説明

複合焼菓子生地及び複合焼菓子の製造方法

【課題】内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感であり、且つ割れがない滑らかな表面を有する焼菓子を製造するための複合焼菓子生地、該特徴を有する複合焼菓子、及び該特徴を有する複合焼菓子を安定して得るための複合焼菓子の製造方法を提供すること。
【解決手段】ケーキ生地及び薄板状のショートペーストからなる複合焼菓子生地、該複合焼菓子生地を焼成してなる複合焼菓子、及び該複合焼菓子生地を、ケーキ生地の上面に薄板状のショートペーストを積載した状態となるように配置し、焼成することを特徴とする複合焼菓子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感である焼菓子を得るための複合焼菓子生地、及び該特徴を有する複合焼菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼菓子の生地は、水分含量の低い順に大まかにバッター、ドー、ペーストの3種に分類される。(非特許文献1参照)
ここで、スポンジケーキ生地やバターケーキ生地、マフィン生地、シュー生地等の水分が多く常温で流動性を有する焼菓子生地、すなわちバッターは、焼成時にカップ状の型展板やパウンドケーキ型、スポンジケーキ型などの金属製焼型や、カップケーキ型、マフィンケーキ型等の紙製の焼型を使用する。そして、得られた焼菓子も、水分が多く、油分が比較的少ないため、ソフトなしっとりした食感を有する。
一方、クッキー生地、サブレ生地、ガレット生地、練パイ生地、タルト生地などの、油脂を多く含有し焼きあがりがサクサクした食感となる焼菓子生地、すなわち、ショートペーストは、水分含量が少なく、常温で流動性がなく、膨張性がほとんどないため、成形した形状そのままの形で焼きあがるので焼型を使用することはほとんどなく、通常は平展板で焼成する。そして、得られた焼菓子も、水分が少なく、油分が比較的多いため、歯切れがよく、硬い食感を有する。
【0003】
ところが最近は、焼菓子に対する要求が多様化し、内部はソフトでしっとりし、且つ表面がカリカリした食感であるような複数の複雑な食感を有する焼菓子も求められている。
このような焼菓子の代表例としては、マカロンがある。このマカロンは、メレンゲを主体とした焼菓子生地を、焼成温度を変えながら、ゆっくり低温で焼き上げることによって得られる焼菓子である。しかし、焼成条件が少しでも好ましい範囲から外れると焼成中にしぼんでしまい潰れた形状となってしまうなど、製造に熟練が必要であり、安定して製造することができないものである。
【0004】
そのため単一の生地を使用するのではなく、複数の焼菓子生地を使用した複合焼菓子生地を使用する方法が考えられた。
例えば、外包材をパイ生地、内包材をシュー生地とした複合焼菓子生地を焼成して得られた複合焼菓子(例えば特許文献1参照)、外包材をクッキー生地、内包材をシュー生地とした複合焼菓子生地を焼成して得られた複合焼菓子(例えば特許文献2参照)、外包材をクッキー生地、内包材をスポンジケーキ生地とした複合焼菓子生地を焼成して得られた複合焼菓子(例えば特許文献3参照)などが知られている。
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載の複合焼菓子は、表面は割れが多く、また、内部はシュー生地特有の大きな空洞を有するため、ソフトなケーキ特有の食感が楽しめる焼菓子は得られない。また、特許文献3に記載の複合焼菓子は、焼成時の生地漏れを防止するため、内包材に極めて多量のゲル化材を含有するケーキ生地を使用することが必要であるため、ケーキ生地部分の食感が極めて重く口溶けの悪いものとなってしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3086215号公報
【特許文献2】特開平02−255037号公報
【特許文献3】特開平08−308473号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】製菓理論 基本生地とその応用 松田兼一著 昭和62年11月1日刊 p20〜44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感であり、且つ割れがない滑らかな表面を有する焼菓子を製造するための複合焼菓子生地、該特徴を有する複合焼菓子、及び該特徴を有する複合焼菓子を安定して得るための複合焼菓子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、従来のようにケーキ生地をショートペーストで包餡成型した複合焼菓子生地を使用するのではなく、厚さが十分に薄く好ましくは柔軟性を有するショートペーストでケーキ生地を掩蔽するようにして焼成することにより、ケーキ生地の焼成初期から焼き上がりまでの全時間帯において蓋をした形で焼成され、結果としてケーキ生地の十分な膨張が得られ、且つショートペースト部分の割れを防止することができることを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、ケーキ生地及び薄板状のショートペーストからなる複合焼菓子生地を提供するものである。
また、本発明は、該複合焼菓子生地を薄板状のショートペーストが上面となるようにして配置して焼成してなる複合焼菓子を提供するものである。
さらに、本発明は、ケーキ生地及び薄板状のショートペーストからなる複合焼菓子生地を、ケーキ生地の上面に薄板状のショートペーストを積載した状態となるように配置し、焼成することを特徴とする複合焼菓子の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感であり、且つ割れがない滑らかな表面を有する焼菓子を簡単な製法で安定して得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の複合焼菓子生地について詳述する。
まず、本発明で使用するケーキ生地について述べる。
上記ケーキ生地としては、ブッセ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、マフィン生地などの各種ケーキ生地などが挙げられるが、軽い食感でありながら、老化耐性があり、且つソフトでしっとりとしたケーキ様の食感が得られること、及びケーキ生地の中でも粘性が高く、絞り成形をした場合に一定の形状を保つことができるため本発明の複合焼菓子生地の製造が容易である点から、ブッセ生地を使用することが好ましい。
【0013】
なお、上記ケーキ生地に使用する澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などの小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉などのその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシューナッツ粉、オーナッツ粉、松実粉などの堅果粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチ米澱粉などの澱粉や、これらの澱粉を酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、微細化、グラフト化処理などの中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
【0014】
本発明では、澱粉類中、好ましくは小麦粉類を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは100質量%使用する。
なかでも本発明では、上記澱粉類として、薄力粉を、好ましくは澱粉類のうちの50〜100質量%、より好ましくは澱粉類のうちの80〜100質量%使用することが、口溶けが良好で、軽い食感が得られる点で好ましい。
すなわち、本発明では、上記ケーキ生地に使用する澱粉類として、小麦粉のみを使用し、その小麦粉のうちの好ましくは50〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%が薄力粉であることが好ましい。
【0015】
また、上記ケーキ生地は糖類を含有することが好ましい。
上記糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、デキストリン等を用いることができる。本発明では、これらの糖類の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
上記ケーキ生地における糖類の含有量は、澱粉類100質量部に対し、糖の固形分として、好ましくは50〜150質量部、より好ましくは60〜100質量部である。50質量部未満では、得られる複合焼菓子の内部が良好な組織とならず、150質量部を超えると、焼成中に潰れてしまうおそれがある。
【0017】
また、上記ケーキ生地は、油脂類を含有することが好ましい。
上記油脂類としては、ショートニング・マーガリン・バターなどの可塑性油脂組成物や、サラダ油・流動ショートニング・溶かしバター・ケーキ用起泡性乳化脂などの流動状〜ペースト状の油脂組成物、及び粉末油脂などが挙げられる。また、油脂組成物が乳化物である場合、その乳化形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれでも構わない。
また、上記油脂類に使用する油脂としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂、サル脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の各種の植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択された一又は二以上の処理を施した加工油脂や、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)等があげられる。本発明では、これらの油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
上記ケーキ生地における油脂類の含有量は、澱粉類100質量部に対し、油脂純分として、好ましくは3〜120質量部、より好ましくは4〜50質量部、さらに好ましくは5〜25質量部、最も好ましくは5〜15質量部である。3質量部未満では、得られる複合焼菓子の内部の食感がぱさついたものとなり、ソフトでしっとりしたケーキ特有の食感が得られない。また、120質量部を超えると、焼成中に保型性が不足し、潰れた形状の複合焼菓子になってしまうことに加え、焼成中に生地が流れだしてしまうことがある。
【0019】
上記ケーキ生地には、一般の焼菓子材料として使用することのできるその他の原材料を使用することができる。該その他の原材料としては、例えば、全卵・卵黄・卵白・加塩全卵・加塩卵黄・加塩卵白・加糖全卵・加糖卵黄・加糖卵白・乾燥全卵・乾燥卵黄・凍結全卵・凍結卵黄・凍結卵白・凍結加糖全卵・凍結加糖卵黄・凍結加糖卵白・酵素処理全卵・酵素処理卵黄などの卵類、イースト、増粘安定剤、ステビア・アスパルテーム・スクラロース・アセスルファムカリウム等の甘味料、β−カロチン・カラメル・紅麹色素などの着色料、トコフェロール・茶抽出物などの酸化防止剤、デキストリン、カゼイン・ホエー・クリーム・脱脂粉乳・醗酵乳・牛乳・全粉乳・ヨーグルト・練乳・加糖練乳・全脂練乳・脱脂練乳・濃縮乳・純生クリームなどの乳や乳製品、コンパウンドクリーム、ホイップ用クリーム、ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・クリームチーズ・ゴーダチーズ・チェダーチーズなどのチーズ類、原料アルコール、焼酎・ウイスキー・ウオッカ・ブランデーなどの蒸留酒、ワイン・日本酒・ビールなどの醸造酒、各種リキュール、水、グリセリン脂肪酸エステル・グリセリン有機酸脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル・プロピレングリコール脂肪酸エステル・ステアロイル乳酸カルシウム・ステアロイル乳酸ナトリウム・ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド・レシチン・リゾレシチンなどの乳化剤、無機塩類、食塩、ベーキングパウダー・イスパタ・重曹・重炭安などの膨張剤、イーストフード、生地改良剤、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類などの食品素材、コンソメ・ブイヨンなどの植物及び動物エキス、食品添加物などを挙げることができる。
上記その他の原材料は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができるが、好ましくは、上記澱粉類100質量部に対して合計で200質量部以下、より好ましくは100質量部以下となる範囲で使用する。
【0020】
なお、上記ケーキ生地の水分含量は、澱粉類100質量部に対し、好ましくは50〜150質量部、より好ましくは65〜120質量部、さらに好ましくは85〜110質量部である。50質量部未満では、得られる複合焼菓子の内部の食感が硬くなってしまい、ソフトでしっとりしたケーキ特有の食感が得られない。また、150質量部を超えると、焼成中に保型性が不足し、潰れた形状の複合焼菓子になってしまうことに加え、焼成中に生地が流れだしてしまうことがある。
【0021】
また、上記ケーキ生地の油分含量は、澱粉類100質量部に対し、好ましくは3〜150質量部、より好ましくは4〜65質量部、さらに好ましくは5〜35質量部、最も好ましくは5〜25質量部である。3質量部未満では、得られる複合焼菓子の内部の食感がぱさついたものとなり、ソフトでしっとりしたケーキ特有の食感が得られない。また、150質量部を超えると、焼成中に保型性が不足し、潰れた形状の複合焼菓子になってしまうことに加え、焼成中に生地が流れだしてしまうことがある。
なお、上記ケーキ生地の油分含量には、上記油脂類に含まれる油分以外に、上記その他の原材料に含まれる油分もあわせて算出するものとする。
【0022】
上記ケーキ生地の製造方法は特に限定されず、公知の方法によって得ることができる。
例えば、ブッセ生地やスポンジケーキ生地の場合は、別立て法、後粉法、あるいはオールインミックス法などの方法が挙げられ、バターケーキ生地の場合は、フラワーバッター法、シュガーバッター法、あるいはオールインミックス法などの方法が挙げられ、マフィン生地の場合は、後油法や、オールインミックス法や、フラワーバッター法、シュガーバッター法などの方法が挙げられる。
【0023】
次に、本発明で使用するショートペーストについて述べる。
上記ショートペーストとは、サクサクした食感をもつ製品を得るための焼菓子生地のことであり、小麦粉と油脂と水分を必須成分とし、ケーキ生地が属するバッターと明らかに異なり、常温で流動性がない生地をさし、例えば、クッキー生地、サブレ生地、ガレット生地、練パイ生地、タルト生地などが挙げられるなどが挙げられるが、伸展性が良好であり扱いやすいこと、表面が硬くカリカリした食感であり、且つ割れがない滑らかな表面を有し、さらには、保管中や流通時の損壊が発生しない程度の十分な堅さを有する複合焼菓子が得られることから、サブレ生地を使用することが好ましい。
なお、上記ショートペーストに使用する澱粉類としては、上記ケーキ生地で使用する澱粉類と同様のものを使用することができ、澱粉類中の小麦粉含量、澱粉類中の薄力粉含量についても同様である。
【0024】
また、上記ショートペーストは、糖類を含有することが好ましい。該糖類としては、上記ケーキ生地で使用する糖類と同様のものを使用することができる。
【0025】
上記ショートペーストにおける糖類の含有量は、澱粉類100質量部に対し、好ましくは20〜100質量部、より好ましくは30〜75質量部である。20質量部未満では、十分な伸展性のある生地とならないため薄板状に成型することが困難であることに加え、焼成中に割れを生じやすく、また食感もショートネスのある食感が得られないおそれがある。また、100質量部を超えると、焼成中に焦げやすく、また生地が流れてしまうおそれがある。
【0026】
また、上記ショートペーストは、油脂類を含有する。該油脂類としては、上記ケーキ生地で使用する糖類と同様のものを使用することができる。
ただし、ショートペーストはケーキ生地に比べて、水分含量が低く油分含量も高いことから、その食感は油脂の種類の影響をより大きく受けるため、カリカリした良好な食感を得るためには、油脂類に使用する油脂の融点は32℃以上、好ましくは35〜40℃であることが好ましい。
【0027】
上記ショートペーストにおける油脂類の含有量は、澱粉類100質量部に対し、油脂純分として、好ましくは20〜120質量部、より好ましくは25〜50質量部、さらに好ましくは25〜40質量部である。20質量部未満では、成形時において脆い物性となり扱いにくく、また、得られる複合焼菓子の表面部分がショートネスのある食感が得られない。また、120質量部を超えると、表面部分の食感が油性感が強くしっとりしたものになってしまうことに加え、焼成中に生地が流動化して流出してしまうおそれがある。
【0028】
上記ショートペーストには、一般の焼菓子材料として使用することのできるその他の原材料を使用することができる。該その他の原材料としては、上記ケーキ生地で使用するその他の原材料と同様のものを使用することができる。
上記その他の原材料は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができるが、好ましくは、上記澱粉類100質量部に対して合計で100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で使用する。
【0029】
なお、上記ショートペーストの水分含量は、澱粉類100質量部に対し、好ましくは15〜50質量部、より好ましくは15〜35質量部、さらに好ましくは20〜25質量部である。15質量部未満では、成形時において脆い物性となり扱いにくく、また、得られる複合焼菓子の表面部分の食感が硬すぎたり、粉っぽいものとなったりすることに加え、割れが生じやすく滑らかな表面の複合焼菓子が得られない。また、50質量部を超えると、表面部分の食感がソフトなものになってしまう。
【0030】
また、上記ショートペーストの油分含量は、澱粉類100質量部に対し、好ましくは20〜130質量部、より好ましくは25〜60質量部、さらに好ましくは25〜45質量部である。20質量部未満では、成形時において脆い物性となり扱いにくく、また、得られる複合焼菓子の表面部分がショートネスのある食感が得られない。また、130質量部を超えると、表面部分の食感が油性感が強くしっとりしたものになってしまうことに加え、焼成中に生地が流動化して流出してしまうおそれがある。
なお、上記ショートペーストの油分含量には、上記油脂類に含まれる油分以外に、上記その他の原材料に含まれる油分もあわせて算出するものとする。
【0031】
上記ショートペーストの製造方法は特に限定されず、公知の方法によって得ることができる。
例えば、クッキー生地の場合は、シュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法、溶かしバター法など公知の方法で得ることが可能であり、練りパイ生地やタルト生地の場合はロールイン用油脂を含む全原料を混合するオールインミックス法でも、ロールイン油脂以外の成分でいったん生地を製造後、小片状のロールイン油脂を生地中に分散させる方法でももちろん可能である。
中でも、上記ショートペーストが溶かしバター法で得られたものであると、成形時及び焼成時において共に、ショートペーストは柔軟性を有するため、結果として、よりボリュームが大きくなり、また、ショートペーストがほとんど気相を含有していないため、表面が滑らかな複合焼菓子が得られることから好ましい。
【0032】
次に、本発明の複合焼菓子生地について述べる。
本発明の複合焼菓子生地は、上記ケーキ生地及び薄板状のショートペーストからなるものである。
なお、本発明において、薄板状のショートペーストとは、ショートペーストの厚さが3mm以下、好ましくは2mm以下であることをいうものとする。該ショートペーストの厚さが3mmを超えると、ケーキ生地の膨張力がショートペーストの重量に負けてしまい複合焼菓子の中央部が陥没した形態となってしまう。なお、ショートペーストの厚さの下限は、好ましくは1mmである。
【0033】
ここで、本発明の複合菓子生地は、ショートペースト側から見た場合に、ショートペーストがケーキ生地を完全に掩蔽する大きさであることが必要である。こうすることによって、ケーキ生地が膨張する際に、ショートペーストにより蓋をして焼成したかのような効果(蒸気圧が高い状態)が得られるものである。なお、ショートペーストの外周部のケーキ生地に接合していない部分がある程度以上の幅をもつことが好ましく、具体的には、幅5mm以上、より好ましくは10mm以上の幅を有することが好ましい。さらに、該ショートペーストは、ケーキ生地とショートペーストの接合面の形状と略同一形状に成形したものであることが好ましい。
このようにすることで、焼成初期に、ショートペーストの外周部が展板に接し、ケーキ生地の展板に接する部分の面積を一定の大きさとし、また複合焼菓子の底面の形状をショートペーストの成形した形状と略同一形状とすることができるため、同一形状の複合焼菓子を安定して生産することが可能となる。
【0034】
ここで、上記ケーキ生地とショートペーストの質量比は、ケーキ生地100質量部に対し、ショートペーストが好ましくは25〜65質量部、より好ましくは35〜55質量部である。ここで、ケーキ生地100質量部に対しショートペーストが25質量部未満であると焼成中にケーキ生地部分の水分がショートペースト部分に吸収されてしまい、ケーキ生地部分の食感がぱさついたものとなってしまう。さらには、ショートペーストの外周部のケーキ生地に接合していない部分に十分な幅を得ることができなかったり、薄板状のショートペーストの厚さが薄くなりすぎたりする問題もある。十分な幅が得られない場合は焼成中に、外周部からケーキ生地部分がはみ出してしまい、蓋をして焼成したかのような効果(蒸気圧が高い状態)が保てないため、比容積が小さくなってしまう。また、浮き高さが劣る複合焼菓子になってしまうという問題があり、ショートペーストの厚さが薄すぎる場合は焼成時に破口し、ケーキ生地が噴出して不安定な外観となってしまう。また、ケーキ生地100質量部に対しショートペーストが65質量部超であると、ケーキ生地の膨張力がショートペーストの重量に負けてしまい複合焼菓子の中央部が陥没した形態となってしまうおそれがある。
【0035】
次に、本発明の複合焼菓子生地の製造方法について述べる。
本発明の複合焼菓子生地は、上記ケーキ生地の上面に、上記薄板状のショートペーストを、好ましくは、ショートペースト側から見た場合にショートペーストがケーキ生地を完全に掩蔽する大きさとなるように積載することによって得ることができる。
複合させる際、まず、ケーキ生地は平板上に配置することが好ましいが、金属製や紙製、シリコン製など各種焼型に配置してもよい。
次いで、その上面に、薄板状のショートペーストを、好ましくは、上記条件となるようにケーキ生地の上に積載することによって得ることができる。
なお、薄板状のショートペーストは、焼成時にケーキ生地の上に積載された状態になっていればよいため、例えば、薄板状のショートペーストの上面にケーキ生地を絞り、焼成時に上下反転させてもよい。
さらに、複合焼菓子生地の状態で冷凍することも可能であるし、ケーキ生地及び/又は薄板状のショートペーストを冷凍した状態で複合させてもよい。
【0036】
次に、本発明の複合焼菓子について述べる。
本発明の複合焼菓子は、上記複合焼菓子生地を、ケーキ生地の上面に薄板状のショートペーストを積載した状態となるように配置し、焼成することによって得ることができる。
焼成方法は、通常のべーカリー製品同様、好ましくは120℃〜250℃、より好ましくは160℃〜220℃で行なう。120℃未満であると火抜けが悪く、焼成時間が延びてしまいやすく、その場合、内部が、ソフトでしっとりした食感が得られないものとなってしまうおそれがある。また250℃を超えると表面に焦げを生じ、食味が悪くなりやすく、内部も、ソフトでしっとりした食感が得られないものとなってしまうおそれがある。
【実施例】
【0037】
以下に本発明の詳細を実施例によって例示する。また、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
全卵(正味)(油分含有量10%、水分含有量75%)100質量部、上白糖80質量部、起泡性水中油型乳化脂(株式会社ADEKA製:トルテ)(油分含有量25%、水分含有量30%)25質量部、水10質量部、食塩0.3質量部をミキサーボウルに投入し、これをたて型ミキサーにセットし、ワイヤーホイッパーを使用して、低速10秒混合後、高速で比重が0.25となるまでホイップした。ここに、あらかじめ混合して篩っておいた、薄力粉100質量部、ベーキングパウダー3質量部の混合物を添加し、低速1分混合後、さらに中速で30秒ホイップし(比重0.4)、ケーキ生地の1種であるブッセ生地を得た。
一方、全卵(正味)30質量部、及び、上白糖50質量部をミキサーボウルに投入し、これをたて型ミキサーにセットし、ビーターを用いて低速1分混合後、55℃で加温溶解したショートニング(株式会社ADEKA製:シャリオ#100DX(H)、使用油脂融点39℃)30質量部を投入して、低速1分混合した。ここに、あらかじめ混合して篩っておいた、薄力粉100質量部、ベーキングパウダー1質量部の混合物を添加し、低速1分混合し)、ショートペーストの一種であるサブレ生地を溶かしバター法で得た。
得られたサブレ生地は1晩5℃でリタードした後、リバースシーターで厚さ1.75mm(実測)まで圧延し、直径73mmに打ち抜き、薄板状のサブレ生地とした。
平展板にロール紙を敷き、上記ブッセ生地を17g絞り(上方から見た場合の直径:50mm)、その上面に上記薄板状のサブレ生地(10g)を積載し、本発明の複合焼菓子生地を得た。
得られた複合焼菓子生地は、固定オーブンで、下展板1枚を敷き、上火200℃、下火160℃で10分間焼成し、本発明の複合焼菓子を得た。
得られた複合焼菓子は、割れのない滑らかな表面を有するメロンパン様の外観であり、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感であった。
【0039】
〔実施例2〕
ショートニング(株式会社ADEKA製:シャリオ#100DX(H))30質量部、及び、上白糖50質量部をミキサーボウルに投入し、これをたて型ミキサーにセットし、ビーターを用いて低速1分混合後、高速5分クリーミングし、さらに全卵(正味)30質量部を投入し、低速1分混合した。ここに、あらかじめ混合して篩っておいた、薄力粉100質量部、ベーキングパウダー1質量部の混合物を添加し、低速1分混合し、ショートペーストの一種であるサブレ生地をシュガーバッター法で得た。
実施例1のサブレ生地を上記サブレ生地に変更した以外は、実施例1と同様の配合・製法で、本発明の複合焼菓子生地及び複合焼菓子を得た。
得られた複合焼菓子は、細かいひびが見られるが割れのない滑らかな表面を有するメロンパン様の外観であり、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であるが、表面が硬くカリカリした食感であった。
【0040】
〔比較例1〕
実施例1のサブレ生地を1.75mmの薄板状から3.5mmの厚板状に変更した以外は、実施例1と同様の配合・製法で、本発明の複合焼菓子生地及び複合焼菓子を得た。なお、厚板状サブレ生地の重量は20gであった。
得られた複合焼菓子は、やや細かい割れが見られる表面を有するメロンパン様の外観であるが、表面中央部が陥没した不安定な外観となってしまった。なお、内部はソフトでしっとりしたケーキ特有の食感であったが、表面は実施例1及び2と異なり、ややソフトな食感であり、カリカリした食感は得られなかった。
【0041】
〔比較例2〕
実施例1で使用したブッセ生地を内包材、実施例1で使用したサブレ生地を外包材とし、外包材:内包材=10:17であり、合計重量=27gの包餡生地である比較例の複合焼菓子生地を得た。
得られた複合焼菓子生地は、実施例1と同様の方法で焼成し、比較例の複合焼菓子を得た。
得られた複合焼菓子は、内包材の焼成時の内圧のため、サブレ部分は1個〜複数の破口を有し、該破口から内包材のブッセ生地が噴出して固化した不安定な外観となってしまった。また、ケーキ生地はぱさついた食感でソフト性が低いものであった。なお、表面はややカリカリした食感であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーキ生地及び薄板状のショートペーストからなる複合焼菓子生地。
【請求項2】
ケーキ生地100質量部に対しショートペーストが25〜60質量部であることを特徴とする請求項1記載の複合焼菓子生地。
【請求項3】
ショートペーストが溶かしバター法で得られた生地であることを特徴とする請求項1又は2記載の複合焼菓子生地。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合焼菓子生地を焼成してなる複合焼菓子。
【請求項5】
ケーキ生地及び薄板状のショートペーストからなる複合焼菓子生地を、ケーキ生地の上面に薄板状のショートペーストを積載した状態となるように配置し、焼成することを特徴とする複合焼菓子の製造方法。