説明

複合基材の製造方法

【課題】 基材として表面平滑性に優れ、表面硬さにも優れ、反り(特に幅反り)、目隙(特に幅方向の目隙)が発生しにくく、寸法安定性にも優れ、しかも両面化粧貼りにも適した木質の複合基材を安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】 木質板の表裏両面に中比重繊維板を積層接着して得られる複合基材の製造方法であって、中比重繊維板を厚さ方向に分割して薄板を得る工程と、前記薄板、複数枚の木質単板、前記薄板をこの順で、且つ薄板の硬質層側を外側に向けて、しかも、前記木質単板を奇数枚とし、その繊維方向を互いに略直交させ、複合基材の表面側から2層目及び裏面側から2層目の木質単板の繊維方向が複合基材の長手方向と略直交するようにして1回の圧締で積層接着するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質複合基材の製造方法に関するものであって、詳しくは、木質板の表面に中比重繊維板の薄板を積層接着して木質複合基材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床材等の基材として合板等の木質板を基材としたものが一般的によく用いられてきた。また、基材の表面平滑性等を考慮して中比重繊維板の単体を基材とすることもよく行われてきた。中比重繊維板は、合板等の木質板と比べて、その表面平滑性、表面硬さに優れている。しかし、その反面、まわりの湿気や水分を吸湿したり放湿したりすることで寸法変化が大きく、そのことによって、厚み変動が生じたり、反りが発生したり、例えば床材の基材として用いられた場合、隣接床材との間で目隙が生じるといった問題点があった。さらに、床材の基材として用いられた場合、曲げ強度等が合板に比べて不足するといった問題点もあった。また、床暖房用床材の基材として用いられた場合、中比重繊維板は熱による乾燥収縮が激しく、隣接床材との間で目隙が生じるといった問題点もあった。
【0003】
一方、合板は表面平滑性と表面硬さについては中比重繊維板に比べて劣るものの、反りに強く、強度的にも安定しており、また、床暖房用床材の基材として用いられた場合、合板は熱による乾燥収縮に比較的強く、隣接床材との間で目隙が生じるといった恐れも中比重繊維板に比べてはるかに少なく、コストも比較的安価である。それゆえ、両方の長所を生かした複合基材の開発が望まれ、合板の表面に中比重繊維板12を積層接着した複合基材が種々検討された。
【0004】
図4に示すように、従来の複合基材11は、厚み約3mm程度の中比重繊維板12の片面を接着適性を考慮して研磨紙等で研磨し表面を適度に粗くし、研磨した面を木質板13と接するようにして、木質板13の表面(通常、木質板13の片面)に、積層接着して製造されていた。このように、前もって、木質単板を積層接着して例えば合板等の木質板13を作製しておいて、続いて、この木質板13に中比重繊維板12を積層接着するといった2段階の製造工程がよく用いられてきた。
【0005】
前記木質板13としては、例えば、3〜7プライ程度の合板を基材とし、該基材の表面に厚さ約3mm程度の中比重繊維板12を積層接着して製造されていた。このようにして製造された合板と中比重繊維板との複合基材11は、例えば、床暖房用床板の基材として用いた場合、表面の中比重繊維板12の乾燥収縮率が合板のそれよりも大きく、中比重繊維板単体を基材とした場合に比べると、目隙に比較的強いが、合板単体に比べると目隙に弱く、表面の中比重繊維板12の乾燥収縮率が大きいことが原因で床板表面に目隙が発生することが多々あった。
【0006】
また、図4に示す従来型の複合基材11の場合、床板として使用中に床下や床上からの湿気や水分の影響で吸湿によって特に中比重繊維板12の側が大きく伸長し、その後乾燥によって特に中比重繊維板12の側が大きく収縮し、こういった伸縮を繰り返すことで、反りが発生し易いものであった。床板の長手方向の反りの場合、上反り(基材の中央部が上に凸となる向きの反り)、又は逆反り(基材の中央部が下に凸となる向きの反り)のいずれかが生じるが、長手方向の反りで上反りの場合は施工時の床板そのものの自重によって床下地材の面に馴染むことで比較的簡単に解消し、また、施工時に釘打ちすることでも比較的簡単に解消した。
【0007】
しかし、長手方向の反りで逆反りの場合は床板の自重や施工時の釘打ちでは反りの解消が困難であった。また、床板の幅方向の反りも発生し易く、幅方向の反りの場合は、上反り、逆反り両方とも、これを解消することは極めて難しいものであった。すなわち、床板の自重で解消することは極めて困難であり、施工時に釘打ちすることで幅反りを防止するには釘打ち箇所が多くなりすぎて施工性に大きな問題点があった。これら反りの原因も合板等の木質板13とその表面に積層接着されている中比重繊維板12とで、吸湿乾燥時の膨張収縮率が異なることが大きな原因であった。また、中比重繊維板12は合板等に比べて高価でありコストアップの大きな要素となっていた。
【0008】
そこで、上記、目隙、反り解消、コストアップ解消のため、種々検討された結果、約3mmよりも厚みが薄い中比重繊維板を用いることが考え出された。中比重繊維板を表面に平行に二つ割りにし厚み約1.5mm程度の中比重繊維板を製造し、中比重繊維板の接着性の良い分割面を木質芯材と接着一体化した木質材の記載がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平10−193309号公報(第1−3頁、第1、2図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、中比重繊維板と木質板との複合基材の上記従来からの製造方法においては、例えば木質板13として、積層体として完成後の合板を用い、中比重繊維板12を、その片面に積層接着して製造するといった、所謂、片面貼りの製造方法では、複合基材として反りが生じ易いものとなる。また、中比重繊維板を両面貼り方法で製造されたものは中比重繊維板の厚みが最低でも約3mmと厚く、従って、コスト的に高価なものにつくばかりでなく、床暖房用床材の基材として用いた場合、熱による乾燥収縮が原因で寸法安定性に劣り、目隙の発生が避けられなかった。また、合板等の木質板と接着する側の中比重繊維板の表面が硬質層であると、接着不良の原因ともなっていた。
【0011】
また、このように、前もって、木質単板を積層接着して例えば合板等の木質板13を作製しておいて、続いて、この木質板13に中比重繊維板12を積層接着するといった、2段階の積層接着工程による製造方法で、煩雑な製造工程となり、積層接着工程が2度手間となり、そのためのコストアップは免れない。
【0012】
また、上記、特開平10−193309号公報に記載されている製造方法においては、第1の工程で中比重繊維板を厚さ方向に分割して薄板を得、第2の工程で木質の芯材(合板、集成材、その他)を作製し、第3の工程でそれらを積層接着するといったように、大きく分けて3つの工程が必要となり、製造作業工程が煩雑で製造コストにとって不利なものとなっていた。
【0013】
また、床暖房用床板として使用した場合の床板の反りが大きく発生し、特に長手方向の逆反りや幅方向の反りが解消しにくいといった問題点もあった。また、隣接する床板表面間で目隙が発生し易いといった問題点もあった。また、床板は一般的に長尺ゆえ、施工後、隣接床板との長手側面どうしの接続箇所は、短手側面どうしの接続箇所に比べて、数的に圧倒的に多い。従って、幅方向の目隙(長手側面どうしの目隙)を小さくさせることが床暖房用床板として使用した場合の床板の施工仕上がりにとって重要なものとなる。
【0014】
また、床板は一般的に長尺ゆえ、施工後、長手方向の上反りは床板の自重そのもので解消し易いが、長手方向の逆反りや幅方向の反りは解消しにくい。従って、この長手方向の逆反りや幅方向の反りを解消させることが重要となる。また、片面化粧貼り以外に両面化粧貼りにも使用可能な複合基材の用途が近年増えつつある。そのため両面貼り用基材の需要への対応が重要になってきた。
【0015】
本発明の目的とするところは、基材として表面平滑性に優れ、表面硬さにも優れ、反り(特に幅反り)、目隙、特に幅方向の目隙(長手側面どうしの目隙)が発生しにくく、寸法安定性にも優れ、しかも両面化粧貼りにも適した木質の複合基材を、製造工程を簡略化し少なくすることで、安価に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の複合基材の製造方法は、木質板の表裏両面に中比重繊維板を積層接着して得る複合基材の製造方法であって、中比重繊維板を厚さ方向に分割し、片面が硬質層からなり他方の面が軟質層からなる中比重繊維板の薄板を得る工程と、前記薄板の間に複数枚の木質単板を挟んで積層接着する工程とからなり、前記薄板、複数枚の前記木質単板、前記薄板をこの順で、且つ薄板の硬質層側を外側に向け、薄板の軟質層側を木質単板側に向けて、1回の圧締で積層接着して複合基材を得ることを特徴としている。
【0017】
このような請求項1に記載の複合基材の製造方法によれば、第1の工程で中比重繊維板を厚さ方向に分割して片面が硬質層からなり他方の面が軟質層からなる中比重繊維板の薄板を得、第2の工程で前記中比重繊維板の薄板、複数枚の木質単板、前記薄板をこの順で、且つ中比重繊維板の薄板の硬質層側を外側に向けて、薄板の軟質層側を木質単板側に向けて1回の圧締で積層接着して木質複合基材を製造する方法ゆえ、従来方法の場合のように、例えば第1の工程で中比重繊維板を用意し、第2の工程で、前もって、木質単板を積層接着して合板を作製しておいて、続いて、第3の工程で、この合板に中比重繊維板を積層接着するといったように、中比重繊維板と木質板との積層接着工程が2度手間となるのを避けることができる。従って、1工程省略でき、製造コストの低減にとって好適である。
【0018】
また、この製造方法で作製された木質複合基材は、中比重繊維板の薄板の硬質層側を外側に向けて、薄板の軟質層側を木質単板側に向けて、しかも2枚の中比重繊維板の薄板の間に複数枚の木質単板を挟んで1回の積層接着工程で積層接着するので、複合基材の両面とも硬質層が露出し、両面化粧貼り用の複合基材として好適である。さらに、木質単板と接する中比重繊維板は軟質層側であるので、木質単板と中比重繊維板との接着適性にとって好適である。
【0019】
請求孔2に記載の複合基材の製造方法は、請求項1に記載の複合基材の製造方法において、前記木質単板を奇数枚とし、その繊維方向を互いに略直交させ、複合基材の表面側から2層目及び裏面側から2層目の木質単板の繊維方向が複合基材の長手方向と略直交するようにして積層接着することを特徴としている。
【0020】
このような請求項2に記載の複合基材の製造方法によれば、前記木質単板を奇数枚とし、その繊維方向を互いに略直交させ、複合基材の表面側から2層目及び裏面側から2層目の木質単板の繊維方向が複合基材の長手方向と略直交するようにして積層接着する製造方法ゆえ、複合基材の幅反り及び幅方向の目隙を極めて小さくすることが可能となる。
【0021】
この理由は次のとおりである。すなわち、中比重繊維板と接する木質単板の繊維方向が、複合基材の長手方向と略直交(複合基材の幅方向に平行)するようにして積層接着する製造方法であると、施工後の吸湿放湿で木質単板の繊維方向の寸法変化が極めて小さく、中比重繊維板と接する木質単板の繊維方向の寸法変化が極めて小さいことによって、表裏面の中比重繊維板の吸湿放湿に伴う寸法変化、すなわち、寸法伸縮が効率良く抑制される。このことが複合基材の幅反りにとって極めて有利に働くことになる。また、特に床暖房用床板として使用された場合、木質単板の繊維方向は乾燥収縮量が極めて小さく、従って、床板表面の幅方向の目隙を極めて小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の複合基材の製造方法によれば、第1の工程で中比重繊維板を厚さ方向に分割して片面が硬質層からなり他方の面が軟質層からなる中比重繊維板の薄板を得、第2の工程で前記中比重繊維板の薄板、複数枚の木質単板、前記薄板をこの順で、且つ中比重繊維板の薄板の硬質層側を外側に向けて、薄板の軟質層側を木質単板側に向けて1回の圧締で積層接着して木質複合基材を製造する方法ゆえ、従来方法の場合のように、例えば第1の工程で中比重繊維板を用意し、第2の工程で、前もって、木質単板を積層接着して合板を作製しておいて、続いて、第3の工程で、この合板に中比重繊維板を積層接着するといったように、中比重繊維板と木質板との積層接着工程が2度手間となるのを避けることができる。従って、1工程省略でき、製造コストの低減にとって好適である。
【0023】
また、この製造方法で作製された木質複合基材は、中比重繊維板の薄板の硬質層側を外側に向けて、薄板の軟質層側を木質単板側に向けて、しかも2枚の中比重繊維板の薄板の間に複数枚の木質単板を挟んで1回の積層接着工程で積層接着するので、複合基材の両面とも硬質層が露出し、両面化粧貼り用の複合基材として好適である。さらに、木質単板と接する中比重繊維板は軟質層側であるので、木質単板と中比重繊維板との接着適性にとって好適である。
【0024】
請求項2に記載の複合基材の製造方法によれば、前記木質単板を奇数枚とし、その繊維方向を互いに略直交させ、複合基材の表面側から2層目及び裏面側から2層目の木質単板の繊維方向が複合基材の長手方向と略直交するようにして積層接着する製造方法ゆえ、複合基材の幅反り及び幅方向の目隙を極めて小さくすることが可能となる。
【0025】
この理由は次のとおりである。すなわち、中比重繊維板と接する木質単板の繊維方向が、複合基材の長手方向と略直交(複合基材の幅方向に平行)するようにして積層接着する製造方法であると、施工後の吸湿放湿で木質単板の繊維方向の寸法変化が極めて小さく、中比重繊維板と接する木質単板の繊維方向の寸法変化が極めて小さいことによって、表裏面の中比重繊維板の吸湿放湿に伴う寸法変化、すなわち、寸法伸縮が効率良く抑制される。このことが複合基材の幅反りにとって極めて有利に働くことになる。また、特に床暖房用床板として使用された場合、木質単板の繊維方向は乾燥収縮量が極めて小さく、従って、床板表面の幅方向の目隙を極めて小さく抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の詳細を図面に従って説明する。図1は本発明の中比重繊維板を分割する工程を示す模式図、図2は本発明の薄板と木質単板を積層接着する工程を示す模式図、図3は本発明の複合基材を示す斜視図である。
【0027】
図1〜図3において、本発明の複合基材の製造方法の一例を詳細に述べる。本発明の中比重繊維板1はその厚さ方向に分割され、中比重繊維板1の薄板2が得られる。中比重繊維板1の表面層及び裏面層は密度の大きな硬質層Kで構成されており、略中央部は密度が低い軟質層Nで構成されている。
【0028】
本例では厚み方向に2分割された状態を一例として示す。本例では厚み約3mm程度の中比重繊維板の2分割を例示するが、勿論2分割以上の多層分割であってもよいものとする。例えば、3分割の場合は、外側2層の薄板2を使用し、中央の薄板は硬質層Kが存在しないので使用できない。3分割は外側2層をできる限り薄くしたい場合に有効である。外側2層をできる限り薄くする方が複合基材4とした場合好適である。例えば、床暖房用床板の基材として用いた際、熱によって乾燥収縮し、そのことによる表面の目隙が生じにくくなり床板基材として好適なものとなる。
【0029】
また、4分割以上の多層分割であってもよい。4分割〜6分割程度までは複合基材4として好適なものとなる。しかし、厚みが約3.0mmの中比重繊維板を7分割以上の多層分割とすることはあまり好ましくない。中比重繊維板1はその厚みは薄い場合で約3.0mmであり、約3.0mm厚さの中比重繊維板1を多層分割すると1枚当たりの薄板2の厚みが薄くなりすぎて強度的に問題が生じる。従って、薄板2の厚みとして約0.5〜1.0mm程度になるように分割すればよい。この程度の厚みがあれば、強度不足による破損等の恐れがない。厚み方向に等分割でもよいし、また、異なる厚みに分割してもよい。本例で例示するように、中比重繊維板1を2分割する場合、分割後の薄板2は、その外側面(非分割面)は硬質層Kで構成され、他方の面(分割面)は軟質層Nで構成されている。
【0030】
本発明の製造方法で作製された複合基材4は前記薄板2、複数枚(本例では3枚)の木質単板3、前記薄板2をこの順で、且つ、薄板2の硬質層K側を外側に向けて、軟質層N側を木質単板3側に向けて、合計5枚の層を1回の圧締で積層接着して得られるものである。1回の圧締で積層接着して木質複合基材4を製造する方法ゆえ、従来方法の場合のように、例えば前もって、木質単板3を積層接着して合板を作製しておいて、続いて、この合板に中比重繊維板1の薄板2を積層接着するといった2度手間となるのを避けることができる。積層接着工程が1回の圧締で済み、従って、1工程省略でき、製造コストの低減にとって好適である。
【0031】
前記木質単板3は2枚以上の複数枚であり、好適な例として、本例で示す3枚を例示する。本例で示す3枚の他、5枚又は7枚の場合が好適である。9枚以上と多くなりすぎると接着剤使用量が多くなり、また、積層接着手間が多くかかりコストアップになる。また、前記木質単板3の材質は、ラワン、カポール、セラヤ、メラピ、ジョンコン等の南洋材の他、ラジアータパイン等の針葉樹材が好適なものとして例示できる。しかし、これらの樹種に限定されるものではない。吸湿時や乾燥時の反りや寸法安定性を考慮すればこれらの木質単板が好適な材料として例示できる。
【0032】
中比重繊維板1を厚み方向に分割(本例では厚み方向に2分割)する方法としては、スライサーの刃物(図示せず)を水平方向に設置し、分割前の中比重繊維板1を水平にして送りロール(図示せず)等で挟持し、その長手方向に強制的に前進送りさせ、前記スライサーの刃物で厚み方向に切削し分割する。この時、分割面に多少の凹凸が生じ易くなるが、刃物の先端角度、刃物のバイアス角を好適に設定すれば切削抵抗が小さくて済み、分割面の大きな凹凸(図示せず)が軽減し微細な凹凸(図示せず)が生じる程度になる。この微細な凹凸は、複合基材4となった場合の表面としては適さないが、木質単板3と接着する側の面としては好適である。すなわち、中比重繊維板1の前記薄板2を木質単板3の上に接着剤で張り付ける場合、前記微細な凹凸が有った方が接着剤が浸透し易く接着適性に優れたものとなる。
【0033】
また、本発明の製造方法で作製された複合基材4は上記のような構成を有するので、すなわち、中比重繊維板1を複合基材4の表裏両面に積層接着した構成であり、中比重繊維板1の硬質層Kが外側面として積層接着されているので、複合基材4として、その両面ともが、表面平滑性及び表面硬さに優れる。また、中比重繊維板1が片面貼りでなく表裏両面貼りとしているので、吸湿、放湿に対して反りにくいものとなる。また、中比重繊維板1を厚さ方向に分割した薄板2を用いているので、中比重繊維板1としての厚みが薄く、従って、床暖房用床材の基材として用いても寸法安定性に優れ、目隙の発生を防止できる。また、前述したように中比重繊維板1の軟質層Nが前記木質板3と接するので、接着不良の恐れがない。
【0034】
また、積層接着の際の接着剤として、いずれも、常温硬化型の、ウレタン樹脂系接着剤、アクリル変性ウレタン樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、ユリアメラミン共縮合樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、レゾルシノール樹脂系接着剤等が好適なものとして例示できる。また、積層接着条件は、一例として、接着剤塗布量はウエットで約150〜300g/m程度、圧締作業はコールドプレスを用い、圧締圧力は約8.0〜12.0kg/cm程度、圧締温度は常温とし、圧締時間は接着剤にもよるが、通常約12〜24時間程度である。圧締完了後、常温で約24時間以上養生し積層接着作業が完了する。しかし、上記接着条件に限定されるものではない。また、上記のような常温圧締でなく、加熱圧締であっても、勿論よいものとする。例えば熱硬化性合成樹脂等からなる接着剤を適切に選定しそれに合った接着条件を設定すればよい。
【0035】
また、本発明の製造方法として、さらに好適な製造方法は以下に述べる方法である。すなわち、この製造方法で作製された複合基材4は、表面と裏面に中比重繊維板1の薄板2を用意し、それぞれの薄板2の硬質層Kを外側にして、軟質層Nを木質単板側にして、2枚の薄板2の間に、木質単板3の奇数枚(本例では3枚)を、その繊維方向を略直交させて挟持し、積層接着して作製されたものである。木質単板3の枚数が奇数枚で、その繊維方向が互いに略直交しているので、吸湿時や乾燥時の寸法変化が極めて小さく、又、反りの発生がよりいっそう抑制される。この場合、前記したように表面と裏面の中比重繊維板1の分割された薄板2は、その硬質層Kを外側にして積層接着されている。積層接着の際の接着剤及び接着条件は前記したような条件でよい。しかし、これらの接着条件に限定されるものではない。
【0036】
また、本発明の複合基材4の表面裏面の中比重繊維板1の分割薄板2の間にある木質単板3は、複合基材4の表面側から2層目(木質単板3の上から1層目)及び複合基材4の裏面側から2層目(木質単板3の最下層、本例では木質単板の上から3層目)の木質単板3の繊維方向は、複合基材4の長手方向と略直交(幅方向と略平行)している。このようにして製造された複合基材4は幅反り及び幅方向の目隙(隣接する複合基材の長手側面間の目隙)を極めて小さくすることが可能となる。
【0037】
また、表面化粧材(図示せず)を複合基材4の両面に貼着する場合は熱可塑性合成樹脂シートからなる化粧材が好適である。例えば、軟質の塩ビ樹脂シート、オレフィン樹脂シート等を好適なものとして例示できる。化粧材の厚みは約0.1〜0.3mm程度のものが好適である。複合基材4の表裏両面の中比重繊維板1の薄板2の硬質層Kと熱可塑性合成樹脂シート(図示せず)を接着する場合、接着剤として、例えば酢酸ビニル樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤等を好適なものとして例示できる。ラミネーター等を用いて貼着すればよい。接着条件は、それぞれの接着剤に合った接着条件を適宜選定すればよい。また、前記表面化粧材(図示せず)を複合基材4の表面にのみ貼着し、裏面側は下地材(図示せず)に接着して施工する場合は、複合基材4の裏面側が中比重繊維板1の薄板2の硬質層Kが露出しているので、その面をサンダーで軽く研磨し、軟質層Nを露出させた方が下地材との接着適性にとって好適である。上記接着剤、接着条件、接着方法は好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0038】
また、本発明の複合基材4の製造手順は以下のとおりである。
1.中比重繊維板1を用意し、その厚み方向に多層分割し中比重繊維板の薄板2を得る。本例では2層分割である。
2.木質単板3を複数枚用意する。本例では奇数枚で3枚である。
3.中比重繊維板1の薄板2、3枚の木質単板3、及び中比重繊維板1の薄板2を、この順に仕組む。中比重繊維板1の薄板2は硬質層Kを外側にし、軟質層Nを木質単板3の側になるようにして仕組む。このとき、よりいっそう好適な製造方法としては、3枚の木質単板3の繊維方向は互いに略直交させる。さらに、1枚目及び3枚目の木質単板3の繊維方向を複合基材4の長手方向と略直交させ、2枚目(中央部にある木質単板3)は、複合基材4の長手方向と略一致させる。
4.このように仕組まれた5層からなる材料を、接着剤を利用して1回の圧締で積層接着する。
5.これで本発明の製造方法による複合基材4の製造は完了する。
6.その後、完成した複合基材4の両面又は片面に化粧材を貼着する。片面貼りの場合は化粧材の貼着されていない面をサンダーで軽く研磨しておくと、下地材に接着する場合に好適である。サンドペーパーの番手は120番手〜240番手程度が好適である。
製造手順の説明は以上のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の中比重繊維板を分割する工程を示す模式図。
【図2】本発明の薄板と木質単板を積層接着する工程を示す模式図。
【図3】本発明の複合基材を示す斜視図。
【図4】従来の複合基材を示す断面図。
【符号の説明】
【0040】
1 中比重繊維板
2 薄板
K 硬質層
N 軟質層
3 木質単板
4 複合基材
11 従来の複合基材
12 中比重繊維板
13 木質板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質板の表裏両面に中比重繊維板を積層接着して得る複合基材の製造方法であって、中比重繊維板を厚さ方向に分割し、片面が硬質層からなり他方の面が軟質層からなる中比重繊維板の薄板を得る工程と、前記薄板の間に複数枚の木質単板を挟んで積層接着する工程とからなり、前記薄板、複数枚の前記木質単板、前記薄板をこの順で、且つ薄板の硬質層側を外側に向け、薄板の軟質層側を木質単板側に向けて、1回の圧締で積層接着して複合基材を得ることを特徴とする複合基材の製造方法。
【請求項2】
前記木質単板を奇数枚とし、その繊維方向を互いに略直交させ、複合基材の表面側から2層目及び裏面側から2層目の木質単板の繊維方向が複合基材の長手方向と略直交するようにして積層接着することを特徴とする請求項1に記載の複合基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−68421(P2008−68421A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246542(P2006−246542)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(398051497)株式会社パル (65)
【Fターム(参考)】