説明

複合機

【課題】スキャナ部が読み込み可能な最大サイズよりも大きな原稿62の一部をコピーする場合においても、シートに記録された画像の一部をユーザが確認できる複合機を提供する。
【解決手段】複合機10は、プリンタ部11の上部にフラットベッド方式のスキャナ部12を備えている。スキャナ部12は、原稿62を載置可能なコンタクトガラス41と、筐体13の背面26側を中心に回動してコンタクトガラス41を開閉する原稿カバー43とを有している。プリンタ部11は、給紙トレイ19と、給紙トレイ19の記録用紙61をUターンさせて、前面14側へ搬送する搬送路27と、前面14の開口15から延出された排紙トレイ20と、を有している。排紙トレイ20に排出された搬送路が搬送可能な最大サイズの記録用紙61が占める排出領域E2の左端は、コンタクトガラス41の読取可能領域E3の左端に対して、左側へ所定距離だけずらされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナ部が原稿から読み込んだ画像に基づいて、画像記録部がシートに画像を記録するコピー機能を有した複合機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿の画像を読み込む機能(スキャン機能)を有するスキャナ部と記録用紙に画像を記録する機能(プリント機能)を有する画像記録部とを備えた複合機が広く知られている。一般的な複合機は、画像記録部が下部に設けられ、スキャナ部が上部に設けられている。
【0003】
画像記録部は、画像が記録されたシートが排出される排紙トレイを備えている。画像の記録が行われる際、排紙トレイは、複合機の前面から延出された状態となる。つまり、シートは、ユーザから見て、部分的に複合機の前面よりも手前側に排出される。
【0004】
また、複合機の上側面には、スキャナ部が有する原稿保持プレートが設けられている。原稿保持プレートの下側には、光学的な方法によって原稿保持プレートに載置された原稿から画像を読み込むイメージセンサが配置されている。
【0005】
このような構成の複合機は、スキャナ部が原稿から読み込んだ画像に基づいて、画像記録部がシートに画像を記録するコピー機能を有している。コピー機能を有した複合機は、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−44605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記構成のような複合機において、ユーザは、スキャナ部が読み込み可能な最大サイズよりも大きな原稿を使用してコピー操作を行うことがある。その場合、ユーザは、原稿のコピーしたい領域を、原稿保持プレートの読取可能領域に合わせた状態でコピー操作を行う。原稿のサイズによっては、原稿の一部が原稿保持プレートに収まりきらず、複合機の側面に沿って下方へ垂下されることがある。複合機の側面からは、排紙トレイが突出されているため、排紙トレイの位置によっては、原稿の一部が排紙されたシートを覆ってしまい、シートに記録された画像をユーザが確認することが困難となることがある。
【0008】
主として小型の複合機は、収納性の観点から奥行きと高さ方向の寸法が比較的短く、幅方向の寸法が長くされていることがある。そのような複合機は、排紙トレイ及び原稿保持プレートの長手方向が、複合機の幅方向となるように構成されることがある。コピーしたい画像が、原稿の長手方向中央に対して片側に位置している場合、ユーザは、複合機の奥行き方向を原稿の長手方向として、原稿を載置する。つまり、原稿の上記片側と反対側が、複合機の前面に沿って下方へ垂下される。小型の複合機では、前面側に排紙トレイが設けられていることが多く、また高さ方向の寸法が短いため、原稿の一部が排紙されたシートを覆いやすくなり、上記問題が特に発生しやすい。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、スキャナ部が読み込み可能な最大サイズよりも大きな原稿の一部をコピーする場合においても、シートに記録された画像の一部をユーザが確認できる複合機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明は、画像記録部と、当該画像記録部の上部に設けられたフラットベッド方式のスキャナ部とを備えており、当該スキャナ部が原稿から読み込んだ画像に基づいて、上記画像記録部がシートに画像を記録可能な複合機である。上記スキャナ部は、画像が読み取られる原稿を載置可能な画像読取面と、一端側が当該複合機の背面側に連結されており、当該一端側を中心に回動して、上記画像読取面を開閉する原稿カバーと、を有している。上記画像記録部は、シートを載置可能な第1トレイと、上記第1トレイに載置されたシートを、上記背面側から上方に向かって搬送した後、Uターンさせて、当該複合機の前面側へ向かう第1向きへ搬送する搬送路と、上記前面に形成された開口から少なくとも一部が延出されており、上記搬送路を搬送されたシートが排出される第2トレイと、を有している。上方から見て第1向きと直交する第2向きにおいて、上記第2トレイに排出された上記搬送路が搬送可能な最大サイズのシートが占める排出領域の第2向き下流端は、上記画像読取面における読取可能領域の第2向き下流端に対して、第2向き下流側へ第1距離だけずらされている。
【0011】
本構成によると、シートの第2向き下流側には、原稿によって覆われない領域が第1距離の長さだけ存在する。ユーザは、シートが原稿によって覆われない領域から、記録された画像の一部を確認することができる。
【0012】
(2) 上記第1トレイに載置された上記搬送路が搬送可能な最大サイズのシートが占める載置領域の第1向き上流端は、上記読取可能領域の第1向き上流端に対して、第1向き下流側へ上記第1距離よりも短い第2距離だけずらされていてもよい。上記載置領域は、全体が上記前面よりも第1向き上流側に位置していてもよい。
【0013】
本構成によると、読取可能領域の第1向き上流端は、載置領域の第1向き上流端よりも第1向き上流側、つまり装置背面側に位置することになる。それにより、原稿が装置の前面に沿って下方へ垂下される長さが短くなる。つまり、原稿が第2トレイに排出されたシートを覆いにくくすることができる。
【0014】
(3) 上記画像読取面よりも第1向き下流側に、上記スキャナ部及び上記画像記録部の動作を操作可能な操作パネルが設けられていてもよい。上記操作パネルが第2向きに占める範囲は、少なくとも一部が、上記排出領域の第2向き下流端と上記読取可能領域の第2向き下流端との間にあってもよい。
【0015】
本構成では、第2向きにおいて、操作パネルの少なくとも一部が原稿載置領域に含まれない。そのため、操作パネルが、装置の前面に沿って下方へ垂下される原稿によって完全に覆われてしまうことはない。つまり、操作パネルが原稿によって覆われない領域にコピー操作のためのボタンなどを配置することで、ユーザは、コピー操作を容易に行うことができる。
【0016】
(4) 上記読取可能領域と上記載置領域とは、第1向きの長さが互いに等しく、且つ第2向きの長さが互いに等しくてもよい。また、第2向きの長さが第1向きの長さよりも長くてもよい。
【0017】
(5) 上記スキャナ部は、第2向きと平行に移動しながら、画像読取面に載置された原稿から画像を読み取るイメージセンサを有していてもよい。
【0018】
(6) 上記第2トレイは、上記開口から少なくとも一部が延出された使用姿勢と、全体が上記開口よりも第1向き上流側に位置する収納姿勢とに姿勢変化可能であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、スキャナ部が読み込み可能な最大サイズよりも大きな原稿の一部をコピーする場合においても、シートが原稿によって完全に覆われることはなく、シートに記録された画像の一部をユーザが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る複合機10の斜視図である。原稿カバー43は閉じられており、排紙トレイ20は収納姿勢にある。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る複合機10の斜視図である。原稿カバー43は開かれており、排紙トレイ20は使用姿勢にある。
【図3】図3は、プリンタ部11の構成を示す模式図である。
【図4】図4は、スキャナ部11の構成を示す模式図である。なお、原稿カバー43は省略されている。
【図5】図5は、筐体13における、プリンタ部11の載置領域E1、排出領域E2、及びスキャナ部11の読取可能領域E3の位置関係を示した模式図である。なお、筐体13以外の構成要素は省略されている。
【図6】図6は、スキャナ部11によって画像を読み取らせるため、読取可能領域E3よりも大きな原稿62をコンタクトガラス41に載置した状態を示す図である。
【図7】図7は、読取可能領域E3よりも大きな原稿62に基づいてコピーが完了した様子を示す模式図である。なお、原稿カバー43は省略されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。以下の説明においては、複合機10が使用可能に設置された状態(図1,2の状態)を基準として上下方向7を定義し、開口15が設けられている側を手前側として前後方向8を定義し、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向9を定義する。
【0022】
[複合機10の概要]
図1,2に示される複合機10(本発明の複合機の一例)は、プリンタ部11(本発明の画像記録部の一例、図2,3を参照)とスキャナ部12(本発明のスキャナ部の一例、図2,4を参照)とを一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)である。複合機10は、上下方向7より前後方向8及び左右方向9の寸法が大きい幅広薄型の概ね直方体の筐体13を備えている。筐体13の内部に、インクジェット記録方式のプリンタ部11及び、フラットベッド方式のスキャナ部12が収容されている。スキャナ部12は、プリンタ部11の上方に設けられている。
【0023】
筐体13の前面14(本発明の前面の一例)に、操作パネル16(本発明の操作パネルの一例)が設けられている。操作パネル16は、液晶表示パネル17や複数の操作ボタン18を有している。液晶表示パネル17及び操作ボタン18は、プリンタ部11及びスキャナ部12の動作を制御する制御回路(不図示)と電気的に接続されている。ユーザは、操作パネル16を操作することで、プリンタ部11及びスキャナ部12の機能の一部を使用することができる。例えば、ユーザは、操作パネル16を操作することで、スキャナ部12が原稿62(本発明の原稿の一例、図6,7を参照)から読み取った画像を、プリンタ部11によって記録用紙61(本発明のシートの一例、図3,7を参照)に記録させるコピー機能を使用することができる。
【0024】
[プリンタ部11]
図1,2に示されるように、筐体13の前面14には、記録用紙61が積載された給紙トレイ19(本発明の第1トレイの一例)が装着されている。給紙トレイ19は、複合機10に対して前後方向8に挿抜可能に構成されている。給紙トレイ19の上方には、画像が記録された記録用紙61が排出される排紙トレイ20(本発明の第2トレイの一例)が設けられている。また、筐体13の前面14には、排紙トレイ20に排出された記録用紙61を取り出すための開口15(本発明の開口の一例)が形成されている。給紙トレイ19、排紙トレイ20、及び開口15は、それぞれ、操作パネル16よりも下方に設けられている。
【0025】
排紙トレイ20は、図2に示される使用姿勢において、開口15よりも筐体13の内側に収まる内側部21と、内側部21から開口15の外側へ向かって延出された第1延出部22及び第2延出部23を有している。つまり、使用姿勢において、排紙トレイ20は、部分的に開口15から延出されている。これにより、排紙トレイ20に排出された記録用紙61は、搬送向きの下流側の一部が筐体13の前面14よりも外側に位置することになる。第2延出部23の先端には、上方に突出する突起24が形成されている。排紙トレイ20に排出された記録用紙61は、搬送向きの下流端である前後方向8の前端が突起24に当接されて、その位置で停止される。記録用紙61が排出されるさらに詳細な位置については後述される。
【0026】
排紙トレイ20は、前後方向8へ伸縮することで、図1に示される収納姿勢(本発明の収納姿勢の一例)と、図2に示される画像記録可能な使用姿勢(本発明の使用姿勢の一例)とに姿勢変化可能である。排紙トレイ20を使用姿勢から収納姿勢へと姿勢変化させる際、ユーザは、第2延出部23の先端を前後方向8の後方に押圧する。第2延出部23は、第1延出部22に対して前後方向8の後方に移動して、第1延出部22の内部に収容される。また、第1延出部22は、内側部21に対して前後方向8の後方に移動して、内側部21の内部に収容される。結果として、第1延出部22及び第2延出部23は、それぞれ内側部21の内部に収容され、開口15よりも、筐体13の内側に位置することになる。ユーザは、画像記録を行わないときは、排紙トレイ20を収納姿勢にしておくことで、複合機10の前方のスペースを有効に活用できる。
【0027】
また、ユーザは、第2延出部23の先端を前後方向8の前方に引くことで、排紙トレイ20を収納姿勢から使用姿勢へと姿勢変化させることができる。
【0028】
図3に示されるプリンタ部11は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙61に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。ただし、プリンタ部11の記録方式はインクジェット記録方式に限定されるものではなく、例えば熱転写方式が採用されてもよい。プリンタ部11は、上述した給紙トレイ19や排紙トレイ20の他、記録用紙61が搬送される搬送路27、搬送路27に沿って記録用紙61を搬送する各種のローラ、及び搬送路27において記録用紙61に画像を記録する記録部31などを有している。
【0029】
画像記録の際、給紙トレイ19に載置された記録用紙61は、給紙ローラ25によって前後方向8の後方(筐体13の背面26側)へ向けて搬送され、搬送路27(本発明の搬送路の一例)の一部を構成するUターン路28へ供給される。Uターン路28は、上方に向かって円弧を描くように形成された通路である。記録用紙61は、Uターン路28に沿って上方へ湾曲されながら搬送される。これにより、記録用紙61はUターンされ、表裏面が反転される。Uターン路28の下流端は、搬送路27の一部を構成する直線路29へ繋がっている。直線路29は、前後方向8の前方(筐体13の前面14側)へ向かう通路である。Uターン路28でUターンされた記録用紙61は、搬送ローラ対30の回転によって、直線路29に沿って前後方向8の前方へ搬送される。ここで、前後方向8の前方へ向かう向きが本発明の第1向きに相当する。つまり前方ほど第1向き下流であり、後方ほど第1向き上流である。
【0030】
直線路29には、記録用紙61に画像を記録する記録部31が設けられている。記録部31は、記録用紙61を下方から支持するプラテン32と、直線路29を挟んでプラテン32の上方に対向して設けられた記録ヘッド33とを有している。記録ヘッド33は、キャリッジ35に支持されており、キャリッジ35と一体に左右方向9に往復動する。記録ヘッド33は、左右方向9に往復動する中で、プラテン32上を通過する記録用紙61に対してインク滴を選択的に吐出する。これにより、記録部31を通過した記録用紙61に画像が記録される。プラテン32を通過した記録用紙61は、排出ローラ対34によって、直線路29の最下流側に設けられた排紙トレイ20に排出される。
【0031】
[スキャナ部12]
図4に示されるスキャナ部12は、コンタクトガラス41(本発明の画像読取面の一例)上に載置された原稿62から画像を読み取る所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。コンタクトガラス41は、筐体13の上面42に設けられており、透明なガラス板やアクリル板からなる。また、筐体13よりも上方には、原稿カバー43(本発明の原稿カバーの一例、図1,2を参照)が設けられている。原稿カバー43は、筐体13の背面26(本発明の背面の一例)側に蝶番44を介して連結されている。原稿カバー43は、蝶番44(図2)を中心に矢印45(図1),46(図2)の向きへそれぞれ回動して、筐体13の上面42のコンタクトガラス41に対して開閉する。
【0032】
原稿カバー43の裏面47には、押さえ部材48(図2)が設けられている。押さえ部材48は、例えば板状のスポンジからなる。ただし、押さえ部材48はこれに限定されるものではなく、例えばゴムなどの弾性を有する部材で構成されていてもよい。押さえ部材48は、原稿カバー43が閉じられた図1の状態において、コンタクトガラス41の上面を覆うように形成されている。その際、押さえ部材48は、コンタクトガラス41上の原稿62を押さえて、コンタクトガラス41上に固定する。
【0033】
図4に示されるように、コンタクトガラス41の下側には、画像読取ユニット51が設けられている。画像読取ユニット51は、ラインセンサ52(本発明のイメージセンサの一例)、キャリッジ53、シャフト54、及びベルト駆動機構55などを有している。
【0034】
棒状のラインセンサ52は、前後方向8を長手方向としてコンタクトガラス41の下側に設けられている。ラインセンサ52は、コンタクトガラス41の読取領域へ光を照射してその反射光を読み取るものである。本実施形態では、ラインセンサ52として(CIS:Contact Image Sensor)が使用される。図示しないが、ラインセンサ52は、光源、レンズ、及び受光素子を備えている。光源、レンズ、及び受光素子は、主走査方向であるラインセンサ25の長手方向(前後方向8)に沿って複数が配列されている。
【0035】
ラインセンサ52は、キャリッジ53によって下方から支持されており、キャリッジ53は左右方向9を長手方向として設けられたシャフト54に取り付けられている。
【0036】
キャリッジ53は、モータ56、プーリ57、及びベルト58などを有したベルト駆動機構55から駆動伝達されて、シャフト54の軌道に沿って、副走査方向である左右方向9へ往復動される。このとき、ラインセンサ52はキャリッジ53と一体に移動する。その過程において、ラインセンサ52は、光源からコンタクトガラス41へ向けて光を照射する。ラインセンサ52は、照射した光の反射光をレンズにより集光して受光素子で電気信号に変換する。この電気信号は、制御回路に送信され、制御回路によって画像データの形成が行われる。
【0037】
[プリンタ部11とスキャナ部12との位置関係]
図5は、複合機10を上方から観察した状態において、給紙トレイ及び排紙トレイの記録用紙61が占める領域とスキャナ部12が画像を読み取り可能な領域との位置関係を示している。簡単のため、複合機10は、筐体13のみが示されている。なお、図には示されないが、本実施形態において、筐体13の前後方向8の寸法が290mmであり、左右方向9の寸法が480mmである。
【0038】
図5に一点鎖線で示される載置領域E1(本発明の載置領域の一例)は、プリンタ部11が画像記録に対応する最大サイズの記録用紙61、(つまり、搬送路27が搬送可能な最大サイズの記録用紙61、以下、単に「最大サイズの記録用紙61」とする。)が給紙トレイ19にセットされた際に、最大サイズの記録用紙61が占める領域である。載置領域E1は、全体が筐体13の内側に収まっている。また、載置領域E1は、左右方向9の長さL2が前後方向8の長さL1よりも長くなっている。つまり、給紙トレイ19上には、左右方向9を長手方向として記録用紙61が載置される。
【0039】
一例として、L1とL2との比率が1:1.41であってもよい。このような縦横比の用紙はAシリーズと呼ばれ、ISO216やJIS P0138によって規格化されている。本実施形態においては、L1=210mm L2=297mmである。このようなサイズの用紙は、Aシリーズのなかでも特にA4と呼ばれている。つまり、搬送路27は、A4サイズの記録用紙61を、短手方向を搬送向きとして搬送するものである。したがって、搬送路27の幅(左右方向9の長さ)は、記録用紙61の長手方向の長さ(297mm)よりも長く取られている。ただし、L1およびL2はこの値に限定されるものではなく、他の値であってもよい。
【0040】
図5に波線で示される排出領域E2(本発明の排出領域の一例)は、画像記録の後、排紙トレイ20に排出された最大サイズの記録用紙61が占める領域である。上述したように、記録用紙61は、給紙トレイ19から前後方向8の後方へ向かって搬送路27へ供給され、搬送路27を構成するUターン路28によってUターンされ、直線路29を経て排紙トレイ20に排出される。この間に記録用紙61が、左右方向9に移動されることはない。したがって、左右方向9において、排出領域E2は、載置領域E1と一致している。
【0041】
なお、排紙トレイ20に排出される記録用紙61の位置は、記録用紙61の印刷速度などに応じて、前後方向8に僅かなばらつきがある。ただし、殆どの記録用紙61の搬送は、搬送向きの下流端(前後方向8の前端)が排紙トレイ20の突起24に接触することで止められる。したがって、ここでは、記録用紙61の搬送が突起24によって止められる位置に基づいて排出領域E2を定義している。
【0042】
上述したように、排紙トレイ20は、第1延出部22及び第2延出部23に相当する部分が、筐体13の前面14から延出されている。そのため、排出領域E2は、前後方向8の前端が筐体13の前面14よりも前方、つまり筐体13の外側に位置している。また、前後方向8の後端側の一部は、載置領域E1の前端側の一部と、前後方向8に長さL3だけ重なり合っている。L3は、L1の20%程度であり、本実施形態においては、L3=46.24mmである。ただし、L3の値は、排紙トレイ20が筐体13の前面14から延出する長さや、筐体13の前後方向8の寸法にも左右される。
【0043】
図5に二点鎖線で示される読取可能領域E3(本発明の読取可能領域の一例)は、スキャナ部12のコンタクトガラス41上の領域のうち、ラインセンサ52が画像を読み取り可能な領域である。本実施形態においては、読取可能領域E3の前後方向8及び左右方向9の長さは、最大サイズの記録用紙61の前後方向8及び左右方向9の長さと同じである。つまり、読取可能領域E3の前後方向8の長さはL1であり、左右方向9の長さはL2である。つまり、本実施形態において、ラインセンサ52が画像を読み取り可能な領域のサイズは、A4サイズである。ただし、読取可能領域E3の前後方向8及び左右方向9の長さは、最大サイズの記録用紙61の前後方向8及び左右方向9の長さと必ずしも同一である必要はない。
【0044】
なお、左右方向9における載置領域E1及び排出領域E2の左端は、読取可能領域E3の左端から左向きへ長さL4(本発明の第1距離の一例)だけ離れた位置にある。つまり、載置領域E1及び排出領域E2と読取可能領域E3との左右方向9の長さが互いに等しい本実施形態においては、載置領域E1及び排出領域E2は、左右方向9において読取可能領域E3と完全に重なる位置から左向きへL4だけずれていることになる。一例として、L4はL2の17%程度であり、本実施形態においては、L4=51.2mmである。ここで、左右方向9の左側に向かう向きが、本発明の第2向きに相当する。つまり、左側ほど第2向き下流であり、右側ほど第2向き上流である。
【0045】
ただし、上記構成は一例であり、載置領域E1及び排出領域E2の左右方向9のずれは、これとは反対向きであってもよい、つまり、左右方向9における載置領域E1及び排出領域E2の右端は、読取可能領域E3の右端から右向きへ長さL4だけ離れた位置にあってもよい。そのような構成においては、左右方向9の右側に向かう向きが、本発明の第2向きに相当する。
【0046】
また、前後方向8における載置領域E1の後端は、読取可能領域E3の後端から前後方向8の前方へ距離L5(本発明の第2距離の一例)だけ離れた位置にある。つまり、載置領域E1と読取可能領域E3との前後方向8の長さが互いに等しい本実施形態においては、載置領域E1は、前後方向8において読取可能領域E3と完全に重なる位置から前向きへL5だけずれていることになる。
【0047】
ここで、L5<L4の関係が成立している。つまり、載置領域E1と読取可能領域E3とは、前後方向8よりも左右方向9に大きくずれている。本実施形態においては、L4=51.2mm,L5=10.54mmなので、左右方向9のずれの大きさは、前後方向8のずれの大きさのおよそ5倍弱である。
【0048】
[コピー操作の詳細]
読取可能領域E3よりも大きなサイズの原稿62の一部をコピーする際、ユーザが行う操作の詳細が、以下に説明される。
【0049】
まず、ユーザは、図2に示されるように、原稿カバー43を開かれた状態にし、排紙トレイ20を使用姿勢とする。続けて、ユーザは、原稿62の読み取られる面を下側にして、コピーしたい領域をコンタクトガラス41の読取可能領域E3に一致させる。その際、使用される原稿62のサイズやコピーしたい領域によっては、原稿62がコンタクトガラス41のからはみ出すことがある。
【0050】
例えば、Aシリーズの1つのA3は、短手方向の長さが、A4の長手方向の長さと同じ297mmとなっている。したがって、複合機10において、A3の原稿62のうち、長手方向中央よりも片側の領域をコピーする場合、ユーザは、原稿62の長手方向を前後方向8と一致させてコンタクトガラス41にセットする必要がある。そうすると、図6に示されるように、原稿62のうち、コンタクトガラス41に収まらなかった部分が排紙トレイ20の一部を覆うことになる。
【0051】
ユーザは、原稿62がコンタクトガラス41からはみ出た状態のまま原稿カバー43を閉じられた状態として、原稿62をコンタクトガラス41上に固定する。あるいは、原稿62が一定の厚みを有する書籍や冊子であり、原稿カバー43完全に閉じることが困難な場合は、ユーザの手によって原稿62をコンタクトガラス41上に押し当てた状態を維持する。
【0052】
ユーザは、その状態から、複合機10にコピーを指示する操作を行う。この操作は、例えば、複合機10に接続されたコンピュータの操作画面を通じて行われてもよいし、筐体13の前面14に設けられた操作パネル16を操作することで行われてもよい。
【0053】
コピーを指示する操作が行われると、信号を認識した制御回路が、プリンタ部11及びスキャナ部12を制御して、原稿62のコピーが行われる。詳細には、ラインセンサ52によって、コンタクトガラス41の下側から原稿62の画像が読み取られて、画像データが形成される。続けて、給紙トレイ19から搬送路27に記録用紙61が供給される。記録用紙61が記録部31を通過するときに、記録ヘッド33が記録用紙61にインク滴を噴射する。それにより、当該画像データに基づく画像が記録用紙61に記録される。画像が記録された記録用紙61は、排紙トレイ20に排出される。
【0054】
このときの複合機10を上方から観察した様子が図7に示されている。原稿62が、排紙トレイ20に排出された記録用紙61の一部を覆っている。記録用紙61の左端側には、原稿62に覆われていない領域が、左右方向9に長さL4だけ存在する。この領域からは、記録用紙61に記録された画像の一部を視認することができる。
【0055】
なお、載置状態における原稿62の左右方向9の寸法がコンタクトガラス41の左右方向9の寸法よりも長い場合、原稿62は、前後方向8だけでなく、左右方向9においてもコンタクトガラス41からはみ出すことになる。その場合、ユーザは、原稿62の左端を、読取可能領域E3の左端に合わせるようにして、原稿62をコンタクトガラス41上にセットする。そうすることで、コンタクトガラス41の右側からは原稿62の一部がはみ出すことになるが、記録用紙61の左端側の原稿62に覆われない領域は確保される。つまり、ユーザは、記録用紙61に記録された画像の一部を視認することができる。
【0056】
[実施形態の作用効果]
本実施形態によると、ユーザがコンタクトガラス41よりも大きな原稿62の一部に基づいてコピーを行う場合であっても、排紙トレイに排出された記録用紙61の左端側には、左右方向9に長さL4だけ原稿62に覆われない領域が確保される。ユーザは原稿62を動かすことなく、その領域から、記録用紙61に記録された画像の一部を視認することができる。
【0057】
記録用紙61に記録された画像の一部を視認することにより、ユーザは、例えば、記録された画像の領域や向きが正しいか、また、記録された画像の濃さや色合いが適当であるか等を確認することができる。つまり、ユーザは、コピーが完了して原稿62をコンタクトガラス41上から取り除くよりも前に、コピーが想定した通りに行われなかったことに気づくことができる。したがって、ユーザがコピー操作をやり直すために、原稿62を再びコンタクトガラス41上にセットしなければならない煩わしさを解消することができる。
【0058】
原稿62が排紙トレイ20に排出された記録用紙61を完全に覆ってしまう従来の構成においても、原稿62をめくり上げることで、排紙トレイ20に排出された記録用紙61を確認することは可能である。しかしながら、原稿62をめくり上げる際に、原稿62がコンタクトガラス41からずれやすくなる。原稿62が一定の厚みを有する書籍や冊子などの場合には、特にコンタクトガラス41からずれやすくなる。原稿62がコンタクトガラス41からずれてしまうと、ユーザは、コピーが想定した通りに行われなかったことに気づいたとしても、原稿62をコンタクトガラス41上にセットする操作をやり直す必要がある。
【0059】
また、複数枚の記録用紙61に対してコピーを行う場合には、ユーザは、コピーが正常に行われなかったことに気づいた時点で即座にコピーを中断させることができる。したがって、誤ったコピーが大量に行われて記録用紙61が無駄になることを回避することができる。
【0060】
また、載置領域E1の後端は、読取可能領域E3の後端から前後方向8の後方へ距離L5だけ離れた位置にある。このような構成によると、読取可能領域E3は、載置領域E1及び排出領域E2よりも前後方向8の後方に離れて位置するため、原稿62のうち筐体13の前面14に沿って下方に垂下される長さが短くなり、原稿62が排紙トレイ20に排出された記録用紙61を覆う前後方向8の長さを短くすることができる。したがって、原稿62の長手方向の長さが比較的短い場合には、記録用紙61の前端側の一部が視認可能となり、ユーザが、記録用紙61に記録された画像の一部を更に視認しやすくなる。
【0061】
また、L2>L1であることから、記録用紙61が原稿62に覆われない領域は、記録用紙61(本実施形態においてはA4)の短辺に沿って形成される。ユーザは、記録用紙61の短辺と、画像の端との位置関係を確認することで、文書が記録用紙61に対して正しい位置や角度で記録されているか、又は記録用紙61の短辺から画像までの空白領域の長さが適切であるかをより容易に確認することができる。また、記録用紙61に記録された画像が、長手方向を縦方向とした横書きの文書である場合、記録用紙61の短辺周辺には、文書のヘッダやタイトルが存在していることが多い。ユーザは、文書のヘッダやタイトルを視認することで、コピーした原稿62が誤ったものではないかをより容易に確認することができる。
【0062】
また、L2>L1であり、L4>L5であることから、プリンタ部11及びスキャナ部12が占有するスペースは、前後方向8よりも左右方向9に大きくなる。つまり、複合機10は、左右方向9の寸法が比較的大きくなる代わりに、前後方向8の寸法を小さくすることができ、奥行きの浅い棚などにも容易に設置可能となる。
【0063】
また、スキャナ部12全体をプリンタ部11に対して左右方向9にずらすことができるので、上下方向7において、スキャナ部12とプリンタ部11とが重ならない部分に一定の空きスペースを確保することができる。このスペースには、例えば、プリンタ部11やスキャナ部12を制御するための制御回路や、電源等を配置することができる。
【0064】
[変形例1]
上述の実施形態において、操作パネル16は、筐体13の前面14のうち、左右方向9において、読取可能領域E3と概ね重なる位置に設けられていた。本変形例においては、操作パネル16の少なくとも一部が、前面14のうち、図7にR1で示される範囲に設けられている。例えばR1の範囲には、複合機10にコピーを指示するための操作ボタン18が設けられていてもよい。このような構成によると、ユーザが操作パネル16を操作して、複合機10にコピーを行わせる場合、原稿62をめくり上げて操作ボタン18の位置を確認したり、原稿62の下側に手を入れて、手探りで操作ボタン18の位置を確認することなく、操作ボタン18の位置を目視によって認識することができる。
【0065】
[その他の変形例]
上述の実施形態において、L1〜L5の値は一例であり、本発明の作用効果を損なわない範囲で異なる値が採用されてもよい。
【0066】
また、上述の実施形態において、操作パネル16は、筐体13の前面14に設けられていたが、操作パネル16は、必ずしも前面に設けられている必要はない、例えば、操作パネル16は、筐体13の上面42であって、コンタクトガラス41よりも、前後方向8の前方に設けられていてもよい。
【0067】
また、上述の実施形態において、排紙トレイ20は、伸縮自在な構成とされていたが、排紙トレイ20は、必ずしも伸縮自在である必要はなく、常に筐体13の前面から延出されたものであってもよい。
【0068】
また、上述の実施形態において、搬送路27は、Uターン路28と直線路とを有していたが、搬送路27には、片面に画像が記録された記録用紙61の表裏面を反転させて再び記録部31へと送る追加の搬送路が設けられていてもよい。つまり、プリンタ部11は両面印刷可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10・・・複合機
11・・・プリンタ部
12・・・スキャナ部
14・・・前面
15・・・開口
16・・・操作パネル
19・・・給紙トレイ(第1トレイ)
20・・・排紙トレイ(第2トレイ)
26・・・背面
27・・・搬送路
41・・・コンタクトガラス(画像読取面)
43・・・原稿カバー
52・・・ラインセンサ(イメージセンサ)
61・・・記録用紙
62・・・原稿
L4・・・長さ(第1距離)
L5・・・長さ(第2距離)
E1・・・載置領域
E2・・・排出領域
E3・・・読取可能領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像記録部と、当該画像記録部の上部に設けられたフラットベッド方式のスキャナ部とを備えており、当該スキャナ部が原稿から読み込んだ画像に基づいて、上記画像記録部がシートに画像を記録可能な複合機であって、
上記スキャナ部は、
画像が読み取られる原稿を載置可能な画像読取面と、
一端側が当該複合機の背面側に連結されており、当該一端側を中心に回動して、上記画像読取面を開閉する原稿カバーと、を有しており、
上記画像記録部は、
シートを載置可能な第1トレイと、
上記第1トレイに載置されたシートを、上記背面側から上方に向かって搬送した後、Uターンさせて、当該複合機の前面側へ向かう第1向きへ搬送する搬送路と、
上記前面に形成された開口から少なくとも一部が延出されており、上記搬送路を搬送されたシートが排出される第2トレイと、を有しており、
上方から見て第1向きと直交する第2向きにおいて、上記第2トレイに排出された上記搬送路が搬送可能な最大サイズのシートが占める排出領域の第2向き下流端は、上記画像読取面における読取可能領域の第2向き下流端に対して、第2向き下流側へ第1距離だけずらされている複合機。
【請求項2】
上記第1トレイに載置された上記搬送路が搬送可能な最大サイズのシートが占める載置領域の第1向き上流端は、上記読取可能領域の第1向き上流端に対して、第1向き下流側へ上記第1距離よりも短い第2距離だけずらされており、
上記載置領域は、全体が上記前面よりも第1向き上流側に位置している請求項1に記載の複合機。
【請求項3】
上記画像読取面よりも第1向き下流側に、上記スキャナ部及び上記画像記録部の動作を操作可能な操作パネルが設けられており、
上記操作パネルが第2向きに占める範囲は、少なくとも一部が、上記排出領域の第2向き下流端と上記読取可能領域の第2向き下流端との間にある請求項1または2に記載の複合機。
【請求項4】
上記読取可能領域と上記載置領域とは、第1向きの長さが互いに等しく、且つ第2向きの長さが互いに等しく、且つ第2向きの長さが第1向きの長さよりも長い請求項2に記載の複合機。
【請求項5】
上記スキャナ部は、第2向きと平行に移動しながら、画像読取面に載置された原稿から画像を読み取るイメージセンサを有している請求項1から4のいずれかに記載の複合機。
【請求項6】
上記第2トレイは、上記開口から少なくとも一部が延出された使用姿勢と、全体が上記開口よりも第1向き上流側に位置する収納姿勢とに姿勢変化可能である請求項1から5のいずれかに記載の複合機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−58980(P2013−58980A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197178(P2011−197178)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】