説明

複合磁気ヘッドの書込/読出幅測定方法および測定装置

【課題】
ライトヘッドの書込感度幅より狭いトラック幅を持つDTM等に対してデータの読み書きをしてライトヘッドの書込感度幅あるいはリードヘッドの読出感度幅とを容易に測定することができる複合磁気ヘッドの書込/読出幅測定方法および測定装置を提供することにある。
【解決手段】
この発明は、オントラックサーボ制御の状態で複合磁気ヘッドを強制偏心させて複数トラックに亙ってトラックをアクセスすることで、DTMのトラックを擬似的に偏心させた状態でテストデータを書込む。トラックの疑似的な偏心状態で複数のトラックに書込まれたテストデータは、本来のライトヘッドの書込感度幅で書込まれている。そこで、複合磁気ヘッド(リードヘッド)のディスク半径方向の移動距離に対する読出電圧特性を同じ複合磁気ヘッドを強制偏心させた状態でテストデータをトレースして半径方向に移動させながら読出すことによりピークを持つ読出特性プロファイルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複合磁気ヘッドの書込/読出幅測定方法および測定装置に関し、詳しくは、MR(磁気抵抗効果)ヘッドと薄膜インダクティブヘッドとからなる複合磁気ヘッドにおいて、薄膜インダクティブヘッド(ライトヘッド)の書込感度幅より狭いトラック幅を持つディスクリートトラック方式の磁気記録媒体(ディスクリートトラックメディア(DTM))に対してデータの読み書きをしてライトヘッドの書込感度幅とMRヘッド(リードヘッド)の読出感度幅とを容易に測定することができるような複合磁気ヘッドの書込/読出幅測定方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハードディスク駆動装置)は、現在では自動車製品や家電製品、音響製品の分野にまで浸透し、3.5インチから1.8インチに、さらには1.0インチ以下のハードディスク駆動装置が各種製品に内蔵され、使用されている。それによりHDDの低価格化と大量生産化が求められ、しかもその記憶容量は大きいことにこしたことはない。
前記のような要請に応えるために最近実用化に至った超高密度記録の垂直磁気記憶方式の磁気ディスクメディアが前記の分野で採用され、急速に普及しつつある。
【0003】
垂直磁気記憶方式の磁気ディスクメディアは、TMR(トンネル磁気抵抗)ヘッドあるいはGMR(ジャイアント磁気抵抗)ヘッドを持つ複合磁気ヘッドが使用され、ヘッドとの距離が10ナノ以下に設定される記憶媒体である。
このような磁気ディスクメディアは、一般的にはガラス基板が用いられ、ガラス基板の上に軟磁性層が形成され、その上に磁性層が設けられる。そして、この磁性層がエッチングされることで溝を介したディスクリートなトラックがディスクサブストレート(なお、ここでのディスクサブストレートとはデータの読出/書込を行うHDDに搭載される磁気ディスクに対してその材料としてその前段階にある各種のディスク基板を指している。)に形成される。
トラック間を隔絶する溝のエッチングは、凹凸を持つフォトレジスト膜を介して行われる。フォトレジスト膜の凹凸は、ナノインプリントリソグラフィ法によりディスクサブストレートの磁性層にフォトレジスト膜を塗布してフォトレジスト膜の上から凹凸を持つスタンパを押付けることで形成される。この凹凸のフォトレジスト膜を介してドライエッチングすることで形成されるディスクリートなトラックの幅は100nm以下であり、トラック間を隔絶する溝には後の工程で非磁性体が充填される(特許文献1,2)。
【0004】
この種の磁気ディスクは、ディスクリートトラック方式の磁気記録媒体(DMT)と呼ばれ、数年後には、2.5インチで1テラビット(インチ2)を越える超高密度記録が可能な技術として現在注目されている。さらに、ディスクリートトラックをトラック方向において微細に磁区分割したビットパターンドメディア(BPM)もすでに実用化の段階に入っている。
HDDに使用される従来の磁気ディスクは、媒体全面に一様に磁性膜が形成されているので、従来の磁気ディスクは、ライトヘッドによりテストデータ(テストバースト信号)を任意のトラックに記録することが容易にできる。したがって、リードヘッドをディスク半径方向に連続的に移動させてトラックに記録されたテストデータをリードすることで、トラックを横断するリードヘッドの移動距離に対する読出電圧特性、すなわち読出特性のプロファイル(波形)が容易に得られる。この読出特性のプロファイルが得られれば、ライトヘッドの書込感度幅とリードヘッドの読出感度幅とが磁気ヘッド検査における複合磁気ヘッドの特性パラメータを容易に測定でき、それにより複合磁気ヘッドの評価あるいは検査をすることができる。
【0005】
図7は、ライトヘッドの書込感度幅とリードヘッドの読出感度幅とを磁気ヘッドの特性パラメータとして測定する従来の測定方法についての説明図である。
図7では、テストデータの書込感度幅Waで所定のトラックに複合磁気ヘッド(ライトヘッド)によるテストデータの書込みがすでに完了しているものとする。そこで、次にテストデータの読出段階に入り、複合磁気ヘッド(リードヘッド)がディスクの半径方向に沿って図面左側から右方向に移動して所定のトラックを横断してテストデータを読出す。 図7の(1)の位置では、MRヘッド(リードヘッド)の読出感度幅Waの右端がテストデータの書込感度幅Waの左端に対応している。このときからMRヘッドのギャップ(Cbはその中心線)がライトヘッドにより書込まれたテストデータ(その左端)を読出せる状態なる。ただし、このときには読出電圧はいまだ0(ゼロ)である。
ここでは、簡単に説明するために、MRヘッドの読出電圧は、[mV]単位ではなく、テストデータの最大読出電圧を1として、数値“0”から“1”の範囲の比として説明する。なお、それぞれヘッドの感度幅Wa,Wbは、それぞれのギャップの幅により決定される。ライトヘッド(薄膜インダクティブヘッド)の書込感度幅Waは、従来数μm程度であったが、DTMでは、ライトヘッドの書込感度幅が50nm〜80nm程度となり、トラック幅が50nmか、それ以下となっている。しかも、DTMが回転するときに、形成されたトラックが偏心する。そのため、たとえ、ライトヘッドの書込感度幅が実質的にトラック幅に近いものであったとしても、データの記録状態としてはライトヘッドの書込感度幅よりトラック幅が実質的に狭くなってしまう問題がある。
【0006】
ところで、(2)の位置ではMRヘッドの読出感度幅WbがWb/2だけ書込感度幅Wa側に入り込んでいる。このときには右側の読出感度幅WbのうちのWb/2分が書込感度幅Wa上にある。このときの読出電圧は、一様にテストデータが書込まれているとすれば0.5となる。さらに右側へとMRヘッドが移動して(3)の位置では、読出感度幅Wbの全体が書込感度幅Wa上にある。そこで、このときの読出電圧は最大の1.0となる。そして、Wa>Wbのときは、幅(Wa−Wb)の範囲では電圧が1.0のままとなって読出電圧は平坦になる。したがって、MRヘッドが(4)の位置での読出電圧は1.0である。その結果、全体としては下側に実線で示すような中央部に平坦部を持つ読出電圧特性のプロファイル(波形)を得ることができる。
なお、この種のヘッドパラメータの測定方法についてはすでに公知である(特許文献3)。
この読出電圧特性のプロファイル(波形)に基づいて書込感度幅Waと読出感度幅Wb、複合磁気ヘッドにおけるヘッド間のオフセット量Δxとをヘッドパラメータとして測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−012119号公報
【特許文献2】特開2007−149155号公報
【特許文献3】特開2000−231707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常のDTMでは、スピンドルの回転中心に対してDTMの中心が、そしてDTMの中心に対してこれに形成されたディスクリートトラックの中心がそれぞれに偏心していて、これらを段階的に補正しない限り、スピンドルの回転中心に対して形成されたトラックは偏心を持つことになる。そのため、ONトラックサーボ制御をしない限り、トラックを複合磁気ヘッドがトレースすることはできない。
しかし、ONトラックサーボ制御の状態で磁気ヘッド(リードヘッド)を所定の速度で半径方向へ移動させてもDTMのようにライトヘッドの書込感度幅Waよりトラック幅が狭くなると、リードヘッドは、書込感度幅で決定される書込領域全体を通過することができなくなる。そのため図7のような読出電圧特性のプロファイルが得られない問題がある。また、リードヘッドの読出感度幅もDTMではトラック幅に近くなるので、図7に示すような中央部に平坦部を持つプロファイルにはならない。したがって、ライトヘッドの書込感度幅とリードヘッドの読出感度幅とを測定することが難しくなる。
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであって、ライトヘッドの書込感度幅より狭いトラック幅を持つDTM等に対してデータの読み書きをしてライトヘッドの書込感度幅あるいはリードヘッドの読出感度幅とを容易に測定することができる複合磁気ヘッドの書込/読出幅測定方法および測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するためのこの発明の複合磁気ヘッドの書込/読出幅測定方法あるいは測定装置の構成は、DTM、BPMあるいはその他の凹凸パターンの記録層を有する磁気記録媒体の所定のトラックからサーボ情報を読出してオントラックさせるオントラックサーボ制御の状態で複合磁気ヘッドを位置決めして複合磁気ヘッドにより1回転に2トラック以上をアクセスする偏心を磁気記録媒体の半径方向に加える駆動を複合磁気ヘッドに与えてライトヘッドによりテストデータを偏心に応じた2トラック以上に亙って書込み、
所定のトラックにオントラックサーボ制御の状態でかつ半径方向に偏心を加える駆動を複合磁気ヘッドに与えて所定のトラックを基準としてこれの手前から後ろまであるいは後ろから手前まで複合磁気ヘッドを半径方向に移動させて半径方向の移動位置に対応してそれぞれに2トラック以上に亙って書込まれたテストデータをリードヘッドにより読出し、
リードヘッドの読出信号に基づいて複合磁気ヘッドの半径方向の移動距離に対する読出電圧についてのピークを持つ読出特性のプロファイルを得ることにより書込感度幅あるいは読出感度幅を算出するものである。
【発明の効果】
【0010】
このようにこの発明にあっては、オントラックサーボ制御の状態で複合磁気ヘッドを所定のトラックに位置決めして複合磁気ヘッドを強制偏心させて複数のトラックに亙ってトラックをアクセスすることで、DTM上のトラックを擬似的に偏心させた状態でテストデータを書込む。このとき、複数のトラックに書込まれたテストデータは、本来のライトヘッドの書込感度幅で書込まれている。そこで、複合磁気ヘッド(リードヘッド)のディスク半径方向の移動距離に対する読出電圧特性を同じように複合磁気ヘッドを強制偏心させた状態でテストデータをトレースして半径方向に移動させながら読出すことによりピークを持つ読出特性プロファイルを得ることができる。
この読出特性プロファイルにおける両サイドの曲線から両サイドの近似直線をそれぞれに得ることで読出特性のプロファイルを頭部に平坦部を持つ読出特性近似のプロファイルとすることができる。前者の読出特性近似のプロファイルに基づいてリードヘッドとライトヘッドそれぞれの感度幅を従来と同様にそれぞれに求めることもできる。さらに後者の読出特性のプロファイルにおいてはライトヘッドの感度幅を求めることができる。
その結果、ライトヘッドの書込感度幅よりトラック幅が狭くなるようなDTMあるいはこれと同様なBPMであっても従来の磁気ディスクと同様にライトヘッドの書込感度幅とリードヘッドの読出感度幅を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、この発明の複合磁気ヘッドの書込/読出幅測定方法を適用した一実施例のMR複合磁気ヘッドの書込/読出幅測定装置のブロック図である。
【図2】図2は、ヘッドの偏心駆動をするサーボ位置決め制御回路の説明図である。
【図3】図3(a)は、DTMのトラックに対して偏心したテストデータを書込んだ場合の軌跡の説明図、図3(b)は、DTMのトラックから偏心したテストデータを読出す場合の軌跡の説明図である。
【図4】図4は、測定された読出特性のプロファイルと従来の磁気ヘッドに対応する読出特性近似のプロファイルの説明図である。
【図5】図5は、検査磁気ヘッドの読出特性測定処理のフローチャートの説明図である。
【図6】図6は、検査対象の磁気ヘッドがアクセスするディスクリートトラックメディア(DTM)のトラックについての部分説明図である。
【図7】図7は、ライトヘッドの書込感度幅とMRヘッドの読出感度幅とを磁気ヘッドの特性パラメータとして測定する従来の測定方法についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1において、10は、磁気ヘッドテスターであり、1は、DTM(ディスクリートトラックメディア)であって、スピンドル2に着脱可能に挿着されている。スピンドル2に隣接してヘッドキャリッジとしてXYステージ3が設けられ、XYステージ3は、Xステージ3aとYステージ3bからなる。
なお、DTM1は、スピンドル2に装着されたときにスピンドル2の回転中心に対してディスクリートトラックが偏心をもったディスクである。通常のDTMは、スピンドル2の回転中心に対してDTM1の中心が、そしてDTM1の中心に対してこれに形成されたディスクリートトラックの中心がそれぞれに偏心している。そこで、これら偏心を段階的に補正しない限り、スピンドルの回転中心に対してディスクに形成されたトラックは偏心を持つことになる。そのため、スピンドル2に装着されたDTM1は、通常は、2トラック分以上の偏心が必ず発生するといってよい。
その結果、ONトラックサーボ制御(後述)が必要になる。
【0013】
Xステージ3aは、DTM1の半径方向(以下単に半径方向)の移動ステージである。これは、MRヘッド(リードヘッド)と薄膜インダクティブヘッド(ライトヘッド)を有する特性検査の対象となる磁気ヘッド9(以下ヘッド9)を含めてピエゾステージ4をYステージ3bを介してDTM1の半径方向に移動する。
Yステージ3bは、このXステージ3a上に搭載され、ヘッド9に対してスキュー調整のための移動を行うステージである。このYステージ3b上にヘッド9のX方向の位置を微調整するピエゾステージ4が搭載されている。
ピエゾステージ4は、移動ベース4aとカートリッジ取付ベース4b、そしてピエゾアクチュエータ5とからなり、移動ベース4aの先端側にはヘッドカートリッジ取付ベース4bが結合されている。移動ベース4aは、Yステージ3bにピエゾアクチュエータ5を介して搭載され、カートリッジ取付ベース4bをX軸に沿って移動させる。
これにより、ピエゾアクチュエータ5が駆動されることでカートリッジ取付ベース4bがX方向に移動してDTM1の半径方向のヘッド位置の微調整がヘッドカートリッジ6を介して行われる。なお、X方向は、DTM1の中心を通る半径方向に一致している。
【0014】
ヘッドカートリッジ6は、カートリッジ取付ベース4bにピエゾアクチュエータ7を介して搭載され、ヘッドカートリッジ6には、サスペンションスプリング8が固定されている。このピエゾアクチュエータ7は、ヘッドカートリッジ6の内部に設けられていてもよい。このような場合には、サスペンションスプリング8とヘッドカートリッジ6のサスペンションスプリング8の取付け台との間に搭載され、サスペンションスプリング8を介してヘッド9を半径方向に移動させることができる。この場合の方がピエゾアクチュエータ7が駆動する質量が小さくなるので、ONトラックサーボ制御の応答性を向上させることができる。
サスペンションスプリング8の先端側にはヘッド9が搭載されている。ヘッド9は、DTM1のX軸方向に沿う半径方向に移動してDTM1のトラックをシークしてそのトラックの1つに位置決めされてデータをそのトラックから読出し、あるいはそのトラックにデータを書込む、いわゆるヘッドアクセス動作をする。
【0015】
ヘッドカートリッジ6は、ヘッド9をヘッドキャリッジに装着するものであって、ヘッド9を着脱可能にヘッドキャリッジに搭載し、内部には読出アンプと書込アンプ等が設けられている。読出アンプは、MRヘッドから読出信号を受けてそれを増幅してデータ読出回路15に出力するとともにサーボ位置決め制御回路11に送出する。
サーボ位置決め制御回路11は、セクタ対応に設けられたサーボ情報を読出して、サーボ情報に応じてヘッド9が位置決めされた目標トラックにONトラック状態になるようにONトラックサーボ制御をする。これは、図2に示すように、目標位置電圧発生回路111と、サーボ電圧復調・位置電圧演算回路112、誤差電圧発生回路113、カートリッジ側のピエゾアクチュエータ7用の位相補償フィルタ処理回路114,ピエゾアクチュエータドライバ115、ピエゾステージ4側のピエゾアクチュエータ5用の位相補償フィルタ処理回路116、そしてピエゾアクチュエータドライバ117とからなる。
なお、サーボ情報は、通常、トラック幅Wのトラックに対して半径方向に順次W/4つづずれて設けられたA相,B相,C相,D相の4相のバースト信号からなる。
【0016】
データ読出回路15は、MRヘッドからの読出信号をヘッドカートリッジ6に設けられた読出アンプから受けて、二値化してデータ処理・制御装置20に送出する。16は、ヘッドアクセス制御回路であって、データ処理・制御装置20からの制御信号を受けてXYステージ3とピエゾアクチュエータ5とを駆動してヘッド9を目標となる所定のトラックに位置決めする。17はデータ書込回路、18は、テストデータ生成回路である。テストデータ生成回路18は、データ処理・制御装置20により制御されて所定のテストデータを作成してそれをデータ書込回路17に送出する。データ書込回路17は、受けたテストデータに従って書込信号を生成して、ヘッドカートリッジ6に設けられた書込アンプ6b(図2参照)を駆動し、ヘッド9の薄膜インダクティブヘッドを介して所定のトラックにデータを書込む。
なお、19は、ディスク駆動回路であり、ヘッドアクセス制御回路16とヘッドキャリッジとしてXYステージ3とはこの発明の複合磁気ヘッドの位置決め機構を構成している。
【0017】
図4は、検査対象のヘッドがアクセスするDTMの部分説明図であって、DTM1全体の1/4円の部分を示してある。
DTM1には、各セクタ対応にサーボエリア1aが設けられていて、このサーボエリア1aにはトラック位置情報、ONトラック位置決めのためのサーボ情報(サーボバースト信号)、セクタ番号などが記録されている。その後に各ディスクリートトラック1bが形成され、各ディスクリートトラック1bの間には非磁性体1cが充填されている。
ディスクリートトラック1bがテストデータ等が書込まれるデータエリア1eであり、ディスクリートトラック1bのトラック幅は、50nm〜60nm程度である。これに対してヘッド9の書込感度幅Waは、現在のところ60nmか、それ以上である。
図1に戻り、データ処理・制御装置20は、MPU21とメモリ22、インタフェース23、CRTディスプレイ24、そしてキーボード等により構成され、これらがバスにより相互に接続されている。そして、メモリ22には、ヘッドアクセスプログラム22a、
テストデータ偏心書込プログラム22b、テストデータ偏心読出プログラム22c、読出特性近似のプロファイル生成プログラム22d、そして正規化POS電圧テーブル22e等が記憶されている。
なお、MPU21がテストデータ偏心書込プログラム22bおよびテストデータ偏心読出プログラム22cを実行するときには、ヘッド9は、ONトラックサーボ制御の状態に設定されている。
【0018】
図2は、ヘッドを偏心駆動するサーボ位置決め制御回路の説明図である。
サーボ位置決め制御回路11の目標位置電圧発生回路111は、正規化値レジスタ111aとD/A変換回路(D/A)111bと正弦波データ発生回路111c、そして切換回路111dとを内蔵している。
正弦波データ発生回路111cは、正弦波データメモリ(ROM)111eとアドレスカウンタ111fと加算演算回路111gとで構成される。
通常は、切換回路111dは、ONトラックサーボ制御のために正規化値レジスタ111aとD/A変換回路(D/A)111bとを接続していて、データ処理・制御装置20は、ヘッド9が位置決めされる目標値データを正規化値レジスタ111aに設定する。それをD/A111bが変換して、目標トラックに対応する電圧値(目標位置電圧値)がアナログ変換電圧値として発生する。この目標位置電圧値は、目標位置電圧発生回路111から誤差電圧発生回路113に出力され、ヘッド9のONトラックサーボ制御が行われる。
【0019】
サーボ電圧復調・位置電圧演算回路112は、DSP(デジタルシ・グナル・プロセッサ)で構成され、ヘッドカートリッジ6の読出アンプ6aから読出されたサーボ信号(サーボバースト信号)を受けてこれからトラック位置に対応する位置電圧を演算して発生する。
一般的には、1024/n(ただし、nは1以上の整数)個程度のセクタに対して10,000本/インチ以上のトラックがある。例えば、MPU21は、Xステージ3aによりトラック数10本置きにヘッド9をトラックに粗位置決めして、粗位置決めされたトラックを中心にして、前後トラック5本についてヘッド9の高精度な位置決めをピエゾステージ4により行う処理をするとする。このときのサーボ情報は、前記したような4相あるいは6相のサーボバースト信号が各トラックに対応して記録されるものとする。
【0020】
トラックを10本単位と仮定してサーボ信号をA〜Jの10本であるとした場合には、 サーボ電圧復調・位置電圧演算回路112は、DSPにより、例えば、次の式で位置電圧信号PVの演算処理をする。
PV={(Va-Vj)+0.75*(Vb-Vh)+0.5*(Vc-Vg)+0.25*(Vd-Vf)}/(Va+ Vb+Vc+Vd+Ve+Vf+Vg+Vh+Vi+Vj)
ただし、Va〜Vjは、それぞれトラックa〜jの位置の検出電圧信号である。 そこで、読出アンプ6aから得られる各トラック位置でのサーボバースト信号について10本置きにあるトラックの位置の検出電圧信号を基準として振幅レベルを電圧値Vi(i=a〜j)として得て、電圧値ViをDSPに入力して前記式に代入すると、トラック位置に対応する正規化POS電圧(検出電圧)PVを得ることができる。
一方、目標トラック位置決めのための正規化POS電圧値は、データ処理・制御装置20のメモリ22に正規化POS電圧テーブル22eとして記憶されている。
そこで、MPU21は、正規化POS電圧テーブル22eを参照して得られた目標トラックにONトラックサーボ位置決をするめのためのデータを正規化値レジスタ111aに設定する。D/A111bは、このデータをD/A変換して正規化POS電圧を発生して誤差電圧発生回路113に送出する。
【0021】
誤差電圧発生回路113は、正規化POS電圧テーブル22eから得られた正規化POS電圧を指令電圧として受けて、この指令電圧の電圧値と目標位置電圧発生回路111から出力された位置決め対象となる目標のトラック位置に対応する電圧値との差に応じて誤差信号を発生する。これにより誤差電圧発生回路113は、目標電圧値とサーボ電圧復調・位置電圧演算回路112から得られる現在位置の電圧値と目標のトラック位置の電圧値との差に対応する電圧信号を誤差信号として発生する。
誤差電圧発生回路113の誤差信号は、位相補償フィルタ処理回路114と位相補償フィルタ処理回路116とに入力される。位相補償フィルタ処理回路114と位相補償フィルタ処理回路116は、ヘッド位置エラーに対して安定したサーボ制御において高速にヘッドをONトラック状態に設定しかつONトラックサーボ制御のヘッド位置補正に必要なダイナミックレンジを確保するためのサーボフィルタ処理回路である。これらもDSP(デジタルシ・グナル・プロセッサ)で構成され、それぞれにフィルタ処理の帯域周波数が相違している。
【0022】
位相補償フィルタ処理回路116により誤差電圧信号が位相補償された後に誤差電圧信号がゲインが100dB以上のピエゾアクチュエータドライバ117に入力され、ピエゾアクチュエータドライバ117がピエゾアクチュエータ5を駆動する。これによりヘッドカートリッジ6が移動してヘッド9が低速応答速度でトラックの中心に位置決めされるように制御される。
また、位相補償フィルタ処理回路114により誤差信号が位相補償された後に誤差信号がゲインが100dB以上のピエゾアクチュエータドライバ115に入力されてピエゾアクチュエータドライバ115がピエゾアクチュエータ7を駆動する。これによりヘッド9が半径方向に移動してヘッド9が高速応答でダイナミックにONトラック状態に制御される。
【0023】
次に、ONトラックサーボ状態で強制的にヘッドを偏心駆動してヘッドに対してトラックを擬似的に偏心させる動作について説明する。
切換回路111dは、データ処理・制御装置20からの切換信号を受けて正弦波データ発生回路111cをD/A111bに接続する。これにより、ヘッド9は、ONトラックサーボ状態で目標トラックに対して偏心する駆動がなされる。
正弦波データ発生回路111cは、アドレスカウンタ111fがデータ処理・制御装置20によりインクリメントされてアクセスされる正弦波データメモリ111eのアドレスが1巡することでディスク1回転に1個の正弦波のデータを正弦波データメモリ111eが発生する。その正弦波のデータが加算演算回路111gに加えられる。加算演算回路111gは、正規化値レジスタ111aから正弦波のデータを受けて、受けた正弦波のデータに正規化値レジスタ111aに設定されたデータを加算したデータをD/A111bに送出する。その結果、正規化値レジスタ111aに設定されたデータの位置を振幅基準とした正極側と負極側の波形を伴う所定の振幅を持ったディスク1回転に1個の正弦波データが生成される。
D/A111bでD/A変換された電圧信号は、誤差電圧発生回路113に供給される。その結果、ピエゾアクチュエータドライバ115がピエゾアクチュエータ7を駆動しあるいは低速でピエゾアクチュエータドライバ117がピエゾアクチュエータ5を駆動してヘッド9がONトラックサーボ状態で目標トラックに対して偏心駆動される。
なお、正弦波データメモリ111eは、ROM構成ではなく、偏心させたい、ヘッド9のトラックからのずれ量に応じた振幅の正弦波データがデータ処理・制御装置20により算出されてRAMにあらかじめロードされるものであってもよい。
【0024】
図5は、検査磁気ヘッドの読出特性測定処理のフローチャートの説明図である。
MPU21は、ヘッドアクセスプログラム22aを実行してインタフェース23を介してヘッドアクセス制御回路16の所定のレジスタに半径方向の移動距離r[mm]を設定してヘッドアクセス制御回路16を起動する。
レジスタに半径方向の移動距離r[mm]が設定されることにより、ヘッドアクセス制御回路16によりXステージ3aが駆動されて基準点あるいは所定のトラック位置からr[mm]分、粗動移動し、さらにピエゾステージ4が駆動されてヘッド9が指定されたトラックに向かって微動移動して目標トラックTR(図3(a)参照)に位置決めされる(ステップ101)。これにより、ヘッド9が基準点あるいは所定のトラック位置から目標トラックTRに位置決めされる。
そして、MPU21は、ONトラック位置決め制御として、正規化POS電圧テーブル22cを参照して正規化値レジスタ111aに目標トラックTRにONトラックサーボ位置決めする正規値を設定してサーボ位置決め制御回路11を起動してヘッド9を目標トラックTRにONトラックサーボ状態で位置決めされるようにピエゾアクチュエータ5,7を駆動させる(ステップ102)。
サーボ位置決め制御回路11は、ピエゾアクチュエータ5,7とを駆動して正規値の位置にピエゾステージ4によりヘッド9を微小位置決めをするとともにヘッド9を回転状態のDTM1においてダイナミックに目的のトラックへ位置決めする。これにより、ヘッド9は、目標となる正規化値に対応したトラック位置に高精度に回転状態のDTM1のトラックに対してダイナミックに位置決めされる。
なお、このときには切換回路111dは、正規化値レジスタ111aを選択している。
【0025】
次に、MPU21は、データ偏心書込プログラム22bをコールして実行し、切換回路111dを正弦波データ発生回路111c側に切換えてヘッド偏心駆動を選択する(ステップ103)。そして、書込開始信号のセクタ信号SC(図3(a)参照)の発生に応じて書込を開始してヘッド9に偏心を加えてONトラックサーボ制御下で目標トラックTRにテストデータをトラック1周分書込む(ステップ104)。
このときのヘッド偏心駆動により、目標トラックTRを含めた複数のトラックの記録状態を示すのが、図3(a)である。トラックに対してヘッド9を強制的に偏心させる駆動によりDTM1上のトラックが相対的で擬似的に偏心することにより目標トラックTRを中心としてテストデータが正弦波状態で書込まれた状態を示している。
図3(a)に示すSCは、書込開始信号となるセクタ信号であって、MPU21は、このセクタ信号SCに同期してステップ104でテストデータの書込を開始し、例えば、図3(a)に示すように目標トラックTRに対して偏心した状態のテストデータTDを目標トラックTRの前後の複数トラックに亙って書込む。
なお、セクタ信号SCに換えて書込開始信号はインデックス信号INDが用いられてもよい。 このような偏心した状態で記録されたテストデータTDの書込み終了後にMPU21は、テストデータ偏心読出プログラム22cをコールして偏心して記録されたテストデータTDの軌跡に沿ってリードヘッド(MRヘッド)をDTM1の半径方向に移動させながら読出す。
【0026】
すなわち、MPU21は、続いてテストデータ偏心読出プログラム22cをコールして実行し、これの実行において、正規化値レジスタ111aにヘッド9が目的のトラックTRの位置決め位置から半径方向に距離−D[nm]だけ移動する正規化データを書込む(ステップ105)。
正規化値レジスタ111aに半径方向の移動距離−D[nm]のデータが設定されることにより、ピエゾアクチュエータ5,7が駆動されてヘッド9が目標トラックTRの手前のD[nm]の位置にシフトし、このシフト後にMPU21が切換回路111dを正弦波データ発生回路111c側に切換える(ステップ106)。これによりMPU21は、シフトした位置を基準として偏心するONトラックサーボ制御を行い、順次半径方向にヘッド9を前進移動してテストデータを読出す読出処理に入る(ステップ107)。
この読出処理は、MPU21が、まず、ステップ107bの処理から入り、書込開始信号のセクタ信号SC(図3(a)参照)の発生に応じてシフトした位置でヘッド9を偏心駆動してテストデータの読出をトラック1周分行い、平均値を算出して、この平均値を半径方向のヘッド移動距離対応にメモリ22に記憶する(ステップ107c)。
以降、MPU21は、正規化値レジスタ111aのデータに対して+Δd[nm]分ヘッド9を半径方向に移動させるヘッド移動(ステップ107a)とヘッド9を偏心駆動して読出信号電圧について1周分の平均値を算出する算出処理(ステップ107b)、半径方向のヘッド移動距離対応に1周分の平均値をメモリ22の所定の領域に記憶する記憶処理(ステップ107c)とを繰り返すことによる。
【0027】
この読出処理の結果、目標トラックTRの手前から目標トラックTRの後ろまで、半径方向にヘッド9をヘッド9を偏心駆動してシークさせながら1周分のテスト信号のリードが繰り返されて、図3(b)に示す記録されたテストデータの軌跡をすべてカバーするテストデータの読出が実行される。
ONトラックサーボ状態でヘッド9を偏心駆動した場合には、ヘッド9をDTM1の半径方向に−D[nm]移動させても偏心したテストデータをヘッド9(MRヘッド)がトレースすることが可能になる。
図3(a)に示すようにDMT1の偏心量は、テストデータの軌跡で5トラック分程度となっているが、テストデータの読出は、偏心量に係わらず、テストデータ書込時の蛇行するトラック軌跡に沿ってMRヘッドがトラック1周ごとに半径方向に移動し、かつ、記録されたテストデータの読出が目標のトラックの手前から後ろまで行われれば、記録されたテストデータが複数のトラックに渡りかつ断片化されている点の相違はあるが、目標トラックにおける記録軌跡は、従来の読出特性のプロファイルを採取するときの関係と同様に書込感度幅の領域全体がMRヘッドにより順次トレースされていくことになる。しかも、このときのトレースは、リードヘッドによりライトヘッドの書込感度幅の範囲が理論的にはすべてカバーすることになる。
【0028】
その結果、MPU21は、図4に示すようなヘッド9の半径方向の移動距離に対する読出電圧についてのピークを持つ読出特性のプロファイル12を採取することができる。なお、図中、黒点位置は測定点である。横軸は、ヘッド9の半径方向の移動距離、縦軸は、最大読出電圧値を1.0としたときの読出電圧の割合である。
したがって、MPU21は、ステップ107cにおいて記録されたヘッド9の移動距離に対応して得られた平均値に基づいて、読出特性プロファイル採取プログラム22cを実行して、半径方向の移動距離に対して測定点の間を補完してヘッド9(MRヘッド)の移動距離に対する読出電圧のピークを持つ読出特性プロファイル12(実線部)を生成する(ステップ108)。
続いてMPU21は、読出特性プロファイル12のピーク点の読出信号のレベルを検出する(ステップ109)。
【0029】
次に、MPU21は、このときのピーク点の読出電圧を最大電圧として、それを1.0として測定値の読出電圧をピーク値(最大電圧値)に対する比に変換する。そしてピーク点の読出信号のレベルを100%として、50%の読出信号のレベルに対応するヘッド9(ライトヘッド)の半径方向の移動距離(横軸)の幅を書込感度幅Waとして算出してメモリ22の所定の領域に記憶する(ステップ110)。
このようにして得られる図4に示す読出特性のプロファイル12は、図7に示すような従来の波形データとは異なり中央部に平坦部を持つ読出電圧特性のプロファイルにはなっていない。しかし、MRヘッドの感動幅<ライトヘッドの書込感度幅の関係があり、MRヘッドの感動幅がトラック幅より小さい以上は、実際に、MRヘッド(リードヘッド)の感動幅は、記録軌跡おけるトラック幅(トラック軌跡の半径方向の幅)より小さいのでトラック幅方向に移動中にはMRヘッドの感動幅が書込感度幅に含まれる半径方向の読出領域(平坦部)が多少はあるはずである。
読出特性のプロファイル12のような平坦部のほとんどないピークを持つ特性は、トラック幅とMRヘッドの幅とが近づいたこととMRヘッドの読出が断片化された磁化状態に対して行われることに影響されてMRヘッドが十分なテストデータの読出ができないことに起因していると考えられる。
【0030】
そこで、図4の読出特性プロファイル12における両サイドの曲線から頭部中央部に平坦部を持つ従来と同様な読出特性近似のプロファイル13を得る(ステップ111)。
すなわち、MPU21は、読出特性プロファイル採取プログラム22cの実行終了後にプロファイル生成プログラム22dをコールし、これを実行する。これにより、MPU21は、両サイドの曲線に対して指定されたスライスレベルの間の曲線、例えば、スライスレベルを20%と80%として20%から80%の間の曲線に対する接線S1,S2を求めて読出特性プロファイル12の両サイドを曲線を接線S1,S2に置き換えた読出特性近似のプロファイル13を生成する。
そこで、MPU21は、この読出特性近似のプロファイル13において、接線S1,S2が0%のレベルのライン(横軸)に交わる点を点B1,点B2とし、100%のレベルのラインに交わる点を点C1,点C2とし、これらの各点を半径方向(横軸)の座標値によりぞれぞれ求めて(ステップ112)、点B1から点B2あるいはその逆のヘッド9の半径方向の移動距離をBとし、点C1から点C2あるいはその逆のヘッド9の半径方向の移動距離をCとしてMRヘッドの読出感度幅WbをWb=(B−C)/2により算出する(ステップ113)。
【0031】
ここで、読出特性近似のプロファイル13における(B−C)は、この波形の両端部の傾斜部分の半径方向における幅の和である。図7で説明したように、この傾斜部分うち図面左側は、MRヘッドがテストデータの書込領域に入り初めてから完全に入り込むまでのMRヘッドの半径方向の移動距離である。これは、MRヘッドの読出幅Wbに相当する。また、図面右側は、逆にMRヘッドがテストデータの書込領域に抜け初めてから抜け切るまでのMRヘッドの半径方向の移動距離であり、これもMRヘッドの読出幅Wbに相当する。
このようなリードヘッドによるテストデータの両サイドの曲線に対する読出関係は、図6で示した従来の読出電圧プロファイルを得るときの関係が維持されている。そこで、両サイドを曲線を接線S1,S2に置き換えた読出特性近似のプロファイル13は、従来の読出特性プロファイルに近い特性になっている。
このような傾斜が前後にあるので、ここでは、(B−C)/2により平均値を得て読出感度幅Wbとしている。
【0032】
ところで、図4の読出特性のプロファイル13において、横軸は、半径方向のヘッド9の移動距離になっている。ステップ106では、ヘッド9が目標トラックの手前のD[nm]から移動を開始している。してみれば、図4の横軸の原点から距離D[nm]の位置は、ヘッド9が目標トラックに位置決めされてライトヘッドによりテストデータを書いた位置になる。この位置は、ヘッド9が目標トラックに位置決めされてリードヘッドがテストデータを読出す位置にも対応している。したがって、この位置からリードヘッドがピーク電圧を読出すまでの半径方向の距離OFは、ライトヘッドとリードヘッドのギャップ間の距離、すなわち、ライトヘッドとリードヘッドのオフセット量となる。
そこで、ステップ113の次に図4の読出特性近似のプロファイル12あるいは読出特性近似のプロファイル13のデータにおいてライトヘッドとリードヘッドのオフセット量を算出するステップをさらに設けることができる。なお、読出特性近似のプロファイル13におけるピーク点の位置は、平坦部の中央値になる。
【0033】
また、上記の場合、読出特性近似のプロファイル13の両サイドの曲線に対する接線S1,S2は、両サイドの曲線の近似直線を求めるものである。そこで、接線S1,S2を求めることに換えて、両サイドの近似直線は、20%から80%の間の曲線を直線近似して得てもよく、あるいはこの範囲の測定値に最小二乗法を適用して得てもよい。
さらに、ステップ113の書込感度幅Waの算出は、読出特性プロファイル12ではなく、読出特性近似のプロファイル13において読出感度幅Wbとともに求めてもよい。
また、読出特性近似のプロファイル13の両端部にある曲線の範囲を決定する20%,80%のスライスレベルは、一例であって、この発明は、50%の前後の測定値を含む曲線の範囲で近似直線を求めればよい。しかも、その範囲は、20%から80%に限定されるものではない。ここで、50%の前後の測定値の曲線を含める理由は、この範囲がMRヘッドがテストデータの書込領域に半分入った状態にあって、前後の記録状態にもっとも影響を受けることがない状態でテストデータを読出しているからである。しかも、この状態は、テストデータの記録状態が断片的ではあるが、MRヘッドと記録情報との関係が従来の磁気ヘッドの読出特性を得るときとの関係に近い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明してきたが、実施例では、テストデータを読出す場合、リードヘッドは、目標トラックの手前から半径方向に移動してテストデータが書込まれたトラックをこのトラックの後ろまで横断する。しかし、この場合、逆に、リードヘッドは、目標トラックの後ろから半径方向に移動してテストデータが書込まれたトラックをこのトラックの手前まで横断してもよいことはもちろんである。
また、実施例におけるDMT1の偏心量は、一例であって、この発明は、1回転に2トラック以上がアクセスされる偏心をもってスピンドルにDMT1が装着されていればライトヘッドの書込感度幅とリードヘッドの読出感度幅とを測定することが可能である。その理由は、書込感度幅は、1トラック幅か、これより大きく、しかも大きくても2トラックには跨らない幅の範囲にあるので、2トラック以上がアクセスされれば、書込感度幅に対応するトラック軌跡がたとえ断片化されたDTMあるいはBPMにおいても得られるからである。
実施例における前記所定のトラックより手前から後ろまでは、逆に、移動距離+D[nm]のデータを設定して−Δdずつ移動させて後ろから手前までであってもよい。 また、実施例におけるディスクリートトラックメディア(DTM)は、一例であって、ビットパターンドメディア(BPM)にもこの発明は適用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0035】
1…ディスク、2…スピンドル、
3…XYステージ、3a…Xステージ、3b…Yステージ、
4…ピエゾステージ、4a…移動ベース、4b…カートリッジ取付ベース、
5,7…ピエゾアクチュエータ、6…ヘッドカートリッジ、
8…サスペンションプリング、9…ヘッド(複合磁気ヘッド)、
10…磁気ディスクテスター、11…サーボ位置決め制御回路、
12…読出特性プロファイル、13…読出特性近似のプロファイル、
16…ヘッドアクセス制御回路、17…データ書込回路、
18…テストデータ生成回路、20…データ処理・制御装置、
21…MPU、22…メモリ、22a…ヘッドアクセスプログラム、
22b…テストデータ書込プログラム、
22c…読出特性プロファイル採取プログラム、
22d…読出特性近似のプロファイル生成プログラム、
22e…正規化POS電圧テーブル22e
23…インタフェース、24…CRTディスプレイ、
111…目標位置電圧発生回路、111a…正規化値レジスタ、
111b…D/A変換回路(D/A)、111c…正弦波データ発生回路、
111c…切換回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライトヘッドとリードヘッドを有する複合磁気ヘッドの読出特性を得て前記ライトヘッドの書込感度幅あるいは前記リードヘッドの読出感度幅とを測定する複合磁気ヘッドの書込/読出幅測定方法において、
ディスクリートトラック方式の回転する磁気記録媒体、ビットパターンド方式の回転する磁気記録媒体あるいはその他の凹凸パターンの記録層を有する回転する磁気記録媒体の所定のトラックからサーボ情報を読出してオントラックさせるオントラックサーボ制御の状態で前記複合磁気ヘッドを位置決めして前記複合磁気ヘッドにより1回転に2トラック以上をアクセスする偏心を前記磁気記録媒体の半径方向に加える駆動を前記複合磁気ヘッドに与えて前記ライトヘッドによりテストデータを前記偏心に応じた2トラック以上に亙って書込み、
前記所定のトラックに前記オントラックサーボ制御の状態でかつ前記半径方向に偏心を加える駆動を前記複合磁気ヘッドに与えて前記所定のトラックを基準としてこれの手前から後ろまであるいは後ろから手前まで前記複合磁気ヘッドを前記半径方向に移動させて前記半径方向の移動位置に対応してそれぞれに前記2トラック以上に亙って書込まれた前記テストデータを前記リードヘッドにより読出し、
前記リードヘッドの読出信号に基づいて前記複合磁気ヘッドの前記半径方向の移動距離に対する読出電圧についてのピークを持つ読出特性のプロファイルを得ることにより前記書込感度幅あるいは前記読出感度幅を算出する複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定方法。
【請求項2】
前記ライトヘッドは、セクタ信号あるいはインデックス信号を待って前記テストデータの書込に入る請求項1記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定方法。
【請求項3】
さらに前記読出特性のプロファイルにおける前記ピークの両サイドの曲線から両サイドの近似直線をそれぞれに得て、これら両サイドの近似直線に基づいて前記読出特性のプロファイルから頭部に平坦部を持つ読出特性近似のプロファイルを得て、
この読出特性近似のプロファイルに基づいて前記読出感度幅を算出する請求項2記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定方法。
【請求項4】
前記書込感度幅は、前記読出特性近似のプロファイルに基づいて算出される請求項3記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定方法。
【請求項5】
前記磁気記録媒体は、ディスクリートトラック方式のものであって、トラック幅が前記ライトヘッドの書込感度幅に等しいかこれより狭いものである請求項4記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定方法。
【請求項6】
前記複合磁気ヘッドは、前記リードヘッドがMRヘッドであり、前記ライトヘッドが薄膜インダクティブヘッドであって、前記近似直線は、前記読出特性のプロファイルにおいて最大読出レベルに対して50%の読出レベルを含む前記両サイドの曲線部分に対して接線の算出、直線近似あるいは最小二乗法による近似により算出される請求項5記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定方法。
【請求項7】
前記近似直線は、前記最大読出レベルに対して読出レベルが20%から80%の範囲の前記両サイドの曲線部分に基づいて算出される請求項6記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定方法。
【請求項8】
前記両サイドの近似直線が前記読出特性のプロファイルにおいて読出レベル0%のラインに交わるそれぞれの交点を点B1,点B2とし、読出レベル100%のラインと交わるそれぞれの交点を点C1,点C2としたときに、点B1から点B2まであるいはその逆の前記複合磁気ヘッドの前記半径方向の移動距離をBとし、点C1から点C2まであるいはその逆の前記複合磁気ヘッドの前記半径方向の移動距離をCとしたときに、
前記MRヘッドの前記読出感度幅は、(B−C)/2により算出される請求項3記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定方法。
【請求項9】
前記所定のトラックに位置決めしたときの前記複合磁気ヘッドの位置に対応する前記読出特性のプロファイルにおける位置から前記ピーク位置までの半径方向の距離を前記リードヘッドと前記ライトヘッドのオフセット量としてさらに算出する請求項1記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定方法。
【請求項10】
前記所定のトラックに位置決めしたときの前記複合磁気ヘッドの位置に対応する前記読出特性近似のプロファイルにおける位置から前記ピーク位置までの半径方向の距離を前記リードヘッドと前記ライトヘッドのオフセット量としてさらに算出する請求項3記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定方法。
【請求項11】
ライトヘッドとリードヘッドを有する複合磁気ヘッドの読出特性を得て前記ライトヘッドの書込感度幅と前記リードヘッドの読出感度幅とを測定する複合磁気ヘッドの書込/読出幅測定装置において、
ディスクリートトラック方式の磁気記録媒体、ビットパターンド方式の磁気記録媒体あるいはその他の凹凸パターンの記録層を有する磁気記録媒体を回転させるスピンドルと、
回転する前記磁気記録媒体の所定のトラックからサーボ情報を読出してオントラックさせるオントラックサーボ制御をするためのサーボ制御回路と、
前記オントラックサーボ制御の状態で前記複合磁気ヘッドを所定のトラックに位置決めする前記複合磁気ヘッド位置決め機構と、
前記オントラックサーボ制御の状態で前記所定のトラックに前記複合磁気ヘッドを位置決めして前記複合磁気ヘッドにより1回転に2トラック以上をアクセスする偏心を前記磁気記録媒体の半径方向に加える駆動を前記複合磁気ヘッドに与えるための偏心駆動手段と、
この偏心駆動手段による偏心が前記複合磁気ヘッドに与えられた状態で前記ライトヘッドによりテストデータを前記偏心に応じた2トラック以上に亙って書込むためのテストデータ書込手段と、
前記所定のトラックを基準としてこれの手前から後ろまであるいは後ろから手前まで前記複合磁気ヘッドを前記半径方向に移動させるためのヘッド半径方向移動手段と、
前記偏心駆動手段による偏心が前記複合磁気ヘッドに与えられた状態で前記半径方向の移動位置に対応してそれぞれに前記2トラック以上に亙って書込まれた前記テストデータを前記リードヘッドにより読出すためのテストデータ読出手段と、
前記リードヘッドの読出信号に基づいて前記複合磁気ヘッドの前記半径方向の移動距離に対する読出電圧についてのピークを持つ読出特性のプロファイルを生成するためめの読出特性プロファイル生成手段とを備え、
前記読出特性プロファイルに基づいて前記書込感度幅あるいは前記読出感度幅を算出する複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定装置。
【請求項12】
さらに読出特性のプロファイル取得手段を有し、前記読出特性のプロファイル取得手段は、前記読出特性のプロファイルにおける前記ピークの両サイドの曲線から両サイドの近似直線と、さらに得られた両サイドの近似直線に基づいて前記読出特性のプロファイルから頭部に平坦部を持つ読出特性近似のプロファイルとを得て、
この読出特性近似のプロファイルに基づいて前記読出感度幅を算出する請求項10記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定装置。
【請求項13】
前記書込感度幅は、前記読出特性近似のプロファイルに基づいて算出される請求項11記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定装置。
【請求項14】
前記磁気記録媒体は、ディスクリートトラック方式のものであって、トラック幅が前記ライトヘッドの書込感度幅に等しいかこれより狭いものである請求項12記載の複合磁気ヘッドの書込幅及び/又は読出幅の測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−49784(P2010−49784A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169807(P2009−169807)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】