説明

複合装置

【課題】ビデオカセットをディスクにダビングする時間および手間を抑えることができる複合装置を提供する。
【解決手段】ビデオカセット40を再生するビデオカセットドライブ4と、ビデオカセットドライブ4の出力信号を処理する信号処理部5と、信号処理部5の出力信号である映像音声信号51、インデックス信号52を記録するHDD6を備える。HDD6は、ユーザ使用領域60の他に自動バックアップ領域71を備える。ビデオカセット40の再生のみ指示されたときは、制御部8は、インデックス信号52が出力された間の区間に区分して、区間データ711〜71Nが記録する。ビデオカセット40からHDD6へのダビングの指示がされたときは、ビデオカセット40ですでに再生した区間データ711〜71Nがあれば、これをユーザ使用領域60にロードすると共に、その区間についてはビデオカセット40を早送りしてスキップする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオカセットに録画された映像を再生すると共に、この再生された映像信号をランダムアクセス可能な記録媒体へダビングする複合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、VHS方式のビデオカセットに記録されている映像信号を再生することができるビデオカセットドライブ、および光ディスク等のランダムアクセス可能な記録媒体に対して、映像信号の記録/再生を行うディスクドライブを備えた複合装置があった。一般的な複合装置は、ビデオカセットに記録されている映像信号をランダムアクセス可能な記録媒体にダビングするダビング機能を有している。また、このダビングにかかる操作を簡単にするための提案もなされている(特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1では、記録媒体に対して記録および再生を行う記録/再生手段を2つ備え、一方の記録再生手段が対応する記録媒体に記録されている映像の再生中にダビング指示を受け付けると、他方の記録/再生手段が一方の記録/再生手段において再生されている映像を対応する記録媒体にダビングする複合装置が開示されている。これにより、ダビング時に、再生する記録媒体と録画する記録媒体を選択する必要がない。
【特許文献1】特開2005−191931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置ではダビングの指示を受けない限り録画されないから、以前にビデオカセットを再生していても、ディスクにダビングをするために改めてこの複合装置でダビングしなければならない問題があった。
【0005】
また、このような複合装置のユーザは、ビデオカセットに記録された映像信号を全部ダビングするためには、全部通してダビングするような時間がかかる処理をするしかない問題があった。
【0006】
このダビングしている間は、この複合装置のビデオカセットドライブ、ディスクドライブいずれも使用中であり、この装置の別の動作(例えば、ビデオカセットの再生や、ディスクドライブを用いた録画など)をほとんど何もすることができない。そこで、ビデオカセットをそのまま再生するだけの方が、手っ取り早く、早送り、早戻し等の操作ができるから、ハードディスクに予めダビングしない方が却って便利である場合も多かった。
【0007】
このように、ダビング時の利便性がよくない問題があった。この問題から派生する副次的な問題として、せっかくハードディスクによる記録部を備えた複合装置を持っていてもビデオカセットを廃棄できない問題や、このような使用形態ではビデオカセットの映像が劣化していく問題があった。さらに、この処理に時間がかかるダビング操作をユーザが能動的にしない限り、ビデオテープが損傷した場合にはこの損傷したビデオテープを復旧できない問題があった。
【0008】
このような問題に鑑み、本発明は、ビデオカセットに記録されている映像信号をディスクにダビングする時間および手間を抑えることができる複合装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。
【0010】
(1) ビデオカセットに記録されている映像信号を読み取り、出力するビデオカセットドライブと、記録媒体の任意のアドレスにランダムアクセスして前記映像信号を記録する記録部と、これらを制御する制御手段と、を備えた複合装置において、
前記記録部は、その記録媒体の記録領域として、前記ビデオカセットに記録されている映像信号を前記記録媒体に記録する旨のダビング指示を受けて前記映像信号を記録するユーザ使用領域と、前記ダビング指示を受けずに前記ビデオカセットドライブにより前記映像信号が再生されているときに前記映像信号を自動的に記録するバックアップ領域を有し、
前記制御部は、
前記映像信号を前記バックアップ領域に記録する場合に、前記映像信号を、予め定めたタイミングで映像信号の時間軸の区間毎に分割して前記記録媒体に記録すると共に、その区間の特性情報である区間情報をあわせて前記記録部に記録する分割記録手段と、
前記ダビング指示を受けた場合に、前記バックアップ領域に記録された前記区間情報を参照して、前記ビデオカセットが出力している映像信号と、前記バックアップ領域に記録されている映像信号と、が対応する区間を検出するバックアップ記録データ検出手段と、
前記ダビング指示を受けた場合に、バックアップ記録データ検出手段が前記対応する区間を検出したときには、前記バックアップ領域のデータを前記ユーザ使用領域にロードさせると共に、この区間について前記ビデオカセットを早送りする制御を行うダビングスキップ制御手段と、を有する。
【0011】
この構成では、記録部はユーザ使用領域とバックアップ領域を有している。前記映像信号を前記ディスクに記録する指示を受けずに前記ビデオカセットドライブにより前記映像信号が再生されているときは、記録部は、前記映像信号をバックアップ領域に自動的に記録するから、一度ビデオカセットドライブで再生すれば、バックアップ領域に記録された状態になる。これにより、ユーザがダビング操作を能動的にしなくとも、ビデオカセットが損傷した場合にはビデオカセットに記録された映像信号を復旧することができる。ビデオカセットのコンテンツを予め全部通してダビングするような時間のかかる処理をしなくとも、一度再生した部分については早送り制御手段がビデオカセットを早送りするのでダビングの時間を短縮できる。
【0012】
また、前記記録部は、前記映像信号を、区間毎に分割してその区間の特性情報である区間情報と共に記録している。このように区分して記録するので、すでに前記バックアップ領域に記録されている部分をこの区間単位で検出することができる。また、バックアップ記録データ検出手段および制御手段により、ビデオカセットが出力している映像信号と、すでに前記バックアップ領域に記録されている映像信号が対応する区間が検出された場合には、前記バックアップ領域のデータを前記ユーザ使用領域にロードさせることで、ビデオカセットをスキップすることができるのでダビングの時間を短縮できる。したがって、ビデオカセットを記録部にダビングする時間および手間を抑えることができる。
【0013】
なお、「予め定めたタイミング」とは、例えば、予め定めた時間間隔毎、または音声入力方式がステレオ、モノラル間で変わるとき、または記録部の使用者がビデオカセットの映像信号にインデックスを付したタイミングなどをいう。
また、この構成の記録媒体としては、ランダムアクセス可能であり映像データを記録できる記録媒体であれば、持ち運びできる光ディスク、固体メモリのみならず、ハードディスクも使用することができる。
【0014】
また、記録部が区間毎に映像信号を区分するタイミングは、ビデオカセットに記録されたインデックス信号や、所定間隔毎、音声入力方式がステレオ、モノラル間で変わる時などを基準にすることができる。さらに、ビデオカセットとの対応付けは、ビデオカセットに記録されたインデックス信号や、ビデオカセットの識別情報と現在の再生位置の情報を記録部に記録したり、後述の(3)で構成したりすることができる。
【0015】
(2) 前記制御部は、
前記ビデオカセットを再生した場合には、この再生したビデオカセットに関係する前記バックアップ領域に記録した映像信号の記録時期を更新する記録時期更新手段と、
前記バックアップ領域がいっぱいになった場合に新たに前記バックアップ領域に前記映像信号を記録するときには、前記記録時期が最も古いものから順に、前記映像信号を削除するバックアップ領域整理手段と、
前記ユーザ使用領域がいっぱいになった場合には、前記バックアップ領域整理手段により前記バックアップ領域を縮小するバックアップ領域縮小手段と、を有する。
【0016】
この構成では、記録時期更新手段、バックアップ領域整理手段により、前記バックアップ領域がいっぱいになった場合に、使用されておらず、かつ時期が古いものから順にバックアップ領域を整理することができる。また、前記ユーザ使用領域がいっぱいになった場合には、前記バックアップ領域整理手段により前記バックアップ領域を縮小するので、記録部上の全量をユーザ使用領域として使い切ることができる。
【0017】
なお、バックアップ領域は、その大きさを動的に変動させ、記録部のうち、ユーザ使用領域を除いた領域全体とすることも可能である。
【0018】
(3) 前記ビデオカセットドライブは、前記ビデオカセットのケース表面にビデオカセットの特性情報およびビデオカセット上の再生位置の情報を記録し、これらの情報を更新すると共に、これらの情報を読み取る、ビデオカセット特性アクセス手段を有し、
前記バックアップ記録データ検出手段は、前記ビデオカセットの特性情報、再生位置の情報と、区間情報と、を参照する。
【0019】
この構成では、ビデオカセットの特性情報およびビデオカセット上の再生位置の情報をビデオカセットのケース表面に記録するので、インデックス信号のように予めビデオカセットに記録されている必要がない。また、再生するビデオカセットがこれをマウントした複合装置で記録したものでなければならないといった複合装置間の互換性の問題も回避できる。したがって、他の装置で録画されたビデオカセットでも利用できるから、ビデオカセットドライブがたとえ再生専用であっても使用することができる。また、この構成では、ビデオカセットドライブが、ビデオカセットの特性情報を記録するから、ユーザがビデオカセットを識別するためにわざわざ情報を入力する必要がない。ビデオカセットを取り出して、再度マウントする場合でも同様である。また、ビデオカセットのケース表面にビデオカセット上の再生位置の情報を記録しているので、記録部の再生位置の情報がメモリから消えた場合でも、ビデオカセットを最初に巻き戻してこの再生位置をメモリに記録しなくとも、再生位置の情報を取得できる。
【0020】
ビデオカセットのケース表面に記録する手段としては、例えば、熱可逆性の染料で何度も記録、消去が可能なバーコードや2次元状に記録したコードを記録したシールや、識別コードシールICタグやカードメモリ等で構成することができる。
【0021】
(4) 前記制御部は、前記記録部に記録された映像の各種操作を誘導する誘導表示を、前記映像を表示する表示器に出力する項目表示手段を備え、
前記項目表示手段は、前記バックアップ領域に記録された映像信号の項目を前記誘導表示に表示しない。
【0022】
この構成では、項目表示手段を備え、項目表示手段は、前記バックアップ領域に記録された映像信号の項目を前記誘導表示に表示しない。これにより、前記分割記録部によりユーザが意図せず録画された動画の項目が表立ってこの動画選択画面に表示されてしまったり、整理されていないデータがこの動画選択画面に溜まってしまったりするという使い勝手の悪さを解消できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ビデオカセットを記録部にダビングする時間および手間を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1を用いて、本実施形態の複合装置の構成について説明する。本実施形態の複合装置は、ビデオ一体型ハードディスクレコーダ(以下、単に「ハードディスクレコーダ」と記す)である。図1は、このハードディスクレコーダのブロック図の一部を抜粋した図である。
【0025】
ビデオカセットドライブ4はマウントしたVHS方式のビデオテープ41に記録されている映像音声信号を読み取る機能を備えており、信号処理部5に映像および音声の信号である映像音声信号41と、ビデオカセット40に記録されたインデックス信号42を出力する。
【0026】
ビデオカセット40には、ビデオカセット40のインデックスとなる複数のインデックス信号が予め定めたタイミングで記録されている。この予め定めたタイミングとは、所定間隔毎、または音声入力方式がステレオ、モノラル間で変わるとき、またはハードディスクレコーダ1のユーザがセット40のテープの特定の位置にインデックスを付したタイミングである。このインデックス信号がビデオカセット40に記録されているのは、ビデオカセット40に記録された映像信号を識別するため、または、ビデオカセット40上のテープの位置、時刻を識別するためである。
【0027】
なお、ビデオカセットドライブ4は、ビデオテープ41に映像音声信号を記録する機能を付加的に備えていても良い。
【0028】
信号処理部5はA/D変換回路、エンコーダ等を備え、ビデオカセットドライブ4から出力される映像音声信号41、インデックス信号42をA/D変換してエンコードし、ハードディスクドライブ6(「HDD6」と略す)に対してディジタル化した映像音声信号51、インデックス信号52を出力する。また、信号処理部5からは、図示しないテレビモニタへ出力する映像信号、および図示しないスピーカへ出力する音声信号がそれぞれ出力される。また、図示しないチューナで選局されたチャンネルで放映される映像音声信号を処理して、HDD6に出力しても良い。
【0029】
ハードディスクドライブ6は、記録媒体であるハードディスク7(HD7と略す)にデータを記憶する手段を備え、信号処理部5で出力された映像音声信号51を記録する。
【0030】
HD7は、ユーザが記録、再生可能なユーザ使用領域70の他に、ユーザが通常の動作では操作できない(例えば、ある設定操作によりロックを解除しない限り操作できない)自動バックアップ領域71を備えている。
自動バックアップ領域71には、制御部8の制御により、映像音声信号51を自動的に記録する。その際、映像音声信号51は、インデックス信号52が出力される時刻で区分した区間データ711〜71N(Nは整数)としてバックアップされる。
【0031】
なお、HDD6は、図示しないチューナで選局されたチャンネルで放映される映像音声信号を、信号処理部5を介してHD7に記録してもよい。また、本実施形態の複合装置では、HDD6、HD7を例として記録部を説明したが、ランダムアクセス可能な記録媒体、例えば、光ディスク、固体メモリに記録する記録装置のいずれをも使用することができる。
【0032】
制御部8はCPUを搭載したマイクロコンピュータから構成されハードディスクレコーダ1全体の制御を行う。操作部9はハードディスクレコーダ1本体のフロントパネルに設けられている。また、操作部9は、ビデオカセット40とHD7に対して、再生・記録・停止・早送り・早戻し等の各種動作を行わせるためのキーや電源スイッチを備えている。表示部10は例えば液晶表示部により構成され、ハードディスクレコーダの動作状態や時間等を表示する。記憶部11は、ROM、各種データが一時的に記憶されるRAM等のメモリから構成され、制御部8に備わるマイコンの動作プログラムや制御パラメータなどが記録されている。
【0033】
次に、図2のフロー図を用いて、操作部9によりビデオカセット40の再生が指示されたときに制御部8が行う処理について説明する。
【0034】
図2のS1では、HD7の未使用領域が残っているのか判断する。この未使用領域が残っている場合には、YとなりS2に進む。そうでない場合にはNとなりS3に進む。
【0035】
S2では、自動バックアップ領域71の記録開始位置をHD7の未使用領域の中に設定する。その後S5に進む。
S3では、自動バックアップ領域71の使用済み領域が存在するか判断する。自動バックアップ領域71が使用されていればYとなり、S4に進む。自動バックアップ領域71が使用されていなければNとなり、S6に進む。S3では、HD7の未使用領域がない場合にS1から分岐する処理である。この場合、ユーザの断りなくユーザ領域70を整理できないから、映像音声信号51をさらに自動バックアップするには、自動バックアップ領域71を整理するしかない。そこで、S3では、この自動バックアップ領域71の使用済み領域が存在するか判断する。
【0036】
S4では、新たにビデオカセット40から出力されて信号処理部5で処理された映像音声信号51を優先的にバックアップするため、この自動バックアップ領域71を整理する。具体的には、この領域の中に記録された区間データ711〜71Nのうち、記録された時刻が古いものを消去する。これにより、自動バックアップ領域71を整理して、ビデオカセット40を再生時にバックアップするための領域を自動バックアップ領域71に確保する。
【0037】
ただし、S4の処理を行う前に、図2とは別のフローにより、現在マウントされているビデオカセット40に関係する区間データ711〜71Nが記録された時刻をすべて更新しておく。例えば、区間データ711〜71Nと共にカセットの識別コードを記録しておき、そのコードが入力された場合には、これに関連する区間データ711〜71Nが記録された時刻を更新する。これにより、単に古いだけではS4では消去されず、新たに使用されれば記録された時刻が更新されるから、区間データ711〜71Nのうち古いだけでなく使用されていない区間データが消去される。
【0038】
S5では、S2で設定し、またはS4で整理した自動バックアップ領域71を用いて、ビデオカセット40を再生すると共に、ビデオカセット40から出力され信号処理部5で変換された映像音声信号51、インデックス信号52を自動バックアップ領域71に自動的に記録する。
【0039】
また、この映像音声信号51、インデックス信号52の記録と同時に、自動バックアップ領域71には、ビデオカセット40の識別情報と、テープ上の位置情報が記録される。
【0040】
ただし、このS5ではビデオカセット40が再生されていれば自動バックアップ領域71に常に映像音声信号51を記録するのではなく、自動バックアップ領域71の区間データ711〜71Nを参照して、すでに記録されている区間データがある場合には、自動バックアップ領域71に記録しない。
【0041】
S5では、このように自動的にバックアップされるので、再生後ビデオカセットが破損したときでも、すでにビデオカセットを再生した部分については、動画データを取得できる。また、このようにバックアップされる区間データ711〜71Nの項目は、前述の通り、通常の使用状態では、テレビモニタ上で動画を選択する動画選択画面には出力されない。これにより、使い勝手の悪さ、例えば、ユーザが意図せず録画された動画の項目が表立ってこの動画選択画面に表示されたり、整理されていないデータがこの動画選択画面に溜まっていき、ユーザ自ら選択した項目が埋もれてしまうというようなことを解消できる。
【0042】
S6は、S1、S3で判断した結果、HD7がユーザ使用領域60で満たされ、HD7の未使用領域がない場合にS3から分岐した処理である。S6では、ユーザ使用領域60をユーザが整理しない限りこれ以上の録画をすることができないから、録画時間が限界に達している場合の処理を行う。例えば、「録画スペースがありません。自動バックアップはできません。」という表示や、自動バックアップ領域71への自動バックアップの禁止、ビデオカセット40からHD7へのダビングの禁止といった処理を行う。
【0043】
S7では、自動バックアップ領域71にバックアップすることなく、ビデオカセット40の再生のみを行う。その間、表示部10または図示しないテレビモニタには前述した「録画スペースがありません。自動バックアップはできません。」といった表示を継続する。
S8では、ビデオカセット40の再生が終了したか判断する。ビデオカセット40の再生が終了した場合にはYとなり、図2のフローは終了する。ビデオカセット40の再生が終了していない場合にはNとなりS1に戻り、この再生が終了するまで、S1〜S8のフローを繰り返す。
【0044】
以上では、ユーザ使用領域70、自動バックアップ領域71の大きさを可変としていたが、予めこれらの領域の大きさを固定しても良い。この場合には、S3、S4の動作を行なわず、S1のNの場合に直ちにS6に移動する。
【0045】
次に、図3、図4のフロー図を用いて、操作部9からビデオカセット40のコンテンツをHD7にダビングする指示を受けた場合に、制御部8が行う処理について説明する。図3のフロー図はこの処理のメインフロー図であり、図4はこの処理のサブフロー図である。この処理は基本的には図2の処理と同じである。図3のS11〜S14、S16、S18の処理はそれぞれ図2のS1〜S4、S6、S8の処理に対応している。図3のフローが図2と異なる点はS15、S17にあり、この相違点以外は、上述した図2の説明を準用する。
【0046】
図3のS15では、図2のS5と異なり、制御部8は、映像音声信号51、インデックス信号52をユーザ使用領域60に記録する指示をHDD6に対して行う。前述のS3ではこれらの映像音声信号51、インデックス信号52を自動バックアップ領域71に記録する。また、S15では、図4のサブフローに分岐する点が異なる。図3のS17では、S7と異なり、ユーザがユーザ使用領域60を整理した後でダビングをするのに便利なように、ビデオカセット40の再生を停止する処理を行う。
【0047】
図4のサブフローについて説明する。なお、このサブフローの前提として、本実施形態のハードディスクレコーダ1にマウントするビデオカセット40として、最初にマウントするときには、他の記録部で予めコンテンツが記録されたものを用いても良いが、制御部8は、ビデオカセット40をその後ビデオカセット40の内容が他の装置によって書き換えられていないものとして取り扱う。
【0048】
S21で、ビデオカセット40を再生している映像音声信号41と対応する自動バックアップ領域71の区間データ711〜71Nがあるかどうか判断する。前述の図2のフロー図で説明した通り、ビデオカセット40を再生すると、ダビングの指示を受けなくともインデックス信号52で区切られた区間毎に区分けして区間データ711〜71Nが自動的にバックアップされている。したがって、以前ビデオカセット40を再生した場合であって、S4の自動バックアップ領域71の整理時に整理されず残っている場合には、これを自動バックアップ領域71から合致する区間データ(これを区間データ71k(kは1〜Nの整数)とする。)をユーザ使用領域60へロードすればダビング時間を短縮できる。そこで、S21では、ビデオカセット40のコンテンツの一部と同一の区間データ71kがあるかどうか判断する。区間データ711〜71NがあればYとなり、S22に進む。同一の区間データ7kがなければS23に進む。
【0049】
S22では、ビデオカセット40のコンテンツに対応する区間データについては、ビデオカセット40を早送りしてスキップする。ビデオカセット40を再生していた場合には、停止して早送りする。また、自動バックアップ領域71から区間データ71kをユーザ使用領域60へロードし、このロードした区間データを自動バックアップ領域71から削除する。その後フローは終了する。S22の処理により、ユーザは一度ビデオカセット40の一部を再生していれば、ビデオカセット40のコンテンツをHD7にダビングする必要が出た場合に、全部通してダビングする必要がなくなる。また、このダビングをする間、ハードディスクレコーダ1の他の作業をほとんど何もできないといった煩わしさから開放される。
【0050】
S22で、区間データ71kをロードするタイミングの位置合わせは、早送りするビデオカセット40のテープ位置を区間データ71kよりも例えば1分遅くし、早送りを終了するテープ位置を例えば1分早めることにより行なう。これにより、区間データ71kの前後でダビングするデータと区間データ71kとオーバーラップさせることができる。これらオーバーラップした部分を継ぎ目なく接続するために、制御部8は、映像音声信号51と区間データ71kの相互相関関数が最大となるような位置合わせを行う。この相互相関関数は、例えば、映像音声信号51、区間データ71kの離散時間信号列をz関数で表したものをa(z)、b(z)として、これらの信号の位相差τとして、a(z)×b(z+τ)を該当部分の離散時間時間毎に足し算したΣa(z)×b(z+τ)を計算することにより行う。
【0051】
S23では、ビデオカセット40のコンテンツの一部と同一の区間データ711〜71Nがなければ、映像音声信号51、インデックス信号52をHD7のユーザ使用領域60に記録する。その後図4のフローは終了する。
【0052】
なお、以上示した図4のサブフローは、図3のフローの中で繰り返し行なわれる。
【0053】
また、図3の処理は、チューナ(不図示)で選局されたチャンネルで放映されている映像音声信号をHD7に録画する場合にも用いることができる。ただし、この場合には図4のフローには分岐しない。
【0054】
次に、図5を用いて、ビデオカセット40と、ビデオカセット40の現在のテープ位置を識別するため、以上で説明したようなビデオカセット40に記録されたインデックス信号とは別の方法による実施例について説明する。図5は、ビデオカセット40を識別するための識別用コードを貼り付けたビデオカセットの図である。ビデオカセット40には、その一部にユーザにより識別コードシール401が貼り付けられている。識別コードシール401は、ロイコ染料などからなる熱可逆性の染料で、バーコードまたは2次元状に記録したコードがプリントされており、何度も記録、消去が可能となっている。ハードディスクレコーダ1は、図示しない読み取り部を備え、識別コードシール401の情報を読み取る。識別コードシール401には、ビデオカセット40を他と識別するための識別コード情報と、ビデオカセット40の現在のテープの位置を表す時刻または区間データ71に対応する識別コードが記録されている。これらの情報は、初めてビデオカセット40をマウントするときに記録されると共に、ハードディスクレコーダ1の電源をオフにする前に、ビデオカセット40の現在のテープ位置の情報が、識別コードシール401に、最初に記録されたテープ位置からのオフセット量として記録される。このようにして、ビデオカセット40の識別コードとビデオカセット40の現在のテープ位置の情報を識別する。
【0055】
図3で示したビデオカセット40からHD7へのダビング処理の指示がされると、制御部8は、図4で示したS21で、区間データ71に記録された識別コードを参照する。区間データ71には、ビデオカセット40に記録した識別コードとビデオカセット40上の時刻が記録されており、同一のビデオカセット40で同一の時刻の区間データ711〜71Nがあれば、S22でこれをユーザ使用領域60にロードする。
【0056】
このように識別コードシール401を読み取るようにすれば、すでに記録されたビデオカセット40を再生するだけのユーザであっても、ビデオカセット40のテープの現在位置を識別することができる。一方、インデックス信号42は、予めビデオカセット40のテープ上に記録されていなければならないのが前提であるから、すでに記録されたビデオカセット40を再生するだけのユーザには役に立たない場合もある。また、インデックス信号42は、他のビデオデッキで録画したテープと必ずしも互換性があるとはいえない場合もある。この実施例ではこれらの不具合を解消できる。
【0057】
なお、図5で示した識別コードシール401は、ICタグやカードメモリ等で構成され、ハードディスクレコーダ1がこれらのいずれかを読み取るための読み取り部を備えても良い。また、識別コードシール401は、ビデオカセット40の機能を害しなければ、ビデオカセット40のいずれの位置に貼り付けても良い。
【0058】
さらに、ビデオカセット40と、ビデオカセット40の現在のテープ位置を識別するための別の実施例について、説明する。インデックス信号42の代わりに、ビデオカセット40のテープ位置をビデオカセット40の巻頭に巻き戻すようユーザを誘導する表示を表示部10に出力して、この巻頭の位置を基準に、このビデオカセット40のテープ位置をハードディスクレコーダ1本体に認識させる構成でも良い。この場合、信号処理部5には、所定時間毎、または音声入力方式がステレオ、モノラル間で変わるとき、またはハードディスクレコーダ1の使用者がビデオカセット40のコンテンツにインデックスを付した場合に、ビデオカセットドライブ4は、VICS信号42の代わりに区間情報を出力する。この構成では、このビデオカセットの識別情報を最初のビデオカセット40のマウント時に入力すると共に、以後のマウント時にはこのビデオカセットの識別情報を手動でユーザに選択させる必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態のハードディスクレコーダの構成図
【図2】操作部によりビデオカセットの再生が指示されたときに制御部が行う処理のフロー図
【図3】操作部からビデオカセットのコンテンツをHDにダビングする指示を受けた場合に、制御部が行う処理のフロー図
【図4】図3の処理のサブフロー図
【図5】ビデオカセットを識別するための識別用コードを貼り付けたビデオカセットの図
【符号の説明】
【0060】
1−ハードディスクレコーダ、 4−ビデオカセットドライブ
40−ビデオカセット、 401−識別コードシール
41−映像音声信号、 42−インデックス信号
5−信号処理部、 51−映像音声信号、 52−インデックス信号
6−ハードディスクドライブ(HDD)、 7−ハードディスク(HD)
70−ユーザ使用領域、 71−自動バックアップ領域
711〜71N−区間データ、 8−制御部、 9−操作部
10−表示部、 11−記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオカセットに記録されている映像信号を読み取り、出力するビデオカセットドライブと、記録媒体の任意のアドレスにランダムアクセスして前記映像信号を記録する記録部と、これらを制御する制御手段と、を備えた複合装置において、
前記記録部は、その記録媒体の記録領域として、前記ビデオカセットに記録されている映像信号を前記記録媒体に記録する旨のダビング指示を受けて前記映像信号を記録するユーザ使用領域と、前記ダビング指示を受けずに前記ビデオカセットドライブにより前記映像信号が再生されているときに前記映像信号を自動的に記録するバックアップ領域を有し、
前記制御部は、
前記映像信号を前記バックアップ領域に記録する場合に、前記映像信号を、予め定めたタイミングで映像信号の時間軸の区間毎に分割して前記記録媒体に記録すると共に、その区間の特性情報である区間情報をあわせて前記記録部に記録する分割記録手段と、
前記ダビング指示を受けた場合に、前記バックアップ領域に記録された前記区間情報を参照して、前記ビデオカセットが出力している映像信号と、前記バックアップ領域に記録されている映像信号と、が対応する区間を検出するバックアップ記録データ検出手段と、
前記ダビング指示を受けた場合に、バックアップ記録データ検出手段が前記対応する区間を検出したときには、前記バックアップ領域のデータを前記ユーザ使用領域にロードさせると共に、この区間について前記ビデオカセットを早送りする制御を行うダビングスキップ制御手段と、
前記ビデオカセットを再生した場合には、この再生したビデオカセットに関係する前記バックアップ領域に記録した映像信号の記録時期を更新する記録時期更新手段と、
前記バックアップ領域がいっぱいになった場合に新たに前記バックアップ領域に前記映像信号を記録するときには、前記記録時期が最も古いものから順に、前記映像信号を削除するバックアップ領域整理手段と、
前記ユーザ使用領域がいっぱいになった場合には、前記バックアップ領域整理手段により前記バックアップ領域を縮小するバックアップ領域縮小手段と
前記ビデオカセットドライブは、前記ビデオカセットのケース表面にビデオカセットの特性情報およびビデオカセット上の再生位置の情報を記録し、これらの情報を更新すると共に、これらの情報を読み取る、ビデオカセット特性アクセス手段と、
前記記録部に記録された映像の各種操作を誘導する誘導表示を、前記映像を表示する表示器に出力する項目表示手段と、を有し、
前記バックアップ記録データ検出手段は、前記ビデオカセットの特性情報、再生位置の情報と、区間情報と、を参照し、
前記項目表示手段は、前記バックアップ領域に記録された映像信号の項目を前記誘導表示に表示しない複合装置。
【請求項2】
ビデオカセットに記録されている映像信号を読み取り、出力するビデオカセットドライブと、記録媒体の任意のアドレスにランダムアクセスして前記映像信号を記録する記録部と、これらを制御する制御手段と、を備えた複合装置において、
前記記録部は、その記録媒体の記録領域として、前記ビデオカセットに記録されている映像信号を前記記録媒体に記録する旨のダビング指示を受けて前記映像信号を記録するユーザ使用領域と、前記ダビング指示を受けずに前記ビデオカセットドライブにより前記映像信号が再生されているときに前記映像信号を自動的に記録するバックアップ領域を有し、
前記制御部は、
前記映像信号を前記バックアップ領域に記録する場合に、前記映像信号を、予め定めたタイミングで映像信号の時間軸の区間毎に分割して前記記録媒体に記録すると共に、その区間の特性情報である区間情報をあわせて前記記録部に記録する分割記録手段と、
前記ダビング指示を受けた場合に、前記バックアップ領域に記録された前記区間情報を参照して、前記ビデオカセットが出力している映像信号と、前記バックアップ領域に記録されている映像信号と、が対応する区間を検出するバックアップ記録データ検出手段と、
前記ダビング指示を受けた場合に、バックアップ記録データ検出手段が前記対応する区間を検出したときには、前記バックアップ領域のデータを前記ユーザ使用領域にロードさせると共に、この区間について前記ビデオカセットを早送りする制御を行うダビングスキップ制御手段と、を有する複合装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記ビデオカセットを再生した場合には、この再生したビデオカセットに関係する前記バックアップ領域に記録した映像信号の記録時期を更新する記録時期更新手段と、
前記バックアップ領域がいっぱいになった場合に新たに前記バックアップ領域に前記映像信号を記録するときには、前記記録時期が最も古いものから順に、前記映像信号を削除するバックアップ領域整理手段と、
前記ユーザ使用領域がいっぱいになった場合には、前記バックアップ領域整理手段により前記バックアップ領域を縮小するバックアップ領域縮小手段と、を有する請求項2に記載の複合装置。
【請求項4】
前記ビデオカセットドライブは、前記ビデオカセットのケース表面にビデオカセットの特性情報およびビデオカセット上の再生位置の情報を記録し、これらの情報を更新すると共に、これらの情報を読み取る、ビデオカセット特性アクセス手段を有し、
前記バックアップ記録データ検出手段は、前記ビデオカセットの特性情報、再生位置の情報と、区間情報と、を参照する請求項2または請求項3のいずれかに記載の複合装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記記録部に記録された映像の各種操作を誘導する誘導表示を、前記映像を表示する表示器に出力する項目表示手段を備え、
前記項目表示手段は、前記バックアップ領域に記録された映像信号の項目を前記誘導表示に表示しない請求項2〜4のいずれかに記載の複合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−280480(P2007−280480A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104113(P2006−104113)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】