説明

複合粒子、樹脂組成物、波長変換層および光起電装置

【課題】 本発明の目的は、半導体粒子同士の凝集を抑制でき、かつ耐久性に優れる複合粒子およびそれを用いた樹脂組成物を提供することである。また、本発明の別の目的は、性能に優れる波長変換層および光起電装置を提供することにある。
【解決手段】 本発明の複合粒子は、希土類元素を有する半導体粒子と、前記半導体粒子と異なる無機化合物の粒子とを含むことを特徴とする。また、本発明の樹脂組成物は、上記に記載の複合粒子と、硬化性樹脂とを含むことを特徴とする。また、本発明の波長変換層は、上記に記載の樹脂組成物で構成された層を硬化させてなることを特徴とする。また、本発明の光起電装置は、上記に記載の波長変換層を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粒子、樹脂組成物、波長変換層および光起電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電装置は、太陽光を光電変換して電気エネルギーを取り出す太陽電池として用いられる。この種の光起電装置としては、現在、光を起電力に変換する光起電層に単結晶シリコン、多結晶シリコン、球状シリコンやアモルファスシリコン、CdTe、CIGSを用いたものが主流である。最近では、色素増感型太陽電池などの有機太陽電池なども開発されており、有機系材料を含む様々な光起電層が用いられるようになってきた。これらの光起電装置の場合、分光感度が略可視光領域に限られており、太陽光線のうち紫外領域や赤外領域など可視光以外の領域を効率よく電気エネルギーに変換することができない。また、結晶シリコン太陽電池は、紫外光吸収による温度上昇による光電変換効率の低下問題があった。さらに、有機系材料を含む光起電層を用いた有機太陽電池においては、紫外線による有機系材料の劣化による光電変換効率の低下問題があった。
【0003】
特許文献1には波長変換物質としてCdSe、CdTe、GaN、Si、InP、ZnOなどの半導体微粒子やそれらをコアシェル型にした粒子を用いた記載がある。しかし、これに記載のエネルギー変換膜において、波長変換物質である数nmの量子ドットが凝集する可能性があり、波長換物質を均一に分散させることが困難である。また、半導体微粒子の耐久性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−216560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、半導体粒子同士の凝集を抑制でき、かつ耐久性に優れる複合粒子およびそれを用いた樹脂組成物を提供することである。
また、本発明の別の目的は、性能に優れる波長変換層および光起電装置を提供することにある。
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(18)に記載の本発明により達成される。
(1)希土類元素を有する半導体粒子と、前記半導体粒子と異なる無機化合物の粒子とを含むことを特徴とする複合粒子。
(2)前記希土類元素は、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)からなる群より選択される1以上の元素である上記(1)に記載の複合粒子。
(3)前記希土類元素の含有量は、前記複合粒子全体の0.01〜20重量%である上記(1)または(2)に記載の複合粒子。
(4)前記半導体粒子は、酸化亜鉛(ZnO)である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の複合粒子。
(5)前記無機化合物の粒子は、酸化物の粒子である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の複合粒子。
(6)前記酸化物の粒子は、シリカ(SiO)およびジルコニア(ZrO)の少なくとも一つの粒子である上記(5)に記載の複合粒子。
(7)前記半導体粒子の含有量は、前記複合粒子全体の10〜80体積%である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の複合粒子。
(8)上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の複合粒子と、硬化性樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
(9)前記複合粒子の含有量は、前記樹脂組成物全体の30〜70体積%である上記(8)に記載の樹脂組成物。
(10)上記(8)または(9)に記載の樹脂組成物で構成された層を硬化させてなることを特徴とする波長変換層。
(11)上記(10)に記載の波長変換層を有することを特徴とする光起電装置。
(12)前記波長変換層が、光起電装置の面内に凹凸構造を有する上記(11)に記載の光起電装置。
(13)前記凹凸構造の高低差が300nm〜100μmである上記(12)に記載の光起電装置。
(14)前記凹凸構造の面内周期が300nm〜50μmである上記(12)または(13)に記載の光起電装置。
(15)前記凹凸構造にさらに小さな微細凹凸形状を有する上記(12)ないし(14)のいずれかに記載の光起電装置。
(16)前記凹凸構造が2種以上の異なる波長変換層を積層してなる上記(12)ないし(15)のいずれかに記載の光起電装置。
(17)前記波長変換層が、インクジェットにより形成される上記(11)ないし(16)のいずれかに記載の光起電装置。
(18)前記インクジェットがピエゾ方式のインクジェットである上記(17)に記載の光起電装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体粒子同士の凝集を抑制でき、かつ耐久性に優れる複合粒子およびそれを用いた樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明によれば、性能に優れた波長変換層および光起電装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る光起電装置を示す図である。
【図2】波長変換層の詳細を示す図である。
【図3】本発明に係る光起電装置の別実施形態を示す図である。
【図4】本発明に係る光起電装置の別実施形態を示す図である。
【図5】本発明に係る波長変換層が凹凸構造を有する光起電装置の実施形態を示す図である。
【図6】本発明に係る波長変換層が凹凸構造を有する光起電装置の別実施形態を示す図である。
【図7】本発明に係る波長変換層が凹凸構造を有する光起電装置の別実施形態を示す図である。
【図8】本発明に係る波長変換層が凹凸構造を有する光起電装置の別実施形態を示す図である。
【図9】本発明に係る波長変換層が凹凸構造を有する光起電装置の別実施形態を示す図である。
【図10】本発明に係る波長変換層が凹凸構造を有する光起電装置の別実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複合粒子、樹脂組成物、波長変換層および光起電装置について説明する。
本発明の複合粒子は、希土類元素を有する半導体粒子と、前記半導体粒子と異なる無機化合物の粒子とを含むことを特徴とする。
また、本発明の樹脂組成物は、上記に記載の複合粒子と、硬化性樹脂とを含むことを特徴とする。
また、本発明の波長変換層は、上記に記載の樹脂組成物で構成された層を硬化させてなることを特徴とする。
また、本発明の光起電装置は、上記に記載の波長変換層を有することを特徴とする。
【0010】
(複合粒子)
まず、複合粒子について説明する。
前記複合粒子は、EL照明、光通信、EL表示体、LED照明、太陽電池、バイオイメージング等の光学材料に用いることが好ましい。特に、LED照明、太陽電池等の波長変換材料に用いることが好ましい。
【0011】
以下、本発明の複合粒子を、波長変換材料に用いた場合について詳細に説明する。
前記複合粒子は、希土類元素を有する半導体粒子を含むことを特徴とする。これにより、該複合粒子の発光特性を向上することができる。
ここで、前記複合粒子とは、前記無機化合物の粒子と前記希土類元素を有する半導体粒子とが混合されている場合、前記半導体粒子と前記無機化合物とが表面で付着している場合、前記希土類元素を有する半導体粒子が前記無機化合物の粒子中に含まれる場合、前記希土類元素を有する半導体粒子の周囲を前記無機化合物の粒子で被覆している場合等が挙げられる。これらの中でも、前記希土類元素を有する半導体粒子の周囲を前記無機化合物の粒子で被覆している場合が好ましい。これにより、耐久性をより向上することができる。
なお、前記希土類元素を有する半導体粒子の周囲を前記無機化合物の粒子で被覆している場合であっても、前記半導体粒子の周囲が完全に被覆されている必要は無く、一部が被覆されているような状態であっても良い。より具体的には、数個の前記半導体粒子を前記無機化合物の粒子で覆うような状態がであっても良い。
【0012】
前記希土類元素としては、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、ジスプロジウム(Dy)、ホルミウム(Ho)等が挙げられる。これらの中でもユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)からなる群より選択される1以上の元素が好ましい。ユーロピウム(Eu)を有することにより紫外光を吸収し、可視光を発光する発光材料となる。
また、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)を有することにあり、紫外光を吸収し、赤外線を発光する、また赤外線を吸収し、可視光を発光する発光材料となる。
【0013】
このように、半導体粒子が希土類元素を有することにより、発光波長等の発光特性の制御が可能となる。たとえば、太陽電池に用いる場合では、太陽電池の光電変換に使用されない紫外線、赤外線等の波長を、太陽電池の光電変換に使用される光の波長に変換することにより、太陽電池の光電変換効率を向上することができる。
【0014】
前記希土類元素の含有量は、特に限定されないが、前記複合粒子全体の0.01〜20重量%が好ましく、特に0.02〜10重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に発光量子収率等の発光特性に優れる。
【0015】
前記半導体粒子に希土類元素をドープする方法としては、例えばゾルゲル法やソルボサーマル法等の液相法、火炎法やスパッタリング法等の気相法等が挙げられる。
【0016】
前記半導体粒子としては、例えばCdSe、CdTe、CdS、GaP、GaTe、GaN、Si、InP、ZnO、ZnS等が挙げられる。これらの中でもSi(シリコン)や酸化亜鉛(ZnO)がより好ましい。Si(シリコン)や酸化亜鉛(ZnO)は資源枯渇の心配がなく、毒性が低く、作業性を向上することができる。さらに好ましくは、酸化亜鉛(ZnO)である。これを用いることにより、真空装置などの大掛かりな装置を使用することなく、比較的容易に希土類をドープすることができ各種発光特性を制御した発光材料を得ることができる
【0017】
前記希土類元素を有する半導体粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、1〜10nmが好ましく、特に1〜5nmが好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、量子サイズ効果等により、吸収・発光特性が向上する。前記平均粒子径は、例えば動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用いて、透明分散液の状態で評価することができる。
【0018】
・ 前記希土類元素を有する半導体粒子の含有量は、前記複合粒子全体の10〜80体積%であることが好ましく、特に30〜60体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に耐久性や発光特性に優れる。
【0019】
前記無機化合物の粒子としては、ZnO、SiO、ZnS、GaN、CdS、GaP、CdS、ZrO、YVO、Yの粒子が挙げられる。これらの中でも、シリカ(SiO)およびジルコニア(ZrO
の少なくとも一つの粒子が好ましい。これにより、耐久性や、発光量子収率等の発光特性を向上することができる。
【0020】
前記複合粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、20〜100nmが好ましく、特に45〜55nmが好ましい。平均粒子径が前記範囲内であると、特に樹脂への分散性が向上し、樹脂に複合粒子を高充填し発光特性を向上できるばかりか、可視光領域で透明な樹脂組成物を得ることができる。
前記平均粒子径は、例えば動的光散乱装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用いて、透明分散液の状態で評価することができる。
【0021】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、硬化性樹脂と、上述したような複合粒子とを含むことを特徴とする。これにより、高価な真空装置や、高温処理することなく容易に各種デバイスに塗布することができる。
【0022】
硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が用いられ、光を透過するものが特に好ましく用いられる。具体的には、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂等が挙げられる。これらを用いることにより、透明性を向上することができる。
【0023】
前記エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはこれらの水添化物、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、ポリシロキサン構造を有するエポキシ樹脂が挙げられる。直接、アモルファスシリコンなどの光起電層や反射防止膜を形成させるためなど、耐熱性を必要とする場合は、脂環式構造を有するものが好ましい。脂環式エポキシ樹脂としては例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3‘、4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン、ε−カプロラクトンオリゴマーの両端にそれぞれ3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールと3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸がエステル結合したもの、水添ビフェニル骨格、及び水添ビスフェノールA骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。)等が好適に用いられる。
【0024】
前記アクリル樹脂としては2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであれば、特に制限されないが、直接、アモルファスシリコンなどの光起電層や反射防止膜を形成させるためなど、耐熱性を必要とする場合は、脂環式構造を有するものが好ましい。脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、特に、化(1)及び化(2)より選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートを重合したアクリル樹脂が好ましい。
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

【0027】
さらに好ましくは、化(1)において、R1、R2が水素で、aが1、bが0である構造を持つジシクロペンタジエニルジアクリレート、一般式(2)において、Xが−CH2OCOCH=CH2、R3、R4が水素で、pが1である構造を持つパーヒドロ−1,4;5,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリアクリレート、 X、R3、R4がすべて水素で、pが0または1である構造を持つアクリレートより選ばれた少なくとも1種以上のアクリレートであり、粘度等の点を考慮すると、最も好ましくは、X、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレートである。
【0028】
架橋性を有するエチレンビニルアセテート樹脂としては、酢酸ビニル含有率(VA含有量)が25%以上のものが好ましく、例えば、三井化学ファブロ株式会社のソーラーエバ(商標)等を好適に用いることができる。
シリコン樹脂としては、市販のLED用シリコン樹脂等が挙げられる。
硬化性樹脂とは、最終的にネットワーク構造を形成するものであれば良く、イオンを媒体としてネットワークを形成するアイオノマー樹脂なども使用することができる。
【0029】
前記硬化性樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物全体の20〜65体積%が好ましく、特に30〜55体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に発光特性、耐久性に優れる。
【0030】
前記複合粒子の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物全体の30〜70体積%が好ましく、特に40〜60体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に発光特性、耐久性に優れる。
【0031】
前記樹脂組成物には、上述した硬化性樹脂および複合粒子以外に、架橋を促進させるための触媒、架橋剤、他の波長変換物質、前記複合粒子と樹脂との親和性を向上し、複合粒子の分散性を向上させるためのアルコキシ基を有する化合物等のカップリング剤や界面活性剤を含有させることができる。
【0032】
前記アルコキシ基を有する化合物としては、アルコキシ基を有する化合物であれば特に制限されないが、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等の珪素のアルコキシド化合物、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシランなどの珪素を含有する各種カップリング剤、アルミニウム、チタンなどの珪素以外の元素からなるアルコキシ基含有化合物等が挙げられる。波長変換物質である酸化亜鉛半導体粒子を含有する酸化物微粒子を硬化性樹脂に分散させるときには、珪素を含有するシランカップリング剤を分散剤として使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、窒素又はアミノ基を有するものが好ましく、アザシランやアミノシランなどが好ましい。アミノシランを使用する場合、アルコキシ基が2官能であるジシランやアルコキシ基が1官能であるモノシランが好ましく、コストと性能のバランスからN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。アザシランを使用する場合、環状アザシランが好ましく、コストと性能のバランスから2,2− ジメトキシ−1,6− ジアザ−2− シラシクロオクタンまたはN−メチル−アザ−2,2,4−トリメチルシラシクロペンタンが好ましい。
【0033】
(波長変換層および光起電装置)
以下に、波長変換層および光起電装置の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
【0034】
[実施形態1]
図1に上述した樹脂組成物で構成された層を硬化させてなる波長変換層3を備えた光起電装置1を示す。この光起電装置1は、光により起電力を生じる光起電層2を備え、光起電層2の光の入射面側に上述の樹脂組成物で構成された層を硬化させてなる波長変換層3が設けられている。
【0035】
光起電層2は、光により起電力を生じるもので、p型半導体層、真空半導体層、n型半導体層からなる半導体層と、EVA樹脂組成物などの封止材、半導体層の片面又は両側の面に設けられた透明電極層を備える。半導体層は、特に限定はされないが、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、球状シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体、有機半導体、量子ドット半導体などを用いることができる。透明電極は、特に限定はされないが、例えば、ITOや酸化錫などによって構成される。なお、光起電装置1の構成はこれに限定されるものではなく、種々の光起電装置1に適用することができる。特に市販の光起電層2に波長変換層3を設ける場合、光起電層2の上にさらにガラス、透明電極、無反射層、保護層等が形成される場合がある。この場合は、ガラス、透明電極、無反射層、保護層等の上又は下に波長変換層3が形成される。波長変換層3は、紫外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する。または赤外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する。従って太陽電池に用いられる有機材料の劣化を抑制することができ、寿命の向上も期待できる。
【0036】
この実施形態において、波長変換層3は、紫外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する。または赤外領域の太陽光線を可視光領域あるいは近赤外領域に変換する。図2に示すように、この波長変換層3は、光硬化性樹脂5と、光硬化性樹脂5内に分散された複合粒子4を備える。この波長変換層3は、前述した樹脂組成物を、例えば、光起電層2の表面に塗布して光硬化させることにより形成される。このため、例えば、市販の光起電装置1に樹脂組成物を塗布して光硬化させるだけで波長変換層3を形成することができる。
【0037】
以下、波長変換層3を構成する樹脂組成物の詳細について説明する。この樹脂組成物は、硬化性樹脂5と、複合粒子4とを含有している。これにより、吸収した光の波長を変換することができる。複合粒子4は、希土類を有する半導体粒子6の周囲を無機化合物の粒子で覆われてなっている。
【0038】
[実施形態2]
上述の実施形態1において、図3に示すように、波長変換層3として、紫外領域の太陽光線を可視光領域に変換する第1波長変換層31と、赤外領域の太陽光線を可視光領域に変換する第2波長変換層32とを設けてもよい。この実施形態2では、図に示すように、光の入射側から順に第1波長変換層31、第2波長変換層32の順に形成されている。光は、波長が長いほど透過しやすくなる。従って、波長の短い紫外領域を可視光領域に変換する第1波長変換層31を光の入射側に設け、波長の長い赤外領域を可視光領域に変換する第2波長変換層32をその内側に設けることにより、波長変換の効率を高めることができる。第2波長変換層32は赤外領域の太陽光線を可視光領域に変換する層に限定されず、紫外領域の太陽光線を可視光領域に変換する第1波長変換層31とは異なる種類の紫外領域の太陽光線を可視光領域に変換する波長変換層を使用してもよい。また、積層数は2層に限らず3層以上積層してもよい。各波長変換層の屈折率は光の入射側を最も小さくし、半導体側の層に近いほど屈折率を大きくなるようにすることにより、界面での光の反射による損失を少なくでき、光を効率よく光起電装置に供給することができる。
【0039】
[実施形態3]
また、実施形態3のように波長変換層3として、紫外領域の太陽光線を可視光領域に変換する第1波長変換層3と、赤外領域の太陽光線を可視光領域に変換する第2波長変換層3とを設ける場合、図4に示すように、光起電層2の光の入射面側に第1波長変換層3を形成し、光起電層2の裏面に第2波長変換層3を形成し、さらに第2波長変換層3の光起電層2側とは反対の側に反射層6を設けてもよい。
【0040】
[実施形態4]
上述の実施形態において、上述の樹脂組成物を光起電装置1に塗布し、硬化させて波長変換層3を形成する例について説明したがこれに限られるものではない。例えば、樹脂組成物を硬化させたフィルムを形成し、これを接着剤等によって、光起電装置1に設けることにより波長変換層3を形成してもよい。
【0041】
[実施形態5]
上述の実施形態において、波長変換層3が光起電装置の面内に凹凸構造を有するように設置されても良い。これにより、光の透過ロス、波長変換層と光起電装置界面における反射ロス等を削減することができ、波長変換層で変換された光を効率よく光起電装置に供給することができる。ここで、凹凸形状が面内で途切れた構造でも、波長変換層と呼ぶ。
【0042】
前記凹凸構造の高低差は、斜め方向からの太陽光の吸収とコストのバランスから、300nm〜100μmが好ましく、さらに好ましくは、1〜50μmであり、最も好ましくは、10〜50μmである。凹凸構造の高低差の測定には、原子間力顕微鏡、共焦点顕微鏡、レーザー顕微鏡等の顕微鏡を用いて測定することができる。
【0043】
また、前記凹凸構造の面内周期は、300nm〜50μmが好ましい。波長変換組成物の光吸収波長領域とほぼ同程度の周期にすることが好ましい。面内直角方向(X方向、Y方向)の凹凸周期は同じであっても異なっていても良い。また同じ方向における面内周期のばらつきがあっても良い。凹凸構造の面内周期は、原子間力顕微鏡、共焦点顕微鏡、レーザー顕微鏡、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等の顕微鏡を用いて測定した画像情報をフーリエ変換することにより求めることができる。
【0044】
前記凹凸構造の形状としては、ドット、マイクロレンズ、L&S、ハニカム、セル、四角錐、モスアイ、円錐形など、さまざまな形状を用いることができる。コストと効率の観点から、ドット、マイクロレンズ、L&S、セル、四角錐の形状が好ましく、さらに好ましくは、ドット、マイクロレンズの形状である。前記凹凸構造は光が照射する側が凸であっても、光起電装置側が凸であってもどちらでもよい。また、上記凹凸形状にさらに小さな凹凸形状を付与することもできる。凹凸形状は、発光した光を光起電装置に多く供給するという観点では、光起電装置側に凸であることが好ましく、さらに好ましくは、光起電装置側に凸であり、かつ凸形状の中にさらに小さな微細凹凸形状を有する形状が好ましい。微細凹凸形状の高低差は、光閉じ込めなどの観点では、100〜500nmが好ましい。さらに、前記凹凸構造は2種類以上の波長変換層を積層してもよい。以上の凹凸構造の例を図5〜10に示す。
【0045】
前記凹凸構造は、光起電装置の面、光起電装置側と反対の面、又は両面に形成することができる。光起電装置側の面に形成する場合は、あらかじめ、光起電装置表面に波長変換組成物やその他の樹脂組成物で微細凹凸形状を形成した後、その上に樹脂組成物を塗布すると良い。また、この場合、光起電装置側の面の凹凸形状の面内周期は、300nm〜1μmの範囲にすることが好ましい。光起電装置と反対の面、光起電装置側の面の両面に凹凸構造を形成する場合は、光起電装置側の面の凹凸形状の面内周期を、光起電装置と反対の面の凹凸形状の面内周期より小さくすることが好ましい。
【0046】
前記凹凸構造は、隣り合う凹凸が同じ樹脂組成物であっても、異なる樹脂組成物であっても良い。樹脂組成物の光吸収波長範囲が比較的狭い場合は、光吸収波長範囲を広げるなどの目的で、隣り合う凹凸の樹脂組成物を異なるものに設定することにより、効率よく光起電装置の発電効率を向上させることができる。
【0047】
前記凹凸構造を形成した後、前記凹凸構造の上にさらに別の樹脂組成物をオーバーコートすることができる。これにより、耐汚性、耐久性などの低下を抑制できる。
【0048】
[実施形態6]
上述の実施形態において、前記波長変換層3の塗布方法には、スプレー、ディスペンサー、インクジェット等、さまざまな方法を用いることができる。塗布速度、装置コスト、微細形状描画精度等を考慮すると、インクジェット方式を用いた塗布が好ましく、中でも、比較的高粘度にも対応できるピエゾ方式又は静電方式のインクジェットが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
(1)酸化亜鉛半導体粒子の作製
所定量の酢酸亜鉛二水和物(Zn(CHCOO)・2HO)と酢酸エルビウムx水和物(Er(CHCOO)・xHO)をエタノールに分散させた。酢酸亜鉛二水和物と酢酸エルビウムx水和物の各々の量が、Zn2+:Er3+重量%比で95:5になるように調製した。
この分散液を80℃にて3時間還流した後、0℃まで冷却した。冷却した溶液に、所定量の水酸化リチウム(Li(OH))を加えて、10℃以下の温度で20分間超音波処理を行った。溶液を0.2μmのフィルターでろ過して不純物を取り除き、ろ液に過剰量のヘキサンを加えた。生じた沈殿を室温にて減圧乾燥し、焼成することで目的の希土類を有する半導体粒子を得た。得られた半導体粒子の粒度分布測定より、この粒子の平均粒径は約3nm、蛍光分光光度計により、近赤外線照射下520〜540nmの範囲に発光極大を有する発光を観測した。
【0051】
(2)酸化亜鉛半導体粒子を含有する複合粒子の作製
日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾル(品番:IPA−ST、シリカ粒子の平均粒径:約12nm、シリカ粒子の濃度:30wt%、溶媒:2−プロパノール)をエタノールで35倍に希釈し、シリカ粒子濃度0.26Mの混合溶液を調製した。次に、この混合溶液10mlと(1)で作製した半導体粒子の0.10Mエタノール溶液40mlを混合し、噴霧乾燥法により酸化亜鉛半導体粒子とシリカ粒子の複合粒子を得た。噴霧乾燥時の炉の温度は450℃とし、キャリアガスには窒素を使用した。作製した複合粒子の真比重は、4.0であり、複合粒子中の半導体粒子とシリカ粒子のおよその体積比は、半導体粒子:シリカ粒子=6:5であった。また、複合粒子中の希土類元素の含有量は約2重量%、複合粒子の平均粒径は約50nmであった
【0052】
(3)波長変換材料用の樹脂組成物の作製
前記式(2)において、X、R、Rがすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレート[試作品番 TO−2111;東亞合成(株)製]、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(チッソ(株)製、サイラエースS310)、(2)で作製した複合粒子の透明分散溶液を樹脂組成物の硬化後の複合粒子の体積分率が50vol%になるように配合し、室温〜40℃で撹拌しながら減圧下揮発分を除去した。ノルボルナンジメチロールジアクリレートとN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランの重量比は、4:1とした。その後、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカル製、イルガキュア184)を溶解させた後、さらに減圧下揮発分を除去し、樹脂組成物を得た。樹脂組成物中の溶剤含有量は10%未満であった。また、この樹脂組成物は、常温又は加熱下で流動性を有することを確認した。この樹脂組成物と、(1)で作製した複合酸化物微粒子の透明分散溶液を添加しないほかは上記と同様な方法で作製した樹脂組成物とを硬化アニールさせ、その硬化物の比重を測定し、また、樹脂組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残渣を測定し、それにより、複合粒子の体積分率を求めたところ、51vol%であった。
【0053】
評価
(1)透明性と線膨張係数
得られた樹脂組成物を所定の温度(60〜80℃)のオーブンで加熱し、ガラス板上に作成した厚み0.15mmの枠内に注入し、上部よりガラス板をのせ、枠内に樹脂組成物を充填した。ガラス板に挟んだ樹脂組成物に、両面から約500mJ/cmのUV光を照射して硬化させ、ガラスからシートを剥離した。得られたシートを、それぞれ、真空オーブン中で、約100℃で3時間加熱後、さらに約275℃で3時間加熱して、シート状サンプルを得た。得られたシート状サンプルの厚みをマイクロメーターで測定した結果、121μmであった。
上記シート状サンプルを熱応力歪測定装置(セイコー電子(株)製、TMA/SS120C型)を用いて、窒素の存在下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から400℃まで上昇させて20分間保持し、30℃〜230℃の時の値を測定して求めた。荷重を5gにし、引張モードで測定を行った結果、平均線膨張係数は、41ppm/℃であった。
また、上記シート状サンプルに関してヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて測定した結果、ヘイズは0.5であり、分光光度計((株)島津製作所製、UV−2400PC)で平行光線透過率を測定した結果、平行光線透過率は92%であった。肉眼で見ても、非常に透明なシートであることが確認できた。
【0054】
(2)発電効率
結晶系シリコン太陽電池用カバーガラスの平滑面側の表面に、得られた樹脂組成物を、スピンコーターを用いて乾燥後の厚みが約20μmとなるように塗布した。両面から約500mJ/cmのUV光を照射して硬化させ、さらに真空オーブン中で、約200℃で1時間加熱処理を行った。市販の単結晶シリコン太陽電池セルの上に太陽電池用封止材EVA(VA含有量28%、架橋型)シートを敷き、更にその上にカバーガラスを塗布面が下向きとなるように配置した。これを真空加熱処理し、光起電装置を作製した。
【0055】
上述の光起電装置の短絡電流密度Jsc(mA/cm)、変換効率測定について説明する。擬似太陽光照射装置(分光計器(株)製、OTENTO−SUNV型ソーラシミュレータ)を用いて1kW/mの光を照射し、そのとき生じた電流と電圧をI−Vテスタ(ケースレーインスツルメンツ(株)製、2400型ソースメータ)を用いて、JIS C 8913に準じて測定した。測定された短絡電流密度Jscから、波長変換層3を含まない以外はすべて同様の方法で作製した光起電装置での短絡電流密度Jscを引いた値を短絡電流密度差ΔJscとした。その結果、ΔJscは0.56mA/cmであり、変換効率は1.8%向上した。
【0056】
この光起電装置を屋外に1ヵ月間設置した後、上記同様の評価を行ったが、Jscおよび変換効率の低下は見られなかった。
【0057】
(実施例2)
複合粒子の調製を、以下のように実施した以外は、実施例1と同様にした。
日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾル(品番:IPA−ST、シリカ粒子の平均粒径:約12nm、シリカ粒子の濃度:30wt%、溶媒:2−プロパノール)をエタノールで35倍に希釈し、シリカ粒子濃度0.26Mの混合溶液を調製した。次に、この混合溶液10mlと(1)で作製した酸化物微粒子の0.10Mエタノール溶液40mlを混合し、火炎法により酸化亜鉛半導体粒子とシリカ粒子の複合粒子を得た。燃焼時の炉の温度は1100℃とし、キャリアガスには酸素を使用した。作製した複合の真比重は、4.0であり、複合粒子中の半導体粒子とシリカ粒子のおよその体積比は、半導体粒子:シリカ粒子=6:5であった。また、複合粒子中の希土類元素の含有量は約2重量%、、複合粒子の平均粒径は約55nmであった。
なお、樹脂組成物を調製した後、複合粒子の体積分率を求めたところ52vol%であった。
【0058】
評価
(1)透明性と線膨張係数
得られた樹脂組成物を所定の温度(60〜80℃)のオーブンで加熱し、ガラス板上に作成した厚み0.15mmの枠内に注入し、上部よりガラス板をのせ、枠内に樹脂組成物を充填した。ガラス板に挟んだ樹脂組成物に、両面から約500mJ/cmのUV光を照射して硬化させ、ガラスからシートを剥離した。得られたシートを、それぞれ、真空オーブン中で、約100℃で3時間加熱後、さらに約275℃で3時間加熱して、シート状サンプルを得た。得られたシート状サンプルの厚みをマイクロメーターで測定した結果、133μmであった。
上記シート状サンプルを熱応力歪測定装置(セイコー電子(株)製、TMA/SS120C型)を用いて、窒素の存在下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から400℃まで上昇させて20分間保持し、30℃〜230℃の時の値を測定して求めた。荷重を5gにし、引張モードで測定を行った結果、平均線膨張係数は、40ppm/℃であった。
また、上記シート状サンプルに関してヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて測定した結果、ヘイズは0.5であり、分光光度計((株)島津製作所製、UV−2400PC)で平行光線透過率を測定した結果、平行光線透過率は91%であった。肉眼で見ても、非常に透明なシートであることが確認できた。
【0059】
(2)発電効率
結晶系シリコン太陽電池用カバーガラス8の平滑面側の表面に、得られた樹脂組成物を、市販のインクジェット(静電方式)を用いてマイクロレンズ形状に塗布した。両面から約500mJ/cmのUV光を照射して硬化させ、さらに真空オーブン中で、約200℃で1時間加熱処理を行った。レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、VK−9700)により得られたマイクロレンズ形状の直径、凹凸構造の高低差、x軸方向の周期、y軸方向の周期は、それぞれ、約30μm、約20μm、約35μm、約30μmであった。上述と同様の方法で光起電装置を作製し、短絡電流密度差と変換効率を測定した結果、ΔJscは0.81mA/cmであり、変換効率は2.7%向上した。
【0060】
この光起電装置を屋外に1ヵ月間設置した後、上記同様の評価を行ったが、Jscおよび変換効率の低下は見られなかった。
【0061】
(実施例3)
希土類を有する半導体粒子の調製を、以下のように実施した以外は実施例1と同様に実施した。
所定量の酢酸亜鉛二水和物(Zn(CHCOO)・2HO)と酢酸エルビウムx水和物(Er(CHCOO)・xHO)をエタノールに分散させた。酢酸亜鉛二水和物と酢酸エルビウムx水和物の各々の量が、Zn2+:Er3+重量%比で95:5になるように調整した。この溶液を火炎法にて燃焼・乾燥させて、目的の半導体粒子を合成した。燃焼時の炉の温度は1100℃とし、キャリアガスには酸素を使用した。得られた粒子の粒度分布測定より、この粒子の平均粒径は約20nm、蛍光分光光度計により、近赤外線照射下520〜540nmの範囲に発光極大を有する発光極大とする発光を観測した。また、複合粒子中の希土類元素の含有量は約2重量%、複合粒子の平均粒径は約65nmであった。
なお、樹脂組成物を調製した後、複合粒子の体積分率を求めたところ51vol%であった。
【0062】
評価
(1)透明性と線膨張係数
得られた樹脂組成物を所定の温度(60〜80℃)のオーブンで加熱し、ガラス板上に作成した厚み0.15mmの枠内に注入し、上部よりガラス板をのせ、枠内に樹脂組成物を充填した。ガラス板に挟んだ樹脂組成物に、両面から約500mJ/cmのUV光を照射して硬化させ、ガラスからシートを剥離した。得られたシートを、それぞれ、真空オーブン中で、約100℃で3時間加熱後、さらに約275℃で3時間加熱して、シート状サンプルを得た。得られたシート状サンプルの厚みをマイクロメーターで測定した結果、119μmであった。
上記シート状サンプルを熱応力歪測定装置(セイコー電子(株)製、TMA/SS120C型)を用いて、窒素の存在下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から400℃まで上昇させて20分間保持し、30℃〜230℃の時の値を測定して求めた。荷重を5gにし、引張モードで測定を行った結果、平均線膨張係数は、39ppm/℃であった。
また、上記シート状サンプルに関してヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて測定した結果、ヘイズは1.2であり、分光光度計((株)島津製作所製、UV−2400PC)で平行光線透過率を測定した結果、平行光線透過率は88%であった。肉眼で見ても、非常に透明なシートであることが確認できた。
【0063】
(2)発電効率
結晶系シリコン太陽電池用カバーガラス8の平滑面側の表面に、得られた樹脂組成物を実施例2と同様に市販のインクジェット(静電方式)を用いてマイクロレンズ形状に塗布した。両面から約500mJ/cmのUV光を照射して硬化させ、さらに真空オーブン中で、約200℃で1時間加熱処理を行った。レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、VK−9700)により得られたマイクロレンズ形状の直径、凹凸構造の高低差、x軸方向の周期、y軸方向の周期は、それぞれ、約30μm、約20μm、約35μm、約30μmであった。上述と同様の方法で光起電装置を作製し、短絡電流密度差と変換効率を測定した結果、ΔJscは0.50mA/cmであり、変換効率は1.6%向上した。
【0064】
この光起電装置を屋外に1ヵ月間設置した後、上記同様の評価を行ったが、Jscおよび変換効率の低下は見られなかった。
【0065】
(比較例1)
希土類を有する半導体粒子の周囲を無機化合物の粒子を被覆せず複合粒子としなかった以外は、実施例1と同様にした。
なお、樹脂組成物を調製した後、半導体粒子の体積分率を求めたところ48vol%であった。
【0066】
評価
(1)透明性と線膨張係数
得られた樹脂組成物を所定の温度(60〜80℃)のオーブンで加熱し、ガラス板上に作成した厚み0.15mmの枠内に注入し、上部よりガラス板をのせ、枠内に樹脂組成物を充填した。ガラス板に挟んだ樹脂組成物に、両面から約500mJ/cmのUV光を照射して硬化させ、ガラスからシートを剥離した。得られたシートを、それぞれ、真空オーブン中で、約100℃で3時間加熱後、さらに約275℃で3時間加熱して、シート状サンプルを得た。得られたシート状サンプルの厚みをマイクロメーターで測定した結果、141μmであった。
上記シート状サンプルを熱応力歪測定装置(セイコー電子(株)製、TMA/SS120C型)を用いて、窒素の存在下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から400℃まで上昇させて20分間保持し、30℃〜230℃の時の値を測定して求めた。荷重を5gにし、引張モードで測定を行った結果、平均線膨張係数は、39ppm/℃であった。
また、上記シート状サンプルに関してヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて測定した結果、ヘイズは10.7であり、分光光度計((株)島津製作所製、UV−2400PC)で平行光線透過率を測定した結果、平行光線透過率は40%であった。肉眼で見ても、明らかに白濁したシートであることが確認された。
【0067】
(2)発電効率
結晶系シリコン太陽電池用カバーガラスの平滑面側の表面に、得られた樹脂組成物を、実施例1と同様にスピンコーターを用いて乾燥後の厚みが約20μmとなるように塗布した。両面から約500mJ/cmのUV光を照射して硬化させ、さらに真空オーブン中で、約200℃で1時間加熱処理を行った。実施例1と同様の方法で光起電装置を作製し、短絡電流密度差と変換効率を測定した結果、変換効率は全く向上しなかった。
【0068】
この光起電装置を屋外に1ヵ月間設置した後、上記同様の評価を行ったところJscおよび変換効率の低下が見られた。
【0069】
以上の結果より、実施例1〜3の複合粒子を用いた樹脂組成物を波長変換層に用いた場合、透明性に優れている結果より半導体粒子同士の凝集を抑制することが示唆された。また、この波長変換層を用いた光起電装置を1ヵ月間設置した後の変換効率に変化が無かったことより耐久性にも優れていることが示された。
【符号の説明】
【0070】
1 光起電装置
2 光起電層
3 波長変換層
4 複合粒子
5 硬化性樹脂
6 希土類を有する半導体粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素を有する半導体粒子と、前記半導体粒子と異なる無機化合物の粒子とを含むことを特徴とする複合粒子。
【請求項2】
前記希土類元素は、ユーロピウム(Eu)、イットリビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)からなる群より選択される1以上の元素である請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
前記希土類元素の含有量は、前記複合粒子全体の0.01〜20重量%である請求項1または2に記載の複合粒子。
【請求項4】
前記半導体粒子は、酸化亜鉛(ZnO)である請求項1ないし3のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項5】
前記無機化合物の粒子は、酸化物の粒子である請求項1ないし4のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項6】
前記酸化物の粒子は、シリカ(SiO)およびジルコニア(ZrO)の少なくとも一つの粒子である請求項5に記載の複合粒子。
【請求項7】
前記半導体粒子の含有量は、前記複合粒子全体の10〜80体積%である請求項1ないし6のいずれかに記載の複合粒子。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の複合粒子と、硬化性樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
前記複合粒子の含有量は、前記樹脂組成物全体の30〜70体積%である請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項8または9に記載の樹脂組成物で構成された層を硬化させてなることを特徴とする波長変換層。
【請求項11】
請求項10に記載の波長変換層を有することを特徴とする光起電装置。
【請求項12】
前記波長変換層が、光起電装置の面内に凹凸構造を有する請求項11に記載の光起電装置。
【請求項13】
前記凹凸構造の高低差が300nm〜100μmである請求項12に記載の光起電装置。
【請求項14】
前記凹凸構造の面内周期が300nm〜50μmである請求項12または13に記載の光起電装置。
【請求項15】
前記凹凸構造にさらに小さな微細凹凸形状を有する請求項12ないし14のいずれかに記載の光起電装置。
【請求項16】
前記凹凸構造が2種以上の異なる波長変換層を積層してなる請求項12ないし15のいずれかに記載の光起電装置。
【請求項17】
前記波長変換層が、インクジェットにより形成される請求項11ないし16のいずれかに記載の光起電装置。
【請求項18】
前記インクジェットがピエゾ方式のインクジェットである請求項17に記載の光起電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−49207(P2011−49207A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194067(P2009−194067)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】