説明

複合導電材料(COMPOSITECONDUCTIVEMATERIAL)

【課題】
【解決手段】タンタル、ニオブ、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、チタニウムおよびそれらの混合物の酸化物および/または亜酸化物のような複合金属酸化物のコーティングで被覆した金属コア素子を含む少なくとも1つの第1の導電性電極素子と結合した、非導電性高分子ベース材料と、ジオシンセティックなどの材料から構成される複合導電材料について説明する。また、電気浸透により高含水および/または高塩分の基材などの材料を処理するために界面動電回路などで電極として配置される材料について説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合導電材料に関し、特に、例えばエレクトロカイネティック(界面動電)システムの電極として、エレクトロカネティクスに用いる複合導電材料に関する。本発明は、シート、チューブ、ベルト、バッグ、一片(strips)、格子や他の形態、または、これらの組み合わせから形成された、より複雑な構造を含む様々な形態の複合導電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロカイネティクスは5つの現象を含む。それは(i)流動電位、(ii)沈降電位、(iii)電気浸透、(iv)電気泳動、および(v)イオン移動である。最初の2つの現象は固体と液体の相対運動の結果として電位差を生じるが、後者の3つの現象は、電位の勾配がこれらの現象が内部で現れる材料全体に加えられ、かつ維持されることを必要とする。電位の勾配は、土壌、汚泥、スラリまたは尾鉱(tailings)のような材料全体に電極を使用して電圧を印加することによって実現される。材料が導電性であれば、印加電圧で電流が電気回路を流れる。電気回路の全電流は、アノードとカソードで起こる界面動電現象と電気化学反応によって特徴付けられるような材料を通る電荷の物理的運動からなる。従って、様々な導電材料を比較すると導電性の高い材料の方が導電性の低い材料よりも所定の電圧下で電気を導きやすい。この相違はイオン移動の大きさに反映されることが多いが、他の界面動電現象である電気浸透と電気泳動に必ずしも反映されるわけではない。
【0003】
材料の導電性は材料の含水量とその水の塩分に応じて高くなる。図1で示されているように、含水量と水中塩分の決定的特性によって、処理可能な材料の範囲が広義には6つのカテゴリーに分類される。そのカテゴリーのうちの4つは固体(1−4)として大まかに分類され、残りの2つは液体(5と6)として分類される。その状況が図1でグラフを使って示されている。これらのパラメータは以下のように処理に使用される電気量を定義にするのに役立つ:
・材料の導電性が高ければ高いほど、その後電圧勾配を維持することによって引き起こされる電流フローが多くなる。
・材料の水分量が多ければ多いほど、通常の状況下では、より長期間の界面動電処理が必要であることを意味する。
【0004】
オームの法則によれば、電気回路を流れる電流は印加電圧に比例し、電気回路の抵抗に反比例する。後者は電源、ケーブル、電極、および処理材料を含む。抵抗の変化は一般に電極と処理材料の物理的および化学的変化の結果として起こる。このような変化、特に電極や電極/処理材料接触で起こる変化は、実際に材料全体に印加される電圧の著しい降下を引き起こす。このような変化には以下のものが含まれる:
・電極/材料の接触抵抗を増加させるアノードの段階的乾燥(gradual dessication)
・電極と材料との接触領域を減少させるガスの生成
・以下の原因となるアノードの腐食
・電極と材料との減少した接触表面積
・いくつかの領域でのアノードの完全破壊
・アノードの増加した表面抵抗
・システムの抵抗を増加させる複合酸化物と複合還元物の生成
【0005】
上記変化は処理されている材料の種類に応じて異なる。 図1に関して、最も扱いやすい材料(the least challenging materials)はグループ1、即ち陸成土壌である。 その他の材料は以下のどちらかの材料を含む:
・高導電性
・高含水量
・高導電性かつ高含水量
【0006】
これらの異なる種類の材料で処理を行えるように、上記の電圧降下に対処するためには、電極を構成する材料を慎重に選択しなければならないことが分かった。
【0007】
この電圧降下は界面動電フロー現象の減速と電気回路の電流低下を引き起こす。本発明の目的は、材料の混合を慎重に選択することによって上記の電圧を変える作用を制御するような方法でアノードとカソードを作ることである。
【0008】
先の特許や出願であるWO95/21965、WO00/39405、WO00/46450、WO02/02875、WO03/094599、およびGB0323068.7などには、地盤強化、地盤調整、芝調整や現場(in-situ)などの処理、および汚泥、スラリや尾鉱などの廃棄物の脱水処理用の界面動電ジオシンセティック材の構造と作用が開示されている。(このコンテクストでのジオシンセティック材への言及は、その使用目的が狭い意味でのジオシンセティックとしての地盤基材(substrates)にあるかどうかに関わらず、材料の種類やクラスへの言及として読まれるよう意図されていることに注意すべきである。)
【0009】
当然のことながら、前記従来技術のコンテクストおよび本発明による導電材料に関するコンテクストでは両方とも、EKGまたはその他の複合材料は「電極」として作用する。電極は導電材料と非導電材料から構成される。導電材料は1以上の種類から構成されてもよく、また、組成、大きさ、数、電気抵抗率および腐食耐性に違いがあってもよい。非導電材料は1以上の種類から構成されてもよく、また、組成、大きさ、強度、弾力性、および濾過特性、排水特性、分離特性や補強特性などの他の要素に違いがあってもよい。
【0010】
上述の理由により、この種の導電材料と構造は、陸成土壌である図1のタイプ1の処理材料に特に有効である。このコンテクストではこれらが最も扱いやすい材料である。前記特許や出願に開示された材料などの公知の導電材料は、腐食速度が速まるにつれて上記影響が大きくなり電極の有効寿命を縮める、比較的塩分が多い環境かつ/または比較的湿潤な環境で常に有効であるというわけではない。技術が商業的に実現可能な場合に必要とされる、多くの用途にとって十分な寿命を公知の導電性界面動電ジオシンセティック(EKG)材で得ることは困難である。従って、腐食の影響はこの種の基材(substrates)の処理に導電性界面動電ジオシンセティックスなどの材料を用いる上での実用的な利用性に制限を設ける。
【特許文献1】WO95/21965
【特許文献2】WO00/39405
【特許文献3】WO00/46450
【特許文献4】WO02/02875
【特許文献5】WO03/094599
【特許文献6】GB0323068.7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、複合導電材料、特に上記の不都合を幾分または全て軽減する界面動電システムの電極として用いるための複合導電材料を提供することである。
【0012】
本発明の特定の目的は、高耐食性と長耐用年数を提供する高塩分かつ/または液体量が多い環境を含む基材を処理するための界面動電システムに用いる複合導電材料を提供することである。
【0013】
本発明の特定の目的は、上記の特許や出願のEKG構造による材料処理の原理をより広範囲の基材材料(substrate materials)に拡張可能にする電極材料、特に河口土壌や海洋土壌や浚渫、湿った鉱山尾鉱、鉱物性汚泥、および下水汚泥などの物質に効果的に拡張可能にする電極材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、第1の態様の本発明によれば、複合金属酸化物(mixed metal oxides)のコーティングで被覆された金属素子を含む少なくとも1つの電極素子と結合した非導電性高分子ベース材料(non-conductive polymeric base material)を含む複合導電材料が提供される。
【0015】
複合金属酸化物(MMO)のコーティングを施した大規模なモノリシック金属アノードは、過酷な環境に有効な形態のアノードであるとして、カソード防食の特定分野で知られている。このコンテクストにおいて複合金属酸化物(MMO)が当技術分野で特有の意味を有するものとして理解される用語であることが分かるであろう。適当な酸化物の混合物(oxide mixtures)について以下説明する。
【0016】
カソード防食アノードは、数十年はアノードとして腐食環境に静止し続けることが意図されている、大きな、通常は固体の構造である。本発明の複合導電体(conductors)に組み込むための構造条件は非常に異なっており、そして特に、以下に記載の実施例から分かるように、各導電性素子の構造条件、サイズ条件、および非導電性ベース材料(base material)との密接な関係から非常に異なる一連の問題が生じる。それにもかかわらず、驚くべきことに、本発明による複合導電材料に少なくともいくつかの導電性素子を作るために組み込まれたこれらの導電体が、本発明が特に適用することを目的としているより過酷な環境に十分耐性がある複合電極を作るという課題に対して簡単かつ有効な解決手段を提供することが分かった。
【0017】
少なくとも1つの導電性素子が、例えば界面動電システムの中で、電極としての使用に適した複合導電材料を構成するために非導電性基材(substrate)に結合される。導電性素子は特に、例えば非導電性材料の構造に組み込まれるか、あるいはその構造表面にあり、非導電性材料と一体的に結合している。
【0018】
好ましくは、本発明による複合導電材料は、前記の通り非導電性材料の中および/または非導電性材料の表面に配置または配列された(disposed or arrayed)複数の導電性素子を備えている。MMOで被覆された金属以外の材料からなる追加の第2の導電性素子は、MMO導電性素子で被覆された第1の金属と共に備えることができる。
【0019】
第1の導電性素子はMMOのコーティングを有する導電性金属コアを含み、好ましくは該コアを実質的に完全に被覆している。任意の適当な金属コアが使用できる。好ましくは、厳しい腐食環境下において、そして/またはコーティングの欠陥および/または損傷を許容するために、コアを形成する金属材料は、例えばチタニウム、ニオブ、ジルコニウムおよびそれらの合金などの有効な保護酸化被膜を形成することができる材料である。環境的配慮および/または耐用年数の考慮から許容されるならば、ステンレス鋼または銅などの腐食環境で低いが、それでも妥当なレベルの安定性を示す金属で形成されたコアでもよい。
【0020】
MMOで被覆する技術は確立されており、当業者ならばこの用語が含む材料を容易に理解するであろう。特にコーティングは、タンタル、ニオブ、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、およびそれらの混合物の酸化物および/または亜酸化物から選択される材料を含んでいる必要がある。また、チタニウムの酸化物および/または亜酸化物のコーティング、あるいはチタニウムの酸化物および/または亜酸化物を含むコーティングが、コア材料および/または使用条件が適している場合には使用できる。MMOコーティングは、本発明による材料から製造されるコンポーネントの処理持続時間および/または所望の耐用年数(回路電流と処理持続時間に応じて計算される)が続くように適当な厚みがある。
【0021】
非導電性高分子材料は複合電極構造の基部(base)を形成して、その構造に必要な完全性(integrity)を与えるのに適当な特性を持つように選択される。また、特に非導電性材料は、排水、濾過、基材強化(substrate reinforcement)またはその他の公知のジオシンセティック材の特性を含むジオシンセティックまたはジオシンセティックタイプの追加機能も提供するように選択される。従って非導電性基材(substrate)は、特に好ましい実施態様では、ジオシンセティック用途でジオシンセティック材として使用することが知られている材料であり、例えば上記のジオシンセティック用途に関する特許や出願に開示されたタイプの材料である。そのため電極は導電性界面動電ジオシンセティック(EKG)電極を含む。
【0022】
複合導電材料は、シート、チューブ、ベルト、バッグ、一片(strips)、格子や他の形態、または、これらの組み合わせから形成されたより複雑な構造を含む様々な形態で提供され得る。実施可能な態様では材料を、例えば柔軟な細長いシート材として構成するなどシートの形態で提供してもよい。このシートの形態では導電性素子または各導電性素子がシート内部またはシート表面に配置された(disposed)細長い導電性素子であると好ましい。特に導電性素子または各導電性素子はシート内部に配列された(arrayed)ロッド、ワイヤ、テープなどの構造をなしている。
【0023】
導電材料は、主として高分子ベース構造を有するテキスタイルであると都合がよい。テキスタイルは、織られても、編まれても、針でパンチされても、押し出されても、不織りでもよく、あるいは別の方法で作られてもよい。織り構造と編み構造が特に好ましい。テキスタイルは、例えばシート構造内など、材料構造中または構造上に密接に結合した状態で導電性素子を備えており、特に織りシートまたは編みシートに織り込まれるか編み込まれている。特に適当な材料には導電性ジオシンセティック材として使用することが知られているこの種の材料が含まれる。
【0024】
従って、好ましいケースでは、界面動電ジオシンセティックタイプの材料が用いられる。この材料は電極として機能するだけでなく従来のジオシンセティック材の全機能(即ち、排水、濾過、および補強)を提供することができる。
【0025】
本発明による主な導電性素子は、複合金属酸化物の混合物で被覆した金属コアを有する寸法安定性素子(dimensionally stable elements)を含む。これらの寸法安定性素子は、複数の電気回路の状態に依存してアノードまたはカソードとしての機能を安定させる。特に前記素子はアノードまたはカソードとして使用可能な複合電極材料を創作し、そして特に、排水、強化または他の処理理由で電気浸透処理を推進するために配置された基材を組み込んでいる界面動電回路におけるアノードを生み出す。
【0026】
電気浸透原理をこのような比較的困難な材料に適用することによって起こり得る望ましくない副作用は、材料全体にわたり電圧を維持するのに必要なプロセスの結果として電極に起こる電気化学反応が原因で電極にガスが発生することである。ガスの発生は電極性能を劇的に低下させ得る。
【0027】
これを解決するために、特に好ましい実施態様において、本発明による複合導電材料は(MMOで被覆した金属を含む少なくとも1つの第1の導電性素子に加えて)さらに、使用時に第1の導電性素子に対して犠牲的になるよう選択された(selected to be sacrifical)少なくとも1つの第2の導電性素子と結合させてもよい。好ましくは、複合導電材料は構造中および/または構造表面に配置された前記複数の第1の導電性素子と、前記複数の第2の導電性素子を含んでいる。
【0028】
第1の導電性素子は使用時に寸法安定性コンポーネント(dimensionally stable components)となる。第2の導電性素子は、導電材料を腐食環境で電極として用いるとき、特に本願で論じたような界面動電回路配置でアノードとして用いるときには、犠牲的になるよう選択される(are selected to be sacrifical)。本発明の当該好ましい実施態様による複合導電材料は、犠牲的(sacrifical)で寸法安定性のある電極素子の複合物(mixture)を含んでおり、該複合物は特に、使用時にアノードの乾燥(desiccation)を制限し、ガスの生成を緩和し、pHを修正かつ制御し、そしてアノードの腐食を制御するよう選択される。寸法安定性があり犠牲的な素子の複合物は、必要に応じて複数の逆相中に(during reverse plurality phases)有効なアノードとして機能するのに十分な犠牲能力を有してカソード環境内で機能するよう選択される。
【0029】
驚くべきことに、この実施可能な態様に基づき、電極として機能するEKG材の効果の改良が犠牲アノード素子と寸法安定性アノード素子の複合物(composite mixture)によって、ある種の用途のために実現できることが分かった。しかしながら犠牲素子(sacrificial elements)の存在は、前記実施態様が望ましい場合における本発明の全く選択的な好ましい特徴であり、本発明は当該犠牲素子を含む材料に限定されない。
【0030】
使用中に腐食するように形成されるアノード部を形成することで電極に隣接するアノードの乾燥(dessication)を低減することができる。また、加水分解で発生するガス付近の絶縁体により電気浸透が別途(otherwise)大幅に制限され得るか事実上停止し得るので、特に有益なガスの生成が調整される(modified)。さらに、アノードの犠牲的コンポーネント(sacrificial components)からの金属イオンの放出が、処理可能な(treatible)材料の間隙流体の性能、ひいては電気浸透流を調整する(modify)働きをする。
【0031】
さらに、この計画的な陽イオン放出の結果には、固体/間隙界面での、間隙塩分の変化(change)、発生したpH勾配の変更(modification)での変化、およびゼータ電位の変化が含まれる。その上、アノードの犠牲金属素子の複合(blend)を慎重に選択することで土壌物質中の陽イオンを最適交換することができ、その結果、剪断強度の増加と処理材料の機械的処理特性の改良がもたらされる。
【0032】
本願の主張は、本願に含まれる発明が、従前の特許に含まれている発明を改良することによって実現可能な界面動電処理に経済的解決手段を提供するということである。EKGは金属素子および非金属素子の複合物(composite mixture)からごく普通に製造されてきている。
【0033】
犠牲素子(sacrificial elements)はアノード条件下で寸法安定性のない(dimensionally unstable)材料を含む。好ましい実施態様には、鉄、鋼鉄、アルミニウム、または炭素が含まれる。
【0034】
この材料から形成された電極は、犠牲素子の分解(dissolution)を強制するように作用される。その後分解生成物は処理される材料中で水相の溶質になり、間隙塩分とpHを変え、陽イオン交換を引き起こしてゼータ電位を最適化して、結果的に界面動電フロー現象を最大限にすることに寄与する。
【0035】
犠牲素子は、加水分解ガスの放出への寄与を低減または排除する一方で、電極反応に寄与して材料全体の電圧を維持するので、ガス放出に関与する接触領域の損失を抑える。
【0036】
犠牲素子は、所定の環境下で、素子の厚さ、長さ、および素子アノード消費率(アンペア年毎にkgで測定される)に基づきEKGまたはその他の基材の内部で混合され、所望の期間にわたり犠牲素子の段階的な腐食を提供する。
【0037】
犠牲材料は、処理される材料の酸性領域とアルカリ領域の相互作用によって犠牲材料のpHの変化を最適化して、結果的に回路抵抗の上昇を最小限に抑えるか、遅らせるために使用される。
【0038】
さらなる態様の本発明によれば、複合電極は上記のような複合導電材料を含む。特に、電極はシートまたは他の適当な形態で提供され、また、補強および/または濾過および/または排水または他の脱水機能を与える適当な基材材料(substrate material)から構成される。電極は、特に界面動電システムでの使用、特に界面動電システムでのアノードとしての使用、特に電気浸透による高含水および/または高塩分の基材(substrates)の処理に適している。
【0039】
さらなる態様の本発明によれば、界面動電回路は、少なくとも1つの第1の電極と、処理される基材が第1の電極と第2の電極の間に位置している状態で第1の電極から遠く離して配置した少なくとも1つの第2の電極と、基材内で電気浸透処理を推進する(drive)ために第1の電極と第2の電極を横切って電位差を与える手段とを含む。前記手段の少なくとも電極の1つは上記による電極である。特に基材は高含水および/または高塩分の材料であり、また少なくとも使用時にアノードとして機能することが意図されている電極は本発明の原理に基づく電極である。
【0040】
1つの適当な実施態様では、地盤基材(ground substrate)の電気浸透圧密および/または電気浸透排水または他の脱水および/または他の調整を行うために、各電極を地面基材内部に配置する。
【0041】
別の実施態様では、前記システムは、スラリ、汚泥、尾鉱などの廃棄物のような地面ではない基材を処理するためのシステムを含み、それは例えば静的フィルターセル(static filter cell)やベルトフィルタプレス(belt filter press)のような脱水システムである。
【0042】
特に当業者には当然のことながら、本発明による電極材料は、本発明の特有の特性と利点を有する電極が有益である状況と環境下で、上述した従前の特許や出願に提示された一連のシステムやジオシンセティックなどの構造に組み込むのに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明について、一例として図1〜4を参照して説明する。
図1は、含水量と塩分との関係を示す図表に示されている材料例を用いて界面動電処理するのが望ましい材料の範囲の含水量と水の塩分との関係を概念的に示している(導電性はこれらのファクターを組み合わせた機能であることに注意)。
図2と図3は、フィルタプレスなどの濾過膜としての使用にも適している本発明の実施態様の適当なアレンジを示している。
図4は、エレクトロカイネティック・プレハブの鉛直ドレーン(ePVD)またはエレクトロカイネティック・ウイックドレーンとしての使用に適している本発明の実施態様の適当なアレンジを示している。
【0044】
図1は、界面動電処理するのが望ましい材料の範囲の含水量と水の塩分との関係を概念的に図示している。これについて詳細に上記に説明してきた。材料例は、環境的な厳しさ(environmental harshness)と取扱いの困難さが増す順に、陸成土壌(1)、建設廃棄物(2)、海底土(marine soils)(3)、河口浚渫(4a)および海底浚渫(4b)、鉱山尾鉱および鉱物スラッジ(5)、および下水汚泥(6)である。
【0045】
本発明の電極は特に、上述の特許や出願に記載された構造のような、より一般的な導電性EKGなどの構造の十分に商業的寿命のある実用的な動作範囲外にある高伝導レジーム(high conductivity regimes)に適している。導電性はこれらのファクターを組み合わせた機能であることに注目すべきである。
【0046】
本発明の原理による電極は、様々な用途に使用することができる。特に電極は排水および/または補強および/または濾過のEKG型機能を結合することができる。図2と図3は、ベルトフィルタプレスのベルトまたはプレートフィルタプレスのようなバッチシステムのセル用濾過シートなどとして、濾過膜としての使用に適したシート材を示している。図示のシート材は本発明の材料の実施可能な適合例にしか過ぎず、目的の用途に適した任意の形態をとることができる。
【0047】
各ケースの織りシートまたは織りベルト11は、排水機能と濾過機能を提供する従来のジオテキスタイルまたはジオテキスタイルのような材料などを構成する程度まで(to that extent)、織られた高分子材料12のベース(base)から形成される。適当な材料にはポリエステル、ポリプロピレン、およびポリアミドが含まれる。
【0048】
細長い導体の平行配列がシートまたはベルト11に結合して設けられる。少なくともこれらの導体の一部は複合金属酸化物で被覆された金属である。他の導体は使用中に犠牲的になるように(to be sacrificial)作られた構成のものでもよい。
【0049】
2つの選択的なアレンジを示す。図2aでは細長い導体13aの第1の配列がシートまたはベルト11の上面12に密接して配置され、細長い導体の第2の配列(図示せず)が下面に配置されている。図2bでは細長い導体13bの単一配列がシートまたはベルト11の内部に配置されている。
【0050】
図3aでは織りまたは編み(woven or knitted)テキスタイルシート21が、縦糸方向と平行に位置する細長い導体23の平行配列が内蔵されている、好ましくは織り込まれるか編み込まれている高分子材料22のベース(base)から形成される。図3bでは細長い導体24の平行配列が概ね横糸方向に位置するようにシート21に織り込まれるか編み込まれている。図3cでは細長い導体25がシートの縦糸方向と横糸方向に対して角度を付けることによって二次元ネットワークを形成している。
【0051】
図2と図3に示されている濾過/電極シートの特に好ましい仕様について、以下に詳細に説明する。シートはベルトフィルタプレスで用いるベルトとしての寸法をもっって説明される。ベルトプレスで用いるシートとしての適合性は、本発明が適用可能な材料と用途の範囲の一例にすぎない。それは図3dに示されている。
【0052】
図3dは、(この例では)使用時にベルトの進行方向に垂直になる横糸方向に設けられている導体(23)を有するテキスタイルシート(21)である。導体(23)はシートに埋め込まれているので、設計上の問題は電流を印加するために外部接触を与えることになる。
【0053】
本実施態様では、電気移動(electrical transfer)は縦糸移動素子(warp transfer element)(25)により実現される。シート(21)に織り込まれた導体があり、それらは導電性素子(conducting element)(23)と接触するが、複数の地点(27および図示しない下面)で各表面に連続的かつ定期的に露出して電流移動手段に接触するようにテキスタイルを縫うようにして進む。
【0054】
仕様例が以下に提供されるデザインには4つの要素がある:
1.ベルトの織り模様
2.ベルトの電気コンポーネントの絶縁
3.アノードベルトとカソードベルトの導電性素子の材料選択
4.電気移動方法
【0055】
織り方(Weave)とWTS(縦糸移動帯(Warp Transfer Strip))のデザイン
縦糸直径0.65mm、横糸直径0.80mm、1cm当たり15本の縦糸素子、および1cm当たり6本の横糸素子から構成される織り方(weave)に基づく:
・総ベルト幅=2200mm
・WTS幅=60mm
・対のWTS幅=20mm
・WTS中90本の縦糸ワイヤなどの金属ワイヤだけで形成したWTS(WST formed with metallic wires only i.e. 90 warp wires in WTS)
・幅20mmの15本の金属ワイヤからなる(i.e. 15 metal wires in a width of 20 mm)金属とポリエステルを交互にして形成した対のWTS
・5mm間隔の横糸ワイヤ
【0056】
ベルトの絶縁
ベルトを絶縁する目的は、アノードベルトとカソードベルト間の全電流が、ベルトと直接接触してショートしないで、確実に汚泥を通るようにすることである。
【0057】
実際、ベルトとの時折の接触を防ぐことが必ずしも可能なわけではない。接触は端部で最も起こりやすいので、クリッパシーム(連続ベルトを形成するためにベルトの両端を繋ぐ継ぎ目)の周りで使用されるものと同じような、端部に沿う何らかの絶縁形態が推奨される。正確な仕組みは本発明には重要でない。
【0058】
ベルトの絶縁に用いられる材料は、高電気抵抗、即ち絶縁体としての機能を持っている必要がある。0〜40Vの電圧が典型である。大部分の絶縁体はこれよりはるかに高い動作電圧のために設計されているので、絶縁体を通じての電流の漏れは問題にはならない。
【0059】
絶縁体の帯(insulator strips)が原型を保持して破裂しないとすると、電気ショートが起きた場合、その後に絶縁体の表面を被覆する液膜を介して起こる可能性が高い。この点を考慮に入れると、絶縁体もまた、非濡れ表面(non-wetting surface)を形成して水滴の分離を促すために、疎水性である、即ち水との高接触角を維持する必要がある。
【0060】
材料
アノードワイヤ
複合金属酸化物(MMO)で被覆されたチタニウム、ステンレス鋼、または銅を使用可能な直径0.8mmと0.65mmのアノードワイヤ。MMOは陰極を保護する用途で酸素を発生させるために用いられるタイプのイリジウム−タンタルをベースとする材料を使用できる。
カソードワイヤ
カソードワイヤはステンレス鋼や、耐腐食性と電気抵抗を同様に兼ね備えるその他の金属材料を利用すべきである(should utilise)。
【0061】
電気移動
前述の織り方のデザインのところで説明したように、電気移動は1つまたはそれ以上の縦糸移動帯(WTS)を介して実現される。これらは、炭素または炭素銅複合材料を含有する複数の電気ブラシと電気接触する。電気浸透効果を最適化して消費電力を制御するために、異なる電圧をベルトの長さに沿って印加する。この電気移動法によって移動ベルトへの集電と放電を行う。
【0062】
従って、本発明は、公知のEKGの実用化が限定的範囲に留まっている高伝導環境にEKGを実施するために、確立された原理に基づいて界面動電脱水原理を適用する賞賛に値する方法を提供する。
【0063】
図4は本発明のさらなる実施態様例を示す。ソック(sock)(a)、帯(strip)(b)またはシート(c)に適合させた柔軟な複合電極材料を有する実施例が示されている。上記実施態様はそれぞれePVDとして機能するのに適当な形態を提供する。
【0064】
各構造は、同一の基本の構成材、基本ファブリックまたはメッシュ(31)、フィルタファブリック(32)、第1のキャリア(34)(通常、寸法安定性がある)、および第2の分配器(33)(犠牲になり得、そして/または寸法安定性があり得る)を含む。
【0065】
ソックは図4に示されている形態で処理される材料中に挿入される。帯(strip)は図示された形態で、より好ましくはその縦軸に沿って挿入前若しくは挿入時に折り畳まれて処理される材料中に挿入される。シートまたはグリッドは図のように、より好ましくはその縦軸に沿って挿入前若しくは挿入時に折り畳まれて地面に挿入されてよく、あるいはシートを帯(strip)に類似するにようにいくつかの縦断面に切って、その後処理してもよい。材料を地面に挿入する前または挿入時に材料を折り畳む際、導電性素子が外側にあるように、即ち土壌に接触して内側にフィルタファブリックがある状態で、折り畳む必要がある。
【0066】
3つの実施態様は導電性があり、好ましくはMMOで被覆された第1の軸性カレントキャリア(axial current carriers)を含む。第2の分配器は導電性があり、ePVD表面の大半を横切って電流を分配する働きをする。第2の分配器は寸法安定性があり、かつ/または犠牲的である。
【0067】
上記導電性素子は、基本ファブリックまたはメッシュに取り付けられるか、または基本ファブリックまたはメッシュ中に一体的に組み込まれる。これはメッシュとフィルタファブリックを含むこの実施態様に示される。
【0068】
正相の処理開始時に指定されるような(as designated at the commencement of normal phase treatment)、電極配列に応じたアノードとカソードのePVDが特定の4つの要素の相対的な組み合わせまたは構成の点から同一である可能性は低い(unlikely to be identical in terms of the relative combinations or compositions of the four elements identified)ことに注目すべきである。主にカソードとして正磁極相(normal polarity phase)に用いられる電極は本発明によるMMOを組み込んでいる材料から構成されたコンポーネントの割合が低く、そして/またはアノードと比較してそれ以外の材料から構成されたコンポーネントの割合が高い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】界面動電処理するのが望ましい材料の範囲の含水量と水の塩分との関係を概念的に示す。
【図2】フィルタプレスなどの濾過膜としての使用にも適している本発明の実施態様の適当なアレンジを示す。
【図3】フィルタプレスなどの濾過膜としての使用にも適している本発明の実施態様の適当なアレンジを示す。
【図4】エレクトロカイネティック・プレハブの鉛直ドレーン(ePVD)またはエレクトロカイネティック・ウイックドレーンとしての使用に適している本発明の実施態様の適当なアレンジを示す。
【符号の説明】
【0070】
11 織りシート/織りベルト 12 高分子材料
13a,13b 細長い導体 21 テキスタイルシート
22 高分子材料 23 細長い導体(導電性素子)
24 細長い導体 25 細長い導体(縦糸移動素子)
27 地点 31 基本ファブリック/メッシュ
32 フィルタファブリック 33 第2の分配器
34 第1のキャリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合金属酸化物のコーティングで被覆された金属コア素子を含む少なくとも1つの第1の導電性電極素子(conducting electrode element)と結合した非導電性高分子ベース材料(polymeric base material)を含む複合導電材料。
【請求項2】
少なくとも1つの導電性素子は、非導電性材料の構造に組み込まれるか、あるいはその構造表面にあり、非導電性材料と一体的に結合している請求項1記載の複合導電材料。
【請求項3】
非導電性材料の中および/または非導電性材料の表面に配置または配列された(disposed or arrayed)複数の導電性素子を備える請求項2記載の複合導電材料。
【請求項4】
コア材料は有効な保護酸化被膜を形成することができる材料である先行するいずれかの請求項に記載の複合導電材料。
【請求項5】
コア材料は、チタニウム、ニオブ、ジルコニウム、ステンレス鋼、およびそれらの合金から選択される先行するいずれかの請求項に記載の複合導電材料。
【請求項6】
コーティングは、タンタル、ニオブ、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、およびそれらの混合物の酸化物および/または亜酸化物から選択される材料を含む先行するいずれかの請求項に記載の複合導電材料。
【請求項7】
非導電性高分子材料は、排水、濾過、基材強化(substrate reinforcement)またはその他の公知のジオシンセティック材の特性を含むジオシンセティックまたはジオシンセティックタイプの追加機能も提供するように選択される先行するいずれかの請求項に記載の複合導電材料。
【請求項8】
非導電性高分子材料はジオシンセティック材である先行するいずれかの請求項に記載の複合導電材料。
【請求項9】
柔軟な細長いシート材またはそれから形成した構造として構成され、導電性素子または各導電性素子(the or each conducting element)が該シートの内部または表面に配置された(disposed)ロッド、ワイヤ、テープなどの構造からなる細長い導電性素子を含む先行するいずれかの請求項に記載の複合導電材料。
【請求項10】
シート材は主として高分子ベース構造(polymeric base structure)を有するテキスタイルである請求項9記載の複合導電材料。
【請求項11】
シート材は、導電性素子が該シート材に織り込まれるか編み込まれた状態の織りテキスタイルまたは編みテキスタイルである請求項10記載の複合導電材料。
【請求項12】
複合金属酸化物で被覆した金属から構成される第1のまたは各第1の導電性素子に加えて(additional to the or each primary conducting element)、複合金属酸化物で被覆した金属以外の材料から構成される少なくとも1つの第2の導電性素子をさらに含む先行するいずれかの請求項に記載の複合導電材料。
【請求項13】
使用時に寸法安定性があるよう選択された少なくとも1つの第1の導電性素子と、使用時に該第1の導電性素子に対して犠牲的になるよう選択された(selected to be sacrifical)少なくとも1つの第2の導電性素子を含む請求項12記載の複合導電材料。
【請求項14】
犠牲素子(sacrificial element)が、鉄、鋼鉄、アルミニウム、または炭素から選択される材料(material or materials)から作られた請求項13記載の複合導電材料。
【請求項15】
電気回路の電極として配置された先行するいずれかの請求項に記載の複合導電材料を含む複合電極。
【請求項16】
電気浸透により高含水および/または高塩分の基材(substrates)を処理するためのアノードとして界面動電システムで使用するために配置された請求項15記載の複合電極。
【請求項17】
少なくとも1つの第1の電極と、処理される基材(substrate)が第1の電極と第2の電極の間に位置している状態で第1の電極から遠く離して配置した少なくとも1つの第2の電極と、基材内部で電気浸透処理を推進する(drive)ために第1の電極と第2の電極を横切って電位差を与える手段とを含み、少なくとも電極の1つが請求項1〜14のいずれかに記載の導電材料または請求項15若しくは16に記載の電極である界面動電回路。
【請求項18】
少なくとも使用時にアノードとして機能することが意図されている電極は、請求項1〜14のいずれかに記載の導電材料または請求項15若しくは16に記載の電極である請求項17記載の界面動電回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−515156(P2008−515156A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534085(P2007−534085)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003764
【国際公開番号】WO2006/048594
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(506110760)エレクトロカイネティック リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ELECTROKINETIC LIMITED
【住所又は居所原語表記】Nanotechnology Centre,Herschel Building,Newcastle University,Newcastle Upon Tyne NE1 7RU,United Kingdom
【Fターム(参考)】