説明

複合型電磁継電器

【課題】 小型、小実装面積、高接続信頼性を確保した複合型電磁継電器を提供する。
【解決手段】 電磁石装置と、該電磁石装置の作用により動作し可動接点を有する可動接点ばね部材とをそれぞれに備えた複数の電磁ブロック2,3と、該電磁ブロック2,3の可動接点に個々に対向配置される常開固定接点22,23を有する固定接点部材4と、該固定接点部材4とは反対側で前記可動接点ばね部材に対向配置されるブレーク側部材5,6とを具備した複合型電磁継電器において、ブレーク側部材5とブレーク側部材6を平編銅線7で、抵抗溶接などによって接続する。また、固定接点部材4上の常開固定接点22と常開固定接点23の間に複数のスリット4aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関し、特に、複数の電磁ブロックを一体的に並設して備える複合型電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のワイパー駆動部やいわゆるパワーウインドウ駆動部の直流モータを正逆反転させるためには、少なくとも、2つの電磁継電器が必要である。図2に、2つの電磁継電器を使用した直流モータ制御回路を示す。図2には、電磁継電器26,27を表す点線のように2台が併設されることを示している。
【0003】
以下に、その動作原理を説明する。まず、パワーウインドウを上昇させるためには、パワーウインドウ上昇制御回路部28から指示を出し、電磁継電器26内のコイル26dに励磁電流を流し、可動接点26cを常閉固定接点26bから離れさせ、常開固定接点26aに当接させる。すると、電流がバッテリー30から、常開固定接点26aと可動接点26cを通り、直流モータ34を矢印32方向に流れ、電磁継電器27内の可動接点27cと常閉固定接点27bから、グランド31に流れ、パワーウインドウが上昇し始める。
【0004】
次に、このパワーウインドウの上昇を止めるには、以下の2通りの方法がある。方法1が一般的であるが、方法2を使用する場合が稀にある。
(方法1)
パワーウインドウ上昇制御回路部28からの指示で、電磁継電器26内のコイル26dに流れている励磁電流を止めると、常開固定接点26aに当接していた可動接点26cが常閉固定接点26bに復帰する。すると、直流モータ34へ電流が流れなくなり、パワーウインドウの上昇は停止する。
(方法2)
パワーウインドウ下降制御回路部29から指示を出し、電磁継電器27内のコイル27dに励磁電流を流し、可動接点27cを常閉固定接点27bから離れさせ、常開固定接点27aに当接させる。すると、直流モータ34へ電流が流れなくなり、パワーウインドウの上昇は停止する。
【0005】
また、パワーウインドウ下降制御回路部29からの指示で、電磁継電器27内のコイル27dに励磁電流が流れ、可動接点27cが常閉固定接点27bから離れ、常開固定接点27aに当接する。すると、電流がバッテリー30から、常開固定接点27aと可動接点27cを通り、直流モータ34を矢印33方向に流れ、電磁継電器26内の可動接点26cと常閉固定接点26bから、グランド31に流れ、パワーウインドウが下降する。
【0006】
次に、このパワーウインドウの下降を止めるには、以下の2通りの方法がある。方法3が一般的であるが、方法4を使用する場合が稀にある。
(方法3)
パワーウインドウ下降制御回路部29からの指示で、電磁継電器27内のコイル27dに流れている励磁電流を止めると、常開固定接点27aに当接していた可動接点27cが常閉固定接点27bに復帰する。すると、直流モータ34へ電流が流れなくなり、パワーウインドウの下降は停止する。
(方法4)
パワーウインドウ上昇制御回路部28から指示をだし、電磁継電器26内のコイル26dに励磁電流を流し、可動接点26cを常閉固定接点26bから離れさせ、常開固定接点26aに当接させる。すると、直流モータ34へ電流が流れなくなり、パワーウインドウの下降は停止する。
【0007】
以上が、パワーウインドウ駆動部の直流モータの正逆反転制御方法である。このように、直流モータの正逆反転制御を電磁継電器で行う場合には、少なくとも2つの電磁継電器が必要である。近年は、コスト低減、実装面積の縮小化、利便性の理由により、2つの電磁継電器を1つのケース内に収納した図3の制御回路に示す複合型電磁継電器35や図4の制御回路に示す複合型電磁継電器36を使用するのが主流である。
【0008】
図3には、1つのケースに2つの電磁継電器が収納された複合型電磁継電を使用した直流モータ制御回路を示し、図4には、1つのケースに2つの電磁継電器が収納され、内部結線された複合型電磁継電器を使用した直流モータ制御回路を示す。
【0009】
図3に示す複合型電磁継電器35は、複数の電磁継電器を一つのケース内に単純に収納したもので、各々の電磁継電器の端子が外部に出ており、個々の電磁継電器が独立して使用可能である。図3では、複合型電磁継電器35を示す点線内がケース内の構成を示しており、図2の2台の電磁継電器26,27を表す点線のように2台が併設されることを示している。図4に示す複合型電磁継電器36は、複数の電磁継電器を一つのケース内に収納すると共に、基板上にて結線が必要な回路を電磁継電器内部であらかじめ結線したものである。図4では複合型電磁継電器36を示す点線内がケース内の構成を示している。図4に示す複合型電磁継電器36は用途が特化されるものの、図3に示す複合型電磁継電器35に比べ、外部接続用端子が少なく、基板上の配線も容易であるので、特に車載直流モータ制御用として多く使用されている。本提案は、図4に示すタイプの複合型電磁継電器に関する。
【0010】
このような複合型電磁継電器は、例えば特許文献2〜5に記載されており、これらに開示された複合型電磁継電器は、各電磁ブロックに対して共通化された固定接点部材及び、共通化されたブレーク側部材を用いることにより、内部結線がなされている。また、特許文献1には、二重ケース構造の電磁継電器において、内側のケースの端子と外側のケースの外部端子との間の結線にフレキシブル導電線材を用いることが記載されている。
【0011】
図5は、従来の複合型電磁継電器本体の斜視図である。特許文献2〜5に開示されているような、従来の複合型電磁継電器本体の代表例を図5に示す。図5では、複合型電磁継電器の外部ケースを省いた本体のみを示している。図5に示すように、従来の複合型電磁継電器では、各電磁ブロック2,3に対して、共通化された固定接点部材37と共通化されたブレーク側部材38を用いることにより、内部結線がなされており、単純な構造となっている。なお、本願では、図5に示すように、固定接点(図5では常開固定接点22,23)を有する側の部材を固定接点部材(図5では固定接点部材37)、また、可動接点を挟んで対向する側の部材をブレーク側部材(図5ではブレーク側部材38)と称する。また、ブレーク側部材は、固定接点部材(メーク側部材)に対応するもので、固定接点(図5では常閉固定接点24,25)を有する部材の場合も、固定接点を有しない可動接点の変位を規制する部材の場合もあり、これら両方の場合を意味する用語として使用する。
【0012】
【特許文献1】特開平10−162711号公報
【特許文献2】特開平10−162712号公報
【特許文献3】特開2000−315448号公報
【特許文献4】特開2002−216605号公報
【特許文献5】特開2004−127581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図5に示すような従来の複合型電磁継電器では、固定接点部材37とブレーク側部材38がそれぞれ共通化され、しかも、常開固定接点22と常開固定接点23との間、常閉固定接点24と常閉固定接点25との間が、近接して固着してある。したがって、一方の可動接点が固定接点部材、あるいはブレーク側部材に当接する際に、固定接点部材、またはブレーク側部材全域に亘って振動が伝搬しやすく、一方の可動接点動作時に他方の接点に振動が伝搬して、接点間で瞬断が発生することがあり、接続信頼性が低下する懸念がある。また、この瞬断の発生には、その際生じるアークにより、接点表面上の突起成長が助長され、接点の電気的寿命が短くなる欠点がある。
【0014】
電磁継電器は小型になるほど、磁気吸引力が小さくなる傾向にあるため、上記の懸念が顕著となる。複数の電磁継電器や、図3に示されるような複合型電磁継電器を用いて、回路基板にて結線するような場合には、上記欠点は生じにくいが、実装面積の増大、基板取付けコストの増大の欠点が生じる。
【0015】
また、特許文献1には、フレキシブル導電線の記載があるが、内部ケースと外部ケースの狭い空間内を配線するために用いているもので、各電磁ブロックに対して共通化された固定接点部材及び、共通化されたブレーク側部材を用いている限り、上記欠点は同じである。
【0016】
従って、本発明は、上記欠点を改善して、小型化が可能で、実装面積の増大を伴うことなく、高い接続信頼性を確保した複合型電磁継電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を達成するために、本発明では、電磁石装置と、該電磁石装置の作用により動作し可動接点を有する可動接点ばね部材とをそれぞれに備えた複数の電磁ブロックと、該電磁ブロックの可動接点に個々に対向配置される固定接点を有する固定接点部材と、該固定接点部材の側とは反対側で前記可動接点ばね部材に対向配置されるブレーク側部材とを具備した複合型電磁継電器において、前記固定接点部材どうし、およびブレーク側部材どうしを電気的に内部結線し、前記結線の構造を、前記可動接点が一方側の固定接点部材又はブレーク側部材に当接した時に発生する振動が他方側の固定接点部材又はブレーク側部材に伝達するのを抑制する構造とした複合型電磁継電器を提供する。
【0018】
本発明の第1の発明では、電磁石装置と、該電磁石装置の作用により動作し可動接点を有する可動接点ばね部材とをそれぞれに備えた複数の電磁ブロックと、該電磁ブロックの可動接点に個々に対向配置される固定接点を有する固定接点部材と、該固定接点部材とは反対側で前記可動接点ばね部材に対向配置されるブレーク側部材とを具備した複合型電磁継電器において、前記固定接点部材どうし、又はブレーク側部材どうしの少なくとも一方を制振導電部材で連結したことを特徴とする複合型電磁継電器を提供する。また、前記制振導電部材がフレキシブル導電材、金網、蛇腹状導電部材、ミアンダ状導電部材、シート状導電部材もしくは平網状導電部材のいずれかであることを特徴とする複合型電磁継電器を提供する。
【0019】
本発明の第2の発明では、電磁石装置と、該電磁石装置の作用により動作し可動接点を有する可動接点ばね部材とをそれぞれに備えた複数の電磁ブロックと、該電磁ブロックの可動接点に個々に対向配置される固定接点を有する固定接点部材と、該固定接点部材とは反対側で前記可動接点ばね部材に対向配置されるブレーク側部材とを具備した複合型電磁継電器において、前記固定接点部材どうし、およびブレーク側部材どうしが連結された導電部材の少なくとも一方が、金網状、蛇腹状、ミアンダ状、シート状、もしくは平網状のいずれかに加工されたことを特徴とする複合型電磁継電器を提供する。
【0020】
本発明の第3の発明では、電磁石装置と、該電磁石装置の作用により動作し可動接点を有する可動接点ばね部材とをそれぞれに備えた複数の電磁ブロックと、該電磁ブロックの可動接点に個々に対向配置される固定接点を有する固定接点部材と、該固定接点部材とは反対側で前記可動接点ばね部材に対向配置されるブレーク側部材とを具備した複合型電磁継電器において、前記固定接点部材又はブレーク側部材の少なくとも一方が前記複数の電磁ブロックに対して共通化され、前記可動接点が当接する箇所の間に、複数の切欠き、複数のスリット又は複数の貫通孔のいずれかが施されたことを特徴とする複合型電磁継電器を提供する。
【0021】
本発明の第4の発明では、電磁石装置と、該電磁石装置の作用により動作し可動接点を有する可動接点ばね部材とをそれぞれに備えた複数の電磁ブロックと、該電磁ブロックの可動接点に個々に対向配置される固定接点を有する固定接点部材と、該固定接点部材とは反対側で前記可動接点ばね部材に対向配置されるブレーク側部材とを具備した複合型電磁継電器において、前記固定接点部材又はブレーク側部材の少なくとも一方が前記複数の電磁ブロックに対して共通化され、前記可動接点が当接する箇所間の板厚が、前記可動接点が当接する箇所の板厚の半分以下であることを特徴とする複合型電磁継電器を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来と同様な内部結線型の複合型電磁継電器において、可動接点が一方側の固定接点部材又はブレーク側部材に当接した時に発生する振動が、他方側固定接点部材又はブレーク側部材へ伝達するのを抑制するので、瞬断の発生が抑制され、接点の寿命も延長される。従って、小型化が可能で、実装面積の増大を殆んど伴うことなく、高い接続信頼性を確保した複合型電磁継電器を提供することができる。
【0023】
本発明の第1の発明によれば、同一極性の該固定接点部材どうしを、制振導電部材、具体的には、フレキシブル導電材、金網、蛇腹状導電部材、ミアンダ状導電部材、シート状導電部材または平網状導電部材等にて連結したことにより、振動の伝達に要する距離を変えると共にばね定数が変化する。その結果、可動接点が固定接点部材またはブレーク側部材に当接し、固定接点部材またはブレーク側部材に発生した振動が、もう片方の固定接点部材またはブレーク側部材に伝わりにくくなる。
【0024】
本発明の第2の発明によれば、固定接点部材どうし、およびブレーク側部材どうしを連結する導電部材が、金網状、蛇腹状、ミアンダ状、シート状または平網状に加工されていることにより、振動の伝達距離が延びると共にばね定数が変化する。その結果、可動接点が固定接点部材またはブレーク側部材に当接し、固定接点部材またはブレーク側部材に発生した振動が、もう片方側の固定接点部材またはブレーク側部材に伝わりにくくなる。
【0025】
本発明の第3の発明によれば、共通化された固定接点部材またはブレーク側部材の複数の可動接点が当接するそれぞれの箇所どうしの間に、複数の切欠き、複数のスリット又は複数の貫通孔が施されていることにより、振動の伝達に要する距離を変えると共にばね定数が変化する。その結果、可動接点が固定接点またはブレーク側部材に当接し、固定接点部材またはブレーク側部材に発生した振動が、もう片方側の固定接点部材またはブレーク側部材に伝わりにくくなる。
【0026】
本発明の第4の発明によれば、共通の固定接点部材上の固定接点の間の板厚、あるいはブレーク側部材上の可動接点に対向する点の間の板厚が、固定接点の固着部の板厚の半分以下であることにより、ばね定数が変化する。その結果、可動接点が固定接点またはブレーク側部材に当接し、固定接点部材またはブレーク側部材に発生した振動が、もう片方側の固定接点部材またはブレーク側部材に伝わりにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の複合型電磁継電器は、複数個の電磁継電器が一つのケース内に収納され、このケース内であらかじめ、これらの電磁継電器間の結線が施された複合型電磁継電器である。本発明の複合型電磁継電器を構成する電磁石とコア及びヨークからなる電磁ブロックや、この電磁石により動作するアーマチュアと可動接点を有する可動接点ばね部材や、この可動接点に対向配置される固定接点を有する固定接点部材及びこの可動接点部材と可動接点を挟んで反対側に対向するブレーク側部材は、従来の電磁継電器と基本構造が殆んど同じものが使用できる。
【0028】
本発明においては、従来と同様に固定接点部材どうし及びブレーク側部材どうしがケース内で電気的に結線がなされるが、可動接点が一方の固定接点部材やブレーク側部材に当接する際の振動が他方の固定接点部材やブレーク側部材に伝達するのを抑制するような構造にする。
【0029】
具体的には、固定接点部材どうし、もしくはブレーク側部材どうしを制振導電部材で接続するか、もしくは接続する部材を制振導電部材へ加工することで上記の振動の伝達を抑制する。制振導電部材としてはフレキシブル導電材、金網、蛇腹状導電部材、ミアンダ状導電部材、シート状導電部材または平網状導電部材等が例示できる。
【0030】
また、固定接点部材どうし、もしくはブレーク側部材どうしを共通部材として、電気的な接続を確保し、共通部材の可動接点と接する箇所の間に、複数の切欠き、複数のスリット又は複数の貫通孔を施すことにより上記の振動の伝達を抑制しても良い。
【0031】
また、固定接点部材どうし、もしくはブレーク側部材どうしを共通部材として、電気的な接続を確保し、共通部材の可動接点と接する箇所の間の部材の厚さを可動接点と接する部材の厚さよりも薄くすることにより上記の振動の伝達を抑制しても良い。振動の伝達抑制効果の面からは、可動接点と当接する箇所間の部材の厚さは可動接点と接する箇所の部材の厚さの1/2以下とすることが望ましい。
【0032】
もちろん、これらを組合せた構造であっても、振動の伝達の抑制効果がある。このように可動接点が一方側の固定接点部材又はブレーク側部材に当接した時に発生する振動が、他方側固定接点部材又はブレーク側部材へ伝達するのを抑制することで、この振動に起因する接点間での瞬断の発生を抑えることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の一実施例を、図を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の複合型電磁継電器本体の説明図である。図6は、本発明の電磁ブロックの斜視図である。図6(a)は電磁ブロックであり、図6(b)はもう一方の電磁ブロックである。また、図7は、本発明の固定接点部材である。図7(a)は固定接点部材の斜視図であり、図7(b)はA方向からの正面図である。また、図8は、本発明のブレーク側部材である。図8(a)はブレーク側部材の斜視図であり、図8(b)はA方向からの正面図である。また、図8(c)は、もう一つのブレーク側部材の斜視図であり、図8(d)は、B方向からの正面図である。また、図9は、平編銅線の模式図である。また、図10は、本発明のベースである。図10(a)はベースの斜視図であり、図10(b)はA−A断面図であり、図10(c)はB−B断面図である。また、図11は、ケースの斜視図である。
【0035】
本実施例の複合型電磁継電器本体1は、図6に示す電磁ブロック2及び電磁ブロック3と、図7に示す固定接点部材4と、図8に示すブレーク側部材5及びブレーク側部材6と、図9に示すような平編銅線7と、図10に示すベース8とを組み合わせて、図1に示す複合型電磁継電器本体1を形成するものである。複合型電磁継電器本体1は、図11に示すケース9内に収納される。そして、ケース9の開口部がシール剤でシールされて、本実施例の複合型電磁継電器が完成となる。
【0036】
図12は、本発明の電磁ブロックの分解斜視図である。図12(a)は可動接点バネブロックの斜視図、図12(b)はコアの斜視図、図12(c)はスプールブロックの斜視図、図12(d)はスプールブロックの背面側からの斜視図、図12(e)はヨークの斜視図である。また、図13は、本発明のもう一方の電磁ブロックの分解斜視図である。図13(a)は、可動接点バネブロックの斜視図、図13(b)は、コアの斜視図、図13(c)は、スプールブロックの斜視図、図13(d)は、スプールブロックの背面側からの斜視図、図13(e)はヨークの斜視図である。
【0037】
電磁ブロック2は、図12に示すように上下両端にフランジ10a,10bを有し電磁石を構成するコイル11が巻回されるスプール10と、このスプール10内に形成された縦方向の貫通穴に挿通された電磁石のコア14と、このコア14とL字形のヨーク15と、このヨーク15に端部が接合し、コイル通電時にコア14に引き付けられて先端側が揺動するアーマチュア16と、横方向板状部17aが揺動可能な板バネであって、横方向板状部17aがアーマチュア16の外面側に取付けられるL字形の可動接点バネ17と、この可動接点バネ17の先端に取付けられる可動接点18と、コイル11の各口出線にそれぞれ接続されるコイル端子20及びコイル端子21とを備える。
【0038】
ここで、ヨーク15は、横方向板状部15aと縦方向板状部15bを有し、横方向板状部15aがスプール10のフランジ10bの外面に形成された凹部10cにはめ込まれてコア14のカシメ用突起14aとカシメにより連結され、縦方向板状部15bが前記フランジ10bの凹部からコイル軸方向に沿ってケース奥側に伸びている。一般に「カシメ」とは、二以上の部材を相互に固定するなどの目的で、部材(主に金属製の部材)を例えば部分的に塑性変形させることであるが、通常この種の電磁リレーでは、一方の部材に設けた凸部を他方の部材に設けた穴や開口にはめ込んで貫通させた後、その凸部の先端をプレス機械等でたたいて潰し拡径することで、部材相互を固着する取付け方法が採られており、本実施例でもこの方法を採用した。
【0039】
また、可動接点バネ17は、アーマチュア16や可動接点18に復元力を作用させるためのバネであるとともに、可動接点18を所定の回路導体に接続して、可動接点端子(即ち、コモン端子)として機能するための接続用端部17cを有している。この可動接点バネ17は、前述した横方向板状部17aと縦方向板状部17bを有し、縦方向板状部17bに形成された貫通穴17d,17eに、ヨーク15(縦方向板状部15b)の背面に形成された突起(図示省略)がはめ込まれ、この突起の先端がカシメられることによって、ヨーク15(縦方向板状部15b)の背面に回り止めされて固着されている。
【0040】
また、電磁ブロック2内のスプールブロック12におけるスプール10のケース開口側のフランジ側面10d,10eには、それぞれ嵌合凹部(図示省略)が2つずつ形成され、フランジ側面10dの嵌合凹部に、コイル端子20,21の突起(図示省略)が圧入される。フランジ側面10eの嵌合凹部は、後述する電磁ブロック3内のスプールブロック13におけるスプール10において、コイル端子20,21の突起(図示省略)が圧入される嵌合凹部であり、スプールブロック12とスプールブロック13(図13)のスプールを同一形状にするために設けている。
【0041】
一方、もう一方の電磁ブロック3も、図13に示すように上下両端にフランジ10a,10bを有し電磁石を構成するコイル11が巻回されるスプール10と、このスプール10内に形成された縦方向の貫通穴に挿通された電磁石のコア14と、このコア14とL字形のヨーク15と、このヨーク15に端部が接合し、コイル通電時にコア14に引き付けられて先端側が揺動するアーマチュア16と、横方向板状部17a部が揺動可能な板バネであって、横方向板状部17aがアーマチュア16の外面側に取付けられるL字形の可動接点バネ17と、この可動接点バネ17の先端に取付けられる可動接点18と、コイル11の各口出線にそれぞれ接続されるコイル端子20及びコイル端子21とを備える。なお、この電磁ブロック3は、コイル端子20,21のスプール10に対する圧入する面が、電磁ブロック2とは、逆になっている点を除いて前述の電磁ブロック2と同じ構成となっているため、詳細説明を省略する。
【0042】
本実施例においては、図7に示すように、固定接点部材4を共通部材とした。固定接点部材4は、例えば導電性を有する薄板材をプレス加工(切断加工や曲げ加工)してなるL字状の部材であり、各電磁ブロック2,3の、各可動接点18(図12、図13)に対応する位置に常開固定接点22,23が、それぞれ例えばカシメにより固定されている。また、常開固定接点22,23を固定した部分の間に、振動の伝達を抑制するための、複数のスリット4aが設けられている。可動接点18が常開固定接点23に当接する際の振動がベース8を介し、ブレーク側部材5に伝播することによる、常閉固定接点24ともう一方の可動接点18間で瞬断に対して、この複数のスリット4aは、抑制効果がある。また、ベース8(図10)の嵌合凹部8a,8bに圧入可能な突起を備えた圧入部4b,4cが設けられている。また、この固定接点部材4の先端がベース底面8gよりも図中下方(即ち、ケース9(図11)の開口端よりも外側)に突き出すように伸びており、各常開固定接点22,23を基板などの所定の回路導体に一括して接続するための接続用端部4dを構成している。
【0043】
また、本実施例においては、図8に示すように、ブレーク側部材5,6を別の部材とした。ブレーク側部材5,6は、例えば導電性を有する薄板材をプレス加工(切断加工や曲げ加工)してなるL字状の部材であり、このブレーク側部材5,6には、各電磁ブロック2,3の各可動接点18に対向する位置に常閉固定接点24,25が、それぞれ例えばカシメにより固定されている。また、ブレーク側部材5には、突起を備えた圧入部5a,5bが形成されており、これら圧入部5a,5bの突起がべース8の嵌合凹部8c,8dにそれぞれ圧入可能となっている。また、ブレーク側部材6には、突起を備えた圧入部6a,6bが形成されており、これら圧入部6a,6bの突起がべース8の嵌合凹部8e,8fにそれぞれ圧入可能となっている。
【0044】
このようにブレーク側部材5,6を共通部材としていないため、各々にベース8へ取り付けるための圧入部5a,5b,6a,6bが設けられている。また、一方のブレーク側部材6の先端がベース底面8gよりも図中下方(即ち、ケース9の開口端よりも外側)に突き出すように伸びており、各常閉固定接点24,25を基板などの所定の回路導体に一括して接続するための接続用端部6cを構成している。
【0045】
ベース8は、図10に示すように樹脂の一体成形により形成されたものであり、ヨーク15(図12、図13)の先端圧入部15cを嵌合するための袋小路の嵌合凹部8h,8iと、固定接点部材4の圧入部4b,4cを嵌合するための袋小路の嵌合凹部8a,8bと、ブレーク側部材5の圧入部5a,5bを嵌合するための袋小路の嵌合凹部8c,8dと、ブレーク側部材6の圧入部6a,6bを嵌合するための袋小路の嵌合凹部8e,8fを設けている。
【0046】
ケース9は、図11に示すように樹脂の一体成形により形成されたものであり、複合型電磁継電器本体1を保護する役割をする。
【0047】
次に、本発明の複合型電磁継電器の組立法について、説明する。まず、図6に示す電磁ブロック2の組立法について、図12を用いて説明する。スプール10の嵌合凹部10f,10gにコイル端子20、スプール10の嵌合凹部10h,10iにコイル端子21を打ち込む。次に、スプール10にコイル11が巻回され、コイル11の各口出線にコイル端子20及びコイル端子21がそれぞれ接続され、スプールブロック12が完成する。
【0048】
そして、ヨーク15を横方向に直線的に平行移動させて、その横方向板状部15aをフランジ10bの外面(図中では下面)に形成された凹部10cにはめ込むことで、ヨーク15をスプールブロック12に対して位置決めする。
【0049】
次に、コア14をケース奥側から、このスプールブロック12の一構成部分であるスプール10内に形成された縦方向の貫通穴10nに挿通させ、カシメ用突起14aの先端をカシメることで、コア14とヨーク15をスプールブロック12に固着する。その後、ヨーク15及びコア14が取付けられた状態のスプールブロック12の側方から、横方向に可動接点バネブロック19を直線的に平行移動させ、可動接点バネ17に形成された貫通穴17d,17eに前述のヨーク15の突起をはめ込んだ状態で、この突起をカシメることによって、可動接点バネブロック19を取付ける。
【0050】
次に、図6に示す電磁ブロック3の組立法について、図13を用いて説明する。スプール10の嵌合凹部10j,10kにコイル端子20、スプール10の嵌合凹部10l,10mにコイル端子21を打ち込む。次に、スプール10にコイル11が巻回され、コイル11の各口出線にコイル端子20及びコイル端子21がそれぞれ接続され、スプールブロック13が完成する。そして、ヨーク15を横方向に直線的に平行移動させて、その横方向板状部15aをフランジ10bの外面に形成された凹部10cにはめ込むことで、ヨーク15をスプールブロック13に対して位置決めする。
【0051】
次に、コア14をケース奥側から、このスプールブロック13の一形成部分のスプール10内に形成された縦方向の貫通穴10nに挿通させ、カシメ用突起14aの先端をカシメることで、コア14とヨーク15をスプールブロック13に固着する。その後、ヨーク15及びコア14が取付けられた状態のスプールブロック13の側方から、横方向に可動接点バネブロック19を直線的に平行移動させ、可動接点バネ17に形成された貫通穴17d,17eに前述のヨーク15の突起をはめ込んだ状態で、この突起をカシメることによって、可動接点バネブロック19を取付ける。
【0052】
次に、図7に示す固定接点部材4の圧入部4b,4cをベース8の嵌合凹部8a,8bに挿入することにより、ベース8に対し、固定接点部材4を固定させる。次に、図6に示す電磁ブロック2の先端圧入部15cを嵌合凹部8hに、電磁ブロック3の先端圧入部15cを嵌合凹部8iに挿入することにより、ベース8に対し電磁ブロック2,3を固定させる。次に、図8に示すブレーク側部材5の圧入部5a,5bをベース8の嵌合凹部8c,8dに挿入することにより、ベース8に対しブレーク側部材5を固定させる。また、ブレーク側部材6の圧入部6a,6bをベース8の嵌合凹部8e,8fに挿入することにより、ベース8に対しブレーク側部材6を固定させる。
【0053】
次に、ベース8に対し固定されたブレーク側部材5,6上に、ブレーク側部材5,6どうしを電気的に結線するための制振導電部材として、図9に示す平編銅線7を抵抗溶接により取付けることにより、複合型電磁継電器本体1が完成する。
【0054】
次に、その複合型電磁継電器本体1に、図11に示すケース9を被せ、さらにその後、ケース9の開口側を熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)などのシール材でシールすることにより、本発明の複合型電磁継電器が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、直流モータを制御するための電磁継電器として最適であり、特に、自動車のワイパー駆動部やいわゆるパワーウインドウ駆動部の直流モータの起動制御用として活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の複合型電磁継電器本体の説明図。
【図2】2つの電磁継電器を使用した直流モータ制御回路。
【図3】1つのケースに2つの電磁継電器が収納された複合型電磁継電器を使用した直流モータ制御回路を示す図。
【図4】1つのケースに2つの電磁継電器が収納され、内部結線された複合型電磁継電器を使用した直流モータ制御回路を示す図。
【図5】従来の複合型電磁継電器本体の斜視図。
【図6】本発明の電磁ブロックの斜視図。図6(a)は電磁ブロックを示す図、図6(b)はもう一方の電磁ブロックを示す図。
【図7】本発明の固定接点部材を示す図。図7(a)は固定接点部材の斜視図、図7(b)はA方向からの正面図。
【図8】本発明のブレーク側部材を示す図。図8(a)はブレーク側部材の斜視図、図8(b)はA方向からの正面図、図8(c)はもう一つのブレーク側部材の斜視図、図8dはB方向からの正面図。
【図9】平編銅線の模式図。
【図10】本発明のベースを示す図。図10(a)はベースの斜視図、図10(b)はA−A断面図、図10(c)はB−B断面図。
【図11】ケースの斜視図。
【図12】本発明の電磁ブロックの分解斜視図。図12(a)は可動接点バネブロックの斜視図、図12(b)はコアの斜視図、図12(c)はスプールブロックの斜視図、図12(d)はスプールブロックの背面側からの斜視図、図12(e)はヨークの斜視図。
【図13】本発明のもう一方の電磁ブロックの分解斜視図。図13(a)は可動接点バネブロックの斜視図、図13(b)はコアの斜視図、図13(c)はスプールブロックの斜視図、図13(d)はスプールブロックの背面側からの斜視図、図13(e)はヨークの斜視図。
【符号の説明】
【0057】
1 複合型電磁継電器本体
2,3 電磁ブロック
4 固定接点部材
4a スリット
4b,4c 圧入部
4d,6c 接続用端部
5 ブレーク側部材
5a,5b,6a,6b 圧入部
6 ブレーク側部材
7 平編銅線
8 ベース
8a,8b,8c,8d,8e,8f,8h,8i 嵌合凹部
8g ベース底面
9 ケース
10 スプール
10a,10b フランジ
10c 凹部
10d,10e フランジ側面
10f,10g,10h,10i,10j,10k,10l,10m 嵌合凹部
10n 貫通穴
11 コイル
12,13 スプールブロック
14 コア
14a カシメ用突起
15 ヨーク
15a 横方向板状部
15b 縦方向板状部
15c 先端圧入部
16 アーマチュア
17 可動接点バネ
17a 横方向板状部
17b 縦方向板状部
17c 接続用端部
17d,17e 貫通穴
18 可動接点
19 可動接点バネブロック
20,21 コイル端子
22,23 常開固定接点
24,25 常閉固定接点
26,27 電磁継電器
26a,27a 常開固定接点
26b,27b 常閉固定接点
26c,27c 可動接点
26d,27d コイル
28 パワーウインドウ上昇制御回路部
29 パワーウインドウ下降制御回路部
30 バッテリー
31 グランド
32,33 矢印
34 直流モータ
35,36 複合型電磁継電器
37 (共通化された)固定接点部材
38 (共通化された)ブレーク側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石装置と該電磁石装置の作用により動作し可動接点を有する可動接点ばね部材とをそれぞれに備えた複数の電磁ブロックと、該電磁ブロックの可動接点に個々に対向配置される固定接点を有する固定接点部材と、該固定接点部材とは反対側で前記可動接点ばね部材に対向配置されるブレーク側部材とを具備した複合型電磁継電器において、前記固定接点部材どうし、又はブレーク側部材どうしの少なくとも一方を制振導電部材で連結したことを特徴とする複合型電磁継電器。
【請求項2】
前記制振導電部材がフレキシブル導電材、金網、蛇腹状導電部材、ミアンダ状導電部材、シート状導電部材もしくは平網状導電部材のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の複合型電磁継電器。
【請求項3】
電磁石装置と該電磁石装置の作用により動作し可動接点を有する可動接点ばね部材とをそれぞれに備えた複数の電磁ブロックと、該電磁ブロックの可動接点に個々に対向配置される固定接点を有する固定接点部材と、該固定接点部材とは反対側で前記可動接点ばね部材に対向配置されるブレーク側部材とを具備した複合型電磁継電器において、前記固定接点部材どうし、およびブレーク側部材どうしを連結する導電部材の少なくとも一方が、金網状、蛇腹状、ミアンダ状、シート状、もしくは平網状のいずれかに加工されたことを特徴とする複合型電磁継電器。
【請求項4】
電磁石装置と該電磁石装置の作用により動作し可動接点を有する可動接点ばね部材とをそれぞれに備えた複数の電磁ブロックと、該電磁ブロックの可動接点に個々に対向配置される固定接点を有する固定接点部材と、該固定接点部材とは反対側で前記可動接点ばね部材に対向配置されるブレーク側部材とを具備した複合型電磁継電器において、前記固定接点部材又はブレーク側部材の少なくとも一方が前記複数の電磁ブロックに対して共通化され、前記可動接点が当接する箇所の間に、複数の切欠き、複数のスリット又は複数の貫通孔のいずれかが施されたことを特徴とする複合型電磁継電器。
【請求項5】
電磁石装置と該電磁石装置の作用により動作し可動接点を有する可動接点ばね部材とをそれぞれに備えた複数の電磁ブロックと、該電磁ブロックの可動接点に個々に対向配置される固定接点を有する固定接点部材と、該固定接点部材とは反対側で前記可動接点ばね部材に対向配置されるブレーク側部材とを具備した複合型電磁継電器において、前記固定接点部材又はブレーク側部材の少なくとも一方が前記複数の電磁ブロックに対して共通化され、前記可動接点が当接する箇所間の板厚が、前記可動接点が当接する箇所の板厚の半分以下であることを特徴とする複合型電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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