説明

複合樹脂材料の製造方法、複合樹脂材料、及び光学素子

【課題】熱的に安定で、光透過性、疎水性に優れた複合樹脂材料のマイクロ波を用いた製造方法、及び該複合樹脂材料を用いた光学素子を提供すること。
【解決手段】少なくとも樹脂と無機粒子とから構成される複合樹脂材料の製造方法であって、予め無機粒子表面をシランカップリング剤でコートし、且つマイクロ波による加熱処理を施した後、該表面処理された無機粒子を樹脂と混合、分散することを特徴とする複合樹脂材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー、平板光導波路等として好適に用いられ、特に熱的に安定で疎水性に優れた複合樹脂材料の製造方法、及び該複合樹脂材料を用いた光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
MO、CD、DVDといった光情報記録媒体(以下、単に媒体ともいう)に対して、情報の読み取りや記録を行うプレーヤー、レコーダー、ドライブといった情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光学素子ユニットはこれらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
【0003】
光ピックアップ装置の光学素子は、射出成形等の手段により安価に作製できる等の点でプラスチックを材料として適用することが好ましい。光学素子に適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、例えば、CD/DVDプレーヤーのような複数種の媒体に対して情報の読み書きが可能な情報機器の場合、光ピックアップ装置は両者の媒体の形状や適用する光の波長の違いに対応した構成とする必要がある。この場合、光学素子ユニットはいずれの媒体に対しても共通とすることが、コストやピックアップ特性の観点から好ましい。
【0005】
一方、プラスチックを材料として適用した光学素子ユニットにおいては、ガラスレンズのような光学的安定性を有する物質であることが求められている。例えば、環状オレフィンのような光学的プラスチック物質は、湿度に関して大幅に改善された屈折率の安定性を有するのに対し、温度に対する屈折率の安定性の改良は未だ十分でないのが現状である。
【0006】
上記のようなプラスチックレンズの光学的屈折率を修正する方法の1つとして、微細粒子充填材を使用する方法が種々提案されている。例えば、感温性を有するポリマー状熱可塑性樹脂と分散された微細粒子物質とから構成され、感温性が減少された微細合成物光学製品が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながら、このような既存の酸化物微粒子を樹脂と混合した樹脂材料では、微粒子凝集が原因となる光散乱により光線透過率の低下が大きく、光学素子としての実用化には適さない樹脂材料を提供することしかできていなかった。
【0007】
更に複合無機粒子を作製し、屈折率分布を持つ微粒子と透明な熱可塑性樹脂とを含有してなる高屈折率樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照)が、この方法においても微粒子の凝集を防止できず、また無機微粒子と樹脂の屈折率差、及び粒子内部での屈折率差により生じる光散乱も大きいため、光学材料として十分な透明性を得ることはできていない。
【0008】
また、ピックアップに用いられる場合、レーザ出力の向上による環境温度の上昇は、樹脂の耐熱性の課題を顕在化させつつある。そのため、樹脂を無機物質と複合化することで耐熱性を向上させる試みが行われているが、通常熱可塑性樹脂に無機材料を複合化すると、樹脂に対して無機材料の方が吸水率が高いため複合材料の含有水分が増加する。この影響として、球面収差の温度変動の不安定性が問題となる場合が多く、これまで提案されている複合材料では水分吸湿性が不十分であり、実用的であるとは言い難かった。
【0009】
特に無機材料を光学材料として適用する場合、粒子径をナノオーダーまで小さくする必要があり、そのため表面積が増大し、それに伴い水分吸湿性も増大する。そのため、無機材料の表面疎水化処理が必要となるが、微粒子であることから従来の加熱処理では、表面疎水化処理の均一性が得ることができない。そこで、光学材料に限定していないが、マイクロ波を用いた微粒子の加熱、乾燥方法についての報告がある(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2002−105131号公報
【特許文献2】特開2002−207101号公報
【特許文献3】特開2002−240901号公報
【特許文献4】特開2005−213410号公報
【特許文献5】特表2006−509704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的はレンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー、平板光導波路等として好適に用いられ、特に熱的に安定で、光透過性、疎水性に優れた複合樹脂材料のマイクロ波を用いた製造方法、及び該複合樹脂材料を用いた光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.少なくとも樹脂と無機粒子とから構成される複合樹脂材料の製造方法であって、予め無機粒子表面をシランカップリング剤でコートし、且つマイクロ波による加熱処理を施した後、該表面処理された無機粒子を樹脂と混合、分散することを特徴とする複合樹脂材料の製造方法。
【0013】
2.前記無機粒子が酸化ケイ素と他の金属酸化物との複合無機粒子であることを特徴とする前記1に記載の複合樹脂材料の製造方法。
【0014】
3.前記複合樹脂材料の吸水率が0.2質量%以下であることを特徴とする前記1または2に記載の複合樹脂材料の製造方法。
【0015】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の複合樹脂材料の製造方法により製造されることを特徴とする複合樹脂材料。
【0016】
5.前記4に記載の複合樹脂材料を用いて成型されることを特徴とする光学素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法によって、レンズ、フィルター、グレーティング、光ファイバー、平板光導波路等として好適に用いられ、熱的に安定であり、疎水性、青色光に対する透明性が高い複合樹脂材料、及びそれを用いた光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。但し、以下の実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態に限定するものではない。
【0019】
まず、本発明に係る光学素子の製造方法について説明する。
【0020】
本発明に係る光学素子の製造方法は、無機粒子を形成する工程、無機粒子の表面処理をする工程、表面処理された無機粒子と樹脂とにより混合、分散して複合樹脂材料を生成する分散工程、この複合樹脂材料を成型する工程とからなる。
【0021】
(1)樹脂
本発明では、複合樹脂材料の母材となる樹脂としては、硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が用いられる。
【0022】
本発明で用いられる硬化性樹脂としては、紫外線及び電子線照射あるいは加熱処理のいずれかの操作によって硬化し得るもので、前記熱可塑性樹脂と未硬化の状態で混合させた後、硬化させることによって透明な複合樹脂材料を形成するものであれば、特に制限なく使用でき、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、シリコーン樹脂等が好ましく用いられる。
【0023】
例えば、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合は、1分子中にエポキシ基を少なくとも2個以上有するものであればいずれでも使用することができ、具体的にはビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂等のハロゲン化エポキシ樹脂、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂等を例示することができる。芳香族エポキシ樹脂については、芳香環を核水素化してシクロヘキサン環化した水素添加型エポキシ樹脂としてもよい。これらエポキシ樹脂は1種を単独で用いたり、あるいは2種以上を併用したりすることもできる。
【0024】
また、エポキシ樹脂の硬化剤としては特に限定されるものではないが、酸無水物硬化剤やフェノール硬化剤等を例示することができる。酸無水物硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、あるいは3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸と4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸との混合物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸等を挙げることができる。
【0025】
また、必要に応じて硬化促進剤が含有される。硬化促進剤としては、硬化性が良好で着色がなく、硬化性樹脂の透明性を損なわないものであれば特に限定されるものではないが、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)等のイミダゾール類、3級アミン、4級アンモニウム塩、ジアザビシクロウンデセン等の双環式アミジン類とその誘導体、ホスフィン、ホスホニウム塩等を用いることができ、これらを1種あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
前記無機粒子含有樹脂材料を硬化させる方法として、無機粒子を樹脂中に混合、分散した後、硬化性樹脂が紫外線及び電子線硬化性樹脂の場合は、透光性の所定形状の金型等に複合樹脂材料を充填し、紫外線及び電子線を照射して硬化させればよく、一方硬化性樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等により硬化成形することができる。
【0027】
次いで、熱可塑性樹脂について説明する。
【0028】
本発明に用いることのできる無機粒子が分散される熱可塑性樹脂としては、光学材料として一般的に用いられる透明の熱可塑性樹脂材料であれば特に制限はないが、光学素子としての加工性を考慮すると、アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリイミド樹脂であることが好ましく、特に好ましくは環状オレフィン樹脂であり、例えば、特開2003−73559号公報等に記載の化合物を挙げることができ、その好ましい化合物を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂材料においては、吸水率が0.2質量%以下であることが好ましい。吸水率が0.2質量%以下の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テフロン(登録商標)AF(デュポン社製)、サイトップ(旭硝子社製)等)、環状オレフィン樹脂(例えば、ZEONEX(日本ゼオン社製)、アートン(JSR社製)、アペル(三井化学社製)、TOPAS(ポリプラスチック社製)等)、インデン/スチレン系樹脂、ポリカーボネート等が好適であるが、これらに限るものではない。また、これらの樹脂と相溶性のある他の樹脂を併用することも好ましい。
【0031】
(2)無機粒子
(2−1)無機粒子の製造方法
本発明に用いられる無機粒子は単一金属組成の粒子でもよく、ケイ素とケイ素以外の1種類以上の金属元素から構成される複合無機粒子であってもよい。複合無機粒子としては、例えば、ケイ素酸化物であるシリカと酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛のいずれか1種類以上の酸化物との複合無機粒子が挙げられる。
【0032】
本発明において、複合無機粒子とは粒子中のシリカとその他の金属元素が局在することなく平均的に分布している状態であってもよく、粒子内で屈折率分布を持たない粒子であってもよく、また金属酸化物粒子表面にシリカ層を有する2層構造でもよい。
【0033】
本発明において用いることのできる無機粒子の形状は、特に限定されるものではないが、好適には球状の微粒子が用いられる。また、粒径の分布に関しても特に制限されるものではないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも比較的狭い分布を持つものが好適に用いられる。
【0034】
複合無機粒子の作製方法としては、熱分解法(原料を加熱分解して微粒子を得る方法、噴霧乾燥法、火炎噴霧法、プラズマ法、気相反応法、凍結乾燥法、加熱ケロシン法、加熱石油法)、沈殿法(共沈法)、加水分解法(塩水溶液法、アルコキシド法、ゾルゲル法)、水熱法(沈殿法、結晶化法、水熱分解法、水熱酸化法)等が挙げられる。この内、熱分解法、沈殿法、加水分解法は、小粒径、且つ均一な複合無機粒子を作製する観点で好ましい手法である。あるいは、これらの手法を複数組み合わせることも好ましい。
【0035】
なお、複合無機粒子の体積平均粒径は1nm以上、50nm以下が好ましい。2nm以上、30nm以下であれば更に好ましい。1nm以下の場合、樹脂への均一分散が困難であり、50nm以上の場合、光線透過率の低下を招くことになる。
【0036】
(2−2)マイクロ波による表面処理工程
本発明においては、本発明に係る無機粒子は表面処理が施される。本発明において、無機粒子の表面処理の方法としては、シランカップリング剤による表面処理が用いられる。
【0037】
具体的には、シランカップリング剤として、ビニルシラザン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリメチルアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられ、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好ましく用いられる。
【0038】
これらの表面処理剤は1種類のみを用いても、複数種類を併用してもよく、更に用いる表面処理剤によって得られる表面処理微粒子の性状は異なることがあり、複合樹脂材料を得るにあたって用いる樹脂との親和性を表面処理剤を選ぶことによって図ることも可能である。表面処理の割合は特に限定されるものではないが、表面処理後の無機粒子に対して、表面処理剤の割合が10〜99質量%であることが好ましく、30〜98質量%であることがより好ましい。
【0039】
また、テトラメトキシシラン、もしくはテトラエトキシシランにより複合無機粒子表面処理を施した後、上記表面処理を行ってもよい。また、これらの処理剤はヘキサン、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン水等で適宜希釈して用いてもよい。
【0040】
表面処理剤による表面処理の方法としては、マイクロ波を用いた加熱処理を行う。粒子にマイクロ波を照射することにより、粒子表面に吸着している水分が選択的に加熱され、シランカップリング剤の加水分解反応が飛躍的に進行し、短時間で且つ高い疎水性を持つ表面処理を施すことができる。
【0041】
マイクロ波は種々の周波数を有する電磁波である。通常の周波数は915MHz、及び2.45GHzである。マイクロ波処理の際には、電磁波エネルギーから分子の動力エネルギーへの直接変換による熱を生じさせる。電磁波エネルギーから熱エネルギーへの変換は、加熱されるべき材料の電磁気特性に基づいて生じる。
【0042】
マイクロ波で加熱、乾燥させることができるか、並びにどの程度までマイクロ波で加熱、乾燥させることができるかについては、その分子構造に依存するものである。極性分子、例えば、水はマイクロ波により良好に加熱されることができる。マイクロ波は材料に応じて深く浸透することができ、その全体積に亘って加熱する。これは、物体において熱が材料表面のみに浸透する、通常の加熱、乾燥よりも有利である。
【0043】
また、無機粒子内部に存在する水分について、マイクロ波加熱処理を施すことにより、粒子自体には吸収されず、粒子内部の水分を選択的に短時間で加熱することができ、内部吸着水を効率的に粒子系外に除去することができる。そのため、オーブンで代表される外熱型加熱装置での長時間処理で発生するような粒子凝集を起こすことなく、その粒子により作製した複合樹脂材料は、粒子分散性に優れるため高い透明性が得られる。
【0044】
粒子表面疎水化処理と粒子内部の吸着水除去を短時間で平行して行うことができ、従来法(外部加熱、乾燥)で課題である長時間の加熱処理による表面処理剤の劣化、残存内部吸着水による複合樹脂材料の特性劣化を解決することができる。
【0045】
(3)分散工程
本発明においては、溶融中の樹脂に対して、無機粒子を添加、混合、分散することで複合樹脂材料を作製する製造方法や、溶媒に溶解した樹脂と無機粒子を混合し、その後有機溶媒を除去する複合樹脂材料の製造方法が好ましい態様である。
【0046】
本発明において、特に複合樹脂材料は溶融混練法で作製することが望ましい。例えば、熱可塑性樹脂を無機粒子の存在下で重合したり、熱可塑性樹脂存在下で無機粒子を作製することも可能であるが、樹脂の重合や無機粒子の作製において、特殊な条件が必要になるからである。溶融混練法では、既成の手法で作製した樹脂や無機粒子を混合することで複合材料を作製できるため、通常安価な複合樹脂材料の作製が可能になる。
【0047】
溶融混練において有機溶剤の使用も可能である。有機溶剤の使用で溶融混練の温度を下げることができ、樹脂の劣化が抑制しやすくなる。その場合、溶融混練後に脱気を行い、複合樹脂材料中から有機溶剤を除去することが好ましい。
【0048】
溶融混練に用いることのできる装置としては、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式混練装置、またはバッチ式混練装置を挙げることができる。また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置を用いて製造することもできる。
【0049】
本発明の複合樹脂材料の製造方法において、溶融混練を用いる場合、樹脂と無機粒子を一括で添加し混練してもよいし、段階的に分割添加して混練してもよい。この場合、押出機等の溶融混練装置では、段階的に添加する成分をシリンダーの途中から添加することも可能である。
【0050】
しかし、溶融混練で樹脂を加熱する場合、酸化防止剤のように樹脂の熱劣化を防止する材料をまず加えることが好ましい。その後、無機粒子を加えると溶融混練の温度が上昇することが多く、酸化防止剤なしでは樹脂の劣化が顕著になるためである。一方、耐光安定剤は熱劣化を起こして着色する場合が多い。そのため、溶融混練プロセスでは出来るだけ後の工程で添加されることが好ましい。そのため、少なくとも一部は無機粒子添加後に加えられる。
【0051】
本発明において、溶融混練による複合化を行う場合、無機粒子は粉体ないし凝集状態のまま添加することが可能である。あるいは、液中に分散した状態で添加することも可能である。液中に分散した状態で添加する場合は、混練後に脱気を行うことが好ましい。
【0052】
液中に分散した状態で添加する場合、予め凝集粒子を一次粒子に分散して添加することが好ましい。分散には各種分散機が使用可能であるが、特にビーズミルが好ましい。ビーズは各種の素材があるが、その大きさは小さいものが好ましく、特に直径0.1mm以下、0.001mm以上のものが好ましい。
【0053】
無機粒子は表面処理された状態で加えられることが好ましいが、表面処理剤と無機粒子を同時に添加し、樹脂との複合化を行うインテグラルブレンドのような手法があり、どのような手法を用いることも可能である。
【0054】
(4)成型工程
成形方法としては特に限定されるものではないが、成型物における低複屈折性、機械強度及び寸法精度等の特性の観点から溶融成型法が好ましい。溶融成型法としては、例えば、プレス成型、押し出し成型、射出成型等が挙げられるが、生産性の観点から射出成型が好ましい。また、光硬化性樹脂の場合、注型重合等を用いることが可能である。
【0055】
また、成型条件は使用目的または成型方法に応じて適宜選択されるが、例えば、射出成型における複合樹脂材料の温度としては、成型時に適度な流動性を樹脂に付与して成型品のヒケや歪みの防止、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生の防止、及び成型物の黄変の効果的な防止の観点から、150〜400℃の範囲内であることが好ましく、200〜350℃の範囲内であることがより好ましく、200〜330℃の範囲内であることが特に好ましい。
【0056】
射出成型においては、炭酸ガスを可塑剤として用いる成型法や、金型を誘導加熱して転写性を向上させる方法等一般的な手法はすべて適用可能である。
【0057】
(4−1)添加剤
(4−1−1)可塑剤
添加剤としては、酸化防止剤、耐光安定剤、熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤及び近赤外線吸収剤等の安定剤、滑剤や可塑剤等の樹脂改良剤、軟質重合体やアルコール性化合物等の白濁防止剤、染料や顔料等の着色剤、その他帯電防止剤や難燃剤等が挙げられる。単独でまたは組み合わせて用いられてもよい。
【0058】
添加剤の内、酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成型時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。
【0059】
酸化防止剤はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが可能であって、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明の複合樹脂材料100質量部に対して0.001〜20質量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜10質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0060】
(4−1−2)白濁防止剤
白濁防止剤としては、最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を配合することができる。これにより、透過率、耐熱性、機械的強度等の諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿環境下での薄膜の白濁を防止できる。
【0061】
(4−1−3)酸化防止剤
ここで、フェノール系酸化防止剤としては従来公知のものが適用可能であり、例えば、特開昭63−179953号公報に記載の2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等や、特開平1−168643号公報に記載のオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のアクリレート系化合物や、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン、即ちペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物や、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物等が挙げられる。
【0062】
また、リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業において通常使用されるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のモノホスファイト系化合物や、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が特に好ましい。
【0063】
更に、イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0064】
更に上述したフェノール系、リン酸系及びイオウ系酸化防止剤の他に、ジフェニルアミン誘導体等のアミン系酸化防止剤や、ニッケルまたは亜鉛のチオカルバメート等も酸化防止剤として適用可能である。
【0065】
(4−1−4)耐光安定剤
本発明に用いられる耐光安定剤について説明する。耐光安定剤は光安定剤とも呼ばれるが、本発明では耐光安定剤として記する。耐光安定剤はクエンチャーとラジカル捕捉剤に大きく分けられる。ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、トリアジン系の光安定剤は、クエンチャーとして分類され、ヒンダードアミン系耐光安定剤はラジカル捕捉剤に分類される。
【0066】
本発明においては、レンズの透明性、耐着色性等の観点からヒンダードアミン系耐光安定剤(HALS)を用いるのが好ましい。このようなHALSは、具体例には低分子量のものから中分子量、高分子量の中から選ぶことができる。
【0067】
例えば、比較的分子量の小さいものとして、LA−77(旭電化製)、Tinuvin765(CSC製)、Tinuvin123(CSC製)、Tinuvin440(CSC製)、Tinuvin144(CSC製)、HostavinN20(ヘキスト社製)中程度の分子量として、LA−57(旭電化製)、LA−52(旭電化製)、LA−67(旭電化製)、LA−62(旭電化製)、更に分子量の大きいものとして、LA−68(旭電化製)、LA−63(旭電化製)、HostavinN30(ヘキスト社製)、Chimassorb944(CSC製)、Chimassorb2020(CSC製)、Chimassorb119(CSC製)、Tinuvin622(CSC製)、CyasorbUV−3346(Cytec製)、CyasorbUV−3529(Cytec製)、Uvasil299(GLC製)等が挙げられる。
【0068】
特に、成型体には低、中分子量のHALS、膜状の複合材料には高分子量のHALSを用いることが好ましい。HALSはベンゾトリアゾール系の耐光安定剤等と組み合わせて用いられることも好ましい。例えば、アデカスタブLA−32、LA−36、LA−31(旭電化工業製)、Tinuvin326、Tinuvin571、Tinuvin234、Tinuvin1130(CSC製)等が挙げられる。
【0069】
また、HALSは先述の各種酸化防止剤と併用されることが好ましい。HALSと酸化防止剤の組み合わせに特に制約はなく、フェノール系、リン系、イオウ系等との組み合わせが可能であるが、特にリン系とフェノール系との組み合わせが好ましい。
【0070】
(4−1−5)その他の添加剤
本発明に係る複合樹脂材料の調製時や複合樹脂材料の成型工程においては、必要に応じて各種添加剤を添加することができる。添加剤については格別限定はないが、先述した酸化防止剤、耐光安定剤以外に、熱安定剤、耐候安定剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;軟質重合体、アルコール性化合物等の白濁防止剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤、難燃剤等が挙げられる。これらの配合剤は、単独であるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明に記載の効果を損なわない範囲で適宜選択される。
【0071】
(5)光学素子
〔光学物性〕
本発明において、波長405nmの光透過率が3mm厚で70%以上であることが好ましい。70%未満であるとデータの読み取り精度が下がるからである。無機粒子は405nmの光を吸収しないものが多いが、樹脂は若干吸収する場合がある。このような時、無機粒子の分率を増大させることで、複合樹脂材料として405nmにおける光透過率を上げることが期待できる。
【0072】
(5−1)光学素子(光学用レンズ)の作製方法
次いで、上記説明した本発明に係る複合樹脂材料から作製される光学素子の一つである光学用樹脂レンズの作製方法について説明する。
【0073】
本発明に係る光学用樹脂レンズはまず複合樹脂材料を調製し、次いで得られた複合樹脂材料を成型する工程を含む。
【0074】
本発明に係る熱可塑性樹脂材料の成型物は、前記複合樹脂材料からなる成型材料を成型して得られる。成型方法としては格別制限されるものはないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成型物を得るためには溶融成型が好ましい。溶融成型法としては、例えば、市販のプレス成型、市販の押し出し成型、市販の射出成型等が挙げられるが、射出成型が成型性、生産性の観点から好ましい。
【0075】
成型条件は使用目的、または成型方法により適宜選択されるが、例えば、射出成型における複合樹脂材料の温度は、成型時に適度な流動性を樹脂に付与して成型品のヒケやひずみを防止し、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、更に成型物の黄変を効果的に防止する観点から150〜400℃の範囲が好ましく、更に好ましくは200〜350℃の範囲であり、特に好ましくは200〜330℃の範囲である。
【0076】
射出成型においては、流動性向上のため炭酸ガスを可塑剤として使用する成型法を用いることが可能である。また、金型表面を誘導加熱することで転写性を高める手法も適用可能である。
【0077】
本発明の複合樹脂材料は、AMES試験に陰性であることが好ましい。AMES試験で陽性になる場合、使用者の健康を損なう可能性があるだけでなく、環境負荷を与える可能性がある。更に材料として不安定で、必要な安定性が得られない虞があるからである。
【0078】
本発明に係る成型物は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状等種々の形態で使用することができ、また低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、本発明の光学素子の一つである光学用樹脂レンズとして用いられるが、その他の光学部品としても好適である。
【0079】
(5−2)光学用レンズ
本発明に係る光学用レンズは上記の作製方法により得られるが、光学部品への具体的な適用例としては、以下のようである。
【0080】
例えば、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズ等のレンズ;眼鏡レンズ等の全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)等の光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズ等のレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズ等が挙げられる。
【0081】
光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)等が挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイ等の導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム等の光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板等が挙げられる。
【0082】
これらの中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズやレーザ走査系レンズとして好適であり、ピックアップレンズに最も好適に用いられる。
【0083】
本発明に係る光学用樹脂レンズの用途の一例として、光ディスク用のピックアップ装置に用いる対物レンズとして用いられる。本形態では、使用波長が405nmの所謂青紫色レーザ光源を用いた「高密度な光ディスク」をターゲットとしている。この光ディスクの保護基板厚は0.1mmであり、記憶容量は約30GBである。
【0084】
また、本発明の複合樹脂材料から作製された成形品の表面に、無機化合物、シランカップリング剤等の有機シリコン化合物、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等からなるハードコート層を形成することができる。ハードコート層の形成手段としては、熱硬化法、紫外線硬化法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法を挙げることができる。これによって、成形品の耐熱性、光学特性、耐薬品性、耐摩耗性及び耐水性等を向上させることができる。
【実施例】
【0085】
本発明は以下の実施例により更に説明されるが、これに制限されることはない。
【0086】
実施例1
〔SiO2/ZrO2(SiO2モル分率80%)系複合樹脂材料の形成〕
純水463.1g、26%アンモニア水104.8g、メタノール4255.0gの混合液に、テトラメトキシシラン(TMOS)3648g、メタノール229.4gの混合液、及び純水643.2g、26%アンモニア水104.8gの混合液を、液温を25℃に保ちつつ150分かけ滴下し、その後ジルコニウムテトライソプロポキシド5969g、イソプロパノール150gの混合液を100分かけて添加し、シリカ/ジルコニア混合ゾルを得た。
【0087】
このゾルを常圧下、加熱蒸留しつつ、純水を容量を一定に保ちつつ滴下し、塔頂温度が100℃に達し、且つpHが8以下になったのを確認した時点で純水の滴下を終了し、微粒子分散液を得た。
【0088】
更にシランカップリング剤として、メチルトリメトキシシランを15.4g添加し、室温にて1時間攪拌後、2時間還流を行った。その後、常圧下、加熱蒸留しつつ、メチルエチルケトンを容量を一定に保ちつつ滴下し、塔頂温度が79℃に達し、且つ水分が1.0%以下になったのを確認した時点で終了し、室温まで冷却後、3μメンブランフィルターを用いて精密濾過を行い、メチルエチルケトン分散ゾルを得た。
【0089】
次に、遠心分離と脱塩、素乾燥処理を行い、無機粒子粉末を得た。
【0090】
続いて、マイクロ波加熱装置により200℃で30分加熱(最大出力:6kW/2450MHz)し、表面処理済シリカ/ジルコニア複合無機粒子を得た。TEM観察の結果、体積換算平均粒子径は10nmであった。
【0091】
この複合無機粒子と樹脂を脱気しながら溶融混練し、複合樹脂材料を作製した。複合樹脂材料中の無機粒子の含有量は、樹脂に対して20体積%になるようにした。溶融混練時には、適宜表面処理剤を加えることで無機粒子の表面処理を行った。溶融混練にはラボプラストミルKF−6Vを用い、窒素下で行った。100rpmで10分間混練し、終了前に2分間、2.67×103Paで減圧脱気を行った。なお、樹脂はAPL(シクロオレフィン樹脂APEL5014(三井化学製))を使用した。
【0092】
実施例2
〔SiO2/Al23(SiO2モル分率80%)系複合樹脂材料の形成〕
Al23(一次粒子径 13nm)7.2gに対して、純水50ml、エタノール390ml、アンモニア22mlを加えた溶液を作製する。次に、テトラエトキシシラン(TEOS)を0.72gを加えて1時間粒子分散を行う。更にTEOSを0.72g加えて、1時間分散を進める。これにより得られたスラリー溶液を得た。
【0093】
作製したスラリーに対してTEOSを18.16gをエタノールと純水の混合液で希釈し、ゆっくり滴下し、室温で20時間攪拌する。更に、このスラリーから遠心分離機を用いて粒子を分離する。
【0094】
この粒子を80℃で24時間減圧乾燥し、更に粒子に対して、シランカップリング剤のヘキサメチルジシラザンを10質量%加え、攪拌しながら加熱する。室温まで冷却後、遠心分離、素乾燥処理を行い、無機粒子粉末を得た。
【0095】
続いて、マイクロ波加熱装置により200℃で30分加熱(最大出力:6kW/2450MHz)し、表面処理済シリカ/アルミナ複合無機粒子を得た。TEM観察の結果、体積換算平均粒子径は10nmであった。
【0096】
この複合無機粒子と樹脂を脱気しながら溶融混練し、複合樹脂材料を作製した。複合樹脂材料中の無機粒子の含有量は、樹脂に対して20体積%になるようにした。溶融混練時には、適宜表面処理剤を加えることで無機粒子の表面処理を行った。溶融混練にはラボプラストミルKF−6Vを用い、窒素下で行った。100rpmで10分間混練し、終了前に2分間、2.67×103Paで減圧脱気を行った。なお、樹脂はAPL(シクロオレフィン樹脂APEL5014(三井化学製))を使用した。
【0097】
実施例3
〔SiO2粒子系複合樹脂材料の形成〕
実施例1において、シリカ/ジルコニア複合無機粒子をシリカに変えた以外は、同様にして複合樹脂材料を作製した。
【0098】
比較例1:電気炉による加熱処理
実施例2において、マイクロ波加熱装置による処理を開放系の電気炉に変え、200℃、1時間の条件で処理したこと以外は同様にして、複合樹脂材料を作製した。
【0099】
比較例2:表面処理なし
実施例2において、ヘキサメチルジシラザンを用いなかったこと以外は同様にして、複合樹脂材料を作製した。
【0100】
比較例3:加熱処理なし
実施例2において、マイクロ波により加熱処理を施さなかったこと以外は同様にして、複合樹脂材料を作製した。
【0101】
比較例4:シランカップリング以外の表面処理剤
実施例2において、ヘキサメチルジシラザンに変えて、ステアリン酸アンモニウム水溶液(10%)220gを用いたこと以外は同様にして、複合樹脂材料を作製した。
【0102】
〔評価〕
(疎水化度)
本発明における疎水化度は、粉体0.2gを50mlの水に添加して、メタノールをビューレットから粉体全量が懸濁するまで加え、加えたメタノールの容量をmlとする時、次式から求まる。疎水化度=V/(50+V)。
【0103】
上記の光学樹脂に対して、粉体を混練した時、疎水化度が50以下では混練した樹脂は白濁しており、光学樹脂としての使用に耐えないものであった。これは粒子と樹脂との界面の分離によるものと考えられる。
【0104】
(光線透過率)
各成型物について、波長405nmにおける透過率の測定を行った。透過率の測定方法はASTM D1003に準拠した。光照射は波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射することで行った。
【0105】
(耐熱性)
室温から100℃までの昇温と逆の降温とを100サイクル繰り返し、ひずみの発生有無を目視評価した。
【0106】
○:目視により、樹脂の変化なし
△:目視により、樹脂の変化で若干変化あり
×:目視により、樹脂の着色を確認。
【0107】
(吸水率)
高温高湿機「PR−2PK」(製品名、エスペック株式会社製)を使用し、予め100℃、10%RHで100時間乾燥させた複合樹脂材料を80℃90%RHで500時間保存し、前後の質量増加分から吸水率を求めた。乾燥時の吸水量は複合樹脂材料をシクロヘキサンに溶解した後、複合樹脂材料を乾燥有機溶媒でカールフィッシャー法により測定した。
【0108】
【表2】

【0109】
表2より、本発明の複合樹脂材料は、比較の複合樹脂材料に対し、耐熱性、光透過性に優れ、また吸水率も小さく、疎水性に優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂と無機粒子とから構成される複合樹脂材料の製造方法であって、予め無機粒子表面をシランカップリング剤でコートし、且つマイクロ波による加熱処理を施した後、該表面処理された無機粒子を樹脂と混合、分散することを特徴とする複合樹脂材料の製造方法。
【請求項2】
前記無機粒子が酸化ケイ素と他の金属酸化物との複合無機粒子であることを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂材料の製造方法。
【請求項3】
前記複合樹脂材料の吸水率が0.2質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合樹脂材料の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合樹脂材料の製造方法により製造されることを特徴とする複合樹脂材料。
【請求項5】
請求項4に記載の複合樹脂材料を用いて成型されることを特徴とする光学素子。

【公開番号】特開2008−280443(P2008−280443A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126580(P2007−126580)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】