説明

複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子および発泡成形体

【課題】高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を得ることができる複合樹脂粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】樹脂成分として、ポリエチレン系樹脂100質量部とポリスチレン系樹脂200〜900質量部とを含み、前記ポリエチレン系樹脂が、0.900〜0.916g/cm3の密度、190℃、2.16kgの荷重下で測定される1.0〜5.0g/10分のメルトフローレートおよび88〜95℃のビカット軟化温度を有することを特徴とする複合樹脂粒子により課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子および発泡成形体に関する。さらに詳しくは、本発明は、高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を得ることができる複合樹脂粒子に関し、前記複合樹脂粒子から得られる発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子および発泡成形体にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成分としてポリスチレン系樹脂を含む発泡成形体が、成形加工性、断熱性、耐衝撃性および緩衝性のような優れた物性のために、包装用の緩衝材、自動車分野での構造部材、建築用部材等として幅広く使用されている。
【0003】
また、発泡成形体をこのような用途において使用する場合、発泡成形体には高い耐衝撃性が求められる。前記の点に鑑みて、耐衝撃性に優れた発泡成形体として、特許文献1には、樹脂成分としてポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを含む発泡成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/027944号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、発泡成形体の軽量化や低コスト化の観点から、耐衝撃性に加えて発泡成形体の高倍数化や低比重化が望まれるようにもなっている。しかし、発泡成形体をより高倍数化した場合、倍数の増加に反比例して発泡成形体の耐衝撃性が低下し、用途によっては耐衝撃性等の所望の物性を得ることができないことがある。
【0006】
特に、発泡成形体を家電用緩衝材として使用した場合、家電の大型化が進んでいる関係上、輸送時の振動や事故での衝撃によって、発泡成形体の損傷、破損や外観不良が起こり易くなっている。また、それに伴う家電の破損等も起こり易くなっている。このため、これらに備えて、前記のような用途と比較して、発泡成形体にはより高いレベルでの高倍数化と耐衝撃性との両立が求められるようになっている。
【0007】
また、環境問題への意識の高まりから再利用可能な発泡成形体が求められるようにもなっている。しかし、発泡成形体を複数回使用した場合、その使用用途によっては、発泡成形体は衝撃等に抗しきれず、倍数の変化や耐衝撃性の低下を引き起こすことがある。このため、このような観点からも、発泡成形体にはより高いレベルでの高倍数化と耐衝撃性との両立が求めるようにもなっている。
【0008】
しかしながら、前記のような問題点に対しては、特許文献1に記載の発泡成形体や従来の発泡成形体は一定の耐衝撃性の向上は認められるものの、このような観点からは必ずしも満足のいくものではなかった。
従って、これらの問題点に鑑みて、高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を提供することが課題とされている。また、前記発泡成形体を得ることができる複合樹脂粒子を提供することも課題とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして本発明によれば、樹脂成分として、ポリエチレン系樹脂100質量部とポリスチレン系樹脂200〜900質量部とを含み、
前記ポリエチレン系樹脂が、0.900〜0.916g/cm3の密度、190℃、2.16kgの荷重下で測定される1.0〜5.0g/10分のメルトフローレートおよび88〜95℃のビカット軟化温度を有することを特徴とする複合樹脂粒子が提供される。
【0010】
また本発明によれば、前記複合樹脂粒子から得ることができる発泡性複合樹脂粒子も提供される。
【0011】
また本発明によれば、前記複合樹脂粒子から得ることができる予備発泡粒子も提供される。
【0012】
また本発明によれば、前記複合樹脂粒子から得ることができる発泡成形体も提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の複合樹脂粒子は樹脂成分として、剛性(耐衝撃性)に優れたポリエチレン系樹脂と発泡性に優れたポリスチレン系樹脂とを所定の割合で含むため、本発明の複合樹脂粒子から得られる発泡成形体は所望の高倍数および優れた耐衝撃性を有することができる。また、本発明のポリエチレン系樹脂は、0.900〜0.916g/cm3の密度および190℃、2.16kgの荷重下で測定される1.0〜5.0g/10分のメルトフローレート、88〜95℃のビカット軟化温度を有する。このため、本発明の複合樹脂粒子から得られる発泡性複合樹脂粒子を加熱した場合、まず、ポリエチレン系樹脂部分に由来する発泡が認められる。また、加熱を継続すると、次いでスチレン系樹脂部分に由来する発泡が認められ、その結果、2つの発泡ピークを確認することができる。よって、従来行われていたようなポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の発泡温度帯を合わせようとした場合よりも、高発泡とすることができる。さらに、予備発泡粒子同士の融着性が向上し、その結果、低圧力で発泡成形体の耐衝撃性をより向上させることもできる。
従って、本発明によれば、高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を得ることができる複合樹脂粒子を提供することができる。
【0014】
また、本発明によれば、複合樹脂粒子がカーボンブラックを含む場合、複合樹脂粒子が着色剤としてカーボンブラックを含むため、高倍数を有し、耐衝撃性および外観に優れた発泡成形体を得ることができる複合樹脂粒子を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、複合樹脂粒子がスチレン系単量体を前記ポリエチレン系樹脂にシード重合させることによって得られる場合、所望の複合樹脂粒子をより容易に得ることができるため、この場合も、高倍数を有し、さらにより耐衝撃性にも優れた発泡成形体を得ることができる複合樹脂粒子を提供することができる。
【0016】
本発明によれば、高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を得ることができる発泡性複合樹脂粒子を提供することができる。
【0017】
本発明によれば、発泡性複合樹脂粒子が、前記発泡性複合樹脂粒子を90〜100℃で、300秒間放置したときに、2つの発泡ピークを示す場合、より幅広い温度範囲において高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を得ることができる発泡性複合樹脂粒子を提供することができる。
【0018】
本発明によれば、高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を得ることができる予備発泡粒子を提供することができる。
【0019】
また、本発明によれば、55倍以上のような高嵩倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を得ることができる予備発泡粒子を提供することができる。
【0020】
本発明によれば、高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を得ることができる。
【0021】
本発明によれば、55倍以上のような高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は実施例と比較例の発泡ピークを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の特徴は、樹脂成分として、ポリエチレン系樹脂100質量部とポリスチレン系樹脂200〜900質量部とを含み、
前記ポリエチレン系樹脂が、0.900〜0.916g/cm3の密度、190℃、2.16kgの荷重下で測定される1.0〜5.0g/10分のメルトフローレートおよび88〜95℃のビカット軟化温度を有する複合樹脂粒子である。
【0024】
具体的には、本発明の複合樹脂粒子は樹脂成分として、剛性(耐衝撃性)に優れたポリエチレン系樹脂100質量部に対して、発泡性に優れたポリスチレン系樹脂を200〜900質量部の割合で含む。このため、本発明の複合樹脂粒子から得られる発泡成形体は所望の高倍数および優れた耐衝撃性を有することができる。特に、以下で述べるように、複合樹脂粒子がポリエチレン系樹脂を含む種粒子にスチレン系単量体をシード重合させて得られる場合、粒子表層部は、ポリエチレン系樹脂比率が高く、粒子中心部は表層部と逆でポリスチレン系樹脂比率が高い樹脂組成の複合樹脂粒子を得ることができる場合がある。この場合、本発明によれば、高倍数を有し、さらにより耐衝撃性に優れた発泡成形体を得ることができる複合樹脂粒子を得ることができる場合がある。
【0025】
また、使用するポリエチレン系樹脂は、0.900〜0.916g/cm3の密度および190℃、2.16kgの荷重下で測定される1.0〜5.0g/10分のメルトフローレートおよび88〜95℃のビカット軟化温度を有する。このため、本発明のポリエチレン系樹脂を低温より加熱した場合、通常のポリエチレン系樹脂と比較して、より低温から軟化を開始することができ、さらに発泡に有用な樹脂成分の流動性を確保することができる。このため、本発明の複合樹脂粒子から得られる発泡性複合樹脂粒子を加熱した場合、まず、より低温より軟化を開始するポリエチレン系樹脂部分に由来する発泡が認められる。また、加熱を継続すると、ポリエチレン系樹脂部分の発泡を維持しつつ、即ち、発泡性複合樹脂粒子がシュリンクすることなく、次いでスチレン系樹脂部分に由来する発泡が認められ、その結果、2つの発泡ピークを確認することができる。よって、これまでポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の発泡温度帯を合わせようとしていた場合よりも、さらにより高発泡とすることができる。また、所望の嵩倍数を有する予備発泡粒子を容易かつ安定に製造することができる。
【0026】
さらに、低圧力での成形でも予備発泡粒子同士の融着性が向上し、その結果、発泡成形体の耐衝撃性をより向上させることができる。このため、本発明によれば、高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を得ることができる複合樹脂粒子を提供することもできる。
【0027】
従って、従来、耐衝撃性に優れているにもかかわらず、高倍数を有する発泡成形体は見出されていなかったが、本発明によれば、高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体を提供することができる。また、前記発泡成形体を得ることができる複合樹脂粒子を提供することができる。
以下、本発明の複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子および発泡成形体について詳説する。
【0028】
本発明の発泡成形体は、
(1)複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより発泡性複合樹脂粒子を得る含浸工程と、
(2)発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させることにより予備発泡粒子を得る予備発泡工程と、
(3)予備発泡粒子を発泡成形することにより発泡成形体を得る発泡成形工程とを含む製造方法によって得ることができる。
【0029】
(複合樹脂粒子)
本発明において、複合樹脂粒子とは、複数の樹脂成分を含む樹脂粒子を意味する。具体的には、複合樹脂粒子とは、樹脂成分としてポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを少なくとも含む樹脂粒子を意味する。
【0030】
なお、原料単量体、原料樹脂、その他の成分等の使用原料間の質量比と、複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子、予備発泡粒子および発泡成形体における樹脂成分、その他の成分等の質量比とは略同一である。
【0031】
本発明において、ポリエチレン系樹脂とは、エチレン単独重合体、またはエチレン単量体を主成分とし、エチレン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を意味する。また、エチレン単量体を主成分とするとは、エチレン単量体が全単量体成分100質量部中に50質量部以上を占めることを意味する。さらに、エチレン単独重合体とは、エチレン単量体が全単量体成分100質量部中に93質量部以上を占めることを意味する。
【0032】
具体的には、ポリエチレン系樹脂として、例えば、エチレン単独重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体およびエチレン−メチルメタクリレート共重合体のような重合体を挙げることができる。所望の物性をより容易に得ることができるため、ポリエチレン系樹脂としてエチレン単独重合体が好ましい。
【0033】
また、α−オレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘプテンおよび1−オクテンのようなビニル系単量体を挙げることができる。さらに、より幅広い温度範囲で発泡させることができる発泡性複合樹脂粒子および予備発泡粒子を得ることができるため、α−オレフィンとして、1−ブテンおよび1−ヘキセンが好ましい。
【0034】
他方、所望の物性に影響を与えない限り、前記ポリエチレン系樹脂を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、ポリエチレン系樹脂として共重合体を使用する場合、共重合体はランダム共重合体であってよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0035】
また、ポリエチレン系樹脂の結晶性を加熱発泡に好適な範囲に調整することができるため、本発明のポリエチレン系樹脂は、0.900〜0.916g/cm3、好ましくは0.905〜0.915g/cm3、より好ましくは0.909〜0.915g/cm3の密度を有する。ポリエチレン系樹脂の密度が0.916g/cm3より高い場合、ポリエチレン系樹脂の結晶性が高くなり、発泡性複合樹脂粒子を幅広い温度範囲で発泡させることができないことがある。他方、ポリエチレン系樹脂の密度が0.900g/cm3未満の場合、ポリエチレン系樹脂の結晶性が低下し、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂の発泡温度帯に差があり過ぎて、所望の倍数の発泡成形体を得ることができないことがある。
【0036】
同様に前記のような調整を容易に行うことができるため、本発明のポリエチレン系樹脂は、190℃、2.16kgの荷重下で、1.0〜5.0g/10分、好ましくは1.0〜4.0g/10分、より好ましくは1.0〜3.0g/10分のメルトフローレートを有する。ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートが5.0g/10分より高い場合、所望の倍数の発泡成形体を得ることができないことがある。他方、ポリエチレン系樹脂のメルトフローレートが1.0g/10分未満の場合、ポリエチレン系樹脂の結晶性が高くなり、この場合も、所望の倍数の発泡成形体を得ることができないことがある。
【0037】
また、同様に、本発明のポリエチレン系樹脂は、88〜95℃、好ましくは90〜95℃、より好ましくは90〜94℃のビカット軟化温度を有する。ポリエチレン系樹脂のビカット軟化温度を測定することによって、樹脂成分の軟化開始温度をより容易に把握することができる。ポリエチレン系樹脂のビカット軟化温度が95℃より高い場合、同様に、所望の倍数の発泡成形体を得ることができないことがある。他方、ポリエチレン系樹脂のビカット軟化温度が88℃未満の場合、ポリエチレン系樹脂の結晶性が高くなり、この場合も、所望の倍数の発泡成形体を得ることができないことがある。
【0038】
さらに、本発明のポリエチレン系樹脂は、同様の観点から、好ましくは110〜125℃、より好ましくは110〜120℃の融点温度を有することもできる。
【0039】
さらに、同様に、本発明のポリエチレン系樹脂は、好ましくは60×103〜80×103、より好ましくは70×103〜80×103の数平均分子量(Mn)を有し、好ましくは160×103〜200×103、より好ましくは170×103〜190×103の重量平均分子量(Mw)を有する。数平均分子量と重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフ)で測定することができる。
【0040】
他方、耐衝撃性に大きく寄与し難いポリエチレン系樹脂の短鎖長成分量を低減することにより、発泡成形体の耐衝撃性をより向上させることもできる。このため、本発明のポリエチレン系樹脂は、分子量分布についての一般的な指標であるMw/Mnについて、下記式(I):
1.5≦Mw/Mn≦3.5・・・・・(I)
を満たすことが好ましく、下記式(II):
2.0≦Mw/Mn≦3.0・・・・・(II)
を満たすことがより好ましい。
【0041】
また、ポリエチレン系樹脂を気相重合法等の公知の重合方法を用いて製造することができる。さらに、前記のような特性を有するポリエチレン系樹脂をより容易に製造することができるため、メタロセン化合物を触媒として使用するエチレン系単量体の重合方法が好ましい。
【0042】
メタロセン化合物としては、エチレン系単量体の重合に使用される公知のメタロセン化合物を挙げることができる。例えば、四価の遷移金属元素を含むメタロセン化合物を好適に使用することができる。具体的には、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェニルアミドジルコニウムクロリド、メチルフェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、インデニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジエチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジ−n−プロピルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−ブチルアミド)およびインデニルチタニウムビス(ジ−n−プロピルアミド)のようなメタロセン化合物を挙げることができる。これらのメタロセン化合物は、単独または2種類以上併用してもよく、例えばメチルアルミノキサンや硼素系化合物等の共触媒と併用してもよい。
【0043】
本発明において、ポリスチレン系樹脂とは、スチレン単独重合体、またはスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を意味する。また、スチレン系単量体とは、スチレン単量体、またはスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体との混合物を意味する。ここでスチレン単量体を主成分とするとは、スチレン単量体が全単量体100質量部に対して90質量部以上を占めることを意味する。
【0044】
他の単量体として、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、ジビニルベンゼンおよびポリエチレングリコールジメタクリレートのようなビニル系単量体を挙げることができる。本発明において、アルキルとは、炭素数1〜30のアルキルを意味する。また、発泡性複合樹脂粒子を安定に予備発泡させることができるスチレン単独重合体が好ましい。
【0045】
また、発泡成形体にポリエチレン系樹脂の優れた剛性(耐衝撃性)とポリスチレン系樹脂の優れた発泡性とを導入することができるため、ポリスチレン系樹脂はポリエチレン系樹脂100質量部に対して、200〜900質量部、好ましくは200〜600質量部、より好ましくは200〜500質量部使用される。ポリスチレン系樹脂が200質量部より少ない場合、十分な倍数を有する発泡成形体を得ることができないことがある。他方、ポリスチレン系樹脂が900質量部より多い場合、十分な耐衝撃性を有する発泡成形体を得ることができない場合がある。
【0046】
また、本発明の発泡成形体に含まれるポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との組合せとしては、より耐衝撃性に優れた発泡成形体を得ることができるため、エチレン単独重合体とスチレン単独重合体との組合せが好ましい。
【0047】
さらに、美麗な発泡成形体を得ることができるため、本発明の複合樹脂粒子は着色剤を含むこともできる。着色剤としては、所望の物性等に影響を与えない限り、公知の有機系染料、有機系顔料および無機系顔料のような着色剤をいずれも使用することができる。
【0048】
有機系染料としては、アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、インジゴイド系、キノンイミン系、カルボニウム系、ニトロ系、ニトロソ系等が挙げられる。
有機系顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、キクナドリン系、ジオキサジン系、イソインドリン系等が挙げられる。
無機系顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、酸化クロム、ウルトラマリン等が挙げられる。
【0049】
また、より美麗な発泡成形体を得ることができるため、着色剤としてカーボンブラックを使用することが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛および炭素繊維のようなものが挙げられる。カーボンブラックは、さらにより美麗な発泡成形体を得ることができるため、複合樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.5〜3質量部、より好ましくは1〜2質量部含まれる。
【0050】
本発明のポリエチレン系樹脂およびポリスチレン系樹脂は所望の物性に影響を与えない限り、それぞれ、ビニル基、カルボニル基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基およびニトロ基のようなその他の官能基を含んでいてもよく、2以上のビニル基を有する架橋剤等により架橋されていてもよく、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0051】
また、同様に、その他の樹脂成分を含んでいてもよい。他の樹脂成分としては公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸を含むポリエステル系樹脂等が挙げられる。なお、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを意味する。
【0052】
さらに、所望の発泡成形体を得ることができる限り、複合樹脂粒子は他の添加剤等を含んでいてもよい。具体的には、難燃剤、難燃助剤、着色剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、核剤、滑剤および帯電防止剤のような添加剤を挙げることができる。
【0053】
他方、複合樹脂粒子は流動性確保の観点から、好ましくは球状〜略球状(卵状)であり、また、好ましくは0.8〜2.0mm、より好ましくは1.0〜2.0mmの平均粒子径を有する。
【0054】
(複合樹脂粒子の製造方法)
複合樹脂粒子の製造方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、シード重合法等を挙げることができる。また、所望の複合樹脂粒子をより容易に得ることができるため、シード重合法が好ましい。シード重合法を用いる場合、複合樹脂粒子は、ポリエチレン系樹脂からなる種粒子が分散保持された水性媒体中にスチレン系単量体を加えて重合させて得られることが好ましい。
【0055】
前記種粒子は公知の方法で得ることができる。例えば、まず、押出機を使用してポリエチレン系樹脂を溶融押出した後、水中カット、ストランドカット等により造粒することで、ポリエチレン系樹脂粒子を製造することができる。通常、使用するポリエチレン系樹脂の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状またはグラニュラー状である。本発明においては、ポリエチレン系樹脂からなる種粒子をマイクロペレットとも称する。また、必要に応じて、タルク等の気泡調整剤をマイクロペレットに添加することもできる。
【0056】
また、マイクロペレットを重合容器内の水性媒体中に分散させ、スチレン系単量体をマイクロペレットに含浸させながら重合させることにより複合樹脂粒子を得ることができる。水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられ、環境面から水が好ましい。
【0057】
ポリエチレン系樹脂へのスチレン系単量体の含浸を、スチレン系単量体を重合させつつ行ってよく、重合を開始する前に行ってもよい。工程時間をより短縮することができるため、前記含浸を重合させつつ行うことが好ましい。この場合、スチレン系単量体を重合容器内の水性媒体に連続的にあるいは断続的に添加することが好ましい。
【0058】
スチレン系単量体の重合には、油溶性のラジカル重合開始剤を使用することができる。ラジカル重合開始剤としては、スチレン系単量体の重合に汎用されている重合開始剤を使用することができる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ヘキシルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカルボネート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイドおよびジクミルパーオキサイドのような有機過酸化物;
アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスジメチルバレロニトリルのようなアゾ化合物を挙げることができる。また、過硫酸アンモニウム(APS)および過硫酸カリウム(KPS)のような水溶性のラジカル重合開始剤を併用することもできる。前記重合開始剤は、通常、スチレン系単量体100質量部に対して0.02〜2.0質量部の割合で添加することが好ましい。
【0059】
また、前記水性媒体中に分散剤を添加しておくことも好ましい。このような分散剤としては、例えば、部分けん化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースおよびメチルセルロースのような有機系分散剤;
ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウムおよび酸化マグネシウムのような無機系分散剤を挙げることができる。
【0060】
さらに、必要に応じて、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩およびアルキルリン酸エステル塩のようなアニオン性界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびグリセリン脂肪酸エステルのようなノニオン界面活性剤;
ラウリルジメチルアミンオキサイドのような両性界面活性剤;ならびに
脂肪族第四級アンモニウム塩のようなカチオン系界面活性剤を使用してもよい。
【0061】
重合容器の形状および構造としては、従来から懸濁重合やシード重合に用いられているものであれば、特に限定されない。また、攪拌翼の形状についても特に限定はなく、具体的には、V型パドル翼、ファードラー翼、傾斜パドル翼、平パドル翼、プルマージン翼等のパドル翼、タービン翼、ファンタービン翼等のタービン翼およびマリンプロペラ翼のようなプロペラ翼を挙げることができる。これら攪拌翼の内では、パドル翼が好ましい。攪拌翼は、単段翼であっても多段翼であってもよい。重合容器に邪魔板(バッフル)を設けてもよい。
【0062】
また、スチレン系単量体をマイクロペレット中にて含浸、重合させる際の水性媒体の温度は、特に限定されないが、より安定に重合を行うことができるため、好ましくは110〜140℃、より好ましくは110〜130℃である。また、所望の物性を有する複合樹脂粒子を得ることができる限り、重合を減圧下で行ってもよく、加圧条件下で行ってもよい。さらに、製造工程時間は製造設備や製造条件に従って、適宜設定される。
【0063】
重合終了後、発泡性複合樹脂粒子を得るために、複合樹脂粒子を含む懸濁液をそのまま使用してもよく、懸濁液から回収した複合樹脂粒子を使用してもよい。
【0064】
また、ポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを溶融混錬することによって複合樹脂粒子を製造することもできる。
【0065】
(発泡性複合樹脂粒子)
本発明において、発泡性複合樹脂粒子とは、発泡剤を複合樹脂粒子に含浸させることにより得ることができる、複数の樹脂成分を含む加熱発泡性の複合樹脂粒子を意味する。具体的には、発泡性複合樹脂粒子とは、樹脂成分としてポリエチレン系樹脂とスチレン樹脂とを少なくとも含み、さらに発泡剤を含む加熱発泡性の樹脂粒子を意味する。
【0066】
また、発泡剤として従来から汎用されている発泡剤を使用することができる。例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンおよびヘキサンのような飽和脂肪族炭化水素、ならびに二酸化炭素および窒素のような不活性ガス、のような発泡剤等を挙げることができる。
【0067】
さらに、発泡性複合樹脂粒子への高い発泡性付与の観点から、飽和脂肪族炭化水素が好ましく、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタンおよびイソペンタンのいずれかがより好ましい。発泡成形工程や所望の物性等に影響を与えない限り、発泡剤を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
また、均一な含浸性、発泡性、成形性を期待することができるため、発泡剤を発泡助剤と共に用いてもよい。具体的には、発泡助剤として、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸エチル、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレートおよびやし油のような可塑剤を添加してもよい。
【0069】
他方、本発明の発泡性複合樹脂粒子が、前記発泡性複合樹脂粒子を90〜100℃で、300秒間放置したときに、発泡性複合樹脂粒子は2つの発泡ピークを示すこともできる。この場合、発泡性複合樹脂粒子が1つの発泡ピークを有する場合と比較して、長時間に亘って、高嵩倍数を維持することができる。本発明において、発泡ピークとは、発泡性複合樹脂粒子を加熱発泡させた際に確認される予備発泡粒子の嵩倍数の極大値を意味する。
【0070】
さらに、発泡性複合樹脂粒子を所望の高嵩倍数まで発泡させることができるため、発泡剤は、発泡性複合樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは7〜13質量部、より好ましくは8〜11質量部含まれる。
【0071】
他方、発泡性複合樹脂粒子も流動性確保の観点から、好ましくは球状〜略球状(卵状)である。また同様に、本発明の発泡性複合樹脂粒子は、好ましくは0.8〜2.0mm、より好ましくは1.0〜2.0mmの平均粒子径を有する。
【0072】
(発泡性複合樹脂粒子の製造方法)
本発明の発泡性複合樹脂粒子の製造方法は特に限定されず、公知の含浸方法をいずれも使用することができる。具体的には、発泡剤の含浸は、発泡剤の存在下、水性媒体の存在下または非存在下に行うことができる。本発明の含浸は複合樹脂粒子を過剰量の発泡剤に接触、浸漬することで、複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させることに対応している。
【0073】
より具体的には、
発泡剤と複合樹脂粒子とを回転混合機にて混合させる方法;
複合樹脂粒子が分散している水性媒体中に発泡剤を注入して複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法等を挙げることができる。また、製造設備としては、公知の含浸工程用の設備を使用することができる。
【0074】
また、製造工程の温度を管理が容易となるため、本発明の含浸は好ましくは50〜75℃、より好ましくは60〜70℃の温度で行われる。
【0075】
さらに、発泡剤の揮発をより容易に抑制することができるため、本発明の含浸は好ましくは0.06〜0.09MPa、より好ましくは0.07〜0.09MPaの圧力下で行われる。なお、前記の圧力は、含浸を行う製造設備に備え付けたゲージの圧力を意味する。他方、製造工程時間は製造設備や製造条件に従って、適宜設定される。他方、水性媒体、発泡剤等からの発泡性複合樹脂粒子の単離は公知の方法を用いて行うことができる。
【0076】
(予備発泡粒子)
本発明において、予備発泡粒子とは、樹脂成分としてポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを少なくとも含む発泡性複合樹脂粒子を所定の嵩発泡倍率まで加熱発泡させた樹脂粒子を意味する。
【0077】
本発明の予備発泡粒子は公知の発泡方法を用いて製造することができる。一例を挙げると、公知の予備発泡機内に発泡性複合樹脂粒子を投入し、所定の嵩倍数まで加熱することにより予備発泡粒子を得ることができる。加熱用の熱媒体は水蒸気が好適に使用される。
【0078】
本発明のポリエチレン系樹脂は88〜95℃のビカット軟化温度を有する。このため、従来のポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む発泡性複合樹脂粒子と比べて、樹脂成分はより低温から軟化を開始する。その結果、発泡性複合樹脂粒子はより低温から発泡を開始することができる。
【0079】
より具体的には、まずポリエチレン系樹脂が軟化、発泡を開始し、次いでポリスチレン系樹脂が軟化、発泡を開始するため、低温から高温までの幅広い温度範囲において発泡性複合樹脂粒子を加熱発泡させることができる。よって、本発明によれば、予備発泡粒子同士の融着を低温から十分に行うことができる。さらに、本発明によれば、幅広い発泡温度範囲で予備発泡を行うことができるため、製造工程の際の温度管理を簡便とすることもできる。
【0080】
他方、必要に応じて、予備発泡時、発泡性複合樹脂粒子に、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルおよびステアリン酸モノグリセリドのような帯電防止剤を添加してもよい。なお、予備発泡を行う際の予備発泡機内の圧力および製造工程時間は発泡性複合樹脂粒子に応じて適宜設定することができる。
【0081】
本発明の発泡性複合樹脂粒子は樹脂成分として優れた発泡性を有するポリスチレン系樹脂を好適な割合で含む。また、本発明の発泡性複合樹脂粒子は前記のようなポリエチレン系樹脂も好適な割合で含む。
【0082】
このため、本発明の予備発泡粒子は高嵩倍数を有することができる。具体的には、本発明の予備発泡粒子は好ましくは55倍以上の、より好ましくは55〜80倍の嵩倍数を有することができる。このことは、本発明の予備発泡粒子は高嵩倍数を有していることを示している。
【0083】
他方、予備発泡粒子も流動性確保の観点から、好ましくは球状〜略球状(卵状)であり、また、好ましくは2.4〜7.0mm、より好ましくは3.0〜7.0mmの平均粒子径を有する。
【0084】
(発泡成形体)
本発明において、発泡成形体とは、樹脂成分としてポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを少なくとも含む予備発泡粒子を所定の形状に発泡成形させた樹脂成形体を意味する。
【0085】
本発明の発泡成形体は公知の発泡成形方法を用いて製造することができる。発泡成形方法の一例を挙げると、公知の発泡成形機の金型内に予備発泡粒子を充填し、一方加熱、逆一方加熱、両面加熱することによって、予備発泡粒子を再度加熱し、次いで予備発泡粒子同士を熱融着させることにより発泡成形体を得ることができる。加熱用の熱媒体は0.05〜0.09MPaの蒸気圧力および110〜118℃の蒸気温度を有する水蒸気が好適に使用される。省エネルギー化の観点から、0.05〜0.07MPaの蒸気圧力および110〜116℃の蒸気温度で予備発泡粒子を発泡成形することが好ましい。
【0086】
本発明のポリエチレン系樹脂は88〜95℃のビカット軟化温度を有する。このため、本発明の予備発泡粒子は、予備発泡時と同様に発泡成形時においても、従来のポリエチレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む予備発泡粒子と比べて、樹脂成分がより低温から軟化を再度開始することができる。よって、本発明によれば、予備発泡粒子同士を低温で均一に融着させることができる。
【0087】
また、本発明によれば、幅広い発泡温度範囲で発泡成形を行うことができるため、製造工程の際の温度管理も容易とすることもできる。なお、発泡成形を行う際の発泡成形機内の圧力および製造工程時間は予備発泡粒子に応じて適宜設定することができる。
【0088】
本発明の予備発泡粒子も樹脂成分として優れた発泡性を有するポリスチレン系樹脂を好適な割合で含む。また同様に、本発明のポリエチレン系樹脂は0.900〜0.916g/cm3の密度および190℃、2.16kgの荷重下で測定される1.0〜5.0g/10分のメルトフローレートを有するため、ポリエチレン系樹脂の結晶性を加熱発泡により好適な範囲に調整することができ、ポリエチレン系樹脂の発泡性を向上させることができる。
【0089】
このため、本発明の発泡成形体は好ましくは55倍以上、より好ましくは55〜80倍の倍数を有することができる。このことは、本発明の発泡成形体は高倍数を有していることを示している。
【0090】
他方、本発明の発泡成形体は、前記のように、予備発泡粒子を低温領域で十分かつ安定に融着させることにより得ることができる。また、本発明の発泡成形体も樹脂成分として優れた剛性を有するポリエチレン系樹脂を含む。このため、発泡成形体の倍数が60倍である場合、好ましくは30cm以上、より好ましくは35cm以上の落球衝撃値を有することができる。また、発泡成形体の倍数が50倍である場合、好ましくは40cm以上、より好ましくは45cm以上の落球衝撃値を有することができる。
【0091】
このことは、本発明の発泡成形体は高倍数を有していることを示している。また、本発明の発泡成形体は、従来得ることができなかったような、高倍数を有しているにも関わらず、良好な落球衝撃値、即ち優れた耐衝撃性を有していることも示している。
【0092】
また、本発明の発泡成形体は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%の融着率を有することもできる。このことは、本発明に発泡成形体は予備発泡粒子同士が強固に融着することによって、耐衝撃性に優れていることを示している。
【0093】
従って、本発明の発泡成形体は、高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体である。このため、本発明の発泡成形体は、自動車分野での構造部材、建築用部材等として幅広く使用することができ、特に家電用緩衝材として使用することもできる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。実施例に記載した各種測定法および製造条件を以下で説明する。
【0095】
<樹脂成分の密度>
樹脂成分の密度はJIS K6992−1、2に準拠して測定する。
【0096】
<樹脂成分のメルトフローレート(MFR)>
MFRは、JIS K7210:1999に準拠して、190℃、2.16kg荷重下で測定する。測定装置および測定条件を下記する。
【0097】
測定装置:東洋精機製作所製 メルトインデクサー
測定温度:190℃
測定荷重:2.16kg
オリフィス径:2.09mm
ポリエチレン系樹脂5gを予め190℃に予熱したメルトインデクサー内に入れ、4分間放置する。次に2.16kgの重りをピストンに載せ、オリフィス径2.09mmよりポリエチレン系樹脂を押出し測定する。
【0098】
<樹脂成分の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)>
測定に使用したGPC装置は、東ソー社製HLC−8121GPC/HTであり、カラムとして東ソー社製TSKgel GMHhr−H(20)HTを用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いる。測定試料は、1.0mg/mLの濃度に調整し、GPC装置への注入量を0.3mLとする。各分子量の検量線は、分子量既知のポリエチレン試料を用いて校正する。MnおよびMwは、直鎖状ポリエチレン換算値として求める。
【0099】
<樹脂成分のビカット軟化温度>
JIS K7206「熱可塑性プラスチックフィルムおよびシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」記載の方法により測定する。即ち、樹脂粒子を熱プレスして、厚み2mmに潰した後、縦10mm×横20mm×厚み2mmの平面長方形状のフィルム状試験片を作製し、熱・応力・歪み測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、製品名「TMA/SS6200」)を用い、針入り試験モード(針の先端面積1mm2)、荷重50gとし、フィルム状試験片に針を当てて、昇温速度5℃/分で温度を上げていき、フィルム状試験片の歪みが発生したときの温度をこの樹脂粒子のビカット軟化温度とする。
【0100】
<樹脂成分の融点温度>
樹脂成分の密度はJIS K7121に準拠して測定する。
【0101】
<複合樹脂粒子、発泡性複合樹脂粒子および予備発泡粒子の平均粒子径>
試料の平均粒子径は、これら粒子の粒子径の平均をとることにより算出する。即ち、本発明の平均粒子径は体積平均粒子径を意味する。なお、試料の平均粒子径は、例えば、べックマンコールター株式会社から製品名「コールターマルチサイザーII」として市販されている測定装置を用いて測定することができる。
【0102】
<発泡性複合樹脂粒子の発泡性評価>
約2gの発泡性複合樹脂粒子の重量(a)を小数以下2位で秤量する。秤量した発泡性複合樹脂粒子を容器に入れ、発泡槽内の温度が80℃以下であることを確認し、発泡槽に発泡性複合樹脂粒子を入れた容器を入れゲージ圧0.07MPaの水蒸気(蒸気温度:99℃)を導入することによって、90〜100℃で加熱発泡させる。このとき、加熱時間を1、2、3、4分と変化させ、それぞれ発泡槽から取り出した直後の発泡倍数を測定した。加熱時間は、発泡槽内の温度が90℃以上になった時点からとする。発泡倍数は、予備発泡粒子約2g(a)をメスシリンダーに入れて体積を測定し、その体積を(a)で除することにより、予備発泡粒子の嵩倍数を求める。図1は実施例および比較例の発泡性複合樹脂粒子を90〜100℃で、300秒間放置したときの発泡ピークを示すグラフである。
【0103】
<発泡性複合樹脂粒子の発泡剤含有量>
発泡性複合樹脂粒子を5〜20mg精秤し、測定試料とする。この測定試料を180〜200℃に保持された熱分解炉(島津製作所社製:PYR−1A)にセットし、測定試料を密閉後、120秒間に亘って加熱して発泡剤成分を放出させる。この放出された発泡剤成分をガスクロマトグラフ(島津製作所社製:GC−14B、検出器:FID)を用いて下記条件にて発泡剤成分のチャートを得る。予め測定しておいた発泡剤成分の検量線に基づいて、得られたチャートから発泡性複合樹脂粒子中の発泡剤含有量(質量部)を算出する。
【0104】
ガスクロマトグラフの測定条件
カラム:信和化工社製「Shimalite 60/80 NAW」(φ3mm×3m)カラム温度:70℃
検出器温度:110℃
注入口温度:110℃
キャリアーガス:窒素
キャリアーガス流量:60mL/分
【0105】
<予備発泡粒子の嵩倍数>
約5gの予備発泡粒子の重量(a)を小数以下2位で秤量する。次に、最小メモリ単位が5cm3である500cm3メスシリンダーに秤量した予備発泡粒子を入れ、これにメスシリンダーの口径よりやや小さい円形の樹脂板であって、その中心に巾約1.5cm、長さ約30cmの棒状の樹脂板が直立して固定された押圧具を当てて、予備発泡粒子の体積(b)を読み取り、式(a)/(b)により予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)を求める。なお、嵩倍数は、嵩密度の逆数、即ち、式(b)/(a)とする。
【0106】
本発明においては、
(1)嵩倍数が55倍以上の場合・・・合格(○)
(2)嵩倍数が55倍未満の場合・・・不合格(×)
と判定する。
【0107】
<発泡成形体の倍数>
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の重量(c)と体積(d)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(c)/(d)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。なお、倍数は密度の逆数、すなわち式(d)/(c)とする。
【0108】
本発明においては、
(1)倍数が55倍以上の場合・・・合格(○)
(2)倍数が55倍未満の場合・・・不合格(×)
と判定する。
【0109】
<発泡成形体の落球衝撃値>
衝撃強度の測定にあたっては、発泡成形体を、215×40×20mmの大きさにカットしたサンプルを作製する。次にこのサンプルを、155mmのスパンで配置された一対の保持部材上に載置した後、両保持部材の中間位置でかつサンプルの幅方向の中心位置に、所定の高さから重さ321gの鋼球を落下させて、サンプルの破壊の有無を確認する。この試験は、鋼球を落下させる高さを変えて繰り返し行い、サンプルが破壊された高さの最低値を落球衝撃値とし、衝撃強度を評価する。従って、落球衝撃値が高いほど衝撃強度は高くなる。なお、鋼球を落下させる最大高さは120cmに設定している。そのため、落球衝撃値が120cmを越える場合、鋼球の重さを534g、1044gに変更して前記と同様にして落球衝撃値を測定し、その値を下記式により、321gの鋼球による落球衝撃値に換算する。
(1)321gでの落球衝撃値=(534/321)×(534gでの落球衝撃値)
(2)321gでの落球衝撃値=(1044/321)×(1044gでの落球衝撃値)
実施例及び比較例において、落球衝撃値が120cmをより高く、200cm未満場合は、前記式(1)により、200cm以上の場合は、前記式(2)により換算した値を意味する。
【0110】
本発明においては、
(1)落球衝撃値が60倍の発泡成形体で、30cm以上の場合・・・合格(○)
(2)落球衝撃値が60倍の発泡成形体で、30cm未満の場合・・・不合格(×)
(3)落球衝撃値が50倍の発泡成形体で、40cm以上の場合・・・合格(○)
(4)落球衝撃値が50倍の発泡成形体で、40cm未満の場合・・・不合格(×)
と判定する。
【0111】
<発泡成形体の融着率>
縦400mm×横300mm×高さ50mmの直方体形状の発泡成形体の表面にカッターで横方向に長さ300mm、深さ5mmの切り込み線を入れ、この切り込み線に沿って発泡成形体を2分割する。そして、発泡成形体の分割面において、発泡粒子内で破断している発泡粒子数(e)と、発泡粒子間の界面で破断している発泡粒子数(f)を測定し、次式により融着率を算出する。
融着率(%)=100×(e)/〔(e)+(f)〕
【0112】
本発明においては、
(1)融着率が80%以上の場合・・・・合格(○)
(2)融着率が80%未満の場合・・・合格(○)
と判定する。
【0113】
実施例1
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を、メタロセン触媒を使用して合成したLLDPE(日本ポリエチレン社製、製品名「NF−444A」、融点温度:119℃、メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.912g/cm3、ビカット軟化温度:93℃)とし、LLDPEに供給した。供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子(シード粒子)を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は100粒あたり45mgであった。
【0114】
次に、ピロリン酸マグネシウム(分散剤)360g、およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)5.6gを水40kgに分散させて分散用媒体を得た。
分散用媒体に前記ポリエチレン系樹脂粒子8kgを分散させて懸濁液を得た。
さらに、重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド10gを予めスチレン単量体4kgに溶解した。
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含むスチレン単量体を30分かけて定量で添加した後、60℃の温度で30分攪拌することでポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。
次に、分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリエチレン系樹脂粒子中で重合させることで、樹脂粒子を得た。
その後、115℃の温度に下げ、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ45gを加えた。その後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート112g、エチレンビスステアリン酸アミド40gを溶解したスチレン単量体28kgを6時間かけて滴下した。
滴下終了後、115℃で1時間保持し、次いで、140℃に昇温し、その温度で3時間保持して重合を完結した。その後、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を取り出した。
【0115】
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、複合樹脂粒子15kg、およびジイソブチルアジペート75gを供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3、質量比)2.25kgを圧入した。その後、70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0116】
得られた発泡性複合樹脂粒子を直ちに予備発泡機に供給し、0.01MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させることによって予備発泡粒子を製造した。
【0117】
次に予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後、一方加熱5秒、逆一方加熱2秒、両面加熱15秒で水蒸気(蒸気圧力:0.06MPa、蒸気温度112℃)を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、水冷10秒、真空放冷150秒後、300×400×50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。得られた発泡成形品の落球衝撃値等を測定した。
【0118】
複合樹脂粒子について、
(1)平均粒子径は1.3mmであった。
【0119】
発泡性複合樹脂粒子について、
(1)発泡剤は発泡性複合樹脂粒子100質量部に対して8.5質量部含まれ、
(2)平均粒子径は1.3mmであった。
【0120】
予備発泡粒子について、
(1)嵩倍数は62倍であり、
(2)平均粒子径は4.3mmであった。
【0121】
実施例2
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を、メタロセン触媒を使用して合成したLLDPE(プライムポリマー社製、製品名「SP2020」、融点温度:116℃、メルトフローレート:2.3g/10分、密度:0.916g/cm3、ビカット軟化温度:93℃)とし、LLDPEに供給した。供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子(シード粒子)を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は100粒あたり45mgであった。
【0122】
次に、ピロリン酸マグネシウム(分散剤)360g、およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)5.6gを水40kgに分散させて分散用媒体を得た。
分散用媒体に前記ポリエチレン系樹脂粒子8kgを分散させて懸濁液を得た。
さらに、重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド10gを予めスチレン単量体4kgに溶解した。
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含むスチレン単量体を30分かけて定量で添加した後、60℃の温度で30分攪拌することでポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。
次に、分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリエチレン系樹脂粒子中で重合させることで、樹脂粒子を得た。
その後、115℃の温度に下げ、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ45gを加えた。その後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート112g、エチレンビスステアリン酸アミド40gを溶解したスチレン単量体28kgを6時間かけて滴下した。
滴下終了後、115℃で1時間保持し、次いで、140℃に昇温し、その温度で3時間保持して重合を完結した。その後、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を取り出した。
【0123】
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、複合樹脂粒子15kgおよびジイソブチルアジペート75gを供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3、質量比)2.25kgを圧入した。その後、70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0124】
得られた発泡性複合樹脂粒子を直ちに予備発泡機に供給し、0.01MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させることによって予備発泡粒子を製造した。
【0125】
次に予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後、一方加熱5秒、逆一方加熱2秒、両面加熱15秒で水蒸気(蒸気圧力:0.06MPa、蒸気温度112℃)を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、水冷10秒、真空放冷150秒後、300×400×50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。得られた発泡成形品の落球衝撃値等を測定した。
【0126】
複合樹脂粒子について、平均粒子径は1.3mmであった。
【0127】
発泡性複合樹脂粒子について、
(1)発泡剤は発泡性複合樹脂粒子100質量部に対して8.6質量部含まれ、
(2)平均粒子径は1.3mmであった。
【0128】
予備発泡粒子について、
(1)嵩倍数は62倍であり、
(2)平均粒子径は4.3mmであった。
【0129】
実施例3
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を、メタロセン触媒を使用して合成したLLDPE(プライムポリマー社製、製品名「SP−1020」、融点温度:111℃、メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.909g/cm3、ビカット軟化温度:92℃)とし、LLDPEに供給した。供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子(シード粒子)を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は100粒あたり45mgであった。
【0130】
次に、ピロリン酸マグネシウム(分散剤)360g、およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)5.6gを水40kgに分散させて分散用媒体を得た。
分散用媒体に前記ポリエチレン系樹脂粒子8kgを分散させて懸濁液を得た。
さらに、重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド10gを予めスチレン単量体4kgに溶解した。
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含むスチレン単量体を30分かけて定量で添加した後、60℃の温度で30分攪拌することでポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。
次に、分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリエチレン系樹脂粒子中で重合させることで、樹脂粒子を得た。
その後、115℃の温度に下げ、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ45gを加えた。その後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート112g、エチレンビスステアリン酸アミド40gを溶解したスチレン単量体28kgを6時間かけて滴下した。
滴下終了後、115℃で1時間保持し、次いで、140℃に昇温し、その温度で3時間保持して重合を完結した。その後、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を取り出した。
【0131】
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、複合樹脂粒子15kgおよびジイソブチルアジペート75gを供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3、質量比)2.25kgを圧入した。その後、70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0132】
得られた発泡性複合樹脂粒子を直ちに予備発泡機に供給し、0.01MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させることによって予備発泡粒子を製造した。
【0133】
次に予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後、一方加熱5秒、逆一方加熱2秒、両面加熱15秒で水蒸気(蒸気圧力:0.06MPa、蒸気温度112℃)を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、水冷10秒、真空放冷150秒後、300×400×50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。得られた発泡成形品の落球衝撃値等を測定した。
【0134】
複合樹脂粒子について、平均粒子径は1.3mmあった。
【0135】
発泡性複合樹脂粒子について、
(1)発泡剤は発泡性複合樹脂粒子100質量部に対して9.5質量部含まれ、
(2)平均粒子径は1.3mmであった。
【0136】
予備発泡粒子について、
(1)嵩倍数は62倍であり、
(2)平均粒子径は4.3mmであった。
【0137】
実施例4
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を、メタロセン触媒を使用して合成したLLDPE(日本ポリエチレン社製、製品名「NF−444A」、融点温度:119℃、メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.912g/cm3、ビカット軟化温度:93℃)とし、LLDPE25.0kgと、ファーネスブラック30質量%含有マスターバッチ(ユーアイ社製、製品名「MHRB−013」)5.0kgとを混合し溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状卵状)のカーボンブラック含有ポリエチレン系樹脂粒子(シード粒子)を得た。樹脂粒子100質量部に対してカーボンブラックを5質量部含むカーボンブラック含有ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は100粒あたり45mgであった。
【0138】
次に、ピロリン酸マグネシウム(分散剤)360g、およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)5.6gを水40kgに分散させて分散用媒体を得た。
分散用媒体に前記カーボンブラック含有ポリエチレン系樹脂粒子12kgを分散させて懸濁液を得た。
さらに、重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド12gを予めスチレン単量体6kgに溶解した。
カーボンブラック含有ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含むスチレン単量体を30分かけて定量で添加した後、60℃の温度で30分攪拌することでカーボンブラック含有ポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。
次に、分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をカーボンブラック含有ポリエチレン系樹脂粒子中で重合させることで、樹脂粒子を得た。
その後、125℃の温度に下げ、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ45gを加えた。その後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド84g、エチレンビスステアリン酸アミド40gを溶解したスチレン単量体22kgを4時間かけて滴下した。
滴下終了後、125℃で1時間保持し、次いで、140℃に昇温し、その温度で3時間保持して重合を完結した。その後、常温まで冷却し、カーボンブラック含有複合樹脂粒子を取り出した。
【0139】
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、カーボンブラック含有複合樹脂粒子15kgおよびジイソブチルアジペート75gを供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3、質量比)2.50kgを圧入した。その後、70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0140】
得られた発泡性カーボンブラック含有複合樹脂粒子を直ちに予備発泡機に供給し、0.01MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させることによって予備発泡粒子を製造した。
【0141】
次に予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後、一方加熱5秒、逆一方加熱2秒、両面加熱15秒で水蒸気(蒸気圧力:0.06MPa、蒸気温度112℃)を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、水冷10秒、真空放冷150秒後、300×400×50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。得られた発泡成形品の落球衝撃値等を測定した。
【0142】
カーボンブラック含有複合樹脂粒子について、平均粒子径は1.2mmであった。
【0143】
発泡性カーボンブラック含有複合樹脂粒子について、
(1)発泡剤は発泡性カーボンブラック含有複合樹脂粒子100質量部に対して10.1質量部含まれ、
(2)平均粒子径は1.2mmであった。
【0144】
予備発泡粒子について、
(1)嵩倍数は62倍であり、
(2)平均粒子径は4.0mmであった。
【0145】
実施例5
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を、メタロセン触媒を使用して合成したLLDPE(日本ポリエチレン社製、製品名「NF−444A」、融点温度:119℃、メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.912g/cm3、ビカット軟化温度:93℃)とし、LLDPEに供給した。供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状(卵状)のポリエチレン系樹脂粒子(シード粒子)を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は100粒あたり45mgであった。
【0146】
次に、ピロリン酸マグネシウム(分散剤)360g、およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)5.6gを水40kgに分散させて分散用媒体を得た。
分散用媒体に前記ポリエチレン系樹脂粒子8kgを分散させて懸濁液を得た。
さらに、重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド10gを予めスチレン単量体4kgに溶解した。
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含むスチレン単量体を30分かけて定量で添加した後、60℃の温度で30分攪拌することでポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。
次に、分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリエチレン系樹脂粒子中で重合させることで、樹脂粒子を得た。
その後、115℃の温度に下げ、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ45gを加えた。その後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート112g、エチレンビスステアリン酸アミド40gを溶解したスチレン単量体28kg、アクリル酸ブチル単量体0.8kgを6時間かけて滴下した。
滴下終了後、115℃で1時間保持し、次いで、140℃に昇温し、その温度で3時間保持して重合を完結した。その後、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を取り出した。
【0147】
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、複合樹脂粒子15kg、およびジイソブチルアジペート135gを供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてイソペンタン2.55kgを圧入した。その後、70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0148】
得られた発泡性複合樹脂粒子を直ちに予備発泡機に供給し、0.01MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させることによって予備発泡粒子を製造した。
【0149】
次に予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後、一方加熱5秒、逆一方加熱2秒、両面加熱15秒で水蒸気(蒸気圧力:0.06MPa、蒸気温度112℃)を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、水冷10秒、真空放冷150秒後、300×400×50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。得られた発泡成形品の落球衝撃値等を測定した。
【0150】
複合樹脂粒子について、平均粒子径は1.3mmであった。
【0151】
発泡性複合樹脂粒子について、
(1)発泡剤は発泡性複合樹脂粒子100質量部に対して10.1質量部含まれ、
(2)平均粒子径は1.3mmであった。
【0152】
予備発泡粒子について、
(1)嵩倍数は62倍であり、
(2)平均粒子径は4.3mmであった。
【0153】
比較例1
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を、メタロセン触媒を使用して合成したLLDPE(プライムポリマー社製、製品名「SP1520」、融点温度:116℃、メルトフローレート:2.0g/10分、密度:0.913g/cm3、ビカット軟化温度:96℃)とし、LLDPEに供給した。供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状卵状)のポリエチレン系樹脂粒子(シード粒子)を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は100粒あたり45mgであった。
【0154】
次に、ピロリン酸マグネシウム(分散剤)360g、およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)5.6gを水40kgに分散させて分散用媒体を得た。
分散用媒体に前記ポリエチレン系樹脂粒子8kgを分散させて懸濁液を得た。
さらに、重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド10gを予めスチレン単量体4kgに溶解した。
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含むスチレン単量体を30分かけて定量で添加した後、60℃の温度で30分攪拌することでポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。
次に、分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリエチレン系樹脂粒子中で重合させることで、樹脂粒子を得た。
その後、115℃の温度に下げ、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ45gを加えた。その後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート112g、エチレンビスステアリン酸アミド40gを溶解したスチレン単量体28kgを6時間かけて滴下した。
滴下終了後、115℃で1時間保持し、次いで、140℃に昇温し、その温度で3時間保持して重合を完結した。その後、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を取り出した。
【0155】
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、複合樹脂粒子15kg、およびジイソブチルアジペート75gを供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3、質量比)2.25kgを圧入した。その後、70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0156】
得られた発泡性複合樹脂粒子を直ちに予備発泡機に供給し、0.01MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させることによって予備発泡粒子を製造した。しかし、60倍以上の予備発泡粒子を得ることができなかった。
【0157】
次に予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後、一方加熱5秒、逆一方加熱2秒、両面加熱15秒で水蒸気(蒸気圧力:0.06MPa、蒸気温度112℃)を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、水冷10秒、真空放冷150秒後、300×400×50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。得られた発泡成形品の落球衝撃値等を測定した。
【0158】
複合樹脂粒子について、平均粒子径は1.3mmであった。
【0159】
発泡性複合樹脂粒子について、
(1)発泡剤は発泡性複合樹脂粒子100質量部に対して8.9質量部含まれ、
(2)平均粒子径は1.3mmであった。
【0160】
予備発泡粒子について、
(1)嵩倍数は52倍であり、
(2)平均粒子径は4.0mmであった。
【0161】
比較例2
無架橋の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を、メタロセン触媒を使用して合成したLLDPE(日本ユニカー社製、製品名「FMRN−063」、融点温度:124℃、メルトフローレート:1.3g/10分、密度:0.914g/cm3、ビカット軟化温度:97℃)とし、LLDPEに供給した。供給物を溶融混練し、水中カット方式により造粒することで楕円球状卵状)のポリエチレン系樹脂粒子(シード粒子)を得た。ポリエチレン系樹脂粒子の平均重量は100粒あたり45mgであった。
【0162】
次に、ピロリン酸マグネシウム(分散剤)360g、およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(界面活性剤)5.6gを水40kgに分散させて分散用媒体を得た。
分散用媒体に前記ポリエチレン系樹脂粒子8kgを分散させて懸濁液を得た。
さらに、重合開始剤としてのジクミルパーオキサイド10gを予めスチレン単量体4kgに溶解した。
ポリエチレン系樹脂粒子の分散液の温度を60℃に調節し、重合開始剤を含むスチレン単量体を30分かけて定量で添加した後、60℃の温度で30分攪拌することでポリエチレン系樹脂粒子中にスチレン単量体を含浸させた。
次に、分散液の温度を130℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリエチレン系樹脂粒子中で重合させることで、粒子を得た。
その後、115℃の温度に下げ、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ45gを加えた。その後、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート112g、エチレンビスステアリン酸アミド40gを溶解したスチレン単量体28kgを6時間かけて滴下した。
【0163】
滴下終了後、115℃で1時間保持し、次いで、140℃に昇温し、その温度で3時間保持して重合を完結した。その後、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を取り出した。
【0164】
続いて、内容積が1m3の耐圧V型回転混合機に、複合樹脂粒子15kgおよびジイソブチルアジペート75gを供給して回転させながら、常温で揮発性発泡剤としてブタン(ノルマルブタン:イソブタン=7:3、質量比)2.25kgを圧入した。その後、70℃に昇温して4時間保持した後に25℃まで冷却することで発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0165】
得られた発泡性複合樹脂粒子を直ちに予備発泡機に供給し、0.01MPaの圧力の蒸気を導入して予備発泡させることによって予備発泡粒子を製造した。しかし、60倍以上の予備発泡粒子を得ることができなかった。
【0166】
次に予備発泡粒子を発泡成形機の金型内に充填し、その後、一方加熱5秒、逆一方加熱2秒、両面加熱15秒で水蒸気(蒸気圧力:0.06MPa、蒸気温度112℃)を導入して予備発泡粒子を発泡成形させ、水冷10秒、真空放冷150秒後、300×400×50mmの直方体形状の発泡成形体を得た。得られた発泡成形品の落球衝撃値等を測定した。
【0167】
複合樹脂粒子について、平均粒子径は1.3mmであった。
【0168】
発泡性複合樹脂粒子について、
(1)発泡剤は発泡性複合樹脂粒子100質量部に対して8.9質量部含まれ、
(2)平均粒子径は1.3mmであった。
【0169】
予備発泡粒子について、
(1)嵩倍数は52倍であり、
(2)平均粒子径は4.0mmであった。
【0170】
表1において、実施例および比較例の原料種、評価結果を詳説する。
また、実施例および比較例の発泡性の評価結果を図1に示す。
【0171】
【表1】

【0172】
表1より実施例についての倍数、融着率および落球衝撃値については良好な結果を示したが、比較例については良好な結果を示さない場合があった。
【0173】
従って、本発明の発泡成形体は、高倍数を有し、耐衝撃性にも優れた発泡成形体である。このため、本発明の発泡成形体は、自動車分野での構造部材、建築用部材等として幅広く使用することができ、特に家電用緩衝材として使用することもできる。
【符号の説明】
【0174】
A1 嵩倍数(倍)
A2 加熱時間(秒)
A3 実施例1
A4 実施例4
A5 実施例5
A6 比較例1
A7 比較例2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分として、ポリエチレン系樹脂100質量部とポリスチレン系樹脂200〜900質量部とを含み、
前記ポリエチレン系樹脂が、0.900〜0.916g/cm3の密度、190℃、2.16kgの荷重下で測定される1.0〜5.0g/10分のメルトフローレートおよび88〜95℃のビカット軟化温度を有することを特徴とする複合樹脂粒子。
【請求項2】
前記複合樹脂粒子が、カーボンブラックを含む請求項1に記載の複合樹脂粒子。
【請求項3】
前記複合樹脂粒子が、スチレン系単量体を前記ポリエチレン系樹脂にシード重合させることによって得られる請求項1または2に記載の複合樹脂粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の複合樹脂粒子から得られる発泡性複合樹脂粒子。
【請求項5】
前記発泡性複合樹脂粒子が、前記発泡性複合樹脂粒子を90〜100℃で、300秒間放置したときに、2つの発泡ピークを示す請求項4に記載の発泡性複合樹脂粒子。
【請求項6】
請求項4または5に記載の発泡性複合樹脂粒子から得られる予備発泡粒子。
【請求項7】
前記予備発泡粒子が、55倍以上の嵩倍数を有する請求項6に記載の予備発泡粒子。
【請求項8】
請求項6または7に記載の予備発泡粒子から得られる発泡成形体。
【請求項9】
前記発泡成形体が、55倍以上の倍数を有する請求項8に記載の発泡成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−214551(P2012−214551A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79177(P2011−79177)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】