説明

複数のドナー及びアクセプターを有する蛍光標識試薬

容易に調製し得る色素構築ブロックに基づき、またそれから合成した新規分類の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)標識試薬を提供する。この標識試薬は「カセット」の形状をとり、広範囲の多様な生体物質その他に結合し得る。標識試薬は少なくとも2つの蛍光色素部分を含んでなり、その色素部分はリンカー基を介して共有結合しており、また、試薬を標的に結合させる標的結合基をもつ。エネルギー移動標識試薬は共有結合又は非共有結合により標的物質に結合し得る。色素は、第一(又はドナー)色素の発光スペクトルが第二色素の吸収スペクトルと重なり合い、それによって両色素間にエネルギー移動が起こるようにする。色素構築ブロックは、構造(I)の4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセイン及び/又はその5(6)−カルボン酸である。単一ドナーと単一アクセプター蛍光色素からなる本発明の態様に加えて、本発明による蛍光エネルギー移動標識試薬は、さらに1個以上の第三の蛍光色素を含んでもよく、各々第一又は第二蛍光色素に共有結合して第三の吸収及び発光を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光色素、特に複数のドナー及び/又はアクセプターを有するエネルギー移動蛍光色素、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
生物系その他の成分の標識及び検出用に様々な蛍光色素が開発されている。DNA配列決定用に開発され、広範に利用されている一群の色素は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)系蛍光色素であり、これらはドナー(供与体)色素とアクセプター(受容体)色素からなる。一般に、これらの色素において、ドナー色素とアクセプター色素を互いに適当な配向で近接して配置し、ドナーを吸収波長で励起したときに、ドナーが吸収した光子エネルギーがアクセプターに移動して、アクセプターの発蛍光団が蛍光を発するようにする。最も効率的なエネルギー移動を確実にするには、ドナーの発蛍光団が高い吸光係数と高量子収率を有するとともに、ドナーの吸収した励起エネルギーをアクセプターにアクセプター発蛍光団発光の形態で効率的に移動させることができることが重要である。さらに、効率的なエネルギー移動のためには、ドナー色素の発光とアクセプター色素の吸収が良好な重なり(オーバーラップ)をもつことが必要である。
【0003】
様々なエネルギー移動蛍光色素が文献に記載されているが、その殆どが2つの発蛍光団(ドナーとアクセプターとして)からなる(Pro.Natl.Acad.Sci.USA(1995)92,4347−4351、Anal.Biochem.(1995),231,131−140、Nucleic Acids Research(1996),24,1144−1148、Anal.Biochem.(1996),243,15−27、Nucleic Acids Research(1997),25,2816−2822、Tetrahedron Letters(2000),41,8867−8871)。しかし、上述の通り、エネルギー移動はドナーの発光とアクセプターの吸収とスペクトルの重なりの関数である。かかる重なりが僅かしかないと、フルオレセインと吸収波長が格段に長いCy5(商標)のような蛍光色素でみられるように(フルオレセインは520nmで発光し、Cy5は650nmで吸収)、ETが低くなる。かかる場合、2つの連続エネルギー移動過程は、スペクトルの重なりを改善することで、一段と効率的となる。
【0004】
この種の方策については、2種類の連続的エネルギー移動過程に関与する蛍光色素に関する最近の文献(米国特許第6008373号及び同第6130094号)が先行文献として存在する。Waggoner他の米国特許第6008373号には、2つの連続的エネルギー移動の例が報告されているが、一回目がフルオレセインからCy3へ、次いでCy3から結合したCy5へともう一度エネルギーが移動し、172nmという大きなストークスシフトを起こしている。彼らは最も長時間発光する発蛍光団としてCy7を用いた場合には、282nmというさらに大きなストークスシフトを得た。しかし、2つの連続的エネルギー移動ステップが、例えば、フルオレセインからCy5又はCy7への直接移動よりも効率的であるか否かについては結論しなかった。
【0005】
Ju他(J.Am.Chem.Soc.,(2001),123,12923−12924、国際公開第02/22883号)は、26個のヌクレオチドを骨格とする三発色団標識オリゴヌクレオチドを構築し、F−4−R−6−Ct−13と命名した。488nmで励起した場合、この集合体の主な発光はCy5により670nmに起こり、ストークスシフトは182nmであって、総量子収率は0.13であったが、Cy5の量子収率は0.27であった。しかし、488nmでのCy5の吸光係数が650nmのピーク吸収よりも格段に小さかった(2%未満)ために、この集合体は488nmで励起した場合、少なくともファクター25、未修飾色素よりも輝度が大きかった。
【0006】
DNA配列決定用プライマー及びPCRによる遺伝子解析用プライマーの標識に有用であるにも関わらず、かかる集合体はより一般的な汎用標識試薬として使用することができない。本発明では、我々は図1に示すように4′,5′−ビス−アミノメチルフルオレセインに基づく分子構造をもつ標識試薬を設計した。この分子設計ではドナーとアクセプターの発蛍光団間に最適な空間的接近を提供し、その結果、高エネルギー移動(ET)効率が提供される。
【0007】
エネルギー移動の基礎はTheodor Forsterが提案した双極子−双極子相互作用メカニズムによるフォースター共鳴エネルギー移動(FRET)として一般に受け入れられている(Josph R.Lakowicz,”Principles of Fluorescence Spectroscopy”2nd Edition,Chapter 13,Kluwer Academic Plenum Publishers,1999)。フォースター理論は、ドナーとアクセプター発蛍光団が接近する程、良好なエネルギー移動が起こることを示唆している。しかし、経験では互いに消光の原因となるので接近しすぎるべきではないことが分かっている。
【0008】
従って、最も実用的なETの適用におけるように、リンカーは米国特許第5863727号及び国際公開第00/13026号に説明のあるように、発蛍光団同士を離して置くのが通常であった。これらリンカーの導入が事実上2つの発蛍光団間の空間的距離を広げ、結果としてエネルギー移動効率を低下させるという事実にも関わらず、この方法が採用されていた。
【0009】
報告された文献(Nucleic Acids Research(1997),25,2816−2822)では、ドナーとアクセプター発蛍光団間の最適乖離が、「ビフルオル−1」、すなわち、4′−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸に連結した5−カルボキシテトラメチル−ローダミンからなる色素二量体でみられるものであると思われる。しかし、「ビフルオル−1」は酵素組込性が悪いことなどを考慮して、DNA配列決定には使用されなかった。
【0010】
さらに、「ビフルオル−1」の構造は3つの発蛍光団間のエネルギー移動に使用することができない、その理由は、4′−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸に2つの発蛍光団を結合させた後には、ヌクレオチドなどの生物分子結合たのための官能基が残っていないからである。
【0011】
この理由から、我々は、我々の「ビフルオル−1」用基本骨格として4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセインを開発した。かかる「ビフルオル−1」構造に基づく蛍光標識体は488nmの波長でネオン−アルゴンレーザーで最適に励起することが可能であり、大きなストークスシフトをもつ有意差のある波長で蛍光を発する。また、5−又は6−カルボキシ基の導入により、この基本骨格は様々に適用し得る蛍光標識試薬の合成用途に拡張することができる。
【特許文献1】米国特許第6008373号明細書
【特許文献2】米国特許第6130094号明細書
【特許文献3】国際公開第02/22883号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5863727号明細書
【特許文献5】国際公開第00/13026号パンフレット
【非特許文献1】Pro.Natl.Acad.Sci.USA(1995)92,4347−4351
【非特許文献2】Anal.Biochem.(1995),231,131−140
【非特許文献3】Nucleic Acids Research(1996),24,1144−1148
【非特許文献4】Anal.Biochem.(1996),243,15−27
【非特許文献5】Nucleic Acids Research(1997),25,2816−2822
【非特許文献6】Tetrahedron Letters(2000),41,8867−8871)
【非特許文献7】J.Am.Chem.Soc.,(2001),123,12923−12924
【発明の開示】
【0012】
従って、本発明は容易に調製し得る色素構築ブロックに基づき、またそれから合成した新規な一群の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)標識試薬を提供する。この標識試薬は「カセット」の形状をとり、広範囲の多様な生体物質その他に結合し得る。標識試薬は2以上の蛍光色素部分を含んでいて、これらの色素部分はリンカー基を介して共有結合しており、適宜試薬を標的に結合させる標的結合基を有する。標的結合基は標的物質上の相補基との共有結合形成に適するように選択される。或いは、エネルギー移動標識試薬は非共有結合によって標的物質に結合し得る。色素は、第一(すなわちドナー)色素の発光スペクトルが第二色素の吸収スペクトルと重なり合って両色素間にエネルギー移動が起こるようにする。色素構築ブロックは、構造(I)の4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセイン及び/又はその5(6)−カルボン酸である。
【0013】
【化1】

【0014】
従って、第一の態様では、
i)第一の吸収スペクトル及び発光スペクトルを有する第一蛍光色素と、
ii)各々リンカー基を介して第一蛍光色素に共有結合した1種以上の第二蛍光色素であって、各第二蛍光色素が第二の吸収スペクトル及び発光スペクトルを有していて、第二蛍光色素の発光極大の波長が第一蛍光色素の発光極大よりも長く、各第二蛍光色素の吸収スペクトルの一部が第一蛍光色素の各々の発光スペクトルの一部と重複して第二蛍光色素の各々が第一蛍光色素からのエネルギーを受容し得る第二蛍光色素と
を含んでなる化合物であって、第一蛍光色素が次の式(II)の4′,5′−ビス−アミノメチルフルオレセイン基を含んでいる、化合物が提供される。
【0015】
【化2】

【0016】
第一の態様では、フルオレセイン発色団は、蛍光エネルギー移動標識試薬におけるドナー蛍光色素として用いられる。この構造に1個以上の第二蛍光色素が共有結合で結合する。1個以上の第二蛍光色素は第一(すなわちドナー)蛍光色素とエネルギー移動の可能な状態となり、その結果、第一蛍光色素の光励起により色素から第二アクセプター蛍光色素へのエネルギー移動が起こる。さらに、1個以上の追加の蛍光色素部分が関与する追加のエネルギー移動が生じてもよい。結果として、適宜1個以上の第三の蛍光色素が追加のリンカー基によって、「二発光団」複合体に共有結合で結合していてもよい。この構成で、第二蛍光色素の発光スペクトルの一部が1個以上の第三蛍光色素の吸収スペクトルと重なり合う。第三蛍光色素の発光極大波長は第二蛍光色素の波長より長く、その結果、光による励起により第一蛍光色素が吸収したエネルギーを第二から第三蛍光色素に移動させ、非常に大きなストークスシフトをもつ発光波長を生じる。
【0017】
好ましくは、第一の側面による試薬は標的物質と共有結合を形成し得る1個以上の標的結合基を含む。
【0018】
リンカー基は連結した原子の鎖、好適にはC1−40アルキル鎖を含んでなり、鎖は−C(O)−、−C(S)−、−NR′−、−O−、−S−、−CR′=CR′−及び−CO−NR′基(ただし、R′は水素又はC1−4アルキルである)から選択される1個以上の基を適宜含んでいてもよい。鎖は所望によりエネルギー移動を妨げない当業者に公知の基、例えばC1−4アルキル、C1−4アルコキシ及びハロなどで適宜置換し得る。リンカー基は蛍光色素から伸びる構成部分を含んでいてもよく、リンカー基は色素発色団に結合した官能基、好適にはフルオレセイン発色団に結合した4′−及び/又は5′−アミノメチル基及び/又は5(6)−カルボン酸基から誘導し得る。従って、リンカーは色素発色団に共有結合するが、リンカーは色素発色団の一部ではない。さらに、リンカー基はドナー発色団とアクセプター発色団との間の共役が起こらないようにするべきである。
【0019】
本発明による蛍光エネルギー移動標識複合体は、効率50〜99%の範囲のエネルギー移動を示す。エネルギー移動効率は、スペクトルの重なり、ドナーとアクセプター間の空間的隔たり、ドナーとアクセプターの相対的配向、ドナーの量子収率、及びドナーの励起状態寿命など幾つもの因子に左右される。好適な態様では、蛍光色素は効率的なエネルギー移動を可能とする距離、好ましくは75%を超える効率を可能とする距離だけ離すことができる。
【0020】
本発明において、「基」という用語は第一蛍光色素のコア構造を定義するために使用し、4′,5′−ビスアミノメチルフルオレセイン(又はその5(6)−カルボン酸誘導体)から誘導する。従って、4′,5′−ビスアミノメチルフルオレセインは、蛍光エネルギー移動試薬を合成するための分子構築ブロックを形成する。追加の蛍光色素の共有結合の好適な位置、及び本明細書に定義した任意の他の置換基を図1に示す。さらに、式(II)の蛍光色素基の芳香族環構造の1個以上の水素原子が所望により置換基と置き換え可能であり、置換基は、ハロゲン(フッ素及び塩素など)、ニトリル、ヒドロキシ、チオール、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ及びアリールから選択される。
【0021】
本発明の蛍光エネルギー移動標識試薬は、試薬が生体化合物などの物質を標識するために標的物質と共有結合を形成し得る標的結合基を含む。標的結合基はリンカー基を介して発色団構造に連結可能であり、好ましくは(絶対的ではないが)、4′,5′−ビスアミノメチルフルオレセインの4′−及び/又は5′−アミノメチル基を化学的に修飾することにより誘導する。4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセイン−5(6)−カルボン酸を色素構築ブロックとして使用するなら、周知の方法により5−又は6−カルボン酸部分も化学的修飾を受け、結果として標的結合基が導入される。標的結合基は、担体物質、生体化合物、又は追加の色素分子などの標的物質に色素を結合させるために適したどのような基でもよい。例えば、標的結合基は適当な条件下で標的物質の相補官能基と反応し得る反応基でよい。或いは、標的結合基Fは官能基でもよく、標的は反応性成分を含み得る。いずれの場合にも、標的分子は本発明による試薬によって共有結合により標識されることになる。適当な反応性基はN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシ−スルホスクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、ハロアセトアミド、ジクロロトリアジン、マレイミド、スルホニルハライド、アシルハライド、無水物及びホスホロアミダイトから選択する。適当な官能基はヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリル及びカルボキシル基から選択する。
【0022】
好適には、本発明の蛍光エネルギー移動標識試薬は、以下の構造(III)を有する化合物である。
【0023】
【化3】

【0024】
式中、Dはキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であり、
はH、アミノ保護基、−L−F基及び−L−D基から選択され(ただし、Dはキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択される蛍光色素である。)、
、R、R及びRは独立にH、F、Cl、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜Cアルコキシ、スルホネート、スルホン、アミド、ニトリル、アリール又はヘテロアリールを表すが、RとR及び/又はRとRが一体として縮合芳香族環又はへテロ芳香族環系を形成していてもよく、
、X、X及びXは独立にH、F、Cl、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、COOR′、SOH、CHOH、基−L−F及び基−L−Dを表し(ただし、Dはキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択される蛍光色素であり、R′は水素及びC〜Cアルキルから選択される。)、
Fは標的結合基であり、
、L及びLは各々連結基であって、独立に、−C(O)−、−C(S)−、−NR′−、−O−、−S−、−CR′=CR′−及び−CO−NR′基(ただし、R′は上記で定義した通り)から選択される1個以上の基を適宜含んでいてもよい炭素原子から選択される1〜40個の連結原子を含む基である。
【0025】
好ましくは、式(II)の化合物は標的物質と共有結合を形成し得る1個以上の標的結合基を含む。
【0026】
好ましくは、式(III)の化合物において、L、L及びLは各々独立に1〜20個の原子を含む。
【0027】
好ましくは、L、L及びLは各々独立に以下の基である。
【0028】
−{(CHR′)p−Q−(CHR′)r}s−
式中、Qは−CHR′−、−C(O)−、−C(S)−、−NR′−、−O−、−CR′=CR′−及び−CO−NR′から選択され、R′は水素又はC〜Cアルキルであり、各pは独立に0〜5であり、各rは独立に0〜5であり、sは1又は2である。
【0029】
好ましくは、Qは−CHR′−、−C(O)−及び−CO−NH−(ただし、R′、p、r及びsは上記で定義した通り)から選択される。
【0030】
反応性基とその相補官能基の具体例を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
利用可能なアミノ及びヒドロキシル官能基で標的物質を標識するのに有用な特に好適な反応性基には、以下のものがある。
【0033】
【化4】

【0034】
利用可能なチオール官能基で標的物質を標識するのに有用な特に好適な反応性基には、以下のものがある。
【0035】
【化5】

【0036】
適当なアミノ保護基については当業者に周知であり、N−メチル、N−ブチル及びN−アリルなどのN−アルキル及びN−アルケニル誘導体、カルバミン酸ベンジルなどのカルバミン酸エステル、及びN−ホルミル、N−アセチル及びN−ベンゾイルなどのN−アシル誘導体などである。アミノ基の保護基を含む式(III)の化合物の誘導体は、他の蛍光色素、標的結合基、水溶化及び電荷担持置換基の結合に際して、分子構築ブロック、4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセインに基づくエネルギー移動色素標識試薬の合成に有用である。
【0037】
アリールとは、炭素原子数6〜10の縮合芳香族環を1又は2個含む芳香性置換基、例えばフェニル又はナフチルであり、アリールは独立に、例えば、ハロゲン、炭素原子数1〜10の直鎖もしくは枝分れアルキル基、アラルキル及びC〜Cアルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ及びn−ブトキシなどの1個以上の置換基で適宜置換されていてもよい。
【0038】
ヘテロアリールとはモノ−もしくはビシクロ5員環〜10員環芳香族環系であって、N、O及びSから選択される1個以上3個以下のヘテロ原子を含み、独立に、例えば、ハロゲン、炭素原子数1〜10の直鎖もしくは枝分れアルキル基、アラルキル及びC〜Cアルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びn−ブトキシなどの1個以上の置換基で適宜置換されていてもよい。
【0039】
ハロゲン及びハロ基はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される。
【0040】
好適なキサンチン色素の例は、フルオレセイン、ナフトフルオレセイン、ロドール及びその誘導体から選択される。
【0041】
好適なローダミン色素の例は、5−カルボキシローダミン(ローダミン110−5)、6−カルボキシローダミン(ローダミン110−6)、5−カルボキシローダミン−6G(R6G−5又はREG−5)、6−カルボキシローダミン−6G(R6G−6又はREG−6)、N,N,N′,N′−テトラメチル−5−カルボキシローダミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA又はTMR)、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)から選択される。
【0042】
好適なシアニン色素の例は、Cy3(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−カルボシアニン)、Cy3.5(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−カルボシアニン)、Cy5(1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−ジカルボシアニン)、Cy5.5(1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン)、Cy7(1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−トリカルボシアニン)から選択される。
【0043】
本発明の一態様では、蛍光標識試薬はさらに直接、又は適当なリンカー基を介して間接的に色素発色団に共有結合した1個以上の水溶化置換基を含む。水溶化成分は複合体の標的結合基と非反応性でなければならない。水溶化基、例えば、スルホネート、スルホン酸及び四級アンモニウムなどは、色素発色団の芳香族環構造に直接結合し得る。或いは、水溶化基はC〜Cアルキルリンカー鎖により、芳香族環構造に結合させることができ、基−(CH−W(ただし、Wはスルホネート、スルホン酸、四級アンモニウム及びカルボキシルから選択される、kは1〜6の整数である)から選択し得る。水溶解性は生物標的物質、例えば、タンパク質及び核酸誘導体などを標識しようとする場合に有利である。
【0044】
別法として、低親水性極性形状のエネルギー移動試薬は、塩基対間に挿入することにより、又はDNAの小溝内での相互作用により、DNAに非共有的に結合させてもよい。かかる化合物はDNAの定量又は位置決定に有用である。この態様では、本発明の蛍光標識試薬はさらに電荷担持基、好適には1〜5個の正荷電窒素又はリン原子を含む鎖を含んでなる。これら正に荷電した窒素もしくはリン原子の一部はリンカー基L、L及び/又はLに存在し得る。好ましくは、電荷担持基は正荷電窒素原子を含み、各々四級アンモニウム基、或いはプロトン化三級アミノ基、グアニジニウム基又はピリジニウム基で与えられる。特に好適な電荷担持基は1〜30個の鎖炭素原子を含む直鎖もしくは枝分れであり、以下の構造を有する基である。
【0045】
−(CH
式中、各Rは独立にC〜Cアルキルであり、RはC〜Cアルキルであるか、又は−(CHであり(ただし、R及びRは前記定義のとおりである)、mは1〜4の整数である。標識複合体上の追加の電荷は本発明エネルギー移動試薬で標識した標的分子の電気泳動での移動操作を可能とする。
【0046】
もう一つの態様では、蛍光標識試薬はさらに第二蛍光色素とエネルギー移動の関係を有するように連結した2個以上の第一蛍光色素を含んでなる。図2に示すように、第一蛍光色素は各々色素4′,5′−ビス−アミノメチルフルオレセイン−5(6)−カルボン酸基を含んでなり、蛍光色素は該基の4′−(又は5′−)アミノ基及びカルボキシル基を介して頭−尾で共有結合している。第一蛍光色素「複合体」は第二蛍光色素及び/又は標的物質の共有結合に利用し得るさらなる部位を含む。光での励起により、フルオレセインドナー分子は吸収した併合エネルギーを第二蛍光色素に移動する。
【0047】
単一ドナーと単一アクセプター蛍光色素を含む本発明の態様に加えて、本発明による蛍光エネルギー移動標識試薬は、さらに第一又は第二蛍光色素に共有結合により結合した、各々第三の吸収と発光スペクトルをもつ1個以上の第三蛍光色素を含んでなる。例えば、第三蛍光色素は第二蛍光色素に結合し得る。この例では、第三蛍光色素の発光極大波長が第二蛍光色素の発光極大波長よりも長い。第三蛍光色素の吸収スペクトルの一部は第二蛍光色素の発光スペクトルの一部と重なり、その結果、第一蛍光色素を励起することで、第三蛍光色素から蛍光を生じる。
【0048】
本発明のさらに別の態様では、蛍光標識試薬は複数の第二蛍光色素を含み得るものであり、各々リンカーを介して第一蛍光色素に結合し、第二蛍光色素は各々、第一蛍光色素が光により励起されたときに、第一蛍光色素からエネルギーを受容し得るものである。第一蛍光色素の吸光係数は好適には50000リットル/モルcmより大きく、量子収率は0.5より大きく、好ましくは0.75より大きい。好ましくは、第二蛍光色素は40000リットル/モルcmより大きい吸光係数と0.1以上の量子収率をもつ(フルオレセインを1として比較)。さらに、第三蛍光色素は、もし標識複合体に採用するなら、好ましくは40000リットル/モルcmを超える吸光係数と、同様に0.1以上の量子収率をもたねばならない。一態様では、ドナーからアクセプター発色団へのエネルギー移動は、488nmで蛍光色素を励起し、次いでエネルギー移動過程で最も長い発光の蛍光色素から発光させることにより達成し得る。或いは、カスケード過程において、ドナーと中間蛍光色素の両方が488nmで同時に励起を受け得る。両蛍光色素により吸収されたエネルギーは、次いで第三蛍光色素に転移される。
【0049】
さらに別の態様では、エネルギー移動試薬はアクセプター蛍光色素又は他の官能基をもつフルオレセインポリマーの鎖を、鎖上の異なる位置に結合して含み得る、結果として、図3に示すように、異なる特定の適用要件を満足する。アクセプターは要求されたものと同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
本発明の標識試薬は、好ましくは公知の方法により4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセイン−5(6)−カルボン酸を他の蛍光色素に共有結合により連結し、エネルギー移動ドナー−アクセプター標識試薬を形成させることにより合成する。このエネルギー移動試薬を用いて標的物質を共有結合により標識し、それによって蛍光の性質を付与することができる。従って、第二の態様では、標的物質の標識方法であって、標的物質を含有する液体に、本発明による蛍光エネルギー移動試薬を添加し、試薬と標的物質とを、標的物質に結合し、標識するのに適した条件下にインキュベートすることを特徴とする方法が提供される。本方法は、標的と標識試薬との間に共有結合連結を形成するための条件下に、1個以上の標的結合基を有するエネルギー移動標識試薬の一定量と標的物質とをインキュベートすることからなる。適当な標的生体物質は、これらに限定されるものではないが、1個以上のアミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスフェートもしくはチオホスフェート基を含む又は含むように誘導体化した抗体、脂質、タンパク質、ペプチド、炭水化物、ヌクレオチド、又は1個以上のアミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスフェートもしくはチオホスフェート基を含む又は含むように誘導体化したオキシもしくはデオキシ−ポリ核酸、微生物材料、薬物、ホルモン、細胞、細胞膜及び毒素からなる群である。
【0051】
別の態様では、蛍光試薬は標的結合基をもつ必要がなく、非共有結合により他の化合物に結合させるために使用することができる。例えば、複合体を有機溶媒に溶解し、次いでポリスチレンなどのポリマー粒子と混合し、次いで乳化重合するまで撹拌する。溶媒は蒸発させ、蛍光色素複合体をポリスチレン粒子に吸収させる。
【0052】
本発明は添付の図面を参照することにより、よりよく理解し得るであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本発明はストークスシフトの大きな蛍光標識試薬を提供する。本発明の目的上、標識試薬のストークスシフトは試薬の最短波長光吸収体の吸収極大と最長波長発光体の発光極大間がナノメートルの差である。本明細書に記載のエネルギー移動標識試薬は、短波長吸収体から長波長発光体へエネルギーを移動し、大きなストークスシフトを生じるために、共に連結した2個以上の発蛍光団を含み得る。
【0054】
図4に示すように、第一ドナー発蛍光団である短波長吸収発蛍光団は、励起波長(実線)でその吸光度スペクトル内に励起によるエネルギーを吸収し、その発光スペクトル内の波長(破線)でエネルギーを放出する。第一発蛍光団が第二発蛍光団に適当な距離と配向で連結している場合、第一発蛍光団はその励起状態から第二発蛍光団に、第二発蛍光団の吸収スペクトル(実線)内の波長で、エネルギーを移動又は供与する。第二発蛍光団は供与されたエネルギーを受領し、その発光スペクトル(破線)内の波長でそれを放出するが、図示した通り、第一発蛍光団の発光の最長波長よりも波長としてより長い。この過程は最終最長波長の発蛍光団が一連のエネルギー移動を終了するまで繰り返される。
【0055】
一方の発蛍光団から隣接位の発蛍光団へ移動されるエネルギー量は、ドナーの発光スペクトルとアクセプターの吸収スペクトルとの重なりに依存するだけではない、これは図4に示すように、第一及び第二発蛍光団間の陰影領域で説明される。共鳴エネルギー移動に関するフェルスター理論は、移動されるエネルギーの量が重なり領域の波長に第四のパワー依存性をもつスペクトル重なり時間に左右されると予測する。従って、エネルギー移動はよりながい吸収と発光波長をもつ発蛍光団間でより効率的である。
【0056】
本発明に関する蛍光標識試薬は低分子量であり、抗体、その他のタンパク質、及びDNAプローブに容易に会合し得る。本明細書で使用する場合、低分子量とは標識試薬の組合せ分子量が500〜10000ダルトンであることを意味するものとする。従って、これらの標識種は、現在使用されている大きなフィコビリンタンパク質標識で可能であるよりも、細胞内環境にはるかに侵入し易い。本発明の低分子量蛍光標識試薬は、フローサイトメトリーのみならず、レーザー共焦点顕微鏡に、また単波長励起による多色検出を必要とするその他の検出系に有用である。
【0057】
蛍光標識試薬は、好ましくは標的化合物上の対応する基と共有結合を形成し得る基を含む。好ましくは、反応性の基が標識試薬上にあり、また官能基が標的化合物又は分子にある。しかし、当業者も認めるように、官能基が標識試薬上にあって、反応基が標的上にあってもよい。
【0058】
本発明による蛍光エネルギー移動色素は、混合物中の種々の成分の検出及び識別などへの適用に使用し得る。従って、本発明はまた式(III)の2種以上の異なる蛍光エネルギー移動標識試薬のセットを提供し、この場合、セット中の各標識試薬は実質的に同じ波長の光エネルギーを吸収し、セット中の各々の他の試薬から識別し得る波長で発光(又は蛍光放出)する。少なくとも2種の本発明標識試薬を含む試薬のセットは多数サンプル中に存在する標的生体化合物を検出するための多重パラメータ方法に使用し得る。方法は、a)各個々のサンプルと、蛍光標識セットからの異なる標識とをインキュベートして蛍光標識したサンプルを提供する工程、b)蛍光標識サンプル各々を混合してすべてのサンプルを含む単一の混合物を形成させる工程、及びc)単一混合物を単一波長の励起源で照射して、異なる蛍光標識のサンプルの各々に相当する蛍光発光を検出する工程、からなる。
【0059】
本発明の蛍光標識試薬に使用し得る一部色素の例を表2に示す。これらの例は説明のみを目的とするものであって、他の同様のタイプの色素も使用し得る。以下の実施例は添付の請求項及び本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。本発明は本明細書に示した教示から明らかとなるいずれの、またすべての変法をも包含するものである。
【0060】
【表2】

【実施例】
【0061】
1. 4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセインの合成
1.1 4′,5′−ビス−(2−クロロアセトアミド)−アミノメチル−フルオレセイン
フルオレセイン(3.3グラム)及び2−クロロ−n−(ヒドロキシメチル)−アセトアミド(5.0グラム)を濃硫酸20mlに溶解した。暗褐色溶液を室温で2時間撹拌した。この時点で、ESMSは原料のフルオレセインが残っていないことを示した。生成物を200グラムの氷水中に注ぎ、沈殿を濾取し、水洗し、次いでエーテルで洗い、空気乾燥した。このようにして得られた物質のNMRはこのものが所望の生成物であることを示していた。
【0062】
1.2 4′,5′−ビス−(2−クロロアセトアミド)−アミノメチル−フルオレセインの加水分解
上記反応の生成物を濃塩酸40mlに懸濁し、30分間加熱還流した。澄明な溶液を得た。生成物を蒸発乾固し、残渣をメタノール/ジクロロメタンから再結晶し、所望の生成物、4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセインを得た、これをNMRとESMSにより同定した。
【0063】
2. 4′,5′−ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸の合成
フルオレセイン−5−カルボン酸は濃硫酸に殆ど溶けないので、以下の改良法を採用した。
【0064】
2.1 4′,5′−ビス−(2−クロロアセトアミド)−アミノメチル−フルオレセイン−5−カルボン酸
濃硫酸20mlに室温、撹拌下、ジピバロイル−フルオレセイン−5−カルボン酸を加えた。この懸濁液に、澄明な溶液が得られるまで、過剰(4当量)の2−クロロ−n−(ヒドロキシメチル)−アセトアミドを分割して加えた。さらに、原料物質(フルオレセインと2−クロロ−n−(ヒドロキシメチル)−アセトアミドの両方)を、溶液の色が淡黄色から褐色になるまで加えた。この溶液を氷/水混合物に注いだ。このようにして得られた沈殿を水とエーテルで洗った。この沈殿のNMR及びESMSは、このものが所望の生成物であることを示した。
【0065】
2.2 4′,5′−ビス−(2−クロロアセトアミド)−アミノメチル−フルオレセイン−5−カルボン酸の加水分解
上記2.1からの生成物(1.01グラム)を濃塩酸20mlと2−メトキシエーテル5mlに懸濁した。得られる懸濁液を加熱撹拌すると、約2時間で澄明となった。次いで、この溶液を放冷した。室温で一夜放置後、塊状沈殿が生じた。沈殿を濾取し、0.1N塩酸、次いでエーテルで洗い、所望の生成物、4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセイン−5−カルボン酸を得た。NMR及びESMSにより確認した。
【0066】
3. アミノメチル−FAM−Cy5ビフルオル(BB)の合成
4′−アミノメチル−フルオレセイン(5mg)を乾燥DMF0.5mlに溶解した。この溶液に重炭酸ナトリウム−炭酸塩緩衝液1.0ml中のCy5モノ官能反応性色素20mgを加えた。室温で20分後、溶媒を蒸発させ、残渣をクロマトグラフして、所望の生成物(BB)を得た。
【0067】
【化6】

【0068】
容易に分かることは、4′,5′−ビスアミノメチル−FAM−Cy5ビフルオルを調製するために、4′−アミノメチル−フルオレセインの代わりに4′,5′−ビス−アミノメチルフルオレセイン(実施例2と同様の方法で調製)を使用し得ることであり、さらにこの分子の遊離の5′−アミノメチル位置に結合した標的結合基をもつエネルギー移動標識試薬の調製に使用し得ることである。例えば、反応スキーム1に示すように、4′,5′−ビスアミノメチル−FAM−Cy5ビフルオルをピリジン中、無水コハク酸又は無水グルタール酸で処理すると、カルボン酸誘導体化ビフルオル色素を与え、これはさらにDMF中、N−ヒドロキシスクシンイミド/ジシクロヘキシルカルボジイミドと反応させることにより、その反応性N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル誘導体に変換することができる。
【0069】
【化7】

【0070】
4. アミノメチルFAM−TAMRA−Cy5(TA)の合成−「トリフルオル」
トリフルオル、FAM−TAMRA−Cy5の合成には以下の工程が関与する。
【0071】
4.1 アミノメチルFAM−TAMRA「ビフルオル」(BA)
【0072】
【化8】

【0073】
4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセイン(4mg)及び5−カルボキシテトラメチルローダミン・スクシンイミジルエステル(10mg)を過剰のN,N−ジイソプロピルエチルアミンを含む乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)1mlに溶解した。反応は室温で一夜進行させた。生成物をTLCで精製し、所望のビフルオル(BA)を得た。
【0074】
4.2 アミノメチル−FAM−TAMRA−Cy5「トリフルオル」(TA)
【0075】
【化9】

【0076】
上記4.1で得たビフルオル(BA)を過剰のN,N−ジイソプロピルエチルアミンを加えた乾燥ジメチルホルムアミドに溶解した。この溶液に炭酸塩/重炭酸塩緩衝液中の少過剰のCy−5単官能性NHSエステルを加えた。薄層クロマトグラフィー(TLC)上、原料物質の消失により示される反応の終末点にて、溶媒を蒸発乾固させ、残渣をC18逆相TLCプレートによりクロマトグラフし、所望の生成物(TA)を得た。
【0077】
生体分子に対するトリフルオル(TA)の結合
4′,5′−ビス−アミノメチルフルオレセイン−5(6)−カルボン酸(実施例2と同様に調製)を4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセインの代わりに用いて4′,5′−ビス−アミノメチル−FAM−5(6)カルボン酸−Cy5「ビフルオル」又はアミノメチル−FAM−5(6)カルボン酸−TAMRA−Cy5「トリフルオル」を調製し、これを用いて、分子中のドナーフルオレセインの遊離の5(6)−位置に結合した標的結合基をもつエネルギー移動標識試薬を調製し得る。例えば、4′,5′−ビス−アミノメチル−FAM−5(6)カルボン酸−TAMRA−Cy5「トリフルオル」は、DMF中、N−ヒドロキシスクシンイミド/ジシクロヘキシルカルボジイミドと反応させることにより、その反応性N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル誘導体に変換することができる、このものは次いで標的の生物分子と反応させ得る。
【0078】
【化10】

【0079】
5. エネルギー移動測定
5.1 ドナー蛍光色素からアクセプター蛍光色素へのエネルギー移動の程度を実際に定量するのは、2つの発蛍光団の場合であっても関与するものが複雑であるため、エネルギー移動を定量するための正確な信頼の置ける方法は公開されていない。最近の文献によると、一般に、「エネルギー移動の効率は、アクセプターが結合されたときに生じるドナー蛍光の消光量(DQE)を計算することにより推定された」。他の例では、ドナー−アクセプター対の「蛍光強度」の比較は、ドナー吸収波長での励起にもつづき、アクセプターからのその発光波長での発光強度を比較することにより得た。ドナー濃度の差の補正は、ドナー吸収波長での吸収により、ドナー−アクセプター対の濃度を測定することにより実施した。この方法はドナー−アクセプター対のエネルギー移動効率を比較する手段を提供する、しかし、これは同じドナーが関与する場合に限定される。
【0080】
研究中に判明したことは、DQEに基づく第一評価方法がドナーとアクセプター間のエネルギー移動量を機械的に誇張してしまうことであった、その理由はドナーによるエネルギー喪失量がアクセプターに完全に伝達されることはめったにないからである。第二の直接比較法はドナー−アクセプター対を異なるドナーと比較し得る柔軟性を提供しない。
【0081】
従って、新しい方法はドナーが吸収するエネルギーの部分(ドナー発光としては放出されない)、すなわち、アクセプターに伝達される部分を定量するために開発された。これはアクセプターが実際に発光するDQEのパーセントである。この方法は以下を測定することからなる。
i)非会合状態におけるドナーとアクセプターの吸収及び発光特性。
ii)ドナー−アクセプター対の吸収スペクトル。光学密度(OD)はドナー吸収波長及びアクセプター波長にて記録する。蛍光に基づくドナー−アクセプター対について、488nmでのODを測定するが、この波長はドナー−アクセプター対を励起するために使用するからである。
iii)ドナー発光波長で測定されるドナーが放出する光子数及びドナー吸収波長での励起によるアクセプター発光波長で測定されるアクセプターが発光する光子数。蛍光に基づくドナー−アクセプター対について、励起波長は488nmである。
iv)アクセプター吸収波長での励起に基づくドナー−アクセプター対のアクセプターが放出する光子数。
【0082】
定義
i)傾斜(SL):励起波長で励起される発蛍光団のODで除した放出された光子数である。ODは吸収された光子数に正比例するので、その傾斜は量子収率に比例し、吸収された光子で割った放出光子数と定義する。典型的に、この数は機器依存性であり、その形状に左右され、励起起源と光電子倍増効率には補正が必要である。プリセットパラメータをもつ特定の機器では、フルオレセインなどの標準化合物について測定される傾斜が、実験誤差内の定数に極めて近い。
ii)SLDFDは、ドナー吸収波長で励起したときの遊離状態におけるドナーの傾斜である。
iii)SLDCDは、ドナー吸収波長で励起したときのドナー−アクセプター対におけるドナーの傾斜である。
iv)SLAFAはアクセプター吸収波長で励起された遊離状態でのアクセプターの傾斜である。
v)SLACDはドナー吸収波長で励起したときのドナー−アクセプター対におけるアクセプターの傾斜である。
vi)SLACAはアクセプター吸収波長で励起したときのドナー−アクセプター対におけるアクセプターの傾斜である。
vii)PQEQはドナー消光のパーセントである(=DQE11)。
viii)PEEAはドナー−アクセプター対におけるアクセプターのパーセント量子収率をアクセプター吸収波長で励起したときの遊離アクセプターの収率との比較である。
ix)PETはドナー吸収波長で励起したときのドナー−アクセプター対において、アクセプターが発光するためにドナーが吸収するエネルギーのパーセントエネルギー移動である。
【0083】
次の計算を実施し得る。
【0084】
1.PQEQ=(1−SLDCD/SLDFD)×100%
2.PEEA=(SLACA/SLAFA)×100%
3.PET=(ドナーの量子収率)×SLACD/SLDFD
5.2 ビフルオルにおけるエネルギー移動、アミノメチルFAM−Cy5(BB
一例として、以下の数値はドナー−アクセプター対、アミノメチルFAM−Cy5(BB)におけるエネルギー移動の測定において得られた(MeOH溶媒+1滴のN,N−ジイソプロピルエチルアミン)。
【0085】
SLDFD=1.41×10
SLAFA=1.39×10
SLDCD=1.12×10
SLACD=1.38×10
SLACA=1.46×10
従って、PQEQ=92%
PEEA=106%及び
PET=10%(蛍光の光子収量1.0として)
図7に示す流れ図は上記の数値から構築し得るものであり、ドナー−アクセプター対(BB)におけるフルオレセインドナーが吸収する100個の光子の運命をモニターし、数値が有意であることを示す。この流れ図から分かるように、100個の光子を吸収したドナーに対し92個の光子の減量の内、10個のみがアクセプターに移動する。従って、引用した米国特許第6130094号公報に記載されているように、DQEはアクセプターに伝達されたエネルギー(光子)の概算に使用できない。
【0086】
5.3 トリフルオルにおけるエネルギー移動、アミノメチルFAM−Cy5(BB
エネルギー移動を定量する本方法はエネルギー移動蛍光標識試薬における2個を超える発蛍光団に拡張することができる。一例として、溶媒として痕跡のN,N−ジイソプロピルエチルアミンを含むMeOH中、トリフルオル(TA)のエネルギー移動について、以下の結果を得た。
【0087】
1)第一ドナーのPQEQ
2)第一アクセプターのPEEA(PEEA
3)第一アクセプターに対する第一ドナーのPET(PET
4)第二アクセプターのPEEA(PEEA
5)第二アクセプターに対する第一ドナーのPET(PET
従って、PEQE=90%
PEEA=0%、((TA)におけるTAMRA発蛍光団からの発光は、フルオレセイン吸収波長又はTAMRA吸収波長のいずれの励起によっても観察されなかった)
PET=0%
PEEA=43%
PET=39%
エネルギー(光子)流れ図は、図8に示すように構成し得る。(BB)と(TA)のエネルギー移動を比較することにより、中間の発蛍光団、TAMRAの導入がフルオレセインからCy5へのエネルギー移動を4倍改善することが分かる。この改善は、単一の直接ワンステップエネルギー移動において、連続的エネルギー移動ステップの良好なスペクトルの重なりの結果として得られた。さらに、
1)アクセプターの量子収率/ドナーの量子収率は、SLAFA/SLDFD比に等しい。従って、もしドナーがフルオレセインであるなら、SLAFA/SLDFD比はアクセプターの量子収率(フルオレセインを1.0として比較)を与える。
【0088】
2)測定したPETは事実上ドナー吸収波長で励起したドナー−アクセプター対の量子収率であり、アクセプター発光極大として測定される発光を伴う。この相関は複数のアクセプターをもつドナー−アクセプター対に適用し得る。
【0089】
6. 正荷電アミノメチルFAM−TAMRA(ドナー−アクセプター対(BC))の合成
【0090】
【化11】

【0091】
以前に得られたビフルオル(BA)をDMFに溶解し、(CH)N(CH2)(CH)2(CH(CHCHCOOHで示される酸のスクシンイミジルエステルの炭酸塩/重炭酸塩溶液と室温で20分間反応させた。溶媒を減圧下に留去し、残渣をC18逆相カラム上クロマトグラフし、所望の生成物を得た。
7. アミノメチルFAM−TAMRA−ターミネーター(BD)の合成
エネルギー移動色素で標識した2′,3′−ジデオキシシチジン三リン酸の調製は以下のステップに従った(反応スキーム2)。
【0092】
【化12】

【0093】
7.1 実施例1と同様に得られる4′,5′−ビス−アミノメチルフルオレセインをDMFに溶解し、無水コハク酸と反応させて前駆体(BE)を得た。
【0094】
7.2 ピリジンとジクロロメタンの混合物中、化合物(BE)をトリフルオロ酢酸NHSエステルと反応させ、中間体(BG)を得た。
【0095】
7.3 化合物(BG)をDMSOに溶解し、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液中、ジデオキシシチジン三リン酸に結合した適当なリンカーと反応させ、粗生成物(BH)を得た。
【0096】
7.4 7.3で得られた生成物を精製し、TAMRA−NHSエステルと反応させ、最終生成物を得た。これを逆相HPLCで精製した。
【0097】
上に説明した本発明の教示の恩典を有する当業者は、それに対して多くの改善をなし得る。これらの改善も添付の請求項に記載した本発明の範囲内に包含されるもの解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】4′,5′−ビス−アミノメチル−フルオレセイン分子構築ブロックの構造、及び他の発蛍光団、標的結合基、水溶化及び電荷担持置換基、及び/又は標的物質の結合可能な好適な位置を示す。
【図2】二量化4′,5′−ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸の分子構造、及び他の発蛍光団及び/又は他の標的物質の結合可能な好適な位置を示す。
【図3】4′,5′−ビス−アミノメチルフルオレセイン−5−カルボン酸ポリマーの分子構造、及び他の発蛍光団及び/又は他の標的物質の結合可能な位置を示す。
【図4】FRETに適する発蛍光団の重なり合う吸収(――)スペクトル及び発光(−−−−)の説明図である。
【図5】MeOH/ヒュニッグ(Hunig)塩基中、FAM−Cy5「ビフルオル」の吸収及び発光(488nmで励起)スペクトルを示す。
【図6】MeOH/ヒュニッグ(Hunig)塩基中、FAM−TAMRA−Cy5「トリフルオル」の吸収及び発光(488nmで励起)スペクトルを示す。
【図7】ドナー−アクセプター対(BB)の光子の流れ図である。流れ図はドナー−アクセプター対(BB)において、フルオレセインドナーが吸収した100光子の運命をモニターする。
【図8】トリフルオル(TA)−アクセプター対(BB)の光子の流れ図である。流れ図はドナー−アクセプター対(BB)において、フルオレセインドナーが吸収した100光子の運命をモニターする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)第一の吸収スペクトル及び発光スペクトルを有する第一蛍光色素と、
ii)各々リンカー基を介して第一蛍光色素に共有結合した1種以上の第二蛍光色素であって、各第二蛍光色素が第二の吸収スペクトル及び発光スペクトルを有していて、第二蛍光色素の発光極大の波長が第一蛍光色素の発光極大よりも長く、各第二蛍光色素の吸収スペクトルの一部が第一蛍光色素の各々の発光スペクトルの一部と重複して第二蛍光色素の各々が第一蛍光色素からのエネルギーを受容し得る第二蛍光色素と
を含んでなる化合物であって、第一蛍光色素が次式の4′,5′−ビス−アミノメチルフルオレセイン基を含んでいる、化合物。
【化1】

【請求項2】
当該化合物が標的物質と共有結合を形成し得る1個以上の標的結合基を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
当該化合物に共有結合した電荷担持置換基もしくは水可溶化置換基、又は
当該化合物に共有結合した電荷担持及び水溶化置換基
をさらに含んでおり、上記置換基が標的結合基と非反応性である、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項4】
前記水溶化置換基が、アミド、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、4級アンモニウム、ヒドロキシル、グアニジニウム及びホスホネート基からなる群から選択される、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
前記荷電担持置換基が1〜5個の正荷電窒素原子又はリン原子を有する、請求項3記載の化合物。
【請求項6】
前記標的結合基が、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシ−スルホスクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、ハロアセトアミド、ジクロロトリアジン、マレイミド、スルホニルハライド、アシルハライド、無水物及びホスホロアミダイトからなる群から選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項7】
前記標的結合基が、アミノ、ヒドロキシル、スルフヒドリル及びカルボキシル基からなる群から選択される官能基である、請求項2記載の化合物。
【請求項8】
各第二蛍光色素が、キサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
前記標的物質が、1個以上のアミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスフェートもしくはチオホスフェート基を含む又は含むように誘導体化した抗体、脂質、タンパク質、ペプチド、炭水化物、ヌクレオチド、並びに1個以上のアミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスフェートもしくはチオホスフェート基を含む又は含むように誘導体化したオキシもしくはデオキシ−ポリ核酸、微生物材料、薬物、ホルモン、細胞、細胞膜及び毒素からなる群から選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項10】
各々リンカーを介して第一蛍光色素に共有結合した複数の第二蛍光色素を有し、第一蛍光色素が光励起されたときに各第二蛍光色素が第一蛍光色素からエネルギーを受容し得るものである、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
エネルギー移動の関係が成り立つように第二蛍光色素と連結した2個以上の第一蛍光色素をさらに含んでいて、各第一蛍光色素が色素4′,5′−ビス−アミノメチルフルオレセイン−5(6)−カルボン酸の基を含んでおり、2個以上の第一蛍光色素が上記基の4′−(又は5′−)アミノ基及びカルボキシル基を介して頭−尾で共有結合している、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
第一又は第二蛍光色素に共有結合した1個以上の第三蛍光色素をさらに含んでいて、各第三蛍光色素が第三の吸収スペクトル及び発光スペクトルを有しており、第三蛍光色素の発光極大の波長が第二蛍光色素の発光極大の波長よりも長く、各第三蛍光色素の吸収スペクトルの一部が第二蛍光色素の発光スペクトルの一部と重複して第一蛍光色素の励起によって第三蛍光色素から蛍光が生じる、請求項1記載の化合物。
【請求項13】
次の構造を有する化合物。
【化2】

式中、Dはキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択されるアクセプター色素であり、
はH、アミノ保護基、−L−F基及び−L−D基から選択され(ただし、Dはキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択される色素である。)、
、R、R及びRは独立にH、F、Cl、C〜Cアルキル、C〜C置換アルキル、C〜Cアルコキシ、スルホネート、スルホン、アミド、ニトリル、アリール又はヘテロアリールを表すが、RとR及び/又はRとRが一体として縮合芳香族環又はへテロ芳香族環系を形成していてもよく、
、X、X及びXは独立にH、F、Cl、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、COOR′、SOH、CHOH、基−L−F及び基−L−Dを表し(ただし、Dはキサンチン色素、ローダミン色素及びシアニン色素からなる群から選択され、R′は水素及びC〜Cアルキルから選択される。)、
Fは標的結合基であり、
、L及びLは各々連結基であって、独立に、−C(O)−、−C(S)−、−NR′−、−O−、−S−、−CR′=CR′−及び−CO−NR′基(ただし、R′は上記で定義した通り)から選択される1個以上の基を適宜含んでいてもよい炭素原子から選択される1〜40個の連結原子を含む基である。
【請求項14】
当該化合物が標的物質と共有結合を形成し得る1個以上の標的結合基を有する、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
当該化合物に共有結合した電荷担持置換基もしくは水溶化置換基、又は
当該化合物に共有結合した電荷担持及び水溶化置換基
をさらに含んでおり、上記置換基が標的結合基と非反応性である、請求項13又は請求項14記載の化合物。
【請求項16】
前記水溶化置換基が、アミド、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、4級アンモニウム、ヒドロキシル、グアニジニウム及びホスホネートからなる群から選択される、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
前記荷電担持置換基が2〜5個の正荷電窒素原子を有する、請求項15記載の化合物。
【請求項18】
、L及びLが各々独立に1〜20個の原子を含む、請求項13記載の化合物。
【請求項19】
、L及びLが各々独立に次式の基である、請求項13記載の化合物。
−{(CHR′)−Q−(CHR′)
式中、Qは−CHR′−、−C(O)−、−C(S)−、−NR′−、−O−、−CR′=CR′−及び−CO−NR′から選択され、R′は水素又はC〜Cアルキルであり、各pは独立に0〜5であり、各rは独立に0〜5であり、sは1又は2である。
【請求項20】
Qが−CHR′−、−C(O)−及び−CO−NH−(ただし、R′、p、r及びsは上記で定義した通り)から選択される、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
前記標的結合基が標的物質の反応性基と反応する反応性基又は標的物質の反応性基と反応する官能基を含む、請求項14記載の化合物。
【請求項22】
前記反応性基が、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル、N−ヒドロキシ−スルホスクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、ハロアセトアミド、ジクロロトリアジン、マレイミド、スルホニルハライド、アシルハライド、無水物及びホスホロアミダイトからなる群から選択される、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
前記官能基がアミノ、ヒドロキシル、スルフヒドリル及びカルボキシル基からなる群から選択される、請求項21記載の化合物。
【請求項24】
前記キサンチン色素が、フルオレセイン、ナフトフルオレセイン、ロドール及びこれらの誘導体から選択される、請求項13記載の化合物。
【請求項25】
前記ローダミン色素が、5−カルボキシローダミン(ローダミン110−5)、6−カルボキシローダミン(ローダミン110−6)、5−カルボキシローダミン−6G(R6G−5又はREG−5)、6−カルボキシローダミン−6G(R6G−6又はREG−6)、N,N,N′,N′−テトラメチル−5−カルボキシローダミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA又はTMR)、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)から選択される、請求項13記載の化合物。
【請求項26】
前記シアニン色素が、Cy3(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−カルボシアニン)、Cy3.5(3−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−カルボシアニン)、Cy5(1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−ジカルボシアニン)、Cy5.5(1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−4,5,4′,5′−(1,3−ジスルホナト)ジベンゾ−ジカルボシアニン)、Cy7(1−(ε−カルボキシペンチル)−1′−エチル−3,3,3′,3′−テトラメチル−5,5′−ジスルホナト−トリカルボシアニン)から選択される、請求項13記載の化合物。
【請求項27】
前記標的物質が、1個以上のアミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスフェートもしくはチオホスフェート基を含む又は含むように誘導体化した抗体、並びに脂質、タンパク質、ペプチド、炭水化物、ヌクレオチド、1個以上のアミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスフェートもしくはチオホスフェート基を含む又は含むように誘導体化したオキシもしくはデオキシ−ポリ核酸、微生物材料、薬物、ホルモン、細胞、細胞膜及び毒素からなる群から選択される、請求項14記載の化合物。
【請求項28】
標的物質の標識方法であって、
a)標的物質を含有する液体に、請求項1又は請求項13記載の蛍光エネルギー移動試薬を添加し、
b)試薬を標的物質に結合させて標的物質を標識するのに適した条件下で、試薬を標的物質と共にインキュベートすること
を含んでなる方法。
【請求項29】
前記標的物質が、1個以上のアミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスフェートもしくはチオホスフェート基を含む又は含むように誘導体化した抗体、脂質、タンパク質、ペプチド、炭水化物、ヌクレオチド、1個以上のアミノ、スルフヒドリル、カルボニル、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスフェートもしくはチオホスフェート基を含む又は含むように誘導体化したオキシもしくはデオキシ−ポリ核酸、微生物材料、薬物、ホルモン、細胞、細胞膜及び毒素からなる群から選択される、請求項28記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−500588(P2006−500588A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539950(P2004−539950)
【出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/030361
【国際公開番号】WO2004/029579
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(598041463)アマシャム・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【氏名又は名称原語表記】Amersham Biosciences Corp
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】