFの半減期を延長することができるであろう。
【0143】
既存のG−CSF(Hill et al., PNAS (90) 1993)のX線構造および幾つかの既知の非中和抗G−CSF抗体のX線構造(Layton et al., JBC (266) 1991)に基づいて、標的とする現象を模倣する模倣ペプチドを、非共有結合によるポリマーの標的タンパク質への結合を行うために生成することができるであろう。この例では標的タンパク質はG−CSFであり、前記非共有結合によるポリマーの標的タンパク質への結合はG−CSF医薬の半減期を延長するために行われる。
【0144】
特定の実施形態では、本発明は、ヘパリン結合部位を有する少なくとも1つのタンパク質、および少なくとも1つのヘパリンまたはヘパリン様分子を含む複合体であって、ヘパリンまたはヘパリン様分子が、ヒドロキシアルキルデンプンに共有結合で結合した複合体に関する。
【0145】
タンパク質は、第VIII因子、アンチトロンビン、トロンビン、フォンビルブラント因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、および第IX因子から選択されてもよい。
【0146】
ヒドロキシアルキルデンプンは、ヒドロキシエチルデンプンであってもよい。ヒドロキシアルキルデンプンの分子量は、例えば100〜300kDの範囲にある。少なくとも1つのヘパリンまたはヘパリン様分子の結合の他、1つのヒドロキシアルキルデンプン分子に少なくとも2つのヘパリン分子またはヘパリン様分子を共有結合で結合させてもよい。
【0147】
更に、本発明は、上述のような複合体を調製するための方法であって、以下のステップを含む方法を提供する。
− 少なくとも1つのヘパリン分子またはヘパリン様分子を、少なくとも1つのヒドロキシアルキルデンプンに結合させて、ヘパリン−ヒドロキシアルキルデンプン結合体を得ること、
− 結合体をヘパリン結合部位を有するタンパク質と共にインキュベートすること。
【0148】
本方法では、ヒドロキシアルキルデンプンは、ヒドロキシエチルデンプンであってもよい。少なくとも1つのヘパリン分子またはヘパリン様分子は、例えばホモ二官能性であってもヘテロ二官能性であってもよい二官能性リンカーを介して、少なくとも1つのHAS分子に結合してもよい。
【0149】
ヘパリンまたはヘパリン様分子、およびヒドロキシアルキルデンプンのうち少なくとも1つは、以下のステップにより修飾されてもよい。
− アルデヒド基を導入するために酸化すること、
− 還元的アミノ化。
【0150】
1つの実施形態では、少なくとも2つのヘパリン分子またはヘパリン様分子を、1つのヒドロキシアルキルデンプン分子に結合させる。
【0151】
本発明はさらに、
ヘパリン−ヒドロキシアルキルデンプンまたはヘパリン様分子−ヒドロキシアルキルデンプン結合体、
上述の複合体を含む医薬組成物、ここで前記タンパク質は第VIII因子であってもよい、および
出血性疾患の治療用薬剤を調製するための上述の複合体の使用、
に関する。
【0152】
1つの実施形態では、複合体は、ヘパリン結合部位を有する少なくとも1つのタンパク質と、ヘパリンまたはヘパリン様分子がヒドロキシアルキルデンプンに共有結合で結合している少なくとも1つのヘパリンまたはヘパリン様分子とを、両方は含まない。
【0153】
1つの実施形態では、複合体を調製するための方法は、以下のステップの両方は含まない。
− 少なくとも1つのヘパリン分子またはヘパリン様分子を、少なくとも1つのヒドロキシアルキルデンプンに結合させて、ヘパリン−ヒドロキシアルキルデンプン結合体を得ること、
− ヘパリン結合部位を有するタンパク質と共に結合体をインキュベートすること。
【0154】
1つの実施形態では、結合体は、ヘパリン−ヒドロキシアルキルデンプン結合体でもヘパリン様分子−ヒドロキシアルキルデンプン結合体でもない。
【実施例】
【0155】
実施例1:合成化学:HES−ヘパリノイド−結合体
組換え第VIII因子のin vivo半減期延長の1つの手法は、第VIII因子の選択的結合部位により非共有結合で結合した巨大分子担体としてのヒドロキシエチルデンプンに基づく。この非共有結合によるヘパリン結合の場合、その誘導体またはその模倣体を、第VIII因子結合分子として使用することができる。HESをこれらヘパリノイドに結合させて、タンパク質表面の一部を覆って保護する大型複合体を形成する。
【0156】
この原理の検証は、表面プラズモン共鳴法による第VIII因子結合の解析、その後ヘパリノイドとヒドロキシエチルデンプンとの共有結合による1:1結合体を使用した広範なin vivo解析により評価した。図2は、ヘパリノイド−HESの1:1結合体と複合体化している第VIII因子の3次元構造を示す。
【0157】
この1:1結合体を得るために、ヘパリンおよびHESを両方とも、選択的結合を可能にした相補的官能基で1箇所のみ化学的に修飾した。どちらの分子も、これら分子にある他の全ての官能基とは化学的に異なるユニークな官能基(ポリサッカライド鎖の還元末端のアルデヒド/セミアセタール基)を正確に1つ有する。従って、開発された合成戦略は、還元末端の誘導体化に基づくものであった。
【0158】
ヒドロキシエチルデンプンを、2つの異なるサイズ画分に分離することができ、第VII因子結合分子として、低分子ヘパリン(LMWH)、例えばエノキサパリンを使用することができる。C1がLMWHで修飾されたC1活性化ヒドロキシエチルデンプンの1:1結合は、遊離チオールとマレイミド官能基のマイケル付加反応に基づく。
【0159】
HES450/0.7の加水分解および分画
【0160】
【化1】

スキーム1:ヒドロキシエチルデンプン
30gのHES450/0.7(450kDaの重量平均分子量、および1グルコース単位当たり0.7モル置換度のヒドロキシエチルを有するヒドロキシエチルデンプン)を300mlの水に溶解し、pHが2.0に達するまで1M塩酸をゆっくりと添加した。その後、溶液を80℃まで加熱し、16時間激しく撹拌した。その後、溶液を50℃未満に冷却し、1M水酸化ナトリウム溶液を添加することによりpHを5〜6にした。部分的に加水分解されたHES450/0.7を、蠕動ポンプおよび異なる分子量カットオフ(例えば、MWCO=100、30、10、および5kDa)を有するPES限外ろ過膜を使用して、連続的な接線流限外ろ過工程により分画した。
【0161】
使用したHES画分:HES25/0.7(Mw=25kDa)およびHES54/0.7(54kDa)
【0162】
C1アミノHESの合成
【0163】
【化2】

スキーム2:ヒドロキシエチルデンプンの還元末端の還元的アミノ化。
200mgのHES25/0.7を12mlの50mMホウ酸緩衝液pH8.2および0.168mlの1,3−ジアミノプロパンに溶解し、50℃で1時間撹拌した。その後、0.126gのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加し、3日間50℃で撹拌した。産物を、1kDa限外ろ過膜による限外ろ過で精製し、その後産物を凍結乾燥した。その結果得られた白色固形物を、室温で保管する。
【0164】
OxHESによるC1アミノHESの合成
(博士号学位論文 Michele Orlando、ギーセン、ドイツ、2003年に基づいて)OxHESを、水酸化ナトリウム中でのヨウ素による酸化によって得た。
【0165】
1gのHES25/0.7を水に溶解し、9.0mlの0.1Nヨウ素溶液を添加し、その後1.4mlの1N NaOH溶液を添加した。溶液を終夜撹拌した。反応産物を、1kDa PES膜による限外ろ過で精製した。最終溶液を、陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR−120 H+)に通し、凍結乾燥した。その結果得られた産物を乾燥させて、残留水をほとんど取り除いた。
【0166】
その結果得られた0.1gのOxHESを1.5mlのDMSOに溶解した。115mgのHOBtおよび36.7mgのDMAPを添加した。次いで、190mgのHATUおよびその後1,3−ジアミノプロパンを添加し、溶液を37℃で1時間撹拌した。190mgのHATUを更に添加し、溶液を37℃で終夜撹拌した。
【0167】
産物を、25mlのアセトン/エタノール1:1を添加することにより沈殿させ、沈殿物をアセトン/エタノール1:1で洗浄した。ペレットを2mlのDMSOに再溶解し、25mlのアセトン/エタノール1:1を添加することにより産物を再沈殿させ、その後更なる洗浄ステップを行った。
【0168】
残った産物を、100mlの水に溶解し、1kDa膜による限外ろ過で更に精製した。その後、産物を凍結乾燥した。
【0169】
C1マレイミドHES(C1MalemideHES)の合成
【0170】
【化3】

スキーム3:ヒドロキシエチルデンプンの元々の還元末端のアミノ基のマレイミド活性化。
500mgのC1アミノHESを、15mlの1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に溶解した。10mlのNMP中に140mgのN−[g−マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステルを溶解した溶液、および85.6μlのN,N−ジイソプロピルエチルアミンを添加した。溶液を90分間撹拌または振とうした。溶液を100mlのアセトン/エタノール1:1に注ぐことにより産物を沈殿させ、−20℃に冷却した。沈殿物を遠心沈降させ、上清をデカントし、ペレットをアセトン/エタノール1:1で更に2回洗浄し、遠心沈降させた。1kDa限外ろ過膜による限外ろ過で産物を精製し、凍結乾燥した。その結果得られた固形産物を、−20℃で保管した。
【0171】
低分子量ヘパリン(LMWH)の化学的修飾
【0172】
【化4】

スキーム4:シスタミンおよび還元剤シアノ水素化ホウ素ナトリウムによる還元末端(C1)の還元的アミノ化。
【0173】
【化5】

スキーム5:還元剤DTTによるC1−シスタミンの還元。
250mgの凍結乾燥LMWHを、1Mの塩化ナトリウムを含有する12mlの0.3Mリン酸緩衝液pH5.0に溶解した。1.34gのシスタミン二塩酸塩を添加し、溶液を40℃で1時間撹拌または振とうした。その後、0.374gのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加し、混合物を3日間40℃で撹拌または振とうした。
【0174】
産物を、HiLoad 26/60 Superdex30調製用カラムで、移動相として100mM NaClを有する50mMリン酸緩衝液pH6.5を使用し、4.4ml/分の流速で、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。1つにまとめられた産物画分を、次のステップで直接使用した。
【0175】
その結果得られた画分に、91.8mgのDL−l,4−ジチオトレイトール(DTT、0.6mmol、10当量)を添加し、溶液を室温で終夜撹拌した。産物を、HiLoad 26/60 Superdex30調製用カラムで、移動相として水を使用し、4.4ml/分の流速で、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。産物画分を1つにまとめて凍結乾燥した。その結果得られた白色固形物を、−20℃で保管した。
【0176】
C1マレイミドHESおよびチオLMWHの結合
【0177】
【化6】

スキーム6:マイケル付加反応によるマレイミド活性化HESとチオール活性化LMWHとの結合。
32.2mgのC1LMWH−システアミンおよび420mgのC1マレイミドHESを、合計14.5mlの100mMリン酸緩衝液pH7.5に溶解し、37℃で終夜混合および振とうした。
【0178】
LMWH−HES結合体を、結合用に50mMのTtisHCl緩衝液pH7.5、溶出用に1MのNaClを有する50mM TrisHCl緩衝液pH 7.5を用いて、流速5ml/分、リニアグラジエントでHiPrep 16/10 Q FFカラム(GE Healthcare社製)で精製した。30mS/cmを超える導電率で溶出した画分を、0.1MのNaClを有する50mMリン酸緩衝液pH6.5および4ml/分の流速を使用して、HiLoad 26/60 Superdex200調製用カラム(GE Healthcare社製)で精製した。移動相として水を使用し、4ml/分の流速で、HiLoad 26/60 Superdex200調製用カラム(Ge Healthcare社製)で、産物を脱塩した。クロマトグラムを図9に示す。その結果得られた産物を更に凍結乾燥し、−20℃で保管した。
【0179】
ヘパリン−HES
実施例1および2は、第VIII凝固因子とHES−ヘパリン結合体との非共有結合による複合体で構成される(図2を参照)。FVIIIは、A2ドメインに明確なヘパリン結合部位を有し、ヘパリンおよびヘパリノイド(低分子量ヘパリン(例えば、クレキサン)またはフコイダンなど)と高親和性で結合することができる。ヘパリンまたはヘパリノイドを、HES部分に短いリンカー領域を介して共有結合で結合させる。FVIIIに対するこのHES−ヘパリン結合体の非共有結合による結合は、遮蔽効果により半減期延長を媒介する。
【0180】
表面プラズモン共鳴結合解析
表面プラズモン共鳴(SPR)結合解析は、Biacore T1OOシステム(Ge Healthcare Europe GmbH社製、フライブルク、ドイツ)を使用して実施した。この検出システムは、表面プラズモン共鳴に基づき、分子の相互作用をリアルタイムでモニターする(Malmquist and Karlsson, 1997;Rich and Myszka, 2003;Piliarek 2009)。
【0181】
結合反応は、表面プラズモン共鳴の変化を引き起こし、この変化を光学的に検出し、レゾナンスユニットで測定する。1000RUは、表面プラズモン共鳴角における0.1°の変化に相当し、平均タンパク質の場合、約1ng/mmの表面濃度変化に相当する(Johnsson et al., 1991)。
【0182】
分析の前に、ヒト組換え血液凝固第VIII因子、ヒトCL rFVIII、およびヒト組換え血液凝固第IX因子、rFIXを、NAP5カラムにロードして10mM NaAc pH5/pH5.5と緩衝液交換し、その後サプライヤーの説明の通りにアミンカップリングキットを使用して、CM5バイオセンサーチップのデキストランマトリックスに固定化した。基準チャネルを、タンパク質の非存在下で活性化およびブロッキングした。
【0183】
アナライトであるHES−ヘパリン結合体とフコイダンの結合(association)を、10mM Hepes、150mM NaCl、および0.005%(容積/容積)のツイーン20(pH7.4)中、25℃、10μl/分の流速で3分間評価した。同じ緩衝液流で15分間解離させた。
【0184】
解離の後、800mMのNaClを1分間インジェクトすることにより、バイオセンサーチップを再生した。ヒトCL rFVIIIおよびヒトrFIX被覆チャネルに対するHES−ヘパリン結合体およびフコイダンの結合を、対照チャネルに対する非特異的結合について補正した。
【0185】
結合定数の決定には、増加系列の各濃度のアナライトを、固定化されたヒト組換え血液凝固第VIII因子にアプライした。結合特性を、Biaevaluationソフトウェアを使用して評価し、カイネティクスタイトレーションデータをフィッティングした。カイネティクスデータ(結合定数[ka]、解離定数[kd])、ならびに親和性データ(解離平衡定数Kd)を、結合データのコンピューターに基づく評価により計算した。
【0186】
rFVIIIに対するHES−ヘパリン結合体の結合解析を、SPR法を使用して実施した。ヒトCL rFVIIIをセンサチップに固定化し、30kDaのHES−ヘパリン結合体の結合および解離を、増加系列の各結合体濃度(14〜227μM)においてSPRでモニターした。図5は、一組の典型的な結合曲線を示しており、全濃度でヒトCL rFVIIIに対するHES−ヘパリン結合体の結合を実証している。結合曲線のソフトウェアに基づく解析により、解離定数Kd 6(±0.6)10−7Mを得て、ヒトCL rFVIIIに対するHES−ヘパリン結合体の強力な結合を明白に実証した。
【0187】
in vitro安定性解析
in vitro安定性解析を実施して、薬物動態解析を人工系でシミュレートし、HES−ヘパリン結合体の結合がFVIII安定性に及ぼす影響を決定した。従って、4IUのヒトCL rFVIIIを、1:2名目モル比で2つの異なるHES結合体(それぞれ、HES(30kDa)結合体およびHES(60kDa)結合体)に混合し、40μL緩衝液に溶解し、1.7mLのFVIII欠乏血漿(Coachrom社製 カタログ番号 FDP08−10、ロット番号D8−22)(体重20gを有する血友病マウスの全血容積を模倣したもの)に添加した。3つの異なる手法(対照としてのヒトCL rFVIII、HES結合体(30kDa)と複合体化したヒトCL rFVIII、HES結合体(60kDa)と複合体化したヒトCL rFVIII)を37℃でインキュベートし、規定の時間間隔の経過後毎に試料を採取し、直ちに−80℃で凍結した。
【0188】
解凍後、試料を、発色アッセイでFVIII活性について分析した(Coachrom Diagnostica GmbH社製、オーダー番号221402;ロット番号72502−PK:6)。この発色アッセイは、FVIII:C活性を連続する2ステップで決定する。活性化FIX(FIXa)、リン脂質、およびカルシウムをFVIII試料に添加することにより、FXがFXaに活性化され、その後、後者は添加したFX−基質を切断して、分光光度法で定量化することができる発色団を産生する。適切なアッセイ条件下では、FXa形成(従って発色団(chromophor)産生)とFVIII濃度とは線形関係にある。
【0189】
FVIII欠乏血漿および37℃でのインキュベーションは、上述のように白血病マウスモデルを模倣する。その後、血漿試料を、発色アッセイ試験を使用してFVIII:C活性について分析した。その結果生じたデータを、シグマプロット計算ソフトウェアを使用して半減期に変換した。HES結合体を有しないヒトCL rFVIIIの相対半減期(%で)をHES結合体(60kDa)と複合体化したヒトCL rFVIIIと直接比較すると、in vitro血漿半減期は1.4倍延長されたことが示された。HES結合体(30kDa)を有する複合体は、1.35倍の半減期延長を示し、非共有結合でFVIIIと結合したHES結合体両方のin vitroでの半減期延長効果を明白に示した(図6を参照)。
【0190】
血友病マウスにおける薬物動態解析
血友病マウスにおける薬物動態学解析を以下のように実施した:
体重が20〜25gの雄雌混合12週齢C57 BL/6 FVIIIノックアウトマウスをこの解析に使用した。
【0191】
以下のFVIII異型を下記のように調製及び試験するものとした:
対照としてのヒトCL rFVIII、60kDaまたは30kDaのHES−ヘパリン結合体と複合体化したヒトCL rFVIII、および陰性対照としての緩衝液。ヒトCL rFVIIIを、1:2名目モル比でHES−ヘパリン結合体と複合体化させ、無菌ろ過し、HES−ヘパリン結合体を有しない対照ヒトCL rFVIII、および陰性対照緩衝液も同様に無菌ろ過した。
【0192】
4IUのFVIIIを含有する40μL(約200IU/kgに相当)を、単回投与として尾静脈から血友病マウスに注射した。注射前、注射後、および投与後規定の間隔で試料を採取した(1サンプリング時および物質当たり5匹のマウスの群で)。FVIII:C活性を、Coachrom Diagnostica GmbH社、ウィーン、オーストリアから市販されている発色アッセイを使用して決定し、これらの結果からFVIIIの薬物動態を計算し、シグマプロット計算ソフトウェア(Systat Software GmbH社製、ドイツ)を使用して、統計的に分析して(t検定を含む)半減時間(T1/2)を得た。
【0193】
以下のFVIII異型を、血友病マウスにおけるそれらの血漿半減期について比較試験した:
対照としてのヒトCL−rFVIII(群1)、60kDaのHES結合体と複合体化したヒトCL rFVIII(群2)、30kDaのHES結合体(と複合体化したヒトCL rFVIII(群3)、および陰性対照としての緩衝液(群4)。概して、1物質当たり25匹の血友病マウスに、1マウス当たり合計40μlの注射容積中4IUのrFVIIIを注射した。注射前、注射後および投与後の規定の間隔において1サンプリング時および物質当たり5匹から試料を採取した(例外:群3では、材料の制約のため、合計19匹のマウスのみを使用した)。
【0194】
試料をFVIII:C活性について試験し、上述のような薬物動態パラメーターに関してデータを分析し、結果を以下の表に要約する。
【0195】
【表1】

【0196】
直接比較すると、HES結合体と複合体化したヒトCL rFVIIIは両方とも、血漿半減期の延長を示す。より小型のHES結合体(30kDa)との複合体形成の場合、血漿半減期は1.6倍延長され、より大型のHES結合体(60kDa)との複合体形成は、血漿半減期の1.7倍増加をもたらした(図7を参照)。
【0197】
これらのデータは、FVIIIに非共有結合で結合させられたHES−ヘパリン結合体の、血友病マウスモデルにおける保護的半減期延長効果を明白に示し、この効果は、より短いHES−ヘパリン結合体(30kDa)より、より大型のHES−ヘパリン結合体(60kDa)でわずかにより顕著である。
【0198】
陰性対照として、血友病マウスに緩衝液を注射したが、予想通りFVIII活性は発色アッセイでは見出されなかった(データ非表示)。
【0199】
フコイダン
ヘパリンの有望な代替物を例示するために、フコイダンを、凝固第VIII因子および凝固第IX因子などのヘパリン結合タンパク質に対する結合性について試験した。SPRに基づく結合実験により、フコイダンは、標的タンパク質に非共有結合で結合するための、半減期延長性HES−ヘパリン結合体のヘパリンを置換することができたことを示す。
【0200】
有望なヘパリン代用物としてのフコイダンを評価するための表面プラズモン共鳴(SPR)に基づく結合解析を、ヘパリン結合タンパク質としてのヒトCL rFVIIIおよびrFIXに対して実施した。図8は、それぞれrFVIII(直線)およびrFIX(破線)に対するフコイダンの結合および解離を示しており、調べられたタンパク質に対するフコイダンの結合を明白に実証し、結果的に有望なヘパリン代用物としてその適合性が確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの標的タンパク質および前記標的タンパク質に対して結合親和性を有する少なくとも1つの結合分子を含む複合体であって、結合親和性を有する前記分子が、少なくとも1つの水溶性ポリマーに共有結合または非共有結合で結合している複合体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの結合分子および前記少なくとも1つの可溶性ポリマーが結合体を形成し、前記結合体が非共有結合で前記標的タンパク質に結合している、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記タンパク質が、第IX因子、第VIII因子(野生型およびBドメイン欠失)、第VII因子/第VIIa因子、トロンビン、アンチトロンビン、組織プラスミノーゲン活性化因子、およびフォンビルブラント因子(vWF)などの(血漿由来または組換え)血液凝固タンパク質、エリスロポエチンなどの増殖因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)などのコロニー刺激因子(CSF)、インターロイキンなどのサイトカイン、アルファ1−アンチトリプシン(A1AT)などのプロテアーゼインヒビター、インテグリン、ディスインテグリン、フィブロネクチンおよびビトロネクチンなどの細胞外マトリックスタンパク質、マトリックスメタロプロテアーゼおよびADAM/ADAMTSタンパク質などのメタロプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、アポリポタンパク質、輸送タンパク質、ホルモン、阻害または制御作用性タンパク質、ならびにそれらの誘導体および変異体から選択される、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
前記少なくとも1つの結合分子は、50kD未満、好ましくは10kD未満の分子量を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項5】
前記結合分子が、RGDペプチドおよびRGD結合ドメインなどのペプチド部分、ヘパリン、ヘパラン硫酸、およびヘパリン様分子などのサッカライド部分、ヘパリン模倣分子、核酸部分、脂肪酸などの脂質部分、それらの誘導体、およびそれらの模倣体からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項6】
前記ヘパリン様分子が、ヘパリン−模倣ペプチドである、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
前記ヘパリン模倣ペプチドが、アミノ酸モチーフX−Y(SO)X−Y(SO)を含み、前記Y(SO)が硫酸化チロシンであり、Xは負電荷アミノ酸、セリン、アラニン、またはグリシンであり、Xはアスパルテート、アラニンであるかまたは存在しない、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記可溶性ポリマーが、ヒドロキシアルキルデンプン(HAS)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、およびデキストランから選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項9】
前記水溶性ポリマーの分子量が、10〜500kD、10〜300kD、20〜200kD、30〜150kD、または100〜300kDの範囲にある、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項10】
前記結合体が、
− 1つのみの結合分子および2つ以上のポリマー、
− 2つ以上の結合分子および1つのみのポリマー、または
− 2つ以上の結合分子および2つ以上のポリマーを含む、請求項2〜9のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体を調製するための方法であって、
− 標的タンパク質に対する結合親和性を有する少なくとも1つの結合分子を、少なくとも1つの水溶性ポリマーに結合させて、結合体を形成するステップと、
− 前記結合体を、前記分子が結合親和性を有する前記標的タンパク質と共にインキュベートするステップとを含む方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの結合分子が、二官能性のリンカーを介して前記水溶性ポリマーに結合している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複合体が、ex−vivoで形成される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
タンパク質に対して結合親和性を有する分子および水溶性ポリマーの結合体。
【請求項15】
ヒトまたは動物の循環中の標的タンパク質の半減期を増加させるための方法であって、前記標的タンパク質を、請求項14に記載の結合体と接触させるステップを含む方法。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体を含む医薬組成物。
【請求項17】
薬剤の調製のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項18】
前記少なくとも1つの標的タンパク質が第IX因子および第VIII因子(野生型およびB−ドメイン欠失)から選択され、前記少なくとも1つの結合分子がヘパリン模倣分子であり、前記少なくとも1つのポリマーがヒドロキシエチルデンプンである、請求項1〜10に記載の複合体。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−519898(P2011−519898A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507919(P2011−507919)
【出願日】平成21年5月6日(2009.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055503
【国際公開番号】WO2009/135888
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(500376704)オクタファルマ・アーゲー (4)
【Fターム(参考)】