説明

複合電極

【課題】
新規な複合材料を提供する。
【解決手段】
下記の工程:
(a)第一成分の前駆物質溶液または懸濁液を提供し、該溶液または懸濁液は溶媒を含有し、
(b) 第一成分の粒子を形成しそして第二成分の溶液または懸濁液または粉末を、該第一成分の前駆物質溶液または懸濁液と混合しおよび引き続いて加熱し、乾燥しまたは遠心分離することによって、第一成分の粒子を第二成分の細孔構造内に取り込み、該第二成分は、平均細孔直径2〜1000nmを有する多孔質構造を有する
を含むプロセスに従って得られる電極材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複合材料に関する。複合材料は、燃料電池における電極、特に陰極として、電解槽用電極、電気化学的煙道ガス精製用電極および酸素または水素分離膜用電極のような広範囲の用途において使用するために適している。一層特に、本発明は、第一成分が、第二成分のナノ−〜サブミクロン範囲のマトリックス中に微細に分散された電極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
補足する性質を有する粉末を組み合わせることによって通常形成される複合混合物は、多くの用途において重要な役割を果たす。複合混合物の微細構造および粉末の性質は、複合混合物およびそれらが中で使用される装置の性能を決める。
【0003】
LSCF/CGOまたはLSM/YSZ複合粉末は、燃料電池用途において良く知られている。LSCF/CGO複合材料の、固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cells(SOFC))における好適な陰極材としての使用は、多数の引用に記載されている(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1、非特許文献2を参照)。
【0004】
LSCF/CGO複合材料の層を提供し、この層を10〜300 Mpaで等圧にプレスし、ペロブスカイト電極を含む第二層を提供して二重層を画定しそして二重層を還元雰囲気中で焼成することを伴う燃料電池陰極を製造するプロセスが開示されている(例えば特許文献3を参照)。一層低い温度で作業する間の強化が、焼成下の還元工程により、ナノスケール範囲の細孔を生じるのが観測される。
【0005】
非特許文献2は、LSCF/CGO複合材料の多孔度が、PMMA(ポリメチルメタクリラート)または炭素を加えることによって推進され、PMMAまたは炭素は、燃焼する際に、複合材料内の細孔構造から出るプロセスについて記載している。
【0006】
セラミック膜用に使用されるCGOを安定化量で有するLSCについて記載されている(例えば特許文献4を参照)。CGOがLSC内に組み込まれそして次いで、混合物を焼結して安定された立方LSC構造を得る。
【0007】
従来技術に従えば、LSCF/CGO 複合材料を製造する慣用のやり方は、LSCFおよびCGOの別々の粉末を溶媒の存在において激しく混合した後に、乾燥し および篩にかけることによる。
【0008】
特許文献2は、ナノスケール電解質粉末および電極粉末を磨砕しまたはボールミル粉砕した後に、微粉砕された粉末混合物をか焼することによって、ナノ-複合電極材料を製造する方法を開示している。特許文献2は、また、金属ニッケル、銅、銀およびそれらの組合せへの水溶性前駆物質である電極粉末粒子をナノスケール電解質分散液に溶解させた粒子の外面を塗被する方法についても教示する。次いで、水酸化アンモニウムのような塩基性水溶液を加えてナノスケール電解質の表面上に金属前駆物質を沈殿させ、そして引き続いて、沈殿された固体生成物を分離しそして最終的に焼成する。
【0009】
約200nmの粒子を有する第一成分の懸濁液に、粒度100nm未満を有するナノスケール粉末を混合する、粉末を組み合わせることによる二モードのスプレーコーティングの製法が開示されている(例えば特許文献5を参照)。生成した二モードのスラリー混合物を撹拌しそして超音波処理を施す。
【特許文献1】US 6,794,075
【特許文献2】US 2003/0027033
【非特許文献1】G. Sivasundram and J.A. Kilner Electrochemical Society Proceedings Vol. 2003-07, 533-541
【非特許文献2】G. G. Sivasundram and J.A. Kilner Proceedings of the 5th European Fuel Cell Forum Vol. 1, 335-342
【特許文献3】WO 2006/079800
【特許文献4】US patent No. 6,146,445
【特許文献5】US Patent No. 6,803,138
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者等は、複合材料を適用する装置および用途における一層高い性能および安定性が、第一成分の微細な粒子の、第二成分のナノ〜サブミクロンスケールのマトリックスへの高い分散を必要とすることを見出した。そのような装置および用途は、燃料電池、電解槽における電極および電気化学的煙道ガス精製、酸素または水素分離膜用電極を含む。特に、約800℃より低い温度におけるSOFCの極めて魅力的な動作は、適切な陰極材料を使用することを必要とする。中間のまたは低い温度、すなわち、約800℃より低い、好ましくは 500-700℃におけるSOFC動作は、例えば、LSCF-CGO陰極(LSCF: (La1-xSrx)s(Co1-yFey)O3-d, CGO:(Ce1-xGdx)O2-d ))(ここで、CGOおよび/またはLSCFは、ナノおよびサブミクロンスケール範囲の、すなわち、ほぼ1000 nm以下(サブミクロン範囲の)、または更に一層良好には100nm以下(ナノ範囲の)程度の粒子サイズを有する)を使用することによって増進される。しかし、これらの微細な粒子は、粗大化する、すなわち、サイズが増大し、動作の間に、材料の非常に高い劣化および従って、安定性不良に至り得る。LSCF粒子は、適用する前に粗大化され、一層安定な陰極至り得るが、これに伴い、一層高い面比抵抗(Area Specific Resistance (ASR))に関して、性能が一層不良になる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
今、本発明によって、生成した複合電極材料の良好な安定性(限定された 粗大化)および高い性能(低いASR) の両方を達成することが可能である。微細な電極粉末は、簡単な様式で、例えば、一成分の前駆物質を平均細孔直径2nm〜100nm(ナノスケール範囲の)および更に1000nm(サブミクロン-スケール範囲の)までを有する別の成分のメソ多孔質粉末の存在において加熱することによって製造することができる。第一成分は、第二メソ多孔質成分の表面を被覆するばかりでなく、また、その微細な細孔構造内に付着もする。
【0012】
本明細書中で使用する通りのメソ多孔質成分なる用語は、平均細孔直径2〜1000nm、好ましくは2〜300 nm、一層好ましくは2〜100nm、最も好ましくは2〜50nmの細孔構造を有するの粒子の化合物を定義する。そのようなメソ多孔質成分は、5m2/gより大きい、好ましくは20m2/gより大きい、一層好ましくは150、200、250または300m2/gのような約100 m2/g以上の表面積(BET) を有することを見出した。
【0013】
よって、本発明者等は、下記の工程:
(a)第一成分の前駆物質溶液または懸濁液を提供し、該溶液または懸濁液は溶媒を含有し、
(b) 第一成分の粒子を形成しそして第二成分の溶液または懸濁液または粉末を、該第一成分の前駆物質溶液または懸濁液と混合しおよび引き続いて加熱し、乾燥しまたは遠心分離することによって、第一成分の粒子を第二成分の細孔構造内に取り込み、該第二成分は、平均細孔直径2〜1000nmを有する多孔質構造を有する
を含むプロセスに従って得られる電極材料を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書中で使用する通りの粉末なる用語は、平均粒子直径0.2-100μm、好ましくは、約0.2、0.5、1.0または5μmのような0.1-10 μmの範囲を有する粒子の集合と定義する。
【0015】
工程(b)で形成される第一成分の粒子は、平均直径2〜5000nm(サブミクロン-スケール範囲まで)を有する粒子であり、平均直径2〜100nmを有するナノサイズの粒子であるのが好ましい。粒子の平均直径は、第二成分の粉末の平均細孔直径より小さい粒子サイズ範囲内に在るのが好ましく、これより、第二成分の粒子の細孔を確実に十分に充填する。
【0016】
本発明に従う複合電極材料は、従来技術の方法に従って得られるものに比べて、製造するのが一層容易でありそしてまた、性能および安定性に関しても優れている。本発明によって、第一成分の小さい粒子、好ましくはナノサイズの粒子が現場で、すなわち、プロセスの間に形成されそして引き続いて第二成分の微細な多孔質構造(メソ多孔質構造)内に取り込まれる。
【0017】
本明細書中で使用する通りの取り込まれるまたは取り込むなる用語は、第一成分の現場で形成された粒子を制限領域内、ここで、第二成分の微細な多孔質構造内に閉じ込めることを意味する。
【0018】
工程(b)における加熱、乾燥または遠心分離は、混合物中の溶媒の除去を可能にする。第一および第二(メソ多孔質)成分の混合溶液または懸濁液中に有機溶媒が存在する場合に、溶媒の除去は、室温で簡単に 乾燥しまたは蒸発させることによりまたは酸素含有環境において加熱して溶媒を確実に燃焼させることによって、達成することができる。特に懸濁液について、溶媒の除去は、懸濁液に遠心分離工程を施し、それにより生成した複合電極材料(複合粉末)を上澄み液から分離することによって行ってよい。遠心分離工程は、また、予備加熱した後に、行ってもよい。溶媒が水である場合に、それの除去は、水を蒸発させるために、約100℃以上で加熱することによって行ってよい。第二成分の凝集物を製造する場合に、下記に記載する通りに、加熱は、200℃より高い、好ましくは400℃より高い温度で、例えば、200 - 600℃の空気中で加熱することによって行う。加熱は、また、第二成分の微細な細孔構造内の第一成分の前駆物質、例えば、第一成分(LSM)のLSM-硝酸塩および付随する沈着物も確実に完全に分解する。
【0019】
工程(a)の第一成分の前駆物質溶液または懸濁液を製造する際に、溶液または懸濁液の粘度を適切なレベルまで、しばしば約100mPa-s(室温において)まで増大させるために、該溶液または懸濁液に、加熱、例えば、80℃、250℃または更に500℃までの加熱を施した後に、第二成分を導入してよい。前駆物質溶液の粘度が高い程、ポリマー中のカチオンが多くなりおよび前駆物質溶液中のポリマー鎖が長くなることになる。ポリマー鎖中のカチオンの量を制御することによって、加えるべき第一成分の量を制御することができる。更に、重合は、カチオンがポリマー鎖に結合されるので、化学組成の精確な制御を確実にする。加えて、溶液の粘度および表面張力は、ポリマー鎖の長さに依存することになり、これより、第一成分の溶液の湿潤挙動に関して一層良好な制御を可能にする。
【0020】
第一成分の溶液または懸濁液の良好な湿潤性を確実にするために、界面活性剤を加えてよい。代わりに、界面活性剤を第二成分に加えた後に、第一成分を混合してよい。その上に、第一成分の溶液または懸濁液を混合することによる第二成分の良好な細孔充填を、例えば、真空含浸することによって達成してよい。複合粉末の所望の組成を達成するために、混合工程を一回以上繰り返すことが必要になり得る。
【0021】
第一成分の懸濁液の場合に、例えば、pHを等電点より低くまたはより高く調整することによりあるいは分散剤を加えることによって、粒子を分散させることができる。
【0022】
混合工程(b) は、第二成分の粉末を第一成分の前駆物質溶液または懸濁液中に単純に導入する(工程(a))ことにより、または第一成分の前駆物質溶液または懸濁液を第二成分の細孔中に単純に注入することによって、行ってよく、好適な実施態様では、第二成分は粉末である。
【0023】
第二成分の粉末を工程(a)の前駆物質溶液または懸濁液中に直接導入する代わりに、混合工程(b)を、第二成分のスラリーまたは懸濁液を工程(a)の前駆物質溶液または懸濁液に導入することによって行ってよい。よって、本発明の好適な実施態様では、工程(b)における第二成分は、平均細孔直径2〜100nmを有する多孔質構造を有する該第二成分の粉末を溶媒と混合することによって製造する懸濁液として供する。
【0024】
懸濁液中で、粒子を凝集させおよび沈降させることができ、それにより、溶媒からのそれらの分離を可能にする。凝集は、pHを等電点に変えることによるかまたは過剰の立体分散剤を加えることによるかのいずれかで、懸濁液中の粒子の間の粒子間力を操作することによってもたらすことができる。
【0025】
故に、本発明のなお別の実施態様では、工程(b)における第二成分は、平均細孔直径2〜100nmを有する多孔質構造を有する該第二成分の粉末を溶媒と混合することによって製造する懸濁液として供しそして一緒にした工程(b)の溶液または懸濁液、すなわち、第二成分の懸濁液を第一成分の前駆物質溶液または懸濁液と混合することによって得られる懸濁液のpHを変えることによって、第二成分の凝集物が形成される。
【0026】
よって、第一および第二成分の溶液または懸濁液を混合しそして生成した一緒にした溶液/懸濁液のpHを変えることによって、第二成分の凝集物が形成される。一緒にした溶液/懸濁液を不安定にするために、混合する間および/または混合した後に、PHを変え、例えば、低下させてよい。第二成分の凝集物は、この第二成分の粒子の外面を被覆するばかりでなく、また、微細な細孔構造中に浸透もする第一成分の粒子を含有する多孔質床を形成する。
【0027】
第二成分の懸濁液は、すでに凝集物を含有した後に、第一成分の前駆物質溶液または懸濁液を混合してよい。故に、本発明の更なる実施態様に従えば、工程(b)における第二成分は、平均細孔直径2〜100nmを有する多孔質構造を有する該第二成分の粉末を溶媒と混合することによって製造する懸濁液として供しそして第二成分の懸濁液は、該懸濁液のpHを変えることによって形成される該第二成分の凝集物を含有する。場合により、この第二成分の懸濁液中の溶媒からの該凝集物の引き続いての分離を行う。
【0028】
第二成分、例えばYSZ、の懸濁液は、該第二成分の粒子をアルコール、好ましくはエタノールのような溶媒中に懸濁させ、酸を加えることによって懸濁液のpHを調整して2 - 5にし、引き続いて懸濁液のpHを調整して該懸濁液の等電点、好ましくは6-7にしそして溶媒から第二成分を分離することによって製造することができる。第二成分の懸濁液中のpHの調整、例えば、酢酸を加えることによってpH = 4に下げる調整は、安定な懸濁液の形成を可能にし、他方、引き続いての等電点へのpH調整は、多孔質ケークのような沈降物の形態の第二成分の凝集物の形成を可能にし、次いで、沈降物を溶媒から容易に分離する。
【0029】
本発明の別の実施態様では、多孔質構造を有する第二成分の粉末に、第二成分の粉末を形成する粒子の表面に吸着されたポリエチレンイミン(PEI)のような電気立体性(electrosteric)分散剤が備わっておりそして該粉末を第一成分の懸濁液と接触させ、ここで、第一成分の該懸濁液は、該第一成分の粒子をアルコール、好ましくはエタノールのような溶媒中に懸濁させることによって製造し、塩基性剤を加えることによって、この第一成分の懸濁液のpHを調整して7より高く、好ましくはpH = 9-11にする。
【0030】
第二多孔質成分の粉末をプレスしてペレットにした後に、第一成分の該懸濁液を接触させてよい。
【0031】
電気立体性分散剤の提供は、第二成分、例えばYSZ、の粒子の内面および外面が、正電気を帯びることになることを可能にする。NH4OHのような塩基性剤を加えることによって第一成分の懸濁液のpHを上げて、例えばpH = 9までにすることによって、該第一成分の粒子は、負に帯電することになる。負に帯電した第一成分の懸濁液を正電気を帯びた第二成分と混合することによって、生成した複合電極材料が得られる。多孔質第二成分が、第一成分の懸濁液の水またはエタノールのような溶媒と接触する場合に、第一成分の負に帯電した粒子は、第二成分の表面におよび第二成分の細孔内に強いて吸着する。
【0032】
テープキャスティングおよびスクリーン印刷のような、SOFC製造におけるセラミック製造法用に適している生成した複合材料の表面積を制御するために、得られる複合電極材料に、例えば、700-1200℃において1〜4時間のか焼工程を更に施してよい。
【0033】
複合材料の表面積および微細構造の更なる制御は、焼結(焼成)工程の後で、再含浸することによって達成してよい。故に、本発明のなお別の実施態様では、焼結工程の後で、電極に第一成分を含浸させ、それにより、第二成分の微細な多孔質構造内に追加のナノ粒子を供する。
【0034】
好適な電極材料は、第一成分としての電気化学的に活性な陽極または陰極材料を、第二成分としての電解質材料のようなイオン/プロトン導体と組み合わせることによって得られるものである。代わりに、第一成分が電解質材料でありそして第二成分が陽極または陰極材料であってよい。その他の好適な電極材料は、第一成分かまたは第二成分のいずれかとして異なる陰極材料を組み合わせることによって得られるものである。よって、本発明の一実施態様では、本発明者等は、第一および第二成分を、下記: 陽極材料、陰極材料および電解質材料からなる群より選ぶ電極材料を提供する。
【0035】
第一成分が陰極材料または電解質材料でありそして第二成分が電解質材料または陰極材料であるのが好ましい。第一成分が陰極材料でありそして第二成分が電解質材料であるのが一層好ましい。別の実施態様では、第一成分が陽極材料でありそして第二成分が電解質材料である。
【0036】
陽極材料は、NiOおよび/またはドープトジルコニアおよび/またはドープトセリアを単独でまたはAl2O3、TiO2、Cr2O3、MgOを混合して含む組成物からなる群より選ぶのが好ましくあるいは陽極材料は、MasTi1-xMbxO3-d,(式中、Ma = La, Ba, Sr, Ca; Mb = V, Nb, Ta, Mo, W, Th, U; 0 ≦ s ≦ 0.5); またはLnCr1-xMxO3-d,(式中、M = Ti, V, Mn, Nb, Mo, W, Th, UおよびLn=ランタニド)からなる群より選ぶ材料である。
【0037】
電解質材料は、ドープトジルコニア、ドープトセリア、ドープトガレートおよびプロトン導電性電解質、(ここで、ドーパントは、Sc、Y、Ce、Ga、Sm、Gd、Caおよび/または任意のLn元素(Ln=ランタニド)またはそれらの組合せである)からなる群より選ぶのが好ましい。
【0038】
陰極材料は、(La1-xSrx)sMnO3-d および(A1-xBx)sFe1-yCoyO3-d,(式中、A = La, Gd, Y, Sm, Lnまたはそれらの混合物そしてB = Ba, Sr, Caまたはそれらの混合物)からなる群より選ぶのが好ましい。
【0039】
本発明の更なる実施態様では、第一成分は、LSCFまたはCGOでありそして第二成分は、CGO またはLSCF(LSCF:(La1-xSrx)s(Co1-yFey)O3-d, CGO: (Ce1-xGdx)O2-d ))である、と言うのは、これらは、複合陰極を製造するために最も入手可能でありそして適している材料を表すからである。それにより、LSCFおよびCGOのイオン導電率および電子導電率の性質を組み合わせた、SOFCの低いまたは中間の温度(500-700℃)動作用に特に適している複合陰極材料が得られる:通常陰極材料であるLSCFは、中間の温度(約700℃)においてイオン導電率および電子導電率の両方を保有するが、温度が低くなる、例えば、500℃に近くなる程、一層電子伝導体になる。他方、通常電解質として使用されるCGOは、そのような低い温度において高いイオン導電率を保有する。
【0040】
本発明に従えば、前駆物質溶液または懸濁液からのLSCF粒子は、多孔質CGO粒子中に付着されるかまたは逆の場合も同じである。メソ多孔質CGOまたはLSCF粒子を、LSCFまたはCGO 前駆物質溶液中にそれぞれ導入した後に、酸素環境において遠心分離または乾燥または加熱してよい。乾燥しまたは加熱する際に、溶媒の蒸発および/または燃焼が行われそしてLSCFまたはCGO 粒子は、メソ多孔質CGOまたはLSCF 粉末の形になる。生成した複合粉末を、次いで、SOFC半電池上に陰極としてスプレーしてもまたはスクリーン印刷してもよい。例えば、LSFC 前駆物質溶液をメソ多孔質CGOと一緒にした場合に、LSCF粒子の成長が、メソ多孔質CGO構造内の壁によって抑制されるので、LSCF粒子のCGO粗大化が制限される。その結果、例えば、燃焼する間に形成された微細なナノサイズの粒子は、高い性能および同時に粗大化に対する安定性をもたらす。換言すれば、LSCF粒子をナノ-サイズの範囲(粗大化の無い)に保つことによって、複合粉末の高い性能および安定性が達成される。生成した複合材料の高い多孔度は、また、電気化学的還元のための反応部位への酸素の輸送も可能にする。多孔質成分のいくつかの含浸工程は、所要の量の第一成分を達成するのに必要になり得る。
【0041】
本発明により、また、LSCF粒子をメソ多孔質LSCFのマトリックス中に組み込むことによって、一種の単一材料単独、例えば、LSCFの複合材料を形成することも可能である。
【0042】
本発明のなお別の実施態様では、第一成分は、LSM((La1-xSrx)sMnO3-d)またはSYSZ((Zr1-x-zYxScz)O2-d)でありおよび第二成分は、SYSZまたはLSMである。第一成分がLSMでありおよび第二成分がSYSZであるのが好ましい。これらの成分は、陰極材料を製造するために特に適している。
【0043】
本発明のなお別の実施態様では、第一成分は、LSC((La1-xSrx)sCoO3-d)またはCGO((Ce1-xGdx)O2-d)でありおよび第二成分は、CGOまたはLSCである。第一成分がLSCでありおよび第二成分がCGOであるのが好ましい。
【0044】
更なる実施態様では、第一成分がNiOまたはSYSZでありおよび第二成分がSYSZまたはNiOである陽極材料を提供する。
【0045】
生成した電極材料中の第一成分の量は、総容積の20〜90容積%および一層好適には30〜60%を占める。陰極として使用する更に一層好適な電極材料は、LSCFを45容積%およびCGOを55容積%含有する。LSCFおよびCGOのこれらの相対的な割合で、低いまたは中間の温度(500℃〜700℃)のSOFC用の最良の陰極材料が得られる、と言うのは、陰極材料は、そのような低い温度でイオン導電率および電子導電率の両方を保有することが必要であるからである。上に説明した通りに、LSCFは、イオン伝導体および電子伝導体、すなわち、混合伝導体であることが知られている。しかし、700℃より低い温度において、LSCF導電率の大部分(bulk)はエレクトロニックであり、他方、これらの温度におけるCGOは、良好なイオン伝導体であることが知られている。
【0046】
本発明は、また、燃料電池、好ましくは複数のそのような燃料電池を含む固体酸化物型燃料電池(SOFC)スタック、水素分離膜または酸素分離膜、または請求項11-15に記載する通りの本発明に従う電極材料を含む固体電解槽電池(solid electrolytyser cell (SOEC))をも包含する。
【実施例】
【0047】
例1 LSCF-CGO 複合粉末混合物を陰極として含むSOFCの製造
工程1: 第一成分の前駆物質溶液の製造:
La、Sr、FeおよびCoの硝酸塩を、それらを加熱しそしてTGA(熱重量分析器計)で減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。La、Sr、FeおよびCoそれぞれの硝酸塩を水に溶解することによって、(La0.6Sr0.4)sFe0.8Co0.2O3(LSCF)粉末用の前駆物質溶液を製造した。次いで、グリシンを、溶液中の硝酸塩イオンの量の55重量%の比率で加えた。Triton-x 0.1 重量%を、界面活性剤として溶液に加えた。
工程2: 多孔質成分(第二成分)の製造:
Ce(NO3)3.6H2OおよびGd(NO3).5H2Oをエタノールに溶解しそして3重量%のPluronic 123を加えることによって、多孔質のGd0.1Ce0.9O1.95 (CGO)を製造した。混合物を、透明な溶液になるまで撹拌した。この溶液を周囲条件で一晩乾燥しそして次いで、500℃で2時間焼成し、多孔質CGO粉末をもたらした。
工程3: 複合材料の製造:
多孔質CGO粉末および工程1からの溶液を、次いで、一緒に混合しそして加熱して、水が沸騰および蒸発を始めるようにした。最終的に、混合物は燃焼し、CGOの表面上におよびCGOの細孔内にLSCF粉末の形成をもたらした。含浸工程を5回繰り返した。
工程4: SOFCの製造:
陽極支持体、陽極、電解質および反応障壁を含む半電池を製造した。NiOおよびYSZ粉末を有機バインダー系と混合しそしてテープキャストして陽極支持体を形成した。NiOおよびYSZからなる陽極層、YSZからなる電解質およびCGO障壁層をこれらの支持体の上面上に逐次にスプレーしそして“半電池” を高温で焼結した。次いで、焼結した半電池を気密性について試験した。工程3で製造した複合粉末を、次いで、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)およびエタノールと混合しそしてボールミル粉砕した。粒子サイズを制御した後に、懸濁液を気密半電池上にスプレーしそして800℃より高い温度で焼結した。
【0048】
工程2の多孔質成分は、また、商業上購入することできる。
例2 LSCF-CGO複合粉末混合物を陰極として含みそして引き続いて、第一成分溶液を陰極中に含浸させるSOFCの製造
工程1-4 例1の通り。
工程5: 陰極の含浸:
工程1-4で形成された陰極に、工程1からの前駆物質溶液を4回含浸させた。電池を、各々の含浸の間に400℃で熱処理した。
例3 LSCF-CGO複合粉末混合物を陰極として含みそして引き続いて、LSC溶液を陰極中に含浸させるSOFCの製造
工程1-4 例1の通り
工程5: 陰極中に含浸させるための第一成分の製造:
La、SrおよびCoの硝酸塩を、加熱しそしてTGAで減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。La、SrおよびCoの硝酸塩、エチレングリコールおよび濃HNO3を水に溶解することによって、(La0.6Sr0.4)sCoO3(LSC)粉末用の前駆物質溶液を製造した。溶液を250℃で加熱してカチオンを重合させた。溶液の室温粘度が50mPa・sに達した時に、溶液を冷却した。
工程6: 陰極の含浸:
工程1-4で形成された陰極に、工程5からの前駆物質溶液を4回含浸させた。電池を、各々の含浸の間に400℃で加熱処理した。
例4 LSCF-CGO複合粉末混合物を陰極として含むSOFCの製造
工程1: 第一成分の前駆物質溶液の製造:
La、Sr、FeおよびCoの硝酸塩を、それらを加熱しそしてTGAで減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。La、Sr、FeおよびCoの硝酸塩、エチレングリコールおよび濃HNO3を水に溶解することによって、(La0.6Sr0.4)sFe0.8Co0.2O3(LSCF)粉末用の前駆物質溶液を製造した。溶液を250℃で加熱してカチオンを重合させた。溶液の室温粘度が50mPa・sに達した時に、溶液を冷却した。
工程2: 多孔質成分(第二成分)の製造:
例1からの工程2と同様に多孔質CGOを製造した。
工程3: 複合材料の製造:
多孔質CGO粉末および工程1からの溶液を、次いで、一緒に混合しおよび400℃より高い温度で加熱し、CGOの表面上におよびCGOの細孔内にLSCF粉末の形成をもたらした。含浸工程を6回繰り返した。
工程4: SOFCの製造:
例1からの工程4と同様にSOFCを製造した。
例5 LSC-CGO複合粉末混合物を陰極として含むSOFCの製造
工程1: 第一成分の前駆物質溶液の製造:
CeおよびGdの硝酸塩を、それらを加熱しそしてTGAで減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。Gd硝酸塩を0.01モルおよびCe硝酸塩を0.09モル水に溶解することによって、CGO用の前駆物質溶液を製造した。次いで、グリシンを、溶液中の硝酸塩イオンの量の55重量%の比率で加えた。Triton-x 0.1 重量%を、界面活性剤として溶液に加えた。この溶液は、CGO粉末0.1モルをもたらした。Triton-x 0.1 重量%を、界面活性剤として溶液に加えた。
工程2: 多孔質成分の製造:
La、SrおよびCoの硝酸塩ならびに3重量%のPluronic 123をエタノールに溶解することによって、多孔質のLSC粉末を製造した。混合物を、透明な溶液になるまで撹拌した。この溶液を周囲条件で一晩乾燥しそして次いで、500℃で2時間焼成し、多孔質のLSC粉末をもたらした。
工程3: 複合材料の製造:
多孔質のLSC粉末および工程1からの溶液を、次いで、一緒に混合しそして加熱して、水が沸騰および蒸発を始めるようにした。最終的に、混合物は燃焼し、LSCの表面上におよびLSCの細孔内にCGO粉末の形成をもたらした。含浸工程を5回繰り返した。
工程4: SOFCの製造:
陽極支持体、陽極、電解質および反応障壁を含む半電池を製造した。NiOおよびYSZ粉末を有機バインダー系と混合しそしてテープキャストして陽極支持体を形成した。NiOおよびYSZからなる陽極層、YSZからなる電解質およびCGO障壁層をこれらの支持体の上面上に逐次にスプレーしそして“半電池” を高温で焼結した。次いで、焼結した半電池を気密性について試験した。工程3で製造した粉末をテルピネオールと混合することによって、該粉末のスクリーン印刷用インクを製造しそして粒子サイズおよびレオロジーを制御した後に、次いで、インクを気密半電池上にスクリーン印刷そして900℃より高い温度で焼結した。
例6 LSC-CGO 複合粉末混合物を陰極として含むSOFCの製造
工程1: 第一成分の前駆物質溶液の製造:
CeおよびGdの硝酸塩を、それらを加熱しそしてTGAで減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。Gd硝酸塩およびCe硝酸塩、エチレングリコールおよび濃HNO3を水に溶解することによって、CGO用の前駆物質溶液を製造した。溶液を80℃で加熱してカチオンを重合させた。溶液の室温粘度が50mPa・sに達した時に、溶液を冷却した。
工程2: 多孔質成分(第二成分)の製造:
例5からの工程2と同様に多孔質LSCを製造した。
工程3: 複合材料の製造:
多孔質LSC粉末および工程1からの溶液を、次いで、一緒に混合しおよび400℃より高い温度で加熱し、LSCの表面上におよびLSCの細孔内にCGO粉末の形成をもたらした。含浸工程を6回繰り返した。
工程4: SOFCの製造:
例5からの工程4と同様にSOFCを製造した。
例7 LSC-LSC 複合粉末混合物を陰極として含むSOFCの製造
工程1: 第一成分の前駆物質溶液の製造:
La、Sr、FeおよびCoの硝酸塩を、それらを加熱しそしてTGAで減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。La、Sr、FeおよびCoの硝酸塩、エチレングリコールおよび濃HNO3を水に溶解することによって、(La0.6Sr0.4)sCoO3(LSC) 粉末用の前駆物質溶液を製造した。溶液を250℃で加熱してカチオンを重合させた。溶液の室温粘度が50mPa・sに達した時に、溶液を冷却した。
工程2: 多孔質成分の製造:
La、SrおよびCoの硝酸塩ならびに3重量%のPluronic 123をエタノールに溶解することによって、多孔質のLSC粉末を製造した。混合物を、透明な溶液になるまで撹拌した。この溶液を周囲条件で一晩乾燥しそして次いで、500℃で2時間焼成し、多孔質のLSC粉末をもたらした。
工程3: 複合材料の製造:
多孔質LSC粉末および工程1からの溶液を、次いで、一緒に混合しおよび400℃より高い温度で加熱し、LSCの表面上におよびLSCの細孔内に一層微細なLSC粉末の形成をもたらした。含浸工程を3回繰り返した。
工程4: SOFCの製造:
例5からの工程4と同様にSOFCを製造した。
例8 LSM-SYSZ複合粉末混合物を陰極として含むSOFCの製造
工程1: 第一成分の前駆物質溶液の製造:
La、SrおよびMnの硝酸塩を、それらを加熱しそしてTGAで減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。La、SrおよびMnそれぞれの硝酸塩を水に溶解することによって、(La0.75Sr0.25)sMnO3(LSM)粉末用の前駆物質溶液を製造した。次いで、グリシンを、溶液中の硝酸塩イオンの量の55重量%の比率で加えた。
工程 2: 多孔質成分(第二成分)の製造:
硝酸スカンジウム、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウムおよび3重量%のPluronic 123をエタノールに溶解することによって、メソ多孔質のSr0.04Y0.20Zr0.76O2(SYSZ)を製造した。混合物を、透明な溶液になるまで撹拌した。この溶液を周囲条件で一晩乾燥しそして次いで、500℃で2時間焼成し、メソ多孔質SYSZ粉末をもたらした。工程2の多孔質成分は、また、商業上購入することできる。
工程3: 複合材料の製造:
SYSZメソ多孔質粉末および工程1からの溶液を、次いで、一緒に混合しそして加熱して、水が沸騰および蒸発を始めるようにした。最終的に、混合物は燃焼し、メソ多孔質SYSZの表面上におよびメソ多孔質SYSZの細孔内にLSM粉末の形成をもたらした。含浸工程を4回繰り返した。
工程4: SOFCの製造:
陽極支持体、陽極、電解質および反応障壁を含む半電池を製造した。NiOおよびSYSZ粉末を有機バインダー系と混合しそしてテープキャストして陽極支持体を形成した。NiOおよびSYSZからなる陽極層ならびにSYSZからなる電解質をこれらの支持体の上面上に逐次にスプレーし、そして“半電池” を高温で焼結した。次いで、焼結した半電池を気密性について試験した。工程3で製造した複合粉末に、次いで、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)およびエタノールを混合しそしてボールミル粉砕した。粒子サイズを制御した後に、次いで、懸濁液を気密半電池上にスプレーしそして900℃より高い温度で焼結した。
例9 LSM-YSZ複合粉末混合物を陰極として含むSOFCの製造
工程1: 第一成分の前駆物質溶液の製造:
La、SrおよびMnの硝酸塩を、それらを加熱して1000℃にしそして減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。La、SrおよびMnの硝酸塩、エチレングリコールおよび濃HNO3を水に溶解することによって、(La0.75Sr0.25)sMnO3(LSM)粉末用の前駆物質溶液を製造した。溶液を250℃で加熱してカチオンを重合させた。溶液の室温粘度が50mPa・sに達した時に、溶液を冷却した。
工程2: 多孔質成分(第二成分)の製造:
硝酸スカンジウム、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウムおよび3重量%のPluronic 123をエタノールに溶解することによって、メソ多孔質のメソ多孔質Y0.16Zr0.84O2(YSZ)を製造した。混合物を、透明な溶液になるまで撹拌した。この溶液を周囲条件で一晩乾燥しそして次いで、500℃で2時間焼成し、メソ多孔質YSZ粉末をもたらした。
工程3: 複合材料の製造:
多孔質YSZ粉末および工程1からの溶液を、次いで、一緒に混合しおよび400℃より高い温度で加熱し、YSZの表面上におよびYSZの細孔内にLSM粉末の形成をもたらした。含浸工程を5回繰り返した。
工程4: SOFCの製造:
例5からの工程4と同様にSOFCを製造した。
例10 NiO-YSZ複合粉末混合物を陽極として含むSOFCの製造
工程1: 第一成分の前駆物質溶液の製造:
硝酸ニッケルを加熱しそしてTGAで減量をモニターすることによって、カチオン収率について検量した。硝酸ニッケルを水に溶解することによって、NiO粉末用の前駆物質溶液を製造した。
工程2: 多孔質成分(第二成分)の製造:
例9における工程2についての通り
工程3: 複合材料の製造:
多孔質YSZ粉末および工程1からの溶液を、次いで、一緒に混合しおよび400℃より高い温度で加熱し、YSZの表面上におよびYSZの細孔内にNiO粉末の形成をもたらした。含浸工程を5回繰り返した。
工程4: SOFCの製造:
NiOおよびYSZを含む陽極支持体を有機バインダー系と混合しそしてテープキャストした。工程3で製造した陽極に、次いで、PVP、PVBおよびエタノールを混合しそしてボールミル粉砕した。粒子サイズを制御した後に、懸濁液を陽極支持体電解質上にスプレーした。YSZ、PVP、PVB およびエタノールを含む電解質懸濁液を、次いで、陽極上にスプレーした。次いで、半電池を打ち抜き(stamped out)そして高温で焼結した。引き続いて、陰極を焼結した半電池にスプレーした。
例11 LSCF-CGO複合粉末混合物を陰極として含む酸素分離膜の製造
工程1 - 3例1の通り:
工程4: 酸素分離膜の製造:
NiOおよびYSZ粉末を有機バインダー系と混合しそしてテープキャストして陽極支持体を形成した。CGOテープを同様の方式で製造した。次いで、これらのテープを一緒に積層しそして焼結した。工程3で製造した粉末に、次いで、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール(PVB)およびエタノールを混合しそしてボールミル粉砕した。粒子サイズを制御した後に、懸濁液を気密半電池上にスプレーしそして焼結した。
例12 LSM-YSZ複合粉末混合物を陽極として含むSOECの製造
工程1: 多孔質成分(第二成分)の製造:
YSZ粉末を1300℃で焼成しそしてボールミル粉砕した。
工程2: 第一成分の前駆物質溶液の製造:
例9の工程1と同様にLSM用前駆物質溶液を製造した。
工程3: 複合材料の製造:
多孔質YSZ粉末および溶液を、次いで、一緒に混合しおよび400℃より高い温度で加熱し、YSZの表面上におよびYSZの細孔内にLSM粉末の形成をもたらした。含浸工程を6回繰り返した。
工程4: SOECの製造:
例1からの工程4と同様にSOECを製造した。
例13 LSM-YSZ複合粉末混合物を陽極として含むSOECの製造
工程1: 多孔質成分(第二成分)の製造:
YSZ 10gおよびポリエチレンイミン(PEI) 0.1gをエタノール50g中で混合することによって、エタノール中のYSZ粉末の安定な懸濁液を製造した。
工程2: 第一成分の前駆物質溶液の製造
例9の工程1と同様にLSM用前駆物質溶液を製造した。
工程3: 複合材料の製造:
安定なYSZ 懸濁液(第二成分)および第一成分の前駆物質溶液を、次いで、一緒に混合した。混合した際に、懸濁液のpHが低下されそしてこれより、懸濁液を不安定にした。YSZ粉末が凝集しそして多孔質床を形成した。混合物を、次いで、400℃より高い温度で加熱し、YSZの表面上におよびYSZの細孔内にLSM粉末の形成をもたらした。含浸工程を5回繰り返した。
工程4: SOECの製造:
例1からの工程4と同様にSOECを製造した。
例14 LSM-YSZ複合粉末混合物を陽極として含むSOECの製造
工程1: 多孔質成分(第二成分)の製造:
YSZ粒子をエタノール中に懸濁させることによって、エタノール中のYSZ粉末の安定な懸濁液を製造した。酢酸を加えてpHを下げて4にし、その点で、懸濁液は安定であった。pHを上げて等電点(pH = 6)にすることによって、YSZ粉末が凝集された。YSZ凝集物がエタノールから分離しそして懸濁液の底部に多孔質ケークが形成した。
工程2: 第一成分の前駆物質溶液の製造:
例9の工程1と同様にLSM用前駆物質溶液を製造した。
工程3: 複合材料の製造:
安定なYSZ 懸濁液(第二成分)および溶液を、次いで、一緒に混合した。混合した際に、懸濁液のpHが低下されそしてこれより、懸濁液を不安定にした。YSZ粉末が凝集しそして多孔質床を形成した。混合物を、次いで、加熱して400℃より高い温度にし、YSZの表面上におよびYSZの細孔内にLSM粉末の形成をもたらした。含浸工程を6回繰り返した。
工程4: SOECの製造:
例1からの工程4と同様にSOECを製造した。
例15 LSM-YSZ 複合粉末混合物を陽極として含むSOECの製造
工程1: 多孔質成分(第二成分)の製造:
PEI 0.1gを水30gに溶解させた。次いで、YSZ 10gをこの溶液に加えそしてスプレー乾燥し、PEIで被覆されたYSZ粉末をもたらした。粉末をプレスしてペレットにすることによって、多孔質部材を製造した。
工程2: 第一成分の懸濁液の製造:
LSM 10gをエタノール30g中で混合することによって、LSM懸濁液を製造した。NH4OHを加えることによって、懸濁液のpHを上げて9にし、LSMに負電荷をもたらした。
工程3: 複合材料の製造:
工程2からのLSM懸濁液を、工程1からの処理したYSZペレットに導入した。LSM懸濁液から溶媒を導入した際に、YSZ表面上のPEIは正電気を帯びた。このことは、負に帯電したLSM粒子が、正電気を帯びたYSZ表面上に吸着され、YSZ-LSM複合材料をもたらすることを確実にした。
工程4: SOECの製造:
例1からの工程4と同様にSOECを製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程:
(a)第一成分の前駆物質溶液または懸濁液を提供し、該溶液または懸濁液は溶媒を含有し、
(b) 第一成分の粒子を形成しそして第二成分の溶液または懸濁液または粉末を、該第一成分の前駆物質溶液または懸濁液と混合しおよび引き続いて加熱し、乾燥しまたは遠心分離することによって、第一成分の粒子を第二成分の細孔構造内に取り込み、該第二成分は、平均細孔直径2〜1000nmを有する多孔質構造を有する
を含むプロセスに従って得られる電極材料。
【請求項2】
工程(b)における第二成分が、平均細孔直径2〜100nmを有する多孔質構造を有する該第二成分の粉末を溶媒と混合することによって製造する懸濁液として供される、請求項1記載の電極材料。
【請求項3】
工程(b)の一緒にした溶液または懸濁液のpHを変えることによって、第二成分の凝集物が形成される、請求項2記載の電極材料。
【請求項4】
第二成分の前記懸濁液が、前記溶液または懸濁液のpHを変えることによって形成される該第二成分の凝集物を含有する、請求項2記載の電極材料。
【請求項5】
第一および第二成分を、下記: 陽極材料、陰極材料および電解質材料からなる群より選ぶ、請求項1記載の電極材料。
【請求項6】
陽極材料が、NiOおよび/またはドープトジルコニアおよび/またはドープトセリアを単独でまたはAl2O3、TiO2、Cr2O3、MgOを混合して含む組成物からなる群より選ばれ、あるいは陽極材料が、MasTi1-xMbxO3-d,(式中、Ma = La, Ba, Sr, Ca; Mb = V, Nb, Ta, Mo, W, Th, U; 0 ≦ s ≦ 0.5); またはLnCr1-xMxO3-d,(式中、M = Ti, V, Mn, Nb, Mo, W, Th, UおよびLn=ランタニド)からなる群より選ぶ材料であり;そして電解質材料は、ドープトジルコニア、ドープトセリア、ドープトガレートおよびプロトン導電性電解質、(ここで、ドーパントは、Sc、Y、Ce、Ga、Sm、Gd、Caおよび/または任意のLn元素(Ln=ランタニド)またはそれらの組合せである)からなる群より選ばれ;そして陰極材料は、(La1-xSrx)sMnO3-d および(A1-xBx)sFe1-yCoyO3-d,(式中、A = La, Gd, Y, Sm, Lnまたはそれらの混合物そしてB = Ba, Sr, Caまたはそれらの混合物)からなる群より選ばれる、請求項5記載の電極材料。
【請求項7】
第一成分がLSCFまたはCGOでありそして第二成分がCGOまたはLSCFである、請求項5記載の陰極材料。
【請求項8】
第一成分がLSCまたはCGOでありそして第二成分がCGOまたはLSCである、請求項5記載の陰極材料。
【請求項9】
第一成分がLSMまたはSYSZでありそして第二成分がSYSZまたはLSMである、請求項5記載の陰極材料。
【請求項10】
第一成分がNiOまたはSYSZでありそして第二成分がSYSZまたはNiOである、請求項5記載の陽極材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一に記載する電極材料を含む複数のそのような燃料電池を含む固体酸化物型燃料電池スタック。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一に記載する電極材料を含む酸素分離膜用電極。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一に記載する電極材料を含む水素分離膜用電極。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか一に記載する電極材料を含む電解槽。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一に記載する電極材料を含む電気化学的煙道ガスクリーニング電池。

【公開番号】特開2009−64779(P2009−64779A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−219430(P2008−219430)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(507018838)テクニカル ユニヴァーシティー オブ デンマーク (11)
【Fターム(参考)】