説明

複合微粒子、分散液、分散液の製造方法、インクジェット記録体及びインクジェット記録体の製造方法

【課題】共存可能な成分の選択範囲が広く汎用性の高い複合微粒子とその分散液、及び該分散液の製造方法を提供することを課題とする。また、かかる複合微粒子を用いることにより、高い品質を備えるインクジェット記録体及びインクジェット記録体の製造方法を提供する。
【解決手段】水中に分散して分散液とした際のゼータ電位が正であるカチオン性微粒子と該カチオン性微粒子の表面に担持されたアニオン性化合物とからなり、水中に分散して分散液とした際のゼータ電位が負である複合微粒子を、インクジェット記録体の塗工層に配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性顔料とアニオン性化合物との複合微粒子、この複合微粒子の分散液、該分散液の製造方法、並びにインクジェット記録体及びインクジェット記録体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを微細なノズルから噴出して記録体に画像を形成させるインクジェット記録方式は、記録時の騒音が少ないこと、カラー化が容易であること、高速記録が可能であること、また、他の印刷装置より安価であること等の理由から、端末用プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、あるいは帳票印刷等で広く利用されている。
【0003】
インクジェット記録方式に使用するインクジェット記録体としては、染料系インクによる印刷を対象としたものが多い。この染料系インクは、紫外線照射、あるいは酸素、オゾンとの接触により染料が変色するなど耐候性、退色性が劣るため、印刷物が経時的に変色したり脱色したりするなどの欠点がある。このような問題は、印刷物が屋外において使用される場合に顕著である。
このため、インクジェット記録方式においても、耐候性に優れた顔料系インクが使用されるようになっている。しかしながら、顔料粒子は、通常10〜500nmの粒子径を有する粒子であり、印刷後記録部位を指などで擦ると、顔料粒子が除かれて色落ちしやすいという問題、すなわた、耐擦過性が低いという問題があった。
この顔料系インク使用時の耐擦過性の問題に対処するため、酸化物粒子表面にカチオン性化合物を担持したカチオン性微粒子を、インクジェット記録体のインク受容層に用いることが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−037946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のようなカチオン性微粒子は、その分散液にアニオン性化合物を加えると凝集を生じてしまう等、アニオン性化合物と共に用いることが困難である。そのため、例えばインクジェット記録体の光沢層を形成するためにこのカチオン性微粒子を含有する塗布液を使用する場合、離型剤としてはカチオン性離型剤しか選択できない。このように、特許文献1のようなカチオン性微粒子は、共存させて使用できる成分に制約を有するものであった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、共存可能な成分の選択範囲が広く汎用性の高い複合微粒子とその分散液、及び該分散液の製造方法を提供することを課題とする。また、かかる複合微粒子を用いることにより、高い品質を備えるインクジェット記録体及びインクジェット記録体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]水中に分散して分散液とした際のゼータ電位が正であるカチオン性微粒子と該カチオン性微粒子の表面に担持されたアニオン性化合物とからなり、水中に分散して分散液とした際のゼータ電位が負であることを特徴とする複合微粒子。
[2]アニオン性化合物がカルボン酸系化合物である[1]に記載の複合微粒子。
[3]カチオン性微粒子が、シリカ微粒子の表面にカチオン性化合物を担持したカチオン性シリカである[1]または[2]に記載の複合微粒子。
【0006】
[4][1]〜[3]の何れかに記載の複合微粒子を水系の分散媒に分散させたことを特徴とする分散液。
[5]前記複合微粒子のゼータ電位が−10〜−150mVである[4]に記載の分散液。
【0007】
[6][4]または[5]に記載の分散液の製造方法であって、
カチオン性微粒子とアニオン性化合物とを水系の分散媒中で混合して凝集物を形成させる凝集工程と、
該凝集物を前記分散媒中で機械的手段により粉砕する粉砕工程を有することを特徴とする分散液の製造方法。
【0008】
[7][1]〜[3]の何れかに記載の複合微粒子を含有する塗工層が設けられたことを特徴とするインクジェット記録体。
[8]前記複合微粒子を含有する塗工層が、前記複合微粒子を水に分散させた分散液を含む塗布液によって形成された[7]に記載のインクジェット記録体。
[9]前記複合微粒子を含有する塗工層が最表層に設けられている[7]または[8]に記載のインクジェット記録体。
[10]前記複合微粒子を含有する塗工層が、アニオン性離型剤を含有する[9]に記載のインクジェット記録体。
[11]非透気性または低透気性の支持体上にインク受容層を設けてなる基材の前記インク受容層上に、前記複合微粒子を含有する塗工層が設けられている[7]から[10]の何れかに記載のインクジェット記録体。
【0009】
[12]支持体上にインク受容層を設けてなる基材の、前記インク受容層上に、[1]〜[3]の何れかに記載の複合微粒子およびアニオン性離型剤を含有する塗布液を供給し、
前記基材を、光沢ロールとプレスロールとの間を、前記塗布液が光沢ロールに接触するように通過させてプレス塗工して光沢層を形成し、
前記光沢層が湿潤状態又は半乾燥状態にあるうちに、該光沢層を光沢ロールから剥離することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
[1]〜[3]の複合微粒子は、カチオン性微粒子の顔料系インク使用時の耐擦過性が強いという性質を有しながら、アニオン性化合物と共存可能であり、汎用性が高い。
[4]、[5]の分散液は、カチオン性微粒子の顔料系インク使用時の耐擦過性が強いという性質を有しながら、アニオン性微粒子の分散液としての性質を持つので、アニオン性化合物を添加した場合にも凝集することがなく、汎用性が高い。
[6]の分散液の製造方法によれば、上記汎用性の高い分散液を得ることができる。
[7]〜[11]のインクジェット記録体は、上記汎用性の高い複合粒子を用いるため、塗工層の組成を自由に調整することができる。そのため、所望の性能を有する塗工層を得やすく、高い品質を備えることができる。
[12]のインクジェット記録体の製造方法によれば、品質の高いインクジェット記録体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[複合微粒子]
本発明の複合微粒子は、カチオン性微粒子の表面にアニオン性化合物が担持された複合微粒子である。この複合微粒子は、水中に分散して分散液とした際のゼータ電位が負である。
【0012】
(カチオン性微粒子)
本発明の複合微粒子を構成するカチオン微粒子は、水中に分散して分散液とした際のゼータ電位が正である。
カチオン性微粒子としては、アルミニウム酸化物、アルミニウム酸化物の水和物、カチオン性シリカを好適に使用できる。
アルミニウム酸化物、アルミニウム酸化物の水和物は、解こう剤として用いる酢酸の臭気などの使用上の問題があるため、特に、カチオン性シリカが好ましい。
【0013】
(カチオン性シリカ)
カチオン性シリカは、シリカ微粒子の表面にカチオン性化合物を担持したカチオン性の微粒子である。シリカ微粒子は本来アニオン性であるが、水系の分散媒中でカチオン性化合物の存在下で機械的手段により粉砕処理することによりカチオン性の分散液とすることができる(特開2004−050811号公報等参照。)。
【0014】
シリカ微粒子としては、気相法シリカ、湿式法シリカ等の合成シリカが好ましく、特にインクジェット紙として、光沢性が得られることから、湿式法シリカが好ましい。
シリカ微粒子に担持させるカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマー、水溶性多価金属化合物、あるいはシランカップリング剤が用いられる。これらのカチオン性化合物の中でも特にカチオン性ポリマー及び水溶性多価金属化合物が好ましい。
【0015】
本発明に用いられるカチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンポリアミンおよびポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類、およびそれらの誘導体類、第2級アミノ基、第3級アミノ基、および/または第4級アンモニウム基を有するアクリル系樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン、5員環アミジン類、例えばジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物などのジシアン系カチオン樹脂、ジシアンジアミド−ジエチレントリアミン重縮合物などのポリアミン系カチオン樹脂、エポクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO共重合物、ジアリルアミン−SO共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級アンモニウム塩重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物が挙げられる。
これらの中でも、分散性からカチオン性ポリマーが好ましく、特に、第1級、第2級、第3級アミン基を有するカチオン樹脂は分散性が良好であることから好ましい。5員環を形成しているアミジン化合物が最も良好である。
カチオン性ポリマーの分子量は特に限定しないが、分散性と分散安定性から1万〜10万が好ましい。更に好ましくは2万〜7万である。分子量が小さすぎると分散性が悪く、分子量が大きすぎると分散安定性が劣ることがある。
【0016】
シリカ微粒子とカチオン性ポリマーの質量比は特に限定しないが、100:1〜30が好ましく、100:2〜15がより好ましい。カチオン性ポリマーの含有量が少なすぎると、分散液系全体のカチオン性が弱い、あるいは、分散液系全体がカチオン性にならない。すなわち、イオン交換水に分散して分散液とした際のゼータ電位が10mV以下になる。その場合、分散しても短時間で再凝集するおそれがある。
一方、カチオン性ポリマーの含有量が多すぎると、インクジェット記録体に用いる場合、顔料に担持されないカチオン性化合物が単体として存在、つまり、不純物として存在するおそれがある。
【0017】
本発明に用いられる水溶性多価金属化合物としては、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、チタン、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンの化合物が挙げられ、これらの金属の水溶性塩として用いることができる。なお、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを意味する。
【0018】
具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、ポリ酢酸アルミニウム、およびポリ乳酸アルミニウム、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム八水和物、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、塩化チタン、硫酸チタン、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも特に、ポリ塩化アルミニウム、ポリ酢酸アルミニウム、およびポリ乳酸アルミニウムなどのポリアルミニウム塩が好ましい。
具体的には、多木化学社製、タキバイン#1500やPAC250A等、浅田化学社製、ポリ水酸化アルミニウム(Paho)、また、理研グリーン社製、ピュラケムWT、などが挙げられる。これらの塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物は、特公平3−24907号、同平3−42591号、同2000−37946号、同2002−86893号、同2003−276315号公報等にも記載されている。
上記した水溶性多価金属塩化合物の添加量は、無機微粒子に対して0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0020】
シリカ微粒子と水溶性多価金属塩化合物の質量比は特に限定しないが、100:0.1〜15の範囲が好ましい。水溶性多価金属塩化合物の含有量が少なすぎると、分散液系全体のカチオン性が弱い、あるいは、分散液系全体がカチオン性にならない。すなわち、イオン交換水に分散して分散液とした際のゼータ電位が10mV以下になる。その場合、分散しても短時間で再凝集するおそれがある。
一方、カチオン性化合物の含有量が多すぎると、インクジェット記録体に用いる場合、顔料に担持されない水溶性多価金属塩化合物が単体として存在、つまり、不純物として存在するおそれがある。
【0021】
本発明に用いられるシランカップリング剤としては、特開2000−233572号公報に記載されており、それらの中からカチオン性のものを用いることができる。シランカップリング剤の添加量は、無機微粒子に対して0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
【0022】
シリカ微粒子をカチオン性化合物の存在下で機械的手段により粉砕処理するにあたり、分散媒としては、水系の分散媒を用いる。なお、本発明において水系の分散媒とは、水または水を主体とする分散媒を意味する。水系の分散媒には、少量の有機溶剤(エタノール等の低級アルコールや酢酸エチル等の低沸点溶剤)を含んでもよい。その場合、有機溶剤は全分散媒に対して20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
シリカ微粒子をカチオン性化合物の存在下で機械的手段により粉砕処理するにあたり、機械的手段としては、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、液流衝突式ホモジナイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、サンドグライダー等を用いることができる。
中でも、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、または液流衝突式ホモジナイザー、ナノマイザー、アルティマイザーを用いることが好ましい。特に不純物の混入を最小限に抑えられることから液流衝突式ホモジナイザー、ナノマイザー、アルティマイザーを用いることが好ましい。
【0024】
(アルミニウム酸化物)
アルミニウム酸化物(アルミナ)としては、周知のように、約8種の変態が知られている。すなわち、一般にギブサイト、バイヤライトまたはベーマイトなどの水酸化アルミニウムの加熱によりχ→κ→α、γ→δ→θ→α、η→θ→α、ρ→η→θ→αまたは擬γ→θ→αの様に各種の中間アルミナを経てα−アルミナに遷移し、粒成長することが知られている(例えば電気化学、28巻,p302,船木・清水;アルミナ水和物およびアルミナについて、アルミナ水和物の熱変化例参照)。
また、塩化アルミニウムや硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムなどのアルミニウム塩の熱分解によっても無定形アルミナからγ−、δ−またはθ−などの中間アルミナを経てα−アルミナに遷移することがわかっている(例えば、鉱物学雑誌19巻1号p21、p41参照)。分散質となるアルミナは、実質的にγ、η、δ、ρ、χ、θ、κ、およびα−アルミナから選ばれた単一または複数の結晶からなる酸化アルミニウムである。
本発明においては、インクジェット紙として、透明性、光沢性、インク吸収性のバランスから、少なくともα、δ、θ、γ結晶を含むことが好ましい。
【0025】
アルミニウム酸化物は、水系の分散媒中で機械的手段により粉砕処理することにより分散液とすることができる。機械的手段としては、上述のシリカ微粒子をカチオン性化合物の存在下で機械的手段により粉砕処理する際と同等の手段を採用できる。
分散媒中には、酢酸、硝酸、乳酸、塩酸等の酸を添加することが好ましい。これにより、効率よく分散させることができる。特に、特開平7−89717号公報に記載されているように、酸の存在下に陽イオン交換樹脂と接触させながら分散させることが好ましい。
【0026】
(アルミニウム酸化物の水和物)
アルミニウム酸化物の水和物(アルミナの水和物)としては、ギブサイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型、バイヤライト型、ジアスポア型の各種結晶型のものが挙げられるが、本発明においては、インクジェット紙として、透明性、光沢性、インク吸収性のバランスから、ギブサイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型であることが好ましい。
アルミニウム酸化物の水和物は、水系の分散媒中で分散、粉砕、解叩処理することにより分散液とすることができる。
【0027】
(アニオン性化合物)
本発明の複合微粒子を構成するアニオン性化合物としては、カルボン酸系化合物、スルホン酸系化合物、リン酸系化合物、エステル系化合物、またはこれらの塩が挙げられる。中でもカルボン酸系化合物が好ましく、さらにポリマーまたはその塩がより好ましい。
本発明の複合微粒子を構成するアニオン性化合物は、単独の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0028】
カルボン酸系化合物としては、炭素数が6以上、30以下である脂肪酸、ダイマー酸等、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩のような金属塩類、それらのアンモニウム塩、アミン塩であればよい。
具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸、シクロプロパンジカルボン酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、カルボキシフェニル酢酸、カルボキシフェニルプロピオン酸、フェニレンジ酢酸等の芳香族ジカルボン酸、トリカルバリル酸、トリメリト酸等の3価以上のポリカルボン酸等が挙げられる。
イタコン酸またはその塩の具体的例としては、日本純薬社製、ジュリマーAC−70Nが挙げられる。
【0029】
カルボン酸のポリマーまたはその塩としては、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸−マレイン酸共重合体、α−ヒドロキシアクリル酸ホモポリマー、C5オレフィン−マレイン酸共重合体、イソブチレン−マレイン酸共重合体等、及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩、アミン塩が好ましく、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸−マレイン酸共重合体であることが特に好ましい。
【0030】
具体的には、花王社製、ポイズ540、ポイズ530、ポイズ521、ポイズ520、日本パーオキサイド社製、ペールプラック250、ペールプラック1200、ペールプラック5000、日本ゼオン社製、クインフロー540、クインフロー542、クインフロー543、クインフロー560、クインフロー640、クインフロー750、東亞合成社製アロンT-40(M)、クラレ社製イソバン06、イソバン04、イソバン600、日本触媒社製アクアリックDL100等が挙げられる。
【0031】
スルホン酸系化合物の具体例としては、例えば、ジフェニルエーテルスルホン酸、n−ブチルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、n−アミルベンゼンスルホン酸、n−オクチルベンゼンスルホン酸、n−ドデシルベンゼンスルホン酸、n−オクタデシルベンゼンスルホン酸、n−ジブチルベンゼンスルホン酸、及びアルキルナフタレンスルホン酸、iso−プロピルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、無置換キナクリドン、ジメチルキナクリドン、ジクロロキナクリドン等を公知の方法により濃硫酸等と反応させることで合成できるキナクリドンスルホン酸類、等が挙げられる。また、それらのナトリウム塩、カリウム塩のような金属塩類、それらのアンモニウム塩などが挙げられる。
【0032】
スルホン酸のポリマーまたはその塩としては、スチレンスルホン酸ポリマー及びこのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩、アミン塩があり、具体的には、ライオン社製、ポリティーPS−1900、特開2000−226416号公報に記載のスルホン酸基を有するポリマーが挙げられる。
【0033】
エステル系化合物の具体例としては、アルキル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸、トリスチレン化フェノール硫酸エステル、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェノール硫酸エステル、酢酸ビニル,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸プロピル,アクリル酸ブチル,アクリル酸ヘキシル,アクリル酸オクチル,アクリル酸ラウリル,アクリル酸ベンジル,アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸プロピル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸ヘキシル,メタクリル酸オクチル,メタクリル酸ラウリル,メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル,フマル酸メチル,フマル酸エチル,フマル酸プロピル,フマル酸ブチル,フマル酸ジメチル,フマル酸ジエチル,フマル酸ジプロピル,フマル酸ジブチル,マレイン酸メチル,マレイン酸エチル,マレイン酸プロピル,マレイン酸ブチル,マレイン酸ジメチル,マレイン酸ジエチル,マレイン酸ジプロピル,マレイン酸ジブチル、アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンリン酸エステルなどが挙げられる。また、それらのナトリウム塩、カリウム塩のような金属塩類、それらのアンモニウム塩などが挙げられる。
【0034】
(質量比等)
本発明の複合粒子は、水中に分散して分散液とした際のゼータ電位が負である。カチオン性微粒子とアニオン性化合物の質量比は特に限定しないが、100:1〜50の範囲が好ましく、更に好ましくは100:2〜30である。
【0035】
アニオン性化合物の含有量が少なすぎると、分散液系全体のアニオン性が弱い、あるいは、分散液系全体がアニオン性にならない。すなわち、イオン交換水に分散して分散液とした際のゼータ電位が−10mVより大きくなる。その場合、分散しても短時間で再凝集するおそれがある。
【0036】
一方、アニオン性化合物の含有量が多すぎると、インクジェット記録体に用いる場合、顔料に担持されないアニオン性化合物が単体として存在、つまり、不純物として存在するおそれがある。
【0037】
カチオン性微粒子の平均粒子径(二次粒子の場合は、二次粒子径)は、10〜800nmであることが好ましく、15〜500nmであることがより好ましい。また、複合微粒子の平均粒子径(二次粒子の場合は、二次粒子径)は、10〜1000nmであることが好ましく、15〜800nmであることがより好ましい。
本発明の複合粒子は、分散液の状態で用いることが好ましい。ただし、分散媒を除去して、粉体の状態で用いることもできる。
【0038】
[分散液]
本発明の分散液は、本発明の複合微粒子を水系の分散媒に分散させたものである。分散液中の複合微粒子のゼータ電位は−10〜−150mVであることが好ましく、−20〜−120mVであることがより好ましい。
負の絶対値を10mV以上とすることにより、アニオン性化合物との共存がより容易となる。
【0039】
[分散液の製造方法]
本発明の分散液の製造方法は、カチオン性微粒子とアニオン性化合物とを水系の分散媒中で混合して凝集物を形成させる凝集工程と、
該凝集物を前記分散媒中で機械的手段により粉砕する粉砕工程を有することを特徴とする。
【0040】
(凝集工程)
凝集工程では、カチオン性微粒子とアニオン性化合物とを水系の分散媒中で混合する。具体的には、アニオン性化合物にカチオン性微粒子の分散液を添加、あるいは、カチオン性微粒子の分散液にアニオン性化合物を添加するという手順である。
【0041】
(分散工程)
分散工程では、凝集工程で形成された凝集物を水系の分散媒中で機械的手段により粉砕する。機械的手段としては、上述のシリカ微粒子をカチオン性化合物の存在下で機械的手段により粉砕処理する際と同等の手段を採用できる。
【0042】
[インクジェット記録体]
本発明のインクジェット記録体の具体的な構成に特に限定はなく、例えば、支持体上にインク受容層が一層または多層形成されたものとすることができる。また、インク受容層の上にさらに光沢層が形成されたものとすることができる。
本発明のインクジェット記録体は、本発明の複合微粒子を含有する塗工層が設けられたものである。この本発明の複合微粒子を含有する塗工層は、上記インク受容層の全部または一部であってもよいし、光沢層であってもよい。なかでも、最表層(記録面側)に当該塗工層が存在することが好ましく、特に光沢層として存在することが好ましい。
【0043】
本発明の複合微粒子を含有する塗工層の塗料は、カチオン性微粒子の顔料系インク使用時の耐擦過性が強いという性質を有しながら、アニオン性化合物も共存させることができ、同時多層塗工装置、例えば、複数個の塗布液供給口を有する多層式スロットダイコーター、多層式スライドビードコーター、及び多層式カーテンダイコーターで塗工する際に、アニオン性微粒子を有する塗工層の塗料との凝集による塗工不良を発生させることなく塗工することも可能なので、任意の塗工方法で、様々な要請に応じた塗工層を任意に設計することが可能である。
中でも、最表層に当該塗工層を利用すると、顔料系インク使用時の耐擦過性に優れたインクジェット記録体とすることかできる。
さらに、最表層が光沢層であれば、アニオン性の離型剤を共存させることができるので、光沢層形成時に優れた離型性も備えることができ、高品質の光沢層を容易に形成できる。
光沢層に本発明の複合微粒子を利用する場合の好ましい構成は、支持体上にインク受容層が設けられた基材に、光沢層が形成されたものである。この場合、支持体とインク受容層の間に架橋剤含有層を設けることもできる。以下に、この好ましい構成について詳述する。
【0044】
(支持体)
支持体としては、銀塩写真並みの光沢を得ることができることから、非透気性支持体又は低透気性支持体を用いることが好ましい。支持体として非透気性支持体又は低透気性支持体を用いれば、インク中の溶媒の浸透を防止できるので、コックリングを抑えることができる。その結果、印字物の外観を良好にできる上に、コックリングした記録体と記録ヘッドとの接触による記録用紙の汚損や破れ又は記録ヘッドの故障を防止することができる。
これに対し、紙基材などの透気性支持体を用いた場合には、印字した際にインク中に含まれる水分等の溶媒の影響で支持体が伸びて波打ってコックリングが生じることがあるが、本発明における支持体が透気性支持体であっても差し支えない。
【0045】
低透気性支持体又は非透気性支持体とは、透気度が500秒以上、好ましくは1000秒以上である支持体を意味する。透気性は、一般に、紙や不織布などの多孔性を評価する項目として知られている透気度によって表される。透気度は、空気100mlが面積645mmの試験片を通過するのに要する時間で表され、JIS P 8117(紙及び板紙の透気度試験方法)に規定されている。
【0046】
具体的な低透気性支持体又は非透気性支持体としては、例えば、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のフィルム類が挙げられる。また、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンで紙などの基材表面を被覆した樹脂被覆紙、金属フォイル、ポリプロピレンを延伸し、特殊加工を施した合成紙などのシート類が例示される。支持体は、その上に形成されるインク受容層や光沢層の形成方法、或いは、使用される用途などに応じて、上記例示のものの中から適宜選択される。
上記支持体の中でも、写真調のインクジェット記録体にするためには、合成紙、樹脂被覆紙が好ましく、とりわけ、酸化チタンを練り込んだ樹脂被覆紙、所謂RC紙からなる支持体は、仕上がった外観が写真印画紙と同等であるため、特に好ましく用いられる。
合成紙としては、炭酸カルシウムなどの無機顔料を含有するポリプロピレン樹脂を押出し、二軸延伸して得られる合成紙が好ましく、表面に凹凸のないスキン層を有する合成紙が特に好ましい。
【0047】
支持体が、ポリエチレン層が基材を被覆した樹脂被覆紙の場合、ポリエチレン層の塗工量は、3〜50g/mが好ましく、5〜30g/mがより好ましい。ポリエチレン層の塗工量が3g/m未満の場合は、樹脂被覆時にポリエチレンの穴等の欠陥が多くなりやすく、厚みのコントロールに困難がある場合が多く、平滑性も得にくくなる。逆に50g/mを超えると、コストが増加する割には、得られる効果が小さく、不経済である。
また、インク受容層との接着性を高めるために、樹脂層表面にコロナ放電処理を施したり、アンカーコート層を設けたりすることが好ましい。
【0048】
また、樹脂被覆紙の基材として紙を用いる場合、紙基材としては、木材パルプを主材料として製造されたものが好ましく用いられる。木材パルプは、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を適宜使用することができ、これらのパルプは紙力や平滑性、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。叩解度は、特に限定されないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS−P−8121)程度が好ましい範囲である。またいわゆるECF、TCFパルプ等の塩素フリーパルプも好ましく使用できる。また、必要に応じて、木材パルプに顔料を添加することができる。顔料としては、タルク、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、シリカ、ゼオライト等が好ましく使用される。顔料の添加により、不透明性や平滑度を高めることができるが、過剰に添加すると、紙力が低下する場合があるから、顔料の添加量は、対木材パルプ1〜20質量%程度が好ましい。
【0049】
なお、支持体は、蛍光染料、蛍光顔料などの蛍光増白剤により色目が調節されたものであってもよいし、帯電防止層が設けられたものであっても構わない。また、支持体は透明であってもよいし不透明であってもよい。
【0050】
(インク受容層)
インク受容層は、支持体上に形成されている層であって、主としてインク中の染料や顔料の色素を固定するとともに、インク中の溶媒を吸収する層である。
インク受容層は一層であってもよいし多層であってもよい。インク受容層の少なくとも一層は、顔料等の微粒子と接着剤とを含有することが好ましい。
【0051】
微粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、無定形シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト(天然ゼオライト、合成ゼオライト)、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等の透明又は白色の微粒子などが挙げられ、1種もしくはそれ以上を併用することができる。
【0052】
接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、カチオン変性PVA、シリル変性PVA等の変性PVAなどのPVA類、ポリビニルアセタール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドなどの水溶性樹脂や、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質類、デンプン、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロースなどのセルロース誘導体、あるいは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体、スチレン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(共)重合体、メラミン系樹脂、尿素系樹脂又はオレフィン系樹脂などのような、一般に塗布紙分野で公知公用の各種接着剤が挙げられる。また、感温点以下の温度領域では親水性を示し、感温点より高い温度領域では疎水性を示す感温性高分子化合物なども使用できる。これらは、適宜併用することもできる。
【0053】
また、インク受容層にはカチオン性化合物が含まれていることが好ましい。カチオン性化合物としては、例えば、1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、2)第2級アミノ基、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、3)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミジン類、4)ジシアンジアミド・ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、5)ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、6)エピクロルヒドリン・ジメチルアミン共重合体、7)ジアリルジメチルアンモニウム−SO重縮合体、8)ジアリルアミン塩・SO重縮合体、9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、11)アリルアミン塩の共重合体、12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、13)アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等の公知のカチオン性化合物等が例示される。
中でも、5員環アミジン構造を有するポリビニルアミン共重合物4級アンモニウム塩酸塩、ポリアリルアミンの一部または全部の塩酸塩、アミノ基の一部がメトキシカルボニル変性されたポリアリルアミンの一部または全部の塩酸塩はインク吸収性光沢性、画像の鮮明性に優れているので好ましい。
【0054】
また、インク受容層の接着剤がPVA類の場合、インク受容層中に架橋剤を適宜添加してもよい。これにより、インク受容層の塗工量を増やすことができる。
PVA類の架橋剤としては、例えば、ホウ素化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等の多価金属化合物、エポキシ化合物、グリシジル化合物、ジヒドラジド化合物、アルデヒド化合物、アミン化合物、メチロール化合物等が挙げられる。これらの架橋剤の中でも、増粘またはゲル化の進行が速いことから、ホウ素化合物が好ましく、硼酸および/または硼砂がより好ましい。
硼酸としては、オルト硼酸、メタ硼酸、次硼酸、四硼酸、五硼酸等が挙げられる。硼酸の中では、オルト硼酸と四硼酸二ナトリウムが好ましい。硼砂とは、ナトリウムの含水硼酸塩鉱物であり、その組成はNa・10H2Oである。実質的にはNa4(四硼酸二ナトリウム)が架橋剤成分である。
【0055】
また、インク受容層には、必要に応じて、一般的に塗工紙の製造において使用される各種顔料、分散剤、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の保存性向上剤、界面活性剤、消泡剤、着色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤を適宜添加してもよい。
【0056】
(架橋剤含有層)
インク受容層の接着剤がPVA類の場合、支持体とインク受容層の間に架橋剤、増粘剤および界面活性剤を有する架橋剤含有層を設けることが出来る。これにより、インク受容層の塗工量を増やすことができる。
【0057】
PVA類の架橋剤としては、上記インク受容層中に添加する場合と同様に、ホウ素化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等の多価金属化合物、エポキシ化合物、グリシジル化合物、ジヒドラジド化合物、アルデヒド化合物、アミン化合物、メチロール化合物等が挙げられる。これらの架橋剤の中でも、増粘またはゲル化の進行が速いことから、ホウ素化合物が好ましく、硼酸および/または硼砂がより好ましい。
硼酸としては、オルト硼酸、メタ硼酸、次硼酸、四硼酸、五硼酸等が挙げられる。硼酸の中では、オルト硼酸と四硼酸二ナトリウムが好ましい。
【0058】
増粘剤は、これを添加することにより架橋剤含有層用塗布液の粘度が増大するものであればよく、特に限定されないが、例えば、ゼラチン、バイオガム、セルロース誘導体、グアーガム類、アルギン酸ソーダ、ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0059】
バイオガムとしては、例えば、キサンタンガム、ウエランガム、ジェランガム等が挙げられる。セルロース誘導体としては、例えば、カチオン化セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。グアーガム類としては、例えば、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、カチオン化グアーガム等が挙げられる。
【0060】
セルロース誘導体は、増粘効果が比較的高く、ゲル化強度が比較的低いというバランスの点で優れており好ましい。セルロース誘導体の重合度は、架橋剤含有層用塗布液の粘度調製が比較的容易である点で500〜2000が好ましく、800〜1800がより好ましい。
【0061】
増粘剤によって、架橋剤含有層用塗布液の粘度を所定の範囲となるように調整できる。架橋剤含有層用塗布液の粘度の所定の範囲としては、4〜500mPa・sが好ましい。
架橋剤含有層における増粘剤の含有量に特に限定はないが、少量の添加で所定の粘度に達する場合は、粘度調整が難しいため好ましくない。一方、増粘剤の添加量が多すぎると架橋剤の効果を阻害するため好ましくない。したがって、架橋剤に対して1〜100質量%の範囲内で増粘剤を含有することが好ましい。換言すれば、1〜100質量%の範囲内の含有量で所定の粘度とできる増粘剤を用いることが好ましい。
【0062】
架橋剤含有層は、界面活性剤を含有することにより、支持体表面に塗工する際におけるハジキが抑えられ、塗工面が均一な架橋剤含有層とすることができる。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0063】
アニオン系界面活性剤としては、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル塩系等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、アミン塩系、4級アンモニウム塩系等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系、ポリエチレングリコール系、多価アルコール系、等が挙げられる。これらの中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、界面活性効果が高い一方、消泡性を有しているため好ましい。
【0064】
架橋剤含有層中の界面活性剤の含有量は、架橋剤に対して0.001〜10質量%であることが好ましい。界面活性剤の含有量が0.001質量%未満でも、10質量%を超えても、支持体表面に塗工する際に塗布液のハジキが発生するので好ましくない。
【0065】
架橋剤含有層には、架橋剤の効果を阻害しない限り、ポリビニルアセタール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドなどの水溶性樹脂や、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質類、デンプン、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロースなどのセルロース誘導体、あるいは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体、スチレン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(共)重合体、メラミン系樹脂、尿素系樹脂又はオレフィン系樹脂などのような、一般に塗布紙分野で公知公用の各種接着剤を適宜含有してもよい。また、必要に応じて、一般的に塗工紙の製造において使用される各種顔料、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の保存性向上剤、消泡剤、着色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤を添加することもできる。
【0066】
(光沢層)
光沢層には、本発明の複合微粒子およびアニオン性離型剤が含まれる。アニオン性離型剤の含有量は、微粒子100質量部に対して1〜15質量部であることが好ましい。このような範囲とすることで、光沢層形成時に光沢ロールからより剥離しやすくなる。
【0067】
微粒子としては、本発明の効果を損なわない範囲で、他のアニオン性微粒子を含有してもよい。例えば、コロイダルシリカ、気相法シリカ、カオリン、焼成カオリン等の透明または白色顔料が例示される。これらの中でも、コロイダルシリカ、気相法シリカは、優れた光沢が得られるので好ましい。
【0068】
アニオン性離型剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸等、及びこれらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩、アミン塩が挙げられる。
中でも、下式(1)で表される化合物を使用することが好ましい。
【0069】
【化1】

【0070】
ただし、式(1)中、Rは炭素数8〜28のアルキル基又はアルケニル基を表し、例えば、オレイル基、ステアリル基、ラウリル基、パルミチル基、ミリスチル基などが挙げられる。これらの中でも、離型性が長時間保たれることから、オレイル基、ステアリル基が好ましい。
〜Rは、H又は炭素数1〜4のアルキル基(すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基)を表し、中でも、Hが好ましい。また、R〜Rはそれぞれ同じであってもよいし異なっていてもよいが、R〜Rがいずれも同じであることが好ましい。
上記式(1)の離型剤は、特に離型性が良好で且つインク吸収性を阻害しない、優れた離型剤である。
【0071】
式(1)の具体例として、オレイン酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、ラウリン酸アンモニウム、パルミチン酸アンモニウム、ミリスチン酸アンモニウム、オレイン酸テトラメチルアンモニウム、ステアリン酸テトラメチルアンモニウム、ラウリン酸テトラメチルアンモニウム、パルミチン酸テトラメチルアンモニウム、ミリスチン酸テトラメチルアンモニウム、オレイン酸テトラエチルアンモニウム、ステアリン酸テトラエチルアンモニウム、ラウリン酸テトラエチルアンモニウム、パルミチン酸テトラエチルアンモニウム、ミリスチン酸テトラエチルアンモニウム、オレイン酸テトラn−ブチルアンモニウム、ステアリン酸テトラn−ブチルアンモニウム、ラウリン酸テトラn−ブチルアンモニウム、パルミチン酸テトラn−ブチルアンモニウム、ミリスチン酸テトラn−ブチルアンモニウム等が挙げられる。
これらの中でも、離型性が特に優れる点で、オレイン酸アンモニウムが好ましい。
【0072】
光沢層には、インク吸収性を阻害しない限り、ポリビニルアルコール(PVA)、カチオン変性PVA、シリル変性PVA等の変性PVAなどのPVA類、カルボン酸系化合物、スルホン酸系化合物、リン酸系化合物、エステル系化合物、またはこれらの塩などのアニオン性化合物、ポリビニルアセタール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドなどの水溶性樹脂や、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質類、酸化でんぷん、エステル化デンプン等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等などのセルロース誘導体、グアーガム類、(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体、スチレン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(共)重合体、メラミン系樹脂、尿素系樹脂又はオレフィン系樹脂などのような、一般に塗布紙分野で公知公用の各種添加剤接着剤を適宜含有してもよい。
各種添加剤の中でも、カルボン酸系化合物、スルホン酸系化合物、リン酸系化合物、エステル系化合物、またはこれらの塩などのアニオン性化合物、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパク質類、酸化でんぷん、エステル化デンプン等のデンプン類、セルロース誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、鏡面ロールからの離型性がよいので好ましい。
また、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の保存性向上剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、着色剤、蛍光増白剤、分散剤、増粘剤等の各種助剤を添加することもできる。
【0073】
[インクジェット記録体の製造方法]
支持体上にインク受容層が設けられた基材に、本発明の複合微粒子を含む光沢層が形成されたインクジェット記録体の製造方法について、図1を参照しつつ説明する。係る構成のインクジェット記録体の製造方法では、まず、支持体11上にインク受容層12を設けてなる基材10を用意する。
【0074】
(基材の作成)
支持体11上にインク受容層12が設けられた基材10を得るには、溶媒中に、上述したインク受容層の成分を分散させた塗布液を支持体に塗工し、乾燥させる。インク受容層12用の塗布液の溶媒としては、特に限定はないが、塗工適性などの理由で、水が好ましい。
インク受容層12の塗工量の合計は、5〜70g/mが好ましく、10〜50g/mがより好ましく、15〜40g/mが更に好ましい。また、塗工層の厚みの合計は、7〜105μmが好ましく、15〜75μmがより好ましく、22〜60μmがさらに好ましい。塗工量が5g/m未満の場合、光沢層が十分に形成できない可能性があるのみならず、インク吸収性が低下し、記録適性が劣る場合があり、塗工量が70g/mを超えると、塗工層の強度が低下し、記録用紙の断裁加工時や、プリンタでの記録体の搬送時に、トラブルを起こしやすくなるおそれがある。
塗工工程は1回でもよく、また、複数回行ってもよい。塗工工程を複数回行うと、インク受容層を多層とすることもできる。また、塗布液を複数回に分けて塗工することで、ひび割れの発生を抑制しながら多くの塗布液を塗工することができ、インク受容層のインク吸収容量を大きくすることができる。
【0075】
インク受容層12の接着剤がPVA類の場合、インク受容層12に架橋剤を添加することにより、ひび割れを抑制しながらインク受容層12の塗工量を増すことができ、インク受容層12のインク吸収容量を大きくすることができる。
この場合、あらかじめ、インク受容層12用の塗布液中に架橋剤とを混合すると、時間の経過とともにPVA類と架橋剤との反応による塗布液の粘度上昇が起こり、きれいなインク受容層を形成できない可能性がある。このため、インク受容層12用の塗布液に架橋剤を添加する場合は、塗布液を、PVA類成分を含む液と、架橋剤成分を含む液との少なくとも2液、必要に応じて複数の液に分けておき、塗工時に連続混合して塗布液を供給、塗工することが好ましい。
連続混合で均一に混合するために、それぞれの液をタンク(釜)に供給しながら攪拌機で攪拌してもよいが、攪拌の強さによっては塗布液中に空気を巻き込み泡が発生し、インク受容層のひび割れの原因となる場合がある。塗布液中に泡を発生させることなく均一に混合するには、インライン型の回転式ミキサー等の動的連続混合機、スタティックミキサー等の静的連続混合機等の混合機を用いることが好ましい。
また、インク受容層12を多層とし、その多層の間に架橋剤の水溶液を塗布することによって、インク受容層12に架橋剤を添加することもできる。
【0076】
インク受容層12の塗工装置としては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、リンプコーター、スライドビードコーター、多層式スロットダイコーター、多層式スライドダイコーター、及び多層式カーテンダイコーター等、各種公知の塗工装置が利用できる。特に、ダイコーターやカーテンコーター、スライドビードコーター、多層式スロットダイコーター、多層式スライドダイコーター、及び多層式カーテンダイコーターは、塗工量の均一性に優れるため、特に高精細な記録を目的とする光沢タイプのインクジェット記録体には、好ましい塗工方法である。
塗膜の乾燥方法としては、特に限定はないが、従来から公知公用の熱風乾燥、ガスヒーター乾燥、高周波乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥、レーザー乾燥、電子線乾燥等の各種加熱乾燥方式が適宜採用される。
【0077】
また、インク受容層12の接着剤がPVA類の場合、支持体11とインク受容層12の間に架橋剤含有層を形成してもよい。これにより、ひび割れを抑制しながらインク受容層12の塗工量を増すことができ、インク受容層12のインク吸収容量を大きくすることができる。
【0078】
支持体11とインク受容層12の間に架橋剤含有層を形成するには、インク受容層12の形成に先立ち、溶媒中に、上述した架橋剤含有層の含有成分を分散あるいは溶解させた塗布液を支持体に塗工し、乾燥させる。架橋剤含有層用の塗布液の溶媒としては、特に限定はないが、塗工適性などの理由で、水が好ましい。
架橋剤含有層の塗工量は、0.1〜3.0g/mが好ましい。塗工量が0.1g/m未満の場合、架橋剤含有層が十分に形成できない可能性があるのみならず、架橋剤としての効果が弱いため、インク受容層12の塗工量を増やすことが出来ない場合がある。一方、塗工量が3.0g/mを超えると、架橋剤含有層上にインク受容層12の塗布液を塗工する際に、インク受容層12の塗布液が塗工直後から架橋によって増粘し、塗工を行うのが難しくなるおそれがある。
【0079】
架橋剤含有層の塗工装置としては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、リンプコーター、スライドビードコーター、多層式スロットダイコーター、多層式スライドダイコーター、及び多層式カーテンダイコーター等、各種公知の塗工装置が利用できる。
塗膜の乾燥方法としては、特に限定はないが、従来から公知公用の熱風乾燥、ガスヒーター乾燥、高周波乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥、レーザー乾燥、電子線乾燥等の各種加熱乾燥方式が適宜採用される。
【0080】
(光沢層の形成)
次に、基材10のインク受容層12上に光沢層30を形成する。基材10上に光沢層30を形成するには、溶媒中に、上述した光沢層の成分を分散させた塗布液を基材10にプレス塗工する。光沢層30用の塗布液の溶媒としては、特に限定はないが、塗工適性などの理由で、水が好ましい。
【0081】
塗布液のプレス塗工は、インク受容層12に塗布された塗布液が湿潤状態又は半乾燥状態にあるうちに、基材10を、光沢ロール21とプレスロール22との間を通過させてプレス塗工することにより行われる。
【0082】
光沢ロール21の表面温度は、乾燥条件等の操業性、インク受容層12への密着性、光沢層表面の光沢性から、40〜130℃の範囲が好ましく、70〜120℃の範囲がより好ましい。光沢ロール21の表面温度が、40℃未満の場合は、インクジェット記録体の表面強度が低下するおそれや、インク受容層12の接着剤が軟化し難く、インク受容層12への密着性が悪化したりする。130℃を超える場合は、インク受容層12の接着剤の成膜が進みすぎるためインク吸収性が低下したり、塗布液が沸騰し、光沢面が悪化するおそれがある。
光沢ロール21は、耐熱性が高く、優れた鏡面性が得られることから、金属ロールであることが好ましい。また、表面の平均線中心粗さが10μm以下であることが好ましい。
【0083】
プレスロール22の材質は特に制限されないが、光沢ロールによって加熱されることから、耐熱樹脂が好ましい。
プレスロール22によるプレスは、光沢ロール21とプレスロール22の間の線圧が、好ましくは50〜3500N/cm、より好ましくは200〜3000N/cmになるように行うことが好ましい。光沢ロール21とプレスロール22の間の線圧が、50N/cm未満の場合は、線圧が均一になり難く光沢性が低下したり、光沢層のインク受容層12に対する密着性が低下し、表面がひび割れたりするおそれがあり、3500N/cmを超える場合は、過度の圧力でプレスするためにインク受容層12および光沢層の空隙を破壊するためにインク吸収性が低下するおそれがある。
【0084】
光沢層の塗布量は、乾燥質量として、0.01〜3g/mが好ましく、0.03〜2g/mがより好ましく、0.05〜1g/mが更に好ましい。塗布量が0.01g/m未満の場合は、十分な光沢層を形成することが困難なために、光沢度が低くなりやすい。また、塗布量が3g/mを超えると、光沢度は得やすいが、インク吸収性や記録濃度が低下しやすい。
また、光沢層に微粒子としてコロイダルシリカやアルミナ等の一次粒子を用いる場合にはインク吸収速度が低くなりやすいため、光沢層の厚みが0.02〜4μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがより好ましい。また、インク吸収容量とインク吸収速度との兼ね合いから、光沢層の厚みがインク受容層12全体の厚みの1/10以下であることが好ましく、1/20以下であることがより好ましい。
【0085】
なお、プレス塗工は、図1に示す方法で行わなくてもよい。すなわち、光沢ロール21とプレスロール22とを左右に並べて配置し、光沢ロール21とプレスロール22との接線の上部に塗布液溜まりを形成して、縦方向に基材10を通過させたが、例えば、光沢ロールとプレスロールを上下に並べて配置し、インク受容層上に塗布液を供給して、横方向に積層体を通過させてもよい。
【0086】
また、インク受容層、光沢層等の塗工層の形成方法は、上述のように塗布液を塗工する方法に限定されない。例えば、特開平11−254817号公報に記載されているように、粉体状の塗工層成分を混合したものを乾式塗工し、これを加熱溶融して定着させることによっても形成できる。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、もちろんこれらに限定されるものではない。なお、例中の「部」および「%」は、特に断わらない限りそれぞれ質量部および質量%を示す。
【0088】
[実施例1]
(紙支持体の作成)
CSF(JIS P 8121)が250mLまで叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、CSFが250mLまで叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とを、質量比2:8の割合で混合し、濃度0.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリー中に、パルプ絶乾質量に対し、カチオン化澱粉2.0%、アルキルケテンダイマー0.4%、アニオン化ポリアクリルアミド樹脂0.1%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.7%を添加し、十分に攪拌して抄紙用パルプスラリーを調製した。上記組成のパルプスラリーを長網抄紙機で抄紙し、得られた湿紙をドライヤー、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量180g/m、密度1.0g/cmの原紙を製造した。上記サイズプレス工程に用いたサイズプレス液は、カルボキシル変性ポリビニルアルコールと塩化ナトリウムとを2:1の質量比で混合し、これを水に加えて過熱溶解し、濃度5%に調製したものであり、このサイズプレス液を未サイズプレス原紙の両面に、合計で25ml/mの塗布量になるように塗布して、サイズプレス原紙を作製した。
【0089】
(ポリオレフィン樹脂組成物1の調製)
長鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926g/cm、メルトインデックス20g/10分)35部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm、メルトインデックス2g/10分)50部、アナターゼ型二酸化チタン(商品名:A−220、石原産業社製)15部、ステアリン酸亜鉛0.1部、酸化防止剤(商品名:Irganox 1010、チバガイギー社製)0.03部、群青(商品名:青口群青NO.2000、第一化成社製)0.09部、蛍光増白剤(商品名:UVITEX OB、チバガイギー社製)0.3部を混合し、ポリオレフィン樹脂組成物1を調製した。
【0090】
(ポリオレフィン樹脂組成物2の調製)
高密度ポリエチレン樹脂(密度0.954g/cm、メルトインデックス20g/10分)65部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm、メルトインデックス2g/10分)35部を溶融混合し、ポリオレフィン樹脂組成物2を調製した。
【0091】
(樹脂被覆した支持体の作成)
前記紙支持体の両面に、コロナ放電処理を施した後、バンバリーミキサーで混合分散したポリオレフィン樹脂組成物1を、紙支持体のフェルト面側に塗工量20g/mとなるように、ポリオレフィン樹脂組成物2を、紙支持体のワイヤー側に、塗工量25g/mとなるように、T型ダイを有する溶融押出し機(溶融温度320℃)で塗布し、フェルト面側を鏡面のクーリングロール、ワイヤー面側を粗面のクーリングロールで冷却固化して、平滑度(王研式、J.TAPPI No.5)が6000秒、不透明度(JIS P 8138)が93%の樹脂被覆した支持体を作製した。
【0092】
(第2インク受容層用塗布液の調製)
湿式法合成非晶質シリカ(商品名:Sylojet703A、GRACE Davison社製)100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−145、重合度:4500、ケン化度:99%、クラレ社製)の7%水溶液51部、水6部からなる組成物を混合攪拌して第2インク受容層用塗布液を調製した。
【0093】
(第2インク受容層の塗工)
第2インク受容層用塗布液をダイコーターで乾燥塗工量が20g/mとなるように、樹脂被覆した支持体上に、塗布乾燥して第2インク受容層を設けた。厚みは30μmであった。
【0094】
(第1インク受容層用塗布液Aの調製)
気相法シリカ(商品名:レオロシールQS−30、平均一次粒子径9nm、比表面積300m/g、トクヤマ社製)をホモミキサーによりイオン交換水中において分散粉砕する工程と、その後に、ナノマイザー(商品名:ナノマイザー、ナノマイザー社製)を用いて粉砕分散する工程との組み合わせを繰り返し、得られた分散液を分級して、平均二次粒子径80nmの10%分散液を調整した。この分散液のシリカ固形分換算100部に、カチオン性化合物として、5員環アミジン構造を有するポリビニルアミン共重合体アンモニウム塩酸塩(商品名:ハイマックスSC−700M、分子量:3万、ハイモ社製)11部(固形分換算)を添加し、増粘した凝集体分散液を得た。この増粘した凝集体分散液を、再度、ホモミキサーにより分散し、さらにナノマイザーを用いて、粉砕分散を繰り返し、平均二次粒子径が200nmの10%カチオン化シリカ分散液を調製した。次いで、このカチオン化シリカ分散液100部にポリビニルアルコール(商品名:PVA−145、重合度:4500、ケン化度:99%、クラレ社製)の7%水溶液26部、水22部からなる組成物を混合攪拌して、第1インク受容層用塗布液Aを調製した。
【0095】
(第1インク受容層の塗工)
第2インク受容層に、0.5%硼砂水をバーコーターで20g/m塗布後、第1インク受容層用塗布液Aをダイコーターで乾燥塗工量が10g/mとなるように、塗布乾燥して第1インク受容層を設けた。厚みは18μmであった。
【0096】
(カチオン性顔料分散液1の調製)
ポリ塩化アルミニウム50%水溶液(商品名:タキバイン#1500、多木化学社製)40部をイオン交換水400部で希釈して、攪拌しながら、30℃に昇温した。次いで、アニオン性の一次粒子に分散しているコロイダルシリカ(商品名:カタロイドSI−50、平均一次粒子径:25nm、触媒化成工業社製)500部をイオン交換水700部で希釈した後、上記ポリ塩化アルミニウム水溶液に、1分あたり8部の割合で、攪拌しながら、添加した。添加後、温度を35℃に保持して、1時間攪拌した。次いで、対向衝突型粉砕分散装置アルティマイザーシステム(型番:HJP−25005、スギノマシン社製)を用いて、200MPaの圧力で粉砕分散作業を繰り返した後、イオン交換水を加え、平均粒子径が35nmの16%カチオン性顔料分散液1を調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で1%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は52.9mVであった。
【0097】
(複合微粒子分散液Aの調製)
前記カチオン性顔料分散液1をイオン交換水で10%に希釈し、この分散液459部を、アニオン性化合物アクリル酸−マレイン酸共重合体のナトリウム塩(商品名:ポイズ520、花王社製)5%水溶液83部中に、攪拌しながら投入し、さらに14部のイオン交換水を添加した後、ホモミキサー(回転速度:1500rpm)で30分ほど分散した。その分散液を対向衝突型粉砕分散装置アルティマイザーシステム(型番:HJP−25005、スギノマシン社製)を用いて、150MPaの圧力で粉砕分散作業を繰り返し、平均粒子径が40nmの9%複合微粒子分散液Aを調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−40.0mVであった。
【0098】
(光沢層用塗布液Aの調製)
複合微粒子分散液A 163部、オレイン酸アンモニウム(商品名:DEF−116T、日新化学研究所社製)2部、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(商品名:オルフィンE1004、日信化学社製)7部、水827部からなる組成物を混合攪拌して光沢層用塗布液Aを調製した。
【0099】
(インクジェット記録体の作成)
樹脂被覆した支持体にインク受容層を設けた基材上に、光沢層用塗布液Aを図1の装置を用いて、塗布し、同時に、表面温度100℃としたクロム鍍金仕上げした鏡面ドラムに線圧2000N/cmで圧接し、直ちに鏡面ロールより離型し、ドライヤーで乾燥して光沢層を設け、インクジェット記録体を作製した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0100】
[実施例2]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作製した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0101】
(複合微粒子分散液Bの調製)
前記カチオン性顔料分散液1をイオン交換水で10%に希釈し、この分散液467部を、アニオン性化合物アクリル酸ホモポリマーのナトリウム塩(商品名:ポイズ530、花王社製)5%水溶液65部中に、攪拌しながら投入し、さらに23部のイオン交換水を添加した後、ホモミキサー(回転速度:1500rpm)で30分ほど分散した。その分散液を対向衝突型粉砕分散装置アルティマイザーシステム(型番:HJP−25005、スギノマシン社製)を用いて、150MPaの圧力で粉砕分散作業を繰り返し、平均粒子径が40nmの9%複合微粒子分散液Bを調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−54.7mVであった。
【0102】
(光沢層用塗布液Bの調製)
複合微粒子分散液Aを163部用いるかわりに、複合微粒子分散液Bを163部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Bを調製した。
【0103】
[実施例3]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Cを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0104】
(カチオン性顔料分散液2の調製)
アニオン性の一次粒子に分散しているコロイダルシリカ(商品名:カタロイドSI−50、平均一次粒子径:25nm、触媒化成工業社製)をイオン交換水で20%に希釈し、
この分散液500部を、カチオン性化合物ジアリルアミン系重合物(商品名:PAS−H−10L、分子量:約20万、4級アンモニウム、日東紡社製)5%水溶液100部中に、攪拌しながら投入し、さらに18部のイオン交換水を添加した後、ホモミキサー(回転速度:1500rpm)で30分ほど分散した。その分散液を対向衝突型粉砕分散装置アルティマイザーシステム(型番:HJP−25005、スギノマシン社製)を用いて、150MPaの圧力で粉砕分散作業を繰り返し、平均粒子径が30nmの17%カチオン性顔料分散液2を調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で1%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は55.1mVであった。
【0105】
(複合微粒子分散液Cの調製)
カチオン性顔料分散液1のかわりに、カチオン性顔料分散液2を用いた以外は、実施例2の複合微粒子分散液Bの調製と同様の方法で、平均粒子径が35nmの9%複合微粒子分散液Cを調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−49.4mVであった。
【0106】
(光沢層用塗布液Cの調製)
複合微粒子分散液Aを163部用いるかわりに、複合微粒子分散液Cを163部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Cを調製した。
【0107】
[実施例4]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Dを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0108】
(複合微粒子分散液Dの調製)
カチオン性顔料分散液1のかわりに、カチオン性の一次粒子に分散しているコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスAK−L、平均一次粒子径:45nm、日産化学工業社製)を用いた以外は、実施例2の複合微粒子分散液Bの調製と同様の方法で、平均粒子径が50nmの9%複合微粒子分散液Dを調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−53.7mVであった。
【0109】
(光沢層用塗布液Dの調製)
複合微粒子分散液Aを163部用いるかわりに、複合微粒子分散液Dを163部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Dを調製した。
【0110】
[実施例5]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Eを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0111】
(複合微粒子分散液Eの調製)
カチオン性顔料分散液1のかわりに、カチオン性の一次粒子に分散しているコロイダルシリカ(商品名:Sylojet4000C、平均一次粒子径:35nm、GRACE Davison社製)を用いた以外は、実施例2の複合微粒子分散液Bの調製と同様の方法で、平均粒子径が40nmの9%複合微粒子分散液Eを調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−55.2mVであった。
【0112】
(光沢層用塗布液Eの調製)
複合微粒子分散液Aを163部用いるかわりに、複合微粒子分散液Eを163部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Eを調製した。
【0113】
[実施例6]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Fを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0114】
(複合微粒子分散液Fの調製)
カチオン性顔料分散液1のかわりに、カチオン性の一次粒子に分散しているコロイダルシリカ(商品名:Sylojet4001、平均一次粒子径:35nm、GRACE Davison社製)を用いた以外は、実施例2の複合微粒子分散液Bの調製と同様の方法で、平均粒子径が40nmの9%複合微粒子分散液Fを調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−45.5mVであった。
【0115】
(光沢層用塗布液Fの調製)
複合微粒子分散液Aを163部用いるかわりに、複合微粒子分散液Fを163部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Fを調製した。
【0116】
[実施例7]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Gを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0117】
(カチオン性顔料分散液3の調製)
イオン交換水3175部に0.2%塩酸水溶液500部を加え、攪拌しながら、γ結晶のアルミナ粉体(商品名:AKP−G015、平均一次粒子径:15nm、平均粒子径:2.4μm、住友化学社製)500部を加え分散したのち、攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、攪拌しながら、強酸性陽イオン交換樹脂(商品名:バイオレックスMS2−501、バイオラット社製)2500部を徐々に添加し、80℃に保持しながら、10時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却した後、イオン交換樹脂を取り除き、さらに、濃縮を行い、平均粒子径が110nmの12%カチオン性顔料分散液3を調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.05%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は52.1mVであった。
【0118】
(複合微粒子分散液Gの調製)
カチオン性顔料分散液1の10%分散液467部のかわりに、カチオン性顔料分散液3の10%分散液455部、アニオン性化合物アクリル酸ホモポリマーのナトリウム塩5%水溶液を65部のかわりに、91部、イオン交換水を23部のかわりに、10部を用いた以外は、実施例2の複合微粒子分散液Bの調製と同様の方法で、平均粒子径が120nmの9%複合微粒子分散液Gを調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.05%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−43.7mVであった。
【0119】
(光沢層用塗布液Gの調製)
複合微粒子分散液Aを163部用いるかわりに、複合微粒子分散液Gを163部を用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Gを調製した。
【0120】
[実施例8]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Hを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0121】
(複合微粒子分散液Hの調製)
擬ベーマイトゾル(商品名:カタロイドAS−3、平均一次粒子径:9nm、平均粒子径:200nm、触媒化成工業社製)463部を、アニオン性化合物アクリル酸ホモポリマーのナトリウム塩の5%水溶液59部中に、攪拌しながら投入し、さらに49部のイオン交換水を添加した後、ホモミキサー(回転速度:1500rpm)で30分ほど分散し、平均粒子径が300nmの7%複合微粒子分散液Hを調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.05%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−39.3mVであった。
【0122】
(光沢層用塗布液Hの調製)
複合微粒子分散液Aを163部用いるかわりに、複合微粒子分散液Hを210部、水を827部のかわりに、781部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Hを調製した。
【0123】
[実施例9]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Iを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0124】
(複合微粒子分散液Iの調製)
複合微粒子分散液Hを対向衝突型粉砕分散装置アルティマイザーシステム(型番:HJP−25005、スギノマシン社製)を用いて、150MPaの圧力で粉砕分散作業を繰り返し、平均粒子径が110nmの7%複合微粒子分散液Iを調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.05%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−48.1mVであった。
【0125】
(光沢層用塗布液Iの調製)
複合微粒子分散液Hを210部用いるかわりに、複合微粒子分散液Iを210部用いた以外は、実施例8の光沢層塗布液Hの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Iを調製した。
【0126】
[実施例10]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Jを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0127】
(カチオン性顔料分散液4の調製)
θ結晶60%、γ結晶20%、δ結晶20%の気相法アルミナゾル(商品名:CAB−O−SPERSE PG 003、平均一次粒子径:20nm、平均粒子径:150nm、CABOT社製)を対向衝突型粉砕分散装置アルティマイザーシステム(型番:HJP−25005、スギノマシン社製)を用いて、200MPaの圧力で粉砕分散作業を繰り返し、平均粒子径が100nmの40%カチオン性顔料分散液4を調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.05%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は61.5mVであった。
【0128】
(複合微粒子分散液Jの調製)
カチオン性顔料分散液1のかわりに、カチオン性顔料分散液4を用いた以外は、実施例2の複合微粒子分散液Bの調製と同様の方法で、平均粒子径が105nmの9%複合微粒子分散液Jを調製した。この分散液をゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.05%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−58.6mVであった。
【0129】
(光沢層用塗布液Jの調製)
複合微粒子分散液Aを163部用いるかわりに、複合微粒子分散液Jを163部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Jを調製した。
【0130】
[実施例11]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Kを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0131】
(光沢層用塗布液Kの調製)
複合微粒子分散液Aを163部用いるかわりに、複合微粒子分散液Cを122部と複合微粒子分散液Gを41部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Kを調製した。
【0132】
[実施例12]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Lを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0133】
(光沢層用塗布液Lの調製)
複合微粒子分散液Aを163部用いるかわりに、複合微粒子分散液Fを122部と複合微粒子分散液Gを41部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Lを調製した。
【0134】
[実施例13]
第1インク受容層用塗布液Aのかわりに、下記第1インク受容層用塗布液Bを用いた以外は、実施例6と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。第1インク受容層の乾燥塗工量は10g/m、厚みは18μmであった。
【0135】
(第1インク受容層用塗布液Bの調製)
気相法シリカ(商品名:アエロジル300、平均一次粒子径7nm、比表面積300m/g、日本アエロジル社製)100部、50モル%メトキシカルボニル変性ポリアリルアミン塩酸塩(質量平均分子量約1.5万)の20%水溶液50部と、イオン交換水497部とを混合した。これにより得られた混合物を攪拌装置により分散した後、ナノマイザーを用いて粉砕分散処理した。次いで、得られた処理液に、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−145、クラレ社製、ケン化度99%、平均重合度4,500)の7%水溶液283部、水368部からなる組成物を混合攪拌して、第1インク受容層用塗布液Bを得た。
【0136】
[実施例14]
第1インク受容層用塗布液Aのかわりに、下記第1インク受容層用塗布液Cを用いた以外は、実施例6と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。第1インク受容層の乾燥塗工量は10g/m、厚みは17μmであった。
【0137】
(第1インク受容層用塗布液Cの調製)
気相法シリカ(商品名:アエロジル300、平均一次粒子径7nm、比表面積300m/g、日本アエロジル社製)100部、50モル%メトキシカルボニル変性ポリアリルアミン塩酸塩(質量平均分子量約1.5万)の20%水溶液50部と、イオン交換水497部とを混合した。これにより得られた混合物を攪拌装置により分散した後、ナノマイザーを用いて粉砕分散処理した。次いで、得られた処理液に、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−245、クラレ社製、ケン化度88%、平均重合度4,500)の7%水溶液346部、水349部からなる組成物を混合攪拌して、第1インク受容層用塗布液Cを得た。
【0138】
[実施例15]
(架橋剤含有層用塗布液の調製)
50℃の温水874部にカチオン化セルロース(商品名:ポイズC−150L、花王社製、平均重合度1,500)1部を攪拌しながら投入し溶解した後、硼砂を50部攪拌しながら投入し溶解した。さらに、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(商品名:オルフィンE1004、日信化学社製)の0.1%水溶液75部を混合攪拌して架橋剤含有層用塗布液を調製した。
【0139】
(架橋剤含有層の塗工)
架橋剤含有層用塗布液をバーコーターで乾燥塗工量が1.2g/mとなるように、樹脂被覆した支持体上に塗布乾燥して架橋剤含有層を設けた。
【0140】
(第1インク受容層用塗布液Dの調製)
気相法シリカ(商品名:アエロジル300、平均一次粒子径7nm、比表面積300m/g、日本アエロジル社製)100部、50モル%メトキシカルボニル変性ポリアリルアミン塩酸塩(質量平均分子量約1.5万)の20%水溶液50部と、イオン交換水497部とを混合した。これにより得られた混合物を攪拌装置により分散した後、ナノマイザーを用いて粉砕分散処理した。次いで、得られた処理液に、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−245、クラレ社製、ケン化度88%、平均重合度4,500)の8%水溶液302部、水9部からなる組成物を混合攪拌して、第1インク受容層用塗布液Dを得た。
【0141】
(第1インク受容層の塗工)
架橋剤含有層を設けた、樹脂被覆した支持体上に、第1インク受容層用塗布液Dをダイコーターで乾燥塗工量が30g/mとなるように、塗布乾燥して第1インク受容層を設けた。厚みは51μmであった。
【0142】
(インクジェット記録体の作成)
樹脂被覆した支持体に、架橋剤含有層及びインク受容層を順次設けた基材上に、上記光沢層用塗布液Fを図1の装置を用いて、塗布し、同時に、表面温度100℃としたクロム鍍金仕上げした鏡面ドラムに線圧2000N/cmで圧接し、直ちに鏡面ロールより離型し、ドライヤーで乾燥して光沢層を設け、インクジェット記録体を作製した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0143】
[実施例16]
(第1インク受容層用塗布液Eの微粒子成分液の調製)
気相法シリカ(商品名:アエロジル300、平均一次粒子径7nm、比表面積300m/g、日本アエロジル社製)100部、50モル%メトキシカルボニル変性ポリアリルアミン塩酸塩(質量平均分子量約1.5万)の20%水溶液50部と、イオン交換水497部とを混合した。これにより得られた混合物を攪拌装置により分散した後、ナノマイザーを用いて粉砕分散処理した。次いで、得られた処理液に水76部を混合攪拌して、第1インク受容層用塗布液Eの微粒子成分液を得た。
【0144】
(第1インク受容層用塗布液EのPVA類成分液の調製)
ポリビニルアルコール(商品名:PVA−235、クラレ社製、ケン化度88%、平均重合度3,500)の7%水溶液346部、水68部からなる組成物を混合攪拌して、第1インク受容層用塗布液EのPVA類成分液を得た。
【0145】
(第1インク受容層用塗布液Eの架橋剤成分液の調製)
50℃の温水101部に硼酸を2部攪拌しながら投入、溶解し第1インク受容層用塗布液Eの架橋剤成分液を調製した。
【0146】
(第1インク受容層用塗布液Eの調製)
第1インク受容層用塗布液EのPVA類成分液、第1インク受容層用塗布液EのPVA類成分液、第1インク受容層用塗布液Eの架橋剤成分液を下記の質量比率でスタティックミキサーに連続供給して混合し、第1インク受容層用塗布液Eを調製した。スタティックミキサーは、18エレメントを2本接続し使用した。
(各成分液の質量比率)
第1インク受容層用塗布液EのPVA類成分液 7
第1インク受容層用塗布液EのPVA類成分液 4
第1インク受容層用塗布液Eの架橋剤成分液 1
【0147】
(第1インク受容層の塗工)
樹脂被覆した支持体上に、第1インク受容層用塗布液Eをダイコーターで乾燥塗工量が23g/mとなるように、塗布乾燥して第1インク受容層を設けた。厚みは39μmであった。
【0148】
(インクジェット記録体の作成)
樹脂被覆した支持体にインク受容層を設けた基材上に、上記光沢層用塗布液Fを図1の装置を用いて、塗布し、同時に、表面温度100℃としたクロム鍍金仕上げした鏡面ドラムに線圧2000N/cmで圧接し、直ちに鏡面ロールより離型し、ドライヤーで乾燥して光沢層を設け、インクジェット記録体を作製した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0149】
[実施例17]
第1インク受容層用塗布液Dのかわりに、上記第1インク受容層用塗布液Eを用いた以外は、実施例15と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。第1インク受容層の乾燥塗工量は32g/m、厚みは54μmであった。
【0150】
[実施例18]
光沢層用塗布液Fのかわりに、下記の光沢層用塗布液Xを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0151】
(カゼイン溶液の調製)
50℃の温水226部に27%アンモニア水溶液4部を混合攪拌した後、カゼイン(商品名:ラクチックカゼイン、ニュージーランド産)40部40部をさらに混合攪拌してカゼイン溶液を調製した。
【0152】
(光沢層用塗布液Xの調製)
複合微粒子分散液F 446部、オレイン酸アンモニウム(商品名:DEF−116T、日新化学研究所社製)5部、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(商品名:オルフィンE1004、日信化学社製)20部、上記カゼイン溶液27部、水2502部からなる組成物を混合攪拌して光沢層用塗布液Xを調製した。
【0153】
[比較例1]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Mを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0154】
(光沢層用塗布液Mの調製)
複合微粒子分散液Aを163部用いるかわりに、アニオン性の一次粒子の状態で分散しているコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスOL、平均一次粒子径:45nm、日産化学工業社製)を70部、水を827部用いるかわりに、921部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Mを調製した。上記コロイダルシリカをゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−51.9mVであった。
【0155】
[比較例2]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Nを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0156】
(光沢層用塗布液Nの調製)
複合微粒子分散液Aを163部のかわりに、アニオン性の一次粒子の状態で分散しているコロイダルシリカ(商品名:Sylojet4000A、平均一次粒子径:35nm、GRACE Davison社製)を37部、水を827部のかわりに、954部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Nを調製した。上記コロイダルシリカをゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−51.6mVであった。
【0157】
[比較例3]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Oを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0158】
(光沢層用塗布液Oの調製)
複合微粒子分散液Aを163部のかわりに、アニオン性の一次粒子の状態で分散しているコロイダルシリカ(商品名:カタロイドSI−45P、平均一次粒子径:45nm、触媒化成工業社製)を36部、水を827部のかわりに、955部用いた以外は、実施例1の光沢層塗布液Aの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Oを調製した。上記コロイダルシリカをゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は−45.1mVであった。
【0159】
[比較例4]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Pを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0160】
(光沢層用塗布液Pの調製)
カチオン性顔料分散液1 89部、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(商品名:コータミン86W、花王社製)3部、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(商品名:オルフィンE1004、日信化学社製)7部、水901部からなる組成物を混合攪拌して光沢層用塗布液Pを調製した。
【0161】
[比較例5]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Qを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0162】
(光沢層用塗布液Qの調製)
カチオン性顔料分散液1を89部用いるかわりに、カチオン性顔料分散液2を84部、水を901部のかわりに、906部用いた以外は、比較例4の光沢層塗布液Pの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Qを調製した。
【0163】
[比較例6]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Rを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0164】
(光沢層用塗布液Rの調製)
カチオン性顔料分散液1を89部用いるかわりに、カチオン性の一次粒子の状態で分散しているコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスAK−L、平均一次粒子径:45nm、日産化学工業社製)を68部、水を901部のかわりに、922部用いた以外は、比較例4の光沢層塗布液Pの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Rを調製した。上記コロイダルシリカをゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は51.1mVであった。
【0165】
[比較例7]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Sを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0166】
(光沢層用塗布液Sの調製)
カチオン性顔料分散液1 89部のかわりに、カチオン性の一次粒子の状態で分散しているコロイダルシリカ(商品名:Sylojet4000C、平均一次粒子径:35nm、GRACE Davison社製)36部、水を901部のかわりに、955部用いた以外は、比較例4の光沢層塗布液Pの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Sを調製した。上記コロイダルシリカをゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は49.9mVであった。
【0167】
[比較例8]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Tを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0168】
(光沢層用塗布液Tの調製)
カチオン性顔料分散液1 89部のかわりに、カチオン性の一次粒子の状態で分散しているコロイダルシリカ(商品名:Sylojet4001、平均一次粒子径:35nm、GRACE Davison社製)36部、水を901部のかわりに、955部を用いた以外は、比較例4の光沢層塗布液Pの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Tを調製した。上記コロイダルシリカをゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は46.3mVであった。
【0169】
[比較例9]
光沢層用塗布液Aのかわりに、光沢層用塗布液Uを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0170】
(光沢層用塗布液Uの調製)
カチオン性顔料分散液1を89部用いるかわりに、カチオン性顔料分散液3を119部、水を901部のかわりに、871部用いた以外は、比較例4の光沢層塗布液Pの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Uを調製した。
【0171】
[比較例10]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Vを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0172】
(光沢層用塗布液Vの調製)
カチオン性顔料分散液1を89部用いるかわりに、カチオン性の擬ベーマイトのゾル(商品名:カタロイドAS−3、平均一次粒子径:9nm、平均粒子径:200nm、触媒化成工業社製)178部、水を901部のかわりに、812部用いた以外は、比較例4の光沢層塗布液Pの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Vを調製した。上記擬ベーマイトのゾルをゼータ電位測定装置(型番:ZETASIZER 2000、Malvern Instruments社製)を用いてイオン交換水で0.5%に希釈した後、測定したところ、ゼータ電位は36.2mVであった。
【0173】
[比較例11]
光沢層用塗布液Aのかわりに、下記の光沢層用塗布液Wを用いた以外は、実施例1と同様の方法でインクジェット記録体を作成した。光沢層の厚みは0.2μmであった。
【0174】
(光沢層用塗布液Wの調製)
カチオン性顔料分散液1を89部用いるかわりに、カチオン性顔料分散液4を36部、水を901部のかわりに、955部用いた以外は、比較例4の光沢層塗布液Pの調製と同様の方法で光沢層用塗布液Wを調製した。
【0175】
[評価方法]
前記各実施例および比較例について、離型性、20度表面光沢度、75度表面光沢度、インク吸収性、印字濃度、顔料インク耐擦過性を評価した結果を表1に示した。各評価については、下記の方法で行った。
【0176】
(離型性)
光沢層形成時において、鏡面ロールからの離型性について官能評価を行った。
○:問題なく連続操業が可能である。
△:操業途中で鏡面ロールの汚れが発生する頻度が高く、実用上問題あり。
×:操業途中で鏡面ロールの汚れが発生する頻度がかなり高く、実用上問題あり。
【0177】
(20度表面光沢度)
JIS Z 8741に記載の方法で、インクジェット記録体の20度表面光沢度を測定した。
【0178】
(75度表面光沢度)
JIS P 8142に記載の方法で、インクジェット記録体の75度表面光沢度を測定した。
【0179】
(インク吸収性)
インク吸収性は、染料インクジェットプリンターPIXUS iP4100(キヤノン社製)を使用し、インクジェット記録体にグリーン色ベタ印字を行い、そのベタ印字部のインク吸収性を目視観察し、官能評価を行った。
◎:ベタ印字部にムラが見られず、良好な状態。
○:ベタ印字部にムラが若干見られるが、実用上問題なし。
△:ベタ印字部にムラが多少見られ、使用状況によっては問題あり。
【0180】
(印字濃度)
印字濃度は、染料インクジェットプリンターPM−G820(セイコーエプソン社製)および染料インクジェットプリンターPIXUS iP8600(キヤノン社製)を使用し、それぞれのプリンターで、インクジェット記録体に黒ベタ印字を行い、24時間放置後、そのベタ印字部をグレタグマクベス反射濃度計(グレタグマクベス社製、RD−19I)を用いて印字濃度を測定し、5点測定の平均印字濃度を算出した。
【0181】
(顔料インク耐擦過性)
顔料インク耐擦過性は、顔料インクジェットプリンターPX−G920(セイコーエプソン社製)を使用し、インクジェット記録体に黒ベタ印字を行い、印字直後、そのベタ印字部を、指で5回擦り、官能評価を行った。
◎:ベタ印字部のインクが取れず、良好な状態。
○:ベタ印字部のインクがほとんど取れず、実用上問題なし。
×:ベタ印字部のインクが取れやすく、実用上問題あり。
【0182】
【表1】

【0183】
表1に示すように、実施例のインクジェット記録体は、いずれも、光沢層形成時において、鏡面ロールからの離型性に優れると共に、顔料インク耐擦過性も良好であり、かつ、他の印字適性も良好であった。
これに対し、光沢層にアニオン性顔料を用いた比較例1〜3では、顔料インク耐擦過性に問題があった。また、光沢層にカチオン性顔料を用いた比較例4〜11では、カチオン性の離型剤しか使用できないため、光沢層形成時において、鏡面ロールからの離型性に問題があった。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】本発明のインクジェット記録体の製造方法の一実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0185】
1 インクジェット記録体、10 基材、11 支持体、12 インク受容層、21 光沢ロール、22 プレスロール、30 光沢層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に分散して分散液とした際のゼータ電位が正であるカチオン性微粒子と該カチオン性微粒子の表面に担持されたアニオン性化合物とからなり、水中に分散して分散液とした際のゼータ電位が負であることを特徴とする複合微粒子。
【請求項2】
アニオン性化合物がカルボン酸系化合物である請求項1に記載の複合微粒子。
【請求項3】
カチオン性微粒子が、シリカ微粒子の表面にカチオン性化合物を担持したカチオン性シリカである請求項1または請求項2に記載の複合微粒子。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の複合微粒子を水系の分散媒に分散させたことを特徴とする分散液。
【請求項5】
前記複合微粒子のゼータ電位が−10〜−150mVである請求項4に記載の分散液。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の分散液の製造方法であって、
カチオン性微粒子とアニオン性化合物とを水系の分散媒中で混合して凝集物を形成させる凝集工程と、
該凝集物を前記分散媒中で機械的手段により粉砕する粉砕工程を有することを特徴とする分散液の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3の何れかに記載の複合微粒子を含有する塗工層が設けられたことを特徴とするインクジェット記録体。
【請求項8】
前記複合微粒子を含有する塗工層が、前記複合微粒子を水に分散させた分散液を含む塗布液によって形成された請求項7に記載のインクジェット記録体。
【請求項9】
前記複合微粒子を含有する塗工層が最表層に設けられている請求項7または請求項8に記載のインクジェット記録体。
【請求項10】
前記複合微粒子を含有する塗工層が、アニオン性離型剤を含有する請求項9に記載のインクジェット記録体。
【請求項11】
非透気性または低透気性の支持体上にインク受容層を設けてなる基材の前記インク受容層上に、前記複合微粒子を含有する塗工層が設けられている請求項7から請求項10の何れかに記載のインクジェット記録体。
【請求項12】
支持体上にインク受容層を設けてなる基材の、前記インク受容層上に、請求項1から請求項3の何れかに記載の複合微粒子およびアニオン性離型剤を含有する塗布液を供給し、
前記基材を、光沢ロールとプレスロールとの間を、前記塗布液が光沢ロールに接触するように通過させてプレス塗工して光沢層を形成し、
前記光沢層が湿潤状態又は半乾燥状態にあるうちに、該光沢層を光沢ロールから剥離することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−38643(P2007−38643A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140266(P2006−140266)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】