説明

複合生体物質を処理するための使い捨て型流体経路システムおよび方法

本明細書で開示するのは、複合物質を処理するための使い捨て型流体経路である。使い捨て型流体経路は、沈降を利用して生体試料を2つ以上の明確に区別される下位物質に分離するための重力アシスト使い捨て型システムを備える。流体経路は、試料送出用導管およびバッグセットからなり、バッグセットは配管アセンブリ、分離アセンブリ、およびフィルタアセンブリを備える。システムを使用する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、複合生体物質を処理するための使い捨て型流体経路システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの従来からの血球分離法(blood cell isolation procedures)では、予備的な赤血球の除去(preliminary red blood cell depletion)および試料の量の削減(sample volume reduction)を必要とする。これらは、長期的な細胞バンキング、ならびに貯蔵期限があるため、および/または直接移植に必要とされる少量要件があるため、少ない量で稀少細胞の最大収率が望まれる再生医療用途に一般的に必要な処理ステップである。今日、血球を含む試料(例えば、臍帯血、骨髄、末梢血)を処理する最も一般的な技法は、分離を改善するために密度勾配媒体を使用して、または使用せずに、遠心分離を使用する密度勾配沈降法を必要とする。近年、高スループットの試料処理に対するニーズの増大に応えるため、臍帯血および骨髄の試料の閉システム処理を行う自動遠心分離システムが開発されている。手作業による技法に比べてスループットが大幅に改善されるが、遠心分離ベースのデバイスは、遠心分離機バケットの重量と固定された物理的寸法のために、これまで柔軟性と可搬性に制限があった。
【0003】
そのため、高い細胞回収率を可能にする遠心分離プロセスに関係する問題点の解決につながる設計の簡素化が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第99/34848号パンフレット
【発明の概要】
【0005】
本発明は、特定の標的細胞(例えば、幹細胞)を濾過に基づいて濃縮するための機能的に閉じたバッグセットシステムのニーズに応えるように適合されており、標的細胞は、投入される生体試料(例えば、臍帯血)の一部分である。
【0006】
一実施形態では、沈降を利用して生体試料を2つ以上の明確に区別される下位物質に分離するための重力アシスト使い捨て型システム(gravity assisted disposable system)であって、試料送出用導管と、試料送出用導管と流体連通するバッグセットとを備え、前記バッグセットが機能的に閉じた流体経路であるシステムを開示する。バッグセットは、生体物質をバッグセット内に移送するための配管アセンブリと、配管アセンブリと流体連通し、試料送出用導管から生体試料を受け取り、生体物質から下位物質を沈降させるように構成された分離アセンブリと、配管アセンブリおよび分離アセンブリと流体連通するフィルタアセンブリとを備える。フィルタアセンブリは、濾過するために分離アセンブリから配管アセンブリを通して生体物質および少なくとも1つの下位物質を受け取り、保持物質を保持液用導管経由で分離アセンブリに戻し、透過液用導管を通して透過物質を分離アセンブリに送出するように構成される。
【0007】
別の実施形態では、前述のシステムを使用して生体物質を処理するための方法が開示される。この方法は、生体物質を、前記物質が重力送りにより試料送出用導管を通して処理用バッグに移送されるようにシステムに加えるステップと、ポンプデバイスを使用して貯蔵システムから空気を排出するステップと、フィルタユニットを、物質を供給バッグから前記フィルタユニット内に加えることによって予湿するステップと、貯蔵ユニットから凝集剤を処理用バックに加えて、生体物質が沈殿物質と非沈殿物質とに分離するようにするステップと、配管アセンブリを通して沈殿物質の一部を供給バッグに移送するステップと、残りの物質を配管アセンブリ経由でフィルタユニット内に移送し、保持物質を保持液用導管経由で処理用バッグに戻し、透過物質を透過液用導管経由で透過液用バッグに戻すことを所定のレベルの保持液が処理用バッグ内に捕集されるまで行うステップと、透過液で配管アセンブリおよび濾過ユニットをフラッシングして濾過ユニットから保持液を取り除くステップと、空気で管アセンブリおよび濾過ユニットをパージするステップと、保持物質を処理用バッグから管アセンブリを通して貯蔵ユニット内に移送するステップとを含む。
【0008】
本発明のこれらならびに他の特徴、態様、および利点は、添付図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読むと理解しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】使い捨て型閉バッグセットを示す一実施形態の略図である。
【図2】使い捨て型閉バッグセットの個別構成部品の略図である。
【図3】試料送出用導管の略図である。
【図4】処理用バッグの略図である。
【図5】バグセット内の流体流の方向を決めるために使用することができるマルチポートダイバータを示す図であり、矢印は特定のバッグセット構成部品への出口を示している。
【図6】中空糸フィルタが透過液用バッグ内に配設されていることを示す一実施形態の略図である。
【図7】ファイバが垂直配置構成をとる中空糸フィルタが透過液用バッグ内に配設されていることを示す一実施形態の略図である。
【図8】使い捨て型バッグセットを使用するためのプロセスを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、一般的に、複雑な生体物質を処理して下位構成要素に分けるためのシステムに関するものである。本発明は、標的細胞の高い回収率と生存率を達成しながら、生体物質(例えば、全血、臍帯血など)を処理するための殺菌済み1回使用使い捨て型流体経路システムのニーズに応えるものである。典型的には、殺菌または無菌方法を用いて生体物質を専用の事前殺菌済み使い捨て型処理セットに加える。処理セットは、標的細胞の分離および/または試料濃縮などの、何らかの目的のために生体物質を操作する機械とともに機能するようにカスタマイズされる。
【0011】
本発明のシステムは、一般的に、生体試料を2つ以上の明確に区別される下位物質に分離するための使い捨て型システムを含み、これらの下位物質のうちの少なくとも1つは沈降を通じて分離される。沈降は、重力によって補助され、1gで完了するため、遠心分離システムを必要としない。システムは、試料送出用導管と流体連通する使い捨て型閉流体経路バッグセットを備える。試料送出用導管は、捕集試料貯蔵容器から処理される生体物質を閉流体経路バグセットに移送する際に使用される。
【0012】
閉流体経路は、物質がシステム内に入った後、処理が完了するまで物質を分離しておく流体を処理するためのシステムを指す。本発明における「閉システム」とは、生体物質が流体経路バッグセットに入り、凝集と濾過が完了するまでバッグセットの構成部品内で分離されていることを指す。それに加えて、生体液を処理するための「閉システム」は、典型的には、すべての内部部分流体経路および接続されている構成部品が殺菌されていることを示す。「機能的に閉じたシステム」という用語は、閉流体経路が流体または空気を加えるための入口および出口ポートを有することができ、なおもそれぞれのポートのところにフィルタ(例えば、0.2μmのメンブラン)を使用することで殺菌が維持されることをさらに示す。
【0013】
使い捨て型の機能的に閉じたバッグセットは、特定の標的細胞、例えば幹細胞を濾過に基づいて濃縮するように設計されており、標的細胞は投入される生体物質(例えば、臍帯血)の一部分である。濾過に基づく濃縮を遂行するために、バッグセットは、さまざまな構成部品からなるアーキテクチャを有する。一実施形態が図1に示されており、試料送出用導管1、分離アセンブリ2、フィルタアセンブリ3、および配管アセンブリ4を備える。バッグセットの寸法および幾何学的形状は、用途に応じて変わりうる。
【0014】
図2に示されている使い捨て型の機能的に閉じたバッグセットの略図をさらに詳しく説明する。図示されているように、生体試料を2つ以上の明確に区別される下位物質に分離するための使い捨て型の機能的に閉じたシステムは、第1の端部上にインテーク弁サブアセンブリ5および第2の端部上にフィルタ弁サブアセンブリ6を有する管アセンブリ4からなるものとしてよい。管アセンブリ、インテーク弁サブアセンブリ、およびフィルタ弁サブアセンブリの組み合わせを使用して、図1にすでに示されているような分離アセンブリおよびフィルタアセンブリを通る物質の流れを制御する。
【0015】
インテーク弁サブアセンブリは、処理用バッグ7と2方向に流体連通する第1のポートを備えるマルチポートダイバータ弁とすることができる。処理用バッグは、試料送出用導管1から生体試料を受け取り、物質の沈降を行わせることができるように構成される。弁5の第2のポートは、透過液用バッグ9と2方向に流体連通する。透過液用バッグは、濾過アセンブリの一部である濾過ユニット10から透過液を受け取るように構成される。
【0016】
図示されているように、インテーク弁サブアセンブリの第3のポートを、フィルタメンブラン15と流体連通させるために使用することができる。逆止弁も含みうる、フィルタメンブランは、空気またはガスをシステム内に送り込めるように構成される。インテーク弁アセンブリ5は、配管アセンブリ4と2方向に流体連通する第4の、最終ポートを有する。特定の実施形態において、弁は、流体の流れをいずれかの方向に転換するために第4のポートを他の3つのポートに接続することができるように構成されうる。
【0017】
図2をさらに参照すると、フィルタ弁サブアセンブリ6は、供給バッグ11と2方向に流体連通する第1のポートを備えるマルチポートダイバータとすることができることがわかる。供給バッグは、凝集剤を処理用バッグに供給し、システムの分離アセンブリ部分から廃沈殿物を受け取るように構成される。フィルタ弁サブアセンブリは、濾過ユニット10と流体連通する第2のポートを有する。フィルタは、生体試料を含有する溶液を濾過し、保持物質を保持液用導管12経由で処理用バッグ7に、透過液を透過液用導管13経由で透過液用バッグ9に戻すように構成される。いくつかの実施態様では、濾過ユニットは中空糸フィルタであってもよい。
【0018】
図2に示されているように、保持液用導管12は、側部ポートを通して処理用バッグ7に接続される。側部ポートは、処理用バッグの非対称の漏斗形状の下側部分に接線方向の位置にあってよい。透過液用導管は、濾過ユニット10の出口端部に接続された第1の端部および透過液用バッグ9とインテーク弁サブアセンブリ5との間にある場所に接続された第2の端部を有する。この場所は、管路内に閉じ込められる空気を最小にするためのものである。
【0019】
フィルタ弁アセンブリは、貯蔵ユニット14と2方向に流体連通する第3のポートを有するようにも構成される。貯蔵サブアセンブリは、保持液であってもよい、下位物質を受け取るように構成される。フィルタ弁アセンブリ6は、配管アセンブリ4と2方向に流体連通する第4の、最終ポートを有する。弁は、流体の流れをいずれかの方向に転換するために第4のポートを他の3つのポートに接続することができるように構成される。
【0020】
バッグセットは、処理される生体物質に応じて広い可動容積範囲と両立するように設計されうる。いくつかの実施形態では、投入試料範囲は、約50〜300mLとすることができ、処理用バッグ、供給バッグ、および透過液用バッグの可動容積の最大値は、約1Lである。しかし、さまざまなバッグのサイズは、制限されず、注目する試料および試料サイズに基づいて調整することができる。さらに、バッグセットのさまざまな構成部品も、分離をさらに強化し、細胞回収を補助するように設計することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、試料送出用導管を使用して生体液(例えば、臍帯血)を使い捨て型バッグセットに加えることができる。試料送出用導管は、試料の無菌状態を維持し、試料の喪失を防ぎながら重力によって試料をバッグセット内に移送できるように設計されている。生体物質貯蔵容器と試料送出用導管との間の接続は、限定はしないが、管と管との間の殺菌済みの接続部に対するインライン管溶接(inline tube welding)、トランスファスパイクなどの無菌方法、またはルアー間接続(例えば、シリンジルアー)を含むさまざまな技法を使用して行うことができる。次いで、生体物質は、重力によって試料移送サブアセンブリに通され、処理用バッグ内に排出することができる。いくつかの実施形態では、生体物質は、外部蠕動ポンプを使用して移送されうる。
【0022】
図3は、ルアー接続部37とともに無菌トランスファスパイク35を使用する試料送出用導管を示す略図である。図示されているように、追加の構成部品を導管に加えて、動作を円滑にすることができる。構成部品は、限定はしないが、血栓濾過デバイス30,アクセス可能な試料ポート31、試料ピローチャンバ32、ならびに追加の固定点およびクランプ33を備えることができる。
【0023】
処理用バッグは、空のときに所定の三次元形状を保持し、流体が処理用バッグの内部容積を満たしたときに空気を逃せるように設計することができる。一実施形態では、これは、片側が大気中へ開放されている疎水性インラインフィルタを使用することによって行われる。他の実施形態では、不活性ガスをフィルタ用空気の代わりに使用することができる。空気のバランスをとり、管路をパージするために通気口またはポートが必要であるが、システムに入る空気の量は最小にされ、システム内の殺菌状態を維持することができる。そのため、空気が処理中にシステムを出入りするとしても、システム内に入る空気が濾過されるか、または殺菌される限りバッグセットはそのまま機能的に閉じたシステムとして画定されうる。いくつかの実施形態では、0.2μmのフィルタを使用することができる。
【0024】
処理用バッグの設計により、凝集強化濾過に基づく濃縮プロセスからの標的細胞の回収率および試料捕集率を高めることができる。処理用バッグが底部では非対称漏斗形となっている長円形である一実施形態が図4に示されている。特定の実施形態において、バッグは、ブロー成形構造物とすることができ、これによりバッグは何らかの三次元形状をとる。三次元形状は、バッグの2つの側面同士が排出時につぶれるのを防ぐために使用されうる(典型的な2枚重ねの継ぎ目シールで封止されたバッグの場合のように)。処理用バッグの底の形状を滑らかな漏斗形にすることで、捕集された凝集物質が排出時に分離するのを防ぐか、または低減することができる(例えば、捕集された物質が赤血球である場合)。
【0025】
いくつかの実施形態では、処理用バッグは、凝集物質の体積がバッグの漏斗部分の容積より小さくなるように設計されうる。漏斗の角度は、制御可能でもある。漏斗形状に関して長円形のバッグが垂直であるときに平行線に対して角度が大きい場合、凝集物質は、典型的には、破壊することなく速やかにポンプで排出することができる。しかし、非常に大きな角度は、生体物質が所定の長さの時間内に最大凝集密度に達するのを妨げる傾向があるが、それは、大きな角度は本質的に沈殿を制限する細管を形成するからである。
【0026】
非対称的漏斗の上で、側部ポートをバッグに接続することができる。側部ポートは、漏斗の勾配に対して接線方向にあるものとしてよい。濾過プロセスにおいて、流体はポンプで底部ポートからフィルタを通って排出され、透過物質が透過液用バッグ内に流れ込んでいる間に保持液が側部ポートを通って戻る。処理用バッグ内の流体レベルが濾過プロセス(濃縮)において側部ポートのレベルより低くなると、保持液が側部ポート内に入る。そのようなものとして、戻った保持液は、流体のレベルを著しく乱す、または泡立ちを引き起こす原因となってはならない。
【0027】
流体のレベル感知を使用して、濾過から最終試料捕集量または濃縮率を決定することができる。いくつかの実施形態において、レベルセンサは、透過または反射を利用する光学センサである。いくつかの実施形態では、レベル測定は、超音波センサまたは静電容量センサを使用して行うことができる。レベルが著しく乱された場合、または泡立ちが生じた場合、光学センサ(バッグの底部ポートの近くにある)のレベル読み取りは正しくないことがある。側部ポートは、戦略的にも配置される。側部ポートおよび出口ポートが近くに一緒に配置される場合、濾過の有効性は、流体経路の短絡により減じることがある。側部ポートが出口ポートからかかなり隔たって配置されている場合、バッグのサイズは、ブロー成形を行うには実用的でないサイズとなる。
【0028】
いくつかの実施形態では、処理用バッグは、システムから空気を出せるようにフィルタメンブラン16を備えることもできる。逆止弁も使用することができ、フィルタメンブランと処理用バッグとの間に位置決めすることができる。フィルタメンブランを図2に示す。
【0029】
他の実施形態では、バッグセット全体を通して物質を監視するか、または測定するためにセンサを使用することもできる。
【0030】
図5は、配管アセンブリがポンプデバイスと一体化されているときに流体経路内の流体流の方向を決めるために使用することができるマルチポートダイバータ弁を例示している。図5の矢印は、さまざまなポートを前の方で図2に示されているようにバッグセットの構成部品に接続する状況を示している。マルチポートダイバータ弁を、インテーク弁サブアセンブリ5Aとフィルタ弁サブアセンブリ5Bの両方において使用することができる。また、断面図5Cも示されている。弁は、1つのポート(ポンプ動作ループに接続されたポート)と3つの追加のポートとの間の流れを制御するように設計されている4つのポート弁とすることができる。弁は、流体が(オフ位置にある)ポート間を流れるのを防ぐこともできる。
【0031】
流体流は、接続されているポートを通るいずれの方向にあってもよい。いくつかの実施形態では、弁サブアセンブリの一方または両方は、直列にまたは並列に配列された複数の弁からなるものとしてよく、これら1つまたは複数の弁は、さまざまな構成部品間に流れを方向付けるように設計されている。
【0032】
ここでもまた図2を参照すると、いくつかの実施形態では、インテーク弁サブアセンブリは、配管アセンブリを処理用バッグ、透過液捕集用バッグ、およびエアフィルタ/逆止弁に接続する。エアフィルタ/逆止弁は、管路のパージに使用される。フィルタ弁サブアセンブリは、管アセンブリを供給バッグ、濾過ユニット、および貯蔵ユニットに接続する。
【0033】
いくつかの実施形態では、蠕動ポンプなどのインラインポンプが使用され、管アセンブリと一体化されうる。蠕動ポンプは、流体を直接含むことなく管内の流体を外部的に操作するように構成され、インテーク弁サブアセンブリとフィルタ弁サブアセンブリとの間に位置決めされる。マルチダイバータ弁が開放されている特定の構成では、ポンプは、多数の異なる流体経路構成に流体および空気を通すことができる。そこで、2つの弁と1つのポンプループのみの係合により、凝集強化濾過に基づく濃縮のために必要なプロセスステップを実行することができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、多弁ダイバータ弁は、活栓であり、これはピンチ弁マニホールドの代わりに使用することができる。上で教示されている形に配列された4ポート活栓の機能を複製するためのピンチ弁マニホールドは、少なくとも3つのチューブピンチユニット(tube-pinching units)を必要とする。必要なアクチュエータまたはメカニズムの典型的なサイズが与えられた場合に、ピンチユニットを一緒に密配列することにはある種の問題がある。そのため、ピンチ弁マニホールドは、典型的には、かなり大きな無効体積またはホールドアップ体積を有し、したがって最終的回収を低下させる可能性がある。
【0035】
いくつかの実施形態では、透過液用バッグは、濾過中に捕集された透過液を貯蔵するための貯蔵容器として構成される。いくつかの実施形態ででは、透過液用バッグから4ポートインテーク弁サブアセンブリへの中間接続部がありうる。この中間接続部により、インテーク弁は配管内に最初に空気がなくても透過液用バッグから流体を引き出すことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、低温ユニットを貯蔵ユニットとして使用することができる。低温ユニットでは、捕集試料を低温下で貯蔵することができる。低温ユニットは、デバイスの一体部分であってよい。他の実施形態では、低温ユニットは、閉バッグセットから遠く離れていてもよく、その場合、捕集試料を遠隔ユニットに移送するために移送管路を使用する。いずれかの実施形態において、低温ユニットは、低温凍結を受けることができ、生体低温保存料と親和性がある。
【0037】
図示されているように、機能的に閉じたバッグセットの設計により、インターフェース構成部品の数を最小に抑えた凝集および濾過プロセスでバッグセットを使用することができる。インターフェース構成部品の数を減らし流れ制御を行うことで、細胞の回収率および生存率を改善することができる。いくつかの実施形態では、閉バッグセットの構成部品は、殺菌することができ、生体適合性に関するFDAおよびUSPの要件を満たす、物質からなるものとしてよい。これは、バッグ、配管、弁、およびコネクタを製作する際に使用される物質を含む。また、濾過または処理を受ける物質と接触することができる、保持クリップ、シーラント、および接着剤などの補助構成部品が含まれうる。
【0038】
バッグセットのさまざまな構成部品は、必要とされる補助構成部品の数および種類を減らすか、または類似の機能を有する部品を整理統合するように構成されうる。例えば、いくつかの実施形態では、フィルタアセンブリは、透過液用バッグ、処理用バッグ、または供給バッグのうちの1つの特徴的なバッグの一体部分となるように構成されうる。
【0039】
図6にはそのような一実施形態が示されており、フィルタサブアセンブリは、透過液用バッグ9内に直接的に配設されるハウジングなしの中空糸束61からなる。中空糸の内腔の流動入口および出口は、バッグ62の外側に延在する流動ポートで栓をされている。図示されているように、中空糸の外面および透過液用バッグの内面とによって画定される容積は、透過液が透過液用バッグ内に直接的に配設されるように透過液用導管として働く。図6は、配管アセンブリ64と一体化された蠕動ポンプを示している。
【0040】
フィルタ中空糸束60が透過液用バッグ9内に直接的に配設され、透過液用導管61がインテークサブアセンブリに直接的に接続されている一実施形態では、導管は大口径の配管である。これにより、空気を透過液管路から押し出すことができる。
【0041】
フィルタ中空糸束は上から下への直線的構成をとり、透過液用バッグ内に直接的に配設されている、図7に示されているさらなる実施形態では、透過液用導管を、透過液用バッグに配管されている、導管61および71の両方の部分とともにインテーク弁ポートの近くに枝分れさせることができる。1つの管路は、バッグ内に垂直にわずかに貫入する潜望鏡管72を有することができる。この方法で、バッグが透過液で満たされてゆくにつれ管路内の空気が押し出されることになる。バッグの充填が続きしばらくして、両方の管路が透過液を完全に充填され、これにより、ポンプは空気なしで透過液を引き込むことができる。別の実施形態では、透過液用導管内の空気を押し出せるように、小さな部分的仕切り73を備える。この部分的仕切りは、バッグ内に溶融封止してもよいし、または小さな物理的仕切り板であってもよい。これにより、空気を透過液管路61から押し出すことができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、機能的に閉じたバッグセットをソフトトレイ内に収容することができ、これは出荷および保護容器として働く多機能構成部品である。いくつかの実施形態では、このトレイはバッグセットを独立した補助システム内に「ドロップイン」方式で装填する設計であってもよく、試料の濾過および処理を大量に行うときにスループットを高めるように設計されている。そのようなものとして、トレイは、装置内への複合バッグセットアセンブリの取り扱い、並べ替え、または位置決めの作業を最低限度に抑えることができる。トレイは、補助システムと係合するように構成部品の位置決めを正確に行い、殺菌状態を維持するために、品質管理デバイスまたはガイドとしても働きうる。
【0043】
いくつかの構成部品において、トレイは、その内面にシーティング構造(seating structures)を有するように設計することができる。これらの構造は、バッグセットのさまざまな構成部品を、それらの構成部品を動作中の補助システムと係合できる形で位置決めする働きをする。いくつかの実施形態では、補助システムと係合する構成部品は、インテーク弁サブアセンブリおよびフィルタ弁サブアセンブリであるものとしてよい。トレイは、配管アセンブリが、トレイの外部にある、ポンプデバイスによってアクセス可能なように設計されうる。
【0044】
機能的に閉じたバッグセットの設計では、処理ステップ数を最小に抑えて、閉流体経路内の凝集および濾過プロセスにおいてバッグセットを使用することができる。図8は、プロセスの一実施形態を示す流れ図である。第1のステップにおいて示されているように、重力送りを利用して、物質を試料送出用導管から処理用バッグに移送することができる。空気をシステムから、より具体的には、貯蔵ユニットから排出し、空気の巻き込みおよび固定容積の貯蔵ユニットの過剰膨張を回避する。蠕動ポンプを使用して物質の流れを循環させることによって段階的に供給バッグに貯蔵されている凝集剤を加えることによってフィルタユニットを予湿する。次いで、凝集剤を処理用バッグに移送して、生体試料と混合させることができる。試料を沈降により分離させる。これは、ポンプの動作なしで行うことができる。
【0045】
沈降後、沈殿物を配管アセンブル経由で供給バッグに移送することができる。次いで、処理用バッグに残っている物質を配管アセンブリ経由でフィルタユニット内に送り込むことができる。フィルタは物質を処理して、その物質を保持液と透過液とに分離する。保持物質は、保持液用導管を通して処理用バッグに戻される。透過物質は、透過液用導管を通して透過液用バッグに戻される。
【0046】
処理用バッグに戻された保持物質を、フィルタユニット経由で何回か再循環させることができる。物質は、所定のレベルの保持液が処理用バッグ内に残るまでフィルタユニット内に移送される。光学センサを使用して、光学センサが物質界面を識別するように構成されているレベルを判定することができる。
【0047】
物質を透過液用バッグから配管アセンブリおよび濾過ユニット経由で移送し、フラッシングによって残留保持液を除去することができる。保持液が高い粘度を有する場合に物質の粘度の変化により、低粘度の透過液によるフラッシングが望ましい場合がある。それに加えて、フィルタユニットおよび接続されている配管から最大量の濾過された物質を回収するために、フラッシングが望ましい場合がある。管アセンブリおよび濾過ユニットを空気でフラッシングし、所望の保持物質を処理用バッグから管アセンブリ経由で貯蔵ユニットに移送することができる。
【0048】
表1は、プロセス、ならびにプロセスにおけるそれぞれのステップについて一体型ポンプの示されている弁位置および方向をさらに例示している。表に示されているように、物質は識別された構成部品間をプロセスステップのそれぞれにおいて、ポンプ設定によって示されている方向に移動する。ポンプ方向が順方向と示されている場合、物質は、インテーク弁からフィルタ弁への方向に移動する。ポンプ方向が逆方向である場合、物質は、フィルタ弁からインテーク弁への方向に移動する。例えば、ステップ4で、凝集物質は、供給バッグから処理用バッグへ移動し、ポンプは逆方向に動作するように設定される。
【0049】
【表1】

説明されている濾過のさまざまなシステムおよび方法は、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願第12/325672号、名称「SYSTEMS AND METHODS FOR PROCESSING COMPLEX BIOLOGICAL MATERIALS」および米国特許出願第12/635231号、名称「METHODS FOR MAKING A HOUSINGLESS HOLLOW FIBER FILTRATION APPARATUS」において説明されているシステムおよび方法に関連して使用することができる。
【0050】
本書では、本発明のいくつかの特徴のみが例示され、説明されているが、当業者であれば、多くの修正形態および変更形態を思い付くであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内に収まるようなすべての修正形態および/または変更形態を対象とすることが意図されていることを理解されたい。
【符号の説明】
【0051】
1 試料送出用導管
2 分離アセンブリ
3 フィルタアセンブリ
4 管アセンブリ
5 吸気弁サブアセンブリ
5A 吸気弁サブアセンブリ
5B フィルタ弁サブアセンブリ
5C 断面図
6 フィルタ弁サブアセンブリ
7 処理用バッグ
9 透過液用バッグ
10 濾過ユニット
11 供給バッグ
12 保持液用導管
13 透過液用導管
14 貯蔵ユニット
15 フィルタメンブラン
16 フィルタメンブラン
30 血栓濾過デバイス
31 試料ポート
32 試料ピローチャンバ
33 固定点およびクランプ
35 無菌トランスファスパイク
37 ルアー接続部
60 フィルタ中空糸束
61 中空糸束
61 透過液用導管
61 透過液管路
62 バッグ
64 配管アセンブリ
72 潜望鏡管
73 小さな部分的な仕切り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈降を利用して生体試料を2つ以上の明確に区別される下位物質に分離するための重力アシスト使い捨て型システムであって、
試料送出用導管と、
前記試料送出用導管と流体連通するバッグセットとを備え、前記バッグセットが、
前記生体物質を前記バッグセット経由で移送するための配管アセンブリと、
前記配管アセンブリと流体連通し、前記試料送出用導管から前記生体試料を受け取り、前記生体物質から下位物資を沈降させるように構成された分離アセンブリと、
濾過するために前記分離アセンブリから前記配管アセンブリを通して前記生体物質および少なくとも1つの下位物質を受け取り、保持物質を保持液用導管経由で前記分離アセンブリに戻し、透過液用導管を通して透過物質を前記分離アセンブリに送出するように構成された、前記配管アセンブリおよび前記分離アセンブリと流体連通しているフィルタアセンブリとを備える機能的に閉じた流体経路である、重力アシスト使い捨て型システム。
【請求項2】
前記分離アセンブリが、
長円形の上側部分および漏斗形の下側部分を有する非対称の三次元処理用バッグであって、前記処理用バッグの内壁の少なくとも一部が、前記生体試料の排出時に分離状態を維持し、前記バッグの前記下側部分が、光感知を可能にする十分な透明性を有する、非対称の三次元処理用バッグと、
前記生体試料を前記試料送出用導管から受け取るために前記処理用バッグに取り付けられている入口ポートと、
保持液を保持液用導管から送出するために前記処理用バッグの前記非対称の漏斗形の下側部分に接線方向で取り付けられている側部ポートと、
透過溶液を前記フィルタアセンブリから透過液用導管を通して受け取るように構成された透過液用バッグとを備える請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記処理用バッグが、前記バッグを光学センサと位置合わせするための固定点をさらに備える請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記処理用バッグが、前記長円形の上側部分が漏斗形の下側部分の上に垂直に位置するようにして、沈降するように位置合わせされている請求項2記載のシステム。
【請求項5】
前記処理用バッグが、空気をシステム内に入れる、またはシステムから出すように構成されたフィルタメンブランをさらに備える請求項2記載のシステム。
【請求項6】
前記メンブランフィルタと前記処理用バッグとの間に位置決めされた逆止弁をさらに備える請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記フィルタアセンブリが、
前記配管アセンブリと流体連通し、前記生体試料を濾過し、保持物質を前記保持液用導管経由で処理用バッグに、透過液を前記透過液用導管経由で透過液用バッグに戻すための中空糸濾過ユニットと、
前記配管アセンブリと流体連通し、凝集剤を処理用バッグに供給し、分離アセンブリから廃凝集物を受け取るように構成された供給バッグと、
前記配管アセンブリと流体連通し、前記分離アセンブリから下位物質を受け取るように構成された貯蔵ユニットとを備える請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記供給バッグと前記配管アセンブリとの間に位置する壊れやすいインラインコネクタをさらに備える請求項7記載のシステム。
【請求項9】
前記貯蔵ユニットが、低温凍結を受けることができる物質からなり、生体低温保存料と親和性がある請求項6記載のシステム。
【請求項10】
前記中空糸濾過ユニットが透過液用バグ内に配設され、前記透過液用バッグが前記分離アセンブリの構成部品であり、前記透過液用導管が、前記中空糸濾過ユニットの前記外面である請求項7記載のシステム。
【請求項11】
前記透過液用バッグが、潜望鏡管、部分的仕切り、またはこれらの組み合わせをさらに備える請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記配管アセンブリが、インテーク弁サブアセンブリと流体連通する第1の端部およびフィルタ弁アセンブリと流体連通する第2の端部を備え、前記配管アセンブリが蠕動ポンプと一体化されて蠕動ポンプが流体と直接的に接触することなく前記管内の流体を外部操作するように構成され、
前記インテーク弁サブアセンブリが、前記処理用バッグに接続されたポートおよび前記透過液用バッグに接続された第2のポートを備えるマルチポートダイバータであり、
前記フィルタ弁サブアセンブリが、前記中空糸濾過ユニットに接続された第1のポート、前記供給バッグに接続された第2のポート、および前記貯蔵ユニットに接続された第3のポートを備えるマルチポートダイバータである請求項1記載のシステム。
【請求項13】
マルチポートダイバータが、非ピンチシールデバイス(non-pinch seal device)で流れを制御する請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記非ピンチシールデバイスが、活栓、ダイヤグラム弁、バタフライ弁、ボール弁、またはこれらの組み合わせである請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記インテーク弁サブアセンブリと流体連通し、前記システム内に空気が入り込めるように構成されたメンブランフィルタをさらに備える請求項12記載のシステム。
【請求項16】
前記メンブランフィルタとインテーク弁サブアセンブリとの間に位置決めされた逆止弁をさらに備える請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記分離アセンブリの前記透過液用導管が、前記インテーク弁サブアセンブリのポートと流体連通する請求項12記載のシステム。
【請求項18】
前記試料送出用導管が、トランスファスパイク、ルアー間接続、インライン管溶接のセクション、またはこれらの組み合わせを備える請求項1記載のシステム。
【請求項19】
前記生体物質が、全血、臍帯血、または骨髄である請求項1記載のシステム。
【請求項20】
前記下位物質が、血球、白血球、幹細胞、有核細胞、またはこれらの組み合わせを含む請求項1記載のシステム。
【請求項21】
前記システム内の流体レベルまたは圧力のうちの少なくとも一方を測定するためのセンサをさらに備える請求項1記載のシステム。
【請求項22】
前記センサが、圧力センサ、光センサ、静電容量センサ、またはこれらの組み合わせを含む請求項21記載のシステム。
【請求項23】
トレイアセンブリをさらに備え、前記トレイアセンブリが前記システムの前記アセンブリを所定の構成内に位置決めするためのものである請求項1記載のシステム。
【請求項24】
前記所定の構成が、品質管理、移動時に前記サブアセンブリを保護すること、および補助システムとの係合を円滑にすることのうちの少なくとも1つを行うためのものである請求項23記載のシステム。
【請求項25】
前記トレイが、前記バッグセットの構成部品の位置を決め、前記構成部品と補助システムとの係合を行わせるための複数のシーティング構造をさらに備える請求項23記載のシステム。
【請求項26】
前記構成部品が、インテーク弁サブアセンブリおよびフィルタ弁サブアセンブリである請求項25記載のシステム。
【請求項27】
生体物質を処理するための方法であって、
前記生体物質を、前記物質が重力送りにより前記試料送出用導管を通して前記処理用バッグに移送されるように請求項1記載の前記システムに加えるステップと、
前記貯蔵ユニットから凝集剤を前記処理用バックに加えて、前記生体物質が沈殿物質と非沈殿物質とに分離するようにするステップと、
前記配管アセンブリを通して前記沈殿物質の一部を前記供給バッグに移送するステップと、
前記処理用バッグ内に残っている物質を前記配管アセンブリ経由で前記フィルタユニット内に移送し、保持物質を前記保持液用導管経由で前記処理用バッグに戻し、透過物質を前記透過液用導管経由で前記透過液用バッグに戻すことを所定のレベルの保持液が前記処理用バッグ内に捕集されるまで行うステップと、
空気で前記管アセンブリおよび濾過ユニットをパージするステップと、
前記保持物質を前記処理用バッグから前管アセンブリを通して前記貯蔵ユニット内に移送するステップとを含む方法。
【請求項28】
ポンプデバイスを使用して前記貯蔵システムから空気を排出するステップ、
前記フィルタユニットを、物質を前記供給バッグから前記フィルタユニット内に加えることによって予湿するステップ、および
透過液で前記配管アセンブリおよび濾過ユニットをフラッシングして前記濾過ユニットから保持液を取り除くステップのうちの少なくとも1つのステップをさらに含む請求項27記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2013−513406(P2013−513406A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542533(P2012−542533)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069134
【国際公開番号】WO2011/070052
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】