説明

複合繊維による吸音材

【課題】効率の改善された吸音(音響減衰)材を提供する。
【解決手段】吸音材11は、互いにゆるく繋がる繊維から成る基礎材料からなる。繊維は、互いに最小限で絡み合うか、または互いに接着される。この基礎材料は、ある領域において凝縮され、そこでは繊維は、より高い度合いで互いに再配向するかまたは絡み合うか、あるいは互いに接着される。結果的に、異なる密度の領域17および18が形成され、したがって、所望により、吸音材11の音響減衰効果を増強しそして調整することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体が繊維からなる、吸音材(音響減衰または吸収材)に関する。特に、本発明は空間的に構成された、すなわち単に平面ではない、吸音(減衰または吸収)材に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に多様な材料、例えばミネラルウール(鉱質綿)、グラスウールまたは、天然あるいは合成繊維からなる吸音材料が知られている。いずれの場合においても、吸音(減衰)材料は音響エネルギーを吸収する、すなわち、音波の振動エネルギーを摩擦による熱エネルギーに変えることで、音波を減衰することとなる。そのようにして、反響の形成および定常波の形成が防止されることとなる。
【0003】
不整(non-ordered)繊維による繊維材料は、高い音響減衰効果を示す。その際、特許文献1から知られるように、フェルト本体を比較的多様性を持つように設計することは、原則として、可能である。この文献は、例えばサニタリー材料のような、衛生用品に関する。そのような材料を生産するために、不織布の繊維ウェブは、帯状の区域に沿って異なる強さで針穿刺されるので、より高い繊維密度を示す細長い平行に配向した領域が材料に形成される。そのような材料が医療および看護の分野以外で使用されうる範囲は制限されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2034072号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は効率の改善された吸音(音響減衰)材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸音材は、不規則(random)繊維による不織布本体、すなわち、不整(non-ordered)繊維からなる本体を構成する。この本体において、繊維は、幾つかの領域で互いに平行に配向されていてもよい。繊維は、絡み合って(編成されて)おり、絡み合いの程度は少なくとも2つの異なる領域において異なっている。不整繊維不織布の本体は、例えば、ゆるい繊維ウェブまたは不織布(例えばポリエステル)を、特定の領域で機械的にそしてまた熱の作用によって、凝縮して製作されうる。そのようにして、空間的に様々な密度を示す吸音材が製作される。本件の場合、本発明は、費用効果のあるこの吸音材を製作する手段を提供する。
【0007】
吸音材は、マットの形で提供されうる。マットは、例えば、ガラス繊維ウールで、またはミネラルウールで、または他の材料でも製作されうる。繊維ウェブのマットの繊維は、たがいに隣り合い、ゆるくしかしなお一体に保持されるよう配向されるのが好ましい。これは、少なくともマットのゆるい結合が存在するように、繊維が互いに絡み合うことで達成できる。繊維は、平行に整列してあってもよく、またはクロス積層工程によって、層内で交差重畳するよう配列されてもよい。
【0008】
例えば、繊維ウェブは、始めカーディング法またはスパンボンド法の工程を用いて作成されうるが、これら自体は知られている。領域的な凝縮により、ゆるい繊維ウェブは領域がつくれる所望の状態にされ、そこでは、繊維の絡み合う程度は、残りの本体または残りのマットより大きい。絡み合いが増強された繊維は、墳流水(water jets)または同様の技術による凝縮によって、例えば、フェルト針を用いる機械的穿刺によって、達成できる。それに代えて、例えば熱圧縮によって、局所的な凝縮は、達成されうる。繊維本体を凝縮することによって、凝縮された領域はよりコンパクトになり、凝縮されていない材料よりも、単位体積当たりより多くの絡み合った繊維が計数される。
【0009】
吸音材は、一定の幾何学形状をした不規則繊維不織布本体の形か、あるいは使用前に所望の大きさおよび寸法に切られたマットの形でも、提供されうる。少なくとも2つの繊維の絡み合いの程度を示す、少なくとも2つ、好ましくはそれ以上の領域が存在することがこの吸音材の特性である。
【0010】
異なる程度の繊維の絡み合いを示す領域は、また異なる繊維密度を有することが好ましい。この結果、異なる気孔体積および異なる音響的硬さ(acoustic hardness)の領域が、吸音材に形成されるので、強い音響減衰効果が達成できる。
【0011】
異なった強さの繊維の絡み合いを示す領域は規則的に、あるいは、好ましくは不規則なパターンで配置されるが、この結果、広域スペクトルの音響減衰効果が達成されうる。
【0012】
本発明の吸音材は、均等な繊維で、または異なる繊維でも製作されることができ、例えば、異なる長さおよび/または厚みを有する繊維でも、均等な材料から成る繊維でも、または異なる繊維、すなわち繊維混合物から成る繊維でもよい。必要に応じて、異なる大きさを有する、または異なる材料の繊維を、異なる領域に集中させてもよく、領域に特有の、繊維が絡み合う程度の異なりに加えて、材料の異なる領域をも形成される。
【0013】
好ましくは、繊維が最も少なく絡み合う領域の繊維は、主に一の平面において(または交差した位置において)配向され、そのため、平面の繊維は、選択的に平行方向にまたは異なる方向に配向され、すなわち、それらは一回以上交差するが、最小限にしか絡み合わない。吸音材がマットの形で提供される場合は、繊維は、特に最小の繊維の絡み合い領域においては、主にこのマットの平面にあるのが好ましい。より繊維の絡み合う領域においては、繊維は、この平面と直角をなす方向に割合が増えるように配向されるのが、少なくとも好ましい。この結果、凝縮された領域が構成され、特別の機械的安定性と、特に凝集性が、マットあるいは他の繊維本体に与えられる。
【0014】
繊維の絡み合いが増強された領域は、吸音材のなかで規則正しく、または不規則に、構成された島(islands)として配置される。好ましくは、それらは、帯状の、また望ましくは直線の、領域を形成するのが好ましく、それらは、例えば、マットの横向方向に、および/またはマットの長さ方向に伸びる。さらにまた、それらは、斜めの方向に、例えば対角線方向に伸びてもよい。凝縮された領域は、全てのマット厚を通して、すなわち当該マットの上側から下側に、伸びるのが好ましい。
【0015】
特に有利な実施態様では、吸音材は、少なくとも2層からなり、そこでは異なる繊維の絡み合いの程度を有する領域を備え、これらの2つの領域は、2層において、別々に、例えば、決まった仕方ではなく、配置されることができる。これらの層の中に、凝縮された領域、すなわち、より大きな繊維の絡み合いの程度を有する領域であって、他の層にそれぞれ繋がるもの、を備えることが可能である。例えば、これらの層の凝縮された領域は、針穿刺により、噴射水凝縮または同様な方法により、製作されうる。繊維本体または相当するマットは、層として製作されうる。前述したように、そのような層は、例えば、繊維本体を領域的に凝縮することにより製作される。2以上の層を重畳した後に、それらは、順番に、ある領域が凝縮され、繊維の絡み合いの程度は、ある箇所でまたは領域(区域)で、増えており、そして、その際、層の間に繋がりが確立される。
【0016】
以下、本発明の実施例を説明する。これらの実施例は、相当する図面および従属請求項とともに、本発明の有利な実施態様のさらなる詳細を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】繊維の絡み合いが増強された領域が点在する吸音材の概略斜視図。
【図2】図1の吸音材の生産のための装置の概略斜視原理図。
【図3】部分的に凝縮された領域を有する吸音材の概略斜視原理図。
【図4】帯状の凝縮された領域および隙間を有する、発明に係る吸音材の変形実施態様の概略斜視原理図。
【図5】多層集成体および帯状の凝縮された領域からなる、発明に係る吸音材の別の実施例の概略斜視原理図。
【図6】多層集成体からなる吸音材の変形実施態様の概略斜視原理図。
【図7】本発明の吸音材のための可能な生産工程の原理図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、吸音材11を形成する不規則(ランダム)繊維不織布の本体10を示し、例えば、部屋の、部屋天井または壁の、スピーカー・ボックスまたは他の音響装置の、吸音のためあるいはそれらの音の減衰のために使用できる。不規則繊維不織布の本体10は、平らな、立方体状の本体として、ここでは示されている。しかしながら、当該本体は、それぞれの使用目的に適した形状を有することができる。本実施例では、図2に示すように、不規則繊維不織布の本体10は、連続的に形成されるのが好ましいマット12の部分として記載した。
【0019】
吸音材11は、数えられないほど多数の個々の繊維13、14、15、16で形成され、例えば、1つの均等な材料で、あるいは異なった材料から成ることができる。繊維13〜16は、図1で特に参照符号を付されていない残りの繊維と同様に、全部、または部分的に、ガラス、セラミック、ウール、セルロース、合成材料、一以上のエラストマー、一以上のポリマー等から成ることができる。繊維は、これらの材料のうちの1つのみから成ってもよい。しかしながら、別の挙げた材料から成る、均質な、あるいは不均質な繊維の混成でも可能である
【0020】
繊維13〜16の少なくともいくつかは、金属から、または、金属被覆された非金属材料から成ることもできる。繊維13〜16は、均等な直径、横断面および長さ、または異なった径、および/または異なる横断面、および/または異なる長さであってもよい。
【0021】
繊維13〜16は、繊維ウェブを形成し、それらは、ゆるいが結合力のある配置で互いに位置する。この際、不規則繊維不織布の本体10において、異なる領域が区別されうる。繊維13、14は、最小の繊維の絡み合いによるゆるい領域17にあるが、繊維15、16は、繊維の絡み合いが増強された、圧縮され、より凝縮された領域18に位置する。例えば、領域17は前述のゆるい繊維ウェブにより構成されるが、領域18は圧縮された領域である。いくつかの繊維の絡み合いが増強された領域が、不規則繊維不織布の本体10の中に、例えば領域18に、あるのが好ましく、これらの異なる領域は、規則正しく、または、不規則に構成されおよび/または配置できる。それらは、繊維本体10またはマット12の全ての高さ(図1において、垂直に)を通して延在できる。
【0022】
領域17において、繊維13、14は、不規則繊維不織布の本体10の上側19または下側20と基本的に平行である平面に主に配置され、繊維13、14は、基本的に平行に、すなわち図2で、マット長さ方向21に配向されるのが好ましい。繊維13、14は、例えば、コーミング工程において、平行に揃えられた繊維によるゆるい不織ウェブを製作するための、天然あるいは合成繊維のカーディングにより、マット長さ方向において、配向された追加された繊維と一緒に、繋がっている。図1の繊維本体10を製作するために、このようにして得られたマット12は、処理ステーション22を通される。当該ステーションは、例えば繊維15、16のような繊維の、局所的な絡み合いを増し、したがって繊維の絡み合いの増強された領域18を製作するために、続けて、または選択された時間に、下にあるかまたは通過しているマット12に作用する一以上の部材23、24を備える。部材23、24は、機械的に、あるいは非機械的な仕方でマット12に作用できる。特に、合成繊維の場合、当該部材は、熱源、放射線源、または有機であるか、例えば水などの、無機流体を噴射する部材だけでもよい。それらに代えて、部材23、24は、例えばフェルト針等の機械的工具をも備えることができ、それらがマット12を処理するために使用される。
【0023】
本発明の吸音材11の更なる説明のために、図3が参照される。再び、この吸音材は、当初はマット12であり、繊維13、14はゆるい繊維体においてほとんど平行か、あるいはまた、上側19に基本的に平行に交差した仕方で配向されている。領域18において、当該領域は、例えば、噴射水によりマット12の局所的凝縮によってつくられ、繊維25、26は、上側19に対して水平方向からおよそ垂直な方向に横方向から再配向している。それゆえ、残りの領域17より領域18で、互いに繊維が絡み合う程度はより大きくなる。同時に、この増強された絡み合いには、噴射流凝縮によって例えば作られたため、凝縮効果が付随する。図3および4は、処理工程により、繊維がどのように、領域18において、局所的に、主に水平位置にあるそれらの通常の配向から傾斜あるいは垂直な位置に再配向されたか、について示す。その際、同時に、材料は凝縮される。水平方向(上側19に対し平行)から垂直方向への繊維25、26の再配向(向きかえ)は、同時に、作用を受けた位置、または領域18の、繊維材料の凝縮を意味する。上側19および/または下側20は、それぞれ凝縮された領域18に1つの凹みを有してもよい。
【0024】
マット12がある場所では凝縮され、他の場所では凝縮されない、領域的であるがゆえに、様々な密度構造が空間的な階層全体に構成される。例えば、凝縮された領域18の外側に、極めて低い密度、すなわち、単位体積当たりの繊維量が低い、を示す隙間27(中空空間)を形成することが可能であり、当該隙間の繊維密度は、マット12の残りの繊維ウェブの密度より低い。そのような隙間27は、不規則で、例えば、およそレンズマメ形でありえる。それらの形および配置は、凝縮された領域18の形および配置による。
【0025】
図1または図3の不規則繊維不織布の本体10は、良い音響減衰性を呈する。それは、高い孔隙および空気量をも呈する。吸音材11に入射した音波は、吸音材11を透過し、そこで吸収され、すなわち熱に最終的に変わる。この効果は、好ましくは不規則な領域18の配置により、定常波の形成を抑制し、加えて干渉による大きな周波数スペクトルの消滅を達成できる。そのような干渉は、吸音材の外側と同様に吸音材11の内部で生じることがある。図3に示すように、凝縮された領域18は、材料の表面に好ましくは不規則に配置された凹みによっても構成することができ、当該凹みは入射した音響エネルギーのある程度の割合を反射し、そして共に干渉の解消に寄与する。
【0026】
吸音材11は、各種の方法で設計されうる。これまで説明した実施態様の領域18は、例えば長方形、四角形、円型またはその他の輪郭を有する局所的な島により構成されているが、図4で示すように帯状でもよい。この帯は、一貫するか変化する幅を有することができる。この帯は1つの均等な幅を有するか、異なる幅を有していてよい。
【0027】
図4のような吸音材11は、繊維の絡み合いが増強された、いくつかの領域18、28、29を有し、これらのうちの3つが示されている。これらの領域は、例えば図2のマット12の横向きの方向に沿って(マット長さ方向21に対し直角に)、または当該マットの長さ方向に平行して、互いに少し離れて平行して伸びる。領域18、28、29の繊維方向に関しては、図1〜図3に関するコメントが当てはまる。凝縮されない領域17、30、31が、領域18、28、29の間に形成されるが、当該凝縮されない領域は、減衰材料11の量の大部分を占めるのが好ましい。これらの領域において、例えば領域29で、再び、一以上の隙間27が形成されうる。例えば、そのような隙間27は、隣接する凝縮された領域18、28に平行の、長手方向のチャネルのように伸びる。
【0028】
吸音材11において、平行した、帯状の凝縮された領域18、28、29間の距離は、不規則であるように選択されている。図4は、そのような3つの距離L1、L2、L3を示す。これらの距離は、等しくないのが好ましい。理想的には、距離L1、L2、L3、その他のいずれも同一でない。領域18、28、29の幅は互いに同であることが好ましい。
【0029】
図4の吸音材11は、図2の装置で製作することができ、そこで不織繊維材料のマット12は、処理ステーション22を通過する。繊維は、主に横方向において、ゆるく階層化され、特定の高さhに積み重ねられる。マット12の幅は、不規則である。実際上は、これらの幅は、50cmと5メートルとの間である。マット12は連続生産によって得られ、したがって、切断によって所望通り調整されうるのが好ましい。
【0030】
図5は、多層集成体である吸音材11を示す。図示するように、材料は2以上の層32、33を備え、そのうち少なくとも一つ、好ましくはしかしながら、より多くのまたは全てが、一以上の凝縮された領域34、35、36、37を有する。層32の組成に関しては、図4の実施例に関するすべての説明が当てはまる。同様に、図4に関して与えられた説明は層33に当てはまる。従って、図4に関して説明したように、層32、33は最初別々に用意され、続いて重ね合わせられてもよい。この際、上部層32の凝縮された領域34,35は、下層33の凝縮された領域36、37に対して平行に配向されるが、その際それらは、好ましくは、決められたようにずれる必要はない。この結果、上部層32の凝縮された領域34、35の距離は、下層33の凝縮された領域36、37の間の距離と異なっていてもよい。層32、33は、数および位置に関して、凝縮された領域34〜37と異なっていてもよい。
【0031】
必要なだけの数の層が交互に重ねられてよい。必要であれば、凝縮された領域のない層を間に入れることができる。場合によってはすべての追加の層も同様に、層32、33の繋がりが、連続的に凝縮された領域38によって、形成できる。この連続的に凝縮された領域38は、他の凝縮された領域34〜37に平行して、またはそれらと横断方向に伸びる。連続的に凝縮された領域38は、個々の層32、33が互いの上に配置されるように製作されるのが好ましい。例えば、それらは、墳流水による凝縮により、またはこの明細書中で述べた他のいかなる方法による凝縮方法により、製作されうる。図示するように、それらは帯状であるのが好ましい。しかしながら、例えば、丸形、楕円形または長方形であるような、局所的に限定された輪郭を有する連続的に凝縮された領域を製作することも可能である。凝縮された領域38においては、繊維は、上部層32から下層33に移動する。加えてまたはそれに代えて、下層33の繊維が、下層33から上部層32に移動されているかもしれない。再び、その他の凝縮された領域全てにおいてと同様、第1の領域17の周りの材料においてより、凝縮された領域38の繊維の絡み合いの程度はより大きい。領域38の繊維の凝縮または絡み合いは、領域34〜37と同じであってもよい。しかしながら、それは領域34〜37および38の編成および凝縮の程度を、特定の異なるものとすることも可能である。
【0032】
層32、33等の数と同様に、凝縮された領域34〜37および38の数および配置およびそれらの凝縮の程度の結果として、吸音材11の吸振性を広い範囲内で所望のように調整することが可能である。
【0033】
図5の吸音材11は、層32、33内に、すでに説明した隙間27のような隙間を有することができる。加えて、それぞれ他の層の方へ伸びている隙間が、凝縮された領域34、35に、36、37と同様に、構成される。図5は、凝縮された領域35と層33との間のそのような隙間39を示す。そのような隙間は、音響減衰特性を改善できる。凝縮された領域34、35、36、37、38の互いからの距離は、隙間27、39に対する幾何学的な距離と同様に、減衰する音波の半分の波長または半分の波長の倍数の範囲内にあるのが好ましい。例えば、特に200Hzの周波数を減衰する場合、距離は85cmの範囲であればよい。減衰効果の中心が2000Hzである場合、それは8.5cmの範囲の距離を特定すると有利である。より広い振動数スペクトルは、これらの距離を異ならせることによって、カバーすることができる。
【0034】
図6は、本発明の吸音材11の別の実施態様を示し、当該吸音材は少なくとも2つの層32、33を有する。この場合、層32、33は、互いに横断方向に配向される。下層33の凝縮された領域36、37が第一の方向に伸びる一方、上部層(領域34)の凝縮された領域はそれに対し横断方向に配向される。繋がった凝縮された領域38は、領域34に平行に、領域36、37に対して横断方向に、または別々に異なる方向に伸びる。凝縮された領域34および36、同様に37の、両方が相互に交差するため、追加の隙間が吸音材11に構成され、当該隙間は良い意味で吸音効果に影響を及ぼすことができる。層32、33において、凝縮されていない領域17の繊維は互いに平行にも、また互いに交差しても配向できる。
【0035】
多層集成体の実施態様の各々においては、得られた隙間の幾何学的構造およびそれらの相対距離を、減衰すべき周波数に合わせて調整するようにして、その減衰特性を追加的に変化させることができる。
【0036】
層32、33および必要に応じ追加された層は、異なる基礎繊維材料からなるので、空間的な容積区分からみると、結果として異なる質量密度となる。加えて、マットの長さ方向21に横向きに、不織布の繊維ウェブの密度を異ならせることが可能である。
【0037】
図7は、墳流水法による凝縮工程の概略説明図である。再び、マット12は、例えばカーディングのような既知の方法により、必要に応じクロス積層によって、またはスパンボンド織物を製作することによって、製作されている。このマット12は、墳流水凝縮システムのノズル・バー49の下を、マット長さ方向21の方向に移動するが、当該ノズル・バー自体は知られている。ノズル・バー49は、図2に示された部材23、24のうちの1つの部分であってよい。再び、ノズル・バー49は、少なくとも1の、好ましくはしかしながらより多くのノズル群、40、41、42、43および、必要に応じ、さらに多いノズル群をも備える。図7では円によって概略的に象徴されるノズル群40〜43の各々は、直線的に配置されるか、またはアレイにある一群のより小さな噴射孔により個別に構成されうる。これらのノズル群L1、L2、L3間の距離は、互いに同一でないのが好ましい。
【0038】
各ノズル群40〜43は、マット12の表面に突き当たり、そのマットの材料を透過する墳流水の束44、45、46、47を形成する。突き当たる墳流水の束44〜47によって、マット12の繊維は流動化し、当該繊維の向きを変え、同様に絡み合う。これにはマット12の材料の凝縮を伴うので、作業が進行するにつれて、帯状の凝縮された領域18、34、35、36が形成される。ノズル群40〜43の直径およびノズル・バー49上に加えられる水の圧力は、墳流水の束44〜47が繊維を流動化しても繊維の切断または滅失は生じないように、選択される。この際、個々の墳流水の束44〜47の間に、マット12の凝縮が生じない少なくとも一つの隙間があることが重要である。そうすれば、そこでは、領域17を形成するために、不織布の密度の増加はない。マット12の凝縮は、墳流水の束44〜47の動作領域だけに生じる。さらにまた、一時的に個々の墳流水の束44〜47、例えば墳流水の束45、を中断する処置がとられてもよい。これは、墳流水の束45を中断するために、その領域に押し出されるバッフルにより達成されうる。これは、ノズル・バー49の下のマット12の前方への移動に伴い、帯状の凝縮された領域はマットの全高さを通してつくられ、当該領域はマット長さ方向21において中断している、ことを意味する。
【0039】
凝縮効果の起動および停止は、一時的に個々のノズル群40〜43を覆うことによってだけでなく、全てのノズル・バー、例えば部材23、24、その他を、起動および停止することにより達成される。
【0040】
この方法は、特に、ポリエステル繊維のマット12に適している。しかしながら、特定の繊維材料に限定されない。加えて、吸音材11の製造は、墳流水凝縮によってだけでなく、マット12を局所的に凝縮する他の方法によっても可能である。機械的針穿刺か熱凝縮を使用する方法を使用できる。本質的な事項は、様々な空間的な密度を呈する領域を、目標に適うように吸音材11に製作することである。
【0041】
本発明の吸音材11は、互いにゆるく繋がる繊維から成る基礎材料から成る。例えば、繊維は、互いに最小限で絡み合うかまたは、互いに接着されてもいる。この基礎材料は、ある領域において凝縮され、そこでは繊維は、より高い度合いで互いに再配向するかまたは絡み合うか、あるいは互いに接着される。結果的に、異なる密度の領域17および18が形成され、したがって、所望により、吸音材の音響減衰効果を増強しそして調整することが可能になる。
【符号の説明】
【0042】
10 不規則(random)繊維不織布の本体
11 吸音(減衰)材
12 マット
13、14、15、16、25、26 繊維
17 少ない繊維が絡み合った領域
18 多くの繊維が絡み合った領域
19 上側
20 下側
21 マット長さ方向
22 処理ステーション
23、24 部材
27、39 隙間
28、29、34、35、36、37 多くの繊維が絡み合った線状領域
30、31 少ない繊維が絡み合った線状領域
32 上層
33 下層
38 層32、33を横断する凝縮された領域
40 第1のノズル群
41 第2のノズル群
42 第3のノズル群
43 第4のノズル群
44 第1の墳流水の束
45 第2の墳流水の束
46 第3の墳流水の束
47 第4の墳流水の束
49 ノズル・バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絡み合った繊維(13、14、15、16)からなり、異なる程度の繊維の絡み合いを示す少なくとも2つの空間的な領域(17、18、28、29)を備えた、不規則繊維不織布の本体(10)
からなる吸音材(11)。
【請求項2】
異なる程度の繊維の絡み合いを示す2つの前記領域(17、18、28、29)は、異なる繊維密度を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
空間的な前記領域(17、18、28、29)は、不規則なパターンで配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の吸音材。
【請求項4】
前記領域(17)のより低い程度の絡み合いを示す前記繊維は、主に一平面において配向され、より大きな程度の絡み合いを示す前記領域(18、28、29)では、前記繊維のより多くの部分は当該平面と直角な方向に配向される、ことを特徴とする請求項1に記載の吸音材。
【請求項5】
より大きな程度の絡み合いを示す前記領域(18、28、29)は、帯状の形の領域を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の吸音材。
【請求項6】
前記領域(18、28、29)は、互いに異なる距離におよび互いに平行に配置される、ことを特徴とする請求項5に記載の吸音材。
【請求項7】
不規則繊維不織布の前記本体(10)は、絡み合った繊維(25、26)からなるいくつかの層(32、33)を備え、当該層の少なくとも一の層(32)は、異なる絡み合いの程度を示す領域(17、34、35)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の吸音材。
【請求項8】
前記層(32、33)のうちの少なくとも2つは異なる絡み合いの程度を示す前記領域(17、34、35、36、37)を有し、前記領域は別々に配置される、ことを特徴とする請求項7に記載の吸音材。
【請求項9】
前記層(32、33)の前記領域(17、34、35、36、37)は、帯状であり、互いに交差するように重畳される、ことを特徴とする請求項8に記載の吸音材。
【請求項10】
前記繊維本体(10)は、繊維がまばらかまたは周囲の前記繊維本体(10)と比べかなり低い繊維密度を有する隙間(27、39)を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の吸音材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−197672(P2011−197672A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−55249(P2011−55249)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(598132646)グロツ・ベッケルト コマンディートゲゼルシャフト (77)
【Fターム(参考)】